免疫賦活化促進剤
【課題】 免疫賦活化促進剤を提供する。
【解決手段】 L-乳酸等の低分子量モノカルボン酸化合物を有効成分として含有する免疫賦活化促進剤は、TLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニストによる免疫賦活化作用、詳しくはIL-23、IL-17分泌促進作用を増強し、癌免疫療法剤や、日和見感染症等の微生物感染症治療薬・予防薬として有用である。
【解決手段】 L-乳酸等の低分子量モノカルボン酸化合物を有効成分として含有する免疫賦活化促進剤は、TLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニストによる免疫賦活化作用、詳しくはIL-23、IL-17分泌促進作用を増強し、癌免疫療法剤や、日和見感染症等の微生物感染症治療薬・予防薬として有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活化促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の免疫療法として、LAK(Lymphokine-activated killer cells)療法を代表とするエフェクター細胞を利用した治療が盛んに行われてきたが、細菌やウイルスの成分をアゴニストとするToll様受容体(Toll-like Receptor;TLR)の発見により、樹状細胞や単球/マクロファージなどの抗原提示細胞をターゲットにした癌の免疫療法が注目を浴びている。すなわち、TLRは、免疫賦活化作用を有する細菌由来成分をアゴニストとしており、TLRアゴニストは非特異的な自然免疫賦活療法剤として、癌の種類に限定されない非特異的な癌免疫療法として、又は癌抗原ペプチド(癌ワクチン)と併用するアジュバントとして用いることができる。
具体的にはToll様受容体2(TLR2)アゴニストとしてバクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又は細胞壁骨格成分(CWS)等が挙げられ、Toll様受容体4(TLR4)アゴニストとしてリポ多糖(LPS)等が挙げられる(非特許文献1を参照)。中でも、ピシバニール(登録商標)(OK-432)やバチルス カルメット−ゲラン(Bacillus calmette-guerin cell wall skeleton;BCG-CWS)等が臨床で使われている。
【0003】
しかしながら、TLRアゴニストによる免疫賦活化反応には、癌の種類や人により差がある。例えば、BCG-CWSを皮内投与した場合、投与部位に生じる皮膚反応(びらん)もしくは血中インターフェロンγの上昇反応等の出現は、肺癌患者において、しばしば遅延することが知られている。そこで、TLRアゴニストの免疫賦活化作用を増強する治療方法が求められていた。
また、TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニストは、単球、マクロファージ、樹状細胞などに働き、抗原提示能の増強、CD80やCD86等の共刺激分子の発現上昇、さまざまなサイトカインの分泌を誘導し、T細胞を分化活性化する事により、免疫賦活することが知られている。また、松本らは、肺癌患者の末梢血をBCG-CWSで刺激すると、IL-12/23p40サブユニットの過剰分泌が認められることを報告している(非特許文献2を参照)。
一方、L-乳酸が、損傷治癒の際のコラーゲンの産生や血管新生に関与していること(非特許文献3を参照)や、樹状細胞表面のCD1分子の発現を低下させること、さらに、樹状細胞にLPS刺激を加えたときのIL-12産生を抑制すること(非特許文献4を参照)が報告されている。また、乳酸ナトリウムがU937組織球(histiocyte)に働き、LPSにより誘導されるマトリックスメタロプロテアーゼ−1(matrix metalloproteinase-1)、IL-6及びIL-1の分泌が増強されること、及び当該活性はL-乳酸では見られないこと(非特許文献5を参照)が報告されている。
しかしながら、L-乳酸が、TLR2アゴニスト又はTLR4アゴニストの免疫賦活活性を増強するかどうかについては、全く知られていなかった。
【非特許文献1】S. Tsujiら、Infect Immun. Vol. 68 No.12 p6883-90, 2000
【非特許文献2】M. Matsumotoら、Int. Immunopharmacol. Vol.1 No.8 p1559-69, 2001
【非特許文献3】Odilo Traboldら、Wound Repair and Regeneration vol.11、No.6、p504-509, 2003
【非特許文献4】Eva Gottfriedら、Blood Vol. 107, No.5, 2013-2021, 2006
【非特許文献5】Alena Nereikaら、Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. vol. 289, E534-542, 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、免疫賦活化促進剤、詳しくはTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニストの免疫賦活化作用を増強する薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、BCG-CWSに対する癌患者の反応性の違いが、癌細胞中に含まれる物質の生理作用に起因するのではないかと考え、末梢血単球細胞(PBMC)に癌細胞由来の培養上清を添加し、BCG-CWS刺激に対する応答性を調べた。その結果、肺癌患者から樹立された細胞株:CADO−LC10細胞の培養上清の低分子量の画分が、IL-23p19の発現を転写レベル(mRNA量)において増強することがわかった。更に鋭意検討を重ねた結果、肺癌の培養上清から分泌されるIL-23p19発現増強活性を有する物質が、L−乳酸(L-lactic acid)等の低分子量モノカルボン酸化合物であることが明らかになった。すなわち、BCG-CWSの共存下でL-乳酸は、IL-23の分泌を上昇させ、T細胞からのIL-17の分泌も上昇させることが明らかになった。この結果は、L−乳酸の作用により、BCG-CWSの効果を増強することを示している。従って、L−乳酸等の低分子量モノカルボン酸化合物とBCG-CWSを併用することが、効果的な免疫賦活療法となり得ることがわかった。
本発明は上記の知見をもとに、完成するに至ったものである。
【0006】
即ち本発明は、
〔1〕 低分子量モノカルボン酸化合物を有効成分として含有する、免疫賦活化促進剤;
〔2〕 低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、請求項1に記載の免疫賦活化促進剤;
〔3〕 IL-23及び/又はIL-17分泌促進剤である、〔1〕又は〔2〕に記載の免疫賦活化促進剤;
〔4〕 免疫賦活化がTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニストによるものである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤;
〔5〕 TLR2アゴニストがバクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、〔4〕に記載の免疫賦活化促進剤;
〔6〕 免疫賦活化が癌抗原によるものである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤;
〔7〕 免疫賦活化が微生物又は微生物ワクチンによるものである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤;
〔8〕 癌免疫療法剤である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤;
〔9〕 微生物感染症治療薬又は予防薬である、〔1〕〜〔5〕及び〔7〕のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤;
〔10〕 微生物感染症が、日和見感染症である、〔9〕に記載の免疫賦活化促進剤;
〔11〕 日和見感染症がクレブシエラ肺炎、クリプトコッカス感染症、結核、トキソプラズマ感染症、カンジダ感染症である、〔10〕に記載の免疫賦活化促進剤;
〔12〕 低分子量モノカルボン酸を有効成分として含有する、TLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤;
〔13〕 TLR2アゴニストがバクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、〔12〕に記載のTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤;
〔14〕 低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、〔12〕又は〔13〕に記載のTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤;
〔15〕 TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニスト、及び低分子量モノカルボン酸化合物を含有する、癌免疫療法剤;
〔16〕 TLR2アゴニストが、バクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、〔15〕に記載の癌免疫療法剤;
〔17〕 低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、D-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、〔15〕又は〔16〕に記載の癌免疫療法剤;
〔18〕 更に抗原を含有してなる、〔15〕〜〔17〕のいずれかに記載の癌免疫療法剤;
〔19〕 更にGM−CSFを含有してなる、〔15〕〜〔17〕のいずれかに記載の癌免疫療法剤;
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、L−乳酸等の低分子量モノカルボン酸化合物を有効成分とする免疫賦活化促進剤、詳しくはTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニストの免疫賦活化作用を増強する薬剤を提供することが可能になった。本発明により、BCG−CWS等を用いる癌免疫療法において、BCG−CWSの活性を増強させることが可能になった。更に本発明により、BCG−CWSに対する反応性が乏しい患者において有効な治療方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書において、低分子量モノカルボン酸化合物としては、1個のカルボキシル基を有する、分子量200以下、好ましくは分子量60〜100の低分子量モノカルボン酸化合物が挙げられる。好ましくは、1個のカルボキシル基を有し、水酸基もしくはメルカプト基で置換されていてもよい炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5の低分子量モノカルボン酸化合物が挙げられる。具体的には、低分子量モノカルボン酸化合物として、酢酸、乳酸又はチオグリコール酸を例示することができる。
【0009】
