説明

共重合ポリエステル

【課題】
透明性、色調および保香性に優れ、食品あるいは飲料用等の容器、包装材料、特に肉厚で大型の容器として有利に使用しうる共重合ポリエステルを提供する。
【解決手段】
テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールを主たるグリコール成分としてなる共重合ポリエステルであって、全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量が1.5〜25モル%であり、テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体の含有量が5000ppm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、色調および保香性に優れ、食品あるいは飲料用等の容器、包装材料として好適に使用しうる共重合ポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、とりわけ、テレフタル酸(以下、TPAと略称することがある)とエチレングリコール(以下、EGと略称することがある)を原料として製造されるポリエチレンテレフタレート(PET)は、化学的、物理的性質に優れていることから、容器、フィルム、シート、繊維等の用途に広範囲に使用されている。
【0003】
近年、かかるポリエチレンテレフタレート(PET)の製造時に、ネオペンチルグリコール(以下、NPGと略称することがある)を共重合させたポリエステル(以下、共重合ポリエステルと略称することがある)が透明性、耐衝撃性、成形性、耐熱性等に優れることで注目され、各種用途、特にフィルム、シート、エンジニアリングプラスチック用の原料ポリマーとして用いられてきている。
【0004】
具体的には、透明性や耐薬品性あるいは成形性などを改良するためにネオペンチルグリコール共重合量を特定の範囲に規定した共重合ポリエステルや前記共重合ポリエステルからの成形品及びその製法、あるいは前記ポリエステルに特定の化合物を添加した共重合ポリエステル組成物からの中空成形品の製法に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜6参照)。
【0005】
また、上記共重合ポリエステルを製造する際、重縮合触媒としてPETと同様に、価格面から一般的にアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物やチタン化合物が用いられ、これらの添加量を規制して得た共重合ポリエステルや樹脂組成物に関する技術も提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【0006】
しかしながら、前記の共重合ポリエステルやそれらからの成形品の透明性は十分なものではなく、また成形品とした場合に十分な保香性を保持することができないなどの問題があった。
【0007】
さらに、フィルムの保香性を改良するために種々の技術が提案されているが(例えば、特許文献8、9参照)、これらの技術によって得られた共重合ポリエステルを低フレーバー性飲料用の容器に使用しても、十分に満足できる水準のものは得られず、さらなる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭50−136394号公報
【特許文献2】特開昭51−38335号公報
【特許文献3】特開昭52−3644号公報
【特許文献4】特開平8−337659号公報
【特許文献5】特開2000−109546号公報
【特許文献6】特開2004−27176号公報
【特許文献7】特開2004−123984号公報
【特許文献8】特開平6−116376号公報
【特許文献9】特開平6−116486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、透明性、色調および保香性に優れ、食品あるいは飲料用等の容器、包装材料、特に肉厚で大型の容器として好適に使用しうる共重合ポリエステルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、本発明を完成するに到った。即ち、本発明は、(1)〜(5)の構成を有するものである。
(1)テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールを主たるグリコール成分としてなる共重合ポリエステルであって、全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量が1.5〜25モル%であり、テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体の含有量が5000ppm以下であることを特徴とする共重合ポリエステル。
(2)テレフタル酸とエチレングリコールからなる遊離のモノヒドロキシエチルテレフタレートの含有量が100ppm以下であることを特徴とする(1)に記載の共重合ポリエステル。
(3)全グリコ−ル成分に対するジエチレングリコールの含有量が1.0〜5.0モル%であることを特徴とする(1)または(2)に記載の共重合ポリエステル。
(4)カラーb値が−5.0〜5.0であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の共重合ポリエステル。
(5)段付成形板に成形したときの厚み5mmにおけるヘイズ値が15%以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の共重合ポリエステル。
