説明

全細胞百日咳を含む混合ワクチン

本発明は、ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳及びポリオ等の疾患を防ぐ、抗原の混合物を含む混合ワクチンに関する。本発明はまた、ワクチンの投与が、一つより多くの病原体に対して同時に対象を免疫化し得るように、インフルエンザ菌、肝炎ウイルス、及び他の病原体に起因する感染症を防ぐ、当該混合ワクチンにおける一つ以上の抗原の包含に関する。本発明は特に、上記のような抗原を含む完全に液体安定な混合ワクチン及び当該ワクチンの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフテリア、破傷風、百日咳(pertussis)及びポリオ等の疾患を防ぐ、抗原の混合物を含む混合ワクチンに関する。本発明はまた、ワクチンの投与が、一つより多くの病原体に対して同時に対象を免疫化し得るように、インフルエンザ菌、肝炎ウイルス、及び他の病原体に起因する感染症を防ぐ、当該混合ワクチンにおける一つ以上の抗原の包含に関する。本発明は特に、上記のような抗原を含む完全に液体安定な混合ワクチン及び当該ワクチンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンの抗原
ジフテリア抗原及び破傷風抗原
ジフテリア及び破傷風は、それぞれジフテリア菌(Cornyebacterium diphtheriae)及び破傷風菌に起因する急性感染症である。これらの細菌の毒素は、それぞれの疾患の主要な原因である。これらの細菌からの防御を提供するワクチンは、その感染力を失うようにトキソイド化されたこれらの毒素を含有する。トキソイド[ジフテリアトキソイド(DT)及び破傷風トキソイド(TT)]を作製するために、毒素は、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒド等の化学物質を用いて処理される。変異ジフテリア毒素であるCRM197もまた、一定のワクチンにおいて使用されている。
【0003】
百日咳抗原
百日咳(whooping cough)疾患又は百日咳は、百日咳菌に起因する。これは、死にさえもつながり得る、衰弱性で重篤な疾患である。疾患に対する初期のワクチンは、細胞を殺して毒性物質を不活性化するためにホルムアルデヒド等の化学物質で処理された、全細胞に基づいていた。不活化全細胞百日咳ワクチンの開発に向けた努力は、1906年に百日咳菌が純粋培養で生育されてから間もなく開始された。1920年代には、Louis W. Sauer博士が、百日咳のためのワクチンを開発した。1925年には、デンマーク人の医師であるThorvald Madsenが初めて、全細胞百日咳ワクチンの大規模な試験を行った。1942年には、アメリカ人の科学者であるPearl Kendrickが、全細胞百日咳ワクチンと、ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイドとを組み合わせ、初めてのDTP混合ワクチンを生成した。「全細胞(wP)ワクチン」と呼ばれるこれらのワクチンは、非常に効果的であった。
【0004】
「成分ワクチン」と呼ばれるその後のワクチンは、より少ない数の高度に生成された抗原を含んだ。多くの病原性関連因子が、成分ワクチンと比較してより定義されていない「無細胞ワクチン」中への包含について提案されてきた。PTのみを含むワクチンは部分的に防御的であったのに対し、PT/FHAの組み合わせを含むワクチンはより効果的であったが、それでもwPワクチンよりも低い免疫原性を有した。
【0005】
灰白髄炎(Poliomyelitis)抗原
2つの異なる種類のワクチンが利用可能である:
・アルバート・セービン(Albert Sabin)博士によって1961年に開発された弱毒生(衰弱させた)経口ポリオワクチン(OPV)。セービン株を含むOPVは、経口投与される。
・ジョナス・ソールク(Jonas Salk)博士によって1955年に開発された不活化(死菌(killed))ポリオワクチン(IPV)。ソールク株を含むIPVは、注射として投与される。
【0006】
弱毒生(OPV)及び不活化(IPV)ポリオワクチンの両方とも、世界中のポリオ疾患を抑制することに効果を挙げてきた。ポリオワクチンは、ソールク株又はセービン株を含み得る。灰白髄炎疾患に対するワクチンにおいて使用されてきたソールク株は、1型マホニー(Mahoney)、2型MEF及び3型ソーケット(Saukett)である。セービン株としては、セービン1株及びセービン2株が挙げられる。
【0007】
インフルエンザ菌(Hib)抗原
インフルエンザ菌は、上気道細菌叢の通常の部分である、グラム陰性球桿菌である。インフルエンザ菌b型(Hib b)は、幼児における髄膜炎侵襲性血液媒介感染症(meningitis invasive bloodborne infections)の主要な原因であり、人生の最初の2年間における髄膜炎の主要な原因である。インフルエンザ菌に対する免疫化は、1987年に多糖体ワクチン[ポリリボースリビトールリン酸(polyribose ribitol phosphate)(PRP)]を使って、カナダで始まった。Hibのポリリボシルリビトールリン酸(polyribosylribitol phosphate)(PRP)カプセルは、その生物体の主要な病原性因子である。PRPに対する抗体が、血清殺菌活性への主な貢献者であり、抗体レベルの上昇が、侵襲性疾患の減少と関連している。PRPはT細胞非依存性抗原であり、したがって、a)18ヶ月未満の乳幼児における弱い抗体応答の誘導、b)T細胞依存性抗原で見られる抗体応答よりも変動的かつ定量的に小さい抗体応答、c)より高い割合の免疫グロブリンM(IgM)の生産、及びd)ブースター応答の誘導不能、によって特徴づけられる。
【0008】
PRP成分のみに基づく初期のワクチンは、乳児においては効果がないことが分かった。PRPが、髄膜炎菌の外膜タンパク質、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド及びCRM197等の、担体タンパク質と呼ばれるタンパク質とコンジュゲート化している、PRPコンジュゲート化ワクチンに対するさらなる努力が向けられた。
【0009】
肝炎(Hep)抗原
肝炎ウイルスには種々の株がある。B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)に起因する疾患であり、ヒトを含むヒト上科の肝臓に感染し、肝炎と呼ばれる炎症を引き起こす。肝炎は、数週間にわたる(急性の)軽度の病気から、肝臓疾患又は肝臓癌をもたらし得る重篤で長期的な(慢性の)病気まで、重症度に幅がある。その疾患に対するワクチンは、ウイルスのエンベロープタンパク質の一つである、B型肝炎表面抗原(HBsAg)を含有する。FDAに承認されたHep B含有ワクチンは、メルクによるRecombivax HB(登録商標)及びComvax(登録商標)、グラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズによるEngerix−B(登録商標)及びPediarix(登録商標)である。
【0010】
他の抗原
人類に関係する他の抗原としては、インフルエンザ菌(a、c、d、e、f血清型及び莢膜非保有株)、肝炎(A、C、D、E、F及びG株)、髄膜炎A、B又はC、インフルエンザ、肺炎連鎖球菌、連鎖球菌、炭疽菌、デング熱、マラリア、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、BCG、日本脳炎、ロタウイルス、天然痘、黄熱、腸チフス、シングルス(Singles)、水痘ウイルス、などが挙げられる。
【0011】
混合ワクチン
ワクチンの分野における数十年にわたる研究にもかかわらず、感染症は人類にとっての脅威であり続けている。種々の疾患を防ぐ混合ワクチンは、注射の回数を減らし、投与及び製造コストを低減し、その上患者コンプライアンスを向上させるので、非常に望ましい。そのような混合ワクチンは一般的に、よりよく受け入れられている。
【0012】
しかしながら、文書で十分に立証された現象である抗原競合が、多価ワクチンの開発を複雑にし、邪魔してきた。この現象は、複数の抗原を一緒に投与すると、しばしば一定の抗原に対して、それらの抗原を別個に投与した場合の免疫応答と比較して、低下した応答をもたらす、という知見をいう。
【0013】
初期の研究は、異なる疾患及び感染症に向けられた、多価のワクチンの開発に焦点がおかれてきた。そのような周知のワクチンの組み合わせの一つは、ジフテリア(D)抗原、破傷風(T)抗原及び全細胞百日咳(whole cell pertussis)(wP)抗原を含み、DTwPワクチンを提供する。
【0014】
そのような混合ワクチンに、肝炎ウイルス(Hep)、インフルエンザ菌(Hib)及びポリオウイルス(IPV)に起因する疾患を防ぐ他の抗原を追加することが望ましい。上記当該混合ワクチンに、他の疾患を防ぐ抗原を追加することもまた望ましい。
【0015】
グラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズによって生産されるQuintanrixは、DTwP抗原、Hib抗原及びHep B抗原を含む混合ワクチンであり、保存剤としてチオメルサールを含む。このワクチンは、市販される前に取り下げられた。グラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズによって生産されるZilbrix(登録商標)は、DTwP及びHep Bを含有する。グラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズによって生産されるZilbrix Hib(登録商標)は、DTwP及びHep B及Hibを含有し、ここでHibは、他の抗原成分を含有しない別個のバイアル中で販売されている。
【0016】
グリーンクロスワクチン(Green Cross Vaccine)による特許文献1は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、全細胞百日咳及びB型肝炎表面抗原を含む四価の混合ワクチンを提供する。当該発明は、Hep BをDTwPと組み合わせるワクチン調製物に関するが、Hib又はIPV等の他の抗原の包含については言及していない。
【0017】
グラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズによる特許文献2は、低用量のIPVを含むワクチンの作製方法に関する。しかしながら、それは、D抗原、T抗原、wP抗原、IPV抗原、Hib抗原及びHep抗原を、全てを一緒に単一のバイアル中に、完全に液体形態で含む完全に液体であるワクチンであって、Hibが任意のアジュバントに実質的に吸着していないワクチン、の調製は教示していない。
【0018】
スミスクライン・ビーチャム・バイオロジカルズによる特許文献3は、HBsAgを含む多価ワクチンに関する。当該発明は、HBsAgがリン酸アルミニウムに吸着した混合ワクチンに関する。しかしながら、DTwP−IPVを、Hib及びHep等の他の抗原とともに完全に液体形態で含む、混合ワクチンの具体的な開示はない。
【0019】
コンノート・ラボラトリース(Connaught Lab)による特許文献4は、宿主において、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、ポリオウイルス及び/又はインフルエンザ菌による感染に起因する疾患を防ぐ、多価の免疫原性組成物を提供する。明細書によれば、ワクチンのHib b成分は、凍結乾燥された成分であり、ワクチンの他の成分と混合する前に再構成されなければならない。したがって、明細書中に当該抗原を全て含む完全に液体である混合ワクチンに関連した教示はない。
【0020】
フリーズドライとも呼ばれる凍結乾燥は、非常に費用がかかり、またタンパク質に対して多くのストレスを引き起こす方法である。ワクチンの任意の成分が凍結乾燥されている場合、ワクチンの投与時には、凍結乾燥物を別の液体又は混合ワクチンの液体成分と混合する必要がある。このことは、専門家にとって追加の制約を意味し、それが下手に実施されるリスクを与える。次いで、凍結乾燥された成分が一つの区画にあり、ワクチンの液体成分が他の区画にある多区画注射器が提案された。しかしながら、ワクチンの投与時にその内容物が混合され得るそのような注射器は、生産費の低減という段階、及び専門家によって実施される作業の段階では、満足に機能しない。
【0021】
したがって、このフリーズドライの工程を回避し、全成分が一緒に、完全に液体形態で存在する混合ワクチンを提供することが望ましい。このことは、ワクチンの投与を容易にし、患者コンプライアンスを向上させ、また生産費を低減させるだろう。したがって、Hib抗原をワクチンの液体成分に追加し、結果として完全に液体である多価ワクチンを与えることが望ましい。
【0022】
グラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズによる特許文献5は、Hib b多糖体を含むワクチンに関する。その出願は、混合ワクチンの成分の単純な混合は、全ての抗原が効果的に一緒に混合され得ないという事実によって、複雑化されると述べている。その出願は、DTPワクチンの水酸化アルミニウムとPRPとの間に干渉があると述べている。特許文献5における発明は、PRPが事前にリン酸アルミニウム上に吸着された即時調製型の混合ワクチンにおけるこの干渉を、最小化することを目的とする。発明はさらに、免疫干渉からある程度保護されるような、PRPを含む免疫原性組成物、ワクチン及び混合ワクチンを提供する。発明者らは、ポリアニオン系ポリマー添加剤を、PRPを含むワクチンに組み込むことによって、上記が達成され得ることを見出した。
【0023】
しかしながら、ワクチン製剤におけるポリアニオン系ポリマーの使用は、ワクチンの製剤化の費用を増加させ得るために、望ましくないかもしれない。また、ワクチンは最終的にはヒトへの使用が意図されるため、ワクチンは可能な限り最小限の成分を含むことが理想的である。追加の原料の使用は、身体が反応して抗体を生産し得る物質を、製剤へ添加することを意味する。そのような身体の反応が、免疫調製物のそのような成分と接触することは、望ましくないかもしれない。
【0024】
パストゥール・メリユ・セリュム(Pasteur Merieux Serums)による特許文献6は、インフルエンザ菌b型の莢膜多糖体又は破傷風アナトキシンに共役した高分子量ポリリボシルリビトールリン酸(PRP)、及びアルミニウムベースのアジュバントを含むワクチン組成物に関する。その発明において使用されるアルミニウムベースのアジュバントは、およそ7.2未満の電荷ゼロ点を有する。しかしながら、その特許は特に、DTwP−IPVを、Hib及びHepのような他の抗原とともに完全に液体形態で含む混合ワクチンの調製を教示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】国際公開第02/005846号パンフレット
【特許文献2】国際公開第08/028957号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6013264号明細書
【特許文献4】国際公開第1998/000167号パンフレット
【特許文献5】国際公開第04/110480号パンフレット
【特許文献6】米国特許第6333036号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
数々の疾患を防ぐであろう種々の抗原を含む多価ワクチンの作製のための研究が進行しているものの、それらは、DTwP抗原及びIPV抗原を、Hib及びHep等の他の抗原とともに完全に液体の剤形で含む、安定な混合ワクチンを提供する必要性については取り組んでいない。混合ワクチン及びHibワクチンの別個での投与及び同時投与によって免疫化された子供における、特定の抗原に対する抗体応答に関して、対照的な報告が入手可能である。そのような結果には種々の理由があり得、その理由としては、それらワクチンが、それらの抗原の内容、トキソイド化の方法、アジュバント化の方法又は使用された保存剤において非同一であることが挙げられる。
【0027】
現在公知であり、入手可能な混合ワクチンは、数々の疾患に対して、感受性ヒト集団において望まれるレベルの効果及び免疫原性を一回の注射で達成するために適当な免疫原性形態での、適当な抗原の適当な製剤を、含有していないかもしれない。種々の感染症を防ぎ、かつ液体形態である多成分ワクチンが、投与の容易性及び費用対効果の低減を与えるために必要とされる。ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、破傷風菌、百日咳菌、ポリオウイルス、肝炎ウイルス及びインフルエンザ菌に起因する感染症に起因する疾患に対する、安定かつ効果的な多価ワクチンを提供することが望ましいだろう。そのようなワクチンが効果的であるためには、ワクチンの各抗原に対する血清抗体保有(seroprotection)基準が満たされていなければならない。このためには、抗原競合及び抗原干渉によってもたらされる障害物及び挑戦を解消する必要がある。本発明は、複数の疾患を防ぐ完全に液体である混合ワクチン製剤を提供することによって、従来技術の制限を解消し、関連する問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、ワクチンの投与が、一つより多くの病原体に対して同時に対象を免疫化し得るように、ジフテリア(Diptheria)(D)、破傷風(T)、全細胞百日咳(wP)、及びIPVを含み、かつ、インフルエンザ菌(Hib)及び肝炎(Hep)の群から選択される一つ以上の抗原を随意に含む完全に液体安定な混合ワクチンに関する。本発明は特に、上記のような抗原を含む完全に液体安定な混合ワクチン及び当該ワクチンの製造方法に関する。
【0029】
