説明

入力デバイス

【課題】枠状の光導波路の角部にスペースの余裕がなく、それを解決するために幅狭状の連絡路と幅広状の主路とを組み合わせた場合であっても、枠状の検知空間の長手方向に光強度の揃った均一な光の格子を形成することのできる、検出能力の高い入力デバイスを提供する。
【解決手段】矩形状の検知空間Sを有する四角枠状の光導波路10における発光側の光導波路コアC1は、光入射側の共通部1から、第1連絡路2a,第1主路2bおよび複数の光出射路2cからなる第1分岐コア部2と、第2連絡路3a,第2主路3bおよび複数の光出射路3cからなる第2分岐コア部3とに分岐する二分岐状に形成され、上記主路(2a,3a)における始端側の光入射端面(2d,3d)と主路始端側の最初の光出射路(2c,3c)の分岐開始位置との間の距離(L)が、この主路(2a,3a)の光入射端面(2d,3d)のコア幅(W)以上の長さ(L≧W)になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の辺状部材からなる四角枠状の光導波路内側の検知空間に、物体検出用の光の格子を形成し、この格子状の光の部分的な遮蔽を検知することにより、指やペン等の入力体の位置を検出する入力デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータや各種機器に、指示や座標情報等を入力する入力インターフェースとして、枠状の検知空間内に形成した格子状の光の遮蔽を検出することにより、この検出空間内における指やペン等の入力体の位置を検出する、光学式の入力デバイスが使用されている。
【0003】
この光学式入力デバイスに用いられる光学的検出手段としては、従来、四角枠状のフレームにおいて、互いに対向する一方の辺に複数の発光素子が並設され、他方の辺に複数の受光素子が並んで配置され、上記発光素子から受光素子に向かって出射された光が、上記フレーム内に、縦横に交差する光の格子を形成し、指等による光の遮蔽を検出して、この指等(入力体)の位置を検出するようになっているものが知られている(例えば、特許文献1等を参照。)。
【0004】
しかしながら、上記のような多数の光学素子を使用する従来の光学的検出手段は、発光素子と受光素子との間の位置合わせ(アライメント)等の調整や製造の手間が多く、また部品点数も多いため品質がばらつき、歩留りが向上しない、といった数多くの問題があった。
【0005】
これに対して、本出願人は、特願2010−139063において、一辺に光出射用の発光側コアを有し、対応する他辺に光入射用の受光側コアを有する枠状の光導波路を用い、上記枠において隣接する2つの辺に挟まれた1つの角部の外縁に光源を配設するとともに、この光源の光を、上記隣接する2辺(互いに直交する2つの辺)に分配して、格子状の光の縦方向光および横方向光の両方の形成に利用することにより、光源のアライメント調整等の手間が少なく、軽量、薄形で、かつ、デバイス全体で必要な光を1つの光源で賄うことのできる光学式入力デバイスを提案している。
【0006】
上記出願人の提案(特願2010−139063)にかかる入力デバイス(光導波路デバイス)は、図5(a)に示すように、フラットパネルディスプレイの周囲の額縁部等に配置されるものであり、この額縁部に、発光側の光導波路コア11および受光側の光導波路コア12を備える枠状光導波路と、光源20および受光素子(受光素子アレイ30)とが配設されている。なお、ここでは説明しないが、図中の符号14a,15aは後記の分岐コア部の「連絡路」に、符号14b,15bは後記の分岐コア部の「主路」に、符号14c,15cは後記の分岐コア部の「光出射絡路」に相当する部位である。
【0007】
上記発光側の光導波路コア11は、光源20に接して設けられた広幅状の共通部13と、この共通部13から分岐して枠の一辺方向(この例では長辺方向)に直線状に延びる第1の分岐コア部14と、共通部13の分岐点Jから90°湾曲して枠の他辺(短辺)方向に延びる第2の分岐コア部15とからなる、二分岐状のコアに形成されており、上記共通部13の光入射側端面(光結合面)13aからコアに入射した光源20の発光が、分岐点Jにおける上記第1の分岐コア部14と第2の分岐コア部15のコア幅の比(Wx:Wy)に応じた所定の比率に分配されるようになっている〔図5(b)参照〕。
【0008】
また、これら第1の分岐コア部14および第2の分岐コア部15の各光出射側端部(出光部14xおよび15y)から、上記光源20の光が額縁内の検知空間(領域)Sに出射(投射)されることにより、この検知空間S内に、縦横(xy方向)に交差する光の格子が形成される。そして、指やペン等による上記光の格子の遮蔽を、上記受光側光導波路コア12に繋がる受光素子アレイ30で検知することにより、指やペン等の位置を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3682109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年のディスプレイの額縁部は狭幅(いわゆる「狭額ベゼル」)化されたものが主流となってきており、上記枠状の光導波路を用いた入力デバイスにおいても、その枠(額縁に相当)の辺の幅が狭く、目立ちにくいものが好まれる傾向にある。そこで、本発明者は、上記二分岐状の発光側光導波路コアを有する入力デバイスにおいて、光源とのアライメント等を考慮して、光入射側の共通部と枠の辺部分に配置される分岐コア部との幅を狭くせず、これらの間を繋ぐ連絡路(コア)を幅細状とすることにより、上記コアの配置(設計)の自由度と組み立ての容易さ等とを両立することのできる入力デバイスを考えた。
【0011】
しかしながら、上記のように、共通部から延びる幅狭状の連絡路と、この連絡路に続いて辺の長手方向に沿って配置される幅広状の主路とを備える発光側光導波路コアにおいては、新たな問題が生じ易いことが分かってきた。
