説明

全反射吸収測定装置

【目的】 高感度の全反射吸収測定装置装置を提供すること。
【構成】 赤外分光全反射吸収測定法の内部反射エレメントとして赤外光ファイバ17使用する。ファイバの一部を収容する導入口11と排出口12を有する測定セル4を恒温槽3内に配置し、フーリエ変換赤外分光光度計本体2の赤外光出射部と赤外光ファイバの一端17A、およびファイバの他端17Bと赤外検出器5をライトガイド7,8でそれぞれ接続し、データ処理装置6を本体と赤外検出器に接続する。赤外光出射部および赤外検出器5に対するライトガイド7,8の相対的位置をそれぞれ微動位置合わせ装置9,10で調節する。ライトガイドを赤外光ファイバで構成してもよい。さらに、搬送系13、排出処理系14、パージ系15、真空系16を接続する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、赤外分光法における全反射吸収測定法および装置に関し、特に赤外分光法における気体あるいは液体試料の全反射吸収測定法およびその装置、ならびに固体試料、特に光ファイバの表面・界面の評価法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、赤外分光法による気体あるいは液体試料の測定においては、透過法が主に用いられてきた。透過法による液体試料測定においては、固定密閉式セルあるいは組立式液体セルが使用されている。固体密閉式セルでは、セルの洗浄が繁雑であること、一方、組立式液体セルでは、気密性が悪いため試料によっては測定中に蒸発すること、また粘度の大きい試料の場合、光路長が一定にならない。赤外透過窓の洗浄や測定用セルの取り扱いが煩雑であること等の欠点があった〔錦田,岩本;「赤外法による材料分析」(1986年8月、講談社発行),69−70頁〕。
【0003】そこで、最近では、透過法に代り、試料および測定装置の取り扱いの簡便な全反射吸収測定法(Attenuated Total Reflection法、以下、ATR法と略記する。)が使用されるようになっている。市販されている代表的な液体試料測定用ATR装置を図15,図16,図17に示す。
【0004】図15は、例えば、日本分光(株)よりATR−500/Mとして市販されている液体試料用ATR装置の主要構成部を示す該略図であり、ここに61はATR装置、62は台、63A,63Bはミラー、64は試料ホルダである。また、図16は図15のATR測定装置の水溶液試料ホルダの詳細を示す分解図であり、ここに65はサンプルホルダ、65Aはスロット、66は締め付けねじ、67は蓋、68A、68Bは押え板、69A,69Bはパッキング、70は内部反射エレメント(Internal Reflection Element、以下IREと略記する)である。
【0005】図15および図16に示すように、液体試料用ATR測定装置61には、台62が設けられているとともに、この台62には試料ホルダ取り付け窓が形成されているとともに、ミラー63A,63Bが設けられている。また、試料ホルダ64はサンプルホルダ65に形成されたスロット65AにIRE70がはめ込まれ、その上にパッキング69A,69B,押え板68Aが順次重ねられ、締め付けねじ66で押え板68Aと68Bに形成されたねじ穴に係合させて固定されている。液体試料はIRE70を底面とするくぼみに注ぐ。適当な赤外光源(図示しない)からの出射光がミラー63Aで反射され、試料ホルダ64の側面から入射し、入射角45゜程度でIRE70に入射し、試料ホルダ64内に保持された測定試料−IRE界面で全反射されてミラー63Bに到達し、ミラー63Bで反射されて赤外検出器(図示しない)に導かれる。
【0006】一方、図17は、例えば(株)島津製作所よりATR−8110Cとして市販されている、円柱型IREを用いる液体試料用ATR測定装置の主要部構成を示す概略図であり、ここに71はIRE、72A,72Bは円錐型ミラー、73A,73Bは曲面ミラー、74は測定試料である。
【0007】上述の図15,図16,図17の液体用ATR測定装置はいずれも赤外分光光度計本体の試料室内に設置し、赤外吸収スペクトルを測定する。このため、揮発性の液体の測定やin situ分析が不可能であること、試料交換時の測定装置の洗浄が煩雑であること、反応性の大きい試料に対しては使用できないこと、赤外分光光度計の性能劣化を起こす可能性のある測定試料には使用できない等の欠点がある。また、これらのATR装置では内部反射回数も少なく、感度もあまり高くない。さらに、IRE材料自体の赤外吸収のため、内部反射回数もあまり増やせない。
【0008】一方、通常の透過測定用セルを用いて、気体状の有害あるいは危険物質の赤外吸収スペクトルを測定する場合には、赤外分光光度計本体をグローボックス、化学ドラフト等内に収納する必要があり、装置のメンテナンス、ハンドリングが煩雑となる。
【0009】さらにまた、気体試料用ATR装置は市販されていない。
【0010】一方、固体試料の測定においては、一番問題となるのは、測定試料とIREプリズムとの間の密着の再現性が乏しいことである。固体試料の場合、よい密着性を得るため、例えば、測定試料の背面にゴムシート等を置き、力を加えて測定試料をIREプリズムに押し付ける方法が従来採用されている。このため、KRS−5のように材質の柔らかいIREプリズムでは傷がつきやすく、またゲルマニウムのように硬くて脆い材質のIREプリズムの場合にはIREプリムが割れることがあった。それに代わる方法として、赤外吸収があまり無く、屈折率が測定試料の屈折率より大きい液体を測定試料−IREプリズム間に挟むこと、あるいは液体の代りに柔らかく透明な固体を用いて密着性を改善することも行われている。しかし上記のいずれの手段を用いても、硬い測定試料とIREプリズムとの間の密着性の再現性は乏しい〔未高編;「表面赤外およびラマン分光」(1990年11月、アイピーシー発行)、81〜84頁〕。
【0011】さらに、繊維状試料の測定においては、表面が平滑で、適度な硬さを持つゴム板等に繊維間に隙間の無いように向きを揃えて巻つけ、かつ巻いた繊維の交差がなく、また背面から押し付けた時に繊維がIREプリズムに一様に接触し、ゴム板が直接IREプリズムに接触しないようにするサンプリングが取られている〔錦田,岩本著;「赤外法による材料分析」(1986年8月、講談社発行)、175〜176頁〕。しかし、操作が煩雑で、ガラスのように破損しやすい試料の測定には適していない。
