説明

光透過性シート材及びそれを用いたサンシェード

【課題】十分な光量を透過できるとともに高いブラインド効果を得ることができるシート材であって、高い遮光性、遮熱性と高い視認性のいずれもを兼ね備えた光透過性シート材を提供する。
【解決手段】総繊度が10〜330dtexの合成繊維を用いてカバーファクターを500〜4000にした織編物の片面に金属層を設けており、反対面は金属層を設けずしてなるシート材であり、該シート材の前記片面から前記反対面への可視光透過率が5〜50%、且つ前記反対面の可視光反射率が30%以下である光透過性シート材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内や自動車、列車等の車内に設置されるブラインドやシェードに用いられる光透過性の織編物製シート材に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラインドやシェードは、室内や車内に入射する外光を遮光するために設置されるが、遮光部材の材料としては、金属板、樹脂板、布帛といった様々な材料が用途に応じて使用されている。その中で織物や編物からなる布帛は、インテリアデザインとしても活用できることから、様々な種類のものが提案されている。例えば特許文献1では、鎖編糸と挿入糸とによってフロントとバックとの編組織が所定間隔を存置した離間状態で編成し、フロントとバックとの間に別の糸を斜め方向に掛け渡した編成部分を形成したブラインド用編生地が記載されている。また、特許文献2ではカーテンやブラインドの原料シートとして用いることが可能な遮熱性シートとして、編み織して得られた布帛表面にスパッタリングして光り反射性の透明な金属膜を形成するとともにつや出し加工を施す方法がある。更に特許文献3では、使用時の通気性を向上させることができるとともに、室内から室外の景色をより見ることができる開放感のあるアミド用ネットとして、直径が50〜100μmのフィラメントを平織した網戸用ネットも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−128680号公報
【特許文献2】特開2006−174978号公報
【特許文献3】特開2006−183382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1では、編生地を斜め方向の編成部分に対して平行方向から見るときフロントとバック間の間隔が隙間として視覚でき、編生地を正面方向又は斜め方向の編成部分にて遮蔽されるように形成されているため、車載用のサンシェードとして用いた場合、可視光遮蔽性とプライバシーを守るためには都合が良いが、車内から車外を見たときの視認性は全く考慮されておらず、車両のサイドガラス側やリヤガラス側に使用するには適していなかった。特許文献2ではスパッタ加工することで遮熱性は向上するが、可視光の透過性については考慮されておらず、カーテンを通した視認性は悪かった。更に特許文献3の織物は、網戸に使うことを目的にしているため視認性は良いが、遮光性が低いものであった。
【0005】
本発明は、十分な光量を透過できるとともに高いブラインド効果を得ると同時に高い視認性を併せ持った光透過性シート材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光透過性シート材は、自動車等の乗物に使うサンシェードやブラインドに使うことを目的とするが、まぶしい日差しを遮ったり、車外から車内を見えなくしてプライバシーを守るというサンシェードの本来の性能に加えて、運転席から外部を見通す視認性を良くするといった相反する両方の性能を満たすことが求められている。更に軽量、コンパクトに収納できる薄く、軽いものが要望されている。
本発明者らはこれら光特性を満たすための光透過性シートの構成を鋭意検討した結果、特定の範囲内の特性を有する織編物の片面にのみ金属蒸着層を施すことにより、本課題を解決するに至った。
【0007】
上記課題を解決するための手段、即ち本発明の構成は、総繊度が10〜330dtexの合成繊維を用いてカバーファクターを500〜4000にした織編物の片面に金属層を設けており、反対面は金属層を設けずしてなるシートであり該シート材の前記片面から前記反対面への可視光透過率が5〜50%、且つ前記反対面の可視光反射率が30%以下であることを特徴とする光透過性シート材である。
【0008】
光透過性シート材の金属層を設けた面の可視光反射率が20〜80%であることが好ましい。
【0009】
