説明

光測定装置

【課題】本発明は、複数の異なる波長の光を弁別して光強度測定を行うことや、複数の通信光の波長でOTDR測定を行うことが可能で、かつ、光源としても使用可能な1台の光測定装置の提供を目的とする。
【解決手段】第1の接続部1と、第1のレーザモジュール5と、第1の受光器7と、光強度測定部21と、OTDR測定部22とを備えた光測定装置において、複数の通信波長測定光とを選択的に発生する第2のレーザモジュール6と、通信光と測定専用光の戻り光とを分離する第1の光フィルタ11と、複数の通信光を分離する第2の光フィルタ12と、分離された通信光の1つを受光第2の受光器8と、分離された他の通信光を受光する第3の受光器9と、第1の光カプラ14と、第2の接続部2と、第2の光カプラ15と、第3の光カプラ16とを備え、光強度測定部は更に、第2の受光器又は第3の受光器で受光した光の光強度を測定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OTDR測定及び光強度測定を行う光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの敷設、保守に用いられる測定装置として、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の光測定装置は、被測定光ファイバに接続可能な接続部と、光パルスを発生するレーザモジュールと、被測定光ファイバに入射された光パルスの戻り光を受光する受光器とを備え、OTDR測定を行う。
【0003】
光ファイバの敷設、保守の現場では、実際に被測定光ファイバの一端に信号光を入射し、被測定光ファイバの他端でこの信号光を受光して、光強度測定装置を用いて光強度の測定も行われる。このように、敷設、保守の担当者は、OTDR測定のほかに、信号光の光源装置や光強度測定装置など、多数の測定装置を準備し、現場に携帯していかなければならなかった。
【0004】
光源、OTDR測定装置、及び光強度測定装置を一体化した光測定装置として、例えば特許文献2に開示されているような光測定装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−167417号公報
【特許文献2】特願2010−146727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光アクセスネットワークの方式の一つとして、PON(Passive Optical Network)がある。このPONを採用した光アクセスネットワークでは、OLT(Optical Line Terminal)とONU(Optical Network Unit)とで1対N(Nは正数)の構成を採っている。このPONに用いられるデータ通信用の波長としては、上り(ONUからOLTへ)は1310nm、下り(OLTからONUへ)は1490nmと、異なる波長が規定されている。さらに最近では、上記波長に加え、OLTから映像信号を送るための波長として1550nmを用いる場合が多くなってきている。このため、PONの建設時や保守時には、それぞれの波長の光を弁別してそのパワーを測定する必要がある。
【0007】
また、一般に光ファイバは通信光の波長によって特性が異なり、ある波長の光では損失が許容範囲であっても、別の波長の光では損失が許容範囲に入らない場合がある。そのため、PONの敷設や保守にあたっては、複数の通信光の波長でOTDR測定を行うことが通例である。
【0008】
しかし、特許文献2の光測定装置では、複数の異なる波長の光を弁別してその光強度を測定することや、複数の通信光の波長でOTDR測定を行うことはできなかった。複数の異なる波長の光を弁別してその光強度を測定するためだけの用途であれば、PONパワーメータと呼ばれる測定装置が利用可能であるが、これだけではOTDR測定は行えないし、光源として用いることもできないため、別途OTDR測定装置や光源を準備しなければならなかった。
【0009】
そこで本発明では、複数の異なる波長の光を弁別して光強度測定を行うことや、複数の通信光の波長でOTDR測定を行うことが可能で、かつ、光源としても使用可能な1台の光測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光測定装置は、第1の波長と第2の波長の通信光を発する1つのOLT(96)と、第3の波長の通信光を発する複数のONU(97_1〜97_N)とを接続するPONにおいて、前記複数のONUのいずれか1つと接続されている光ファイバ(93_3)の設置又は保守のために用いられる光測定装置であって、前記光ファイバが接続可能な第1の接続部(1)と、前記第1の波長、第2の波長又は第3の波長のいずれとも異なる第4の波長の光パルスである測定専用光を発生し前記接続部を介して前記光ファイバに向けて