本明細書において、TLR2アゴニストは、TLR2と相互作用し、TLR2のシグナル伝達を活性化する物質であれば特に限定は無く、具体的には、バクテリアリポペプチド(B. Hendersonら、Microbiol. Rev. Vol 60, No. 2, p316-341, 1996を参照)、ペプチドグリカン(K. Takedaら、Annu. Rev. Immunol. Vol. 21, p335-76, 2003を参照)又はBCG-CWS(S. Tsujiら、Infect Immun. Vol. 68 No.12 p6883-90, 2000を参照)を挙げることができる。ここで「TLR2のシグナル伝達を活性化する」とは、TLR2の細胞内TIRドメインにTIRAP (TIR-associated protein) を介して会合したMyD88にIRAK (IL-1R Associated Kinase)が結合し、リン酸化によりIRAKが活性化し、活性化したIRAKはTRAF6と会合し、TRAF6によりJNKを活性化しAP-1を活性化すること、またはTRAF6はIKKを活性化しIκBの分解を誘導してNFκBを活性化することを表す。
また、TLR4アゴニストは、TLR4と相互作用し、TLR4のシグナル伝達を活性化する物質であれば特に限定は無く、具体的には、LPSを挙げることができる。ここで「TLR4のシグナル伝達を活性化する」とは、TLR4の細胞内TIRドメインにTIRAPを介して会合したMyD88にIRAK (IL-1R Associated Kinase)が結合し、リン酸化によりIRAKが活性化、およびTLR4に会合したTIRAPの活性化によりIRAKが活性化し、活性化したIRAKはTRAF6と会合し、TRAF6によりJNKを活性化しAP-1を活性化すること、またはTRAF6がIKKを活性化しIκBの分解を誘導してNFκBを活性化することを表す。
【0010】
本明細書において、「免疫賦活化」とは、NF-κB、AP-1、IRFを活性化することにより様々なサイトカイン、ケモカインを誘導すること、免疫反応を調節する抗原提示細胞において抗原提示分子や共刺激分子の発現を増加させることなどにより、免疫が活性化した状態が誘導されることを表す。詳しくは、IL-23及び/又はIL-17の分泌促進活性を挙げることができる。
本明細書において「免疫賦活化促進剤」とは、TLR2アゴニスト又はTLR4アゴニスト等の免疫賦活化作用を増強する薬剤を意味する。
【0011】
本発明の免疫賦活化促進剤は、TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニスト、または、癌抗原蛋白質もしくは癌抗原ペプチドと共に投与して、癌免疫療法剤として用いることができる。あるいは、ウイルスもしくは細菌ワクチンと共に投与して、ウイルスもしくは細菌感染症治療/予防剤(ワクチン増強剤)として用いることができる。
癌免疫療法剤として用いる場合、癌の種類には特に限定は無く、急性白血病、慢性白血病、悪性リンパ腫、脳腫瘍、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、胆道癌 、腎臓癌、膀胱癌、喉頭癌 、咽頭癌 、舌癌 、胃癌、食道癌 、結腸・直腸癌、大腸癌、乳癌 、子宮癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌 、脳腫瘍、多発性骨髄腫、骨・軟部腫瘍、皮膚癌等が挙げられる。好ましくは、肺癌、膀胱癌などが挙げられる。
微生物感染症としては、ウイルス、細菌、真菌、原虫等の微生物感染症が挙げられる。本発明における微生物感染症としては、日和見感染症と呼ばれる、癌や後天性免疫不全症候群 (AIDS)に罹患した患者や加齢等に伴うその他の後天性の免疫不全状態の患者におこる感染症等が挙げられる。
具体的なウイルス感染症として、具体的には、サイトメガロウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、呼吸器多核体ウイルス感染症などが挙げられる。
細菌感染症として、具体的には、クレブシエラ肺炎、結核等が挙げられる。
真菌感染症として、具体的には、クリプトコッカス感染症、カンジダ等が挙げられる。
原虫感染症として、具体的には、トキソプラズマ感染症等が挙げられる。
【0012】
本発明の免疫賦活化促進剤を医薬として用いる場合、非経口的または経口的に投与することができる。
経口投与用の製剤としては、例えば、カプセル剤、散剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤等を挙げることができ、非経口投与用の製剤としては、例えば、注射剤、点滴剤、点眼剤、直腸内投与剤、吸入剤、噴霧剤(スプレー剤、エアゾル剤、または吸入器もしくは通気器用カートリッジ噴霧用の水剤/懸濁剤等)、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点鼻剤、点耳剤、テープ剤、経皮パッチ製剤、湿布剤、外用散剤等を挙げることができる。これらの製剤は、従来公知の技術を用いて調製され、許容される通常の担体、賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、崩壊剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤、界面活性剤、防腐剤、香料等を含有することができ、2種以上の製剤用添加物を適宜用いることができる。
経口投与用製剤のうち、乳剤及びシロップ剤等の液体製剤は、水;ショ糖、ソルビット、果糖等の糖類;ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類;p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤;ストロベリーフレーバー、ペパーミントフレーバー等のフレーバー類等の製剤用添加物を用いて製造することができる。カプセル剤、錠剤、散剤及び顆粒剤等の固形製剤は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニット賦形剤;デンプン、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤;ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤;脂肪酸エステル等の界面活性剤;グリセリンなどの可塑剤等を用いて製造することができる。
医薬組成物中における本発明の免疫賦活化促進剤の含有量は、特に限定されない。例えば非経口剤の場合、1回の投与当たり、通常0.01mg〜1000mg、好ましくは0.1mg〜300mg、より好ましくは1mg〜150mgとなるように製剤化されていれば良い。
【0013】
非経口投与用製剤のうち、注射剤、点滴剤等の形態の液体製剤は、好ましくは滅菌された等張の液体製剤として調製できる。例えば、注射剤は塩溶液、ブドウ糖溶液、又は塩水とブドウ糖溶液との混合物からなる水性媒体を用いて調製することができる。直腸内投与剤は例えばカカオ脂等の担体を用いて、通常は坐剤の形態として調製することができる。
尚、本発明の免疫賦活化促進剤は、それ自身が賦形剤としての役割を兼ねていてもよい。
【0014】
本発明の免疫賦活化促進剤の投与方法としては、経口投与および非経口投与のいずれでも良いが、非経口投与が好ましい。非経口投与の場合、皮下注射、持続皮下注射、皮内注射、静脈注射、動脈注射、筋肉注射、腹腔内投与、経皮投与、経粘膜投与、経鼻投与等が挙げられる。好ましくは、皮内注射が挙げられる。
本発明の免疫賦活化促進剤は、通常TLR2アゴニストやTLR4アゴニスト等の免疫賦活化剤とともに用いられるが、各成分は、それぞれ同じ投与方法(投与ルート)で投与されても異なる投与方法(投与ルート)で投与されても良い。投与回数は特に限定されないが、通常、数日ないし数ヶ月に1回投与、あるいは数日ないし数ヶ月間隔の休薬期間を取る連日投与を行う。
TLR2アゴニストとしては、細菌細胞壁骨格成分(細菌−CWS)、バクテリアリポペプチド、又はペプチドグリカンが挙げられる。これらの由来菌には特に限定はないが、グラム陽性棹菌のミコバクテリウム属細菌、ノカルディア属細菌、コリネバクテリウム属細菌、ロドコッカス属細菌、ゴルドナ属細菌などが挙げられる。「ミコバクテリウム属細菌」とは、抗酸菌であるミコバクテリウム属の細菌を表し、具体的には、結核菌群細菌のMycobacterium tuberculosis(結核菌)、Mycobacterium bovis[ウシ型結核菌、BCG(カルメット・ゲラン菌;Bacille Calmette-Guerin)を含む]、Mycobacterium africanum(アフリカ菌)、Mycobacterium microti(ネズミ型結核菌)があり、この他、Mycobacterium leprae(ライ菌)、非結核性抗酸菌群であるMycobacterium kansasii、Mycobacterium avium、Mycobacterium phlei等が挙げられる。中でも好ましいものとして、ミコバクテリウム属ウシ型結核菌の一種であるBCG菌およびノカルディア族細菌の一種であるノカルディア・ルブラを挙げることができる。
また、TLR4アゴニストとしては、LPS、モノホスホリルリピドA、熱ショック蛋白質(HSP)を挙げることができる。LPSの由来菌としては、特に限定は無くグラム陰性菌が挙げられる。具体的には、Escherichia coli(大腸菌)、Salmonella Minnesota (サルモネラ菌)等を挙げることができる。HSPの由来としては、特に限定は無く哺乳動物やヘリコバクター菌、ミコバクテリウム属細菌等が挙げられる。具体的には、哺乳類HSP70、HSP22もしくはHSP60、ヘリコバクターHSP60、又はミコバクテリアHSP65が挙げられる。
例えば、BCG-CWSとともに用いられる場合には、BCG−CWS、5〜200μgずつを1〜4週間に1回の頻度で4回以上投与されることが好ましい。投与量、投与回数、投与頻度は、患者の生体反応に応じて適宜調整される。具体的には、たとえば、BCG−CWS(5〜200μg)及び本発明の免疫賦活化促進剤を含む医薬組成物を、1〜4週に1回の頻度で4回以上、投与することができる。
【0015】
本発明の免疫賦活化促進剤は、以下のいずれの形態においても用いることができる:
(A)TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニストである免疫賦活化剤と混合して得られる配合剤(合剤)の形態。
(B)前記各組み合わせに係る物質を個別に含有する薬剤を含むキットの形態。
(C)前記各組み合わせに係る物質を個別に含有する薬剤を、同時に、別々に、または経時的に投与する併用の形態。
【0016】
本発明の免疫賦活化促進剤が配合剤(合剤)の場合、BCG-CWS等の免疫賦活化剤との配合比は特に制限されるものではない。1回の投与当たりに、各有効成分が前記投与量で投与されるように含有されていれば良い。当該配合剤は、配合剤として製剤化されたものであっても良く、また患者への投与時に用時調製(混合)されても良い。
【0017】
本発明の免疫賦活化促進剤がキットの場合、免疫賦活化剤は、別々に製剤化され別々の容器中に封入される。キットとは、これら各薬剤を含有する容器を1つの梱包容器中に存在させた形態である。
キットに含まれる各薬剤(各成分)は、患者への投与時に用時調製(混合)して用いることができる。また、キットに含まれる各薬剤(各成分)を同時に、別々に、または経時的に使用することもできる(詳細は下記の併用形態を参照のこと)。