【0012】
例えば、図6の受光素子の受光強度分布(スペクトル)に示すように、上記幅狭状の連絡路とそれより幅広状の主路とを接続(光接続)すると、前記発光側光導波路コア11の各光出射側先端(x方向の出光部14xおよびy方向の出光部15y)から出射されるそれぞれの光量(強度)が、枠の辺の長手方向にばらつき、格子状の光の均一性(ユニフォーミティ)が低下する場合があることが分かった。すなわち、幅狭状の連絡路から幅広状の主路に出射された光は、主路の終端側に向かって徐々に拡散するため、この連絡路側(主路の光入射端側)に位置するいくつかの光出射路に、光が到達しない(光が素通りする)ことが分かった。
【0013】
このように、発光側光導波路コア11の各出光部11x,11yから出射される光量が乱れると、検出空間S内において入力体を検出できない部分的な領域(「検出の死角」)がまれに生じるおそれがあり、その改善が求められている。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、枠状の光導波路の角部にスペースの余裕がなく、それを解決するために幅狭状の連絡路と幅広状の主路とを組み合わせた場合であっても、枠状の検知空間の長手方向に光強度の揃った均一な光の格子を形成することのできる、検出能力の高い入力デバイスの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明の入力デバイスは、枠に囲われた空間が検知空間になっている四角枠状の光導波路と、この枠状光導波路の1つの角部の外縁に配設される光源と、複数の受光素子を備える受光手段と、上記光源から出射される光を互いに隣接する上記枠の2辺に分配する二分岐状の発光側光導波路コアと、上記枠の他の2辺にそれぞれ配置されて上記検知空間を通った光を受光手段に導く複数の受光側光導波路コアとを備え、上記二分岐状の発光側光導波路コアが、上記枠の角部に位置する光入射側の共通部と、この共通部の終端側の分岐点から二股状に分岐して上記枠の2辺にそれぞれ配置される分岐コア部とを有するとともに、これら各分岐コア部が、上記共通部から延びる幅狭状の連絡路と、この連絡路に続いて枠の辺の長手方向に沿って配置され連絡路より幅広状になっている主路と、上記辺の長手方向に沿った所定のピッチごとに上記主路から分岐する複数の光出射路とから形成されてなる入力デバイスであって、上記各分岐コア部が、下記の(A)〜(C)のいずれかの構成をとる入力デバイスをその要旨とする。
(A)上記主路における始端側の光入射端面と主路始端側の最初の光出射路の分岐開始位置との間の距離(L)が、この主路の光入射端面のコア幅(W)以上の長さ(L≧W)に形成されている。
(B)上記連絡路と主路との接続部が、この連絡路の光軸を上記主路の中心軸より内縁側にずらせた位置に設けられている。
(C)上記連絡路における主路側の光出射端部が、上記主路の光入射端部に向かってコア幅が徐々に拡幅する略三角形状に形成されている。
【0016】
すなわち、本発明の発明者は、前記課題を解決するために、枠状の光導波路の光路に関する研究を重ね、枠の角部に配置された光源の光を隣接する枠の2辺方向に分配する二分岐状の発光側光導波路コアを備える入力デバイスにおいて、分岐後の各分岐コア部における連絡路と主路の接続(連結)部位を、コア内の光を効率的に分散させる構造(形状)にするより、枠状の光導波路の角部に充分なスペースがとれない場合でも、上記発光側光導波路コアから出射される格子状の光の強度を、枠の辺の長手方向に安定させることができることを見出し、本発明に到達した。
【0017】
なお、本発明におけるコアの「幅」とは、枠状光導波路の辺に沿って延びるコアの長手方向と直交する方向の長さのことをいう。この長さは、枠の辺の面(水平面)上にあらわれる。また、「主路における光入射端面と光出射路の分岐開始位置との間の距離」等における「距離」もこれと同様、上記枠の水平面上における長さをいい、コアの「厚さ」とは、上記枠の水平面に垂直な上下方向の長さをいう。また、連絡路の「光軸」とは、コア内を通過する光束の代表となる幅方向中心の仮想的な光線をいい、主路の「中心軸」とは、上記コアの長手方向に沿ったコアの「幅」の中心線をいう。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の入力デバイスは、枠の角部から各辺方向に光を伝達する幅狭状の連絡路と、この連絡路に続いて枠の辺の長手方向に沿って配置される幅広状の主路と、上記辺の長手方向に沿った所定のピッチごとに上記主路から分岐する複数の光出射路とからなる分岐コア部を備える。そして、上記(A)に記載の入力デバイスは、上記分岐コア部の主路における始端側の光入射端面と主路始端側の最初の光出射路の分岐開始位置との間の距離(L)が、この主路の光入射端面のコア幅(W)以上の長さ(L≧W)に形成されている。そのため、この入力デバイスは、上記枠の角部に連絡路用のスペースが充分に確保できない場合でも、コア内を通過する光が、上記「主路における始端側の光入射端面と主路始端側の最初の光出射路の分岐開始位置との間」でコアの断面(幅方向断面)全体に拡散・均一化される。その結果、本発明の入力デバイスは、上記分岐コア部の光出射側端部(各光出射路)から検知空間に向かって出射されるそれぞれの光の量(強度)が、枠の辺の長手方向に平均化される。これにより、枠(検知空間)の長手方向全域にわたって検出感度の揃った、死角のない高精度な入力体の位置検出を行うことができる。
【0019】
また、上記幅狭状の連絡路と幅広状の主路および複数の光出射路とからなる分岐コア部を備える入力デバイスにおいて、上記連絡路と主路との接続部を、この連絡路の光軸を上記主路の中心軸より内縁側にずらせた位置に設けた(B)場合は、上記枠の角部に充分なスペースがなくても、このコア内を通過する光が、上記主路の始端側で拡散・均一化される。これにより、上記分岐コア部の光出射側端部(各光出射路)から検知空間に向かって出射されるそれぞれの光の量(強度)が、枠の辺の長手方向に平均化される。この構成によっても、本発明の入力デバイスは、枠(検知空間)の長手方向全域にわたって検出感度の揃った、高精度な入力体の位置検出を行うことができる。
