説明

再狭窄を予防するための装置、方法及び組成物

エポシロン、ゲルダナマイシン類似体、及びラパマイシン又はラパマイシン類似体単独を又は相乗的組み合わせにおいて使用して、再狭窄を予防又は低減するための医療装置、組成物及び方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
アテローム性動脈硬化症は、中血管及び大血管壁面に沿って、コレステロール、脂肪酸、細胞老廃物及びカルシウムを含む硬化プラークを構成するものである。そのようなプラークは、血管、例えば中血管又は大血管の狭小化(狭窄)を生じる可能性があり、心発作及び脳卒中の原因を導く。一般的に、アテローム性動脈硬化症は、カテーテルを患者の主要な動脈に挿入し、心臓の主要な動脈に導くバルーン血管形成術(或いは経皮的冠動脈形成術又は「PTCA」と呼ばれる)を使用して治療される。カテーテルの末端に位置するバルーンを膨らまし、狭窄した血管の壁面にプラークを押しつけ、血管を広げ、血流を改善させる。最近は、ステントと呼ばれる小さな金属性スプリング様装置を構造部位に挿入し、血管の形を維持する支持骨格の維持を提供することが可能である。
【0002】
残念ながら、これらの方法は、恒久的な解決を常に提供するものではない。全てのPTCA方法の約40%及びステント術の約25%において、狭窄はその方法の約6ヵ月以内に再発する。そのような再発は「再狭窄」と呼ばれ、ステント挿入後の再狭窄の場合においては(「ステント内再狭窄」)と呼ばれる。ステント内再狭窄は、瘢痕組織が他の健康な血管組織の層の下で成長する場合に生じ、それは、ステントの骨格を超えて成長し、また、血管の広げられた部分を通る血流を制限するのに十分な程度まで、ステントを通る血流の改善を提供する。
【0003】
昨今、細胞傷害性薬剤を含む、特別な被覆薬剤溶出性ステント(coated drug-eluting stents)が提供され、ステント内再狭窄の発生が低下している。様々な薬剤がそのようなステントに使用され、例えば、平滑筋細胞(「SMC」)の成長を阻害するシロリムス(ラパマイシン)、パクリタキセル、抗増殖性剤、及び幾つかの抗炎症性薬剤が挙げられる。例えば:Ozakiら、(1996年)、“New stent technologies,” Prog. Cardiovasc. Disease 39(2): 129〜40頁; Lincoffら、(1997年) “Sustained local delivery of dexamethasone by a novel intravascular eluting stent to prevent restenosis in the porcine coronary injury model.” Journal of the American College of Cardiology 29(4): 808〜816頁; Violarisら(1997年) “Endovascular stents: a 'break through technology', future challenges.” Int J Card Imaging 13(1): 3〜13頁; Garasら(2001年) “Overview of therapies for prevention of restenosis after coronary interventions.” Pharmacology & Therapeutics 92(2-3): 165〜178頁; Garasら (2001年) “Overview of therapies for prevention of restenosis after coronary interventions.” Pharmacol Ther 92(2-3): 165〜78頁; Regarら (2001年) “Stent development and local drug delivery.” Br Med Bull 59: 227〜48頁; Chieffo & Colombo (2002年) “Drug-eluting stents.” Minerva Cardioangiol 50(5): 419〜29頁; Greenberg & Cohen (2002年) “Examining the economic impact of restenosis: implications for the cost-effectiveness of an antiproliferative stent.” Z Kardiol 91 Suppl 3: 137〜43頁; Grube & Bullesfeld (2002年) “Initial experience with paclitaxel-coated stents.” J Interv Cardiol 15(6): 471〜5頁; Grubeら (2002年) “Drug eluting stents: initial experiences.” Z Kardiol 91 Suppl 3: 44〜8頁; Hehrleinら (2002年) “Drug-eluting stent: the “magic bullet” for prevention of restenosis?” Basic Res Cardiol 97(6): 417〜23頁; Liistroら (2002年) “First clinical experience with a paclitaxel derivate-eluting polymer stent system implantation for in-stent restenosis: immediate and longterm clinical and angiographic outcome.” Circulation 105(16): 1883〜6頁; Mullerら (2002) “[State of treatment of coronary artery disease by drug releasing stents].” Herz 27(6): 508〜13頁; Peters (2002年) “Can angiotensin receptor antagonists prevent restenosis after stent placement?” American Journal of Cardiovascular Drugs 2(3): 143〜148頁; Prebitero and Asioli (2002年) “[Drug-eluting stents do they make the difference?].” Minerva Cardioangiol 50(5): 431〜42頁; Sheibanら (2002年) “Drug-eluting stent: the emerging technique for the prevention of restenosis.” Minerva Cardioangiol 50(5): 443〜53頁; Fattori & Piva (2003年) “Drug-eluting stents in vascular intervention.” Lancet 361(9353): 247〜9頁を参照されたい。特に、Zhongの米国特許第6,231,600号は、非血栓形成薬剤及びパクリタキセル含有ポリマーを含有するハイブリッドステントコーティングであって、パクリタキセルの徐放を可能にし、ステント内再狭窄を低減又は予防するものを記載している。米国特許出願第20030207856号は、Hsp90インヒビターゲルダナマイシンで被覆されたステントを開示している。
【0004】
それでもなお、異なる再狭窄を予防又は低減する薬剤の追加的な薬剤溶出ステントを提供することが好都合であると考えられる。例えば、パクリタキセルは、血管壁の壊死が観察されるそのような強い細胞毒性を有する。従って、パクリタキセルは、処方及び投与を複雑にし得る比較的狭い治療濃度域を有する。