出射する第1のレーザモジュール(5)と、前記光ファイバから前記第1の接続部を介して入射される前記測定専用光の戻り光を受けて当該戻り光を電気信号に変換する第1の受光器(7)と、前記電気信号に基づいて前記第1の受光器で受光した光の光強度を測定する光強度測定部(21)と、前記光強度測定部で測定した光強度に基づいて、前記光ファイバの特性を測定するOTDR測定部(22)とを備えた光測定装置(101、102)において、前記第1の波長の光パルスである第1の通信波長測定光と前記第3の波長の光パルスである第3の通信波長測定光とを選択的に発生する第2のレーザモジュール(6)と、前記第1の接続部からの、前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の通信光と、前記測定専用光の戻り光とを含む光を受けて、前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の通信光と前記測定専用光の戻り光とに分離する第1の光フィルタ(11)と、前記第1の光フィルタで分離された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の通信光を受けて、前記第1の波長の通信光と前記第2の波長の通信光とに分離する第2の光フィルタ(12)と、前記第2の光フィルタで分離された前記第1の波長の通信光を受けて、電気信号に変換する第2の受光器(8)と、前記第2の光フィルタで分離された前記第2の波長の通信光を受けて、電気信号に変換する第3の受光器(9)と、前記第1のレーザモジュールから出射される前記測定専用光を受けて、前記第1の光フィルタを経由して前記第1の接続部に出射するとともに、前記第1の光フィルタで分離された前記測定専用光の戻り光を受けて、当該戻り光を前記第1の受光器に出射する第1の光カプラ(14)と、前記光ファイバと接続可能な第2の接続部(2)と、前記第2の接続部に前記光ファイバが接続されている場合に、前記第2のレーザモジュールから出射される前記第1の通信波長測定光又は前記第3の通信波長測定光を受けて前記第2の接続部に出射するとともに、前記第2の接続部を介して入射される前記第1の通信波長測定光又は前記第3の通信波長測定光の戻り光を受けて当該戻り光を前記第1の光カプラに出射する第2の光カプラ(15)と、 前記第2の光カプラから出射される前記第1の通信波長測定光又は前記第3の通信波長測定光、及び前記第2の光フィルタで分離された前記第1の波長の光を受けて前記第2の受光器に出射する第3の光カプラ(16)とを備え、前記第1の光カプラは更に、外部の光源からの光が前記第2の接続部に入射されたとき、前記第2の光カプラを経由した当該光を受けて前記第1のレーザモジュールに出射し、当該光が前記第1のレーザモジュールの端面で反射した反射光を受けて前記第2の光カプラに出射するとともに、前記第1の通信波長測定光又は前記第3の通信波長測定光の戻り光が前記第2の接続部に入射されたとき、前記第2の光カプラを経由した当該戻り光を前記第1の受光器に出射し、前記第2の受光器は更に、前記第1のレーザモジュールの端面で反射した反射光を前記第1の光カプラ、前記第2の光カプラ、及び前記第3の光カプラを介して受けて電気信号に変換し、前記光強度測定部は更に、前記第2の受光器又は前記第3の受光器からの前記電気信号に基づいて受光した光の光強度を測定することを特徴とする。
【0011】
第1の光フィルタと第2の光フィルタによって第4の波長の光、第1の波長の光、及び第2の波長の光が分離されるので、複数の異なる波長の光を弁別して光強度測定を行うことができる。また、第2のレーザモジュールが第1又は第3の波長の光を選択的に発生させるので、複数の通信光の波長でOTDR測定を行うことができる。更に、第1のレーザモジュールと第2のレーザモジュールを備えているので、本発明に係る光測定装置は複数波長の光源としても使用可能である。
【0012】
本発明に係る測定装置はまた、前記第1の光フィルタと前記第2の光フィルタとの間に挿入され、当該第1の光フィルタで分離された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の通信光を受けてこれを分岐させ、分岐された光の一方を前記第2の光フィルタに出射する第4の光カプラ(17)と、前記第1の光カプラと前記第2の光カプラとの間に挿入され、前記第1の光カプラから出射された光の一方と前記第4の光カプラから出射された光の他方を受けて前記第2の光カプラに出射するとともに、前記第2の光カプラから出射された光を受けてこれを分岐させ、分岐された光の一方を前記第1の光カプラに、分岐された光の他方を前記第4の光カプラに出射する第5の光カプラ(18)とを更に備えてもよい。
【0013】