【発明の効果】
【0011】
本発明の共重合ポリエステルは、透明性、色調および保香性に優れており、食品あるいは飲料用等の容器、包装材料、特に肉厚で大型の容器として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の共重合ポリエステルを以下に具体的に説明する。
本発明の共重合ポリエステルは、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールを主たるグリコール成分として構成されるものであり、全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量は1.5〜25モル%であり、テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体の含有量が5000ppm以下であることを特徴とする。
【0013】
全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量は、好ましくは2.0〜20モル%、より好ましくは2.0〜12モル%、最も好ましくは2.5〜9.0モル%である。ネオペンチルグリコールの含有量が上記範囲未満では、共重合ポリエステルの結晶化速度が早く、成形体とした場合にその透明性が悪化しやすい。一方、ネオペンチルグリコールの含有量が上記範囲を越えると、結晶性がなくなると同時に延伸による分子配向が起こらなくなり、機械的強度が低く、耐熱性が低下した成形体しか得られず、特に飲料用容器として用いることができない。なお、ここで結晶性とは、乾燥した試料を、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、−100℃〜300℃まで20℃/minで昇温し、次に−100℃まで50℃/minで降温し、続いて−100℃〜300℃まで20℃/minで昇温する二度の昇温過程のどちらにおいても融解ピークを示すものを指す。本発明の共重合ポリエステルは、結晶性であることにより、特に肉厚で大型の容器として好適に使用しうるだけの機械強度、耐熱性を有することができる。
【0014】
テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体(CD)の含有量は、好ましくは3500ppm以下、さらに好ましくは3000ppm以下、最も好ましくは2500ppm以下である。遊離の環状2量体の含有量が上記範囲を超えると、保香性が悪くなり包装材料として使用に適さなくなる。また、この含有量の下限値は生産時の経済性より500ppmである。テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体の含有量は、後述する実施例に記載の測定方法によって定量した値である。
【0015】
また、本発明の共重合ポリエステル中のテレフタル酸とエチレングリコールからなる遊離のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)の含有量は好ましくは100ppm以下、より好ましくは70ppm以下、更に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは30ppm以下である。遊離のMHETの含有量が上記範囲を超えると、保香性がさらに悪くなりうる。特に、ミネラルウオターなどのような低フレーバー性飲料に用いられる包装材料用共重合ポリエステルでは問題になる。また、この含有量の下限値は生産時の経済性より5ppmである。
【0016】
本発明の共重合ポリエステルの主たるジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸成分の割合は好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0017】
テレフタル酸とともに使用できる他のジカルボン酸成分としては、(1)イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、(2)アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、(3)ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0018】
本発明の共重合ポリエステルは、全グリコール成分がエチレングリコールとネオペンチルグリコールとで構成されることが好ましいが、本発明の目的とする透明性及び保香性等を阻害しない範囲で、ポリエステルに他の機能を付与ないし特性を改良するために、エチレングリコールとネオペンチルグリコール以外の他のグリコール成分を使用してもよい。全グリコール成分に対するエチレングリコールとネオペンチルグリコールの合計量は70モル%以上が好ましく、さらに好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0019】
他のグリコール成分としては、(1)トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングルコール等の脂肪族グリコール類、(2)1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール類、(3)p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール等の芳香族グリコール類等が挙げられる。これらの中でも、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好適である。また、これらのグリコール成分は、いずれかを単独で使用しても2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0020】
さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲内で、多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0021】
本発明の共重合ポリエステルは、直接エステル化反応と重縮合反応による製造法、あるいはエステル交換反応と重縮合反応による製造法のいずれの方法によっても生産することができる。前記の反応は、回分式反応装置で行っても良いし、連続式反応装置で行っても良いが、経済性及び品質の安定性の点で連続式反応装置によるのが好ましい。
【0022】
連続式反応装置(連続式重縮合法)では、エステル化反応、エステル交換反応及び溶融重縮合反応はそれぞれ1段階で行ってもよいが、複数の段階に分けて行うのが好ましい。エステル化反応またはエステル交換反応を複数の段階に分けて行う場合、反応缶数は2缶〜3缶が好ましい。また、溶融重縮合を複数の段階に分けて行う場合、反応缶数は3缶〜7缶が好ましい。
【0023】
本発明の共重合ポリエステルを連続式重縮合法で製造する場合、全ジカルボン酸またはそのエステル誘導体1モルに対して1.02〜1.5モル、好ましくは1.03〜1.4モルの全てのグリコ−ルを含有するスラリ−を調製し、これをオリゴマーを含有するエステル化反応工程に連続的に供給する。エステル化反応温度は通常240〜270℃であり、好ましくは250〜265℃である。また、反応缶内の圧力は通常0.2MPa以下、好ましくは0.01〜0.05MPaである。また、重縮合反応の温度は通常265〜285℃であり、好ましくは270〜280℃であり、反応缶内の圧力は通常1.5hPa以下、好ましくは0.5hPa以下である。エステル化反応の反応時間は5時間以下が好ましく、特に好ましくは2〜3.5時間である。また、重縮合反応の反応時間は3時間以下が好ましく、特に好ましくは1〜2時間である。
【0024】
本発明の共重合ポリエステルを回分式重縮合法で製造する場合、エステル化反応温度は通常220〜250℃であり、好ましくは230〜245℃である。また、反応缶内の圧力は通常0.2〜0.4MPa、好ましくは0.25〜0.30MPaである。また、重縮合反応は1段階で行っても、複数段階に分けて行ってもよい。1段階で行う場合は、漸次減圧および昇温を行い、最終的な温度を260〜280℃、好ましくは265〜275℃の範囲とし、最終的な圧力を、通常3hPa以下、好ましくは0.5hPa以下とする。エステル化反応の反応時間は4時間以下が好ましく、特に好ましくは2〜3時間である。また、重縮合反応の反応時間は5時間以下が好ましく、特に好ましくは1〜3時間である。
【0025】
次に、連続式エステル交換反応によって低重縮合体を製造する場合は、テレフタル酸ジメチル1モルに対して1.1〜1.6モル、好ましくは1.2〜1.5モルのグリコールを含有する溶液を調製し、これをエステル交換反応工程に連続的に供給する。エステル交換反応温度は通常200〜270℃であり、好ましくは230〜265℃である。エステル交換法の場合、重縮合触媒以外にエステル交換触媒を使用することが必要である。得られた低重縮合体を前記の連続式重縮合と同様に反応させる。
【0026】
また、回分式エステル交換反応によって低重縮合体を製造する場合は、回分式反応器にテレフタル酸ジメチル1モルに対して2.3〜2.0モル、好ましくは2.2〜2.0モルのグリコールとテレフタル酸ジメチルを投入してエステル交換触媒存在下に反応を行う。得られた低重縮合体を前記のエステル化反応による場合と同様にして重縮合させる。
【0027】
重縮合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物の少なくとも1種を用いることができる。前記アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイド等が挙げられる。これらの中でも、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドが好ましく、特に好ましくは三酸化アンチモンである。これらのアンチモン化合物は、生成する共重合ポリエステルに対して50〜400ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは100〜350ppmであり、特に好ましくは150〜300ppmである。
【0028】
また、前記ゲルマニウム化合物としては、例えば、結晶性二酸化ゲルマニウム、非晶性二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等の化合物等が挙げられる。これらの中でも、結晶性二酸化ゲルマニウム、非晶性二酸化ゲルマニウムがさらに好ましく、特に好ましくは非晶性二酸化ゲルマニウムである。これらのゲルマニウム化合物は、生成する共重合ポリエステルに対して10〜100ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは30〜70ppmであり、特に好ましくは30〜50ppmである。
【0029】