【0005】
発明の概要
本発明は、再狭窄を実質的に低減又は予防する組成物、方法及び装置を提供することにより、これらの要求に取り組むものである。本発明者は、一定のゲルダナマイシン類似体、具体的には17-アミノ-17-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、例えば17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)及び17-(ジメチルアミノエチル)-17-デスメトキシゲルダナマイシン(DMAG)が、平滑筋細胞に対して選択的細胞毒性を示し、それ故に、再狭窄のコントロールへの使用に独特の利点を提供することを、予想外にも見い出した。さらに、本発明者は、細胞毒性薬剤の特定の組み合わせが、予想外に相乗的であり、従って、再狭窄を予防するために必要とされる個々の細胞毒性薬剤の濃度が低減されることを見い出した。
【0006】
一つの態様において、本発明は、ここに記載された一つ以上の薬剤を血管に送り、血管内の再狭窄を、その発生の程度を低減するか又は実質的に予防するために形成された医療装置を含む。一つの態様において、薬剤はエポシロン(epothilone)である。他の態様において、薬剤はゲルダナマイシン誘導体である。さらに他の態様において、薬剤はラパマイシン類似体である。より具体的な態様において、薬剤はデスオキシエポシロンであり、より具体的にはエポシロンDである。他の態様において、薬剤は、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシゲルダナマイシン又は17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシンである。さらに他の態様において、薬剤は、17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンである。幾つかの態様において、前記薬剤を組み合わせで使用し、相乗効果を提供する。幾つかの態様において、ここに記載した薬剤は、さらに、抗炎症剤と組み合わされる。幾つかの態様において、装置はステントである。他の態様において、装置は、血管接合をカバーするために使用されるポリマーラッパー又は装置である。幾つかの態様において、装置は、ここに記載された一つ以上の薬剤を血管に送達するのに効果的な少なくとも一つの被覆剤を含む。
【0007】
他の態様において、本発明は、血管内の再狭窄を、その発生の程度を低減するか又は実質的に予防するための組成物を提供する。一つの態様において、薬剤はエポシロンである。他の態様において、薬剤はゲルダナマイシン又はゲルダナマイシン誘導体である。他の態様において、薬剤はラパマイシン類似体である。より具体的な態様において、薬剤はデスオキシエポシロンであり、より具体的にはエポシロンDである。他の態様において、薬剤は、17-アリルアミノ-17-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、又は17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシンである。さらに他の態様において、薬剤は、17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンである。幾つかの態様において、ここに記載された薬剤は、抗炎症剤とさらに組み合わされる。組成物は、ポリマー近位の血管組織へポリマーから、本発明の薬剤が溶出するようなポリマーを含むことができる。
【0008】
さらに他の態様において、本発明は、血管における再狭窄を、その発生の程度を低減するか又は実質的に予防するための方法を提供する。一つの態様において、本発明の方法は、再狭窄の治療又は予防を要求する血管に、ここに記載した薬剤を、そのような血管における再狭窄を実質的に低減するか又は実質的に予防するのに十分な量において送達させることを含む。一つの態様において、薬剤はエポシロンである。他の態様において、薬剤は、ゲルダナマイシン又はゲルダナマイシン誘導体である。さらに他の態様において、薬剤はラパマイシン類似体である。より具体的な態様において、薬剤はデスオキシエポシロンであり、より具体的にはエポシロンDである。他の態様において、薬剤は、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)-エチルアミノ]-17-デスメトキシゲルダナマイシン又は17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシンである。さらに他の態様において、薬剤は17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンである。いくつかの態様において、ここに記載された薬剤は、抗炎症剤とさらに組み合わされる。
これら及び他の態様及び利点は、以下の記載を添付の図面と合わせて読む場合に明らかになると思われる。
【0009】
発明の詳細な説明
一つの態様において、本発明は、エポシロン及びゲルダナマイシンの群から選ばれる薬剤を放出するコーティングを含むステントを提供する。本発明の組み合わせに関する好適なエポシロンは、いずれかのエポシロン、より具体的には、有用な治療特性を有するいずれかのエポシロンであってもよく;例えばHoefleら(1993年)、Ger. Offen. DE 4138042; Nicolaouら(1998年) 国際公開公報 WO 98/25929; Reichenbachら(1998年) 国際公開公報 WO 98/22461; Danishefskyら(1999年) 国際公開公報WO 99/01124; Hoefleら(1999年) 国際公開公報WO 99/65913; Nicolaouら(1999年) 国際公開公報WO 99/67253; Nicolaou (1999年) 国際公開公報 WO 99/67252; Viteら(1999年) 国際公開公報 WO 99/54330; Viteら (1999年) 国際公開公報 WO 99/02514; Viteら(1999年) 国際公開公報 WO 99/54319; Hoefleら(2000年) Ger. Offen. DE 19907588; Hoefleら(2000年) 国際公開公報 WO 00/50423; Danishefskyら(2001年) 米国特許第6,204,388号; Danishefskyら(2001年) 国際公開公報 WO 01/64650; Santiら(2001年) 国際公開公報 WO 01/92255; Avery (2002年) 国際公開公報 WO 02/30356; Danishefskyら(2002年) 米国特許公開公報20020058286; Nicolaouら(2002年) 米国特許第6,441,186号; Nicolaouら(2002年) 米国特許第6,380,394号; Wessjohan及びScheid (2002年) Ger. Offen. DE 10051136; 及びWhiteら(2002年) 米国特許公開公報20020062030を参照されたい。そのようなエポシロンは、全化学合成、部分的化学合成、又は化学生合成方法及び有機化学、医薬品化学及び生体工学分野の業者に公知の材料のいずれかの組み合わせを使用して得ることができる。有用な治療特性を有するエポシロンの具体的な例としては、特に限定されるものではないが、エポシロンA、エポシロンB、エポシロンC、エポシロンD、4-デスメチルエポシロンD、アザエポシロンB(エポシロンB ラクタム)、21-アミノエポシロンB、9,10-デヒドロエポシロンD、9,10-デヒドロ-26-トリフルオロエポシロンD、11-ヒドロキシエポシロンD、19-オキサゾリルエポシロンD、10,11-デヒドロエポシロンD、19-オキサゾリル-10,11-デヒドロエポシロンD、及びトランス-9,10-デヒドロエポシロンDが挙げられる。