これにより、前記光ファイバを前記第1の接続部に接続し、前記複数のONUのいずれか1つを前記第2の接続部に接続すれば、前記OLTと前記複数のONUのいずれか1つが互いに通信を保つことができる。
【0014】
本発明に係る測定装置はまた、前記光ファイバが前記第1の接続部に接続され、前記複数のONUのいずれか1つが前記第2の接続部に接続されており、かつ、前記OLTと前記複数のONUのいずれか1つが通信を保った状態で、前記OTDR測定部は、前記第2の受光器からの光強度が前記光強度測定部によって測定されない時間にのみ、前記第1のレーザモジュールによって前記光ファイバの特性を測定するようにしてもよい。
【0015】
これにより、OLTとONUが通信状態を保ったまま、OTDR測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の異なる波長の光を弁別して光強度測定を行うことや、複数の通信光の波長でOTDR測定を行うことが可能で、かつ、光源としても使用可能な1台の光測定装置の提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】PONの模式図を示す。
【図2】実施形態1に係る光測定装置の一例を示す。
【図3】実施形態2に係る光測定装置の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
実施形態1は、本発明に係る光測定装置101を用いて、複数の通信光の波長でOTDR測定を行うものである。
【0019】
図1に、PONの模式図を示す。センタ側のOLT91と加入者側の複数のONU97_1〜97_Nとが光スプリッタ92で接続されている。複数のONU97_1〜97_Nはそれぞれ、光ファイバ93_1〜93_Nを介して光スプリッタ92と接続されている。OLT91からはデータ信号用として波長1490nmの通信光と、映像信号用として波長1550nmの通信光が送出されている。また、複数のONU97_1〜97_Nからはそれぞれ、波長1310nmの通信光が送出されている。
【0020】
図2に、実施形態1に係る本発明の光測定装置101を示す。本実施形態1に係る光測定装置101は、第1の接続部1と、第2の接続部2と、第1のレーザモジュール5と、第2のレーザモジュール6と、第1の受光器7と、第2の受光器8と、第3の受光器9と、第1の光フィルタ11と、第2の光フィルタ12と、第1の光カプラ14と、第2の光カプラ15と、第3の光カプラ16と、光強度測定部21と、OTDR測定部22とを備えている。
【0021】
第1のレーザモジュール5は、実施形態1では使用されないが、波長1650nmのパルス光である測定専用光を出射する。
【0022】
第2のレーザモジュール6は、波長1550nmの光パルスである第1の通信波長測定光と波長1310nmの光パルスである第3の通信波長測定光とを選択的に出射する。この第2のレーザモジュール5は、例えば1つの波長可変レーザモジュールで構成されても良いし、例えば波長1550nmのレーザモジュールと波長1310nmのレーザモジュールと光スイッチとから構成されても良い。
【0023】
第1の受光器7は、後述する戻り光の光強度を測定するための物であり、受光した光を電気信号に変換する。第1の受光器7は、例えばAPD(Avalanche Photo Diode)で構成される。
【0024】
第2の受光器8及び第3の受光器9は、実施形態1では使用されないが、通信光の光強度を測定するための物であり、受光した光を電気信号に変換する。第2の受光器8及び第3の受光器9は、例えばPIN型フォトダイオードで構成される。
【0025】
第1の光フィルタ11は、実施形態1では使用されないが、後述する波長1650nmの戻り光と通信光とを分離するための物である。その入力側ポート111は第1の接続部1に接続されている。また、その出力側の第1のポート112には波長1650nmよりも短い波長の光が出力されるようになっており、第1の光フィルタ12に接続されている。さらに、その出力側の第2のポート113には波長1650nm以上の光が出力されるようになっており、第1の光カプラ14に接続されている。
【0026】
第2の光フィルタ12も実施形態1では使用されないが、波長1490nmの通信光と、波長1550nmの通信光とを分離するための物である。その入力側ポート121は第1の光フィルタ11に接続されている。また、その出力側の第1のポート122には波長1490nmよりも長い波長の光が出力されるようになっており、第2の受光器8に接続されている。さらに、その出力側の第2のポート123には波長1490nm以下の光が出力されるようになっており、第3の受光器9に接続されている。
【0027】
第1の光カプラ14は、両端にそれぞれ2ポート(141、142、143、144)を有し、一端の第1のポート141は第1のレーザモジュール5に、第2のポート142は第1の受光器7に接続されている。また、他端の第1のポート143は第2の光カプラ15に、第2のポート144は第1の光フィルタ11に接続されている。