【0020】
さらに、上記幅狭状の連絡路と幅広状の主路および複数の光出射路とからなる分岐コア部を備える入力デバイスにおいて、上記連絡路における主路側の光出射端部が、上記主路の光入射端部に向かってコア幅が徐々に拡幅する略三角形状に形成されているもの(C)も、このコア内を通過する光が、上記主路の始端側で拡散・均一化される。これにより、上記分岐コア部の光出射側端部(各光出射路)から検知空間に向かって出射されるそれぞれの光の量(強度)が、枠の辺の長手方向に平均化される。この構成によっても、本発明の入力デバイスは、枠(検知空間)の長手方向全域にわたって検出感度の揃った、高精度な入力体の位置検出を行うことができる。
【0021】
そして、本発明の入力デバイスのなかでも、上記(A)における主路の光入射端面のコア幅(W)が0.5mm以上に設定され、この光入射端面と主路始端側の最初の光出射路の分岐開始位置との間のコア長手方向の距離(L)が、上記光入射端面のコア幅(W)の2倍以上(L≧2W)になっているものは、上記分岐コア部の各光出射側端部から出射される光量を、枠の辺の長手方向により均一なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態における入力デバイスの構成を示す平面図であり、(b)はそのP部拡大図である。
【図2】本発明の第2実施形態における入力デバイスの構成を示す要部拡大図である。
【図3】本発明の第3実施形態における入力デバイスの構成を示す要部拡大図である。
【図4】(a)〜(e)は、本発明の入力デバイスに用いられる枠状光導波路を作製する方法を説明する図である。
【図5】(a)は従来の入力デバイスの構成を示す平面図であり、(b)はそのQ部拡大図である。
【図6】受光素子アレイにおける相対受光強度の分布を、枠のx方向(長辺),y方向(短辺)に対応する受光素子の番号順に表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。
【0024】
図1(a)に全体像を示す第1実施形態の入力デバイスは、例えば、フラットパネルディスプレイ等の表示装置(図示せず)の画面の周囲に配置され、その四角枠状の光導波路10の中央部の空間(検知空間S)から露呈する上記画面の領域に、指やペン等の入力体で触れることにより、この入力体の位置を、上記検知空間S内の座標(x−y座標)として取得し、その位置情報をコンピュータやATM等の情報機器に出力するものである。
【0025】
上記枠状の光導波路10は、上記ディスプレイの画面のサイズに合わせて、横長(長辺Xの長さ:短辺Yの長さ=16:9)の長方形状に形成されたクラッド層4と、このクラッド層4に埋没するようにして形成された光路としてのコア(C1,C2)とからなり、その1つの角部10zの外縁に、光源20としての発光素子が、所定の向きに取り付けられている。なお、この枠状光導波路10は、別個に作製した4つの光導波路部材10A,10B,10C,10D等を組み合わせて構成されている(図中の鎖線は、これらの合わせ目を示す)。
【0026】
また、上記枠状光導波路10には、上記クラッド層4の角部10zに隣接する枠の2辺(図においては長辺10Xと短辺10Y)に、上記光源20から出射される光を、互いに直交する上記2辺10X,10Y方向に所定の比で分配する発光側光導波路コアC1が設けられ、上記辺10X,10Yにそれぞれ対向する他の2辺(10X’,10Y’)に、上記発光側光導波路コアC1からの光を入射させて受光素子(受光素子アレイ30)に導くための複数の受光側光導波路コアC2が設けられている。
【0027】
さらに、上記発光側光導波路コアC1は、枠状光導波路10の角部10zに配置された光入射側の共通部1と、上記共通部1の分岐点Jで分配された光を枠の一辺10X方向および枠の他辺10Y方向に伝達する第1分岐コア部2および第2分岐コア部3とから形成されており、これら各分岐コア部(2,3)は、上記共通部1から各辺方向に光を伝達する幅狭状の連絡路(第1連絡路2a,第2連絡路3a)と、この連絡路(2a,3a)に続いて枠の辺の長手方向に沿って配置される幅広状の主路(第1主路2b,第2主路3b)と、上記辺の長手方向に沿った所定のピッチごとに上記主路から分岐する複数の光出射路(2cおよび3c)とから構成されている。
【0028】
そして、上記第1実施形態の入力デバイスにおいては、図1(b)のように、上記発光側光導波路コアC1は、一方の第1分岐コア部2の主路2bにおける始端側の光入射端面2dと主路2b始端側の最初の光出射路(図中の2c)の分岐開始位置との間の距離(L2)が、この光入射端面2dのコア幅(W2)以上の長さ(L2≧W2)になっているとともに、他方の第2分岐コア部3の主路3bにおける始端側の光入射端面3dと主路3b始端側の最初の光出射路(図中の3c)の分岐開始位置との間の距離(L3)が、この光入射端面3dのコア幅(W3)以上の長さ(L3≧W3)になっている。これが、本発明の第1実施形態の入力デバイスの特徴である。
【0029】
上記入力デバイスについて、さらに詳しく説明すると、この入力デバイスに用いられる枠状光導波路10は、例えば、ポリマー系光導波路の場合、樹脂材料を用いて形成された枠状のクラッド層4(オーバークラッド層4aおよびアンダークラッド層4bからなる)の間に、フォトリソグラフィ法等により上記形状にパターニングされた発光側光導波路コアC1および上記複数の受光側光導波路コアC2が形成されている。
【0030】