また、前記チタン化合物としては、例えば、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネート及びそれらの部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン、チタンハロゲン化物の加水分解物、シュウ化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸アンモニウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、チタンアセチルアセトナート、ヒドロキシ多価カルボン酸又は含窒素多価カルボン酸とのチタン錯体物、チタン及び珪素或いはジルコニウムからなる複合酸化物、チタンアルコキサイドとリン化合物の反応物等が挙げられる。これらの中でも、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、シュウ酸チタニルカリウムが好ましく、特に好ましくはチタニウムテトラブトキシドである。これらのチタン化合物は、生成する共重合ポリエステルに対して1〜50ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは2〜20ppmであり、特に好ましくは3〜10ppmである。
【0030】
また、前記アルミニウム化合物としては、蟻酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム等のカルボン酸塩、酸化物、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム等の無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド等のアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネ−ト、アルミニウムアセチルアセテ−ト等とのアルミニウムキレ−ト化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物等が挙げられる。これらの中でも、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、およびアルミニウムアセチルアセトネ−トが特に好ましい。これらのアルミニウム化合物は、生成ポリエステルに対して10〜100ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは15〜50ppmであり、特に好ましくは15〜40ppmである。
【0031】
また、本発明の共重合ポリエステルの製造においては、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物としては、これら元素の酢酸塩等のカルボン酸塩、アルコキサイド等が挙げられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。
【0032】
直接エステル化法の場合、前記重縮合触媒は、エステル化反応開始前、あるいは加圧エステル化反応終了後から初期重縮合反応開始前までの任意の時点で添加することができる。但し、アンチモン化合物またはチタン化合物を重縮合触媒として使用する場合には、エステル化反応前に添加することが好ましい。また、他の重縮合触媒、熱安定剤、添加物はエステル化反応後に添加することが好ましい。
【0033】
また、エステル交換法の場合には、前記重縮合触媒は、エステル交換反応開始前から初期重縮合反応開始前までの任意の時点で添加することができる。但し、チタン化合物は、重縮合触媒としての機能だけでなくエステル交換触媒としての機能も有するので、エステル交換反応開始前に添加することが好ましい。また、他の重縮合触媒、熱安定剤、添加物はエステル交換反応終了後からに添加することが好ましい。エステル交換触媒としては、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、チタニウムテトラブトキサイドなどのチタン化合物などが好適である。エステル交換触媒は、エステル交換反応開始前に添加することが必要である。
【0034】
また、安定剤としてリン化合物を使用することができる。リン化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。好適な具体例としては、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチル、フェニールホスホン酸ジメチル、フェニールホスホン酸ジエチル、フェニールホスホン酸ジフェニールが挙げられる。これらの中でも、リン酸トリメチル、リン酸が特に好適である。これらのリン化合物は、生成する共重合ポリエステルに対して1〜100ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは3〜70ppmであり、特に好ましくは5〜50ppmである。
【0035】
共重合ポリエステルの色調改善のためにコバルト化合物を配合することができる。このコバルト化合物の添加により、特にカラーb値を小さくすることができる。コバルト化合物はコバルト原子として共重合ポリエステルに対して0.5〜30ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは1〜20ppm、特に好ましくは1〜15ppmの範囲である。コバルト原子の含有量が上記範囲を越えると、コバルト金属の還元により共重合ポリエステルが黒ずんだり、青味が強くなったりし、カラーL値が50未満となったり、カラーb値が−5未満となったりし、商品価値が低下する。コバルト化合物としては、酢酸コバルト、塩化コバルト、安息香酸コバルト、クロム酸コバルト等が挙げられる。これらの中では、酢酸コバルトが好ましい。