【0028】
第2の光カプラ15は、両端にそれぞれ2ポート(151、152、153、154)を有し、一端の第1のポート151は第2のレーザモジュール6に、第2のポート152は第1の光カプラ14に接続されている。また、他端の第1のポート153は第2の接続部2に、第2のポート154は第3の光カプラ16に接続されている。
【0029】
第3の光カプラ16は、一端に2ポート(161、162)、他端に1ポート163を有し、一端の第1のポート161は第2の光カプラ15に、第2のポート162は第2の光フィルタ12に接続されている。また、他端のポート163は第2の受光器8に接続されている。
【0030】
光強度測定部21は第1の受光器7、第2の受光器8、及び第3の受光器9のそれぞれが変換した電気信号に基づいて、各受光器7〜9で受光した光の光強度を測定する。
【0031】
OTDR測定部22は光強度測定部21が測定した測定結果に基づき、OTDR測定を行う。
【0032】
今、図1のONU97_3と光スプリッタ92とを接続するための光ファイバ93_3に対して、OTDR測定を行う。そのために、光ファイバ93_3のONU97_3側の一端が切断され、実施形態1に係る光測定装置101の第2の接続部2に接続される。
【0033】
この場合、実施形態1に係る光測定装置101の第1のレーザモジュール5は起動されず、第2のレーザモジュール6から、波長1550nmの光パルスである第1の通信波長測定光、又は波長1310nmの光パルスである第3の通信波長測定光が選択的に出射される。
【0034】
この第1又は第3の通信波長測定光は、第2の光カプラ15を経由して第2の接続部2から、光ファイバ93_3に出射される。光ファイバ93_3に入射した通信波長測定光は、光ファイバ93_3を伝搬する間にレイリー散乱等や反射点による反射を生じさせ、光ファイバ93_3から第2の接続部2に向かう戻り光が発生する。
【0035】
この戻り光は第2の接続部2から第2の光カプラ15と第1の光カプラ14とを経由して、第1の受光器7に入射する。
【0036】
第1の受光器7に入射した戻り光の光強度を光強度測定部21で測定し、その測定結果に基づいてOTDR測定部22がOTDR測定を行うことにより、光ファイバ93_3に対する、第1の通信波長測定光又は第3の通信波長測定光によるOTDR測定が、1台の実施形態1に係る光測定装置101で実現される。
【0037】
なお、実施形態1では、光ファイバ93_3が光スプリッタ92を介してOLT96と接続されており、かつ、OLT96が運用されている間は、OLT96からの通信光と実施形態1に係る光測定装置101の第1の通信波長測定光とが互いに影響するので、光ファイバ93_3のOTDR測定はできない。
【0038】
(実施形態2)
実施形態2では、波長1650nmの測定専用光によって、光ファイバ93_3に対するOTDR測定を行う。実施形態2に係る光測定装置の構造は、図2に示されている実施形態1に係る光測定装置101と同じである。ただし、光ファイバ93_3の一端は、光測定装置101の第1の接続部1に接続される。
【0039】
実施形態2に係る光測定装置101では第2のレーザモジュール6は起動されず、第1のレーザモジュール5から、波長1650nmの測定専用光が出射される。
【0040】
この測定専用光は、第1の光カプラ14及び第1の光フィルタ11を経由して第1の接続部1から、光ファイバ93_3に出射される。光ファイバ93_3に発生した戻り光は第1の接続部1から第1の光フィルタ11及び第1の光カプラ14を経由して、第1の受光器7に入射する。
【0041】
第1の受光器7に入射した戻り光の光強度を光強度測定部21で測定し、その測定結果に基づいてOTDR測定部22がOTDR測定を行うことにより、光ファイバ93_3に対する、測定専用光によるOTDR測定が実現される。
【0042】
なお、実施形態2では、測定専用光の戻り光に加えて、第1〜第3の通信光が第1の接続部1に入射したとしても、第1の光フィルタ11が波長1650nmよりも短い光を分離して出力側の第1のポート112に出力し、出力側の第2のポート113にはほぼ測定専用光の戻り光のみが出力される。このため、OLT91が運用中であっても、通信光に影響されることなくOTDR測定を行うことができる。
【0043】
(実施形態3)
本発明に係る光測定装置101は波長1310nm、1550nm又は1650nmの光源としても使用できる。実施形態3に係る光測定装置の構造は、図2に示されている実施形態1に係る光測定装置101と同じである。光源からの光を必要とする光装置は、実施形態3に係る光測定装置101の第2の接続部2に接続される。
【0044】
