説明

内反足の再発の治療におけるボツリヌストキシン

【課題】患者の再発した内反足-罹患足部における回外を軽減する方法、患者の再発した内反足-罹患足部における尖足を軽減する方法、および患者の再発した内反足-罹患足部における内転を軽減する方法の提供。
【解決手段】有効成分としてボツリヌス毒素を含む再発した内反足患者を治療するための医薬の有効量を、後脛骨筋、腓腹筋ヒラメ筋複合体(gastrosoleus complex)および母趾外転筋からなる群から選択される前記内反足罹患足に隣接する筋肉の少なくとも2箇所に注射をした後に該患者の内反足罹患足の位置を正して、該内反足罹患足に第1ギプスを施し該患者が該第1ギプスに充分に体重をかけられるようにして該第1ギプスを取り外すことおよび該患者の内反足罹患足に第2ギプスを施すことを含む、侵襲的介入を受けたことはないことを患者の、再発後の矯正を得る治療。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は非仮出願であって、2005年8月19日提出の関連仮出願第60/709,451号の優先権を主張し、その全ての内容をここに引用し、本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
本発明は内反足治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、再発した内反足のための治療方法に関する。
【0003】
関連技術分野の説明
内反足は、主に単独で起こる症状(特発性内反足)であるが、様々な既存症状にも認められる。20世紀の大部分の期間、内反足の治療の中心は、様々な技術を含む外科的矯正であった(Carroll NC, McMurtry R, Leete SF. The pathoanatomy of congenital clubfoot. Orthop Clin North Am. 1978;9:225-232; Carroll NC. Surgical technique for talipes equinovarus. Oper Tech Orthop. 1993;3:115-120; Crawford AH, Marxen JL, Osterfeld DL. The Cincinnati incision; a comprehensive approach for surgical, procedures of the foot and ankle in childhood. J Bone Joint Surg [Am]. 1982;64: 1355-1358; McKay DW. New concept of and approach to clubfoot treatment: section II. Correction of the clubfoot. J Pediatr Orthop. 1983;3:10-21 ; Turco VJ. Surgical correction of the resistant clubfoot: one-stage posteromedial release with internal fixation. A preliminary report. J Bone Joint Surg[Am]. 1971;53:477-497)。”良”〜”優”の初期成果が、これらの外科的方法について、52%〜91%の範囲で報告されている(Herzenberg JE, Radler CR, Bor N. Ponseti versus traditional methods of casting for idiopathic clubfeet. J Pediatr Orthop. 2002;22:517-521 ; Roye DP, Roye BD. Idiopathic congenital talipes equinovarus. J Am Acad Orthop Surg.
2002;10:239-248)。しかしながら、外科的介入は、ケースの11%〜50%に報告された合併症に関連する(Applington JP, Riddle CD. Avascular necrosis of the body of the talus after combined medial and lateral release of congenital clubfoot. South Med J. 1976;69:1037-1038; Atar D, Lehman WB, Grant AD. Complications in clubfoot surgery. Orthop Rev. 1991 ;20:233-239; Crawford AH, Gupta AK. Clubfoot controversies: complications and causes for failure. AAOS lnstr Course Lect. 1996;45:339-346; Miller JH, Bernstein SM. The roentogenographic appearance of the corrected clubfoot. Foot Ankle. 1986;6:177-183; Schlafly B, Butler JE, Siff SJ. The appearance of the tarsal navicular after posteromedial release for clubfoot. Foot Ankle. 1985;5:222-237)。しばしば、合併症はアキレス腱に関連し、該腱の上方の延長から踵骨変形を、またはアキレス腱の下方の延長の有無に関わらず、不十分な後部解離から尖足を生じることがある(Crawford AH, Gupta AK. Clubfoot controversies: complications and causes for failure. AAOS lnstr Course Lect. 1996;45:339-346)。術後の歩行運動分析により、足首ロッカーの構造およびタイミングに異常が示され(Alkjaer T, Pedersen EN, Simonsen EB. Evaluation of the walking pattern in clubfoot patients who received early intensive treatment. J Pediatr Orthop. 2000;20:642-647; Asperheim MS, Moore N, Carroll NC, et al. Evaluation of residual clubfoot deformities using gait analysis. J Pediatr Orthop B.
