説明

内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置および方法

【課題】いかなるブレーキ操作においても、ポンピングブレーキを検出し、ブレーキ倍力装置の駆動に必要な負圧を確保する。
【解決手段】吸気管の実吸気管圧力を検出する実吸気管圧力検出手段11と、内燃機関の回転数と絞り弁の開度とに基づいて推定吸気管圧力を算出する推定吸気管圧力検出手段12と、実吸気管圧力と推定吸気管圧力との差圧を算出する差圧算出手段13と、差圧を時間で積分する差圧積分手段14と、積分値が第1の判定値以上になったときに、ドライバによるブレーキ操作がポンピングブレーキ操作であると判定するポンピングブレーキ検出手段15と、ポンピングブレーキ検出手段15の判定結果に基づいて、ポンピングブレーキ操作中はポンピングブレーキ用の絞り弁制御を行い、それ以外は、通常の制御を行う、絞り弁制御手段16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポンピングブレーキ操作の検出を行うポンピングブレーキ検出制御装置および方法に関し、特に、内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、ドライバのブレーキペダルの踏込み操作力を補助するためのブレーキ倍力装置(ブレーキブースター)が備えられている。内燃機関には、空気を導入するための吸気管が設けられており、内燃機関の燃焼室内に空気を導入する際に、吸気管に負圧(ここでは大気圧よりも低い圧力)が発生する。ブレーキ倍力装置は、吸気管に生じる当該負圧を動力源として利用する。負圧は、絞り弁(スロットルバルブ)下流で吸気管から分岐されるブレーキ導圧管を介して、ブレーキ倍力装置に導かれる。そして、ブレーキペダルの踏込み量に応じた負圧が、ブレーキ倍力装置内の空気圧で作動する調整弁を作用することによって、ブレーキの踏込み操作力を補助する。
【0003】
上記ブレーキ倍力装置を駆動させるために、絞り弁を閉じて、負圧を確保している。しかしながら、ブレーキの踏込み操作をドライバが繰り返して行うポンピングブレーキ操作が行われた時、ブレーキ倍力装置から吸気管へ空気が導入されるため、吸気管内の圧力は大気圧へと変化し、ブレーキ倍力装置の駆動に必要な負圧を確保することが困難となる。その為、ブレーキ倍力装置がブレーキの踏込み操作力を補助できなくなり、運転者が違和感を感じる。なお、ポンピングブレーキ操作とは、ドライバの運転技術の1つで、凍結路面や雪道の走行時などに、ブレーキペダルを一気に踏み込むのではなく、徐々に踏み込み、タイヤが滑り始めたら、ブレーキペダルの踏み込みを少し緩め、再び、踏み込むという動作を繰り返し行うことである。タイヤのロックを防ぐことで、ブレーキ時の制動距離を最小限にすることができる。
【0004】
ポンピングブレーキ操作を検出する手段として、特許文献1に記載の車載内燃機関の負圧制御装置では、ブレーキ操作が行われてから次回にブレーキ操作が行われるまでの時間に基づき、ポンピングブレーキ操作か否かを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−110606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1では、ブレーキの踏込み量に基づいて、ブレーキスイッチのON/OFFを判定している。すなわち、ブレーキの踏込み量が「0」のときは、ブレーキスイッチがOFFと判定し、ブレーキの踏込み量が「0」以外のときは、ブレーキスイッチがONと判定する。しかしながら、一般に、ブレーキスイッチにはチャタリングが発生する。例えば、ブレーキ操作にてブレーキペダルを離した時に、ブレーキペダルの変動で、ブレーキスイッチのチャタリングが発生する。それにより、ブレーキスイッチのON/OFFを誤判定してしまうので、その結果、ドライバがポンピングブレーキ操作をしていると誤判定してしまう。従って、通常の制御では、ブレーキスイッチの判定にヒステリシスを設けている。
【0007】
しかしながら、ヒステリシスを設けた場合、ブレーキスイッチがONからOFFへ(またはその逆であるOFFからONへ)切り替わっても、ヒステリシスにより、当該ブレーキスイッチのON/OFFが無視され、ポンピングブレーキ操作が検出されない可能性がある。その結果、ブレーキ倍力装置から吸気管へ空気が導入されるため、吸気管内の圧力は大気圧へと圧力が変化し、ブレーキ倍力装置の駆動に必要な負圧を確保することが困難となる。