光透過性シート材の織編物の厚みが0.1〜2.0mm、目付が20〜200g/mであることが好ましい。
【0010】
光透過性シート材を形成する織編物が、本文中で規定する分光測色計を用いて表した明度L値が8〜30になるように着色されていることが好ましい。
【0011】
光透過性シート材の金属層が、アルミニウム、ステンレス鋼、及びチタンよりなる群から選ばれる少なくとも1つの金属からなり、物理蒸着法によって形成されていることが好ましい。
【0012】
上述の光透過性シート材からなる車載用サンシェードとして好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記構成によって、片面に設けた金属層の面で、可視光を好ましくは25から80%反射することができ、生地自身が吸収する光成分と合わせると高い遮光性と遮熱性を得ることができる。加えて一定レベルの透過性を持ちながら、シート材の反対面の可視光反射性を低く抑える事が出来るので、高い視認性を得ることができ、高い遮光性ならびに高い遮熱性と高い視認性のいずれの特性をも合せ持った光透過性シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の車外の視認性評価に用いた標準光源装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではなく、前、後記の趣旨に適合する範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0016】
本発明では総繊度10〜330dtexの合成繊維を用いることが好ましい。
合成繊維の例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維を挙げることができる。合成繊維は、単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。これらの中でも、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維が吸湿性が低いため、蒸着する上で好ましく用いられる。特にポリエステル繊維が好ましい。一方、天然繊維や再生繊維、半合成繊維を用いた場合、素材の持つ吸湿性により物理蒸着工程時に必要となる真空化が難しく、その結果、蒸着が出来なかったり、金属薄膜の接着性が不十分になったりする。しかし真空化を大きく阻害しない程度の混用は可能である。
【0017】
合成繊維の総繊度は10〜330dtexとするのが良い。好ましくは15〜250dtexである。より好ましくは20〜190dtexである。ここで総繊度が10dtex未満である場合、織編物の可視光透過性が高くなりすぎて、ブラインド効果が低下しやすい。逆に330dtexを越えると分厚い織り編み物となって、車載用のサンシェード用途に使い難くなりやすい。
【0018】
尚、繊維糸条の形態としては、フィラメント(生糸)や仮撚加工やタスラン加工等の糸加工を施した長繊維を用いることができる。また、異種の長繊維同士を複合して糸条にしてもよい。複合形態の例として、FTY(フィラメント ツイスティッド ヤーン)、シングル(ダブル)カバーリング糸、エアーカバード糸、仮撚加工と同時混繊する仮撚複合糸等が挙げられる。また、短繊維を紡績して用いてもよいし、短繊維と短繊維、又は短繊維と長繊維を複合した長複合紡績糸としてもでもよい。短繊維の複合形態の例として、混紡糸、合撚糸、コアスパンヤーン、プライヤーン等が挙げられる。これら繊維糸条の形態はサンシェードやブラインドとしての意匠性と可視光透過性の性能面から適宜選んで用いればよい。
【0019】
本発明における織編物のカバーファクターは、500〜4000、好ましくは、800〜2000、特に好ましくは800〜1800とするのが良い。尚、本発明のカバーファクターは以下の如くして求められる。
【0020】
[カバーファクター]
(1)織物:CF=(√経糸の太さ(デシテックス)+√緯糸の太さ(デシテックス))×(経密度+緯密度)
(2)経編み:CF=(√フロント筬糸の太さ(デシテックス)+√バック筬糸の太さ(デシテックス)+√柄糸もしくは挿入糸の太さ(デシテックス))×(経密度+緯密度)
(3)丸編み:CF=(2×√糸の太さ(デシテックス))×(経密度+緯密度)
*但し、丸編において複数の糸を用いる場合は、例えば、糸Aと糸Bを用いる場合、
(2×(√糸Aの太さ(デシテックス)+√糸Bの太さ(デシテックス)))×(経密度+緯密度)とする。ここでいう密度とは、2.54cmあたりの糸本数もしくは編目数を言う。
【0021】