上記第1実施形態(図1)における光導波路10の発光側光導波路コアC1は、上記光源20から出射される光を、互いに直交する上記2辺10X,10Y方向に所定の比で分配できるように、光源20に接する光入射側の端部(共通部1)から、枠のx方向(長辺10X側)の第1連絡路2aと、y方向(短辺10Y側)の第2連絡路3aの2方向に分岐する、二分岐形状に形成されており、これら第1連絡路2aおよび第2連絡路3aの終端側(光出射側)にそれぞれ、上記枠の長辺10Xおよび短辺10Yに沿った形状の第1主路2bおよび第2主路3bが形成されている。
【0031】
上記発光側光導波路コアC1の共通部1は、図1(b)のように、第1連絡路2a(コア幅Wx)と第2連絡路3a(コア幅Wy)とを合わせたコア幅W1(この例においてはWx:Wy=1:1)に形成され、その一端側(図示右側)の端面1aは、光源20からの光(白抜き矢印)が入射する光結合面(水平方向の幅W1)となっている。なお、光入射側の端面1aのコア幅W1は、上記光源20との光結合を容易にするために、通常、光源20(発光素子)の発光部幅よりも広くなっている。例えば、発光素子の発光部幅が10μm程度である場合、上記光入射端面1aの幅W1は、40〜1000μmに設計される。また、上記光入射端面1aと発光素子の発光部との間の距離(間隙)は、通常300μm程度に設定される。
【0032】
上記共通部1から分岐した一方の第1連絡路2a(第1分岐コア部2の一部)は、分岐点Jにおける分岐後に、緩やかに湾曲する形状に形成されており、この湾曲部位を通過する光がコアの断面全体に均一に拡散されるようになっている。上記分岐点Jで第1連絡路2aと分岐した第2連絡路3a(第2分岐コア部3の一部)も、その分岐後に湾曲する形状に形成されており、この例では、図1(b)のように、分岐点Jの直後から、1/4円形状(アーチ形状)に湾曲する形状に形成されている。そして、光出射側の終端が、他方の分岐コア部(第2分岐コア部3)の第2主路3bに接続されている。なお、この第2連絡路3aは、この例では上記第1連絡路2aと同幅に形成されており、そのコア幅Wy(およびコア幅Wx)は、好ましくは20〜500μm、さらに好ましくは40〜300μmである。
【0033】
上記第1連絡路2aに繋がる第1主路2bは、その長手方向の先端(終端)まで光が伝達されるように、その始端側(光入射側)が幅広で、かつ、後記光出射路の分岐により終端側に向かって次第に低下して行く光量に対応するために、その終端側が徐々に幅の狭くなる、長手方向に延びる細長の三角形状に形成されている。また、上記第1主路2bの内縁側には、この第1主路2bから分岐する多数の光出射路2c,2c,・・・が形成されている。これら光出射路2cは、辺10Xの長手方向に沿って所定のピッチごとに第1主路2bから次々と分岐する多分岐状に形成されており、その各先端(終端)側に設けられた光出射側端部(出光部2x)が、枠状光導波路10の検知空間S側内縁〔図1(a)においては上側縁〕の所定位置に、それぞれ位置決めされている。なお、上記例では、上記第1主路2bの外縁側が、光入射側の始端部から終端側にかけて徐々に幅が狭くなる(所定角で傾斜する)形状に形成されているが、この第1主路2bは、全体のコア幅が長手方向に同じ(同幅)であってもよい。
【0034】
上記第2連絡路3aに繋がる第2主路3bも、上記第1分岐コア部2と同様、光を枠の一辺(短辺10Y)に沿って分散させる細長の三角形状に形成されており、その内縁側にも、この第2主路3bから分岐する多数の光出射路3c,3c,・・・が形成されている。これら各光出射路3cの先端(終端)側に設けられた光出射側端部(出光部3y)は、枠状光導波路10の検知空間S側内縁〔図1(a)においては右側縁〕の所定位置に、それぞれ位置決めされている。なお、上記第2主路3bも、上記第1主路2bと同様、全体のコア幅が長手方向に同じ(同幅)であってもよい。
【0035】
そして、光源20からの光を上記各出光部2x,3yから出射(投射)させることにより、図1(a)のように、上記枠の内側の検知空間Sに、枠の縦横(xy方向)に交差する光の格子(点線、矢印は光の進行方向を示す)が形成される。なお、上記図1(a)は、図示が煩雑になるのを避けるため、各光出射路2c,3c(および出光部2x,3y)の本数を減らして図示している(出射される光−点線矢印も同様)。上記光出射路2c,3cの本数は、入力デバイスのサイズや解像度等に応じて適宜設計されるが、例えば、上記第1分岐コア部2(長辺10X)側の光出射路2cの本数は200〜800本程度、上記第2分岐コア部3(短辺10Y)側の光出射路3cの本数は100〜600本程度のものが多用される。
【0036】
一方、上記発光側の光導波路コアC1に対して、検知空間Sを挟んで対向する辺(長辺10X’,短辺10Y’)には、上記各光出射路2c,3cの先端(出光部2x,3y)のそれぞれに対応する、受光側光導波路コアC2が複数形成されている。これら各受光側光導波路コアC2の光入射側の端部(受光部)は、上記発光側光導波路コアC1の各光出射側先端対向する枠の内縁〔図1(a)においては下側縁と左側縁〕の所定位置にそれぞれ位置決めされており、上記検知空間Sを通過して各受光側光導波路コアC2の先端(受光部)に入射した光が、これら各受光側光導波路コアC2の1本1本を通じて、受光素子アレイ30中で対応する個々の受光素子に導かれるようになっている。
【0037】
なお、上記入力デバイスに用いられる受光素子(アレイ30)としては、CCD,CMOS等のイメージセンサや、多数の受光素子が一列に並ぶCMOSリニアセンサアレイ等を用いることができる。
【0038】
また、上記入力デバイスに用いられる光源20には、発光ダイオード(LED)または半導体レーザー等が用いられ、なかでも、光伝送性に優れるVCSEL(垂直共振器面発光レーザー)が好適に用いられる。上記光源20から出射される光の波長は、近赤外線(波長:700〜2500nm)が好ましい。
【0039】