【0036】
上記の連続式重縮合法または回分式重縮合法で得られた共重合ポリエステルは、通常、反応缶の底部に設けた抜き出し口からストランド状に抜き出し、水冷後、チップ状にカットされる。
【0037】
本発明のCD含有量が低い共重合ポリエステルは、例えば、エステル化反応工程やエステル交換反応工程で用いるエチレングリゴールの10〜20モル%の量をエステル化反応終了後、あるいはエステル交換反応終了後に低重合度反応生成物に追加添加して10分以上攪拌後に重縮合する方法、さらに、このような方法により得られた共重合ポリエステルを赤外線照射装置で加熱処理する方法などにより得ることができる。エチレングリコールを追加添加・攪拌することで、重縮合反応中に、既に生成していたCDを開環させて、CD量を減少しているものと考えられる。
【0038】
赤外線放射装置による処理は、これを設置した横型の結晶化装置を用いて行うことができ、この結晶化装置に共重合ポリエステルチップを供給して、攪拌下あるいは回転下にチップを移送しつつチップ温度が150〜250℃の範囲で加熱処理を行うことで可能である。この際、加熱した不活性ガスを向流方向に流すことも可能である。この装置は、一方からポリエステルチップが供給され、他方から排出されるような連続式装置であることが好ましい。赤外線放射装置を用いる処理では、共重合ポリエステルチップが赤外線を吸収して分子運動を起すために摩擦熱が発生してチップ内外層がほぼ均一に加熱されるので、チップ内外層に含まれるCDが、加熱処理により減少していると考えられる。従って、このようなメカニズムが達成できるのであれば、他の方法、例えば遠赤外線や近赤外線等々の組み合わせも使用可能である。ただし、CD量は、全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量に依存する傾向にあり、ネオペンチルグリコールの含有量が、25モル%超であると、上記方法を用いても、CD量を5000ppm以下にすることは困難である。用いる反応装置にもよるが、ネオペンチルグリコールの含有量が10モル%以下程度であれば、上記エチレングリゴールを追加添加・攪拌する方法のみでも、CD量を5000ppm以下にすることは可能である。
【0039】
また、MHET含有量を低くするためには、上記赤外線照射装置で加熱処理する方法、またはこれと同等の方法が必要である。赤外線照射の効果は、上記CD減少のメカニズムと同様と考えられる。上記のようにして得られた共重合ポリエステルは、末端カルボキシル基濃度が、ポリマー1トン当たり40当量以下である。末端カルボキシル基濃度は、30当量/トン以下が好ましく、20当量/トン以下がさらに好ましい。末端カルボキシル基濃度が上記範囲であることにより、共重合ポリエステルの成形後の着色を抑制することに寄与することができる。
【0040】
本発明の共重合ポリエステルの極限粘度は、0.50〜1.20dl/g、好ましくは0.60〜1.10dl/gである。極限粘度が上記範囲未満では、得られた成形品の機械的強度が低下し、上記範囲を超えると、溶融成形時に流動性が低下したり、成形時に熱分解が激しくなり着色が生じたりする。
【0041】
本発明の共重合ポリエステルに共重合されたジエチレングリコール成分は、反応副生物として生成したジエチレングリコールがポリマー主鎖に組み込まれたものであり、共重合されたジエチレングリコ−ル量は全グリコ−ル成分の1.0〜5.0モル%、好ましくは1.5〜4.0モル%である。エチレングリコール量が上記範囲未満の場合は、共重合ポリエステルの結晶化速度が早くなり透明性に影響を及ぼし、上記範囲を超える場合は、保香性が悪くなる。
【0042】
また、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等の水酸化第4級アンモニウム及び炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフタレートの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレート成分単位の割合を比較的低水準(全ジオール成分に対して3モル%以下)に保持できるので好ましい。
【0043】
本発明の共重合ポリエステルのカラーb値の上限は5.0が好ましく、4.0がより好ましく、3.0がさらに好ましく、特に好ましくは2.5である。カラーb値が上限値を超えると、共重合ポリエステルの黄色味が強くなり色調の点で好ましくない。一方、カラーb値が−5.0よりも負の方に数値が大きくなると、共重合ポリエステルの青味が目立つようになり、用途によっては使用できない場合がある。
【0044】
本発明の共重合ポリエステルを段付成形板に成形した際、金型温度10℃において成形した場合の段付成形板の厚さ5mm部位におけるヘイズ値は、15%以下であることが好ましく、さらに好ましくは13%以下、特に好ましくは10%以下である。ヘイズ値が上記値を越えると、成形品の透明性が悪化し、透明性の要求が厳しい用途では使用できない場合がある。
【0045】