【0010】
他の態様において、薬剤は、ゲルダナマイシン又はそれらの類似体又は誘導体である。一つの態様において、薬剤は、ゲルダナマイシンである。好ましい態様において、薬剤は、ゲルダナマイシンの類似体、例えば、17-(置換アミノ)-17-デスメトキシゲルダナマイシンである。一つの好ましい態様において、薬剤は、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン(「17-AAG」)である。さらに他の態様において、薬剤は、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシゲルダナマイシン(「17-DMAG」)である。他の態様において、薬剤は、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシンである。さらに他の態様において、薬剤は、17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンである。これらの化合物は、有機及び医薬品化学分野の業者に公知の方法を使用して得ることができる;例えば、Sasakiら(1981年) 米国特許第4,261,989号; Schnurら(1999年) 米国特許第5,932,566号; Zhangら (2003年) 国際公開公報WO 03/026571; Santiら (2003年) 国際公開公報WO 03/13430、並びに継続中の米国特許出願第60/389,225号;第60/393,929号;第60/395,275号;第60/415,326号;及び第60/420,820号を参照されたい。
【0011】
ゲルダナマイシンそれ自体は、平滑筋細胞でのIC50値が約0.9nMである強力な細胞毒であり、そのような高い細胞毒性は、局所的な薬剤濃度が高くされ得る再狭窄の治療に問題となるかも知れない。再狭窄の有効な治療に関して、内皮細胞上の平滑筋細胞に対して選択的細胞毒性を示す薬剤が、再狭窄に関連しない他の細胞型への損傷を最小にして再狭窄の治療を可能にすると考えられる。予期せず、本発明者は、あるゲルダナマイシン類似体、具体的には17-アミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン、例えば17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)及び17-(ジメチルアミノエチル)-17-デスメトキシゲルダナマイシン(DMAG)が、平滑筋細胞に対して選択的細胞毒性を示すことを見い出した(図1及び2を参照されたい)。これらの類似体は、一般的に、ゲルダナマイシン自体よりも細胞毒性が低いが、例えば、17-AAGは、平滑筋細胞に対してIC50 約10nMを示し、それらは、内皮細胞に対して実質的により高いIC50値を示す。従って、これら類似体は、再狭窄の治療において、ゲルダナマイシンそれ自体を超える予期されない利点を提供する。
【0012】
本発明の他の態様において、薬剤はラパマイシン又はラパマイシン類似体である。
「ラパマイシン又はラパマイシン類似体」は、構造式(I)の化合物を意味する;
【化1】

(式中、R1は、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロキシエトキシ、アリールオキシ又はヘテロアリールであり;R2は、H又はOMeであり;R3は、H又はMeであり;R4は、H、OH又はOMeである)。ラパマイシン類似体の具体的な例は、国際公開公報WO 01/38416に記載されている。
【0013】
好ましい態様において、ラパマイシン又はラパマイシン類似体は、第二の薬剤との組み合わせにおいて投与され、平滑筋細胞に相乗的な細胞毒性作用を提供する。相乗的な組み合わせの例としては、ラパマイシンとゲルダナマイシン類似体、例えば図4におけるラパマイシンと17-AAG、及び図5に示すようなラパマイシンとエポシロンDが挙げられる。相乗的混合物の使用は、それが、再狭窄の予防において、より低い薬物量の使用及び/又は有効性の上昇を可能にするため、かなり好都合である。二つの薬剤の比率は、当技術分野に公知の方法により、例えば以下の実施例2に記載するように決定してもよい。
【0014】
幾つかの態様において、薬剤又は薬剤コンビネーションは、再狭窄の過程が実質的に軽減されるか又は予防されるように、ステントと合わされる。そのようなステントは、金属製であるか又は生物学的再吸収性(bioresorbable)ポリマーから作られていてもよい。本発明に好適なステントの例としては、それらに限定されるわけではないが、心血管系薬剤及び医療装置技術分野の業者に公知なように薬剤を溶出させるために形成されたステントが挙げられる。例えば、Aggarwalら(1996年) “Antithrombotic potential of polymercoated stents eluting platelet glycoprotein IIb/IIIa receptor antibody.” Circulation 94(12): 3311〜3317頁; Ozakiら(1996年), “New stent technologies,” Prog. Cardiovasc. Disease 39(2): 129〜40頁; Lincoffら(1997年) “Sustained local delivery of dexamethasone by a novel intravascular eluting stent to prevent restenosis in the porcine coronary injury model.” Journal of the American College of Cardiology 29(4): 808〜816頁; Violarisら(1997年) “Endovascular stents: a 'break through technology', future challenges.” Int J Card Imaging 13(1): 3〜13頁; Garasら(2001年) “Overview of therapies for prevention of restenosis after coronary interventions.” Pharmacology & Therapeutics 92(2-3): 165〜178頁; Garasら(2001年) “Overview of therapies for prevention of restenosis after coronary interventions.” Pharmacol Ther 92(2-3): 165〜78頁; Regarら(2001年) “Stent development and local drug delivery.” Br Med Bull 59: 227〜48頁; Chieffo & Colombo (2002年) “Drug-eluting stents.” Minerva Cardioangiol 50(5): 419〜29頁; Greenberg & Cohen (2002年) “Examining the economic impact of restenosis: implications for the costeffectiveness of an antiproliferative stent.” Z Kardiol 91 Suppl 3: 137〜43頁; Grube & Bullesfeld (2002年) “Initial experience with paclitaxel-coated stents.” J Interv