【0018】
本発明の免疫賦活化促進剤及び免疫賦活化剤を同時に、別々に、または経時的に投与する併用の場合、各成分は別々に製剤化され別々の容器中に封入されたものを使用する。これらを同時に、別々に、または経時的に投与する際の投与方法(皮下注射、皮内注射、静脈注射といった投与ルート)は同じ投与方法であっても異なる投与方法であっても良い。
別々にもしくは経時的に投与する場合、いずれが先でいずれが後であっても良く、また個々の物質の投与回数も特に制限はない。投与間隔としては、先の製剤を投与した直後でも良く、約1日〜1週間をおいた後であっても良い。
本発明の免疫賦活化促進剤及び免疫賦活化剤は、同時に投与されることが好ましい。
【0019】
本発明の癌免疫療法剤は、抗原タンパク質又は該抗原タンパク質に由来する抗原ペプチドと共に用いることができる。すなわち、低分子量モノカルボン酸化合物、TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニスト、及び抗原タンパク質もしくは抗原ペプチドを含有する医薬組成物もまた本発明の範疇である。
ここで抗原タンパク質及び抗原ペプチドとしては、従来公知の抗原タンパク質および抗原ペプチドであれば、特に制限されない。具体的には、癌抗原タンパク質およびそれに由来する癌抗原ペプチド、あるいはウイルス抗原タンパク質およびそれに由来するウイルス抗原ペプチドが挙げられる。
【0020】
癌抗原タンパク質としては、例えばMAGE(Science,254:p1643 (1991))、gp100(J.Exp.Med.,179:p1005(1994))、MART-1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:p3515 (1994))、チロシナーゼ(J.Exp.Med.,178:p489 (1993))、MAGE関連タンパク質群(J.Exp.Med.,179:p921 (1994))、β−カテニン(J.Exp.Med.,183:p1185(1996))、CDK4(Science ,269 :p1281(1995))、HER2/neu(J.Exp.Med.,181:p2109(1995))、変異型p53(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:p14704(1996))、CEA(J.Natl.Cancer.Inst.,87:p982(1995))、PSA(J.Natl.Cancer.Inst.,89:p293(1997))、WT1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,101:p13885(2004))、HPV(J.Immunol.,154:p5934(1995))、EBV(Int.Immunol.,7:p653(1995))などが挙げられる。
ウイルス抗原タンパク質としては、HIV、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、HPV、HTLV、EBV等のウイルス由来の抗原タンパク質が挙げられる。
【0021】
また、抗原ペプチド(ペプチドワクチン)としては、前記の抗原タンパク質の10残基程度のアミノ酸からなる部分ペプチドを挙げることができる。以下に具体的な抗原ペプチドについて例示する(各数字は癌抗原タンパク質のアミノ酸配列上の位置を示す):
【0022】
(1)癌抗原に由来する癌抗原ペプチド
MAGEA3ペプチド168-176(Coulie PG et al.,Immunol. Rev. 188:33(2002))、gp100ペプチド209-217(Rosenberg SA et al., Nat. Med. 4:321(1998))、Melan-Aペプチド27-35(Cormier JN et al., Cancer J. Sci. Am. 3:37(1997))、Melan-Aペプチド26-35、Tyrosinaseペプチド1-9、Tyrosinaseペプチド368-376、gp100ペプチド280-288、gp100ペプチド457-466(Jager E et al., Int. J. Cancer 67:54(1996))、HER-2ペプチド369-384、HER-2ペプチド688-703、HER-2ペプチド971-984(Knutson KL et al., J. Clin. Invest. 107:477(2001))、MAGE-A12ペプチド170-178(Bettinotti MP et al., Int. J. Cancer 105:210(2003))、p100ペプチド280-288(Phan GQ et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:8372(2003))
【0023】
(2)ウイルス抗原に由来するウイルス抗原ペプチド
インフルエンザマトリックスプロテインペプチド58-66(Jager E et al., Int. J. Cancer 67:54(1996))、HPV16 E7ペプチド86-93(van Driel WJ et al., Eur. J. Cancer 35:946(1999))、HPV E7ペプチド12-20(Scheibenbogen C et al., J. Immunother 23:275(2000))、HPV16 E7ペプチド11-20(Smith JWI et al., J. Clin. Oncol. 21:1562(2003))。
【0024】
抗原タンパク質は、Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratoy Press(1989)等の基本書に従って、抗原タンパク質をコードするcDNAをクローニングし宿主細胞で発現させることにより調製することができる。
抗原ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該合成方法としては、文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis), Interscience,New York, 1966;ザ・プロテインズ(The Proteins), Vol. 2, Academic Press Inc., New York, 1976;ペプチド合成, 丸善(株), 1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株), 1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成, 広川書店, 1991)などに記載されている方法が挙げられる。
【0025】
ここで抗原タンパク質もしくは抗原ペプチドは、本発明の免疫賦活化促進剤と同時又は異なるタイミングで投与することができる。
【0026】
本発明の免疫賦活化促進剤は、更にGM-CSFを含有していてもよい。GM-CSFは、TLR2もしくは4アゴニスト、本発明の免疫賦活化促進剤とともに液剤として静脈注射又は筋肉注射で投与することができる。
【実施例1】
【0027】
以下の実施例において本発明を具体的に記載するが、もとより本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
実施例1
CADO-LC10細胞培養上清によるp19の分泌促進活性
肺癌患者から樹立された細胞株CADO-LC10細胞を10% FCS入りDMEM (high glucose)で培養し、その培養上清を回収した。回収した培養上清を100 μg/mlのプロテイナーゼKで37度、1時間処理後、1mMのPMSFで処理しプロテイナーゼKを失活させ、限外濾過膜(Microcon, Milliore)を使って、30KDa以上の分画と30KDa以下の分画に分離した。BCG-CWSとそれぞれの分画を正常人の末梢血単核球に作用させ、リアルタイムPCRにて、p40とp19のmRNA量を測定した。結果を図1に示した。
その結果、p40の発現を増強する因子は、30KDa以上の分画にあるプロテイナーゼKに感受性の蛋白成分であった。一方、p19の発現を増強する因子は、30KDa以下で、プロテイナーゼKに耐性の非蛋白成分であることが明らかになった。
【0029】
実施例2
GM-CSFによるp40の産生
CADO-LC10細胞培養成分には、約3.6 units/mlのGM-CSFが含まれており、また、GM-CSFの作用によりTLRの発現が上昇することが知られている。そこで、p40の発現増強が、GM-CSFの作用によるものかどうかを確認するために、抗GM-CSFレセプターマウスモノクローナル抗体 (S-20, Santa Cruz Biotechnology)を10 μg/ml存在下で、5μg/mlのBCG-CWSで末梢血単核球を刺激し、p40の発現量をELISAキットで測定した。結果を図2に示した。その結果、抗GM-CSFレセプター抗体により、p40の発現は、著しく抑制された。それ故、CADO-LC10細胞から分泌されるp40の産生増強を誘導する物質は、GM-CSFであると考えられた。
【0030】
実施例3
CADO-LC10細胞の産生する低分子によるp19の産生
CADO-LC10細胞の産生する活性低分子が、BCG-CWS刺激で誘導されるp19遺伝子の転写を促進しているかどうかを明らかにするために、IL-23p19遺伝子上流6.6kbpをpGL3 プロモーターベクター(promega)のSV40プロモーターと入れ替え、G418耐性遺伝子発現ベクターと共に、BCG-CWS刺激でIL-23を分泌することが知られているJ774.1細胞株へ導入し、細胞株を得た。その細胞株を、CADO-LC10細胞培養上清の存在下で、BCG-CWS刺激し、IL-23の分泌量をELISAキット(eBioscience)で測定した。結果を図4に示した。その結果、CADO-LC10細胞の培養上清の低分子画分が存在すると、存在しない場合と比較して、著しくIL-23の分泌を亢進した。また、その細胞におけるルシフェラーゼ活性を測定したところ、同様に活性が上昇した。
【0031】
実施例4
L-乳酸の免疫賦活化促進活性
glucose濃度の高い培地で培養されたCADO-LC10細胞ほど高い増強活性を持つことより、増強因子は、CADO-LC10細胞から分泌されるL-乳酸であることが予想された。そこで、CADO-LC10細胞に含まれる増強活性を有する低分子がL-乳酸であるかどうかを確かめるために、グラフで示された濃度のL-乳酸を通常の培養液に加え、BCG-CWS 10μg/mlで刺激し、ルシフェラーゼアッセイを行った。結果を図5に示した。その結果、L-乳酸の濃度依存的にルシフェラーゼ活性は、上昇した。CADO-LC10細胞の培養上清中に含まれるL-乳酸の濃度は、14mMで、15mMのL-乳酸を加えた値とほぼ一致した。また、CADO-LC10細胞をL-乳酸デヒドロゲナーゼのインヒビター(Oxamic acid;オキサミン酸)で処理をして、L-乳酸の産生を抑制すると、CADO-LC10細胞の培養上清による増強活性は、抑制された。それ故、CADO-LC10細胞に含まれる活性低分子物質は、L-乳酸であることが明らかとなった。
【0032】
実施例5
L-乳酸によるp19のmRNA量促進のデータ