本発明における織編物の厚みは、0.1〜2.0mmとするのがよい。より好ましくは0.2〜1.2mm、特に好ましくは0.2〜0.9mmとするのが良い。ここで織編物の厚みが0.1mmを下回る場合にあっては、薄くなりすぎて製品にした時の取り扱い性が悪く、一方2.0mmを超える場合にあっては、本発明で意図する薄さの生地の範疇から外れることになるので好ましくない。
【0022】
本発明における織編物の目付は、20〜200g/mとするのがよい。より好ましくは30〜150g/mとするのが良い。ここで織編物の目付が20g/mを下回る場合にあっては、密度が荒くなって隙間が多くなったり、糸が細すぎて透けやすくなるので好ましくなく、一方200g/mを超える場合にあっては、生地が分厚くなり本発明で意図する軽量でコンパクトな製品が得られなくなるので好ましくない。
【0023】
本発明のシート材を形成する織編物は、上記カバーファクター、厚み、目付を満たしておれば織物組織、編物組織は限定されるものではない。織物の場合、平織り、綾織、朱子織やこれらを組合わせたジャガード組織など一般的な織物組織を適宜選択することができる。強撚糸にしてジョーゼットのようなシボ織物にしても、紗や絽といったからみ組織としても構わない。
編物の場合、たて編み、よこ編み(丸編)、レース等の何れでもよい。よこ編みの場合、丸編地の天竺組織、天竺リバーシブル組織、フライス組織、インターロック組織、リバーシブル組織、その他変化組織等、特に限定されることなく使用できる。
経編みの場合は、トリコット編、ラッシェル編、ミラニーズ編等、いずれの経編でも良い。組織としてハーフ組織、バックハーフ組織、クインズコード組織、サテン組織、サテンネット組織、パワーネット組織、トリコネット組織、その他変化組織等を用いることができる。編地に細かな隙間を作って可視光線の透過性をコントロールしやすいことや、経緯の伸縮性のバランスからパワーネット組織等の組織が好ましく用いられる。
【0024】
本発明において、シート材の金属層を設けた面から金属層を設けていない面側への可視光透過率を5〜50%にコントロールする方法としては、織編物の密度でコントロールする方法と、柄により組織に隙間を空ける方法を使うことができるし、組合わせても良い。密度でコントロールする場合は、透過率を所望の範囲になるように、経密度(ウエール数)、緯密度(コース)を適宜設定すればよい。この時、繊度の太い糸と細い糸を交互に用いる等、混合して用いることで細糸を使ったところに繊度差による隙間ができることを利用して透過率をコントロールしても良い。また、空羽にしたり、易溶性繊維を混用して織り上げてから易溶性繊維のみ溶解除去する等の方法で隙間を空けても良い。
【0025】
前記した柄によって組織に隙間を空ける方法として、丸編であれば、ニットやタックにより隙間をつくる方法がある。経編では、鎖編みと他の振り組織の混用等によりメッシュやネット状にするとよい。またオパール加工等の印捺手法により、柄部を溶解又は、残したりすることも可能である。しかし、あまり大きな柄で隙間を空けると、地部分が視認性に悪影響する場合があるので柄の選定には注意が必要である。また本発明の織編物は伸縮性を高めるために、弾性糸を織(編)込んだり、挿入してもよい。弾性糸は、スパンデックスや複合紡糸法による潜在捲縮糸であったり、架橋型ポリオレフィン等が挙げられる。弾性糸とその他の繊維を混用した複合繊維を用いてもよい。
【0026】
本発明の織編物の金属層を有しない面のL値は、8〜30とするが好ましい。L値をこの範囲にコントロールすると、金属層を設けた面と反対側の織編み物の面から通して見たときの視認性をいっそう高くすることができる。ここでL値が30より大きいと、この面の可視光反射率が増加して、視認性が低下する。L値は低いほどよいが、汎用的な合成繊維を用いて8より低くすることは技術的に難しい。好ましくは、25以下であり、より好ましくは20以下である。
【0027】
上記L値の範囲とするために、糸染めや織編物にした後の後染めで中濃色以上濃度で染めてもよい。また、あらかじめ糸に色材を練り込んで原着糸として着色した糸を用いてもよい。
【0028】
合成繊維にカーボンブラック等の色材を練り込んで原着糸として、L値を下げることができる。カーボンブラックを練り込んで黒原着糸とする場合のカーボンブラックの含有量は1.0質量%以上が望ましいが、製糸性及び高次加工工程通過性を安定させる観点から、5.0質量%以下が好ましい。より好ましい含有量は1.5〜4.0質量%である。
【0029】