Cardiol 15(6): 471〜5頁; Grubeら(2002年) “Drug eluting stents: initial experiences.” Z Kardiol 91 Suppl 3: 44〜8頁; Hehrleinら(2002年) “Drug-eluting stent: the “magic bullet” for prevention of restenosis?” Basic Res Cardiol 97(6): 417〜23頁; Liistroら(2002) “First clinical experience with a paclitaxel derivateeluting polymer stent system implantation for instent restenosis: immediate and longterm clinical and angiographic outcome.” Circulation 105(16): 1883〜6頁; Mullerら. (2002年) “[State of treatment of coronary artery disease by drug releasing stents].” Herz 27(6): 508〜13頁; Peters (2002年) “Can angiotensin receptor antagonists prevent restenosis after stent placement?” American Journal of Cardiovascular Drugs 2(3): 143〜148頁; Prebitero and Asioli (2002年) “[Drug-eluting stents do they make the difference?].” Minerva Cardioangiol 50(5): 431〜42頁; Sheibanら. (2002年) “Drug-eluting stent: the emerging technique for the prevention of restenosis.” Minerva Cardioangiol 50(5): 443〜53頁; Fattori & Piva (2003年) “Drug-eluting stents in vascular intervention.” Lancet 361(9353): 247〜9頁; Klugherzら(2000年) “Gene delivery from a DNA controlledrelease stent in porcine coronary arteries.” Nature Biotechnology 18(11): 1181〜1184頁; Carlyleら(2002年) Eur. Pat. Appl. Ep 1236478; Farbら(2002年) “Oral Everolim Inhibits In-Stent Neointimal Growth.” Circulation 106(18): 2379〜2384頁; Moriceら(2002年) “A randomized comparison of a sirolim-eluting stent with a standard stent for coronary revascularization.” New England Journal of Medicine 346(23): 1773〜1780頁; Mosesら(2002年) “Perspectives of drug-eluting stents. The next revolution.” American Journal of Cardiovascular Drugs 2(3): 163〜172頁; Shahら(2002年) “Background Incidence of Late Malapposition After Bare-Metal Stent Implantation.” Circulation 106(14): 1753〜1755頁; Swansonら(2002年) “Human internal mammary artery organ culture model of coronary stenting: a novel investigation of smooth mcle cell response to drug-eluting stents.” Clinical Science 103(4): 347〜353頁; Virmaniら(2002年) “Mechanism of Late In-Stent Restenosis After Implantation of a Paclitaxel Derivate-Eluting Polymer Stent System in Humans.” Circulation 106(21): 2649〜2651頁; 及びYoonら(2002年) “Local delivery of nitric oxide from an eluting stent to inhibit neointimal thickening in a porcine coronary injury model.” Yonsei Medical Journal 43(2): 242〜251頁を参照されたい。
【0015】
他の態様において、ステントを一つ以上のポリマー物質で被覆し、ステント表面上の血流を促進させ、薬剤の貯蔵を提供し、薬剤が放出されて再狭窄の実質的な軽減又は予防を提供するようにする。そのようなポリマーの例は、心血管医学及び医学装置技術の業者に、公知である:例えばLevyら(1994年) “Strategies for treating arterial restenosis using polymeric controlled release implants.” Biotechnol. Bioact. Polym., [Proc. Am. Chem. Soc. Symp.]: 259〜68頁; De Scheerderら(1995年) “Biocompatibility of polymer-coated oversized metallic stents implanted in normal porcine coronary arteries.” Atherosclerosis (Shannon, Ireland) 114(1): 105〜14頁; Pengら(1996年) “Role of polymers in improving the results of stenting in coronary arteries.” Biomaterials 17(7): 685〜94頁; Tartagliaら(1996年) Can. Pat. Appl. Ca 2164684; Herdegら(1998年) “Antiproliferative stent coatings: Taxol and related compounds.” Semin Interv Cardiol 3(3-4): 197〜9頁; Reichら(1998年) 国際公開公報 WO 98/08884; Santosら(1998年) “Local administration of L-703081 using a composite polymeric stent reduces platelet deposition in canine coronary arteries.” American Journal of Cardiology 82(5): 673〜675頁; Whitbourne (1998年) 国際公開公報 WO 98/32474; Tsujiら(2003年) “Biodegradable stents as a platform to drug loading,” Int J Cardiovasc Intervent. 