そして、この例では、図1(a)のように、上記光源20が枠状光導波路10の1つの角部10zの所定位置に配置され、その発光が、この角部10zに隣接する枠の2辺(10Xと10Y)に導かれるようになっている。そのため、このデバイス全体で必要な光を、1つの光源で賄うことができる。
【0040】
上記第1実施形態の入力デバイスにおいては、先に述べたように、分岐コア部(2,3)の主路(2b,3b)における始端側の光入射端面(2d,3d)と主路始端側の最初の光出射路(2c,3c)の分岐開始位置との間のコア長手方向の距離(L2,L3)が、この光入射端面(2d,3d)のコア幅(W2,W3)以上の長さ(L2≧W2およびL3≧W3)になっている。そのため、この入力デバイスでは、上記分岐コア内を通る光が、上記主路(2b,3b)の始端部で充分に拡散され、コアの断面全体に均一化される。これにより、第1実施形態における入力デバイスは、これら各分岐コア部2,3の光出射路2c,3cから検知空間Sに向かって出射される格子状の光の光量(強度)を、枠の辺の長手方向に均一なものとすることができる。さらに、格子状の光の光量が辺の長手方向に平均化されることから、上記第1実施形態の入力デバイスは、枠(検知空間S)の長手方向全域にわたって検出感度の揃った、死角のない高精度な入力体の位置の検出を行うことが可能になる。
【0041】
なお、上記第1実施形態の入力デバイスにおいては、各主路(2b,3b)における光入射端面(2d,3d)のコア幅(W2,W3)が0.5mm以上の場合、これら光入射端面(2d,3d)と主路始端側の最初の光出射路(2c,3c)の分岐開始位置との間のコア長手方向の距離(L2,L3)が、上記光入射端面(2d,3d)のコア幅(W2,W3)の2倍以上(L2≧2W2およびL3≧2W3)になっていることが望ましい。この点については、後記の実施例で説明する。
【0042】
つぎに、本発明の第2実施形態(図2)の入力デバイスについて説明する。
上記第2実施形態における光導波路10の発光側光導波路コアC1も、基本的な構成は、前記第1実施形態(図1)における入力デバイスと同様であり、その要部拡大図である図2に示すように、角部10zに配置された共通部1と、分岐点Jから枠の一辺10X方向および枠の他辺10Y方向に分岐する第1分岐コア部2および第2分岐コア部3とから形成されている。
【0043】
この第2実施形態における発光側光導波路コアC1が第1実施形態と異なる点は、一方の第1連絡路2aと主路2bとの接続部が、この連絡路2aの光軸T1を上記主路2bの中心軸T2より枠の内縁側にずらせた位置に設けられているとともに、他方の第2連絡路3aと主路3bとの接続部が、この連絡路3aの光軸T3を上記主路3bの中心軸T4より枠の内縁側にずらせた位置に設けられている点である。その他の構成は、前記第1実施形態の入力デバイスと同様である。
【0044】
以上の構成によっても、この第2実施形態入力デバイスでは、上記分岐コア内を通る光が、上記主路(2b,3b)の始端部で充分に拡散され、コアの断面全体に均一化される。これにより、第2実施形態における入力デバイスも、これら各分岐コア部2,3の光出射路2c,3cから検知空間Sに向かって出射される格子状の光の光量(強度)を、枠の辺の長手方向に均一なものとすることができる。また、枠(検知空間S)の長手方向全域にわたって検出感度の揃った、死角のない高精度な入力体の位置の検出を行うことが可能になる。
【0045】
つぎに、本発明の第3実施形態(図3)の入力デバイスについて説明する。
上記第3実施形態における光導波路10の発光側光導波路コアC1も、基本的な構成は、前記第1実施形態(図1)における入力デバイスと同様であり、その要部拡大図である図3に示すように、角部10zに配置された共通部1と、分岐点Jから枠の一辺10X方向および枠の他辺10Y方向に分岐する第1分岐コア部2および第2分岐コア部3とから形成されている。
【0046】
この第3実施形態における発光側光導波路コアC1が第1実施形態と異なる点は、一方の第1連絡路2a(コア幅Wx)における主路2b側の端部(光出射端部)が、上記主路2b(コア幅W2)に向かってこのコア幅が徐々に拡幅する形状になっているとともに、他方の第2連絡路3a(コア幅Wy)における主路3b側の端部(光出射端部)が、上記主路3b(コア幅W3)に向かってこのコア幅が徐々に拡幅する形状になっている点である。その他の構成は、上記第1,第2実施形態の入力デバイスと同様である。
【0047】
上記構成の第3実施形態入力デバイスによれば、上記分岐コア内を通る光が、上記主路(2b,3b)の始端部に至る前にコア幅いっぱいに充分に拡散され、コアの断面全体に均一化される。これにより、第3実施形態における入力デバイスも、これら各分岐コア部2,3の光出射路2c,3cから検知空間Sに向かって出射される格子状の光の光量(強度)を、枠の辺の長手方向に均一なものとすることができる。さらに、枠(検知空間S)の長手方向全域にわたって検出感度の揃った、死角のない高精度な入力体の位置の検出を行うことが可能になる。
【0048】
なお、上記各実施形態においては、発光側光導波路コアC1の光出射側端部(各光出射路2c,3c先端の出光部2x,3y)と、各受光側光導波路コアC2の光入射側端部(受光部)とは、枠の内側に向かって反るレンズ状(平面視円弧状)になっていることが望ましい。上記発光側光導波路コアC1の光出射側端部を上記レンズ状とすることにより、これら光出射側端部から、枠状光導波路10の内縁に垂直でかつ互いに平行な光線を出射することができる。また、上記各受光側光導波路コアC2の光入射側端部を上記レンズ状とすることにより、これら光入射側端部の集光効率を高めることができる。上記各コアC1,C2の出光部および受光部をレンズ状としない場合は、別体のレンズ体を準備し、これを上記枠状光導波路10の検知空間S内の周縁に沿って設置してもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、光導波路10のコアC1,C2が、樹脂材料(高分子材料)を用いて形成されたポリマー系光導波路を例に説明したが、このコアC1,C2を構成する材料は、例えばガラス等、周囲に配設されるクラッド層6より屈折率の高い材料であればよい。ただし、上記コアC1,C2と周囲のクラッド層6との屈折率の差は、0.01以上であることが好ましく、上記形状のパターンニング性等も考慮すると、紫外線硬化樹脂等の感光性樹脂が最も好ましい。使用する紫外線硬化樹脂としては、アクリル系,エポキシ系,シロキサン系,ノルボルネン系,ポリイミド系等があげられる。