1995;4:49-54; Hee HT, Lee EH, Lee GS. Gait and pedographic patterns of surgically treated clubfeet. J Foot-Ankle Surg. 2001;40:287-294; Karol LA, Concha MC, Johnston CE 2d. Gait analysis and muscle strength in children with surgically treated clubfeet. J Pediatr Orthop. 1997;6:790-795; Karol LA, Mayberry S, O’Brien O, et al. Gait in patients with clubfeet: a comparison of physical therapy versus surgical release. Pediatric Orthopaedic Society of North America 2003 Annual Meeting, Amelia Island, Florida, May 2-4, 2003; Kuo KN, Hennigan SP, Hastings ME. Long term results of clubfoot release, outcome study and gait analysis. Pediatric Orthopaedic Society of North America 2003 Annual Meeting, Amelia Island, Florida, May 2-4, 2003; Otis JC, Bohne WH. Gait analysis in surgically treated clubfoot. J Pediatr Orthop. 1986;6:162-164; Widhe T, Berggren I. Gait analysis and dynamic foot pressure in the assessment of the treated clubfoot. Foot Ankle Int. 1994;15:186-190)、また動態研究により、1回のアキレス腱延長の後、平均腓腹筋ヒラメ筋(gastrosoleus muscle)複合体強度の減少が27%の力の産生(power generation)の有意な減少が、明らかになった(Karol LA, Concha MC, Johnston CE 2d. Gait analysis and muscle strength in children with surgically treated clubfeet. J Pediatr Orthop. 1997;6:790-795; Karol LA, Mayberry S, O’Brien O, et al. Gait in patients with clubfeet: a comparison of physical therapy versus surgical release. Pediatric Orthopaedic Society of North America 2003 Annual Meeting, Amelia Island, Florida, May 2-4, 2003; Kuo KN, Hennigan SP, Hastings ME. Long term results of clubfoot release, outcome study and gait analysis. Pediatric Orthopaedic Society of North America 2003 Annual Meeting, Amelia Island, Florida, May 2-4, 2003; Widhe T, Berggren I. Gait analysis and dynamic foot pressure in the assessment of the treated clubfoot. Foot Ankle Int. 1994;15:186-190)。
【0004】
Ponsetiは、1980年に手技(manipulation)およびギプス処置シリーズのプロトコルを公開し、当時、ケースの89%において、従来の手術は回避できたことを報告し(Laaveg SJ, Ponseti IV. Long-term results of treatment of congenital clubfoot. J Bone Joint Surg [Am]. 1980;62:23-31)、最近では、30年後の患者の78%で、機能的および臨床転帰は優れていることが報告された(Cooper DM, Dietz FR. Treatment of idiopathic clubfeet: a thirty-year follow-up note. J Bone Joint Surg [Am]. 1995;77: 1477-1489)。ケースの70%から90%で生じる未解決の後足部尖足は、経皮的アキレス腱切除術により治療された。短い期間(<3年)ではあるが、他の治験責任医師により、Ponsetiの該方法を使用した彼らの経験を、同様に好ましい転帰であることを引用して報告された。同様に、該物理学的治療方法もまた、アキレス腱切除をかなりの率で必要とする(Bensahel H, Guillaume A, Desgrippes Y. Results of physical therapy for idiopathic clubfoot: a long-term follow-up. J Pediatr Orthop. 1990;10:189-192)。Bensahelらにより、アキレス腱切除を含む26%の外科手術率が報告され(Bensahel H, Guillaume A, Desgrippes Y. Results of physical therapy for idiopathic clubfoot: a long-term follow-up. J Pediatr Orthop. 1990;10:189-192)、およびRichardsおよびWilson(Richards BS, Wilson H. Non-operative clubfoot treatment using physical therapy. International Society of Orthopaedic Surgery and Traumatology 3rd International Clubfoot Congress, San Diego, California, August 2002)により、47%の全体腱切除率が報告された。
【0005】
内反足の矯正は、選択された方法により達成されると、維持が必要となる。維持には、‘ブーツおよびバール’または様々な整形器具が含まれ、矯正に含まれる該方法および治療(外科的、非外科的、薬学的またはこれらの組み合わせ)に関わらず、矯正の必須条件である。矯正された内反足において、内反足の特徴が再進行するときは、内反足の再発(relapse)またはぶり返し(recurrence)とみなされる。ぶり返しは、ケースの約30%に認められ、2〜5歳の間で最も高い発生率を示した。