【0008】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、いかなるブレーキ操作においても、ポンピングブレーキ操作か否かを検出し、ブレーキ倍力装置の駆動に必要な負圧を確保することができる内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置および方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、内燃機関に空気を供給する吸気管の実吸気管圧力を、吸気管圧力センサによって検出される検出値に基づいて検出する実吸気管圧力検出手段と、前記内燃機関の回転数と絞り弁の開度とに基づいて、推定吸気管圧力を算出する推定吸気管圧力検出手段と、前記実吸気管圧力検出手段により検出された前記実吸気管圧力と前記推定吸気管圧力検出手段により算出された推定吸気管圧力との差圧を算出する差圧算出手段と、前記差圧算出手段によって算出された前記差圧を時間で積分する差圧積分手段と、前記差圧積分手段によって算出された前記積分値が予め設定された第1の判定値以上になったときに、ドライバによるブレーキ操作がポンピングブレーキ操作であると判定するポンピングブレーキ検出手段と、前記吸気管内に設けられた絞り弁に対して、前記ポンピングブレーキ検出手段の判定結果に基づいて、ポンピングブレーキ操作中はポンピングブレーキ用の制御を行い、それ以外は、通常の制御を行う、絞り弁制御手段とを備えた内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、内燃機関に空気を供給する吸気管の実吸気管圧力を、吸気管圧力センサによって検出される検出値に基づいて検出する実吸気管圧力検出手段と、前記内燃機関の回転数と絞り弁の開度とに基づいて、推定吸気管圧力を算出する推定吸気管圧力検出手段と、前記実吸気管圧力検出手段により検出された前記実吸気管圧力と前記推定吸気管圧力検出手段により算出された推定吸気管圧力との差圧を算出する差圧算出手段と、前記差圧算出手段によって算出された前記差圧を時間で積分する差圧積分手段と、前記差圧積分手段によって算出された前記積分値が予め設定された第1の判定値以上になったときに、ドライバによるブレーキ操作がポンピングブレーキ操作であると判定するポンピングブレーキ検出手段と、前記吸気管内に設けられた絞り弁に対して、前記ポンピングブレーキ検出手段の判定結果に基づいて、ポンピングブレーキ操作中はポンピングブレーキ用の制御を行い、それ以外は、通常の制御を行う、絞り弁制御手段とを備えた内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置であるので、いかなるブレーキ操作においても、ポンピングブレーキ操作か否かを検出し、ブレーキ倍力装置の駆動に必要な負圧を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実態の形態1に係わる内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置を設ける車両の構成示す構成図である。
【図2】この発明の実態の形態1に係わる内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置のブレーキ踏込み量に対する、ブレーキスイッチの状態を示す特性図である。
【図3】この発明の実態の形態1に係わる内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実態の形態1に係わる内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置における運転状態を示すタイミングチャートである。
【図5】この発明の実態の形態1に係わる内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置における推定の吸気管圧力を示す特性図である。
【図6】この発明の実態の形態1に係わる内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置を示す発明の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置が設けられる車両の構成を示した図である。図1において、1は内燃機関である。8は、内燃機関1の回転数を検出する回転数センサである。回転数センサ8は、検出した回転数に対応した信号をECU10に送出する。6は、内燃機関1の燃焼室へ空気を供給する吸気管である。7は、吸気管6内の圧力を検出し、それにより、吸気管6に流れる空気量を検出するための吸気管圧力センサである。吸気管圧力センサ7は、検出した吸気管6内の圧力に対応した信号をECU10に送出する。9は、吸気管6に流れる空気量を調節する絞り弁(ここではスロットルバルブ)である。