本発明はさらに、複数のワクチン成分の各々に対する血清抗体保有基準を満たす、複数の疾患状態の予防、改善及び治療に適切な該複数のワクチン成分を含む混合ワクチンに関する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、複数のワクチン成分の各々に対する血清抗体保有基準を満たす、複数の疾患状態の予防、改善及び治療に適切な該複数のワクチン成分を含む、完全に液体安定な混合ワクチンに関する。
【0031】
本発明の利点としては、幅広い範囲の疾患及び感染症からの防御を、安全で効果的な様式で与え得る多価ワクチンが挙げられる。本発明のワクチンは、ワクチン中に存在する任意の抗原のいかなる干渉もなく、種々の疾患及び感染症への免疫原性を提供する。したがって、一度の注射が、種々の疾患及び感染症に対する免疫原性を与え、ワクチンの患者コンプライアンスをより向上させるであろう。一度の注射が、数々の感染症及び疾患に対する免疫を与えるであろうから、ワクチン接種の費用は低減されるであろう。本発明のワクチンは、ワクチン接種センターへの訪問の回数を低減させ、また数々の異なる疾患及び感染症に対して行われるべき注射の回数も低減させるという意味では、有益であるだろう。本発明のこの側面は、特に数多くの感染症及び疾患への免疫を与えるためにワクチン接種する必要がある若年人口で、より有用かつ有利となるだろう。したがって、本発明は、より許容可能なワクチンを提供する。
【0032】
定義
本明細書で、本発明のワクチンを記述するために使用される用語「完全に液体である」とは、ワクチンの全ての成分が液体状態にあり、ワクチンのいかなる成分も、その成分が対象へ投与される前にワクチンの他の成分と混合されることを必要とする凍結乾燥又は任意の他の形態で提供されることがない、ワクチンの状態をいう。
【0033】
本明細書で、ワクチンにおいて使用される莢膜多糖体(Hib)がコンジュゲート化されたタンパク質成分を記述するために使用される用語「担体タンパク質」は、T細胞非依存性多糖類をT細胞依存性抗原へ変換するためにコンジュゲート化されている。
【0034】
本明細書で、用語「アジュバント」は、抗原に対して生成される免疫応答の種類及び質に影響することで、抗原と免疫系との間の接触を容易にすることによってワクチンの抗原の免疫応答を増強する、ワクチンの非抗原性成分を記述するために使用される。アジュバントは、抗原に対する免疫応答の延長をもたらし、また一定の抗原の毒性を低減させるか又は一定の抗原への溶解性を提供する働きもし得る。
【0035】
本明細書で、本発明のワクチンを記述するために使用される用語「安定」とは、ワクチンを5±3℃で少なくとも1ヶ月、好ましくは12ヶ月、もっとも好ましくは24ヶ月インキュベーションした後、ワクチン組成物の各抗原が通常の許容限界(acceptance limit)として設定されるよりも高い力価/免疫原性を有することを意味する。
【0036】
本明細書で、「Hibは、任意のアジュバントに実質的に吸着されていない」という表現において、任意のアジュバントへのHibの吸着又は共役の量を記述するために使用される用語「実質的に」とは、任意のアジュバントへのHibの吸着が15%未満であり、好ましくは10%未満であることを意味する。Hib抗原は、それが任意のアジュバントへ意図的に吸着されるようないかなる工程にも供されない;起こっているかもしれない吸着の量は、抗原とアジュバントとの間の接触のためであり得、計画的ではない。
【0037】
本明細書で、本発明のワクチン中に存在する成分の各々の量を記述するために使用される用語「約〜の(of about)」とは、該ワクチン成分の量であって、その特定の成分について述べられた量の好ましくは±20%、より好ましくは±10%、もっとも好ましくは±5%の量で存在する、該ワクチン成分の量を意味する。
【0038】
本明細書で、本発明のワクチンの調製の過程中で混合物の成分の撹拌時間を記述するために使用される用語「約」は、述べられた値の好ましくは±20%、より好ましくは±10%、もっとも好ましくは±5%である。
【0039】
本明細書で、本発明の混合ワクチンと関連して使用される用語「免疫学的に活性な」とは、ワクチンが対象に投与された場合、ワクチン接種された対象をそれぞれの疾患又は感染症から防御するように、当該組合せの抗原の各々に対する抗体を誘発することができることを意味する。
【0040】
本明細書で、本発明の混合ワクチンの抗原と関連して使用される用語「共役している又は吸着される」とは、抗原とアジュバントとの間の任意の形態の物理的結合をいう。
【0041】
本発明のワクチン
本発明は、ジフテリア抗原(D)、破傷風抗原(T)、全細胞百日咳抗原(wP)、及びポリオウイルス抗原(IPV)を含み、かつ、インフルエンザ菌(Hib)及び肝炎(Hep)の群から選択される一つ以上の抗原を随意に含む、完全に液体安定な混合ワクチンを提供する。
【0042】
本発明の一態様は、ワクチンの全ての成分が一緒に、液体形態で単一のバイアル中に存在する、混合ワクチン組成物を提供する。
【0043】
本発明のさらなる一態様は、DTwP抗原、Hib抗原及びIPV抗原を含む、完全に液体安定な五価のワクチンに関する。
【0044】
本発明の別の態様は、DTwP抗原、Hib抗原、Hep抗原及びIPV抗原を含む、完全に液体安定な六価のワクチンを提供する。
【0045】
本発明はさらに、ジフテリア(D)抗原及び破傷風(T)抗原が、リン酸アルミニウムに吸着されていると規定する。
【0046】
本発明の他の一態様によれば、IPV株は、1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケットの群から選択され得る一つ以上のソールク株、又は1型セービンもしくは2型セービンの群から選択される一つ以上のセービン株である。
【0047】
本発明のさらなる態様によれば、Hib抗原は、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、CRM197及び髄膜炎菌の外膜タンパク質もしくはそれらの任意の同等物を含む群から選択される担体タンパク質、又は任意の他の公知の担体にコンジュゲート化されている。
【0048】
本発明の別の態様によれば、Hib抗原は、任意のアジュバントに実質的に吸着されていない。
【0049】
本発明の別の一態様によれば、本発明のワクチンにおけるHib抗原は、Hib b株の莢膜多糖体に由来する。
【0050】
本発明の一態様は、Hep抗原が、リン酸アルミニウムに吸着されていると規定する。
【0051】
本発明のさらなる一態様は、Hep抗原がB型肝炎表面抗原(HBsAg)、すなわち、Hep B株の表面抗原、に由来することに関する。
【0052】
本発明の別の態様は、本発明のワクチンが、製剤中の保存剤として2−フェノキシエタノールを含むと規定する。
【0053】
本発明の別の一態様によれば、ワクチンは、D抗原、T抗原、wP抗原、Hib b抗原及びHep B抗原を含んで五価のワクチンを与え、かつ製剤中の保存剤として2−フェノキシエタノールが使用され、ワクチンがIPV抗原を含まないことを条件とする。
【0054】
さらに、本発明の他の態様は、本発明の混合ワクチンの製造方法に関する。
【0055】
本発明の他の一態様は、各抗原が、該抗原に対する防御免疫応答を誘発するような量でワクチン中に存在するような、本発明の混合ワクチンの組成物に関する。
【0056】
本発明のワクチンの抗原
ジフテリアは、グラム陽性で胞子形成しない好気性菌である、ジフテリア菌に起因する。この生物は、プロファージによってコード化されるADPリボシル化外毒素(「ジフテリア毒素」)を発現し、これは(例、ホルムアルデヒド使用して)処置されてトキソイドを与え得る。このトキソイドは、もはや毒性はないが、依然として抗原性を保持し、注射後に特定の抗毒素抗体の生産を刺激することができる。本発明のワクチンにおいて使用されるジフテリア抗原調製物は、好ましくはジフテリアトキソイドを含む。
【0057】
破傷風は、グラム陽性で胞子形成する桿菌である、破傷風菌に起因する。この生物は、エンドペプチダーゼ(「破傷風毒素」)を発現し、これは処置されて、もはや毒性のないトキソイドを与え得る。しかしながら、トキソイドは依然として抗原性を保持し、注射後に特定の抗毒素抗体の生産を刺激することができる。本発明のワクチンにおいて使用される破傷風抗原調製物は、好ましくは破傷風トキソイドを含む。
【0058】
百日咳又は百日咳(whooping cough)は、百日咳菌に起因する。本発明の全細胞百日咳(wP)抗原は、感染症を引き起こす可能性がある百日咳菌株から調製され得る。本発明のwP抗原は、化学物質の使用等の数々の方法によって不活化され得る。しかしながら、本発明のワクチン組成物において使用される不活化百日咳菌(wP)は、好ましくは、56±1℃で、30分間加熱して不活化される。本発明のワクチンにおいて使用されるwP抗原調製物は、好ましくは百日咳菌134、509及び10536から産生される。株10536、509及び134の単一の集菌物は、それらの乳白度に基づいて、好ましくは1:1:1比の割合で混合される。
【0059】