本発明において、織物あるいは編物を基材として作製した後、該基材の片面のみに金属層を形成する必要がある。前記金属層を形成するための金属としては、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、金、銀、銅、スズ、プラチナ、クロム、ニッケル或はこれらの合金など、可視光線をよく反射させる金属があげられる。好ましくは金属光沢をもつ金属層を形成して波長650nmの可視光における金属の反射率が90%以上の金属である。より好ましくは可視光全波長で反射率が高いものがよく、波長450nmおよび650nmともに反射率90%以上の金属である。より好ましい金属の例として、アルミニウム、チタン、銀、プラチナ、ステンレス鋼が挙げられる。腐食性やコストの面から更に好ましくはアルミニウム、チタン、ステンレス鋼である。波長650nmの可視光の反射率が90%未満では、本発明のように車内の視認性を得るためにシートのカバーファクターを下げるとシートの遮光性が低下してしまう。金属層の反射率は、例えば物理データ辞典(朝倉書店、2006年)等に挙げられている。
【0030】
これらの金属は単独使用しても良く、2種以上の組み合わせにより使用することもできる。尚、物理蒸着法を用いる場合には、コスト、安全性、蒸着加工の安易性等を考慮すると、アルミニウム単独もしくはアルミニウムとその他の金属を組み合わせた合金が好ましい。さらに合金とする場合は金属層の厚み方向に合金組成比を変更した傾斜組織とすることもできる。
【0031】
本発明において、前記金属層は、好ましくは物理蒸着法により形成される。物理蒸着法を採用することによりシートが硬くなったり、分厚くなったりするのを抑えることができる。また、糸間の隙間を塞いだり、狭めたりしないので光透過性を低下させずに金属層をなどの機能を損なうことなく、効率よく金属層を形成する事ができる。前記物理蒸着法としては、真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着などの蒸発系の方法と、スパッタリングによる方法が挙げられる。これらの中でも、生産効率の良さから、蒸発系の方法がより好ましい。
【0032】
物理蒸着法で形成した金属層は層の厚みをナノレベルまで薄くできるために本発明のシート材の光透過性を維持するのに好適である。繊維はフィルムのような平坦な面状を形成しないので、実際の層厚を測定することは難しいが、平均的にみて10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、500nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。厚みが薄くなり過ぎると、赤外線の反射性能およびそれによる保温効果、実使用における耐久性が不十分になる場合がある。また、厚みが厚くなり過ぎると、基材不織布の風合いや通気度の悪化につながり、なおかつ金属の変色等の現象も起こりやすくなる。尚、金属層の厚みは、織編物の前後にポリエステル・フィルムを連結して蒸着した後、マクベス社製マクベス濃度計TR−927を用いて、透過法で蒸着したフィルムを測定し、その値からOD(オプティカルデンシティ)値を換算して蒸着品の金属層の厚みを推定できる。
【0033】
本発明では無電解メッキ法などのメッキ処理で金属層を形成しても構わないが、メッキ法だと片面のみの処理に工夫がいる。そして、基材内部にも金属の一部が侵入した厚い金属膜が形成されて光の反射および透過特性が低下しやすい傾向にある。
【0034】
本発明の光透過性シート材の金属層を設けた面の可視光透過率は5〜50%、好ましくは7〜40%、更に好ましくは9〜30%である。可視光透過率はサンシェードの基本性能としての可視光を遮蔽する効果を示す指標であり、可視光透過率が50%を超えるとサンシェードとしての効果が不満足なものとなる。5%未満では、サンシェードとして使えるが、車外の視認性が得られ難い。
【0035】
また、本発明の光透過性シート材の金属層を設けていない面の可視光反射率は30%以下が必要であり、より好ましくは20%以下とするのが良い。その理由としては、例えば車の中で使用した場合、車内側での反射が少なくなると車外の景色の視認性がいっそう向上することになる。
【0036】
光透過性シートの金属層を設けた面の可視光反射率は、好ましくは20〜80%、さらに好ましくは25〜70%とするのが良い。視認性の高いサンシェードとするためには従来のサンシェードに比べて透け性の高いシート構造にする必要があるが、可視光反射率をこの範囲にすることで車外から車内を見えにくくする効果を維持することができる。可視光反射率が20%未満になると車内が見えやすくなる。一方80%を超える場合にあっては、使用する織編物の透け性が低いものとなってしまい、車外の視認性が低下する傾向にある。