【0012】また、ATR法は、IREプリズムと接した試料表面でエバネッセント波が透過できる厚さまでの情報を得る手段であるため、従来のATR法および装置では表面から遠いところにある界面の分析は困難であり、この場合、測定しようとする界面まで、エバネッセント波が透過できる厚さに表面層を除去する必要があり、煩雑である。
【0013】さらに、測定試料のIREプリズムに対する屈折率が大きい、あるいは非常に近い場合には、フーリエ赤外分光光度計の付属装置として市販されているATR測定装置は使用できない。そこで、例えば、文献(Y.Nagasawa, H.Ishida, F.Soeda, A.Ishitani; FT−IR−ATR Observation of SiOH and SiH in the Oxide Layer on an Si Wafer, Microchim. Acta, 1988, pp.431−434.)に述べられたように、シリコン表面の酸化層のATR測定においては、測定試料を台形型のプリズムに加工し、測定試料自体をIREプリズムとして使用することも試みられたが、赤外光の入射面、出射面の加工が困難である。
【0014】一方、従来より赤外分光法による表面反応の追跡が試みられている。しかしながら、ATR測定装置等の市販の赤外分光光度計の付属装置は、赤外分光光度計内に設置すること、および任意の処理を施した試料の測定を前提に作製されている。このため、例えば、文献(S.R. Loehr, A.J.Bruce,R.Mossadagh, R.H.Doremus and C.T. Moynihan; IR Spectroscopy Studies ofAttack of Liquid Water of ZrF4 −BasedGlasses, Materials Science Forum, Volume 5(1985), pp.311−322.)に述べられているように、市販の赤外分光光度計では、通常、試薬と任意時間反応させた測定試料を反応槽から取り出し、洗浄、乾燥操作等を経て、赤外吸収スペクトルの測定が行われる。したがって、これらの付属装置では、反応性ガスや溶液等の特定の雰囲気内での固体表面における極短時間の反応の連続測定あるいはin situ分析は不可能である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、これら従来の装置の持つ上述した問題点を解消した、気体,液体または固体試料の赤外吸収スペクトルを高感度に測定し、さらに、赤外分光光度計本体から任意に離れた場所で、気体,液体または固体試料、あるいは気体反応あるいは溶液反応の測定を可能とする、全反射吸収測定法とその装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決するために、本発明の全反射吸収測定装置では、1)光透過材料を含む光導波路を内部反射エレメントとして備えたことを特徴とする。
【0017】2)上述した1)の装置において、前記光導波路により構成される内部反射エレメントが光ファイバあるいは平面光導波路あるいは円筒型プリズムであてもよい。
【0018】3)上述した1)の装置において、前記光導波路がコアおよびクラッドから構成されており、該クラッドの一部を化学的あるいは物理的手段により除去しコアのみとしたクラッド欠損部を設けてもよい。
【0019】4)上述した1)の装置において、前記光導波路がコアおよびクラッドから構成されており、該クラッドの厚さがエバネッセント波が透過できる厚さ以下であるクラッド厚減少部を有していてもよい。
【0020】5)上述した1)の装置において、前記光導波路がコアおよびクラッドから構成されており、該クラッドの一部が通気性あるいは選択的透過性を有し、クラッドを透過した気体あるいは液体試料がコアと接することができるようにしてもよい。
【0021】6)上述した1)の装置において、前記光導波路がコアおよびエアクラッドから構成され、あるいは円筒型プリズムから構成されており、前記光導波路はその表面に測定物質と反応することにより化学的あるいは光学的特性を変化させる特性変化物質を、エバネッセント波が透過できる程度の厚さに固定化した層を有していてもよい。
【0022】7)上述した6)の装置において、前記光導波路は、前記特性変化物質層の上にさらに通気性あるいは選択的透過膜を設けてもよい。
【0023】8)内部反射エレメントである光導波路と、フーリエ変換赤外分光光度計本体からの出射光を集めて前記内部反射エレメントに送る第1の集光装置と、前記内部反射エレメントからの光を集める第2の集光装置とを具備した全反射吸収測定装置において、内部反射エレメントとしての光導波路の少なくとも一部と測定試料とを収納する測定セルと、前記フーリエ変換赤外分光光度計本体の赤外光出射部と前記光導波路の一端を接続するための第1のライトガイドと、前記光導波路の他端と前記フーリエ変換赤外分光光度計本体の赤外検出器を接続するための第2のライトガイドと、前記第1の集光装置に設けられ、前記赤外光出射部に対する前記第1のライトガイドの相対的位置を調整する第1の微動位置合わせ装置と、前記第2の集光装置に設けられ、前記赤外光出射部に対する前記第2のライトガイドの相対的位置を調整する第2の微動位置合わせ装置とを備え、前記内部反射エレメントは前記光導波路から構成されていることを特徴とする。
【0024】9)上述した8)の装置において、前記光導波路が光ファイバであり、該光ファイバの少なくとも一端が、前記第1のライトガイドあるいは第2のライトガイドを構成していてもよい。
【0025】10)上述した8)の装置に置いて、前記第1の微動位置合わせ装置は、赤外光の入射角度変更手段を有していてもよい。
【0026】
【作用】本発明では、赤外透過ガラス、例えばハロゲン化ガラス、カルコゲナイドガラス等のガラスや、石英系ガラス、プラスチック等、光導波路への加工が可能な無機・有機材料について適用可能である。必要な材料を公知の光導波路作製技術に従って光導波路に加工し、本発明の技術に従いIREに加工する。光導波路としては光ファイバ型光導波路その他の形状の光導波路が使用できる。
【0027】IREである光導波路には、エアクラッドファイバ、プラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバを使用することができる。
【0028】IREである光ファイバ型の光導波路には、光ファイバを直線状、あるいはコイル状に加工して使用することができる。