L-乳酸が、実際にヒト末梢血単球に働いて、IL12/23p40サブユニットやIL23p19サブユニットの発現上昇に働くかどうかを調べるために、グラフで示されている濃度のL-乳酸存在下で、ヒト末梢血単核球を10μg/mlのBCG-CWSで4時間刺激し、IL12/23の共通サブユニットp40またはIL23p19のmRNA量をリアルタイムPCR法で測定した。結果を図6に示した。その結果、p40の発現量は、L-乳酸により増強しなかったが、p19の発現量は、L-乳酸の濃度依存的に増大した。それ故、レポーターアッセイで示した現象をヒト細胞でも証明した。
【0033】
実施例5
低分子量モノカルボン酸類の免疫賦活化促進作用
L-乳酸が、BCG-CWS刺激と協調的に働き、IL23p19サブユニットの産生を増強することを実施例4で明らかにした。L-乳酸は、1つのカルボキシル基をもつモノカルボン酸の一種である。そこで、他のモノカルボン酸 (酢酸, チオグリコール酸) で増強効果があるかどうかを解析した。また、L-乳酸が、酸であることが重要である可能性もあるので、塩酸による効果も調べた。BCG-CWS (10μg/ml)と共に、モノカルボン酸を各濃度でIL23p19のプロモーター領域(6.6kbp)をもつJ774.1細胞に作用させたところ酢酸、チオグリコール酸、D-乳酸の3種類のうち、いずれのモノカルボン酸でも効果を認めたが、塩酸(HCl)では、増強効果を全く認めなかった。それ故、L-乳酸による増強効果は、他のモノカルボン酸でも認められるが、酸性度のみによるものではないことが明らかになった。
【0034】
実施例6
L-乳酸とGM-CSFの協調作用
マウス細胞同様、ヒト単球細胞に対しても、L-乳酸の増強効果が見られるかどうかをL-乳酸 15mM存在下で、ペプチドグリカン (PGN) 10μg/mlで、ヒト単球細胞を刺激し、24時間後のIL-23分泌量をELISA キット(Bender Medsystems)で測定した。IL-23は、p19サブユニットとIL-12との共通サブユニットp40からなるが、L-乳酸の効果が、主にp19に対して特異的に増強するため、IL-23蛋白の分泌量は、マウスのマクロファージ由来細胞株を使った実験に比べ、非常に小さかった。そこで、TLR2の発現を上昇することによりp40の産生を誘導するGM-CSFを共存させることにより、L-乳酸の効果は、相乗的に働くことがわかった。
【0035】
実施例7
種々の免疫賦活剤のデータ
IL-23p19遺伝子の上流6.6kbの領域をプロモーターとしてもつルシフェラーゼ遺伝子を導入したJ774.1細胞にさまざまなTLR2またはTLR4のアゴニストを作用させ、L-lactic acidの効果を観察した。BCG-CWS (TLR2とTLR4)、ペプチドグリカン (TLR2)、Pam3CSK4 (TLR2)、LPS (TLR4)で刺激したところ、どのアゴニストでも、L-乳酸の効果を観察することができた。
【0036】
実施例8
オブアブミンペプチドを用いた実験
IL-23は、抗原刺激と共に、エフェクター細胞であるメモリーT細胞やTh17細胞に作用すると、IL-17産生を誘導する。そこで、この系にL-乳酸が働くかどうかを確かめるために、MHCクラスIIに提示されたオブアブミンペプチド(Ovalbumin peptide;OVA323-339)を特異的に認識するT細胞レセプターをもつトランスジェニックマウスの脾臓細胞をオブアブミンペプチド存在下で、BCG-CWSとL-乳酸で刺激した。その結果、IL-17産生は、BCG-CWS刺激に比べ、L-乳酸との共刺激により著しく上昇した。このIL-17産生は、IL-23に対する特異抗体により抑制された。一方、BCG-CWSの作用によるインターフェロンγの産生は、L-乳酸により変化を示さず、またIL-23に対する抗体によっても抑制されなかった。それ故、L-乳酸の効果は、BCG-CWS刺激と共に働き、IL-23の分泌を増強することによりIL-23-IL-17 pathwayの増強に働くと考えられた。
【0037】
実施例9
抗腫瘍効果
BCG-CWSによる抗癌効果に対するL-乳酸の影響をB16メラノーマの移植モデルを使って検討した。マウスに6X105のB16メラノーマ細胞を皮下投与した。腫瘍移植後12日、15日、18日、21日目に、抗原として凍結融解した2.5x105のB16メラノーマ細胞を単独で、または20μgのBCG-CWSとともに、または20μgのBCG-CWSと最終濃度20 mMのL-乳酸とともに皮内投与した{図10において、抗原のみ (closed diamond, T--)、抗原とBCG-CWS (closed circle, TB-)、抗原とBCG-CWS とL-乳酸 (open circle, TBL)}。腫瘍の大きさは、腫瘍投与後11日の時の大きさを1とした。その結果、BCG-CWSと抗原では有意差はなかったが、L-乳酸を加えることにより、16日、18日、19日の点で、p<0.05で有意に腫瘍の増殖を抑制した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の免疫賦活化促進剤は、医薬として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】CADO-LC10細胞培養上清によるp19の分泌促進活性を、分子量30KDa以下の画分及び分子量30KDa以上の画分に分けて示した図である。縦軸は、p40とp19のmRNA量をβ-アクチン(actin)のmRNA量で補正した値を示す。30KDa以上の画分はp40の発現促進活性を示すが、プロテイナーゼKにより活性が消失した。一方、30KDa以下の画分はp19の発現促進活性を示し、プロテイナーゼKにより活性は変化しないことがわかった。
【図2】GM-CSFがIL-12/23のp40の産生を促進することを示した図である。LC-10培養上清によるp40産生促進活性は、抗GM-CSFR抗体で相殺された。このことから、p40産生促進活性は、GM-CSFによるものであることがわかった。
【図3】p19発現促進活性を測定するためのレポータージーンアッセイ用遺伝子を示す図である。
【図4】左図は、CADO-LC10細胞培養上清が、BCG-CWSによるIL-23タンパク質の産生を増大させることを示すELISAの結果である。右図は、BCG-CWSがp19のプロモーターに作用してp19の発現を促進し、CADO-LC-10細胞培養上清がBCG-CWSの発現促進活性を増強することを示す図である。
【図5】L-乳酸が、BCG-CWSによるp19の発現促進活性を濃度依存的に増大させることを示す図である。
【図6】左図は、BCG-CWSによるp40発現促進活性はL-乳酸の影響を受けないことを示す図である。右図は、BCG-CWSによるp19の発現促進活性が、L-乳酸により濃度依存的に増強されることを示す図である。
【図7】他の低分子量モノカルボン酸が、BCG-CWSによるp19発現促進活性に及ぼす効果を示す図である。横軸は低分子量モノカルボン酸の濃度、縦軸はルシフェラーゼ活性(p19発現促進活性)を示す。
【図8】GM-CSFとL-乳酸を併用することによる、ペプチドグリカンのIL-23産生促進活性の相乗的な増大を示す図である。
【図9】種々のTLR2もしくは4アゴニストのp19発現促進活性が、L-乳酸により増強されることを示す図である。
【図10】オブアブミンペプチドを用いたBCG-CWSのIL-17産生促進作用の実験結果を示す図である。左図は、L-乳酸がBCG-CWSのIFN-γ産生促進活性に影響を与えないことを示す。右図は、L-乳酸がBCG-CWSのIL-17産生促進活性を増強し、これが抗IL-23抗体により相殺されることを示す。
【図11】L-乳酸が、BCG-CWSの抗腫瘍効果を増大させることを示す図である。「*」は、抗原とBCG-CWSとL-乳酸を投与した群の抗原のみを投与した群に対する有意差(p<0.05)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活化促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の免疫療法として、LAK(Lymphokine-activated killer cells)療法を代表とするエフェクター細胞を利用した治療が盛んに行われてきたが、細菌やウイルスの成分をアゴニストとするToll様受容体(Toll-like Receptor;TLR)の発見により、樹状細胞や単球/マクロファージなどの抗原提示細胞をターゲットにした癌の免疫療法が注目を浴びている。すなわち、TLRは、免疫賦活化作用を有する細菌由来成分をアゴニストとしており、TLRアゴニストは非特異的な自然免疫賦活療法剤として、癌の種類に限定されない非特異的な癌免疫療法として、又は癌抗原ペプチド(癌ワクチン)と併用するアジュバントとして用いることができる。
具体的にはToll様受容体2(TLR2)アゴニストとしてバクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又は細胞壁骨格成分(CWS)等が挙げられ、Toll様受容体4(TLR4)アゴニストとしてリポ多糖(LPS)等が挙げられる(非特許文献1を参照)。中でも、ピシバニール(登録商標)(OK-432)やバチルス カルメット−ゲラン(Bacillus calmette-guerin cell wall skeleton;BCG-CWS)等が臨床で使われている。
【0003】
しかしながら、TLRアゴニストによる免疫賦活化反応には、癌の種類や人により差がある。例えば、BCG-CWSを皮内投与した場合、投与部位に生じる皮膚反応(びらん)もしくは血中インターフェロンγの上昇反応等の出現は、肺癌患者において、しばしば遅延することが知られている。そこで、TLRアゴニストの免疫賦活化作用を増強する治療方法が求められていた。
また、TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニストは、単球、マクロファージ、樹状細胞などに働き、抗原提示能の増強、CD80やCD86等の共刺激分子の発現上昇、さまざまなサイトカインの分泌を誘導し、T細胞を分化活性化する事により、免疫賦活することが知られている。また、松本らは、肺癌患者の末梢血をBCG-CWSで刺激すると、IL-12/23p40サブユニットの過剰分泌が認められることを報告している(非特許文献2を参照)。
一方、L-乳酸が、損傷治癒の際のコラーゲンの産生や血管新生に関与していること(非特許文献3を参照)や、樹状細胞表面のCD1分子の発現を低下させること、さらに、樹状細胞にLPS刺激を加えたときのIL-12産生を抑制すること(非特許文献4を参照)が報告されている。また、乳酸ナトリウムがU937組織球(histiocyte)に働き、LPSにより誘導されるマトリックスメタロプロテアーゼ−1(matrix metalloproteinase-1)、IL-6及びIL-1の分泌が増強されること、及び当該活性はL-乳酸では見られないこと(非特許文献5を参照)が報告されている。
しかしながら、L-乳酸が、TLR2アゴニスト又はTLR4アゴニストの免疫賦活活性を増強するかどうかについては、全く知られていなかった。
【非特許文献1】S. Tsujiら、Infect Immun. Vol. 68 No.12 p6883-90, 2000
【非特許文献2】M. Matsumotoら、Int. Immunopharmacol. Vol.1 No.8 p1559-69, 2001
【非特許文献3】Odilo Traboldら、Wound Repair and Regeneration vol.11、No.6、p504-509, 2003
【非特許文献4】Eva Gottfriedら、Blood Vol. 107, No.5, 2013-2021, 2006