【0050】
さらに、上記コアC1,C2の周囲のクラッド層4は、上記紫外線硬化樹脂等の感光性樹脂のうち、上記コアC1,C2より屈折率の低い材料を用いればよい。その他にも、クラッド層4には、ガラス,シリコン,金属,樹脂等、平坦性を有する基板を兼用する材料を用いることもできる。さらに、クラッド層4は、コアC1,C2の下側のアンダークラッド層(後記の4b)のみとしてもよく、上記コアC1,C2を覆うオーバークラッド層(後記の4a)は、形成しなくてもよい。そして、上記枠状光導波路10は、プラズマを用いたドライエッチング法,転写法,露光・現像を用いたフォトリソグラフィ法,フォトブリーチ法等により作製することができる。
【0051】
つぎに、上記入力デバイスの作製方法について、第1実施形態の入力デバイスを例に説明する。図4(a)〜(e)は、本発明の実施形態における入力デバイス用光導波路の製法を模式的に説明する断面図である。なお、図4においては、光導波路の発光側のみを図示しており、これと並行して作製される受光側の図示を省略している。また、図中の符号C1はコア(発光側の光導波路コア)、4aはオーバークラッド層、4bはアンダークラッド層、21は基台、22は成形型であり、図4の(a)〜(e)は、光導波路が作製される工程順を表す。
【0052】
まず、枠状の光導波路を形成するための基台21を準備し、平坦な場所に載置する。この基台21の材質は、作製されるポリマー系光導波路を、後に剥離可能な材質が選択される。
【0053】
ついで、図4(a)に示すように、上記基台21の表面に、アンダークラッド層4bを形成する。このアンダークラッド層4bは、感光性樹脂を形成材料として、フォトリソグラフィ法により形成することができる。アンダークラッド層4bの厚さは、例えば、5〜50μmの範囲内に設定される。
【0054】
つぎに、図4(b)に示すように、上記アンダークラッド層4bの表面に、フォトリソグラフィ法により、パターン形状の発光側光導波路コアC1および受光側光導波路コアC2(図示せず)を形成する。これらコアC1(およびC2)の形成材料としては、上記アンダークラッド層4bおよび後記のオーバークラッド層4aの形成材料よりも屈折率が高い感光性樹脂が用いられる。なお、先に述べたように、上記発光側光導波路コアC1および受光側光導波路コアC2の枠の内縁部〔各光出射路2c,3c先端の出光部2x,3yと各受光側光導波路コアC2の光入射側先端の受光部:図1(a)参照〕は、平面視レンズ状に形成される。
【0055】
ついで、オーバークラッド層4a形成用の、透光性を有する成形型22を準備する。この成形型22には、図4(c)に示すように、オーバークラッド層4aの表面形状に対応する型面を有する凹部(成形キャビティ)が形成されており、この実施形態では、上記各光出射路2c(3c)の先端側端部を覆う部位〔図4(c)の右端部分〕が、上下方向(光導波路の厚み方向)に1/4円の円弧状のレンズ曲面に形成されているものを使用している。
【0056】
ついで、この成形型22を、上記凹部を上にして(天地を逆にして)、成形型22を成形ステージ(図示せず)の上に設置し、まず、上記凹部内にオーバークラッド層4a形成用の感光性樹脂(ワニス状)を充填する。ついで、アンダークラッド層4b上に形成したコアC1を、上記成形型22の凹部に対して位置決めし、その状態で、上記アンダークラッド層4bを上記成形型22に押圧し、上記ワニス状のオーバークラッド層4a形成用の感光性樹脂の中にコアC1を浸す。そして、この状態で、紫外線等の照射線を、上記成形型22を透して上記感光性樹脂に照射し、その感光性樹脂を露光する。これにより、上記感光性樹脂が硬化して、図4(d)に示すような、コアC1(およびC2)の内縁側先端部に対応する部位がレンズ状に形成されたオーバークラッド層4aが形成される。
【0057】
つぎに、上記感光性樹脂の硬化が完了した後、上記成形型22からオーバークラッド層4aをコアC1,アンダークラッド層4bおよび基台21とともに脱型し、上記基台21を剥離させて取り除くことにより、図4(e)に示すような、枠状の光導波路10を得る。
【0058】
ついで、図1(a)に示すように、得られた枠状光導波路10の角部10zの所定位置に、コアC1の共通部1の端面(光結合面)1aに正対するように光源20を配置し、共通部1の光軸と光源20の光軸とを調芯して位置決めする。また、受光側にも受光素子アレイ30を取り付け、図示しない配線等を接続することにより、本実施形態における入力デバイスを作製することができる。
【実施例】
【0059】
つぎに、本発明の入力デバイスの効果を実証する試験として行った「実施例」について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
本実施例においては、設計上、枠状光導波路の角部に充分なスペースを確保できない場合を想定し、発光側光導波路の分岐コア部の主路における始端側の光入射端面と主路始端側の最初の光出射路の分岐開始位置との間のコア長手方向の距離(以下、単に「長手方向距離L」という)と、この主路の光入射端面のコア幅(以下、「光入射端面のコア幅W」という)との関係を種々変化させて、一方側の辺側の光強度分布(図6の「X−area」参照)とを測定し、「光入射端面のコア幅Wに対する長手方向距離Lの比」がこの光強度分布に与える影響を検証した。