実施形態3に係る光測定装置101を波長1310nm又は1550nmの安定化光源として使用する場合は、第2のレーザモジュール6を起動する。第2のレーザモジュール6から選択的に出射された波長1310nm又は1550nmの光は、第2の光カプラ15の一端の第1のポート151に入射し、他端の第1のポート153から第2の接続部2に出射されるとともに、他端の第2のポート154から第2の受光器8に入射される。
【0045】
第2の受光器8に入射した光の光強度は光強度測定部21で測定される。図示しない光強度安定制御部によって、光強度測定部21で測定された光強度を一定に保つように、第2のレーザモジュール6に入力される電流を制御することにより、第2の接続部2から出射される光の光強度を一定に保つことができる。
【0046】
また、実施形態3に係る光測定装置101を波長1650nmの光源として使用する場合は、第1のレーザモジュール5を起動する。第1のレーザモジュール5から出射された波長1650nmの光は、第1の光カプラ14及び第2の光カプラ15を経由して第2の接続部2に出射されるとともに、第2の光カプラ15から第2の受光器8に入射される。光強度安定制御部によって、光強度測定部21で測定された光強度を一定に保つように、第1のレーザモジュール5に入力される電流を制御することにより、第2の接続部2から出射される光の光強度を一定に保つことができる。
【0047】
(実施形態4)
本発明に係る光測定装置101は外部の光源による高出力の光の光強度測定装置としても使用できる。実施形態4に係る光測定装置の構造は、図2に示されている実施形態1に係る光測定装置101と同じである。高出力の光は、実施形態4に係る光測定装置101の第2の接続部2に入射される。
【0048】
第2の接続部2に入射した高出力の光は、第2の光カプラ15及び第1の光カプラ14を経由して、第1のレーザモジュール5に入射される。このとき、高出力の光が第1の受光器7に入射しないように、第1の光カプラ14と第1の受光器7との間に光シャッタを設けて、実施形態4に係る光強度測定装置として使用される場合にはこの光シャッタを閉じるようにしても良い。
【0049】
第1のレーザモジュール5に入射した高出力の光は、第1のレーザモジュール5の端面で反射し、再び第1の光カプラ14に戻り、第2の光カプラ15を経由して第2の受光器8に入射される。光強度測定部21は、第2の受光器8に入射した光の光強度を測定する。そして、光強度測定部21は、予め記憶した補正値で、測定された光強度を補正する。補正値は、例えば、第2の接続部2に入射する光の光強度と第2の受光器8で測定された光強度との差分を予め波長ごとに測定しておき、光強度測定部21に格納しておく。これによって、実施形態4に係る光測定装置101は、外部の光源による高出力の光の光強度測定を行うことができる。
【0050】
(実施形態5)
本発明に係る光測定装置101はOLT96からの波長1490nm及び波長1550nmの通信光を弁別して光強度測定を行うこともできる。実施形態5に係る光測定装置の構造は、図2に示されている実施形態1に係る光測定装置101と同じである。OLT96からの通信光は、実施形態5に係る光測定装置101の第1の接続部1に入射される。
【0051】
第1の接続部1に入射された通信光は第1の光フィルタ11の出力側の第1のポート112に出力され、第2の光フィルタ12に入射される。第2の光フィルタに入射された通信光のうち、波長1550nmの通信光は第2の光フィルタ12の出力側の第1のポート122に出力され、第3の光カプラ16を経由して第2の受光器8に入射される。光強度測定部21は、第2の受光器8に入射された光の光強度を測定する。
【0052】
また、第2の光フィルタに入射された通信光のうち、波長1490nmの通信光は第2の光フィルタ12の出力側の第2のポート123に出力され、第3の受光器9に入射される。光強度測定部21は、第3の受光器9に入射された光の光強度を測定する。これによって、実施形態5に係る光測定装置101は、OLT96からの波長1490nm及び波長1550nmの通信光を弁別して光強度測定を行うことができる。
【0053】
(実施形態6)
実施形態6に係る光測定装置は、OLT96とONU97_3との通信状態を保ったまま、波長1650nmの測定専用光によるOTDR測定を実現するためのものである。
【0054】
図3に、実施形態6に係る本発明の光測定装置102を示す。本実施形態6に係る光測定装置102は、実施形態1〜実施形態5に係る本発明の光測定装置101の構成に、第4の光カプラ17と、第5の光カプラ18が追加されている。
【0055】
第4の光カプラ17は、一端に1ポート171、他端に2ポート(172、173)を有し、一端のポート171は第1の光フィルタ11の出力側の第1のポート112に接続されている。また、他端の第1のポート172は第2の光フィルタ12の入力側ポート121に、第2のポート173は第5の光カプラ18に接続されている。