【0029】IREである光導波路には、平面型光導波路を使用することができる。
【0030】IREである光導波路には、円筒型プリズムを使用することができる。
【0031】IREである光導波路のクラッドを、科学的あるいは物理的方法により一部または全部除去して、クラッドの厚さを減少させたクラッド厚減少部を設けてもよい。この場合、クラッド厚減少部のクラッド厚はエバネッセント波が透過できる厚さ以下とする。また、クラッド厚減少部においては、コアを完全に露出させてもよい。一般に、エバネッセント波が透過できるクラッドの厚さ(dp)は、赤外光が透過する物質、これと接する物質の屈折率、および赤外光の波長と入射角度により決定される。例えば、フッ化物ガラスファイバの場合、OH基の赤外吸収波数の3500cm-1近傍ではエバネッセント波の強度が1/eとなる距離はテフロンクラッドで0.75μm、またフッ化物ガラスクラッドで1.4μm程度である。本発明では、エバネッセント波が透過できるクラッドの厚さを余裕をみて1/2dpとすると、クラッド厚減少部の厚さは1μm以下にするのが好ましい。
【0032】IREである光導波路のクラッドの一部が通気性あるいは選択的透過性を持つ場合は、クラッド厚減少部を設けない光導波路をIREとすることもできる。
【0033】上述のように処理した光導波路、あるいはクラッドがエアクラッドである光導波路の表面に、測定物質と反応することにより、化学的あるいは物理的特性を変化させる物質をエバネッセント波透過できる程度の厚さに固定化したものをIREとすることもできる。さらに、IRE表面に固定した物質の表面を、通気性あるいは選択的透過性をもつ膜で覆ったものをIREとすることもできる。
【0034】また、本発明において、クラッドがエアクラッドである光導波路ではコアが露出しているため、任意の部分を測定部位(IRE)として使用することができる。
【0035】クラッドがエアクラッドである光導波路では任意の部分を、また上述の処理を施した光導波路では、上述の表面処理を施した部分を測定セル内に収納し、固定して使用する。
【0036】測定セルの構造は、IREが固定でき、かつ測定試料の導入口と排出口を持ち、それぞれに測定試料の搬送系、排出処理系、測定セル内のパージ系、真空系を取り付けられるものとする。また、加熱が可能である構造とする。測定セルの材質はガラス、フッ素樹脂、ステンレス等の金属あるいはこれらの組み合わせとするのが好ましい。
【0037】本発明では、フーリエ変換赤外分光光度計の赤外光の出射部とIREを第1のライトガイドにIREである光導波路の一端(IREの光導波路で測定セルから出ている部分の一方)を接続している。また、第2のライトガイドに第2の微動位置合わせ装置が取り付けてあり、この第2のライトガイドにIREである光導波路の他端(IREの光導波路で測定セルから出ている部分の他方)を接続している。この場合、IREである光導波路を第1の微動位置合わせ装置に直接接続することにより、IRE自体をライトガイドとして使用すること、あるいはIREである光導波路を第2のライトガイドの第2の微動位置合わせ装置に直接接続することにより、IRE自体をライトガイドとして使用することもできる。また、ライトガイドとIREは接続治具により接続してもよい。さらに、第1および第2のライトガイドの一方または双方を、IRE材料である光透過材料から作製された光ファイバを使用してもよい。
【0038】本発明においては、ライトガイドの第1および第2の微動位置合わせ装置は、それぞれ、フーリエ変換赤外分光光度計本体から出射される赤外光をライトガイドに集光させる、あるいは、ライトガイドから出射される赤外光を赤外検出器の受光部に集光させるための、X−Y軸ステージとZ軸ステージ、複数のレンズあるいはミラー、およびライトガイド固定用治具から構成してあるので精密な位置合わせが可能である。
【0039】第1の微動位置合わせ装置(フーリエ変換赤外分光光度計本体から出射される赤外光をライトガイドに集光させるために使用する装置)は、赤外光の入射角度調整手段を有し、赤外光のライトガイドへの入射角度を任意に変更できる。
【0040】本発明ではライトガイドの長さを、任意に設定することが可能であるため、測定セルとフーリエ変換赤外分光光度計本体から任意に離れた恒温槽、ドラフト内等に設置することが可能となり、温度の設定、自動試料交換機能の付与、分光光度計の性能を劣化させるような反応性ガスや溶液の使用が容易となる。従って、種々の気体、液体の赤外吸収スペクトル(全反射吸収スペクトル)の測定だけでなく、気体反応、溶液反応の追跡にも使用できる。
【0041】本発明においては、気体および液体試料を測定試料として赤外吸収スペクトルを測定し得るだけでなく、固体試料自体をIREとして使用することにより固体試料、例えば赤外光ファイバの表面・界面を評価することができる。この場合、エアクラッドファイバはコアが露出しているので任意の部分を表面反応に付することができる。また、クラッドの影響がない状態での赤外光ファイバの表面・界面の反応、状態が評価される。クラッドが反応試薬に対して透過性をもつ場合は、クラッド厚減少部を設けない赤外光ファイバを測定試料とすることもできる。また、完全被覆状態の赤外光ファイバを使用してクラッド側の状態を評価することもできる。このように、本発明は、ガラス表面処理過程の各段階における表面状態の逐次分析、反応の経時変化の測定に使用することができる。また、コア−クラッド界面状態評価、クラッドおよび光ファイバ被覆層の安全性評価にも応用できる。
【0042】また、本発明においては、光導波路を適切に設計することにより、IRE内での内部反射回数を大幅に増大させることができるため、高感度測定が可能となる。例えば、IREとして光ファイバあるいは平面型光導波路を使用する場合、内部反射回数を、市販装置の内部反射回数の数回から100回以上に大幅に増加させることが可能であり、数10倍の感度向上が期待できる。
【0043】
【実施例】以下、図面を参照しながら、実施例により本発明の装置をより具体的に説明する。以下の実施例においては、IREである光導波路として、光ファイバを使用する例を述べるが、前述のように、光導波路として平面型光導波路、円筒型プリズムもIREとして使用できる。また、実施例では、光源および測定系にフーリエ変換赤外分光光度計を使用しているが、赤外領域以外の測定においては、光源、検出器等の変更により本発明の適用が可能である。従って、本発明は以下の実施例に限定されないこと勿論である。