【非特許文献5】Alena Nereikaら、Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. vol. 289, E534-542, 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、免疫賦活化促進剤、詳しくはTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニストの免疫賦活化作用を増強する薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、BCG-CWSに対する癌患者の反応性の違いが、癌細胞中に含まれる物質の生理作用に起因するのではないかと考え、末梢血単球細胞(PBMC)に癌細胞由来の培養上清を添加し、BCG-CWS刺激に対する応答性を調べた。その結果、肺癌患者から樹立された細胞株:CADO−LC10細胞の培養上清の低分子量の画分が、IL-23p19の発現を転写レベル(mRNA量)において増強することがわかった。更に鋭意検討を重ねた結果、肺癌の培養上清から分泌されるIL-23p19発現増強活性を有する物質が、L−乳酸(L-lactic acid)等の低分子量モノカルボン酸化合物であることが明らかになった。すなわち、BCG-CWSの共存下でL-乳酸は、IL-23の分泌を上昇させ、T細胞からのIL-17の分泌も上昇させることが明らかになった。この結果は、L−乳酸の作用により、BCG-CWSの効果を増強することを示している。従って、L−乳酸等の低分子量モノカルボン酸化合物とBCG-CWSを併用することが、効果的な免疫賦活療法となり得ることがわかった。
本発明は上記の知見をもとに、完成するに至ったものである。
【0006】
即ち本発明は、
〔1〕 低分子量モノカルボン酸化合物を有効成分として含有する、免疫賦活化促進剤;
〔2〕 低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、請求項1に記載の免疫賦活化促進剤;
〔3〕 IL-23及び/又はIL-17分泌促進剤である、〔1〕又は〔2〕に記載の免疫賦活化促進剤;
〔4〕 免疫賦活化がTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニストによるものである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤;
〔5〕 TLR2アゴニストがバクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、〔4〕に記載の免疫賦活化促進剤;
〔6〕 免疫賦活化が癌抗原によるものである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤;
〔7〕 免疫賦活化が微生物又は微生物ワクチンによるものである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤;
〔8〕 癌免疫療法剤である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤;
〔9〕 微生物感染症治療薬又は予防薬である、〔1〕〜〔5〕及び〔7〕のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤;
〔10〕 微生物感染症が、日和見感染症である、〔9〕に記載の免疫賦活化促進剤;
〔11〕 日和見感染症がクレブシエラ肺炎、クリプトコッカス感染症、結核、トキソプラズマ感染症、カンジダ感染症である、〔10〕に記載の免疫賦活化促進剤;
〔12〕 低分子量モノカルボン酸を有効成分として含有する、TLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤;
〔13〕 TLR2アゴニストがバクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、〔12〕に記載のTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤;
〔14〕 低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、〔12〕又は〔13〕に記載のTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤;
〔15〕 TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニスト、及び低分子量モノカルボン酸化合物を含有する、癌免疫療法剤;
〔16〕 TLR2アゴニストが、バクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、〔15〕に記載の癌免疫療法剤;
〔17〕 低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、D-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、〔15〕又は〔16〕に記載の癌免疫療法剤;
〔18〕 更に抗原を含有してなる、〔15〕〜〔17〕のいずれかに記載の癌免疫療法剤;
〔19〕 更にGM−CSFを含有してなる、〔15〕〜〔17〕のいずれかに記載の癌免疫療法剤;
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、L−乳酸等の低分子量モノカルボン酸化合物を有効成分とする免疫賦活化促進剤、詳しくはTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニストの免疫賦活化作用を増強する薬剤を提供することが可能になった。本発明により、BCG−CWS等を用いる癌免疫療法において、BCG−CWSの活性を増強させることが可能になった。更に本発明により、BCG−CWSに対する反応性が乏しい患者において有効な治療方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書において、低分子量モノカルボン酸化合物としては、1個のカルボキシル基を有する、分子量200以下、好ましくは分子量60〜100の低分子量モノカルボン酸化合物が挙げられる。好ましくは、1個のカルボキシル基を有し、水酸基もしくはメルカプト基で置換されていてもよい炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5の低分子量モノカルボン酸化合物が挙げられる。具体的には、低分子量モノカルボン酸化合物として、酢酸、乳酸又はチオグリコール酸を例示することができる。
【0009】
本明細書において、TLR2アゴニストは、TLR2と相互作用し、TLR2のシグナル伝達を活性化する物質であれば特に限定は無く、具体的には、バクテリアリポペプチド(B. Hendersonら、Microbiol. Rev. Vol 60, No. 2, p316-341, 1996を参照)、ペプチドグリカン(K. Takedaら、Annu. Rev. Immunol. Vol. 21, p335-76, 2003を参照)又はBCG-CWS(S. Tsujiら、Infect Immun. Vol. 68 No.12 p6883-90, 2000を参照)を挙げることができる。ここで「TLR2のシグナル伝達を活性化する」とは、TLR2の細胞内TIRドメインにTIRAP (TIR-associated protein) を介して会合したMyD88にIRAK (IL-1R Associated Kinase)が結合し、リン酸化によりIRAKが活性化し、活性化したIRAKはTRAF6と会合し、TRAF6によりJNKを活性化しAP-1を活性化すること、またはTRAF6はIKKを活性化しIκBの分解を誘導してNFκBを活性化することを表す。
また、TLR4アゴニストは、TLR4と相互作用し、TLR4のシグナル伝達を活性化する物質であれば特に限定は無く、具体的には、LPSを挙げることができる。ここで「TLR4のシグナル伝達を活性化する」とは、TLR4の細胞内TIRドメインにTIRAPを介して会合したMyD88にIRAK (IL-1R Associated Kinase)が結合し、リン酸化によりIRAKが活性化、およびTLR4に会合したTIRAPの活性化によりIRAKが活性化し、活性化したIRAKはTRAF6と会合し、TRAF6によりJNKを活性化しAP-1を活性化すること、またはTRAF6がIKKを活性化しIκBの分解を誘導してNFκBを活性化することを表す。
【0010】
本明細書において、「免疫賦活化」とは、NF-κB、AP-1、IRFを活性化することにより様々なサイトカイン、ケモカインを誘導すること、免疫反応を調節する抗原提示細胞において抗原提示分子や共刺激分子の発現を増加させることなどにより、免疫が活性化した状態が誘導されることを表す。詳しくは、IL-23及び/又はIL-17の分泌促進活性を挙げることができる。
本明細書において「免疫賦活化促進剤」とは、TLR2アゴニスト又はTLR4アゴニスト等の免疫賦活化作用を増強する薬剤を意味する。
【0011】
本発明の免疫賦活化促進剤は、TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニスト、または、癌抗原蛋白質もしくは癌抗原ペプチドと共に投与して、癌免疫療法剤として用いることができる。あるいは、ウイルスもしくは細菌ワクチンと共に投与して、ウイルスもしくは細菌感染症治療/予防剤(ワクチン増強剤)として用いることができる。
癌免疫療法剤として用いる場合、癌の種類には特に限定は無く、急性白血病、慢性白血病、悪性リンパ腫、脳腫瘍、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、胆道癌 、腎臓癌、膀胱癌、喉頭癌 、咽頭癌 、舌癌 、胃癌、食道癌 、結腸・直腸癌、大腸癌、乳癌 、子宮癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌 、脳腫瘍、多発性骨髄腫、骨・軟部腫瘍、皮膚癌等が挙げられる。好ましくは、肺癌、膀胱癌などが挙げられる。
微生物感染症としては、ウイルス、細菌、真菌、原虫等の微生物感染症が挙げられる。本発明における微生物感染症としては、日和見感染症と呼ばれる、癌や後天性免疫不全症候群 (AIDS)に罹患した患者や加齢等に伴うその他の後天性の免疫不全状態の患者におこる感染症等が挙げられる。
具体的なウイルス感染症として、具体的には、サイトメガロウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、呼吸器多核体ウイルス感染症などが挙げられる。
細菌感染症として、具体的には、クレブシエラ肺炎、結核等が挙げられる。
真菌感染症として、具体的には、クリプトコッカス感染症、カンジダ等が挙げられる。
原虫感染症として、具体的には、トキソプラズマ感染症等が挙げられる。
【0012】
本発明の免疫賦活化促進剤を医薬として用いる場合、非経口的または経口的に投与することができる。