5(1):13〜6頁; Lahannら(1999年) “Improvement of hemocompatibility of metallic stents by polymer coating.” Journal of Materials Science: Materials in Medicine 10(7): 443〜448頁; Piroら(1999年) “An electrochemical method for entrapment of oligonucleotides into a polymer-coated electrode.” Proceedings of the International Symposium on Controlled Release of Bioactive Materials 26th: 1176〜1177頁; Barら(2000年) “New biocompatible polymer surface coating for stents results in a low neointimal response.” Journal of Biomedical Materials Research 52(1): 193〜198頁; Le Moreら(2000年) Fr. Demande FR 2785812; Verweireら(2000年) “Evaluation of fluorinated polymers as coronary stent coating.” Journal of Materials Science: Materials in Medicine 11(4): 207〜212頁; Zhong (2001年) 米国特許第6,231,600号; Heubleinら(2002年) Polymerized degradable hyaluronan−a platform for stent coating with inherent inhibitory effects on neointimal formation in a porcine coronary model.” Int J Artif Organs 25(12): 1166〜73頁; Lewisら(2002年) “Analysis of a phosphorylcholine-based polymer coating on a coronary stent pre- and post-implantation.” Biomaterials 23(7): 1697〜1706頁; Roordaら(2002年) 国際公開公報WO 02/94335; 及びRosenblumら(2003年) 国際公開公報WO 03/07785を参照されたい。
【0016】
好ましい態様において、ポリマーは、ポリ(エステル-アミド)(「PEA」)、ポリラクチド(「PLA」)及びアミノ酸ベースポリウレタン(「PU」)からなる群より選ばれる。好適なポリ(エステル-アミド)は、Leeら(2002年) “In-vivo biocompatibility evaluation of stents coated with a new biodegradable elastomeric and functional polymer,” Coron Artery Dis. 2002年 Jun;13(4):237〜41頁;及び米国特許第6,703,040号に記載されており、それは参考文献としてここに含まれるものとし、それらは二つのαアミノ酸とジオール及び二酸とのモノマーを合成することにより製造される。好ましい態様において、ポリ(エステル-アミド)は、L-ロイシン、L-リジン、ヘキサンジオール及びセバシン酸から製造される。薬剤は、ポリマーマトリックスに化学的に沈着されるか又はL-リジンのカルボキシル基を介してポリマー主鎖に結合させることができる。ポリマーはエラストマーであり、光活性化剤を使用してその場で架橋することができ、強力な依然として生体適合性かつ再吸収性ポリマーになる。ポリラクチドベースポリマーは、様々な比率においてL-ラクチド、カプロラクトン及びポリエチレングリコールモノマーから製造することができる。ポリウレタンポリマーは、αアミノ酸、例えばL-ロイシン及びL-リジンのモノマーを、ジオールと縮合させることにより製造することができる。ポリマーの側面のL-リジンのカルボキシル基を、カップリング薬の付着部位として使用することができる。一般的にポリウレタンポリマーは、ポリ(エステル−アミド)ポリマーよりも早い分解速度を示し、一般的に、生体適合性及び再吸収性の点では同様である。
【0017】
医療装置、例えば、ステントのコーティングに使用される場合、揮発性溶剤中のポリマー及び薬剤の溶液は、別々又は組み合わせのいずれであっても、スプレー又は浸漬することにより表面に適用されてもよい。その後、揮発性溶剤は蒸発し、ポリマー及び薬剤を含む装置上のコーティングになる。異なる比率のポリマーと薬剤は、薬剤の効力及び薬剤が医療装置から放出される時間により適用してもよい。薬剤の放出速度をさらに制御するために、追加的なポリマーのトップコートを被覆した装置に適用してもよい。次に、医療装置は、例えば、ガンマ放射により無菌にしてもよい。
他の態様において、ここに記載した薬剤を、医療装置と使用し、例えばポリマーシース(sheath)と合わせること又は血管壁周りを覆うことにより、血管吻合後の再狭窄を予防することができる。そのような材料はSecant Medical、LLC of Perkasie、ペンシルヴェニア、USAから市販されている。本発明の組成物で被覆してもよい好適な装置のさらなる例は、例えば米国特許第6,371,965号に見い出されてもよい。これらの装置は、例えば冠状動脈バイパス術の間に生じる血管吻合後に特に有用であってもよい。
【0018】
他の態様において、血管壁に生じる炎症過程を低減させるか又は予防するのに効果的な一つ以上の抗炎症薬は、前記薬剤と含まれる。好適な抗炎症薬の例としては、WO 01/38416に記載されるラパマイシン及びラパマイシン類似体が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
他の態様において、前記の一つ以上の薬剤は、再狭窄の部位に直接沈着される。沈着は、例えばカテーテル又は好適な薬剤送達装置を使用して行うことができる。
【0019】
実施例
以下の実施例は、本発明の一定の態様を説明し、本発明の実践において、当業者を補助するために提供される。これらの実施例は、いかなる態様においても本発明の範囲を制限すると考えられるものではない。
実施例1
本発明の化合物が再狭窄に関連するプロセスを予防又は低減することの証明
本発明の化合物は、以下に示すような、再狭窄に関する細胞性メカニズムの予防又は低減と一致する活性を示す。従って、本発明の化合物、方法及び装置は、再狭窄を実質的に予防又は低減するのに有効であると、心血管医薬技術の業者により認識されると考えられる。
パクリタキセル、ラパマイシン、及びエポシロンD、17-AAG及び17-DMAGからなる群より選ばれる薬物の薬物濃度変化の、同じヒト平滑筋細胞(「SMCs」 及び内皮細胞(「ECs」))に関する成長性における効果を、以下に記載するインビトロ実験条件下で比較した。
【0020】