【0044】〔実施例1〕図1は本発明の気体・液体試料用全反射吸収測定装置を用いた測定系の主要構成の一例を示すブロック図であり、ここに、1は気体・液体試料用全反射吸収測定装置、2はフーリエ変換赤外分光光度計本体、3は恒温槽、4は測定セル、5は赤外検出器、6はデータ処理装置、7は第1のライトガイド、8は第2のライトガイド、9は第1の微動位置合わせ装置、10は第2の微動位置合わせ装置、11は測定試料の導入口、12は測定試料の排出口、13は測定試料の搬送系、14は測定試料の排出処理系、15はパージ系、16は真空系、17は内部反射エレメント(IRE)、18,19は光ファイバとライトガイドの接続部である。
【0045】本発明の装置においてIREとして使用できる光導波路は、図2に模式的斜視図を示すように、平面型光導波路17a,円筒型プリズム17b,光ファイバ17cである。図2において(A)はコア17Kとクラッド17Lを有する平面型光導波路17aがライトガイド7,8と接続端部18,19で接続されている状態を示す。(B)は円筒型プリズム17bがライトガイド7,8と接続端部18,19で接続されている状態を示す。(C)はコア17Kとクラッド17Lを有する光ファイバ17cがライトガイド7,8と接続端部18,19で接続されている状態を示す。光導波路の形状は、光導波路を作製する材料に合わせて選択すればよい。
【0046】図1に示したように、本発明の気体・液体全反射吸収測定装置1は、フーリエ変換赤外分光光度計本体2、と赤外検出器5と光学的に接続される。一方、データ処理装置6はフーリエ変換赤外分光光度計本体2と赤外検出器5とに電気的に接続される。より詳細には、フーリエ変換赤外分光光度計本体2と恒温槽3内に設けられた測定セル4内に固定したIRE17とを第1のライトガイド7で接続し、IRE17の他端と赤外検出器5を第2のライトガイド8で接続している。フーリエ変換赤外分光光度計本体2の出射部(図示しない)には第1の集光装置9を取り付け、この第1の集光装置の微動位置合わせ装置(図示しない)に第1のライトガイド7を接続している。また、赤外検出器5に第2の集光装置10を取り付け、この第2の集光装置の微動位置調整装置(図示しない)に第2のライトガイド8を接続している。測定セル4は測定試料の導入口11、排出口12を有し、この導入口11に測定試料の搬送系13、排出口12に測定試料の排出処理系14をそれぞれ接続している。また、測定試料の導入口11、排出口12にパージ系15を接続する。測定試料の排出口12には真空系16を接続する。測定セル4の内部にはIREである光ファイバ17を収納固定する。光ファイバ17は接続部18,19で第1および第2のライトガイド7,8とそれぞれ接続している。
【0047】図3は図1に示すIRE17として使用される光ファイバで、測定セル4内に収納されている部分の形状を示す模式的断面図である。図3の(A)〜(J)において、17はIRE、17Kはコア、17Lはクラッド、17Mはエバネッセント波が透過できる厚さ以下のクラッド厚減少部、17Nは通気性あるいは選択的透過膜、17Oは測定物質と反応することにより化学的あるいは光学的特性を変化させる物質(特性変化物質)を固定化した層である。(A)はエアクラッドファイバ、(B)はプラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバのクラッド17Lの一部を除去し、コア17Kを露出したファイバ、(C)はプラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバで、クラッド17Lの厚さが一部でエバネッセント波が透過できる厚さ以下に化学的または物理的に除去したクラッド厚減少部17Mを有する光ファイバ、(D)はプラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバで、クラッドの一部が通気性あるいは選択的透過膜17Nであり、これを膜17Nを透過した液体あるいは気体試料がコアと接することのできる光ファイバである。(E)はエアクラッドファイバの表面(コア17Kの表面)に測定物質と反応することにより、化学的あるいは光学的特性を変化させる物質(特性変化物質)をエバネッセント波が通過できる程度の厚さに固定化した層17Oを有する光ファイバ、(F)はコアを露出させたプラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバのコア17Kの露出部に、測定物質と反応することにより、化学的あるいは光学的特性を変化させる特性変化物質を、エバネッセント波が透過できる程度の厚さに固定化した層17Oを有する光ファイバ、(G)はプラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバで、クラッド17Kの厚さをエバネッセント波が透過できる厚さ以下に化学的あるいは物理的に除去したクラッド厚減少部17Mに、測定物質と反応することにより化学的あるいは光学的特性を変化させる物質を、エバネッセント波が透過できる程度の厚さに固定化した層17Oを有する光ファイバである。(H)は(E)の処理を施した部分を通気性あるいは選択的透過膜17Nで覆った光ファイバ、(I)は(F)の処理を施した部分を通気性あるいは選択的透過膜17Nで覆った光ファイバ、(J)は(G)の処理を施した部分を通気性あるいは選択的透過膜17Nで覆った光ファイバを示している。本発明では、IRE17の形状は測定の目的に応じて(A)〜(J)から適宜選択することができる。
【0048】なお、IREが平面型光導波路の場合も上述の(A)〜(J)と同様な表面処理が行える(図示しない)。また、円筒型プリズムの場合は、上述の表面処理のうち、エアクラッドファイバと同様な表面処理、すなわち、(A),(E),(H)が行える(図示しない)。
【0049】図4は図1の本発明の気体・液体試料用全反射吸収測定装置を用いた測定系において、本発明の装置の一部を詳細に示す概略構成ブロック図であり、ここに、1〜10,18,19は図1と同じであり、20は可変アイリス、21はレンズ、22はライトガイド固定台、23はライトガイド押え、24はX−Y軸ステージ、25はZ軸ステージ、26は固定台、27はレンズ、28はX−Y軸ステージ、29はZ軸ステージ、30はライトガイド固定台、31はミラー、32はX−Y軸ステージ、33はZ軸ステージ、35は光電素子である。7A,7Bは第1のライトガイドの端部、8A,8Bは第2のライトガイドの端部である。