【0006】
外科的介入の必要無しに正常な足位置の回復を可能とする、ぶり返しまたは再発した内反足ための治療方法は、望ましく必要とされている。ボツリヌストキシン(またはトキシンズ)を含む新規な医薬組成物は、ボツリヌス菌由来であり、神経筋接合部でアセチルコリンの放出をブロックすることにより筋弛緩をもたらすことにより可逆的筋肉徐神経を引き起こす。ボツリヌストキシン 、特にボツリヌストキシンAは、現在、脳性麻痺、脳卒中後痙縮、および他の不適切な筋収縮の事例の治療に使用されている。
【0007】
Reiter(Reiter, F, Danni, M., Lagalla, G., Ceravolo, G., Provincial1i, L. 1998. Low dose botulinum toxin eith ankle taping for the treatment of spastic equinovarus foot after stroke. Arch Phys Med Rehabil 79:532-535)は、脳卒中後の痙縮の治療のための、テーピング方法と組み合わせたBTX-Aの使用を教示する。この治療は、これまでは正常な足部機能を有した成人患者に施され、内反足治療を対象とするものではなかった。
【0008】
Delgado(Delgado et al. A preliminary report of the use of botulinum toxin type A in infants with clubfoot: four case studies. Journal of Pediatric Orthopedics. 2000;20(4):533-8)により、物理学的治療を含む初期治療処置を伴う、内反足治療のための、非外科的介入の適応が報告された。内反足変形である1歳未満の乳幼児患者の群をBTX-Aで治療し、異常な足部位を解決した。これらの何人かの患者の状態は、基礎疾患のために事実上筋緊張異常であり、事実上‘特発性’とみなされえなかった。Delgadoの方法には、腓腹筋および後脛骨筋の両部への注射、および6〜11 IU/kgの様々な用量が含まれる。Delgadoの方法は、全ての患者に対し、複数の不規則な間隔で(平均3回の別々の注射イベントにおいて)、複数の筋部位を使用した。加えて、50%の患者が、1歳後に追加の外科手術を必要とした。再発の議論または再発に対する治療的手段は、扱われていなかった。
【0009】
Cummings(Cummings, RJ and Shanks, DE. A prospective randomized double-blind study of the usefulness of botox as an adjunct to serial manipiulation and casting for congenital clubfeet. Pediatric Orthopaedic Society of North America Annual Meeting. Ottawa, Canada May 12-15, 2005)により、Ponseti法と組み合わせたボトックス登録商標の使用は、内反足の有効な治療でないことを示唆する研究が示された。
【0010】
乳幼児の痙性筋疾患、特に内反足を治療する、様々な方法がある。ギプス処置および手技法の範囲、ならびに患者分類、用量、使用されるボツリヌストキシンの組成物の範囲は規定され、該方法は保証されうるが、しかしながら非常に特異な診断および治療方法論が必要とされうる。Cummingsの結論は(Cummings, RJ and Shanks, DE. A prospective randomized double-blind study of the usefulness of botox as an adjunct to serial manipiulation and casting for congenital clubfeet. Pediatric Orthopaedic Society of North America Annual Meeting. Ottawa, Canada May 12-15, 2005)、注射される箇所を含め使用される該方法の内容が著しく重要であることを示唆する。いくつかの研究で示唆されうる様々な治療レジメンを単にまぜ合わせたのでは、特発性内反足の初期治療および再発の予防の両方に奏功しないであろう。
【0011】
内反足変形が再発する状況において、外科的矯正は現在、ほとんど全てのケースにおいて標準的なケアである。外科的矯正は追加の合併症をもたらし、外科的方法を回避できるとき、瘢痕、組織の弱化および過矯正もまた回避され、重度ケースにおいては、複数の矯正の試みがなされうる。内反足の外科的矯正は、限定的な腱切除であり、これは該腱において構造上の弱化を引き起こし、回復および歩行運動に対し悪影響を有する原因となるため、2回より多く行わないことが強く推奨される。非観血的方法は、両親および介護者により良く受け入れられ、患者の苦痛も少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題および課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の概要
本発明の1つの態様に従って、患者の再発した内反足-罹患足部における回外を軽減する方法を提供し、該方法は、神経筋麻痺薬を含む医薬を内反足-罹患足部に隣接する後脛骨筋の少なくとも2カ所に注射することを含む。
【0013】
本発明の別の態様に従って、患者の再発した内反足-罹患足部における尖足を軽減する方法を提供し、該方法は、神経筋麻痺薬を含む医薬を、内反足-罹患足部に隣接する腓腹筋ヒラメ筋複合体の少なくとも4カ所に注射することを含む。
【0014】
本発明の別の態様に従って、患者の再発した内反足-罹患足部における内転を軽減する方法を提供し、該方法は、神経筋麻痺薬を含む医薬を、内反足-罹患足部に隣接する母趾外転筋の少なくとも1カ所に注射することを含む。
【0015】
該後脛骨筋または該母趾外転筋は、筋刺激装置の使用により最初に確認することができる。
【0016】
該神経筋麻痺薬は、アセチルコリンアンタゴニスト、例えばボツリヌストキシン、より具体的にはボツリヌストキシンAでありうる。そのような毒素を含む医薬には、ボトックス登録商標およびMyobloc登録商標が挙げられる。
【0017】
神経筋麻痺薬の投与の後、該内反足-罹患足部をギプスする。
【0018】
本発明の他の態様および特徴は、下記の本発明の具体的な実施形態の記載を添付の図面と連動して再検討することで、当該技術分野における当業者に明らかになるであろう。
【0019】
詳細な説明
本明細書において直接的に定義されていないいずれの用語も、本発明の当該技術分野において理解されるそれらに通常関連する意味を有するものと理解される。該明細書に使用される以下の用語は、別段の指示が内限り、以下の意味を有すると理解される。