【実施例】
【0037】
以下に本発明を実施例に基づいて説明する。なお、実施例において用いた測定方法は下記のとおりである。
【0038】
(織編物の明度L値)
分光測色計(ミノルタ社製:CM−3700)を用いて、織編物を8枚重ねにして、L値を測定した。測定条件として、L値光源はD65、視野角度10度とした。
【0039】
(可視光反射率)
分光光度計(島津 UV−3100PC)により、380〜780nmの波長域の反射率を測定した。光度計に取付けた積分球付属装置はISR−3100積分球内径60mmφ、標準白板は硫酸バリウムを使用した。積分球の反射率測定用の取付け位置に、シートの測定面を分光光度計の光源側に向けて取付けて測定を行った。同じ試料からサンプルを3個作成し、3個の測定データの平均値で評価した。
【0040】
(可視光透過率)
分光光度計(島津 UV−3100PC)により、380nm〜780nmの波長域の透過率を測定した。光度計に取付けた積分球付属装置はISR−3100積分球内径60mmφ、標準白板は硫酸バリウムを使用した。試料を積分球付属のサンプルホルダーに取付けるために、タテ6cm×ヨコ3cmの長方形の中央にタテ2.5cm×ヨコ1cmの長方形スリットを切り抜いた厚紙を2枚用意した。シートサンプルをタテ6cm×ヨコ3cmに切り取って、用意した2枚の厚紙に挟み込んでからサンプルホルダーに取り付けた。そのサンプルホルダーを積分球の入射光側の透過率測定用の取付け位置に、シートの測定面を分光光度計の光源側に向けて取付けて測定を行った。尚、このスリットを切り抜いた厚紙を使う目的は、サンプルにシワがよって測定値の精度低下を防ぐためである。同じ試料からサンプルを3個作成し、3個の測定データの平均値で評価した。
【0041】
(車外および車内の視認性評価)
車外および車内の視認性の指標として、下記のような方法で視認性(像鮮明性)を評価した。
タテ12cm×ヨコ12cmの正方形の中央にタテ10cm×ヨコ10cmの長方形スリットを切り抜いた厚紙を2枚用意した。シートサンプルを12cm×12cmの大きさに採取した。用意した2枚の厚紙にシワやたるみがでないようにシートを挟み込み、両面テープで固定して測定サンプルとした。図1に標準光源装置の概略図を示す。
【0042】
標準光源装置の奥壁面中央部にJIS染色堅牢度試験用グレースケールを立て掛け、グレースケール面の垂直方向前面20cmの位置に測定試料を固定し、測定サンプルより更に20cm前面からグレースケールをのぞき込む。グレースケールの白(黒)/グレーの境界線が視認できるかどうかを視認性の評価とした。視認できる最低のグレースケール級数で級判定する。本発明では車外視認性は3級以上、車内視認性は2級以下を夫々視認性が良いと判断する。
尚、車内視認性を評価するときは、測定試料の金属層を有する面を測定者側に向ける。 またグレースケールは変退色用を用いる。車内は見えにくい程よいので、良好:1級>5級:不良となる。車外視認性を評価するときは、金属層を有する面をグレースケールに向ける。グレースケールは汚染用を用いる。車外は見えやすい程よいので、良好:5級>1級:不良となる。
標準光源装置:Leslie Hubble Limited社製 Verivide CAC60 (Apparatus for Standard Visual Assessment of Collour by Reflectance & Transmission)を使用。
光源:Artificial Daylight BS950PEL、F20T12/D65(Verivide製)
【0043】
(感覚評価)
実施例および比較例のシートを使って車載用サンシェードを作成した。シートをタテ50cm×ヨコ50cmの大きさに採取して、四辺を黒色の綿織物(ポプリン)を巾2cmのヘムとして縫いつけた。また成形性を得るために、針金を四辺に合わせてヘムで包むようにして、ヘムと一緒にシートに取付けた。最後に縫製したシートの四隅に吸盤を取付けて、ガラス面に取付けられるようにした。このサンシェードを用いて、晴天の正午にトヨタ製プリウス(ZVW30)の助手席側面のウインドウガラスに取付けて、運転席からみた遮光性、車外からの車内視認性、および車内から車外視認性を○△×の3段階評価を行った。
遮光性 :よく遮光する○>すこし悪い△>悪い×。
車内視認性:車内が見え難い○>少し見える△>車内がよく見える×。