【0050】図4に示すように、図1の第1の集光装置9はフーリエ変換赤外分光光度計本体2の出射部(図示しない)からの赤外光を可変アイリス20およびレンズ(またはレンズ系)21により第1のライトガイド7の端部7Aに導く。第1のライトガイド7の端部7Aは固定台22に形成されたV溝(図示しない)にライトガイド押え23により固定してあり、この固定台22はX−Y軸ステージ24,Z軸ステージ25によりライトガイド7の端部7Aの相対的位置が調節できる。これにより、フーリエ変換赤外分光光度計本体2の出射部(図示しない)からの赤外光のライトガイド7への入射角度を調整できる。図4に示すように、図1の接続部18は例えば固定台26とレンズ(またはレンズ系)27を有し、固定台26に形成されたV溝(図示しない)によりライトガイド7のもう一方の端部7Bを固定してある。この固定台26はX−Y軸ステージ28,Z軸ステージ29によりライトガイド7の端部7BのIRE17の端部17Aに対する相対位置を調整できる。ライトガイド7を伝播してきた赤外光は端部7Bから調節された入射角度でIRE端部17Aに入射する。この赤外光はIRE17の内部で多数回、例えば100回以上、の反射を繰り返し、IREの表面と接する測定試料により一部が吸収されてIRE17のもう一方の端部17Bから出射し、第2のライトガイド8の一方の端部8Aに入射し、ライトガイド8内を伝播して第2の集光装置10に入射する。この第2のライトガイド8のもう一方の端部8Bは固定台30に形成されたV溝(図示しない)に固定してある。端部8Bから出射した赤外光はミラー31で集光する。この場合、ミラー31の向き等をX−Y軸ステージ32,Z軸ステージ33で調節して反射光を赤外検出器5の光電素子35に入射し電気信号に変える。この電気信号をデータ処理装置6に導く。ミラー31はレンズ系で置き換えることもできる。
【0051】図5は第2のライトガイドの端部8AとIRE17の端部17Bの接続部19の具体的構成例を示す模式的断面図であり、(A)はV溝スプライス、(B)はX−Y,Z軸ステージによるバッティングジョイントを示す。ここに、8B,17Bは図4と同じであり、36はV溝、37は光ファイバ押えである。図5(A)に示すように、第2のライトガイドの端部8AとIREである赤外光ファイバ17の端部17Bとの接続部19はV溝スプライスにより接続することができる。すなわち、赤外光ファイバ17の端部17Bをライトガイド8の端部8Aに形成したV溝36に光ファイバ押え37により固定する。あるいは、図5(B)に示すように、接続部19はX−Y,Z軸ステージによるバッティングジョイントにより接続できる。すなわち、ライトガイド8の端部8AをX−Y,Z軸ステージ(図示しない)に取り付け、ライトガイド8の端部8Aの導波層8Cに赤外光ファイバ17の端部17Bを突き合わせ固定してもよい。
【0052】〔実施例2〕図6は本発明の気体・液体試料用全反射吸収測定装置の別の構成例を示す概略ブロック図である。この実施例に従う構成は図4に示す実施例1の気体・液体試料用全反射吸収測定装置構成とは第1のライトガイド7をIREである光ファイバ17自体で構成した点が相違する。光ファイバ17の端部17Aは第1の集光装置9の固定台22に固定し、この固定台22をX−Y軸ステージ24,Z軸ステージ25により調整して、フーリエ変換赤外分光光度計本体2の出射部(図示しない)からの赤外光が可変アイリス20とレンズ21とを通り端部17Aに入射する角度を調節できるようにしてある。固定台22に端部17Aを固定するのは単に粘着テープ、あるいは透明樹脂(接着剤)で固定してもよいし、固定台17にV溝(図示しない)を形成し、このV溝にファイバ押え37により端部17Aを固定してもよい。
【0053】図7は、図6の気体・液体試料用全反射吸収測定装置の構成例において、フーリエ変換赤外分光光度計本体2の出射部(図示しない)からの赤外光が第1の集光装置9において可変アイリス20とレンズ21とを通り端部17Aに入射する角度を調節するための別の構成を示す模式的断面図である。図7において、2,9,17,17A,20,21は図6と同じであり、38は入射角度変更部、39は固定治具である。図7に示すように、光ファイバ17の端部17Aは角度変更部38に形成されたV溝(図示しない)に固定治具39により固定している。固定治具39は例えば図6の光ファイバ押え37を用いて押え、接着剤あるいは粘着テープで固定してもよい。この場合、入射角度変更部38は光ファイバの先端を中心に回動できるように支持する。これにより、赤外光の光ファイバへの入射角度を任意に調節することができる。
【0054】〔実施例3〕図8は本発明の装置を用いて液体試料の全反射吸収スペクトルを測定するための測定系の構成を説明するブロック図であり、ここに、1〜12,15,17,17K,17Lは図1,図3に示したものと同じであり、40は測定試料容器、41は送液パイプ、42は送液ポンプ、43は廃液パイプ、44は廃液容器、45は真空ポンプ45、46はトラップ46である。
【0055】この実施例で使用した装置では、赤外光ファイバの1つである、フッ化物をコアとしテフロンをクラッドとするテフロンクラッドファイバをIRE17として使用し、全吸収スペクトルを測定した。また、ライトガイド7,8にはIRE自体を使用した。図8においては、テフロンクラッドファイバ17の一部のみを拡大して示している。測定セル4内にファイバのクラッド17Lの一部を除去し、コア17Kを露出させた部分(図3R>3(B)の構造に相当する)を収納し固定した。測定セル4の測定試料の導入口11には測定試料の搬送系13を接続する。この測定試料の搬送系13として試料容器40、送液パイプ41、送液ポンプ42を設け、試料容器40内に貯留された試料溶液を送液パイプ41を通して送液ポンプ42により測定試料の導入口11から測定セル4内に送る。試料の排出口12には測定試料の排出処理系14を接続するとともにパージ系15,真空系16を接続する。測定試料の排出処理系14として廃液パイプ43と廃液容器44を設けてある。測定後の廃液を廃液パイプ43を通して図示しない送液ポンプにより廃液容器44に導き、排出する。パージ系としては図示しない窒素源に接続した窒素導入系16を測定試料の導入口11と排出口12に結合し、図示しない送気ポンプにより窒素ガスを測定セル4内に通気しパージする。真空系16としては真空ポンプ45とトラップ46とを設けた。