インフルエンザ菌は、グラム陰性の球桿菌であり、侵襲性血液媒介感染症及び髄膜炎を引き起こす。本発明の一実施態様によれば、莢膜多糖体に由来するHib抗原は、担体タンパク質とコンジュゲート化又は共役していてもよい。Hib抗原のコンジュゲート化に使用される担体タンパク質は、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、CRM197及び髄膜炎菌の外膜タンパク質又はそれらの任意の同等物を含む中から選択され得る。他の適切な担体タンパク質としては、合成ペプチド、熱ショックタンパク質、百日咳タンパク質、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、成長因子、N19等の種々の病原体由来抗原由来の複数のヒトCD4+ T細胞エピトープを含む人工タンパク質、インフルエンザ菌由来のプロテインD、肺炎球菌表面タンパク質PspA、ニューモリシン、鉄取り込みタンパク質、クロストリジウム・ディフィシル由来の毒素A又はB及びストレプトコッカス・アガラクチアタンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。本発明のワクチンにおいて使用されるHib抗原調製物は、好ましくは破傷風トキソイドとコンジュゲート化又は共役したHib抗原を含む。
【0060】
多糖類コンジュゲートは、任意の公知の共役技術によって調製され得る。例えば、多糖類は、チオエーテル結合を介して共役され得る。このコンジュゲート化方法は、シアン酸エステルを形成する、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)での多糖類の活性化に依存する。活性化多糖類はしたがって、担体タンパク質上のアミノ基へと直接又はスペーサー基を介して共役され得る。コンジュゲートはまた、直接還元的アミノ化方法によっても調製され得る。別の方法は、アジピン酸ヒドラジド(ADH)で誘導体化された臭化シアン(CNBr)活性化多糖類のタンパク質担体への、カルボジイミド縮合による共役を伴う。任意の他の公知の方法が、本発明のワクチンにおいて使用される多糖類コンジュゲートを調製するために使用され得る。
【0061】
本発明のある実施態様によれば、Hib抗原は任意のアジュバントに実質的に吸着されていない;好ましくは、アジュバントへのHib抗原の吸着の程度は、15%以下である;より好ましくは、アジュバントへのHib抗原の吸着の程度は、10%以下である。
【0062】
本発明の別の実施態様によれば、Hib抗原が、任意のアジュバントへの計画的又は意図的な吸着に供されないことに関する。
【0063】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、Hib抗原は、Hib b株の莢膜多糖体に由来する。
【0064】
肝炎は、A、B、C、D、E、F又はG等の、種々の肝炎株に起因する。B型肝炎ウイルス(HBV)は、ウイルス性肝炎を引き起こす主要な因子の一つである。HBVウイルス粒子は、外部のタンパク質膜又はキャプシドによって囲まれている内部コアからなる。キャプシドの主要成分は、HBV表面抗原、又は、より一般には「HBsAg」、として知られるタンパク質である。この抗原が、ワクチン接種の対象へ投与された場合、抗原は、HBV感染を防ぐ抗HBsAg抗体の生産を刺激する。本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明のワクチンにおいて使用される肝炎(Hep)抗原調製物は、B型肝炎株の表面抗原(HBsAg)に由来するHep抗原を含む。
【0065】
ワクチン製造のためには、HBsAgは、慢性B型肝炎キャリアの血漿から微粒子形態で抗原を精製する(これは、HBV感染の間、大量のHBsAgが肝臓で合成されて血流へと放出されるためである)か、又は組換えDNA法によってタンパク質を発現させることによって、産生され得る。本発明のワクチンにおいて使用されるHBsAgは、いずれの方法によって調製されてもよい。
【0066】
灰白髄炎は、ポリオウイルスに起因する。本発明のワクチンは、ポリオウイルスのセービン(セービン1及び/もしくはセービン2)株又はソールク株を含み得る。本発明の一つの好ましい実施態様によれば、本発明のワクチンは、ソールク株を含む。3種類のソールク株が、灰白髄炎を引き起こし得る。その3種類は類似しており、同一の症状を引き起こすが、それらは抗原的には非常に異なり、1種類による感染は、他の種類による感染からは防御しない。ソールクポリオウイルスとしては3つの株−1型(例、マホニー株)、ポリオウイルス2型(例、MEF−I株)及びポリオウイルス3型(例、ソーケット株)−が挙げられる。本発明のある好ましい実施態様によれば、本発明のワクチンは、一つ以上の該ソールク株を含み得る。
【0067】
ポリオウイルスは、細胞培養中で生育され得る。サルの腎臓に由来する連続細胞株であるベロ細胞株が、ポリオウイルスを生育するために使用され得る。生育後、ウイルス粒子は既知の技術を用いて精製され得る。ウイルスの不活化がなされ得る。ポリオウイルスの量は典型的には、「DU」単位(「D抗原単位」)で表される。本発明のワクチンの製造に使用されるIPV抗原調製物は好ましくは、ワクチンの製造において使用される一つ以上の株を含むように調製される。このバルク調製物が、次いで本発明のワクチンを処方するために使用される。
【0068】
ワクチンの非抗原性成分
抗原性成分に加え、ワクチンは医薬的に許容可能な添加剤である数々の非抗原性成分を含み得る。これらとしては、pH調整剤、緩衝剤、アジュバント、保存剤、担体及び浸透圧調整剤が挙げられるが、それらに制限されない。
【0069】
アジュバント
最終製剤の抗原は、アジュバントに吸着されていても、吸着されていなくてもよい。アジュバントは、ワクチン成分に対する免疫の生産を刺激するよう機能し、ワクチンをより効果的にする。
【0070】
アジュバントは:
・抗原を免疫系と接触させ、生産される免疫の種類及び免疫応答の質(規模及び持続時間)に影響を与える;
・一定の抗原の毒性を低減する;並びに
・いくつかのワクチン成分に対して溶解性を提供する
という働きをし得る。
【0071】
多くのアルミニウム含有ワクチンは、アジュバントを含まない同等のワクチンよりも、より高くかつ延長された抗体応答を引き起こすことが研究で示されている。アジュバントの利益は通常、ブースター投与よりもむしろ初期の免疫化シリーズの間に観察されてきた。
【0072】
アルミニウムベースのアジュバントは、最も一般的に使用されているアジュバントである。これらのアジュバントはまた、ワクチンにおける使用について、FDAによって承認されている。3つの一般的な種類のアルミニウム含有アジュバントがある:
・水酸化アルミニウム
・リン酸アルミニウム
・硫酸アルミニウムカリウム(しばしば「ミョウバン」と呼ばれる)
【0073】
本発明の一実施態様は、ワクチンの一定の抗原がリン酸アルミニウムに吸着され、ワクチンの一定の抗原が水酸化アルミニウムに吸着されることに関する。本発明の一定の抗原は、任意のアジュバントに吸着されていないか、又は実質的に吸着されていなくてもよい。該抗原の吸着についてのアジュバントの優先度が、本発明のワクチンに、その特性を与える。吸着の優先度は、以下の「本発明のワクチンの製造方法」の節において、より詳しく記述されている。
【0074】
保存剤
ワクチンは、細菌による汚染を起こしやすい。したがって、偶然の汚染の場合にワクチンに組み込まれて導入され得る、有害な微生物での、潜在的に生命を脅かすような汚染を回避するために、ワクチンを処方する間に、保存剤がワクチンの組成物中に含まれ得る。使用されてきた保存剤としては、塩化ベンゼトニウム(フェメロール(Phemerol))、チオメルサール(thiomersal)、フェノール及び2−フェノキシエタノール(2−POE)が挙げられる。
【0075】
チメロサール(thimerosal)は、多くのワクチンにおいて保存剤として使用されてきた、水銀含有の有機化合物(有機水銀化合物)である。チオメルサールに対し、注射部位における発赤及び腫れを含む、主に遅延型の局所的な過敏反応の形態である一定のアレルギー反応に関する報告がある。自閉症と水銀とを関連付ける、矛盾する報告もまたある。
【0076】
2−フェノキシエタノール(2−POE)はまた、「l−ヒドロキシ−2−フェノキシエタン」、「2−ヒドロキシエチルフェニルエーテル」、「エチレングリコールフェニルエーテル」等としても知られる。2−フェノキシエタノールの安全性プロファイルは、水銀保存剤(例、チオメルサール)の安全性プロファイルよりもすぐれている。したがって、ワクチンにおいてチオメルサールを回避し、2−フェノキシエタノールを使用する必要がある。
【0077】
したがって、本発明の別の好ましい実施態様は、ワクチン組成物における保存剤としての2−フェノキシエタノールの使用に関する。本発明の別の好ましい実施態様によれば、2−フェノキシエタノールの濃度は、ワクチンに関して5mg/mlである。
【0078】
浸透圧調整剤