経口投与用の製剤としては、例えば、カプセル剤、散剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤等を挙げることができ、非経口投与用の製剤としては、例えば、注射剤、点滴剤、点眼剤、直腸内投与剤、吸入剤、噴霧剤(スプレー剤、エアゾル剤、または吸入器もしくは通気器用カートリッジ噴霧用の水剤/懸濁剤等)、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点鼻剤、点耳剤、テープ剤、経皮パッチ製剤、湿布剤、外用散剤等を挙げることができる。これらの製剤は、従来公知の技術を用いて調製され、許容される通常の担体、賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、崩壊剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤、界面活性剤、防腐剤、香料等を含有することができ、2種以上の製剤用添加物を適宜用いることができる。
経口投与用製剤のうち、乳剤及びシロップ剤等の液体製剤は、水;ショ糖、ソルビット、果糖等の糖類;ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類;p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤;ストロベリーフレーバー、ペパーミントフレーバー等のフレーバー類等の製剤用添加物を用いて製造することができる。カプセル剤、錠剤、散剤及び顆粒剤等の固形製剤は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニット賦形剤;デンプン、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤;ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤;脂肪酸エステル等の界面活性剤;グリセリンなどの可塑剤等を用いて製造することができる。
医薬組成物中における本発明の免疫賦活化促進剤の含有量は、特に限定されない。例えば非経口剤の場合、1回の投与当たり、通常0.01mg〜1000mg、好ましくは0.1mg〜300mg、より好ましくは1mg〜150mgとなるように製剤化されていれば良い。
【0013】
非経口投与用製剤のうち、注射剤、点滴剤等の形態の液体製剤は、好ましくは滅菌された等張の液体製剤として調製できる。例えば、注射剤は塩溶液、ブドウ糖溶液、又は塩水とブドウ糖溶液との混合物からなる水性媒体を用いて調製することができる。直腸内投与剤は例えばカカオ脂等の担体を用いて、通常は坐剤の形態として調製することができる。
尚、本発明の免疫賦活化促進剤は、それ自身が賦形剤としての役割を兼ねていてもよい。
【0014】
本発明の免疫賦活化促進剤の投与方法としては、経口投与および非経口投与のいずれでも良いが、非経口投与が好ましい。非経口投与の場合、皮下注射、持続皮下注射、皮内注射、静脈注射、動脈注射、筋肉注射、腹腔内投与、経皮投与、経粘膜投与、経鼻投与等が挙げられる。好ましくは、皮内注射が挙げられる。
本発明の免疫賦活化促進剤は、通常TLR2アゴニストやTLR4アゴニスト等の免疫賦活化剤とともに用いられるが、各成分は、それぞれ同じ投与方法(投与ルート)で投与されても異なる投与方法(投与ルート)で投与されても良い。投与回数は特に限定されないが、通常、数日ないし数ヶ月に1回投与、あるいは数日ないし数ヶ月間隔の休薬期間を取る連日投与を行う。
TLR2アゴニストとしては、細菌細胞壁骨格成分(細菌−CWS)、バクテリアリポペプチド、又はペプチドグリカンが挙げられる。これらの由来菌には特に限定はないが、グラム陽性棹菌のミコバクテリウム属細菌、ノカルディア属細菌、コリネバクテリウム属細菌、ロドコッカス属細菌、ゴルドナ属細菌などが挙げられる。「ミコバクテリウム属細菌」とは、抗酸菌であるミコバクテリウム属の細菌を表し、具体的には、結核菌群細菌のMycobacterium tuberculosis(結核菌)、Mycobacterium bovis[ウシ型結核菌、BCG(カルメット・ゲラン菌;Bacille Calmette-Guerin)を含む]、Mycobacterium africanum(アフリカ菌)、Mycobacterium microti(ネズミ型結核菌)があり、この他、Mycobacterium leprae(ライ菌)、非結核性抗酸菌群であるMycobacterium kansasii、Mycobacterium avium、Mycobacterium phlei等が挙げられる。中でも好ましいものとして、ミコバクテリウム属ウシ型結核菌の一種であるBCG菌およびノカルディア族細菌の一種であるノカルディア・ルブラを挙げることができる。
また、TLR4アゴニストとしては、LPS、モノホスホリルリピドA、熱ショック蛋白質(HSP)を挙げることができる。LPSの由来菌としては、特に限定は無くグラム陰性菌が挙げられる。具体的には、Escherichia coli(大腸菌)、Salmonella Minnesota (サルモネラ菌)等を挙げることができる。HSPの由来としては、特に限定は無く哺乳動物やヘリコバクター菌、ミコバクテリウム属細菌等が挙げられる。具体的には、哺乳類HSP70、HSP22もしくはHSP60、ヘリコバクターHSP60、又はミコバクテリアHSP65が挙げられる。
例えば、BCG-CWSとともに用いられる場合には、BCG−CWS、5〜200μgずつを1〜4週間に1回の頻度で4回以上投与されることが好ましい。投与量、投与回数、投与頻度は、患者の生体反応に応じて適宜調整される。具体的には、たとえば、BCG−CWS(5〜200μg)及び本発明の免疫賦活化促進剤を含む医薬組成物を、1〜4週に1回の頻度で4回以上、投与することができる。
【0015】
本発明の免疫賦活化促進剤は、以下のいずれの形態においても用いることができる:
(A)TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニストである免疫賦活化剤と混合して得られる配合剤(合剤)の形態。
(B)前記各組み合わせに係る物質を個別に含有する薬剤を含むキットの形態。
(C)前記各組み合わせに係る物質を個別に含有する薬剤を、同時に、別々に、または経時的に投与する併用の形態。
【0016】
本発明の免疫賦活化促進剤が配合剤(合剤)の場合、BCG-CWS等の免疫賦活化剤との配合比は特に制限されるものではない。1回の投与当たりに、各有効成分が前記投与量で投与されるように含有されていれば良い。当該配合剤は、配合剤として製剤化されたものであっても良く、また患者への投与時に用時調製(混合)されても良い。
【0017】
本発明の免疫賦活化促進剤がキットの場合、免疫賦活化剤は、別々に製剤化され別々の容器中に封入される。キットとは、これら各薬剤を含有する容器を1つの梱包容器中に存在させた形態である。
キットに含まれる各薬剤(各成分)は、患者への投与時に用時調製(混合)して用いることができる。また、キットに含まれる各薬剤(各成分)を同時に、別々に、または経時的に使用することもできる(詳細は下記の併用形態を参照のこと)。
【0018】
本発明の免疫賦活化促進剤及び免疫賦活化剤を同時に、別々に、または経時的に投与する併用の場合、各成分は別々に製剤化され別々の容器中に封入されたものを使用する。これらを同時に、別々に、または経時的に投与する際の投与方法(皮下注射、皮内注射、静脈注射といった投与ルート)は同じ投与方法であっても異なる投与方法であっても良い。
別々にもしくは経時的に投与する場合、いずれが先でいずれが後であっても良く、また個々の物質の投与回数も特に制限はない。投与間隔としては、先の製剤を投与した直後でも良く、約1日〜1週間をおいた後であっても良い。
本発明の免疫賦活化促進剤及び免疫賦活化剤は、同時に投与されることが好ましい。
【0019】
本発明の癌免疫療法剤は、抗原タンパク質又は該抗原タンパク質に由来する抗原ペプチドと共に用いることができる。すなわち、低分子量モノカルボン酸化合物、TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニスト、及び抗原タンパク質もしくは抗原ペプチドを含有する医薬組成物もまた本発明の範疇である。
ここで抗原タンパク質及び抗原ペプチドとしては、従来公知の抗原タンパク質および抗原ペプチドであれば、特に制限されない。具体的には、癌抗原タンパク質およびそれに由来する癌抗原ペプチド、あるいはウイルス抗原タンパク質およびそれに由来するウイルス抗原ペプチドが挙げられる。
【0020】
癌抗原タンパク質としては、例えばMAGE(Science,254:p1643 (1991))、gp100(J.Exp.Med.,179:p1005(1994))、MART-1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:p3515 (1994))、チロシナーゼ(J.Exp.Med.,178:p489 (1993))、MAGE関連タンパク質群(J.Exp.Med.,179:p921 (1994))、β−カテニン(J.Exp.Med.,183:p1185(1996))、CDK4(Science ,269 :p1281(1995))、HER2/neu(J.Exp.Med.,181:p2109(1995))、変異型p53(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:p14704(1996))、CEA(J.Natl.Cancer.Inst.,87:p982(1995))、PSA(J.Natl.Cancer.Inst.,89:p293(1997))、WT1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,101:p13885(2004))、HPV(J.Immunol.,154:p5934(1995))、EBV(Int.Immunol.,7:p653(1995))などが挙げられる。
ウイルス抗原タンパク質としては、HIV、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、HPV、HTLV、EBV等のウイルス由来の抗原タンパク質が挙げられる。
【0021】
また、抗原ペプチド(ペプチドワクチン)としては、前記の抗原タンパク質の10残基程度のアミノ酸からなる部分ペプチドを挙げることができる。以下に具体的な抗原ペプチドについて例示する(各数字は癌抗原タンパク質のアミノ酸配列上の位置を示す):
【0022】
(1)癌抗原に由来する癌抗原ペプチド
MAGEA3ペプチド168-176(Coulie PG et al.,Immunol. Rev. 188:33(2002))、gp100ペプチド209-217(Rosenberg SA et al., Nat. Med. 4:321(1998))、Melan-Aペプチド27-35(Cormier JN et al., Cancer J. Sci. Am. 3:37(1997))、Melan-Aペプチド26-35、Tyrosinaseペプチド1-9、Tyrosinaseペプチド368-376、gp100ペプチド280-288、gp100ペプチド457-466(Jager E et al., Int. J. Cancer 67:54(1996))、HER-2ペプチド369-384、HER-2ペプチド688-703、HER-2ペプチド971-984(Knutson KL et al., J. Clin. Invest. 107:477(2001))、MAGE-A12ペプチド170-178(Bettinotti MP et al., Int. J. Cancer 105:210(2003))、p100ペプチド280-288(Phan GQ et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:8372(2003))
