説明

入退室管理用応答器及びこれを用いた入退室管理システム

【課題】扉近傍で立ち止まらなくても扉を解錠することができる入退室管理用応答器等を提供する。
【解決手段】入退室管理用応答器6は、起動信号に対応した電波を受信するための受信部6aと、応答信号に対応した電波を送信するための送信部6bと、外部からの操作を受け付けるためのボタン部6cと、受信部が起動信号に対応した電波を受信していないときに、ボタン部が操作された場合は、ボタン部の操作の受付を継続して保持する保持部6fと、受信部が起動信号に対応した電波を受信したときに、保持部がボタン部の操作の受付を保持している場合は、応答信号に対応した電波の送信を送信部に指示する制御部6dと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入退室管理用応答器及びこれを用いた入退室管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
入退室管理システムにおいては、扉近傍の壁に、質問器が設けられる。質問器は、LF帯域の起動信号を送信する。この起動信号となるLF電波は、質問器を中心として伝播される。LF電波の伝播範囲外で応答器が起動信号を受信していない場合、通行を許可された社員等が行う応答器のボタン操作は破棄される。これに対し、LF電波の伝播範囲内で応答器が起動信号を受信しているときに、応答器のボタン操作がなされた場合、応答器がUHF帯域の応答信号を送信する。
【0003】
この応答信号は、質問器に受信される。この応答信号に含まれた識別情報(ID番号)に基づいて、個人認証が行われる。この個人認証の結果に基づいて、入退室制御が行われる。個人認証により通行が許可されると、扉が解錠する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−205205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、LF電波の伝播範囲は、質問器を中心として半径1〜2m程度である。このため、多くの利用者は、応答器のボタンを操作する際、扉近傍でいったん立ち止まる必要がある。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、扉近傍で立ち止まらなくても扉を解錠することができる入退室管理用応答器及びこれを用いた入退室管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る入退室管理用応答器は、扉近傍に設けられた質問器から起動信号に対応した電波を受信し、前記扉の解錠制御に用いる識別情報を含む応答信号に対応した電波を送信する入退室管理用応答器であって、前記起動信号に対応した電波を受信するための受信部と、前記応答信号に対応した電波を送信するための送信部と、外部からの操作を受け付けるためのボタン部と、前記受信部が前記起動信号に対応した電波を受信していないときに、前記ボタン部が操作された場合は、前記ボタン部の操作の受付を継続して保持する保持部と、前記受信部が前記起動信号に対応した電波を受信したときに、前記保持部が前記ボタン部の操作の受付を保持している場合は、前記応答信号に対応した電波の送信を前記送信部に指示する制御部と、を備えたものである。
【0008】
この発明に係る入退室管理システムは、扉近傍に設けられ、起動信号に対応した電波を送信する質問器と、前記起動信号に対応した電波を受信し、前記扉の解錠制御に用いる識別情報を含む応答信号に対応した電波を送信する応答器と、を備え、前記起動信号に対応した電波を受信するための受信部と、前記応答信号に対応した電波を送信するための送信部と、外部からの操作を受け付けるためのボタン部と、前記受信部が前記起動信号に対応した電波を受信していないときに、前記ボタン部が操作された場合は、前記ボタン部の操作の受付を継続して保持する保持部と、前記受信部が前記起動信号に対応した電波を受信したときに、前記保持部が前記ボタン部の操作の受付を保持している場合は、前記応答信号に対応した電波の送信を前記送信部に指示する制御部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
これらの発明によれば、扉近傍で立ち止まらなくても扉を解錠することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1における入退室管理システムのブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1における入退室管理システムに利用される応答器の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1における入退室管理システムを利用した扉近傍の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における入退室管理システムのブロック図である。
図1において、1は部屋の出入口である。出入口1には、扉2が設けられる。扉2には、電気錠3が設けられる。
【0013】
出入口1近傍には、電気錠制御盤4が設けられる。電気錠制御盤4は、電気錠3に接続される。電気錠制御盤4近傍には、質問器5が設けられる。質問器5は、電気錠制御盤4に接続される。出入口1の通行を許可された利用者は、応答器6を携帯する。
【0014】
次に、電気錠制御盤4を説明する。