ワクチン組成物の浸透圧を調節するために、ワクチン製剤中に浸透圧調整剤を含めることが好ましい。これらの剤としては、塩(例−NaCl、MgCl2、KCl、CaCl2)、糖(例−ブドウ糖、マンニトール、乳糖)、アミノ酸(例−アルギニン、グリシン、ヒスチジン)及びポリオール(例−ショ糖、グリセロール、ソルビトール)が挙げられるが、それらに限定されない。より好ましい実施態様において、ナトリウム塩等の生理的食塩が、ワクチン製剤において使用される。最も好ましくは、塩化ナトリウム(NaCl)が、本発明のワクチン組成物中に含まれる。
【0079】
pH調整剤及び/又は緩衝剤
水酸化ナトリウム又は塩酸等の、当業者に公知の種々のpH調整剤が、ワクチン組成物のpHを望まれるように調節するために使用され得る。リン酸ナトリウム、リン酸カリウム及びクエン酸緩衝剤等の種々の緩衝剤が、本発明の製剤において使用され得る。
【0080】
本発明のワクチンの組成物
本発明のワクチン組成物は、本発明のワクチンが、ワクチン中に含有される各抗原の量によって免疫原性とされるものである。本発明のワクチン中の各抗原は好ましくは、混合ワクチンが対象に投与された場合に、対象において組成物の該抗原に対する免疫応答を誘発するような量で存在する。本発明の混合ワクチンは、ジフテリア(D)抗原、破傷風(T)抗原、全細胞百日咳(wP)抗原及びポリオ(IPV)抗原を含み、かつインフルエンザ菌(Hib)及び肝炎(Hep)の群から選択される他の抗原を随意に含む。
【0081】
本発明の一実施態様によれば、ワクチンはD、T、wP、Hib b並びにIPV(1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット)を含み、ここでDは約1〜40Lfの量で存在し、Tは約1〜25Lfの量で存在し、wPは約1〜30IOU毎0.5mlの量で存在し、かつHib bは約1〜20μg毎0.5mlの量で存在し、かつ1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット株は、それぞれ約1〜50DU、1〜15DU及び1〜50DU毎0.5mlの量で存在して、安定で、免疫原性であり、完全に液体製剤の形態である五価のワクチンを形成する。
【0082】
本発明の一つの好ましい実施態様によれば、本発明の五価のワクチンは、D、T、wP、Hib b並びにIPVを含み、ここでDは約20Lfの量で存在し、Tは約7.5Lfの量で存在し、wPは約16IOU毎0.5mlの量で存在し、かつHib bは約10μg毎0.5mlの量で存在し、かつ1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット株は、それぞれ約40DU、8DU及び32DU毎0.5mlの量で存在する。そのようなワクチンは、完全に液体である混合ワクチンを与えるように処方され、対象に投与された場合に安定で免疫原性であるだろう。
【0083】
本発明の別の実施態様によれば、六価のワクチンは、D、T、wP、Hib b、Hep B並びにIPV(1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット)を含み、ここでDは約1〜40Lfの量で存在し、Tは約1〜25Lfの量で存在し、wPは約1〜30IOU毎0.5mlの量で存在し、Hib bは約1〜20μg毎0.5mlの量で存在し、かつHep Bは約1〜20μg毎0.5mlの量で存在し、かつ1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット株は、それぞれ約1〜50DU、1〜15DU及び1〜50DU毎0.5mlの量で存在して、対象に投与された場合に免疫原性である、完全に液体である安定な混合ワクチンを与える。
【0084】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、六価のワクチンは、D、T、wP、Hib b、Hep Bを含み、ここでDは約20Lfの量で存在し、Tは約7.5Lfの量で存在し、wPは約16IOU毎0.5mlの量で存在し、Hib bは約10μg毎0.5mlの量で存在し、かつHep Bは約10μg毎0.5mlの量で存在し、かつ1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット株は、それぞれ約40DU、8DU及び32DU毎0.5mlの量で存在する。そのようなワクチンは、対象に投与された場合に、組成物の全ての抗原に対する防御免疫応答を誘発することができる、安定なワクチンであるだろう。
【0085】
本発明のいま一つの態様は、DTwP、Hib b及びHep Bを含む五価のワクチンに関し、ここでDは約1〜40Lfの量で存在し、Tは約1〜25Lfの量で存在し、wPは約1〜30IOU毎0.5mlの量で存在し、Hib bは約2〜20μg毎0.5mlの量で存在し、かつHep Bは約1〜20μg毎0.5mlの量で存在して、完全に液体安定かつ免疫原性である混合ワクチンを与える。
【0086】
本発明の一つの好ましい態様によれば、五価のワクチンは、DTwP、Hib b及びHep Bを含み、ここでDは約20Lfの量で存在し、Tは約7.5Lfの量で存在し、wPは約16IOU毎0.5mlの量で存在し、Hib bは約10μg毎0.5mlの量で存在し、かつHep Bは約10μg毎0.5mlの量で存在する。そのようなワクチンは、安定であり、完全に液体製剤の形態である。そのようなワクチンは、対象に投与された場合に、組成物の全ての抗原に対する防御免疫応答を誘発することができる、安定なワクチンであるだろう。
【0087】
本発明はさらに、免疫学的に活性な量の本発明のワクチンを投与することを含む、D、T、P、Hib、Hep又はIPVの群から選択される任意の抗原への免疫応答を誘導する方法に関する。
【0088】
本発明の別の態様によれば、本発明のワクチン中のアルミニウム含量(Al+3)は、好ましくは2mg毎0.5ml以下、より好ましくは1mg毎0.5ml以下、最も好ましくは0.6mg毎0.5ml以下であり得る。
【0089】
本発明の一つの別の態様によれば、本発明の混合ワクチン中の2−フェノキシエタノールの好ましい量は、5mg/mlであり得る。
【0090】
本発明のワクチンの製造方法
本発明の態様の一つは、本発明のワクチンの製造方法に関する。免疫原性組成物における抗原の免疫原性、安定性及び正しい形態の保持は、組成物が処方された方法に依存し得る。これは、抗原の添加の順序、一定の抗原のための特定のアジュバントの使用、並びに撹拌、温度及びpHを含む種々のパラメータの使用を含み得る。
【0091】
本発明の実施態様の一つは、ジフテリア(D)、破傷風(T)、全細胞百日咳(wP)、及びIPVを含み、かつ、インフルエンザ菌(Hib)及び肝炎(Hep)の群から選択される一つ以上の抗原を随意に含む、完全に液体である混合ワクチンの製造方法に関し、方法は:
a)i)ジフテリア(D)抗原、ii)破傷風(T)抗原及びiii)全細胞百日咳(wP)抗原の混合物を含む成分Iを調製する工程、
b)随意に、アルミニウム塩に吸着されたHepを含む成分IIを調製する工程、
c)随意に、成分Iに前記成分IIを混合して混合物を得る工程、
d)[a)又はc]において得られた]上記混合物をHib抗原に添加し、次いでIPV抗原を添加する工程、
を含む。
【0092】
本発明の一つの好ましい実施態様によれば、D抗原及びT抗原は、リン酸アルミニウムに吸着されている。
【0093】
本発明の一つの別の好ましい実施態様は、以下の工程を含む、成分Iの調製に関する:
a)リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させる工程、
b)破傷風抗原調製物を上記容器内へと移動させる工程、
c)ジフテリア抗原調製物を当該容器内へと撹拌下で移動させる工程、
d)2−フェノキシエタノールを当該容器中に移動させる工程、
e)塩化ナトリウム溶液を上記当該容器へと、常時撹拌下で移動させる工程
f)pHを確認し、pHを6.0〜6.5の範囲中に調節する工程、
g)wP抗原調製物を撹拌下で、同容器内へと移動させる工程、
h)pHを確認し、pHを6.5〜7.5の範囲中に調節する工程。
【0094】
方法はさらに、以下の工程を含む、成分IIの調製を含む:
a)リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させる工程、
b)肝炎抗原調製物を上記容器内へと撹拌下で移動させる工程、
c)塩化ナトリウム溶液を同容器内へと撹拌下で移動させる工程、
d)2−フェノキシエタノール調製物を上記当該容器へと移動させる工程、
e)pHを確認し、pHが6.0〜7.0の範囲中に収まるように調節する工程。
【0095】
方法はさらに、前記成分Iと前記成分IIとの混合が、成分IIの内容物を前記成分Iへと移動させて、混合物を得る工程を含む。
【0096】
方法はさらに、以下の工程を含む、Hib抗原及びIPV抗原への上記混合物の混合を含む:
a)Hib抗原調製物に、上記混合物を撹拌下で移動させて、別の混合物を得る工程、
b)上記混合物、次いで食塩水を、IPV抗原へと移動させる工程、
c)pHを確認し、pHを6.5〜7.5の範囲中に調節する工程。