車外視認性:車外がよく見える○>すこし見える△>見えない×。
【0044】
(実施例1)
[コード天竺]
78dtex/216フィラメントの丸断面のセミダルポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)糸(東洋紡績社製、「シルフローラX(R)」と、33dtex/12フィラメントの丸断面のセミダルポリエステル糸(東洋紡績社製)を口径34インチ、28ゲージのシングル丸編機(福原製)を用いて一本交互にコード天竺編みで製編した。この編地を開反後、液流染色機(日阪製作所製NSタイプ)を用いて常法にて精練を実施した後、脱水・開反してヒラノテクシード製ピンテンターにて190℃×1分間プレセット処理を実施した。その後、同じ液流染色機を用いて下記の処方にてグレーに染色し、洗浄をおこなった。
<染色処方>
ブラック染料(ダイアニックスブラックBG−FS200)1.5%owf
ディスパーTL 1.0g/L
60%酢酸 0.5g/L
浴比=1:13
染色温度135℃×45分
<還元洗浄>
ハイドロサルファイト2g/L
ソーダ灰 2g/L
浴比=1:13
処理温度80℃×20分処理後、水洗・乾燥した。
その後、同じ液流染色機を用いて下記処方にてブラックに染色・洗浄をおこなった。最後にピンテンターで170℃×1分、ファイナルセットを行った。この編地を真空蒸着機にセッティングし、真空環境下で編地表側の面に金属アルミニウムの蒸着を行って可視光透過性シートを得た。(真空度3.0×10−4Torr、走行速度 100m/分)基材の前後に付けたポリエステル系リードフィルムの蒸着後のOD(オプティカルデンシティ)値をマクベス社製マクベス濃度計TR−927を用いて、透過法で測定しその値から換算して蒸着品の金属アルミニウムの積層厚みは約60nmと推定した。このシートを評価した結果を表1に示す。
【0045】
(実施例2)
[平織り]
平均二次粒子径が0.05〜0.50μmのカーボンブラックを含有量が3.0質量%で練り込んだ、黒原着ポリエステルマルチフィラメント(丸断面、110dtex、48フィラメント)及び黒原着ポリエステルマルチフィラメント(丸断面、110dtex、24フィラメント)を村田製作所製ダブルツイスターにてそれぞれ撚数2500T/mになるように加撚して、S撚及びZ撚の強撚糸を作製した。この黒原着マルチフィラメント1強撚糸を経糸に使用し、緯糸に黒原着マルチフィラメント1強撚糸と黒原着マルチフィラメント2強撚糸を2本交互に使用して(それぞれS撚糸及びZ撚糸を2本交互に使用)、経密度95本/インチ及び緯密度80本/インチで平織物を製織した。次に、通常のワッシャーによるリラックス加工及び糊抜・精練をおこなった。ピンテンターを用いて190℃で熱セットした。セット後の織物密度は経て110本/インチ、緯88本/インチであった。この織物に実施例1と同じ条件でアルミニウムを蒸着して可視光透過性シートを得た。このシートを評価した結果を表1に示す。
【0046】
(実施例3)
[パワーネット]
フロントおさ糸として、84dtex/24フィラメントの丸断面のセミダルポリエステル糸(東洋紡績社製、東洋紡ポリエステルE84T24f−72B)をハーフセットで配置し、バックおさ糸として、155dtexのポリエーテル系ポリウレタン糸(東洋紡績社製、エスパ(登録商標):クリアタイプ)をハーフセットで配置し、28ゲージのラッセル編み機(カールマイヤー社製)を使用して、ポリウレタン糸の整経ドラフトを1.6倍とし、下記条件でパワーネット組織に編成した。ポリエステル糸とポリウレタン糸の混率は83%:17%であった。
編成条件
フロントおさ1 10/12/21/23/21/12 ランナー115cm/R
フロントおさ2 23/21/12/10/12/21 ランナー115cm/R
バックおさ1 11/00/11/00/11/00 ランナー8cm/R
バックおさ2 00/11/00/11/00/11 ランナー8cm/R
次に、前記編地を、連続精練(60℃〜95℃×60秒)−プレセット(190℃×30秒)−染色(液流:分散染色135℃×30分)−仕上げセット(160℃×30秒)の条件で加工した。実施例1と同じ分散染料を5%owfの濃度に変更して黒色に染色した。この編物に実施例1と同じ条件でアルミニウムを蒸着して可視光透過性シートを得た。このシートを評価した結果を表1に示す。
【0047】
(比較例1)
実施例1のコード天竺のファイナルセット上がりをアルミ蒸着せず評価に供した。結果を表1に示す。
【0048】
(比較例2)
実施例1のコード天竺をブラックに染色せずファイナルセットしたものを評価に供した。結果を表1に示す。