【0020】
本明細書で使用する“内反足”または“内反足変形”とは、正常で屈曲性ある前足部、中足部および後足部位に、手技で矯正できない、ヒトの足の存在をいう。内反足は、個々の片足または両足で生じうる。内反足は、根本原因なしに単独の異常として、または1つ以上の合併疾患と連動して生じうる。
【0021】
本明細書で使用する”特発性内反足”または”特発性内反足変形”とは、合併疾患のない内反足をいう。
【0022】
本明細書で使用する”非特発性内反足”または”非特発性内反足変形”とは、合併疾患の存在下での内反足をいう。該合併疾患には、脊髄髄膜瘤(myelomenginocoele)、関節拘縮症(arthrgryposis)、脳の移動異常(migration abnormalities of the brain)、脳性麻痺、位置的奇形、神経障害、二分脊椎、毛髪鼻指節骨症候群または患者の内反足の存在下で生じる他の不特定の遺伝的症候群が挙げられる。
【0023】
本明細書で使用する”正常な足位”または”足部の正常な位置”とは、後足部が外反および蹠行性に対して中立であり、中足部が回外および回内に軽度の制限を有して中立であり、前足部が、2/3の間±1 踵二等分線の踵二等分線を有して中立であることをいう。
【0024】
本明細書で使用する”下腿三頭筋複合体”とは、集合的に下肢の腓腹筋およびヒラメ筋をいう。別の用語、腓腹筋ヒラメ筋(gastrosoleus)または腓腹筋ヒラメ筋(gastrocsoleus)も、また集合的に下肢の腓腹筋およびヒラメ筋をいう。
【0025】
本明細書で使用する”経皮的アキレス腱切除術”とは、無菌状態で、手術用の刃を踵骨への付着近くの該アキレス腱へ深く挿入し、該腱を不完全に切断する、アキレス腱を延長する外科手術をいう。完全腱切除術は、該腱を切断しそれを放するが、一方、アキレス腱延長術は、実質的に腱を延長するが、該2つの端はともに再付着し、その結果、所望の延長範囲に調整することができる。
【0026】
本明細書で使用する”ピラニスコア”とは、内反足の評価のための採点方法をいう(Pirani S, Outerbridge H, Moran M, Sawatsky BJ. A method of evaluating the virgin clubfoot with substantial interobserver reliability. Pediatric Orthopaedic Society of North America 1995 Annual Meeting, Miami, Florida, May 1995; Flynn JM et al. An independent assessment of two clubfoot-classification systems. Journal of Pediatric Orthopedics. 18(3):323-7, 1998)。使用される該ピラニスコアは、中足部について3つの測定、後足部についての3つが含まれた(0から6までの範囲の全スコアについて、それぞれ0、0.5、または1.0として点数化し、スコアが高いほど、より重度な変形を示す)。別の内反足の分類スキーマは、DimeglioおよびBensahel(“Dimeglioシステム”)(Dimeglio A, Bensahel H, Souchet Ph, Mazeau P, Bonnet F. Classification of clubfoot. Journal of Pediatric Orthopaedics(Br)1995;4:129- 136)である。Dimeglioシステムは、矢状面における内反および尖足、踵骨ペダルブロックの(calcaneopedal block)減捻、および水平面にした後足部に対する前足部の位置に基づき、内反足変形の重症度を4つのグレードに特性化する。グレード1 足部は、軽度(軟らかい-軟らかい);グレード2 足部は、中度(軟らかい〜硬い);グレード3 足部は、重度(硬い〜軟らかい)、およびグレード4 足部は、非常に重度、偽関節拘縮症(pseudoarthrogrypotic)足部(硬い-硬い)である。内反足の矯正の有効性は、膝を伸展および屈曲で評価したように、足首の背屈の程度により評価することができる。
【0027】
治療から生じた内反足矯正とは、本治療に対する応答をいう。別の用語は、‘内反足治療処置’である。該矯正された内反足変形を、患者が成した動作量により測定する。これは内反足治療判断に基づき、特に、該患者が、内反足の矯正の指標である矯正ブレーシング(足首の背屈が10度以上に達する)に適合することができる場合である。
【0028】
本明細書で使用する患者の再発とは、内反足の治療的介入を現在受けている、またはこれまでに受けたことのある患者における、背屈の喪失(膝の屈曲<5 度 および/または膝の伸展<0 度)をいう。
【0029】
本明細書で使用する”尖足”または”尖足”とは、足底が中立より下に曲がるまたは足底屈曲範囲(特に足首の背屈が0度より小さい)にある足変形をいう。歩行は踵が地面に着くことなくつま先で行われる。‘つま先歩き’は、この変形した足位から生じる歩行運動をいう、別の用語である。
【0030】
本明細書で使用する”後足部失速(stall)”とは、持続的な後足部尖足がある状態で前足部が60度に外転する状態、または足のX線写真側面像が、下を向いた踵骨および/または距踵平行を示すときをいう。
【0031】
本明細書で使用する‘アンタゴニスト’とは、例えば該内因性化学物質のレセプターと結合しおよびブロックして別の化学物質の生理的活性を減らすよう作用する化学物質をいう。
【0032】
本明細書で使用する“化学物質”とは、合成的に作られ、天然に存在し、または部分的に合成起源の、異なる分子構成の小さい有機または無機分子をいう。この群には、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、またはこれらの物質の少なくとも1つを含む複合体、例えば染色体が含まれる。
【0033】
本明細書で使用する“医薬”とは、患者または試験対象に投与されうる、作用を生じることができる化学物質をいう。該作用は、化学的、生物学的または物理学的であり、および該患者または試験対象は ヒト、または非ヒト動物、例えば齧歯動物もしくは遺伝子導入マウスでありうる。該医薬には、有効化学物質単独または医薬的に許容できる賦形剤との組み合わせが含まれうる。
【0034】
医薬的に許容できる賦形剤にはありとあらゆる溶媒、分散媒、コート剤、抗菌剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれ、それらは生理学的に許容されうるものである。該賦形剤は静脈、腹腔内、筋肉内、髄腔内または経口投与に適している。該賦形剤には、無菌注射溶液または分散液の即席調合のための、無菌水溶液または分散液が含まれうる。医薬の調製のための該媒体の使用は当該技術分野において知られる。
【0035】
本明細書で使用する薬理学的に有効量の医薬とは、該薬剤が使用された期間に送達された薬剤の、治療レベルを生じるような濃度で表される医薬量を使用することをいう。これは、医薬を受ける対象の送達方法、投与の期間、年齢、体重、全体的な健康、性、および食事に依存しうる。