【0097】
本発明の別の好ましい実施態様は、以下の工程を含む、Hib抗原及びIPV抗原への成分Iの添加に関する:
a)Hib抗原調製物に、成分Iを撹拌下で移動させて、混合物を得る工程、
b)上記混合物、次いで食塩水を、IPV抗原調製物へと移動させる工程、
c)pHを確認し、pHを6.5〜7.5の範囲中に調節する工程。
【0098】
本発明の別の好ましい態様は、以下の工程を含む、ワクチンの調製に関する:
a)i)ジフテリア(D)抗原、ii)破傷風(T)抗原及びiii)全細胞百日咳(wP)抗原の混合物を含む成分Iを調製する工程、
b)アルミニウム塩に吸着されたHepを含む成分IIを調製する工程、
c)成分Iに前記成分IIを混合して混合物を得る工程、
d)上記混合物をHib抗原に添加する工程。
【0099】
方法はさらに、以下の工程を含む、成分Iの調製を含む:
a)リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させる工程、
b)破傷風抗原調製物を上記容器内へと撹拌下で移動させる工程、
c)ジフテリア抗原調製物を当該容器内へと移動させる工程、
d)当該容器中で2−フェノキシエタノールを移動させる工程、
e)塩化ナトリウム溶液を上記当該容器へと撹拌下で移動させる工程
f)pHを確認し、pHを6.0〜6.5の範囲中に調節する工程、
g)wP抗原調製物を同容器内へと移動させる工程、
h)pHを確認し、pHを6.5〜7.5の範囲中に調節する工程。
【0100】
方法はさらに、以下の工程を含む、成分IIの調製に関する:
a)リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させる工程、
b)肝炎抗原調製物を上記容器内へと移動させる工程、
c)塩化ナトリウム溶液を同容器内へと移動させる工程、
d)2−フェノキシエタノール調製物を上記当該容器へと撹拌下で移動させる工程、
e)pHを確認し、pHが6.0〜7.0の範囲中に収まるように調節する工程。
【0101】
方法はさらに、成分Iと成分IIとの混合に関し、成分IIの内容物を前記成分Iへと移動させて混合物を得る工程を含む。
【0102】
方法はさらに、以下の工程を含む:
a)上記混合物を、前記Hib抗原調製物へと移動させる工程、
b)pHを確認し、pHを6.5〜7.5の範囲中に調節する工程。
【0103】
本発明の一つの好ましい実施態様によれば、上記の任意の工程において述べられた撹拌は、150rpmで、25±2℃にて、約30分から2時間行われる。
【0104】
以下の実施例は、本発明及びその利点をさらに例証するために使用される。以下の具体的な実施例は、これらが例証を意図し、本発明の範囲を制限するものではないという理解のもと、提供される。
【実施例1】
【0105】
本実施例は、本発明の態様の一つの通り、六価のワクチン組成物及び製造方法を与える。
【0106】
A]本発明による六価のワクチン組成物は、以下のとおりである:
0.5mlのワクチンの各々が、以下を含む:
【0107】
【表1】

【0108】
B]本発明による六価のワクチンの製造方法は、以下のとおりである:
成分Iの処方手順
リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させ、次いで破傷風抗原及びジフテリア抗原を撹拌下で移動させて混合物を得た。次に、当該容器中で2−フェノキシエタノールと上記混合物とを混合した。次に、塩化ナトリウム溶液を上記へと添加した。混合物のpHを確認し、6.0〜6.5の範囲中に収まるように調節した。次に、wP抗原を同容器内へと移動させた。次に、混合物のpHを確認し、6.5〜7.5の範囲中に収まるように調節した。
【0109】
成分IIの処方手順
リン酸アルミニウムゲル、次いでB型肝炎抗原を容器内へと移動させた。次に、塩化ナトリウム溶液、次いで2−フェノキシエタノールを同容器内へと移動させた。混合物のpHを確認し、6.0〜7.0の範囲中に収まるように調節した。
【0110】
成分Iと成分IIとの混合
本工程は、成分IIの内容物を成分Iへと移動させて、混合物を得ることによって実施された。
【0111】
Hib b及びIPVバルクの添加
さらに、成分Iと成分IIとの上記混合物を、Hib b抗原調製物と混合して、混合物を得た。これをさらにIPV抗原へと添加して混合物を得、生理食塩水を上記混合物へと添加して六価のワクチンを得、pHを確認し、6.5〜7.5の範囲中に収まるように調節した。
【実施例2】
【0112】
本実施例は、本発明の態様の一つの通り、五価のワクチン組成物及び製造方法を与える。
【0113】
A]本発明による五価のワクチン組成物は、以下のとおりである:
0.5mlのワクチンの各々が、以下を含む:
【0114】
【表2】

【0115】
B]本発明による五価のワクチンの製造方法は、以下のとおりである:
成分Iの処方手順
リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させ、次いで破傷風抗原及びジフテリア抗原を撹拌下で移動させて混合物を得た。次に、当該容器中で2−フェノキシエタノールと上記混合物とを混合した。次に、塩化ナトリウム溶液を上記へと添加した。混合物のpHを確認し、6.0〜6.5の範囲中に収まるように調節した。次に、wP抗原を同容器内へと移動させた。次に、混合物のpHを確認し、6.5〜7.5の範囲中に収まるように調節した。
【0116】
Hib b及びIPVバルクの添加
成分Iを、Hib b抗原へと添加して混合物を得、これを次にIPV抗原調製物及び生理食塩水と混合して、五価のワクチンを得た。混合物のpHを、6.5〜7.5の範囲中に収まるように調節した。
【実施例3】
【0117】
本実施例は、本発明の態様の一つの通り、五価のワクチン組成物及び製造方法を与える。
【0118】
A]本発明による五価のワクチン組成物は、以下のとおりである:
0.5mlのワクチンの各々が、以下を含む:
【0119】
【表3】

【0120】
B]本発明による五価のワクチンの製造方法は、以下のとおりである:
成分Iの処方手順
リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させ、次いで破傷風抗原及びジフテリア抗原を撹拌下で移動させて混合物を得た。次に、当該容器中で2−フェノキシエタノールと上記混合物とを混合した。次に、塩化ナトリウム溶液を上記へと添加した。混合物のpHを確認し、6.0〜6.5の範囲中に収まるように調節した。次に、wP抗原を同容器内へと移動させた。次に、混合物のpHを確認し、6.5〜7.5の範囲中に収まるように調節した。
【0121】
成分IIの処方手順
リン酸アルミニウムゲル、次いでB型肝炎抗原調製物を容器内へと移動させた。次に、塩化ナトリウム溶液、次いで2−フェノキシエタノール調製物を同容器内へと移動させて、混合物を得た。pHを、6.0〜7.0の範囲中に収まるように調節した。
【0122】
成分Iと成分IIとの混合
本工程は、成分IIの内容物を成分Iへと移動させて、混合物を得ることを含んだ。
【0123】
Hib bバルクの添加
次に、成分Iと成分IIとの上記混合物を、Hib b抗原調製物と混合して、五価のワクチンを得た。得られた混合物のpHを確認し、6.5〜7.5の範囲中に収まるように調節した。
【実施例4】
【0124】
本実施例は、ジフテリア抗原、破傷風抗原、全細胞百日咳抗原、インフルエンザ菌(Hib)b型抗原、B型肝炎抗原及び不活化ポリオ抗原について実施されたin−vivo力価試験の概要並びにそれらの安定性データ又は力価を与える。
A]ジフテリア抗原、破傷風抗原、全細胞百日咳抗原、インフルエンザ菌(Hib)b型抗原、B型肝炎抗原及び不活化ポリオ抗原について実施されたin−vivo力価試験
【0125】
1.ジフテリアトキソイド
必要な動物種:モルモット
1つのバッチにつき必要な動物数:116匹(試験用に48匹、参照用に48匹及びLD50用に20匹)
ワクチンの投与経路:皮下
注射量:1.0ml
動物が収容される日数:28
ジフテリアトキソイドの力価を、モルモットにおける致死的チャレンジ法によって決定した。この方法では、試験及び参照ワクチン各々につき、中間の希釈物が試験動物の少なくとも50%以上を救うED50用量を含有するよう、3つの希釈物を調製した。試験ワクチン及び参照ワクチンの希釈物毎に、16匹のモルモットに注射をし、28日後に100 LD50を含有するジフテリア毒素で、試験動物を皮下チャレンジした。20匹のモルモットの群を、ジフテリア毒素の力価測定のために未免疫で保ち、このモルモットの群に、異なる希釈のジフテリア毒素を、希釈ごとに5匹のモルモットとなるよう接種した。試験は、33日間で完了した。さらなる計算は、PROBITを使用して行った。試料は、それが≧30IU/ヒト単回用量を含有する場合に、ジフテリア力価試験に合格する。
−試験ワクチンは、参照ワクチンとの直線性及び平行性を満たすべきである。
−推定力価の信頼限界は、50〜200%間にあるべきである。
−推定力価は30I.U.毎ヒト単回用量未満であるべきではない。