【0023】
(2)ウイルス抗原に由来するウイルス抗原ペプチド
インフルエンザマトリックスプロテインペプチド58-66(Jager E et al., Int. J. Cancer 67:54(1996))、HPV16 E7ペプチド86-93(van Driel WJ et al., Eur. J. Cancer 35:946(1999))、HPV E7ペプチド12-20(Scheibenbogen C et al., J. Immunother 23:275(2000))、HPV16 E7ペプチド11-20(Smith JWI et al., J. Clin. Oncol. 21:1562(2003))。
【0024】
抗原タンパク質は、Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratoy Press(1989)等の基本書に従って、抗原タンパク質をコードするcDNAをクローニングし宿主細胞で発現させることにより調製することができる。
抗原ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該合成方法としては、文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis), Interscience,New York, 1966;ザ・プロテインズ(The Proteins), Vol. 2, Academic Press Inc., New York, 1976;ペプチド合成, 丸善(株), 1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株), 1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成, 広川書店, 1991)などに記載されている方法が挙げられる。
【0025】
ここで抗原タンパク質もしくは抗原ペプチドは、本発明の免疫賦活化促進剤と同時又は異なるタイミングで投与することができる。
【0026】
本発明の免疫賦活化促進剤は、更にGM-CSFを含有していてもよい。GM-CSFは、TLR2もしくは4アゴニスト、本発明の免疫賦活化促進剤とともに液剤として静脈注射又は筋肉注射で投与することができる。
【実施例1】
【0027】
以下の実施例において本発明を具体的に記載するが、もとより本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
実施例1
CADO-LC10細胞培養上清によるp19の分泌促進活性
肺癌患者から樹立された細胞株CADO-LC10細胞を10% FCS入りDMEM (high glucose)で培養し、その培養上清を回収した。回収した培養上清を100 μg/mlのプロテイナーゼKで37度、1時間処理後、1mMのPMSFで処理しプロテイナーゼKを失活させ、限外濾過膜(Microcon, Milliore)を使って、30KDa以上の分画と30KDa以下の分画に分離した。BCG-CWSとそれぞれの分画を正常人の末梢血単核球に作用させ、リアルタイムPCRにて、p40とp19のmRNA量を測定した。結果を図1に示した。
その結果、p40の発現を増強する因子は、30KDa以上の分画にあるプロテイナーゼKに感受性の蛋白成分であった。一方、p19の発現を増強する因子は、30KDa以下で、プロテイナーゼKに耐性の非蛋白成分であることが明らかになった。
【0029】
実施例2
GM-CSFによるp40の産生
CADO-LC10細胞培養成分には、約3.6 units/mlのGM-CSFが含まれており、また、GM-CSFの作用によりTLRの発現が上昇することが知られている。そこで、p40の発現増強が、GM-CSFの作用によるものかどうかを確認するために、抗GM-CSFレセプターマウスモノクローナル抗体 (S-20, Santa Cruz Biotechnology)を10 μg/ml存在下で、5μg/mlのBCG-CWSで末梢血単核球を刺激し、p40の発現量をELISAキットで測定した。結果を図2に示した。その結果、抗GM-CSFレセプター抗体により、p40の発現は、著しく抑制された。それ故、CADO-LC10細胞から分泌されるp40の産生増強を誘導する物質は、GM-CSFであると考えられた。
【0030】
実施例3
CADO-LC10細胞の産生する低分子によるp19の産生
CADO-LC10細胞の産生する活性低分子が、BCG-CWS刺激で誘導されるp19遺伝子の転写を促進しているかどうかを明らかにするために、IL-23p19遺伝子上流6.6kbpをpGL3 プロモーターベクター(promega)のSV40プロモーターと入れ替え、G418耐性遺伝子発現ベクターと共に、BCG-CWS刺激でIL-23を分泌することが知られているJ774.1細胞株へ導入し、細胞株を得た。その細胞株を、CADO-LC10細胞培養上清の存在下で、BCG-CWS刺激し、IL-23の分泌量をELISAキット(eBioscience)で測定した。結果を図4に示した。その結果、CADO-LC10細胞の培養上清の低分子画分が存在すると、存在しない場合と比較して、著しくIL-23の分泌を亢進した。また、その細胞におけるルシフェラーゼ活性を測定したところ、同様に活性が上昇した。
【0031】
実施例4
L-乳酸の免疫賦活化促進活性
glucose濃度の高い培地で培養されたCADO-LC10細胞ほど高い増強活性を持つことより、増強因子は、CADO-LC10細胞から分泌されるL-乳酸であることが予想された。そこで、CADO-LC10細胞に含まれる増強活性を有する低分子がL-乳酸であるかどうかを確かめるために、グラフで示された濃度のL-乳酸を通常の培養液に加え、BCG-CWS 10μg/mlで刺激し、ルシフェラーゼアッセイを行った。結果を図5に示した。その結果、L-乳酸の濃度依存的にルシフェラーゼ活性は、上昇した。CADO-LC10細胞の培養上清中に含まれるL-乳酸の濃度は、14mMで、15mMのL-乳酸を加えた値とほぼ一致した。また、CADO-LC10細胞をL-乳酸デヒドロゲナーゼのインヒビター(Oxamic acid;オキサミン酸)で処理をして、L-乳酸の産生を抑制すると、CADO-LC10細胞の培養上清による増強活性は、抑制された。それ故、CADO-LC10細胞に含まれる活性低分子物質は、L-乳酸であることが明らかとなった。
【0032】
実施例5
L-乳酸によるp19のmRNA量促進のデータ
L-乳酸が、実際にヒト末梢血単球に働いて、IL12/23p40サブユニットやIL23p19サブユニットの発現上昇に働くかどうかを調べるために、グラフで示されている濃度のL-乳酸存在下で、ヒト末梢血単核球を10μg/mlのBCG-CWSで4時間刺激し、IL12/23の共通サブユニットp40またはIL23p19のmRNA量をリアルタイムPCR法で測定した。結果を図6に示した。その結果、p40の発現量は、L-乳酸により増強しなかったが、p19の発現量は、L-乳酸の濃度依存的に増大した。それ故、レポーターアッセイで示した現象をヒト細胞でも証明した。
【0033】
実施例5
低分子量モノカルボン酸類の免疫賦活化促進作用
L-乳酸が、BCG-CWS刺激と協調的に働き、IL23p19サブユニットの産生を増強することを実施例4で明らかにした。L-乳酸は、1つのカルボキシル基をもつモノカルボン酸の一種である。そこで、他のモノカルボン酸 (酢酸, チオグリコール酸) で増強効果があるかどうかを解析した。また、L-乳酸が、酸であることが重要である可能性もあるので、塩酸による効果も調べた。BCG-CWS (10μg/ml)と共に、モノカルボン酸を各濃度でIL23p19のプロモーター領域(6.6kbp)をもつJ774.1細胞に作用させたところ酢酸、チオグリコール酸、D-乳酸の3種類のうち、いずれのモノカルボン酸でも効果を認めたが、塩酸(HCl)では、増強効果を全く認めなかった。それ故、L-乳酸による増強効果は、他のモノカルボン酸でも認められるが、酸性度のみによるものではないことが明らかになった。
【0034】
実施例6
L-乳酸とGM-CSFの協調作用
マウス細胞同様、ヒト単球細胞に対しても、L-乳酸の増強効果が見られるかどうかをL-乳酸 15mM存在下で、ペプチドグリカン (PGN) 10μg/mlで、ヒト単球細胞を刺激し、24時間後のIL-23分泌量をELISA キット(Bender Medsystems)で測定した。IL-23は、p19サブユニットとIL-12との共通サブユニットp40からなるが、L-乳酸の効果が、主にp19に対して特異的に増強するため、IL-23蛋白の分泌量は、マウスのマクロファージ由来細胞株を使った実験に比べ、非常に小さかった。そこで、TLR2の発現を上昇することによりp40の産生を誘導するGM-CSFを共存させることにより、L-乳酸の効果は、相乗的に働くことがわかった。
【0035】
実施例7
種々の免疫賦活剤のデータ
IL-23p19遺伝子の上流6.6kbの領域をプロモーターとしてもつルシフェラーゼ遺伝子を導入したJ774.1細胞にさまざまなTLR2またはTLR4のアゴニストを作用させ、L-lactic acidの効果を観察した。BCG-CWS (TLR2とTLR4)、ペプチドグリカン (TLR2)、Pam3CSK4 (TLR2)、LPS (TLR4)で刺激したところ、どのアゴニストでも、L-乳酸の効果を観察することができた。
【0036】
実施例8
オブアブミンペプチドを用いた実験
IL-23は、抗原刺激と共に、エフェクター細胞であるメモリーT細胞やTh17細胞に作用すると、IL-17産生を誘導する。そこで、この系にL-乳酸が働くかどうかを確かめるために、MHCクラスIIに提示されたオブアブミンペプチド(Ovalbumin peptide;OVA323-339)を特異的に認識するT細胞レセプターをもつトランスジェニックマウスの脾臓細胞をオブアブミンペプチド存在下で、BCG-CWSとL-乳酸で刺激した。その結果、IL-17産生は、BCG-CWS刺激に比べ、L-乳酸との共刺激により著しく上昇した。このIL-17産生は、IL-23に対する特異抗体により抑制された。一方、BCG-CWSの作用によるインターフェロンγの産生は、L-乳酸により変化を示さず、またIL-23に対する抗体によっても抑制されなかった。それ故、L-乳酸の効果は、BCG-CWS刺激と共に働き、IL-23の分泌を増強することによりIL-23-IL-17 pathwayの増強に働くと考えられた。
【0037】
実施例9
抗腫瘍効果
BCG-CWSによる抗癌効果に対するL-乳酸の影響をB16メラノーマの移植モデルを使って検討した。マウスに6X105のB16メラノーマ細胞を皮下投与した。腫瘍移植後12日、15日、18日、21日目に、抗原として凍結融解した2.5x105のB16メラノーマ細胞を単独で、または20μgのBCG-CWSとともに、または20μgのBCG-CWSと最終濃度20 mMのL-乳酸とともに皮内投与した{図10において、抗原のみ (closed diamond, T--)、抗原とBCG-CWS (closed circle, TB-)、抗原とBCG-CWS とL-乳酸 (open circle, TBL)}。腫瘍の大きさは、腫瘍投与後11日の時の大きさを1とした。その結果、BCG-CWSと抗原では有意差はなかったが、L-乳酸を加えることにより、16日、18日、19日の点で、p<0.05で有意に腫瘍の増殖を抑制した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の免疫賦活化促進剤は、医薬として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】CADO-LC10細胞培養上清によるp19の分泌促進活性を、分子量30KDa以下の画分及び分子量30KDa以上の画分に分けて示した図である。縦軸は、p40とp19のmRNA量をβ-アクチン(actin)のmRNA量で補正した値を示す。30KDa以上の画分はp40の発現促進活性を示すが、プロテイナーゼKにより活性が消失した。一方、30KDa以下の画分はp19の発現促進活性を示し、プロテイナーゼKにより活性は変化しないことがわかった。