【0013】
ECU10は、内燃機関1の回転数の情報などを入出力インターフェイス10eで受け、内燃機関1に必要な燃料量などを演算するとともに、絞り弁9などを駆動回路10fを介して制御するものである。ECU10は、各種センサからの情報或いは内燃機関1の制御状態を随時記憶更新する読み書き可能なメモリ(RAM)10aと、各種制御プログラム或いは制御情報を記憶している読み出し専用メモリ(ROM)10bと、ROM10b内の制御プログラムに従って各種演算及び各種制御を行う中央演算処理装置(CPU)10cなどを内蔵している。
【0014】
なお、この発明の実施の形態1に係わる内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置は、ECU10から構成される。
【0015】
図1に示すように、吸気管6において、絞り弁9の下流において、吸気管6の分岐である、ブレーキ導圧管5が設けられている。ブレーキ導圧管5は、ブレーキ倍力装置3に接続されている。ブレーキ倍力装置3は、ドライバがブレーキペダル2を踏込み操作するときの操作力を軽減する。ブレーキ倍力装置3は、内燃機関1の運転時に吸気管6で発生する負圧を利用して、ブレーキ倍力装置3に接続されているブレーキ油圧配管4を駆動させる。このようにして、ドライバのブレーキ操作力と負圧とが、ブレーキ倍力装置3によって油圧に変換され、当該油圧が、ブレーキ油圧配管4を通って、各タイヤのブレーキ本体に伝達される。
【0016】
ブレーキペダル2には、ブレーキペダル2の踏込み操作を検知するブレーキスイッチ2aがあり、ブレーキペダル2の踏込み量に応じて、ブレーキスイッチ2aはON/OFFを切り替える。ブレーキスイッチ2aは、ON/OFFを示す信号を、入出力インターフェイス10eを介して、ECU10に入力する。図2は、ブレーキ踏込み量とブレーキスイッチ2aのON/OFFとの関係を示した特性図である。図2に示す一例では、ドライバがブレーキペダル2を踏込み、ブレーキ踏込み量がR103を超えた場合、ブレーキスイッチ2aはON判定となる。次に、ドライバがブレーキペダル2の踏込み力を弱め、ブレーキ踏込み量がR102となった場合、ブレーキスイッチ2aはON判定のままとなる。更にドライバが踏込み力を弱め、ブレーキ踏込み量がR101以下となった場合、ブレーキスイッチ2aはOFF判定となる。
【0017】
図6は、この発明の実施の形態1に係わる内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置の構成を示した図である。図6に示すように、内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置は、実吸気管圧力検出手段11と、推定吸気管圧力検出手段12と、差圧算出手段13と、差圧積分手段14と、ポンピングブレーキ検出手段15と、絞り弁制御手段16とを備えている。
【0018】
実吸気管圧力検出手段11は、吸気管圧力センサ7の実測値(検出値)に基づいて吸気管6内の実圧力を検出する。
推定吸気管圧力検出手段12は、回転数センサ8で検出した内燃機関1の回転数と絞り弁9の開度とに基づいて、吸気管6内の圧力の推定値を算出する。
差圧算出手段13は、実吸気管圧力検出手段11で検出された実圧力の値と推定吸気管圧力検出手段12より算出された推定値との差(差圧)を算出する。
差圧積分手段14は、差圧算出手段13より算出された差圧を時間で積分する。
ポンピングブレーキ検出手段15は、差圧積分手段14で求めた積分値に基づいて、ポンピングブレーキ操作の有無を判定する。すなわち、当該積分値を、予め設定された所定の判定値(しきい値)と比較し、当該積分値が判定値以上の場合は、ポンピングブレーキ操作ありと判定する。
絞り弁制御手段16は、ポンピングブレーキ検出手段15の判定結果に基づいて、絞り弁9を制御する。すなわち、絞り弁制御手段16は、ポンピングブレーキ検出手段15によりポンピングブレーキ操作なしと判定された場合は、通常の絞り弁制御を行う。一方、ポンピングブレーキ検出手段15によりポンピングブレーキ操作ありと判定された場合は、ポンピングブレーキ用の絞り弁制御を行う。
【0019】