−力価の推定値の95%信頼区間の限界は、推定力価の95%信頼区間の下限限界が30I.U.毎用量よりも大きい場合を除き、50〜200%の範囲内にあるべきである。
【0126】
2.破傷風トキソイド
必要な動物種:スイスアルビノマウス
1つのバッチにつき必要な動物数:116匹(試験用に48匹、参照用に48匹及びLD50用に50匹)
ワクチンの投与経路:皮下
注射量:0.5ml
動物が収容される日数:28
破傷風トキソイドの力価を、スイスマウスにおける致死的チャレンジ法によって決定した。試験では、試験及び参照ワクチン各々につき、中間の希釈物が試験動物の少なくとも50%以上を救うED50用量を含有するよう、3つの希釈物を調製した。試験ワクチン並びに参照ワクチンの希釈物毎に、16匹のスイスマウスの群に注射をし、収容28日後に100 LD50を含有する破傷風毒素で、試験動物をチャレンジした。20匹のスイスマウスの群を、破傷風毒素の力価測定のために未免疫で保ち、LD50力価測定の4つの希釈物について、5匹ずつのマウスとなるように注射した。試験は、33日間で完了した。さらなる計算は、PROBITを使用して行った。力価試料は、それが≧60IU/ヒト単回用量を含有する場合に、破傷風力価試験に合格する。
−試験ワクチンは、参照ワクチンとの直線性及び平行性を満たすべきである。
−推定力価の信頼限界は、50〜200%間にあるべきである。
−推定力価は60I.U.毎ヒト単回用量未満であるべきではない。
−力価の推定値の95%信頼区間の限界は、推定力価の95%信頼区間の下限限界が60I.U.毎用量よりも大きい場合を除き、50〜200%の範囲内にあるべきである。
【0127】
3.全細胞百日咳抗原
必要な動物種:スイスマウス
1つのバッチにつき必要な動物数:194匹(試験用に72匹、参照用に72匹及びLD50用に50匹)
ワクチンの投与経路:腹腔内
注射量:0.5ml
動物が収容される日数:14
百日咳抗原の力価試験を、スイスマウスにおけるマウス感染防御試験(Mouse protection test)によって実施した。この方法では、試験及び参照ワクチン各々につき、中間の希釈物が試験動物の少なくとも50%以上を救うED50用量を含有するよう、3つの希釈物を生理食塩水中で調製した。各希釈物毎に24匹のスイスマウスの群を免疫化し、次に、全ての免疫化動物を、14日目に、0.03mlのチャレンジ用量(およそ100,000生物体毎0.03ml)で脳内チャレンジする。チャレンジ後、試験動物を14日間観察し、試験動物の死亡及び生存を記録した。チャレンジ後の最初の3日間中に起こった死亡は、非特異的として扱った。さらなる計算は、PROBITを使用して行った。試料は、それが≧4IU/ヒト単回用量(SHD)を含有し、下限信頼限界が2IU/SHD以上である場合に、百日咳力価試験に合格する。
【0128】
4.インフルエンザ菌(Hemophilus influenza)(Hib)b型抗原
必要な動物種:スイスマウス
1つのバッチにつき必要な動物数:16匹(免疫用に8匹、対照として8匹)
ワクチンの投与経路:皮下
注射量:0.5ml
動物が収容される日数:35
Hib b抗原の力価試験を、スイスマウスにおいてELISA法によって実施した。この試験では、各8匹ずつのスイスマウスの2つの群(試験及び対照群)を選択した。試験群の各マウスに、1:4で希釈したワクチン0.5mlを皮下注射し、対照群は未接種のままにした。10日目及び20日目にブースター用量を与え、最終的な採血を35日目に行う。血清試料を、ELISA法によって、Hibに対する抗体について試験した。試料は、試験群におけるマウスの≧50%がセロコンバージョンした場合に、Hib力価試験に合格する。
【0129】
5.B型肝炎表面抗原
必要な動物種:Balb Cマウス
1つのバッチにつき必要な動物数:110匹(試料用に50匹、参照用に50匹、プラセボ用に10匹)
ワクチンの投与経路:腹腔内
注射量:1.0ml
動物が収容される日数:28
B型肝炎表面抗原の力価試験を、Balb/Cマウスにおいて実施した。この試験では、参照及び試験ワクチン各々につき5段階の2倍希釈物を調製し、各希釈につき10匹のマウスに腹腔内接種した。10匹のマウスに希釈剤を接種し、プラセボとした。接種されたマウスを、接種の28日目に出血させ、溶血が起こらないように注意しながら、血清を分離した。血清試料をELISA法によって、B型肝炎に対する抗体価について試験した。試料は、その相対力価の上限が≧1の場合に、B型肝炎力価試験に合格する。
【0130】
6.不活化ポリオワクチン(IPV)
必要な動物種:ウィスターラット
1つのバッチにつき必要な動物数:100匹(試験ワクチン用に50匹、参照ワクチン用に50匹)
ワクチンの投与経路:筋肉内
注射量:0.5ml
動物が収容される日数:21
IPVの力価試験を、RIVM TOXラットにおいて実施した。参照及び試験ワクチン各々につき5段階の3倍希釈物を調製し、各希釈物を0.5mlずつ、10匹のラットに筋肉内注射した。免疫化21日後に試験動物を出血させ、RBCの溶解を避けながら、血清試料を慎重に採取した。各血清試料を、血清中和試験によって、ポリオウイルスの1型、2型及び3型血清型に対する抗体価について試験した。試験は:
−試験及び参照ワクチン両方の50%有効量(ED50)が、動物に与えられた最少量と最大量との間にあり;
−統計解析が、直線性又は平行性からの有意な逸脱を示さず;
−推定相対力価の信頼限界が、推定力価の25%と400%との間にある;
場合を除き、無効である。
【0131】
B]本発明のワクチン中の抗原の安定性データ又は力価
1)実施例1の六価のワクチンの全ての抗原について、実施例4 A]において記述したように試験を実施した。結果は、以下の表にしたとおりである。
【0132】
【表4】

【0133】
したがって、5±3℃でのワクチンの長期保管後でも、ワクチン抗原は依然として許容限界を超える力価を有し/免疫原性を有することが分かる。
【0134】
2)実施例2の五価のワクチンの全ての抗原について、実施例4 A]において記述したように試験を実施した。結果は、以下の表にしたとおりである。
【0135】
【表5】

【0136】
したがって、5±3℃でのワクチンの長期保管後でも、ワクチン抗原は依然として許容限界を超える力価を有し/免疫原性を有することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフテリア(D)抗原、破傷風(T)抗原、全細胞百日咳(wP)抗原、及びIPV抗原を含み、かつ、インフルエンザ菌(Hib)及び肝炎(Hep)の群から選択される一つ以上の抗原を随意に含む、完全に液体安定な混合ワクチン。
【請求項2】
前記D抗原及び前記T抗原が、リン酸アルミニウムに吸着されている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記IPV抗原が、1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケットの群から選択されるソールク株、又はセービン1もしくは2の群から選択されるセービン株である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
Hibが、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197及び髄膜炎菌の外膜タンパク質もしくはそれらの任意の同等物を含む群から選択される担体タンパク質、又は任意の他の公知の担体にコンジュゲート化されている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項5】
前記Hib抗原が、任意のアジュバントに実質的に吸着されていない、請求項1に記載のワクチン。
【請求項6】
前記Hib抗原が、Hib b株の莢膜多糖体に由来する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項7】
前記Hep抗原が、リン酸アルミニウムに吸着されている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項8】
前記Hep抗原が、Hep B株の表面抗原に由来する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項9】
前記ワクチンが、組成物中の保存剤として2−フェノキシエタノール(2−POE)をさらに含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項10】
D、T、wP、Hib b並びにIPV(1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット)を含み、ここでDが約1〜40Lfの量で存在し、Tが約1〜25Lfの量で存在し、wPが約1〜30IOU毎0.5mlの量で存在し、かつHib bが約1〜20μg毎0.5mlの量で存在し、かつ1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット株が、それぞれ約1〜50DU、1〜15DU及び1〜50DU毎0.5mlの量で存在する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