【0056】
第6の光カプラ18は、一端に2ポート(181、182)、他端に1ポート183を有し、一端の第1のポート181は第4の光カプラ17に、第2のポート182は第1の光カプラ14に接続されている。また、他端のポート183は第2の光カプラ15に接続されている。
【0057】
OTDR測定される光ファイバ97_3は、第1の接続部1に接続される。さらに、ONU97_3は第2の接続部2に接続される。OLT96からの波長1490nm及び波長1550nmの通信光は第1の接続部1から入射し、第1の光フィルタ11、第4の光カプラ17、第5の光カプラ18、第2の光カプラ15を経由して、第2の接続部2からONU97_3に出射される。また、ONU97_3からの波長1310nmの通信光は第2の接続部2から入射した後、前記と逆の経路を経由して、第1の接続部1からOLT96に出射される。これによって、実施形態6に係る光測定装置102がOTDR測定中であっても、OLT96とONU97_3は通信状態を保つことができる。
【0058】
OLT96から第1の接続部1に入射した通信光は、第1の光フィルタ11によって出力側の第2のポート113には出力されないため、OTDR測定中の第1の受光器7には影響を与えない。しかし、ONU97_3から第2の接続部2に入射した通信光は、第1の受光器7にも入射してしまい、そのままではOTDR測定に影響を及ぼす。このONU97_3からの通信光の影響を除去するための方法を以下に説明する。
【0059】
PONでは、複数のONU97_1〜ONU97_Nからの通信光は時分割多重されている。そのため、ONU97_3からの通信光は、バースト状に出力されている。ここで、実施形態4で説明されている方法によって、第1のレーザモジュール5の端面で反射した通信光を第2の受光器8で受光して光強度測定部21で測定することにより、バースト状の通信光が入射しているか否かを知ることができる。そして、バースト状の通信光が入射していない時間にのみ、実施形態2で説明されている方法によって、波長1650nmの測定専用光によるOTDR測定を行えば、OLT96とONU97_3が通信状態を保ったまま正確にOTDR測定を実現できる。
【0060】
以上のように、本発明に係る光測定装置は1台で、複数の異なる波長の光を弁別して光強度測定を行うことや、複数の通信光の波長でOTDR測定を行うことが可能で、かつ、光源としても使用可能であるため、光ファイバの敷設や保守に携帯する装置の数を減らすことができる。また、本発明に係る光測定装置は多くの構成部品が複数の機能に共用されているため、単機能の装置の集積よりも小型化でき、装置コストの低減にも貢献する。さらに、実施形態6に係る光測定装置102は、OLTとONUの通信状態を保ったままで光ファイバのOTDR測定を行うことができ、光ファイバの監視用途等にも使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:第1の接続部
2:第2の接続部
5:第1のレーザモジュール
6:第2のレーザモジュール
7:第1の受光器
8:第2の受光器
9:第3の受光器
11:第1の光フィルタ
12:第2の光フィルタ
14:第1の光カプラ
15:第2の光カプラ
16:第3の光カプラ
17:第4の光カプラ
18:第5の光カプラ
21:光強度測定部
22:OTDR測定部
92:光スプリッタ
96:OLT
97_1〜97_N:ONU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長と第2の波長の通信光を発する1つのOLT(Optical Line Terminal)(96)と、第3の波長の通信光を発する複数のONU(Optical Network Unit)(97_1〜97_N)とを接続するPON(Passive Optical Network)において、前記複数のONUのいずれか1つと接続されている光ファイバ(93_3)の設置又は保守のために用いられる光測定装置であって、
前記光ファイバが接続可能な第1の接続部(1)と、
前記第1の波長、第2の波長又は第3の波長のいずれとも異なる第4の波長の光パルスである測定専用光を発生し前記接続部を介して前記光ファイバに向けて出射する第1のレーザモジュール(5)と、
前記光ファイバから前記第1の接続部を介して入射される前記測定専用光の戻り光を受けて当該戻り光を電気信号に変換する第1の受光器(7)と、
前記電気信号に基づいて前記第1の受光器で受光した光の光強度を測定する光強度測定部(21)と、
前記光強度測定部で測定した光強度に基づいて、前記光ファイバの特性を測定するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)測定部(22)と