電気錠制御盤4は、データ部4a、制御部4bを備える。データ部4aは、電気錠3を解錠するか否かを判断するためのデータを記憶する機能を備える。制御部4bは、電気錠3の施解錠を制御する機能を備える。
【0015】
次に、質問器5を説明する。
質問器5は、例えば、RFID装置(Radio Frequency Identificatin 装置:無線式ID装置)からなる。質問器5は、LF送信部5a、UHF受信部5b、表示部5c、制御部5dを備える。
【0016】
LF送信部5aは、応答器6に対する起動信号に対応したLF電波(長波帯の電波)を所定の周期で送信する機能を備える。UHF受信部5bは、応答器6の応答信号であるUHF電波(極超短波帯の電波)を受信する機能を備える。表示部5cは、電波の送受信状況や扉2の施解錠状態を表示する機能を備える。制御部5dは、質問器5全体の動作判断を行う機能を備える。
【0017】
次に、応答器6を説明する。
応答器6は、例えば、RFIDタグ(Radio Frequency Identificatin 装置:無線式IDタグ)からなる。応答器6は、LF受信部6a、UHF送信部6b、ボタン部6c、制御部6d、電池6eを備える。
【0018】
LF受信部6aは、質問器5から起動信号であるLF電波を受信する機能を備える。UHF送信部6bは、当該応答器6の識別情報(ID番号)を含む応答信号に対応したUHF電波を送信する機能を備える。ボタン部6cは、外部からの操作を受け付ける機能を備える。
【0019】
制御部6dは、応答器6全体の動作判断を行う機能を備える。制御部6d内には、保持部6fが設けられる。保持部6fは、LF受信部6aが起動信号に対応したLF電波を受信していないときに、ボタン部6cが操作された場合、ボタン部6cの操作の受付を一定時間が経過するまで保持する機能を備える。電池6eは、応答器6に電力を供給する機能を備える。
【0020】
次に、図2を用いて、応答器6の動作を説明する。
図2はこの発明の実施の形態1における入退室管理システムに利用される応答器の動作を説明するためのフローチャートである。
【0021】
ステップS1では、応答器6は、ボタン部6cの押圧による割り込み操作がなされたか否かを判定する。割り込み操作がなされるまで、当該判定が繰り返される。割り込み操作がなされると、ステップS2に進む。
【0022】
ステップS2では、応答器6は、制御部6dを起動する。その後、ステップS3に進み、制御部6dは、ボタン部6cの操作の受付処理を行い、当該受付処理を保持部6fに記憶させる。その後、ステップS4に進み、応答器6は、LF受信部6aが起動信号に対応したLF電波を受信しているか否かを判定する。
【0023】
LF受信部6aが起動信号に対応したLF電波を受信している場合は、ステップS5に進む。ステップS5では、制御部6dは、UHF送信部6bに対し、応答信号に対応したUHF電波の送信を指示する。これにより、応答器6の動作が終了する。
【0024】
これに対し、ステップS4でLF受信部6aが起動信号に対応したLF電波を受信していない場合は、ステップS6に進む。ステップS6では、制御部6dは、ボタン部6cの操作を受付処理してから一定時間が経過したか否かを判定する。
【0025】
ボタン部6cの操作を受付処理してから一定時間が経過していない場合は、ステップS4に戻る。これに対し、ボタン部6cの操作を受付処理してから一定時間が経過した場合は、応答器6の動作が終了する。このとき、保持部6fに保持されていた受付処理は破棄される。
【0026】
次に、図3を用いて、扉2の施解錠制御を説明する。
図3はこの発明の実施の形態1における入退室管理システムを利用した扉近傍の側面図である。
【0027】
図3においては、7はLF電波範囲である。LF電波範囲7は、起動信号に対応したLF電波の伝播範囲である。LF電波範囲7は、質問器5のLF送信部5aを中心として半径1〜2mの範囲である。LF電波範囲7内で応答器6のボタン操作をするためには、利用者は、扉2近くでいったん立ち止まる必要がある。
【0028】
しかしながら、本実施の形態においては、応答器6のボタン部6cの操作が操作されてから一定時間が経過するまで、ボタン部6cの操作の受付は継続して保持される。このため、出入口1を通行する意志のある利用者は、扉2に向かって歩きながら、LF電波範囲7外のA地点で、応答器6のボタン部6cを操作すればよい。
【0029】
その後、利用者が一定時間内にLF電波範囲7内のB地点まで移動した時点で、応答器6のLF受信部6aが起動信号に対応したLF電波を受信する。この受信によって、応答器6の制御部6dは、UHF送信部6bに対し、応答信号に対応したUHF電波の送信を指示する。この指示によって、応答器6のUHF送信部6bは、応答信号に対応したUHF電波を自動送信する。
【0030】
この応答信号は、質問器5のUHF受信部5bに受信される。この受信により、質問器5の制御部5dは、応答信号に含まれた識別情報(ID番号)を電気錠制御盤4に出力する。電気錠制御盤4の制御部4bは、データ部4aに記憶されたデータと識別情報とを照合する。
【0031】
照合結果により、個人認証が行われる。利用者が認証されなかった場合、電気錠制御盤4の制御部4bは、電気錠3の施錠状態を維持する。これに対し、利用者が認証された場合、電気錠制御盤4の制御部4bは、電気錠3に解錠指示を出力する。この解錠指示により、電気錠3は扉2を解錠する。このような扉2の施解錠制御は、利用者が扉2近傍に到着するまでに完了する。
【0032】