【0036】
本発明の医薬は、様々な投与方法のいずれかで投与するために、処方されることができる。該医薬は、該有効化学物質と一緒に賦形剤を含むことができ、例えば、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、トローチ剤、丸薬、坐薬、液剤またはゲル剤、または皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、動脈内もしくは他の様式の注射送達に適している注射製剤の剤型であることができる。医薬を非経口投与のために滅菌媒体中に処方することができる。該医薬を該媒体に溶解しまたは懸濁することができる。医薬はペレット、ロッドまたは顆粒の剤型で、皮下インプラントのために処方することができる。インプラントまたはインプラントを、観血療法または局所麻酔下で外套針およびカニューレの使用により、皮下に挿入することができる。該インプラントを定期的に交換し、または全て除去することができる。医薬は、またパッチを使用する経皮投与ために、処方することもできる。該パッチを患者の皮膚の毛を剃った部分に、該医薬が投与するのに好ましい間に適用し、不要になれば除去する。
【0037】
本明細書で使用する“神経筋麻痺薬”とは、アセチルコリンアンタゴニスト、アセチルコリン放出阻害剤またはコリン作動性放出阻害剤をいう。神経筋麻痺薬は、概してそれらの作用を、神経筋接合部で神経末端のシナプス前終末からのアセチルコリン放出をブロックすることで発揮する。医薬中の神経筋麻痺薬の投与することにより、投与部位の該筋肉の一定の麻痺が生じうる。該麻痺は、可逆または不可逆であり得る。
【0038】
本明細書で使用する”ボツリヌストキシン”とは、通常ボツリヌス菌により生成される神経筋麻痺薬をいう。ボツリヌストキシンA、ボツリヌスA型毒またはボツリヌストキシンA型は、BTX-Aと略しうる。ボツリヌストキシンB、ボツリヌスB型毒またはボツリヌストキシンB型は、BTX-Bと略しうる。ボトックス登録商標(Allergan)は、Oculinum登録商標またはDysport登録商標とも表され、BTX-Aを含む市販の医薬である。Myobloc登録商標またはNeurobloc登録商標(Solstice Neurosciences)は、BTX-Bを含む市販の医薬である。他のボツリヌストキシンには、ボツリヌストキシンC、ボツリヌストキシンD、ボツリヌストキシンE、ボツリヌストキシンFおよびボツリヌストキシンGが挙げられ、これらは該毒を含む医薬製剤として投与されうる。
【0039】
乳児期の内反足の治療のための物理的治療方法は様々である。最も一般的に使用され、よく検討された方法は、BensahelおよびDimeglioのそれである(Bensahel H, Guillaume A, Desgrippes Y. Results of physical therapy for idiopathic clubfoot: a longterm follow up. Journal of Pediatric Orthopaedics 1990;10:189-192; Seringe R, Atia R. Idiopathic congenital clubfoot. Results of functional treatment. Revue de Chirurgie Orthopedique et Reparatrice de I’Appareil Moteur 1990;76:490-501 ; Souchet P, Bensahel H, Themar-Noel C, Pennecot G, Csukonyi Z. Functional treatment of clubfoot: A new series of 350 idiopathic clubfeet with long-term follow-up. Journal of Pediatric Orthopaedics(Br)2004;13:189-196)。該Ponseti方法には、足部の手技方法論およびギプス処置のセットが含まれ、集中的で複雑な方法であり、かなりの介護者のコンプライアンスおよび参加を必要とする。Ponseti方法は概して、最後に矯正される尖足を除いては、内反足の全構成要素を同時に矯正することを必要とする。該凹足は、内転とともに、後足部と適切なアラインメントになるように前足部を回外および外転させることにより矯正される。該アーチを十分成型し、該足部を若干回外(supiation)させ、距骨頭の外側部に対して反対圧力(治療専門家の母指で)をかけることにより、足首ほぞ穴(mortise)のトレイション(toration)に対して固定し、該全足部を、距骨の下で優しく徐々に外転する。全足部が完全に外転したとき、かかとの内反は矯正される。最後に、尖足は、ケースの80%においてアキレス腱切除により矯正された。経皮的アキレス腱切除術は、当該技術分野において現在の方法であり、技術的に実施することは単純であるが、神経血管の損傷を引き起こす即時合併症をもたらしうる。さらに、それは、皮膚の瘢痕および深部組織線維症などの将来的な合併症をもたらし、足首の関節の可動域およびプッシュオフ力の減少を生じ、歩行運動に影響しうる。内反足変形が再発したとき、とりわけ最初の腱切除が行われた場合、更なる合併症が生じる。
【0040】
再発は、ケースの約30%において、通常、該患者が活動的な子供になった後、いくつかのケースにおいては、就学する時期に生じる。再発における最もよく見られる変形は、回外、尖足および内転である。
【0041】
該回外を引き起こす変形力は、一部は後脛骨筋によるものである。未治療の内反足において、主な変形力の1つは、該後脛骨筋であり、その延長は、内反足のリリースにおいて行われる主要ステップの1つである(Carroll NC. Surgical technique for talipes equinovarus. Oper Tech Orthop. 1993;3: 115-120; Crawford AH, Marxen JL, Osterfeld DL. The Cincinnati incision; a comprehensive approach for surgical procedures of the foot and ankle in childhood. J Bone Joint Surg [Am]. 1982;64: 1355-1358; McKay DW. New concept of and approach to clubfoot treatment: section II. Correction of the clubfoot. J Pediatr Orthop. 1983;3:10-21 ; Turco VJ. Surgical correction of the resistant clubfoot: one-stage posteromedial release with internal fixation. A preliminary report. J Bone Joint Surg [Am]. 1971 ;53:477-497)。立脚の間、内在足筋調節の一部として後脛骨筋は収縮する。後脛骨筋は、特に地面との最初の接触で収縮し、回外トルクを引き起こす。後脛骨筋の最大作用は、距骨下の減速および安定性に関連する。従って、それは立脚において中足部の回外として現れ、付随する後足部内反に寄与しうる。遊脚期において、後脛骨筋は通常収縮しないが、過度に活動性であるとき、それは、前脛骨筋と同時に作動し、遊脚の間、回外および尖足の両方の実質的作用をもたらす。