【0061】
まず、光導波路の形成材料を準備した。
〔アンダークラッド層の形成材料〕
成分A:脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製,EHPE3150)75重量部
成分B:エポキシ基含有アクリル系ポリマー(日油社製,マープルーフG−0150M)25重量部
成分C:光酸発生剤(サンアプロ社製,CPI−200K)4重量部
これら成分A〜Cを、紫外線吸収剤(チバジャパン社製,TINUVIN479)5重量部とともに、シクロヘキサノン(溶剤)に溶解することにより、アンダークラッド層の形成材料を調製した。
【0062】
〔コアの形成材料〕
成分D:ビスフェノールA骨格を含むエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製,157S70)85重量部
成分E:ビスフェノールA骨格を含むエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製,エピコート828)5重量部
成分F:エポキシ基含有スチレン系ポリマー(日油社製,マープルーフG−0250SP)10重量部
これら成分D〜Fと上記成分C 4重量部とを、乳酸エチルに溶解することにより、コアの形成材料を調製した。
【0063】
〔オーバークラッド層の形成材料〕
成分G:脂環骨格を有するエポキシ樹脂(ADEKA社製,EP4080E)100重量部
この成分Gと上記成分C 2重量部とを混合することにより、オーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0064】
<光導波路の作製>
〔アンダークラッド層の形成〕
まず、ステンレス製の基台(平板状)の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料を塗布した後、160℃×2分間の乾燥処理を行い、感光性樹脂層を形成した。ついで、上記感光性樹脂層に対し、紫外線を照射して積算光量1000mJ/cm2の露光を行い、厚さ20μmのアンダークラッド層を形成した〔図4(a)参照〕。
【0065】
〔コアの形成〕
ついで、上記アンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料を塗布した後、170℃×3分間の加熱処理を行い、溶媒を揮散させてコア形成用の感光性樹脂層を形成した。つぎに、上記分岐状でかつそのコアの分岐点より終端側の各分岐コア部(連絡路,主路,光出射路)が所定形状になっている開口パターン〔図1(b)参照〕が形成されたフォトマスクを介して(ギャップ100μm)紫外線を照射し、積算光量3000mJ/cm2の露光を行った後、120℃×10分間の加熱処理を行い、樹脂の硬化を完了させた。そして、現像液(γ−ブチロラクトン)を用いてディップ現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、120℃×5分間の加熱乾燥処理を行うことにより、パターニングされた厚さ(高さ)50μmの分岐状コアを形成した。
【0066】
〔オーバークラッド層の形成〕
つぎに、オーバークラッド層形成用の、透光性を有する成形型を準備した。この成形型は、オーバークラッド層の表面形状に対応する成形キャビティを備えている。そして、その凹部を上にして、成形型を成形ステージの上に設置し、上記凹部に、前記のオーバークラッド層の形成材料を充填した。
【0067】
ついで、上記アンダークラッド層の表面にパターン形成したコアを、上記成形型の凹部に対して位置決めし、その状態で、上記アンダークラッド層を上記成形型に押圧し、上記オーバークラッド層の形成材料(ワニス状)に、上記コアを浸した。そして、この状態で、紫外線を、上記成形型を透して上記オーバークラッド層の形成材料に照射して積算光量8000mJ/cm2の露光を行い、コアの先端部に対応するオーバークラッド層の部分が、上下方向に略1/4円弧状のレンズ曲面(曲率半径1.5mm)に形成されたオーバークラッド層を形成した。
【0068】
つぎに、上記成形型から、上記オーバークラッド層を、アンダークラッド層およびコアとともに脱型させるとともに、上記基台をアンダークラッド層から剥離して、入力デバイス作製用の光導波路(総厚1mm)を得た。なお、上記二分岐状の光導波路コア〔図1(b)参照〕は、共通部1のコア幅W1が120μm、分岐後の第1連絡路2aのコア幅Wxが80μm、第2連絡路3aのコア幅Wyが40μmに形成されている。
【0069】
<供試用入力デバイスの作製>
〔光源の取り付け〕
得られた枠状の光導波路の角部に位置する、発光側の光導波路コアC1の共通部1の端部(光結合面)1aに当接する所定位置〔図1(b)等参照〕に、発光強度(または出力)が3mWのVCSEL光源(Optowell社製)を配設し、共通部1の中心軸上に上記光源の発光部(幅10μm)の中心がくるように、調芯・位置合わせしてこの光源を固定し、供試用の入力デバイスを作製した。なお、上記光源の発光部の発光面とコアC1の共通部1の光結合面(1a)との距離(間隙)は300μmとした。また、光導波路のコア幅,コア高さの測定には、レーザー顕微鏡(キーエンス社製)を、コア中心および光源のずれ量の測定には、光学顕微鏡(オリンパス社製 MX51)を用いた。
【0070】
〔測定用受光素子ユニットの取り付け〕
ついで、光強度測定用の受光素子ユニット(Optowell社製 CMOSリニアセンサアレイ)を準備し、上記発光側光導波路コアC1の各光出射路2cの先端(出光部2x)から出射される光(信号)が、このセンサアレイの各受光素子に個々に入射するように(すなわち、光出射路1本に対して受光素子1個が対応するように)、上記受光素子ユニットを位置決めし、その状態で、上記枠状光導波路に接着剤等で固定して、枠の辺の一方(この場合は長辺10X)側における各出光部2xごとの光強度を個別に測定できるように準備した。