【0049】
(比較例3)
ポリエステル マルチフィラメント(セミダル、丸断面、56dtex、108フィラメント)の1ヒーター仮撚加工糸を経糸及び緯糸に用い、経密度を204本/2.54cmに、緯密度を90本/2.54cmに設定し、石目組織(経糸2本引き揃えで配列)で製織した。
得られた生地を常法に従って、オープンソーパーを用いて精練した後、ピンテンターを用いて190℃×30秒でプレセットし、液流染色機(日阪製作所製:サーキュラーNS)を用いて、実施例3と同処方にて黒に染色した後、180℃×30秒で中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度150℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2)、速度20m/分)を施した後、柔軟仕上げ加工を行って、密度が経方向で204本/2.54cm、緯方向で94本/2.54cmであり、カバーファクターが2230で、目付けが85g/m2であるシートを得た。このシートを評価した結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
(評価の考察)
上記表1の評価結果から見られるように、本発明の実施例1〜3は、車外視認性は3−4級〜4−5級、車内視認性は1級〜1−2級と良好な結果が得られた。感覚評価を行った遮光性も良好であった。一方、比較例1は、編地に染色仕立てをしてL値を12としたので、非金属面の可視光反射率を9%と低く抑えられたが、シート材の片面に金属層が設けられておらず、車内視認性は4級であり、本発明との格差は大きく出た。また、比較例2の場合は、編地に染色仕立てを行わずして、さらに片面の金属層も設けていないので非金属面の可視光反射率は45.5%と高く、車外視認性は2級であり、本発明との格差は大きく出た。さらに、遮光性評価、車外視認性評価もよくなかった。比較例3は遮光性が非常によいが、車内外ともに全く視認できないものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の光透過性シート材は高い遮光性・遮熱性と高い視認性があるため、自動車のサンシェードとして使えば運転者が車外の安全性を確認したり、ドアの開け閉め等の安全確認を容易にすることができる。また列車等の客室に使うと、暑い日光を遮って快適な環境で車外の風景を楽しむこともできる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
総繊度が10〜330dtexの合成繊維を用いてカバーファクターを500〜4000にした織編物の片面に金属層を設けており、反対面は金属層を設けずしてなるシート材であり、該シート材の前記片面から前記反対面への可視光透過率が5〜50%、且つ前記反対面の可視光反射率が30%以下であることを特徴とする光透過性シート材。
【請求項2】
前記片面の可視光反射率が20〜80%である請求項1に記載の光透過性シート材。
【請求項3】
織編物の厚みが0.1〜2.0mm、目付が20〜200g/mである請求項1または2に記載の光透過性シート材。
【請求項4】
織編物が、D65光源により視野角度10度で測色したときの明度L値が8〜30になるように着色されている請求項1〜3のいずれかにに記載の光透過性シート材。
【請求項5】
金属層が、アルミニウム、ステンレス鋼、及びチタンよりなる群から選ばれる少なくとも1つの金属からなり、物理蒸着法によって形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の光透過性シート材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光透過性シート材からなり、金属層を設けた面を車外に向けて設置するように使用されることを特徴とする車載用サンシェード。











【図1】
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【公開番号】特開2012−232438(P2012−232438A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101193(P2011−101193)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508179545)東洋紡スペシャルティズトレーディング株式会社 (51)
【Fターム(参考)】