【図2】GM-CSFがIL-12/23のp40の産生を促進することを示した図である。LC-10培養上清によるp40産生促進活性は、抗GM-CSFR抗体で相殺された。このことから、p40産生促進活性は、GM-CSFによるものであることがわかった。
【図3】p19発現促進活性を測定するためのレポータージーンアッセイ用遺伝子を示す図である。
【図4】左図は、CADO-LC10細胞培養上清が、BCG-CWSによるIL-23タンパク質の産生を増大させることを示すELISAの結果である。右図は、BCG-CWSがp19のプロモーターに作用してp19の発現を促進し、CADO-LC-10細胞培養上清がBCG-CWSの発現促進活性を増強することを示す図である。
【図5】L-乳酸が、BCG-CWSによるp19の発現促進活性を濃度依存的に増大させることを示す図である。
【図6】左図は、BCG-CWSによるp40発現促進活性はL-乳酸の影響を受けないことを示す図である。右図は、BCG-CWSによるp19の発現促進活性が、L-乳酸により濃度依存的に増強されることを示す図である。
【図7】他の低分子量モノカルボン酸が、BCG-CWSによるp19発現促進活性に及ぼす効果を示す図である。横軸は低分子量モノカルボン酸の濃度、縦軸はルシフェラーゼ活性(p19発現促進活性)を示す。
【図8】GM-CSFとL-乳酸を併用することによる、ペプチドグリカンのIL-23産生促進活性の相乗的な増大を示す図である。
【図9】種々のTLR2もしくは4アゴニストのp19発現促進活性が、L-乳酸により増強されることを示す図である。
【図10】オブアブミンペプチドを用いたBCG-CWSのIL-17産生促進作用の実験結果を示す図である。左図は、L-乳酸がBCG-CWSのIFN-γ産生促進活性に影響を与えないことを示す。右図は、L-乳酸がBCG-CWSのIL-17産生促進活性を増強し、これが抗IL-23抗体により相殺されることを示す。
【図11】L-乳酸が、BCG-CWSの抗腫瘍効果を増大させることを示す図である。「*」は、抗原とBCG-CWSとL-乳酸を投与した群の抗原のみを投与した群に対する有意差(p<0.05)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量モノカルボン酸化合物を有効成分として含有する、免疫賦活化促進剤。
【請求項2】
低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、請求項1に記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項3】
IL-23及び/又はIL-17分泌促進剤である、請求項1又は2に記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項4】
免疫賦活化がTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニストによるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項5】
TLR2アゴニストがバクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、請求項4に記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項6】
免疫賦活化が癌抗原によるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項7】
免疫賦活化が微生物又は微生物ワクチンによるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項8】
癌免疫療法剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項9】
微生物感染症治療薬又は予防薬である、請求項1〜5及び7のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項10】
微生物感染症が、日和見感染症である、請求項9に記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項11】
日和見感染症がクレブシエラ肺炎、クリプトコッカス感染症、結核、トキソプラズマ感染症、カンジダ感染症である、請求項10に記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項12】
低分子量モノカルボン酸を有効成分として含有する、TLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤。
【請求項13】
TLR2アゴニストがバクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、請求項12に記載のTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤。
【請求項14】
低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、請求項12又は13に記載のTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤。
【請求項15】
TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニスト、及び低分子量モノカルボン酸化合物を含有する、癌免疫療法剤。
【請求項16】
TLR2アゴニストが、バクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、請求項15に記載の癌免疫療法剤。
【請求項17】
低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、D-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、請求項15又は16に記載の癌免疫療法剤。
【請求項18】
更に抗原を含有してなる、請求項15〜17のいずれかに記載の癌免疫療法剤。
【請求項19】
更にGM−CSFを含有してなる、請求項15〜17のいずれかに記載の癌免疫療法剤。
【請求項1】
低分子量モノカルボン酸化合物を有効成分として含有する、免疫賦活化促進剤。
【請求項2】
低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、請求項1に記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項3】
IL-23及び/又はIL-17分泌促進剤である、請求項1又は2に記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項4】
免疫賦活化がTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニストによるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項5】
TLR2アゴニストがバクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、請求項4に記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項6】
免疫賦活化が癌抗原によるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項7】
免疫賦活化が微生物又は微生物ワクチンによるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項8】
癌免疫療法剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項9】
微生物感染症治療薬又は予防薬である、請求項1〜5及び7のいずれかに記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項10】
微生物感染症が、日和見感染症である、請求項9に記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項11】
日和見感染症がクレブシエラ肺炎、クリプトコッカス感染症、結核、トキソプラズマ感染症、カンジダ感染症である、請求項10に記載の免疫賦活化促進剤。
【請求項12】
低分子量モノカルボン酸を有効成分として含有する、TLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤。
【請求項13】
TLR2アゴニストがバクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、請求項12に記載のTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤。
【請求項14】
低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、請求項12又は13に記載のTLR2アゴニスト及び/又はTLR4アゴニスト活性増強剤。
【請求項15】
TLR2アゴニストもしくはTLR4アゴニスト、及び低分子量モノカルボン酸化合物を含有する、癌免疫療法剤。
【請求項16】
TLR2アゴニストが、バクテリアリポペプチド、ペプチドグリカン又はBCG-CWSであり、TLR4アゴニストがLPSである、請求項15に記載の癌免疫療法剤。
【請求項17】
低分子量モノカルボン酸化合物が、L-乳酸、D-乳酸、酢酸またはチオグリコール酸である、請求項15又は16に記載の癌免疫療法剤。
【請求項18】
更に抗原を含有してなる、請求項15〜17のいずれかに記載の癌免疫療法剤。
【請求項19】
更にGM−CSFを含有してなる、請求項15〜17のいずれかに記載の癌免疫療法剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−127277(P2008−127277A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309868(P2006−309868)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(506286928)地方独立行政法人 大阪府立病院機構 (13)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(506286928)地方独立行政法人 大阪府立病院機構 (13)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】
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