【0071】
<光強度の測定および評価>
上記供試用の入力デバイスを用いて、まず、枠状光導波路の角部に充分なスペースがあり、主路の光入射側端部における上記「長手方向距離L」を光の拡散に充分な10mm確保できる場合を、リファレンス(理想的なコア形状)として、枠の辺の一方側における受光強度分布を測定した。ついで、上記「光入射端面のコア幅W」が、それぞれ0.2,0.5,1.0,1.5,2.0,3.0mmのサンプルを用意して、枠の辺の一方側における光強度分布(図6における右側のX−areaに相当)を測定し、計測した辺の一方側の領域(X−area)を、辺の長手方向に対応する11の区画(Division01〜11:図6参照)に等分し、その区画ごとに、下記式(1)により、上記リファレンスからの光強度の変化率(%)を求めた。
変化率(%) = (計測光量−リファレンス光量)/リファレンス光量・・・(1)
【0072】
試験における適否の判定は、上記11の区画の最大値・最小値なかで変化率(絶対値)が最大のものを抽出し、その値が20%以内のものを「○」、1つでも20%を越えるものがある場合を「×」と判定した。上記実施例におけるサンプルの寸法の組み合わせと、実験の結果を以下の「表1」,「表2」に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
上記表1,2から分かるように、本発明の入力デバイスは、上記分岐コア部の主路の「光入射端面のコア幅W」が0.5mm未満の場合において、主路の光入射側端部における上記「長手方向距離L」を、この「入射端面のコア幅W」より長くすることにより、充分な辺長手方向の光強度の均一性が得られることが分かる。また、上記主路の「光入射端面のコア幅W」が0.5mm以上に設定されている場合は、主路の光入射側端部における上記「長手方向距離L」を、この「光入射端面のコア幅W」の2倍以上の長さとすることにより、同様に、充分な辺長手方向の光強度の均一性を得ることができる。以上の構成により、本発明の入力デバイスは、枠の辺の長手方向に強度の揃った、均一な光(検出光)を安定して出射できることが確認された。
【0076】
なお、別の実験により、「上記連絡路と主路との接続部が、この連絡路の光軸を上記主路の中心軸より枠の内縁側にずらせた位置に設けられている」場合、および、「上記連絡路における主路側の光出射端部が、上記主路の光入射端部に向かってコア幅が徐々に拡幅する形状になっている」場合も、上記と同様、本発明の入力デバイスは、枠の辺の長手方向に強度の揃った、均一な光(検出光)を安定して出射できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の枠状光導波路を用いた入力デバイスは、枠状の光導波路の角部にスペースの余裕がない場合でも、枠の辺の長手方向に平均化された均一な光を、検知空間に向けて投射できる。これにより、上記入力デバイスは、検知空間内に死角のない、高精度な入力体の検出を行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1 共通部
2 第1分岐コア部
2a 第1連絡路
2b 第1主路
2c 光出射路
2d 光入射端面
3 第2分岐コア部
3a 第2連絡路
3b 第2主路
3c 光出射路
3d 光入射端面
10 光導波路
C1 光導波路コア
S 検知空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠に囲われた空間が検知空間になっている四角枠状の光導波路と、この枠状光導波路の1つの角部の外縁に配設される光源と、複数の受光素子を備える受光手段と、上記光源から出射される光を互いに隣接する上記枠の2辺に分配する二分岐状の発光側光導波路コアと、上記枠の他の2辺にそれぞれ配置されて上記検知空間を通った光を受光手段に導く複数の受光側光導波路コアとを備え、上記二分岐状の発光側光導波路コアが、上記枠の角部に位置する光入射側の共通部と、この共通部の終端側の分岐点から二股状に分岐して上記枠の2辺にそれぞれ配置される分岐コア部とを有するとともに、これら各分岐コア部が、上記共通部から延びる幅狭状の連絡路と、この連絡路に続いて枠の辺の長手方向に沿って配置され連絡路より幅広状になっている主路と、上記辺の長手方向に沿った所定のピッチごとに上記主路から分岐する複数の光出射路とから形成されてなる入力デバイスであって、上記各分岐コア部が、下記の(A)〜(C)のいずれかの構成をとることを特徴とする入力デバイス。
(A)上記主路における始端側の光入射端面と主路始端側の最初の光出射路の分岐開始位置との間の距離(L)が、この主路の光入射端面のコア幅(W)以上の長さ(L≧W)に形成されている。
(B)上記連絡路と主路との接続部が、この連絡路の光軸を上記主路の中心軸より内縁側にずらせた位置に設けられている。
(C)上記連絡路における主路側の光出射端部が、上記主路の光入射端部に向かってコア幅が徐々に拡幅する略三角形状に形成されている。
【請求項2】
上記(A)における主路の光入射端面のコア幅(W)が0.5mm以上に設定され、この光入射端面と主路始端側の最初の光出射路の分岐開始位置との間のコア長手方向の距離(L)が、上記光入射端面のコア幅(W)の2倍以上(L≧2W)になっている請求項1記載の入力デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109494(P2013−109494A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252851(P2011−252851)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】