本発明の共重合ポリエステルには、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂、染料や顔料などの着色剤、紫外線吸収剤、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤等を配合することができる。本発明の共重合ポリエステルは、射出成形、延伸ブロー成形、押出成形などの従来公知の成形法により種々の成形体に成形することができる。また、紙、他のプラスチック製シートや鋼板などの基材に溶融状態で押出して積層成形体に成形することも可能である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、共重合ポリエステルの特性は以下の方法に従って測定した。
【0047】
1)共重合ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(重量比2:3)混合溶媒中の30℃での溶液粘度から求めた。
【0048】
2)共重合ポリエステルのジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量]という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0049】
3)共重合ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(以下「AV」という)
試料約0.5gをベンジルアルコール20mlに溶解し、クロロホルムを加え希釈する。1/50規定水酸化カリウム水溶液で、滴定法によりAVを求めた。指示薬としてフェノールレッドを用いた。
【0050】
4)共重合ポリエステルのテレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体の含有量(以下「CD含有量」という)
試料約100mgを精秤し、HFIP/クロロホルム=2/3(v/v)、3mlで溶解した。クロロホルム20mlを加え、メタノ−ル10mlで再沈した。濾過後、濃縮乾固し、DMF10mlで再溶解した。遠心濾過した溶液をHPLCに供した。
装置 :L−7000(日立製作所製)
カラム:μ−Bondasphere C18 5μ 100Å 3.9mm×15cm(waters製)
検量線:別途単離したテレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる環状2量体を用いた。
【0051】
5)共重合ポリエステルの遊離のモノヒドロキシエチルテレフタレートの含有量(以下「MHET含有量」という)
試料約100mgを精秤し、HFIP/クロロホルム=2/3(v/v)、3mlで溶解した。クロロホルム20mlを加え、メタノ−ル10mlで再沈した。濾過後、濃縮乾固し、DMF10mlで再溶解した。遠心濾過した溶液をHPLCに供した。
装置 :L−7000(日立製作所製)
カラム:μ−Bondasphere C18 5μ 100Å 3.9mm×15cm(waters製)
検量線:別途合成したモノヒドロキシエチルテレフタレートを用いた。
【0052】
6)共重合ポリエステルの組成比
共重合ポリエステル試料約5mgを重クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比9/1)0.7mlに溶解し、H−NMR(varian製、UNITY50)を使用して求めた。
【0053】
7)色調
共重合ポリエステルチップのカラーをカラーメーター(日本電色社製、Model 1001DP)を使用して測定し、カラーb値を求めた。
【0054】
8)共重合ポリエステルのDSC測定
ヤマトDP63乾燥機にて、120℃で120分放置した試料を、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、−100℃〜300℃まで20℃/minで昇温し、次に−100℃まで50℃/minで降温し、続いて−100℃〜300℃まで20℃/minで昇温する二度の昇温過程において融解ピークを示すかどうかを確認し、融解ピークを示すものを「○」、示さないものを「×」とする。
【0055】
9)ヘイズ値
射出成形機(名機製作所製、M−150C−DM)を使用して、280℃で共重合ポリエステルを溶融させ、金型温度10℃で厚さ2〜11mmの段付成形板を成形し、厚さ5mmの部位をヘイズメーター(日本電色社製、Model NDH2000)にてヘイズ値(%)を測定した。
【0056】
10)官能試験
共重合ポリエステル試料を真空乾燥機で乾燥し、名機製作所製M−150C―DM射出成形機によりプリフォームを成形した。このプリフォームを延伸ブロー成形機を用いて二軸延伸ブロー成形し、引き続き約155℃に設定した金型内で10秒間熱固定し、1500ccの延伸中空容器を得た。この中空容器に70℃の蒸留水を入れ密栓後30分保持し、室温へ冷却し室温で1ヶ月間放置し、開栓後に風味、臭いなどの試験を行った。比較用のブランクとして、蒸留水を使用した。官能試験は10人のパネラーにより以下の基準により実施し、平均値で比較した。
(評価基準)
0:異味、臭いを感じない
1:ブランクとの差をわずかに感じる
2:ブランクとの差を感じる
3:ブランクとのかなりの差を感じる
4:ブランクとの非常に大きな差を感じる
【0057】
(実施例1)