図3は、この発明の実施の形態1における内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置の処理手順を示すフローチャートである。この処理はメインルーチンの中の一処理であって、電源スイッチ(図示省略)としてのキースイッチ投入後に繰り返し行われるものである。キースイッチが投入されると、図3のフローチャートの処理が起動される。
【0020】
まず、ステップS1で、ECU10の実吸気管圧力検出手段11は、吸気管圧力センサ7の実測値(検出値)から、吸気管6内の実圧力(以下、実吸気管圧力Aとする)を検出する。
【0021】
次に、ステップS2で、ECU10の推定吸気管圧力検出手段12は、回転センサ8で検出された内燃機関1の回転数と絞り弁9の開度とに基づいて、吸気管6内の圧力の推定値を求める。推定吸気管圧力検出手段12は、図5に示す、吸気管6内の圧力の推定値を求めるためのテーブルを有している。当該テーブルには、内燃機関1の回転数の値、および、絞り弁9の開度の値に、それぞれ対応させて、推定吸気管圧力の値が予め設定されている。なお、図5のグラフにおける各実線は「推定吸気管圧力」を示し、「大気圧(側)」および「真空(側)」でその状態を表わしている。図5のグラフ中に、実線が8本あるのは、これらは、それぞれ、一定の空気量(g/sec)毎の「推定吸気管圧力」を示したもので、左から順に、空気量(一定)が、「10g/sec」、「20g/sec」、「30g/sec」、「40g/sec」、「50g/sec」、「60g/sec」、「70g/sec」、「80g/sec」というように、右へいくほど高い場合となっている。空気量と吸気管圧力は相関関係があるので、例えば、空気量が30g/sec(一定)の場合、エンジン回転数が低回転だと、推定吸気管圧力は大気圧側の圧力になり、高回転だと真空側の圧力になる。また、同じ条件(空気量が30g/sec(一定))で、絞り弁開度が、開き側だと大気圧側の圧力になり、閉じ側だと真空側の圧力になる。他の空気量(一定)の場合も、図5のグラフの各実線で示されるように、同様の傾向となる。このように、図5のテーブルを参照すれば、内燃機関1の回転数の値、および、絞り弁9の開度の値に基づいて、推定吸気管圧力の値を一意に求めることができる。推定吸気管圧力検出手段12は、このテーブルを用いて、内燃機関1の回転数と絞り弁9の開度とから、吸気管6内の圧力の推定値(以下、推定吸気管圧力Bとする)を算出する。
【0022】
次に、ステップS3においては、ECU10の差圧算出手段13は、次式(1)を用いて、実吸気管圧力Aと推定吸気管圧力Bとの圧力差Cを計算する。これらの情報は、RAM10aに記憶される。
【0023】
(圧力差C)=(実吸気管圧力A)―(推定の吸気管圧力B)・・・(1)
【0024】
次に、ステップS4にて、ECU10の差圧成分手段14は、次式(2)を用いて、圧力差Cを一定時間t(時刻t1から時刻t2までの時間)で積分を行い、積分値Dを算出する。一定時間tは、例えば、内燃機関1の回転が1回転する時間とする。
【0025】
【数1】

【0026】
次に、ステップS5で、ECU10のポンピングブレーキ検出手段15は、ステップS4で求めた積分値Dが判定値N1以上であるか否かを検出する。積分値Dが判定値N1以上であれば、ステップS7に進む。ステップS7では、ポンピングブレーキ検出手段15は、ポンピングブレーキ操作が開始されたと判定し、ステップS10に進む。ここで、判定値N1の値は、ブレーキ倍力装置3の駆動に必要な最小値の負圧に基づいて予め設定された値である。
【0027】
一方、ステップS5で、積分値Dが判定値N1未満と判定された場合は、ステップS6に進む。
【0028】
ステップS6では、ECU10のポンピングブレーキ検出手段15は、ステップS4で求めた積分値Dが判定値N2未満であるか否かを検出し、積分値Dが判定値N2未満であれば、ステップS8でポンピングブレーキ操作終了と判定し、ステップS10に進む。ここで、判定値N2は、判定値N1に対しヒステリシスを設けた値(例えば判定値N1に対し80%の設定値)に設定されている。従って、判定値N2は、判定値N1よりも小さい。
【0029】
一方、ステップS6にて、積分値Dが判定値N2以上と判定された場合は、ステップS9に進み、ポンピングブレーキ検出手段15は、ポンピングブレーキ操作中と判定し、ステップS10に進む。
【0030】