【0056】本実施例で測定したフッ化物光ファイバの直径は、125μm(テフロンクラッドを含めた直径は、131μm)、長さは80cmであった。フッ化物光ファイバはエポキシ樹脂接着剤で測定セルに固定した。また赤外光の入射角度は12°、クラッドを除去した部分の長さは10cmとしたため、測定セル内のコア部における内部反射回数は約110回である。したがって、図15,図16に示した市販のATR装置と比較し、この実施例の装置は40倍程度の感度向上が期待できる。
【0057】全反射吸収スペクトル測定は次の操作で行う。真空ポンプ45を作動させ、測定セル4内を減圧する。測定試料容器40内の試料溶液を送液ポンプ42を作動させて送液パイプ41を通して測定セル4の試料導入口11から測定セル内部に導入し、IREである赤外光ファイバ17のコア17Kの表面と接触させ、全反射吸収スペクトルを測定する。赤外吸収スペクトルの測定が終れば、パージ系15からの窒素で試料を排出した後、真空ポンプ45を作動させ測定セル4内を減圧にする。洗浄液を測定セル4内に導入し洗浄した後、同様にして窒素で洗浄液を排出する。この操作を数回繰り返した後、測定セルを減圧し、次の試料溶液を導入する。
【0058】図9はこの実施例の装置を使用して測定した水の全反射吸収スペクトル47Aとバックグラウンドスペクトル47Bを示す線図である。
【0059】本実施例で示した通り、本発明の装置を使用すれば液体の全反射吸収スペクトルを測定することができる。
【0060】〔実施例4〕図10は本発明の装置を用いて気体試料の全反射吸収スペクトルを測定するための測定系の構成を説明するブロック図であり、1〜12,15,17,17K,17Lは図1,図3に示したものと同じであり、48は測定試料容器、49は送気パイプ、50は切り替え弁、51は排気パイプ、52は排気処理設備、53はドラフトである。
【0061】図10に示すように、測定試料を貯留した容器48から測定試料を送気パイプ49を通して切り替え弁50を経由して測定セル4の試料導入口11から測定セル4の内部に導入する。切り替え弁50には排気パイプ51を接続し、配管内の残留した測定試料を排気する。スクラバー等の排気処理設備52を設置して排気を処理する。測定セル4はドラフト53内に設置する。
【0062】〔実施例5〕図11は測定セルを開放系にしたものを使用し、空調を行っている室内の湿度変化の測定例の結果を示す線図である。54,55,56,57,58,59は基準とした時間からの経過時間を、5,10,20,40,60,90分としたときの全反射吸収スペクトルであり、水を示す3750cm-1近傍の吸収ピークが変化していることが分かる。これは、空調装置の運転状況に伴い、湿度が変化していることを示している。
【0063】〔実施例6〕図8に示す装置と同じ装置を赤外光ファイバ表面・界面評価方法に使用して赤外光ファイバと水溶液との反応性を測定した。この場合、測定セル4は反応容器として機能する。測定試料はIRE17としての赤外光ファイバであり、測定試料容器は試薬容器として使用される。
【0064】赤外吸収スペクトル測定は次の操作で行う。真空ポンプ45を作動させ、測定セル(反応容器)4内を減圧する。試薬容器40内の試薬溶液を送液ポンプ42を作動させて送液パイプ41を通して反応容器4の試薬導入口11から反応容器内部に導入し、赤外光ファイバ17の露出コア17Kの表面と反応させ、赤外吸収スペクトル(ATRスペクトル)を測定する。赤外光の測定が終れば、パージ系15からの窒素で試薬溶液を排出した後、真空ポンプ45を作動させ反応容器4内を減圧にする。次に洗浄液を反応容器4内に導入して洗浄した後、同様にして窒素で洗浄液を排出する。この操作を数回繰り返した後、容器を減圧し、次の試薬溶液を導入する。異なる試薬溶液を貯留した複数の試薬容器は図示しないスイッチ機構で接続を切り変えられる。このようにして、順次反応を行い、赤外光の吸収の変化を測定できる。
【0065】図12はこの実施例の装置を使用して行った赤外光ファイバの表面評価で得られた赤外光吸収スペクトルを示す線図であり、ここに、60Aは空気中におけるフッ化物光ファイバの赤外吸収スペクトル、60Bはフッ化物光ファイバを水と反応させたときの赤外吸収スペクトルを示す。
【0066】本実施例で示した通り、本発明の装置を使用すれば、フッ化物光ファイバのATR測定が可能である。
【0067】〔実施例7〕図10に示す装置と同じ装置を赤外光ファイバ表面・界面評価方法に使用して赤外光ファイバと表面と気体との反応性を測定した。この場合も、測定セル4は反応容器として機能する。測定試料はIRE17としての赤外光ファイバであり、測定試料容器48は試薬容器として使用される。反応容器の材質はガラスあるいはフッ素樹脂とするのが好ましい。
【0068】この気相反応測定用の装置を使用した赤外吸収スペクトル測定は次の操作で行う。真空ポンプ45を作動させ、測定セル(反応容器)4内を減圧する。ガスボンベ48内の反応用ガス(試薬)を送気パイプ49を通して反応容器4の試薬導入口11から反応容器内部に導入し、赤外光ファイバ17の露出コア17Kの表面と反応させ、赤外吸収スペクトル(ATRスペクトル)を測定する。赤外光の測定が終れば、パージ系15からの窒素で反応用ガスおよび反応ガスを排出した後、真空ポンプ45を作動させ反応容器4内を減圧にする。この操作を数回繰り返した後、容器を減圧し、次の反応用ガス(試薬)を導入する。異なる種類の反応ガスを貯留した複数の反応用ガスボンベは図示しない切り替え弁で接続を切り変えられる。このようにして、順次反応を行い、赤外光の吸収の変化を測定できる。
【0069】〔実施例8〕図13および図14は、それぞれ、実施例6で使用した装置(図8)を用いて、フッ化物光ファイバと脱イオン水との反応を追跡した赤外吸収スペクトル測定例で得られた結果を示す線図である。
【0070】図13(A)は反応開始から28分経過時まで、(B)は32〜147分経過時までのフッ化物光ファイバと脱イオン水との反応で現れる3200cm-1の吸収ピークの変動を示す赤外吸収スペクトルを示す線図であり、任意時間に測定した赤外吸収スペクトルから差スペクトル法により得た。また図14は、フッ化物光ファイバと脱イオン水との反応で現れる5200,3200cm-1の吸収ピークから得た、吸収強度の時間依存性を示す赤外吸収スペクトルを示す線図である。