予め反応物が残存している第1エステル化反応缶に、ジカルボン酸成分として高純度テレフタル酸(TPA)を100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)を96モル%及びネオペンチルグリコール(NPG)を4モル%、ジカルボン酸成分に対する全グリコール成分のモル比(G/A)を2.2に調製したスラリーを連続的に供給した。さらに、生成共重合ポリエステルに対して三酸化アンチモンが200ppmとなるように、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を、第1エステル化反応缶に連続的に供給した。次いで、攪拌下、缶内圧力0.05MPa、250℃の条件下で、平均滞留時間が3時間となるようにエステル化反応を行った。この反応物を第2エステル化反応缶に移送し、缶内圧力0.05MPaで攪拌下、260℃の条件下で、平均滞留時間が1時間となるようにエステル化反応を行った。次いで、このエステル化反応物を第3エステル化反応缶に移送し、攪拌下、缶内圧力0.05MPa、260℃の条件下でエステル化反応を行った。
【0058】
生成したオリゴマーに、EGをエステル化反応前に添加した量の10%に相当する量を添加して約15分間以上反応させ、次いで、生成共重合ポリエステルに対して、リン含有量が50ppm、コバルト含有量が5ppmとなるように別々の供給口から、リン酸トリメチルのEG溶液及び酢酸コバルト4水和物のEG溶液を、第3エステル化反応缶に連続的に供給した。
【0059】
このエステル化反応生成物を第1重縮合反応缶に連続的に供給し、攪拌下、265℃、35hPaで1時間、次いで第2重縮合反応缶で攪拌下、270℃、5hPaで1時間、さらに最終重縮合反応缶で攪拌下、280℃、0.5〜1.5hPaで1時間かけて重縮合反応を行った。重縮合反応後、ポリマーフィルターを通過させ、溶融状態のポリエステルをダイのノズルからストランド状に抜き出し、クーリングバスで水冷後、チップ状にカッティングした。IVは、0.77であった。この共重合ポリエステルを、赤外線放射装置に投入して加熱処理した。
【0060】
評価結果を表1に示す。本実施例で得られた共重合ポリエステルを10)の方法により二軸延伸ブロー成形して得たボトルは、透明性及び色調に優れ、官能試験の結果は0.7と問題なく保香性にも優れたものであった。
【0061】
(実施例2)
攪拌機及び留出コンデンサーを有する、容積10Lのエステル化反応槽に、テレフタル酸(TPA)2490重量部、エチレングリコール(EG)1964重量部、ネオペンチルグリコール(NPG)137重量部を投入し、触媒として三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を生成共重合ポリエステルに対してアンチモン金属が180ppm含有するように添加した。
【0062】
その後、反応系内を最終的に240℃となるまで徐々に昇温し、圧力0.25MPaでエステル化反応を180分間行った。反応系内からの留出水が出なくなるのを確認した後、反応系内を常圧に戻し、生成したオリゴマーに、EGをエステル交換前に添加した量の10%に相当する量添加して約15分間以上反応させ、次いで、酢酸コバルト2水和物のエチレングリコール溶液を生成共重合ポリエステルに対してコバルト金属が5ppm含有するように、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を生成共重合ポリエステルに対して残存リン原子が50ppm含有するように添加した。
【0063】
得られたオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、徐々に昇温しながら減圧し最終的に温度が280℃で、圧力が0.2hPaになるようにした。固有粘度に対応する攪拌翼のトルク値が所望の数値となるまで反応させ、重縮合反応を終了した。得られた溶融ポリエステル樹脂を重縮合槽下部の抜き出し口からストランド状に抜き出し、水槽で冷却した後チップ状に切断した。IVは0.77であった。実施例1と同様に加熱処理を行った。
【0064】
評価結果を表1に示す。本実施例で得られた共重合ポリエステルを10)の方法により二軸延伸ブロー成形して得たボトルは、透明性及び色調に優れ、官能試験の結果は0.7と問題なく保香性にも優れたものであった。
【0065】
(実施例3)
撹拌機、温度計、流出用冷却器を装備した反応缶内にテレフタル酸ジメチル970重量部、エチレングリコール655重量部、ネオペンチルグリコール46重量部、触媒として酢酸マンガン4水和物のエチレングリコール溶液を生成共重合ポリエステルに対してマンガン金属が400ppm含有するように、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を生成共重合ポリエステルに対してアンチモン金属が200ppm含有するように添加した。
【0066】
その後、反応系内を220℃まで徐々に昇温しながら170〜220℃で2時間エステル交換反応を行った。生成したオリゴマーに、EGをエステル交換前に添加した量の10%に相当する量添加して約15分間以上反応させ、次いで、酢酸コバルト2水和物のエチレングリコール溶液を生成共重合ポリエステルに対してコバルト金属が5ppm含有するように、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を生成共重合ポリエステルに対して残存リン原子が50ppm含有するように添加した。
【0067】
得られたオリゴマーを重縮合反応層に移送し、徐々に昇温しながら減圧し最終的に温度が280℃で、圧力が0.2hPaになるようにした。固有粘度に対応する攪拌翼のトルク値が所望の数値となるまで反応させ、重縮合反応を終了した。得られた溶融ポリエステル樹脂を重縮合槽下部の抜き出し口からストランド状に抜き出し、水槽で冷却した後チップ状に切断した。IVは0.77であった。実施例1と同様に加熱処理を行った。
【0068】