ヒト大動脈平滑筋細胞(「AoSMC」)及びヒト臍動脈内皮細胞(「HUVEC」)を、平方センチメートル当たり約10,000細胞(10,000細胞/cm2)の密度で、96穴培養プレートにまいた。各日、各プレーティング濃度について、各細胞型(AoSMC又はHUVEC)について、5日間に亘り平均絶対吸光度(「OD」は細胞のOD〜培地のみのODと定義する)を計測することにより測定した成長曲線を使用して、その密度を測定した。AoSMCを、Clonetics/Biowhittaker/Cambrex (Item # CC-2571 / Lot # 0F0222 )から冷凍で購入した。AoSMCの到着時企業測定培養特性は:全細胞数917,500; 細胞生存度: 95%; 及び倍加時間約24時間〜48時間であった。また、貯蔵HUVECは、Clonetics/Biowhittaker/Cambrex (Item # CC-2519 / Lot # 1F0832)由来の凍結アリコートにおいて購入した。その到着時企業測定培養特性は、全細胞数560,000; 細胞生存度83%;及び倍加時間約18〜約48時間であった。
【0021】
実験前に、AoSMC及びHUVECを解凍し、Clonetics推奨法及び標準細胞培養技術に従い、母集団の2〜3倍加により、独立して増殖させた。特に記載する以外はここに記載した研究の全ての態様において変更することなく、Clonetics成長培地及び試薬を使用した。培地及び試薬の詳細は、Cambrex ワールドワイドウェブサイトに見い出すことができる。SMGMは、500 ml SMBM-2基本培地、5% FBS、及び全ての推奨シングルコート(singlequot)成長補助剤(SMGM-2ビュレットキット(bulletkit)で供給された)を含み、ECGMは、500 ml EBM基本培地、2% FBS及び全ての推奨シングルコート成長補助剤(EGM-ビュレットキットで供給された)を含んでいた。
最初のプレーティングの後、全ての96穴プレートを標準37℃、5% CO2 インキュベーターに置いた。培地を含む条件は、下記のこと以外は変更しなかった。1日〜5日間、連続的な24時間に関して、単一の96穴プレートをインキュベーターから取り出した。このプレートに関して、培地を全ての穴から取り出し、MTS試薬/培地溶液(以下を参照されたい)100マイクロリットル(「μl」)と置換え、その後、プレートをインキュベーターに戻し、3〜4時間後、このプレートをインキュベーターから取り出し、各穴について最適な吸光度データを96穴ELISAリーダーを使用して得た。
【0022】
セルプレパレーションソース細胞(Cell Preparation Source cells)を、最初の解凍まで、母集団の2又は3倍加の70〜80%集密で選択した。細胞サイクルを同調させるため、ソース細胞を標準成長培地から1%血清を含有する培地に、実験の24時間前に変更した(他の成長因子は変更しなかった)。実験0日において、ソース細胞をトリプシン処理(0.05x 1分〜2分)により培養皿から除き、遠心(800RPMx5分)後、血球計により定量し、培地中に再懸濁し、約25,000細胞/mlの保存液を得た。
【0023】
薬剤をジメチルスルホキシド(「DMSO」)溶媒に溶解し、保存液を製造し、その後、それらを、三つの研究濃度(10nM; 100nM;及び1,000nM)に培地に連続的に希釈した。三つの濃度それぞれの薬剤、三つの濃度の薬剤なしの溶媒、及び標準培地を独立して、単に研究の最初の日に細胞に独立して加えた。各日の各細胞型について、二つのカラム(16穴)中の細胞は、薬剤を受容せず、内部コントロールとして使用すると考えられる。細胞の生存及び増殖を、六つの時点のそれぞれの各細胞型についてMTS分析を使用して評価した。ラパマイシンを1mg粉末(アイテム # R0395)としてSigma Aldrichから購入した。パクリタキセルを5mg粉末(アイテム # T7191)としてSigma Aldrichから購入した。エポシロンD、17AAG及び17DMAGを、前記方法及び材料を使用して得た。
【0024】
1日目、最初のプレーティングの6時間後、培地を真空吸引により全ての穴から除去し;前記三つの濃度の三つの薬剤それぞれについての好適な成長培地-薬剤溶液を各穴に加えた。各細胞型(AoSMC又はHUVEC)について、及び各日において、二つの96穴プレートを全ての三つの薬剤を導入するために要求した(全24プレート)。スタンダードの穴は培地のみを含み、分析の間、それぞれの独立したプレートにおいて吸光度(「OD」)コントロール用に使用した。コントロール穴は、薬剤又は溶媒なしの特異細胞をプレートに含み、所定の細胞型に関する所定の日における全ての薬剤の効果について、コントロールとして使用した。
【0025】
0日〜5日、連続的な24時間について、四つの96穴プレートをインキュベーターから取り出した(AoSMC及びHUVECそれぞれについて2プレート)。これらのプレートについて培地を全ての穴から取り出し、MTS試薬溶液100μl(各穴について細胞の好適な成長培地80μl中、Promega CellTiter 96 Aqueous One試薬20μlを含む)と置き換えた。分析使用に関するPromegaの推奨を、暗照明下、試薬投与を含み全体的に従い、3〜4時間後、これらのプレートをインキュベーターから除去し、各穴又は各プレートに関する最適な吸光度データを96穴オートメート化ELISAリーダーを使用して得た。プレートを各日、同じ時間の1.5時間以内に読んだ。CellTiter 96 Aqueous One Assayに関する追加的な詳細は、Promega World-Wide Web サイトでオンラインで入手可能である。
【0026】
各カラムについて最適な吸光度を平均化した(n=8)。前記MTS分析の工程を使用して、「スタンダード」穴は、分析時、培地中、MTS試薬のみを含んでいた。これらの「スタンダード」カラムに関する平均OD値を、その後、薬剤処理細胞のそれらカラム平均から引き、薬剤処理細胞に関する絶対ODを得た。また、「スタンダード」カラムに関する平均OD値を、コントロール細胞を含有するそれらカラムから引き、コントロール細胞に関する絶対ODを得た。
所定の薬剤濃度での細胞に関する平均絶対ODを、AoSMC及びHUVECの両方について、0〜5日についてプロットした。AoSMC及びHUVECコントロール細胞に関する平均全体ODを、0〜5日に関する同様のそれぞれのグラフにプロットした。
研究結果を図1及び図2に示した。図から、薬理学及び医薬分野の業者は、エポシロンD、17-AAG及び17-DMAGそれぞれが、再狭窄を低減又は予防するための有用性と一致する用量反応特性を示すことが理解されると考えられる。さらに、当業者は、示されたデータから、17-AAG及び17-DMAGが、ECよりもSMCに比較的選択性をそれぞれ示すということを理解すると考えられる。従って、また、本発明は、ECよりもSMCに比較的選択的であるという処理方法及び組成物を提供する。
【0027】
実施例2
抗炎症化合物との相乗効果の証明
ヒト大動脈平滑筋細胞をCambrex (Walkersville, MD)から得た。細胞をSmGM-2成長培地(Cambrex)中に維持した。ラパマイシン、17-AAG及びKOS-862を前記のように又は市販の供給源から得た。化合物をジメチルスルホキシド(「DMSO」)に10mMの濃度に溶解し、-20℃で貯蔵した。
細胞を倍に、穴当たり3,000細胞の細胞密度で、不透明壁96穴マイクロタイタープレートに播種し、一晩接触させた。各薬剤の連続希釈物を加え、細胞を96時間インキュベートした。薬剤に関するIC50値を、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega, Madison, WI)を使用して測定した(それは生存細胞数と関連する)。
【0028】
薬剤コンビネーション分析に関して、細胞を96穴プレートに倍に播種した(3,000細胞/穴)。一晩のインキュベーションの後、細胞を薬剤単独又は薬剤とラパマイシンのコンビネーションで処理した。それぞれ個々の薬剤のIC50値をベースにして、相乗効果について試験される二つの薬剤の一定の比を提供するように、即ち、それらの個々のIC50値の比と等しい濃度で、コンビネーション薬物処理をデザインした。三つの異なる処理スケジュールを使用した:細胞をラパマイシンと17-AAG;又はラパマイシンとKOS-862で、96時間同時に処理した。細胞生存度を発光分析(Promega)により測定した。コンビネーション分析を、Calcusyn ソフトウエア(Biosoft, ケンブリッジ、UK)を使用して行った。