以上で説明した実施の形態1によれば、応答器6のLF受信部6aが起動信号に対応したLF電波を受信していないときに、ボタン部6cが操作された場合は、ボタン部6cの操作の受付が保持される。その後、応答器6のLF受信部6aが起動信号に対応したLF電波を受信したときに、当該操作の受付が保持されている場合は、識別情報を含む応答信号に対応したUHF電波がUHF送信部6bから送信される。
【0033】
このため、利用者は、扉2の数メートル手前で歩行しながら、応答器6のボタン部6cを操作すれば、扉2を解錠することができる。すなわち、利用者は、扉2近傍で立ち止まらなくても、扉2を解錠することができる。これにより、利用者は、出入口1を円滑に通行することができる。
【0034】
なお、実施の形態1においては、応答器6のボタン部6cの操作の受付が保持されてから一定時間経過した場合に、当該操作の受付が破棄される。しかしながら、当該操作の受付が破棄される条件を、一定時間の経過に限定する必要はない。
【0035】
例えば、応答器6のボタン部6cの操作の受付が保持されてから応答器6が所定の距離以上移動した場合に、当該操作の受付を破棄してもよい。また、応答器6のボタン部6cの操作の受付が保持されてから応答器6の移動方向が所定の角度以上に変化した場合に、当該操作の受付を破棄してもよい。
【0036】
これらの場合、利用者の通行意志とは関係なく応答器6のボタン部6cが誤操作された場合であっても、応答器6のボタン部6cの操作受付がいつまでも保持されることを防止できる。
【0037】
また、図2のステップS3の後処理として、応答器6の制御部6dの起動を終了させ、ステップS4の後処理として、応答器6の制御部6dを起動させてもよい。この場合、電池6eの寿命を延ばすことができる。
【符号の説明】
【0038】
1 出入口
2 扉
3 電気錠
4 電気錠制御盤
4a データ部
4b 制御部
5 質問器
5a LF送信部
5b UHF受信部
5c 表示部
5d 制御部
6 応答器
6a LF受信部
6b UHF送信部
6c ボタン部
6d 制御部
6e 電池
6f 保持部
7 LF電波範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉近傍に設けられた質問器から起動信号に対応した電波を受信し、前記扉の解錠制御に用いる識別情報を含む応答信号に対応した電波を送信する入退室管理用応答器であって、
前記起動信号に対応した電波を受信するための受信部と、
前記応答信号に対応した電波を送信するための送信部と、
外部からの操作を受け付けるためのボタン部と、
前記受信部が前記起動信号に対応した電波を受信していないときに、前記ボタン部が操作された場合は、前記ボタン部の操作の受付を継続して保持する保持部と、
前記受信部が前記起動信号に対応した電波を受信したときに、前記保持部が前記ボタン部の操作の受付を保持している場合は、前記応答信号に対応した電波の送信を前記送信部に指示する制御部と、
を備えたことを特徴とする入退室管理用応答器。
【請求項2】
前記保持部は、前記ボタン部の操作の受付を保持してから一定時間が経過した場合に、前記操作の受付を破棄することを特徴とする請求項1記載の入退室管理用応答器。
【請求項3】
前記保持部は、前記ボタン部の操作の受付を保持してから前記応答器が所定の距離以上移動した場合に、前記操作の受付を破棄することを特徴とする請求項1記載の入退室管理用応答器。
【請求項4】
前記保持部は、前記ボタン部の操作の受付を保持してから前記応答器の移動方向が所定の角度以上に変化した場合に、前記操作の受付を破棄することを特徴とする請求項1記載の入退室管理用応答器。
【請求項5】
扉近傍に設けられ、起動信号に対応した電波を送信する質問器と、
前記起動信号に対応した電波を受信し、前記扉の解錠制御に用いる識別情報を含む応答信号に対応した電波を送信する応答器と、
を備え、
前記応答器は、
前記起動信号に対応した電波を受信するための受信部と、
前記応答信号に対応した電波を送信するための送信部と、
外部からの操作を受け付けるためのボタン部と、
前記受信部が前記起動信号に対応した電波を受信していないときに、前記ボタン部が操作された場合は、前記ボタン部の操作の受付を継続して保持する保持部と、
前記受信部が前記起動信号に対応した電波を受信したときに、前記保持部が前記ボタン部の操作の受付を保持している場合は、前記応答信号に対応した電波の送信を前記送信部に指示する制御部と、
を備えたことを特徴とする入退室管理システム。
【請求項6】
前記保持部は、前記ボタン部の操作の受付を保持してから一定時間が経過した場合に、前記操作の受付を破棄することを特徴とする請求項5記載の入退室管理システム。
【請求項7】
前記保持部は、前記ボタン部の操作の受付を保持してから前記応答器が所定の距離以上移動した場合に、前記操作の受付を破棄することを特徴とする請求項5記載の入退室管理システム。
【請求項8】
前記保持部は、前記ボタン部の操作の受付を保持してから前記応答器の移動方向が所定の角度以上に変化した場合に、前記操作の受付を破棄することを特徴とする請求項5記載の入退室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−132214(P2012−132214A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285399(P2010−285399)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】