を備えた光測定装置(101、102)において、
前記第1の波長の光パルスである第1の通信波長測定光と前記第3の波長の光パルスである第3の通信波長測定光とを選択的に発生する第2のレーザモジュール(6)と、
前記第1の接続部からの、前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の通信光と、前記測定専用光の戻り光とを含む光を受けて、前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の通信光と前記測定専用光の戻り光とに分離する第1の光フィルタ(11)と、
前記第1の光フィルタで分離された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の通信光を受けて、前記第1の波長の通信光と前記第2の波長の通信光とに分離する第2の光フィルタ(12)と、
前記第2の光フィルタで分離された前記第1の波長の通信光を受けて、電気信号に変換する第2の受光器(8)と、
前記第2の光フィルタで分離された前記第2の波長の通信光を受けて、電気信号に変換する第3の受光器(9)と、
前記第1のレーザモジュールから出射される前記測定専用光を受けて、前記第1の光フィルタを経由して前記第1の接続部に出射するとともに、前記第1の光フィルタで分離された前記測定専用光の戻り光を受けて、当該戻り光を前記第1の受光器に出射する第1の光カプラ(14)と、
前記光ファイバと接続可能な第2の接続部(2)と、
前記第2の接続部に前記光ファイバが接続されている場合に、前記第2のレーザモジュールから出射される前記第1の通信波長測定光又は前記第3の通信波長測定光を受けて前記第2の接続部に出射するとともに、前記第2の接続部を介して入射される前記第1の通信波長測定光又は前記第3の通信波長測定光の戻り光を受けて当該戻り光を前記第1の光カプラに出射する第2の光カプラ(15)と、
前記第2の光カプラから出射される前記第1の通信波長測定光又は前記第3の通信波長測定光、及び前記第2の光フィルタで分離された前記第1の波長の光を受けて前記第2の受光器に出射する第3の光カプラ(16)と
を備え、
前記第1の光カプラは更に、外部の光源からの光が前記第2の接続部に入射されたとき、前記第2の光カプラを経由した当該光を受けて前記第1のレーザモジュールに出射し、当該光が前記第1のレーザモジュールの端面で反射した反射光を受けて前記第2の光カプラに出射するとともに、前記第1の通信波長測定光又は前記第3の通信波長測定光の戻り光が前記第2の接続部に入射されたとき、前記第2の光カプラを経由した当該戻り光を前記第1の受光器に出射し、
前記第2の受光器は更に、前記第1のレーザモジュールの端面で反射した反射光を前記第1の光カプラ、前記第2の光カプラ、及び前記第3の光カプラを介して受けて電気信号に変換し、
前記光強度測定部は更に、前記第2の受光器又は前記第3の受光器からの前記電気信号に基づいて受光した光の光強度を測定する
ことを特徴とする光測定装置。

【請求項2】
前記第1の光フィルタと前記第2の光フィルタとの間に挿入され、当該第1の光フィルタで分離された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の通信光を受けてこれを分岐させ、分岐された光の一方を前記第2の光フィルタに出射する第4の光カプラ(17)と、
前記第1の光カプラと前記第2の光カプラとの間に挿入され、前記第1の光カプラから出射された光の一方と前記第4の光カプラから出射された光の他方を受けて前記第2の光カプラに出射するとともに、前記第2の光カプラから出射された光を受けてこれを分岐させ、分岐された光の一方を前記第1の光カプラに、分岐された光の他方を前記第4の光カプラに出射する第5の光カプラ(18)と
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。

【請求項3】
前記光ファイバが前記第1の接続部に接続され、前記複数のONUのいずれか1つが前記第2の接続部に接続されており、かつ、前記OLTと前記複数のONUのいずれか1つが通信を保った状態で、
前記OTDR測定部は、前記第2の受光器からの光強度が前記光強度測定部によって測定されない時間にのみ、前記第1のレーザモジュールによって前記光ファイバの特性を測定することを特徴とする、請求項2に記載の光測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−96926(P2013−96926A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241845(P2011−241845)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】