ラパマイシンと17-AAG及びラパマイシンとKOS-862の各コンビネーションは、図4及び図5に示すように相乗的であることが見い出された。従って、これら二つの各コンビネーションは、いずれかの成分のみの作用よりも再狭窄を予防又は治療することにおいてより良好な薬理学的効果を有すると考えられる。また、相乗作用は、DLD-1細胞において、前記方法を使用して示された(図6及び図7)。
【0029】
実施例3
17-AAGマトリックス化PEAのインビトロ薬剤溶出
代表的ポリ(エステル-アミド)被覆ステンレススチールディスクからの17-AAGの溶出を、UV及びHPLC法により測定した。ステンレススチールディスク(0.71 cm2)を、ディスク上に、無水エタノール中のPEA-24-Bz及び17-AAGの溶液をピペッティングすることにより、ポリマー及び17-AAGで被覆し、一晩風乾した。ある場合、被覆ディスクを、さらに、PEA-24又はPEA-17のいずれかでトップコートし、その後、同じ技術を使用して乾燥した。全薬剤量50、100又は200マイクログラム/cm2を、ポリマーに対して10又は20%(w/w)のいずれかの薬剤量で使用した。溶出に関して、キモトリプシン(0.4mg/mL)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ウシ胎仔血清(FBS)又はヒト血清のいずれかからなる培地1.5mLを含む15mLプラスチックバイアルにディスクを置いた。バイアルを37℃でインキュベートし、培地を毎日サンプル化した。薬物放出を、固相抽出(実施例4を参照されたい)により予め処理されたアリコートのHPLC分析により、又はアリコート(200μL)のUV吸収により分析し、薬剤スタンダードから作成した検量線から推定した。UV分析により、理論値の96%と一致した結果が得られた。HPLC法は、12.5x4.6mmマッチングガードカラムを有する250x4.6 mm 5ミクロン100 A Zorbax Eclipse XDB C8逆相カラムを使用したクロマトグラフィーを内含した。移動相はA: 0.2%酢酸水、及びB: アセトニトリル中の0.1%酢酸、流速1 mL/分であった。勾配溶離を行った:50%Bを2分間、その後95%Bを9分間、その後95%Bの定組成溶離を5分間、その後50%に戻し1分間及び平衡にして4分間。17-AAGを330 nmのUVにより検出した。
【0030】
キモトリプシン培地への17-AAGに関する放出データは、17-AAGが少なくとも5日(実験の終了時)まで一定速度で放出されることを示した。非トップコートマトリックスは、トップコートマトリックスよりも早い速度で、非トップコートマトリックスの40%と比較して5日間で全薬剤放出56%で、17-AAGを放出した。
FBS培地への17-AAGに関する放出データは、17-AAGが少なくとも4.5日(実験終了時)まで一定速度で放出されることを示した。非トップコートマトリックスは、トップコートマトリックスよりも速い速度で、非トップコートマトリックスの21%と比較して4.5日間で全薬剤放出31%で、17-AAGを放出した。
トップコート増加効果を、ヒト血清培地を使用して研究した。200マイクログラム/cm2の薬剤量では、ヒト血清中24時間後、17-AAGの16%の放出が見られ、一方、400マイクログラム及び600マイクログラムトップコートの両方で6〜7%放出が見られた。従って、トップコートの倍加は、17-AAG放出に有意な効果を示したが、一方トップコートの三倍加は更なる効果を示さなかった。
PBSにおける17-AAGの可溶性は、60マイクログラム/mLであり、内皮細胞に関するIC50は、350 nMである。これらの研究は、20〜30%(w/w)の薬剤/ポリマー配合のステント当たり、少なくとも200マイクログラムの17-AAGの薬剤量を示唆している。
【0031】
実施例4
血清からの薬剤の固相抽出
血清実験からの薬剤アリコートを、3 mL Isolute HM-N固相抽出カラム(Argonaut; サンカルロス、カリフォルニア)のトップに添加することにより、固相抽出にかけた。5〜10分後、クロロホルム:イソプロパノール(95/5 v/v)10〜12mL、その後、酢酸エチル/イソプロパノール(95/5 v/v)4mLにより溶出した。全溶出液を濃縮し、残渣を再構成し、HPLC分析前に0.5ミクロンフィルターを通して濾過した。固相抽出物からの17-AAGの回収は88.7%であった。エポシロンDの回収は95〜98%であった。
【0032】
実施例5
ブタ血清における被覆ステントからの17-AAGの放出動態
スプレーコーティングにより、Unmounted Metronic Driver' 18 x 3.5 mmステントをMVPEA/17-AAGマトリックスポリマー材料で被覆した。三つのグループのステントをこの研究に使用した:(i)10% (w/w)薬物量の低用量群;これらはポリマー450マイクログラム、17-AAG 50マイクログラム、及びトップコート250マイクログラムを有し;(ii)30%(w/w)薬物量の高用量群;これらはポリマー150マイクログラム、17-AAG 150マイクログラム、及びトップコート250マイクログラムを有し;及び(iii)ポリマーのみ(700マイクログラム)で被覆したコントロール群。被覆ステントをガンマ照射により滅菌した。
【0033】
各群からの三つのステントを、滅菌ガラスバイアルに無菌的に置き、120rpmでの振盪により穏やかに攪拌しながら、37℃で滅菌ブタ血清5mLで処理した。血清全5mLを各バイアルから滅菌条件下、0.5、2、4、6、12及び24時間、その後2、3、5、7及び10日で、各バイアルから除去した。新鮮な血清をバイアルに加え、各時点後にインキュベーションを続けた。その時点のアリコートを、HPLCによる分析前に固相抽出(実施例4を参照されたい)にかけた。
これらの研究は、17-AAGが明らかな代謝産物と共にブタ血清に放出されたことを示した。
【0034】
実施例6
ヒト血清における17-AAGの放出動態
薬物量100 ug/cm2 (全17-AAG 71マイクログラムと等しい)と、トップコートなし又は210 μg、420 μg、又は640 μgのPEAトップコート(ベースコートと同じ)を有するPEA-17-AAGを片側に被覆したステンレススチールディスク(0.71 cm2)を、ヒト血清又はキモトリプシン溶液のいずれかに曝露させ、17-AAGを、実施例3に記載のように測定した。結果を表1に示す。

【0035】
キモトリプシン(0.4 mg/mL)に曝露したPEAポリマーで被覆したディスクは、ポリマーの分解による質量損失の上昇を示し、PEA分解は5日間で約14%、14日間で約30%であった。キモトリプシン溶液において5日後に、薬剤負荷ディスクは約55%を放出し、薬剤放出が薬剤拡散及びマトリックス腐食の組み合わせ効果を表すことを示した。
【0036】