【0071】本実施例の通り、本発明の赤外光ファイバの表面・界面評価装置を使用すれば特定雰囲気内の表面化学反応のin situ分析が容易に行える。
【0072】
【発明の効果】以上述べたことから明らかなように、本発明では、光透過材料を光導波路に加工し、これを赤外分光法のATR測定におけるIREとして使用することにより、従来数回であった内部反射回数を100回以上に増大させ感度の向上を計った、高感度な気体・液体全反射吸収測定装置を提供することができる。さらにライトガイドを使用し、IREとフーリエ変換赤外分光光度計および赤外検出器を接続することにより、測定セルを赤外分光光度計から任意に離れた高温槽、ドラフト内等に設置することが可能になり、温度の設定、赤外分光光度計の性能を劣化させるような試料の測定、あるいは有害物質等の使用を容易とする気体・液体試料全反射吸収測定装置を提供することができる。従って、種々の気体、液体の赤外吸収スペクトルの測定だけでなく、気体反応、溶液反応の追跡にも使用できる。
【0073】本発明の応用範囲として、気体・液体反応の追跡、環境モニタリングへの応用等が考えられる。さらに、IREである光導波路表面あるいはIREのコア−クラッド界面に固定する化学物質が、任意の光の波長感受性を持つものであれば、光センサとしても使用できる。さらに、本発明の装置において、光源、検出器等を変更することにより、測定領域を赤外領域以外へ拡張することも可能である。
【0074】また、本発明では、測定試料を光導波路、例えばファイバ形状に加工し、これを赤外分光法のATR測定法におけるIREとして使用することにより、従来からATR測定の問題であった、IREプリズム−測定試料間の密着性、IREの吸収等の問題を解決することができ、感度の向上を計った、高感度な赤外光ファイバ表面・界面評価法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の気体・液体試料用全反射吸収測定装置を用いた測定系の主要構成を示すブロック図である。
【図2】本発明で使用する内部反射エレメントの形状を示す模式的斜視図である。
【図3】本発明で使用する内部反射エレメント(光ファイバ型)の一部分の形状を示す模式的断面図であり、(A)はエアクラッドファイバ、(B)はプラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバのクラッドの一部を除去し、コアを露出させた構造の光ファイバ、(C)はプラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバで、クラッドの厚さをエバネッセント波が透過できる厚さ以下になるよう、クラッドの一部を化学的あるいは物理的に除去した構造の光ファイバ、(D)はプラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバで、クラッドの一部が、通気性あるいは選択的透過膜であり、これを透過した液体あるいは気体試料がコアと接することのできる構造の光ファイバ、(E)はエアクラッドファイバの表面に測定物質と反応することにより、化学的あるいは光学的特性を変化させる物質をエバネッセント波が透過できる程度の厚さに固定化した構造の光ファイバ、(F)はコアを露出させたプラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバのコア露出部に、測定物質と反応することにより、化学的あるいは光学的特性を変化させる物質をエバネッセント波が透過できる程度の厚さに固定化した光ファイバ、(G)はプラスチッククラッドファイバあるいはガラスクラッドファイバで、区クラッドの厚さをエバネッセント波が透過できる程度の厚さ以下に化学的あるいは物理的に除供した部分に、測定物質と反応することによりかがくてきあるいは光学的特性を変化させる物質を、エバネッセント波が透過できる程度の厚さに固定化した構造の光ファイバ、(H)は(E)の処理を施した部分を通気性あるいは選択的透過膜で覆った構造の光ファイバ、(I)は(F)の処理を施した部分を通気性あるいは選択的透過膜で覆った構造の光ファイバ、(J)は(G)の処理を施した部分を通気性あるいは選択的透過膜で覆った構造の光ファイバを示す。
【図4】図1の本発明の装置の一部を詳細に示す概略構成ブロック図である。
【図5】第2のライトガイドの端部と赤外光ファイバ端部の接続部の具体的構成例を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の実施例2に従う気体・液体試料用全反射吸収測定装置の主要構成を示す概略ブロック図である。
【図7】図5の気体・液体試料用全反射吸収測定装置の赤外光の入射角度を調節するための構成の一例を示す模式的断面図である。
【図8】本発明の装置を用いて液体試料の全反射吸収スペクトルを測定するための測定系の構成を説明するブロック図である。
【図9】本発明の実施例3の装置を使用して得られた全反射吸収スペクトルを示す線図である。
【図10】本発明の装置を用いて気体試料の全反射吸収スペクトルを測定するための測定系の構成を説明するブロック図である。
【図11】室内の湿度変化の測定例の結果を示す線図である。
【図12】本発明の装置を用いて行った赤外光ファイバの表面評価で得られた赤外吸収スペクトルを示す線図である。
【図13】本発明の装置を用いて行ったフッ化物光ファイバと脱イオン水との反応を追跡した赤外吸収スペクトルを示す線図である。
【図14】本発明の装置を用いて行ったフッ化物光ファイバと脱イオン水との反応を追跡した赤外吸収スペクトルを示す線図である。
【図15】市販の液体試料用ATR測定装置の構成を示す斜視図である。
【図16】市販の液体試料用ATR測定装置の水溶液ホルダの構成を示す分解斜視図である。
【図17】市販の液体試料用ATR測定装置の構成を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1 気体・液体試料用全反射吸収測定装置
2 フーリエ変換赤外分光光度計本体
3 恒温槽
4 測定セル(反応容器)
5 赤外検出器
6 データ処理装置
7 第1のライトガイド
7A,7B 第1のライトガイドの端部
8 第2のライトガイド
8A,8B 第2のライトガイドの端部
8C 第2のライトガイドの導波層
9 第1の集光装置
10 第2の集光装置
11 測定試料の導入口
12 測定試料の排出口
13 測定試料の搬送系
14 測定試料の排出処理系
15 パージ系