D、T、wP、Hib b並びにIPVを含み、ここでDが約20Lfの量で存在し、Tが約7.5Lfの量で存在し、wPが約16IOU毎0.5mlの量で存在し、かつHib bが約10μg毎0.5mlの量で存在し、かつ1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット株が、それぞれ約40DU、8DU及び32DU毎0.5mlの量で存在する、請求項10に記載のワクチン。
【請求項12】
D、T、wP、Hib b、Hep B並びにIPV(1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット)を含み、ここでDが約1〜40Lfの量で存在し、Tが約1〜25Lfの量で存在し、wPが約1〜30IOU毎0.5mlの量で存在し、かつHib bが約1〜20μg毎0.5mlの量で存在し、かつHep Bが約1〜20μg毎0.5mlの量で存在し、かつ1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット株が、それぞれ約1〜50DU、1〜15DU及び1〜50DU毎0.5mlの量で存在する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項13】
D、T、wP、Hib b、Hep Bを含み、ここでDが約20Lfの量で存在し、Tが約7.5Lfの量で存在し、wPが約16IOU毎0.5mlの量で存在し、Hib bが約10μg毎0.5mlの量で存在し、かつHep Bが約10μg毎0.5mlの量で存在し、かつ1型マホニー、2型MEF及び3型ソーケット株が、それぞれ約40DU、8DU及び32DU毎0.5mlの量で存在する、請求項12に記載のワクチン。
【請求項14】
D、T、P、Hib、Hep又はIPVの群から選択される任意の抗原に対する免疫応答の誘導方法であって、免疫学的に活性な量の請求項1に記載の混合ワクチンを対象に投与することを含む、方法。
【請求項15】
ワクチンがD抗原、T抗原、wP抗原、Hib b抗原及びHep B抗原を含み、かつ保存剤として2−フェノキシエタノールを含み、ワクチンがIPV抗原を含まないことを条件とする、請求項1に記載のワクチン。
【請求項16】
Dが約1〜40Lfの量で存在し、Tが約1〜25Lfの量で存在し、wPが約1〜30IOU毎0.5mlの量で存在し、Hib bが約2〜20μg毎0.5mlの量で存在し、かつHep Bが約1〜20μg毎0.5mlの量で存在する、請求項15に記載のワクチン。
【請求項17】
Dが約20Lfの量で存在し、Tが約7.5Lfの量で存在し、wPが約16IOU毎0.5mlの量で存在し、Hib bが約10μg毎0.5mlの量で存在し、かつHep Bが約10μg毎0.5mlの量で存在する、請求項16に記載のワクチン。
【請求項18】
請求項1に記載の完全に液体安定な混合ワクチンの製造方法であって、
a)i)ジフテリア(D)抗原、ii)破傷風(T)抗原及びiii)全細胞百日咳(wP)抗原の混合物を含む成分Iを、反応容器中で調製する工程、
b)随意に、アルミニウム塩に吸着されたHepを含む成分IIを調製する工程、
c)随意に、成分Iに前記成分IIを混合して混合物を得る工程、
d)[a)又はc]において得られた]上記混合物をHib抗原に添加し、次いでIPV抗原を添加する工程、
を含む、方法。
【請求項19】
前記D抗原及び前記T抗原がリン酸アルミニウムに吸着されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、保存剤として2−フェノキシエタノール(2−POE)を前記成分Iに添加する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記成分Iの調製が、以下の工程:
a)リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させる工程、
b)破傷風抗原調製物を上記容器内へと撹拌下で移動させる工程、
c)ジフテリア抗原調製物を当該容器内へと移動させる工程、
d)2−フェノキシエタノールを当該容器中に撹拌下で移動させる工程、
e)塩化ナトリウム溶液を上記当該容器へと移動させる工程
f)pHを確認し、pHを6.0〜6.5の範囲中に調節する工程、
g)wP抗原調製物を撹拌下で移動させる工程、
h)pHを確認し、pHを6.5〜7.5の範囲中に調節する工程、
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記成分IIの調製が、以下の工程:
a)リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させる工程、
b)肝炎抗原(Hep)調製物を上記容器内へと撹拌下で移動させる工程、
c)塩化ナトリウム溶液を同容器内へと移動させる工程、
d)2−フェノキシエタノール調製物を上記当該容器へと移動させる工程、
e)pHを確認し、pHが6.0〜7.0の範囲中に収まるように調節する工程、
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記成分Iと前記成分IIとの混合が、成分IIの内容物を前記成分Iへと移動させて、反応容器中に混合物を得る工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記Hib抗原及び前記IPV抗原の添加が、以下の工程:
a)Hib抗原調製物に、請求項18の工程a)又は工程c)において得られた混前記合物を移動させて、混合物を得る工程、
b)上記混合物、次いで食塩水を、IPV抗原調製物へと移動させる工程、
c)pHを確認し、pHを6.5〜7.5の範囲中に調節する工程、
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
請求項15に記載の完全に液体安定な混合ワクチンの製造方法であって、
a)i)ジフテリア(D)抗原、ii)破傷風(T)抗原及びiii)全細胞百日咳(wP)抗原の混合物を含む成分Iを調製する工程、
b)アルミニウム塩に吸着されたHep Bを含む成分IIを調製する工程、
c)成分Iに前記成分IIを混合して混合物を得る工程、
d)上記混合物をHib抗原に添加する工程、
を含む、方法。
【請求項26】
前記D抗原及び前記T抗原がリン酸アルミニウムに吸着されている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記成分Iの調製が、以下の工程:
a)リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させる工程、
b)破傷風抗原調製物を上記容器内へと撹拌下で移動させる工程、
c)ジフテリア抗原調製物を当該容器内へと移動させる工程、
d)2−フェノキシエタノールを移動させる工程、
e)塩化ナトリウム溶液を上記当該容器へと移動させる工程
f)pHを確認し、pHを6.0〜6.5の範囲中に調節する工程、
g)wP抗原調製物を同容器内へと移動させる工程、
h)pHを確認し、pHを6.5〜7.5の範囲中に調節する工程、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記成分IIの調製が、以下の工程:
a)リン酸アルミニウムゲルを容器内へと移動させる工程、
b)Hep B抗原調製物を上記容器内へと移動させる工程、
c)塩化ナトリウム溶液を同容器内へと移動させる工程、
d)2−フェノキシエタノール調製物を上記当該容器へと移動させる工程、
e)pHを確認し、pHが6.0〜7.0の範囲中に収まるように調節する工程、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記成分Iと前記成分IIとの混合が、成分IIの内容物を前記成分Iへと移動させて混合物を得る工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
以下の工程:
a)得られた前記混合物を、前記Hib抗原調製物へと移動させる工程、
b)pHを確認し、pHを6.5〜7.5の範囲中に調節する工程、
をさらに含む、請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2012−506420(P2012−506420A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532773(P2011−532773)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000599
【国際公開番号】WO2010/046934
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(500445631)パナセア バイオテック リミテッド (29)
【Fターム(参考)】