【0042】
ぶり返しにおける尖足は、大部分はアキレス腱およびその付随する腓腹筋ヒラメ筋複合体が原因である。ここでも、該複合体が過度に活動性であるとき、尖足は、それは通常両方で興奮しているので、歩行運動の立脚期および遊脚期の両方で見られるであろう。
【0043】
前足部内転のぶり返しも再発においてよく起こる。母趾外転筋は、前足部の内転を引き起こす主な変形力である。罹患患者の歩行運動の遊脚期において、前足部の内部の進行の誇張は、母趾外転筋の一部における結果であり、その過活動は、立脚にも持続し、踵二等分線の増加を引き起こしうる。
【0044】
Bleckの踵二等分線スコアは、足の足底面に沿った踵の縦軸を通る基準線をいう。(Bleck, E. Metatarsus adductus: Classification and relationship to outcomes of treatment. Journal of Pediatric Orthopaedics 1983;3:2-9)。正常な足部は該線が第二趾(踵二等分線スコアが2)を通ることを特徴とし。軽度の前足部内転は踵二等分線が3、中度は踵二等分線が4、および重度は踵二等分線が5である。
【0045】
回外を有する内反足の再発の標準的治療は、前脛骨筋の移行である。この外科手術において、前脛骨筋は、第1中足骨内のその元の付着点から第3(外側)楔状骨へ移動される(Garceau, G. Anterior tibial tendon transfer for recurrent clubfoot. Clinical Orthopaedics and Related Research 1972;84:61.5; Garcaeu, G, Palmer, R. Transfer of the anterior tibial tendon for recurrent clubfoot: A long-term follow-up. Journal of Bone and Joint Surgery 1967;49:207-31)。この移行は、後脛骨筋により課される足部の作動を相殺することにより、足部の回外変形を処置する。足部の外側面上へ前脛骨筋を移動することによって、後脛骨筋の活動性は、患者の歩行運動の遊脚期の間、影響を弱め、ニュートラルな位置での遊脚を可能とする。しかし、前脛骨筋は内反足において変形力はなく、それを外科的に移動させることによっては、それは直接的に該問題(再発した足部の後脛骨筋により引き起こされる該病的な力)を処置しない。後脛骨筋は、主に立脚期の筋であり、立脚においては、前脛骨筋は立脚において無反応であるので相殺されない。従って、後脛骨筋は、適当な変化をもたらすために、‘代替’筋−前脛骨筋を外科的に治療するよりむしろ、直接治療される必要がある。
【0046】
尖足痙縮を有する内反足の再発を治療するため、さらにアキレス延長が必要であり、アキレス腱切除または形態的切開延長が標準のケアである。初期内反足治療処置の進展によっては、これは、患者に行われる少なくとも二番目のアキレス腱切除または延長術である。該筋肉より誘導される該変形は、腱切除より、直接処置されるが、該外科手術は、全身麻酔を含むその方法により、特有のリスクを伴う。さらに、アキレス腱が区切られるたびに、弱化が生じ、歩行時の蹴り出し(push-off)の力の減少を生じ、足首の可動域が減少する(Karol LA, Concha MC, Johnston C.E.2nd. Gait analysis and muscle strength in children with surgically treated clubfeet. Journal of Pediatric Orthopaedics 1997;6:790-795; Karol, L. A., O’Brien, S. Mayberry S., Johnston, C, and Richards, B. Gait in patients with clubfeet: A comparison of physical therapy versus surgical release.(Paediatric Orthopedic Society of North America Annual Meeting), 72. 2003. Amelia Island, Florida, USA; Kuo KN, Hennigan SP and Hastings ME. Long term results of clubfoot release, outcome study and gait analysis. Pediatric Orthopaedic Society of North America 2003 Annual Meeting, Amelia Island, Florida, May 2 - 4, 2003; Widhe T, Berggren I. Gait analysis and dynamic foot pressure in the assessment of the treated clubfoot. Foot Ankle lnt 1994;15:186-190)。
【0047】
前足部内転を有する内反足の再発の標準的なケアは、2重の足根骨切り術または”フリップフロップ” 骨切り術であり、通常、4歳より上の、理想的には6歳以上の子供に1回行われる(Morrissy RT, Weinstein SLe. Lovell and Winter’s Pediatric Orthopaedics. Philadelphia, Pennsylvania, USA: Lippincott-Raven, 1996)。この方法は、中間楔状骨を半分に分割すること、立方骨から側方向に底部楔を取ること、この楔を分割した中間楔状骨に挿入し、それにより該楔の大きさに基づき該足部を内転から外転させることを含む。内反足とは無関係の中足内転は、最初に手技およびギプス処置で治療されうるが、不成功であった場合、または再発した場合、足根骨切り術などの外科的介入を必要とする。
【0048】
各変形は個々に処置されなければならないが、これらの再発またはぶり返しは、必ずしも各々が個別に起こるものではなく、しばしば同時に起こる。各ケースにおいて、神経筋麻痺薬、例えばボツリヌストキシンの作動筋への注射により、外科的介入の必要性を回避できるであろう。回外は、特に後脛骨筋を治療することにより、処置されうる。尖足は特に腓腹筋ヒラメ筋複合体を治療することで処置され、一方、前足部内転は特に母趾外転筋を治療し、該内転を処置するのに十分な程にそれを弱化することで処置されうる。手技およびギプス処置方法は、再発後の矯正を得るためにこれらの介入の全て、および矯正された足部位の維持のために使用される更なるブレーシング方法を伴う。