16 真空系
17 内部反射エレメント(IRE)(赤外光ファイバ)
17a 内部反射エレメントである平面型光導波路
17b 内部反射エレメントである円筒型プリズム
17c 内部反射エレメントである光ファイバ
17A,17B IREの端部
17K コア
17L クラッド
17M クラッド厚減少部
17N 通気性あるいは選択的透過膜
17O 測定物質と反応することにより化学的あるいは光学的特性を変化させる物質
18,19 接続部
20 可変アイリス
21 レンズ
22 ライトガイド固定台
23 ライトガイド押え
24 X−Y軸ステージ
25 Z軸ステージ
26 レンズ
27 X−Y軸ステージ
28 Z軸ステージ
30 ライトガイド固定台
31 ミラー
32 X−Y軸ステージ
33 Z軸ステージ
35 光電素子
36 V溝
37 光ファイバ押え
38 入射角度変更部
39 固定治具
40 測定試料容器
41 送液パイプ
42 送液ポンプ
43 廃液パイプ
44 廃液容器
45 真空ポンプ
46 トラップ
47A 水の全反射吸収スペクトル
47B バックグラウンドスペクトル
48 測定試料容器(試薬容器)
49 送気パイプ
50 切り替え弁
51 排気パイプ
52 排気処理設備
53 ドラフト
54 室内の湿度変化の測定例(経過時間:5分)
55 室内の湿度変化の測定例(経過時間:10分)
56 室内の湿度変化の測定例(経過時間:20分)
57 室内の湿度変化の測定例(経過時間:40分)
58 室内の湿度変化の測定例(経過時間:60分)
59 室内の湿度変化の測定例(経過時間:90分)
60A 空気中におけるフッ化物光ファイバの赤外吸収スペクトル
60B フッ化物光ファイバを水と反応させたときの赤外吸収スペクトル
61 ATR装置
62 台
63A,63B ミラー
64 水溶液試料ホルダ
65 サンプルホルダ
65A スロット
66 締め付けねじ
67 蓋
68A、68B 押え板
69A,69B パッキング
71 IRE
72A,72B 円錐型ミラー
73A,73B曲面ミラー
74 測定試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光透過材料を含む光導波路を内部反射エレメントとして備えたことを特徴とする全反射吸収測定装置。
【請求項2】 前記光導波路により構成される内部反射エレメントが光ファイバあるいは平面光導波路あるいは円筒型プリズムであることを特徴とする請求項1記載の全反射吸収測定装置。
【請求項3】 前記光導波路がコアおよびクラッドから構成されており、該クラッドの一部を化学的あるいは物理的手段により除去しコアのみとしたクラッド欠損部を設けたことを特徴とする請求項1記載の全反射吸収測定装置。
【請求項4】 前記光導波路がコアおよびクラッドから構成されており、該クラッドの厚さがエバネッセント波が透過できる厚さ以下であるクラッド厚減少部を有することを特徴とする請求項1記載の全反射吸収測定装置。
【請求項5】 前記光導波路がコアおよびクラッドから構成されており、該クラッドの一部が通気性あるいは選択的透過性を有し、クラッドを透過した気体あるいは液体試料がコアと接することができるようにしたことを特徴とする請求項1記載の全反射吸収測定装置。
【請求項6】 前記光導波路がコアおよびエアクラッドから構成され、あるいは円筒型プリズムから構成されており、前記光導波路はその表面に測定物質と反応することにより化学的あるいは光学的特性を変化させる特性変化物質を、エバネッセント波が透過できる程度の厚さに固定化した層を有することを特徴とする請求項1記載の全反射吸収測定装置。
【請求項7】 前記光導波路は、前記特性変化物質層の上にさらに通気性あるいは選択的透過膜を設けたことを特徴とする請求項6記載の全反射吸収測定装置。
【請求項8】 内部反射エレメントである光導波路と、フーリエ変換赤外分光光度計本体からの出射光を集めて前記内部反射エレメントに送る第1の集光装置と、前記内部反射エレメントからの光を集める第2の集光装置とを具備した全反射吸収測定装置において、内部反射エレメントとしての光導波路の少なくとも一部と測定試料とを収納する測定セルと、前記フーリエ変換赤外分光光度計本体の赤外光出射部と前記光導波路の一端を接続するための第1のライトガイドと、前記光導波路の他端と前記フーリエ変換赤外分光光度計本体の赤外検出器を接続するための第2のライトガイドと、前記第1の集光装置に設けられ、前記赤外光出射部に対する前記第1のライトガイドの相対的位置を調整する第1の微動位置合わせ装置と、前記第2の集光装置に設けられ、前記赤外光出射部に対する前記第2のライトガイドの相対的位置を調整する第2の微動位置合わせ装置とを備え、前記内部反射エレメントは前記光導波路から構成されていることを特徴とする全反射吸収測定装置。
【請求項9】 前記光導波路が光ファイバであり、該光ファイバの少なくとも一端が、前記第1のライトガイドあるいは第2のライトガイドを構成していることを特徴とする請求項8記載の全反射吸収測定装置。
【請求項10】 前記第1の微動位置合わせ装置は、赤外光の入射角度変更手段を有することを特徴とする請求項8記載の全反射吸収測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図12】
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【図6】
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【図8】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図9】
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【図10】
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【図16】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開平5−322747
【公開日】平成5年(1993)12月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−307368
【出願日】平成4年(1992)11月17日
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)