説明

光治療装置

【課題】半導体発光素子からの光を生体に照射することにより疼痛緩解や創傷治癒促進を図る光治療装置において、装置を使用する際に危険を防止するための保護めがねが正しく着用されていることを検出し、誤照射等の事故に対する操作者の安全を確保する光治療装置を提供する。
【解決手段】半導体発光素子2から出力される光から操作者の眼を保護するための保護めがね8を操作者が着用したことを、前記保護めがね8の左右両パッド部20に設置された接触スイッチ10の信号により、検知することにより、前記半導体発光素子2の出力光を制御し、操作者の眼を保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体発光素子より出射される光を生体に照射し、疼通緩解、創傷治癒促進等に用いる医療用の光治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年10〜100mW程度の低出力レーザ光を生体に照射することにより筋肉関節等の慢性疼痛の緩解や創傷治癒促進を図るための半導体レーザ治療装置が各種開発され、実際の臨床においても普及してきた(例えば特許文献1参照)。また、近年では半導体レーザを同じ半導体発光素子として、高出力のLEDが開発されており、半導体レーザに代わる光源として期待されている。
【0003】
以下に従来のレーザ治療装置について説明する。図3および図4に従来例におけるレーザ治療装置の構成を示す。図3は全体構成図を、図4は治療用レーザ光を照射するプローブの光学系の構成図である。
【0004】
図3および図4において、30はレーザ治療装置の装置本体であり、内部に電源回路,制御回路等を内蔵する。31はプローブであり、内部に半導体レーザ32a,32bを内蔵し、開口部33よりレーザ光を出射する。34はプローブコードであり、本体30とプローブ31を電気的に接続する。
【0005】
35はレーザ光照射制御用のタッチセンサであり、開口部33の周囲にリング状に取り付けられ、生体への接触を検知しレーザ光を開口部33より出射する。
【0006】
40はプローブ収納台であり、プローブ31を収納する。41は電源キースイッチである。
【0007】
以上のように構成されたレーザ治療装置において、操作者は電源キースイッチ41により電源ON後、プローブ31を手に保持し、開口部33を患者の治療部位に接触させる。ここでタッチセンサ35により、生体表面に開口部33が接していることを検知し、レーザ光が開口部33より生体表面に照射され治療が実施される。
【0008】
上記のようなレーザ治療装置では、操作者のより安全のため、例えば眼への誤照射などの事故を防ぐために、装置を使用する場合は保護めがねを着用していただくことを取扱説明書や警告表示ラベルで注意喚起している。さらに、保護めがねが正しく着用されているかどうかについて、保護めがねとプローブ31が一定の距離に近づいたことを検出し、保護めがねが正しく着用されていると認識したときのみレーザ光を照射するようにして安全性を高めるといった試みもなされている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−323093号公報
【特許文献2】特開2008−253377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述の通り、従来のレーザ治療装置では、実際の保護めがねの着用は操作者である医師や、医師指導の元使用する患者の意識に依存しており、うっかりミスで保
護めがねをかけ忘れる場合がある。また、今後LEDを使用した光治療器が普及した際、家庭内での患者自身による使用も考えられ、保護めがねの着用なしでレーザ照射を行った場合、想定外の部分からのレーザ光の反射が操作者の眼に入光する可能性を否定できない。
【0011】
また、保護めがねとプローブが一定の距離に近づいたことを検出するのみでは、保護めがねを着用したかどうかを正しく認識することは難しく、上記課題を完全に解決できるものであるとは言いがたい。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、レーザ治療装置を使用する上で、保護めがねが正しく着用されているかをより正確に検出し、操作者の安全を確保することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明にかかる光治療装置において、前記半導体発光素子から出力される光から操作者の眼を保護するための保護めがねを操作者が着用したことを検知することにより、前記光発光素子の出力光を制御することを特徴とする。操作者が保護めがねを着用したことを確実に検知したときのみ光を出力することにより、操作者の安全性がさらに高まることが期待できる。
【0014】
本発明はさらに、前記保護めがねの左右両パッド部に設置された接触スイッチの信号により、保護めがねを操作者が着用したことを検知することを特徴とする。パッド部とはめがねにおける鼻当て部のことであり、めがねを着用した際には必ず左右両側のパッドが操作者の鼻に当たることにより、確実に保護めがねを着用したことを検知できる。
【0015】
本発明はさらに、前記保護めがねの左右両モダン部に設置された接触スイッチの信号により、保護めがねを操作者が着用したことを検知することを特徴とする。モダン部とはめがねにおける耳掛け部のことであり、めがねを着用した際には必ず左右両側のモダンが操作者の耳に当たることにより、確実に保護めがねを着用したことを検知できる。
【0016】
本発明はさらに、前記半導体発光素子が、半導体レーザであることを特徴とする。半導体レーザは、より強いパワーで効果的な光を出力することができる。
【0017】
本発明はさらに、前記半導体発光素子が、LEDであることを特徴とする。LEDは、より安全な治療装置を提供することが可能であり、家庭内で使用できる治療器への応用も可能である。
【発明の効果】