【0049】
神経筋麻痺薬、例えば ボツリヌストキシンA型(BTX-A、ボトックス登録商標)は、部分的可逆な筋麻痺を引き起こす(Brin MF, ed. Spasticity: etiology, evaluation, management, and the role of botulinum toxin A. Muscle Nerve. 1997;20(Supp 6):61-91 ; Eames NW, Baker R, Hill N, et al. The effect of botulinum A toxin on gastrocnemius length: magnitude and duration of effect. Dev Med Child Neurol. 1999;41 :226-232; Juzans P, Comella JX, Molgo J, et al. Nerve terminal sprouting in botulinum A-treated mouse levator auris longus muscle. Neuromuscul Disord. 1996;6:177-185)。BTX-Aは、神経筋接合部で末梢神経末端のシナプス前終末からのアセチルコリン放出をブロックすることにより作用する。BTX-Aの筋肉内注射は、各筋肉の部分的麻痺をもたらすことが示され、多くの疾患に有効であり、(Bang MS, Chung SG, Kim SB, et al. Change of dynamic gastrocnemius and soleus muscle length after block of spastic muscle in cerebral palsy. Am J Phys Med Rehabil. 2002;81 :760-764; Brin MF, ed. Spasticity: etiology, evaluation, management, and the role of botulinum toxin A. Muscle Nerve. 1997;20(Supp 6):61-91 ; Eames NW, Baker R, Hill N, et al. The effect of botulinum A toxin on gastrocnemius length: magnitude and duration of effect. Dev Med Child Neurol. 1999;41:226-232; Juzans P, Comella JX, Molgo J, et al. Nerve terminal sprouting in botulinum A-treated mouse levator auris longus muscle. Neuromuscul Disord. 1996;6: 177-185; Klein AW. Complications and adverse reactions with the use of botulinum toxin. Semin Cutan Med Surg. 2001 ;20:109-120.; Scott AB. Botulinum A injection of eye muscles to correct strabismus. Trans Am Ophthalmol Soc. 1981 ;79:734-770)、試験した全ての年齢に安全(生後2日から成人まで)であることが示された(Brin MF, ed. Spasticity: etiology, evaluation, management, and the role of botulinum toxin A. Muscle Nerve. 1997;20(Supp 6):61-91 ; Edgar TS. Clinical utility of botulinum toxin in the treatment of cerebral palsy: comprehensive review. J Child Neurol. 2001;16:37-46; McNeer KW, Tucker MG, Spencer RF. Management of essential infantile esotropia with botulinum toxin A: review and recommendations. J Pediatr Ophthalmol Strabismus. 2000;37:63-67)。副作用はまれで一時的であり(Bakheit AM, Severa S, Cosgrove A, et al. Safety profile and efficacy of Botulinum toxin A(Dysport)in children with muscle spasticity. Dev Med Child Neurol. 2001 ;43:234-238; Juzans P, Comella JX, Molgo J, et al. Nerve terminal sprouting in botulinum A-treated mouse levator auris longus muscle. Neuromuscul Disord. 1996;6:177-185; Klein AW. Complications and adverse reactions with the use of botulinum toxin. Semin Cutan Med Surg. 2001 ;20:109-120)、必要ならば、長期の合併症を引き起こす懸念無しに反復投与されうる(Brin MF, ed. Spasticity: etiology, evaluation, management, and the role of botulinum toxin A. Muscle Nerve. 1997;20(Supp 6):61-91 ; Mooney JF, Koman LA, Smith BP. Pharmacologic management of spasticity in cerebral palsy. J Pediatr Orthop. 2003;23:679-686)。
【0050】
方法
【0051】
再発の同定
内反足の再発は、以前にまたは現在に、内反足の治療をした患者において、尖足、回外および内転の評価により同定される。尖足の再発は背屈スコアに基づいて決定され、回外の再発は、かかとおよび中足部の内反および回外にそれぞれ基づき、ならびに内転の再発は、踵二等分線に基づき決定される。再発の一般的な目安は、患者の患部の片足または両足をブーツおよびバールまたは整形器具に入れる能力である。これら3つの再発のいずれかが存在するとき、ブレーシングは耐えられなくなり、それゆえ矯正は失われまたは失われている。
【0052】
回外を伴う内反足の再発の治療