次に、ポンピングブレーキ検出手段15は、ステップS10において、ポンピングブレーキ開始(ステップS7)またはポンピングブレーキ操作中(ステップS9)であると判定した場合、ステップS11にて、絞り弁制御手段16は、ポンピングブレーキ用の絞り弁制御を行う。すなわち、絞り弁制御手段16は、ブレーキ倍力装置3から吸気管6に流れ込んだ空気量に応じた圧力分だけ、絞り弁9を閉じ側にする制御を行い、ブレーキ倍力装置3を駆動するための負圧を確保する。一方、ステップS10において、ポンピングブレーキ操作でない(ステップS8)と判定された場合、ステップS12にて、絞り弁制御手段16は、通常の絞り弁制御を行う。
【0031】
このように、ポンピングブレーキ検出手段15は、差圧積分手段14によって算出された積分値Dが判定値N1以上になったときに、ポンピングブレーキ操作が開始されたと判定し、その後、積分値Dが判定値N2未満になるまで、ポンピングブレーキ操作中と判定し、積分値Dが判定値N2未満になったときに、ポンピングブレーキ操作が終了したと判定する。
【0032】
図4は、上述の説明に対応した横軸が時間のタイムチャートである。図4において、V1はドライバのブレーキ操作、V2はブレーキスイッチ2aの状態、V3はポンピングブレーキ判定、4は吸気管6内の圧力(実圧力および推定値)、V5は差圧積分手段14による積分値、V6は内燃機関1の回転数、V7は絞り弁9の開度を示す。
【0033】
ブレーキ操作(V1)は、ドライバによるブレーキペダル2の踏込み操作を示している。ブレーキ操作(V1)によると、タイミングT1より、ポンピングブレーキ操作が開始され、タイミングT3にて、ポンピングブレーキ操作が終了している。ポンピングブレーキ操作中(タイミングT1〜T3の区間)において、図4のブレーキ操作(V1)の「踏む」が、図2に示すR103を超えてブレーキペダル2をドライバが踏込んだ場合であり、図4の「離す」が、図2に示すR102までブレーキペダル2の踏込み力を弱めた場合とする。ポンピングブレーキ中以外(タイミングT1以前、タイミングT3以降)の「離す」は、ブレーキペダル2の踏込み操作量をR101未満とした場合とする。
【0034】
ブレーキスイッチ(V2)は、ブレーキ操作(V1)にあわせた、図2に示すブレーキスイッチ2aの状態を示す。ポンピングブレーキ操作中(タイミングT1〜T3の区間)においては、ON状態が続いている。
【0035】
吸気管圧力(V4)は、実吸気管圧力の値と推定吸気管圧力の値を示す。実吸気管圧力は、ブレーキ操作(V1)のブレーキペダル2の踏込み量に応じて、ブレーキ倍力装置3から吸気管6に空気が流れ込む為、吸気管6の圧力が大気圧側へ上昇する。推定吸気管圧力は、吸気管6の圧力が上昇する為、内燃機関1の回転数(V6)が上昇し、図5のテーブルに従い、吸気管6の圧力が真空側へ下降する。
【0036】
積分値(V5)は、吸気管圧力(V4)の実吸気管圧力の値と推定吸気管圧力の値の差圧と、内燃機関1の回転数で決まる所定時間tの積分結果である。
【0037】
ポンピングブレーキ判定(V3)は、積分値(V5)が、判定値N1以上となった時(タイミングT2)に、ポンピングブレーキ判定を成立とし、積分値(V5)が、判定値N2未満となった時(タイミングT4)に、ポンピングブレーキ判定を不成立とする。
【0038】
絞り弁開度(V7)は、ポンピングブレーキ判定(V3)が成立した場合(タイミングT2)、ブレーキ倍力装置3から吸気管6に流れ込んだ空気量に応じた圧力分だけ、絞り弁9を閉じ側に制御を行うことで、ブレーキ倍力装置3の負圧を確保する。ポンピングブレーキ判定(V3)が不成立となった場合(タイミングT4)、絞り弁9を通常の絞り弁開度制御を実施する。
【0039】
従って、本実施の形態によれば、いかなるブレーキ操作においても、ポンピングブレーキを検出し、ブレーキ倍力装置3の駆動に必要な負圧を確保することができる。
【0040】
以上のように、この発明に係る内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置は、内燃機関1に空気を供給する吸気管6の実吸気管圧力を、吸気管圧力センサ7によって検出される検出値に基づいて検出する実吸気管圧力検出手段11と、内燃機関1の回転数と絞り弁9の開度とに基づいて、推定吸気管圧力を算出する推定吸気管圧力検出手段12と、実吸気管圧力検出手段11により検出された実吸気管圧力と推定吸気管圧力検出手段12により算出された推定吸気管圧力との差圧を算出する差圧算出手段13と、差圧算出手段13によって算出された差圧を時間で積分する差圧積分手段14と、差圧積分手段14によって算出された積分値Dが判定値N1以上になったときに、ポンピングブレーキ操作が開始されたと判定し、その後、積分値Dが判定値N1よりも小さい判定値