【0018】
以上の構成により、保護めがねの着用忘れに起因して、操作者の眼が光にさらされる事故を未然に防止し、使用者にも安全な光治療装置を実現できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例による光治療装置の構成図
【図2】本発明の光治療装置の保護めがねの構成図
【図3】従来のレーザ治療装置の構成図
【図4】従来のレーザ治療装置のプローブの一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態にかかる光治療装置について、図1を用いて説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態における光治療装置の構成図である。
本体制御部1は光レーザ治療装置に内蔵され、装置全体を制御する。半導体発光素子2はレーザ、LED等の半導体発光素子で光を出力し、電源3は半導体発光素子2や、本体制御部1の動作に必要な電力を供給する。操作部4で操作者が装置の設定を行い、導光路5は半導体発光素子2から出射された光を導くため光路を形成し、把持部6は導光路5の先端に取り付けられ、治療を行うために操作者が手に持つ部位である。
【0021】
保護めがね8は操作者が自身の眼を保護するもので、保護めがね8に備えた制御回路9で本体制御部1の制御を行う。制御回路9の電源としては、小さいコイン型電池を用いてもよいし、あるいはICチップなど磁界を媒体とした起電力を利用するものでもよい。また、本体から有線で電源を供給してもよい。
【0022】
保護めがね8のパッド部、またはモダン部の左右の両部分に保護めがね8を操作者が装着していることを検出するためのセンサーとして接触スイッチ10を備えている。接触スイッチは、保護めがね8のパッド部、またはモダン部の左右の両部分に配置され、操作者が保護めがねをかけたときのみ、押し圧等でスイッチが動作する構成とする。警報装置11は装置の異常などを外部に知らしめるために本体制御部1に接続されている。
【0023】
以上のように構成された光治療装置において、その動作を説明する。装置の使用形態としては、操作者は保護めがね8を装着し、次に電源投入による装置起動後、操作部4を操作して治療に必要な光照射条件を設定する。本体制御部1は、操作部4によって設定された光照射条件に基づいて半導体発光素子2を制御する。操作者は導光路5の先端に取り付けられた把持部6を手に持ち、操作部4の操作で光照射条件を変更したり、光の出射/休止を行いながら患者患部の治療を行う。
【0024】
なお、単に保護めがねのモダン部等に接触スイッチが取り付けられていた場合、指などで押圧するだけで着用したと認識してしまい、確実性が低くなってしまう。パッド部、もしくはモダン部の左右両側に接触スイッチを配置することにより、片手で把持部6を操作している操作者が両方の接触スイッチを同時に押圧することは非常に困難となる。このことから、パッド部、もしくはモダン部の左右両側に接触スイッチを配置することで、より正確に操作者が保護めがねを着用していることを検出できることとなる。
【0025】
さらに、本体制御部1には、警報装置11が接続されている。操作者が保護めがね8を着用し忘れてレーザ治療装置を動作させようとした場合、通信回路7と通信回路9が正常通信できないので、本体制御部1は保護めがね8が正しく着用されてないと判断し、警報装置11を駆動して音・光・表示等で警報を発することによって操作者に保護めがね8の着用を促す構成としている。これにより、家庭内で患者自身が操作者として使用する場合でも、眼の損傷などの事故を未然に防止するという安全性の高い光レーザ治療装置を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明にかかる光治療装置は、光照射による治療において、確実に光から操作者を保護するという効果を有し、光治療装置として有用である。
【符号の説明】
【0027】
1 本体制御部
2 半導体発光素子
3 電源
4 操作部
5 導光路
6 把持部
8 保護めがね
9 通信回路
10 接触スイッチ
11 警報装置
20 パッド
21 モダン
30装置本体
31 プローブ
32a,32b 半導体レーザ
33 開口部
34 プローブコード
35 タッチセンサ
40 プローブ収納台
41 電源キースイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光発光素子を内蔵するプローブと装置本体とにより構成され、前記半導体光発光素子より出力される光を生体に照射して治療に供する医療用の光治療装置であって、
前記半導体発光素子から出力される光から操作者の眼を保護するための保護めがねを操作者が着用したことを検知することにより、前記光発光素子の出力光を制御することを特徴とする光治療装置。
【請求項2】
前記保護めがねの左右両パッド部に設置された接触スイッチの信号により、保護めがねを操作者が着用したことを検知することを特徴とする請求項1記載の光治療装置。
【請求項3】
前記保護めがねの左右両モダン部に設置された接触スイッチの信号により、保護めがねを操作者が着用したことを検知することを特徴とする請求項1または2に記載の光治療装置。
【請求項4】
前記半導体発光素子が、半導体レーザであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光治療装置。
【請求項5】
前記半導体発光素子が、LEDであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−232037(P2012−232037A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103988(P2011−103988)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】