患者が鎮静状態または全身麻酔下の間に、内反足-罹患肢の後脛骨筋にボトックス登録商標を注射する。注射の前に後脛骨筋を確認するために筋刺激装置を使用する。後脛骨筋の少なくとも2カ所に注射し、注射の後に該筋肉を約20秒間マッサージする。最大限に外転させ、患者が耐えられる位置まで外に回転させて、膝上の手技を行い、その後、膝上のギプス処置が続く。該患者は適宜該ギプスに完全に体重をかけることができる。該ギプスを2-3週間後に換え、膝下の手技およびギプス処置を最大限耐えられる矯正で行う。2回目のギプス処置の後2〜3週、該患者は3箇月間の全日維持ブレーシングプログラムに入り、その後夜のみ(1日あたり約12時間)に、該ブレースが小さくなるまで続ける。日中の靴装着はその後規定される。
【0053】
尖足を有する内反足の再発の治療
後脛骨筋および/または母趾外転筋を同時に治療するときは、患者が鎮静状態または全身麻酔下の間に、内反足-罹患肢の腓腹筋ヒラメ筋複合体にボトックス登録商標を注射する。腓腹筋ヒラメ筋複合体を単独で治療するときは、該方法を外来診療の場で行う。腓腹筋ヒラメ筋複合体の注射を、放射状パターンに、罹患脚の遠位ヒラメ筋を含む少なくとも4 箇所に行う。注射の後に該筋肉を約20秒間マッサージし、膝下ギプス(腓腹筋ヒラメ筋複合体を単独で治療する場合、そうでなければ 膝上のギプスを使用する)を耐えられる最大の背屈位で内反足-罹患脚に施す。該患者は適宜該ギプスに完全に体重をかけることができる。該ギプスを2-3週間後に換え、2回目ギプスを最大背屈で罹患脚に施す。2回目のギプス処置の後2〜3週、該患者は3箇月間の全日維持ブレーシングプログラムに入り、その後夜のみに、該ブレースが小さくなるまで続ける。日中の靴装着はその後規定される。
【0054】
内転を有する内反足の再発の治療
患者が鎮静状態または全身麻酔下の間に、内反足-罹患肢の母趾外転筋にボトックス登録商標を注射する。注射の前に筋刺激装置を、母趾外転筋を確認するために使用する。3箇所まで注射し、該筋肉を各注射後20秒間マッサージし、膝下ギプス(母趾外転筋を単独でまたは腓腹筋ヒラメ筋複合体と連動して治療するとき、そうでなければ膝上のギプスを使用する)を内反足-罹患脚に最大限耐えられる矯正された足位で施す。該患者は適宜該ギプスに完全に体重をかけることができる。該ギプスを2-3週間後に交換し、第2のギプスを罹患脚に最大限耐えられる矯正された足位で施す。2回目のギプス処置の後2〜3週、該患者は3箇月間の全日維持ブレーシングプログラムに入り、その後夜のみに、ブレースが小さくなるまで続ける。日中の靴装着はその後規定される。
【0055】
中足内転の再発の治療
内反足とは無関係の中足内転の再発も、内反足の内転再発のそれと同様の様式で治療されうる。
全ての治療について、用量範囲約10 IU/kg 〜約20 IU/kgを必要な注射箇所間に分けて使用しうる。個々の箇所の最小投与量には、:
腓腹筋 3-6 IU/kg; ヒラメ筋 2-3 IU/kg、
後脛骨筋1-2 IU/kg、
母趾外転筋 1-2 IU/kgを含みうる。
【0056】
ブレーシングプロトコル
必要に応じ、デニスブラウンのバールおよび矯正シューズ(ブーツおよびバール)を、当該技術分野において記載されるように、該患者に装着させる。また、特注の膝-足首-足部 整形器具(KAFO)は、ブーツおよびバールに不寛容である少数の患者に必要とされる。
【実施例】
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
本発明の具体的な実施形態が記載され説明されるが、該実施形態は、本発明の単なる説明と見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲に従って解釈される本発明を制限するものではない。
【0061】
上記に基づき、本発明は以下の従来技術を超える進歩した発明を提供する:
【0062】
患者の再発した内反足-罹患足部の回外を軽減する方法であり、該方法は、該内反足罹患足部に隣接する後脛骨筋の少なくとも2カ所に神経筋麻痺薬を含む医薬を注射することを含む。
【0063】
患者の再発した内反足-罹患足部の尖足を軽減する方法であり、該方法は、該内反足罹患足部に隣接する腓腹筋ヒラメ筋複合体の少なくとも4カ所に神経筋麻痺薬を含む医薬を注射することを含む。
【0064】
再発した患者の内反足罹患足部の内転を軽減する方法であり、該方法は、神経筋麻痺薬を含む医薬を該内反足罹患足部に隣接する母趾外転筋の少なくとも1カ所に注射することを含む。
【0065】
該後脛骨筋または該母趾外転筋が、筋刺激装置の使用により、最初に確認される、上記のいずれかの方法。
【0066】
該神経筋麻痺薬がアセチルコリンアンタゴニストである、上記のいずれかの方法。
【0067】
該アセチルコリンアンタゴニストが、ボツリヌストキシンである、上記のいずれかの方法。
【0068】
該ボツリヌストキシンがボツリヌストキシンA型である、上記のいずれかの方法。
【0069】
該医薬が、ボトックス登録商標およびMyobloc登録商標の群から選択される、上記のいずれかの方法。
【0070】
該注射の後に、該内反足罹患足部のギプス処置が続く、上記のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図面において、本発明の実施形態を説明する。
【図1】図1は、BTX-A 注射パターンを示す下肢後面像の説明図である。
【図2】図2は、試験患者の選択および治療を示すフローチャートである。
【図3】図3は、グループ1 患者の転帰スコアを表す、重ね合わせグラフを示す。棒グラフは屈曲した膝(DFF)および伸展した膝(DFE)の背屈スコアを示し、下の線グラフはピラニスコアを示す。イニシャル巡回からBTX-A注射後27箇月までの治療期間が横軸に示される。
【図4】図4は、グループ2 患者の転帰スコアを表す重ね合わせグラフを示す。棒グラフは、屈曲した膝(DFF)および伸展した膝(DFE)の背屈スコアを示し、下の線グラフはピラニスコアを示す。イニシャル巡回からBTX-A注射後27箇月までの治療期間が横軸に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再発した内反足を有する患者の治療方法であって、該方法は、該内反足罹患足部に隣接する筋肉の少なくとも2カ所に、神経筋麻痺薬を含む医薬を注射することを特徴とし、該筋肉は、後脛骨筋、腓腹筋ヒラメ筋(gastrosoleus)複合体および母趾外転筋からなる群から選択される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−91664(P2013−91664A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−9094(P2013−9094)
【出願日】平成25年1月22日(2013.1.22)
【分割の表示】特願2008−527146(P2008−527146)の分割
【原出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】