評価結果を表1に示す。本実施例で得られた共重合ポリエステルを10)の方法により二軸延伸ブロー成形して得たボトルは、透明性及び色調に優れ、官能試験の結果は0.9と問題なく保香性にも優れたものであった。
【0069】
(実施例4、5)
EGおよびNPGの含有量を変更する以外は、実施例1と同様にして反応させて共重合ポリエステルを得た。また、実施例1と同様に加熱処理を行った。評価結果を表1に示す。本実施例で得られた共重合ポリエステルを10)の方法により二軸延伸ブロー成形して得たボトルは、透明性及び色調に優れ、官能試験の結果はそれぞれ1.0,1.3とあまり問題なく保香性にも優れたものであった。
【0070】
(実施例6)
EGおよびNPGの含有量を実施例4に合わせ、重合後の赤外線放射装置による加熱処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして反応させて共重合ポリエステルを得た。評価結果を表1に示す。本実施例で得られた共重合ポリエステルを10)の方法により二軸延伸ブロー成形して得たボトルは、透明性及び色調に優れ、官能試験の結果は2.2とやや高くて保香性が実施例4に比べると劣っていた。
【0071】
(比較例1)
共重合成分としてNPGを全く用いないこと以外は、実施例1と同様にして反応させて共重合ポリエステルを得た。また、実施例1と同様に加熱処理を行った。評価結果を表1に示す。本比較例で得られた共重合ポリエステルを10)の方法により二軸延伸ブロー成形して得たボトルは、透明性に劣るものであった。
【0072】
(比較例2)
原料として用いるEGとNPGの使用量を変更すること以外は、実施例1と同様にして反応させて共重合ポリエステルを得た。また、実施例1と同様に加熱処理を行った。評価結果を表1に示す。本比較例で得られた共重合ポリエステルは結晶性ではなく、肉厚で大型の容器として好適に使用しうるだけの機械強度、耐熱性を有するものではなかった。また、本比較例で得られた共重合ポリエステルを10)の方法により二軸延伸ブロー成形して得たボトルは、官能試験の結果は2.5とやや高くて保香性が悪いものであった。
【0073】
(比較例3)
EGおよびNPGの含有量を実施例4に合わせ、エステル交換反応後にEGを添加せず、重合後の赤外線放射装置による加熱処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして反応させて共重合ポリエステルを得た。評価結果を表1に示す。本比較例で得られた共重合ポリエステルを10)の方法により二軸延伸ブロー成形して得たボトルは、透明性及び色調に劣り、官能試験の結果は3.5と高くて保香性が非常に悪いものであった。
【0074】
(比較例4)
エステル交換触媒として酢酸マンガンの代わりに酢酸亜鉛4水和物を生成共重合ポリエステルに対して亜鉛金属が400ppm含有するように添加し、三酸化アンチモンを生成共重合ポリエステルに対してアンチモン金属が450ppm含有するように添加し、エステル交換反応後にEGを添加せず、酢酸コバルト2水和物を添加せず、さらに、得られた共重合ポリエステルを赤外線放射装置で加熱処理をしないこと以外は、実施例3と同様にして反応させて共重合ポリエステルを得た。評価結果を表1に示す。本比較例で得られた共重合ポリエステルを10)の方法により二軸延伸ブロー成形して得たボトルは、透明性及び色調に劣り、官能試験の結果は3.5と高くて保香性が非常に悪いものであった。
【0075】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の共重合ポリエステルは、成形性に優れており、かつ透明性、色調および保香性に優れているので、透明性、色調および保香性の要求の厳しい成形体、特に、大型の低フレーバー性飲料容器等の容器の原料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールを主たるグリコール成分としてなる共重合ポリエステルであって、全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量が1.5〜25モル%であり、テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体の含有量が5000ppm以下であることを特徴とする共重合ポリエステル。
【請求項2】
テレフタル酸とエチレングリコールからなる遊離のモノヒドロキシエチルテレフタレートの含有量が100ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の共重合ポリエステル。
【請求項3】
全グリコ−ル成分に対するジエチレングリコールの含有量が1.0〜5.0モル%であることを特徴とする請求項1または2に記載の共重合ポリエステル。
【請求項4】
カラーb値が−5.0〜5.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共重合ポリエステル。
【請求項5】
段付成形板に成形したときの厚み5mmにおけるヘイズ値が15%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の共重合ポリエステル。

【公開番号】特開2011−46859(P2011−46859A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197867(P2009−197867)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】