N2未満になったときに、ポンピングブレーキ操作が終了したと判定するポンピングブレーキ検出手段15と、吸気管6内に設けられた絞り弁9に対して、ポンピングブレーキ検出手段15の判定結果に基づいて、ポンピングブレーキ操作中はポンピングブレーキ用の制御を行い、それ以外は、通常の制御を行う、絞り弁制御手段16とを備え、内燃機関1の回転数と絞り弁の開度とに基づいた推定吸気管圧力と実吸気管圧力との差分を積分し、積分値Dが判定値N1以上のときにポンピングブレーキと判定するようにしたので、いかなるブレーキ操作においても、ポンピングブレーキを検出し、ブレーキ倍力装置の駆動に必要なブレーキ負圧を確保することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 内燃機関、2 ブレーキペダル、2a ブレーキスイッチ、3 ブレーキ倍力装置、4 ブレーキ油圧配管、5 ブレーキ導圧管、6 吸気管、7 吸気管圧力センサ、8 回転数センサ、9 絞り弁、10 ECU、10a RAM、10b ROM、10c CPU、10e 入出力インターフェイス、10f 駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に空気を供給する吸気管の実吸気管圧力を、吸気管圧力センサによって検出される検出値に基づいて検出する実吸気管圧力検出手段と、
前記内燃機関の回転数と絞り弁の開度とに基づいて、推定吸気管圧力を算出する推定吸気管圧力検出手段と、
前記実吸気管圧力検出手段により検出された前記実吸気管圧力と前記推定吸気管圧力検出手段により算出された推定吸気管圧力との差圧を算出する差圧算出手段と、
前記差圧算出手段によって算出された前記差圧を時間で積分する差圧積分手段と、
前記差圧積分手段によって算出された前記積分値が予め設定された第1の判定値以上になったときに、ドライバによるブレーキ操作がポンピングブレーキ操作であると判定するポンピングブレーキ検出手段と、
前記吸気管内に設けられた絞り弁に対して、前記ポンピングブレーキ検出手段の判定結果に基づいて、ポンピングブレーキ操作中はポンピングブレーキ用の制御を行い、それ以外は、通常の制御を行う、絞り弁制御手段と
を備えた内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置。
【請求項2】
前記ポンピングブレーキ検出手段は、前記差圧積分手段によって算出された前記積分値が予め設定された第1の判定値以上になったときに、ポンピングブレーキ操作が開始されたと判定し、その後、前記積分値が、前記第1の判定値より小さい予め設定された第2の判定値未満になったときに、前記ポンピングブレーキ操作が終了したと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御装置。
【請求項3】
内燃機関に空気を供給する吸気管の実吸気管圧力を、吸気管圧力センサによって検出される検出値に基づいて検出する実吸気管圧力検出ステップと、
内燃機関の回転数と絞り弁の開度とに基づいて、推定吸気管圧力を算出する推定吸気管圧力検出ステップと、
前記実吸気管圧力検出ステップにより検出された前記実吸気管圧力と前記推定吸気管圧力検出ステップにより算出された推定吸気管圧力との差圧を算出する差圧算出ステップと、
前記差圧算出ステップによって算出された前記差圧を時間で積分する差圧積分ステップと、
前記差圧積分手段によって算出された前記積分値が予め設定された第1の判定値以上になったときに、ドライバによるブレーキ操作がポンピングブレーキ操作であると判定するポンピングブレーキ検出ステップと、
前記吸気管内に設けられた絞り弁に対して、前記ポンピングブレーキ検出ステップの判定結果に基づいて、ポンピングブレーキ操作中はポンピングブレーキ用の制御を行い、それ以外は、通常の制御を行う、絞り弁制御ステップと
を備えた内燃機関用ポンピングブレーキ検出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104418(P2013−104418A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251242(P2011−251242)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【特許番号】特許第5143271号(P5143271)
【特許公報発行日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】