本発明の利点及び品質は、前述の議論から自明と考えられる。本発明は、再狭窄を低減又は予防するために有用な方法、組成物、装置及び薬剤を提供するものである。さらに本発明は、内皮細胞上の平滑筋細胞に選択的な、再狭窄の低減又は予防に有用な方法、組成物、装置及び薬剤を提供する。従って、本発明は、ここに記載の現今の再狭窄処理方法論と比較して、望ましくない副作用を低減した再狭窄のための処置及び予防策を提供することが、薬理学及び医学分野の業者により理解されると考えられる。さらに、薬理学、医薬及び医療装置分野の業者は、明示的にここに記載されていない本発明の幾つかの変更態様が、それにもかかわらず発明により包含されることを理解すると考えられる。そのような変更態様の例としては、薬物送達用ポリマーの特定のコンビネーション、特定のステント、及び薬物送達の特定の方法が挙げられるが、それらに制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1A及び図1Bは、本実施例1に記載の方法を使用して吸光度により測定した、17アリルアミノゲルダナマイシン(「17-AAG」)に曝露した平滑筋細胞(「SMC」図1A)及びヒト臍静脈内皮細胞(「HUVEC」図1B)の、細胞生存度のプロットである。SMC及びHUVECをコントロール(◆)及び17-AAGに10ナノモル(「nM」、■)、100nM(△)、及び1,000nM(x)の濃度で曝露した。
【図2】図2A及び図2Bは、ここに記載した方法を使用して吸光度により測定した、17-[(2-ジメチルアミノ)エチルアミノ]ゲルダナマイシン(「17-DMAG」)に曝露した平滑筋細胞(「SMC」図2A)及びヒト臍静脈内皮細胞(「HUVEC」図2B)の、細胞生存度のプロットである。SMC及びHUVECをコントロール(◆)及び17-DMAGに10ナノモル(「nM」、■)、100nM(△)及び1,000nM(x)の濃度で曝露した。
【図3】図3A及び図3Bは、ここに記載した方法を使用して吸光度により測定した、KOS-862(エポシロンD)に曝露した平滑筋細胞(「SMC」図3A)及びヒト臍静脈内皮細胞(「HUVEC」図3B)の、細胞生存度のプロットである。SMC及びHUVECをコントロール(◆)及びエポシロンDに10ナノモル(「nM」、■)、100nM(△)、及び1,000nM(x)の濃度で曝露した。
【図4】図4は、SMCにおけるラパマイシン及び17-AAGの組み合わせに関するコンビネーションインデックスのプロットであり、相乗効果を示している。
【図5】図5は、SMCにおけるラパマイシン及びKOS862の組合せに関するコンビネーションインデックスのプロットであり、相乗効果を示している。
【図6】図6A及び図6Bは、17-AAGをラパマイシンと組み合わせることの相乗効果を示すプロットである。図6Aは、ラパマイシン(実線)、17-AAG(四角)、及びそれらの組み合わせ(ダイアモンド)の0〜120nM濃度について、吸光度(「OD」)により測定した場合のDLD-1細胞の生存度の変化を示している。図6Bは、ラパマイシン及び17-AAGの組み合わせについてのコンビネーションインデックスを示し、それは相乗効果を示している。
【図7】図7A及び図7Bは、17-AAGとラパマイシンの組み合わせの相乗効果を示すプロットである。図7Aは、ラパマイシン(実線)、KOS-862(エポシロンD)(四角)及びそれらの組み合わせ(ダイアモンド)の0〜120nM濃度について、吸光度(「OD」)により測定したDLD-1細胞の生存度の変化を示している。図7Bは、ラパマイシン及びKOS-862の組み合わせに関するコンビネーションインデックスを示し、それは相乗効果を示している。
【図8】図8は、様々なポリマーマトリックスからのエポシロンD(「KOS-862」)に関する放出動態を示している。エポシロンDは、約6マイクログラム/日の割合で、ポリ(ラクチド)から、また1.58マイクログラム/日でポリウレタンから放出される。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の薬剤を血管に送り、血管内の再狭窄を、その発生の程度を低減するか又は実質的に予防するために形成された医療装置であって、前記薬剤がエポシロンD、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシン、及び17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンからなる群より選ばれる前記医療装置。
【請求項2】
医療装置がステント又はポリマーラッパーである、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
薬剤がエポシロンDである、請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
薬剤が、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン(「17-AAG」)、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシゲルダナマイシン(「17-DMAG」)、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシン、及び17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンからなる群より選ばれる、請求項2に記載の医療装置。
【請求項5】
第一及び第二の薬剤を血管に送り、血管内の再狭窄を、その発生の程度を低減するか又は実質的に予防するために形成された医療装置であって、前記第一及び第二の薬剤がエポシロンD、ラパマイシン、ラパマイシン類似体、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)-エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシン、及び17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンからなる群より選ばれ、前記第一及び第二の薬剤が相乗的細胞毒性を示す、前記医療装置。
【請求項6】
医療装置がステント又はポリマーラッパーである、請求項5に記載の医療装置。
【請求項7】
第一の薬剤が、エポシロンD、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)-エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシン、及び17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンからなる群より選ばれ、第二の薬剤が、ラパマイシン又はラパマイシン類似体である、請求項6に記載の医療装置。
【請求項8】
第一の薬剤がエポシロンDであり、第二の薬剤がラパマイシン又はラパマイシン類似体である、請求項6に記載の医療装置。
【請求項9】
第一の薬剤が、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)-エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシン、及び17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンからなる群より選ばれ、第二の薬剤が、ラパマイシン又はラパマイシン類似体である、請求項6に記載の医療装置。
【請求項10】
相乗的細胞毒性を示す薬剤が17-AAG及びラパマイシンである、請求項5に記載の医療装置。
【請求項11】
相乗的細胞毒性を示す薬剤がエポシロンD及びラパマイシンである、請求項5に記載の医療装置。
【請求項12】
相乗的細胞毒性を示す薬剤が、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシゲルダナマイシン及びラパマイシンである、請求項5に記載の医療装置。
【請求項13】
ポリマー、及びエポシロンD、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)-エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシン、及び17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンからなる群より選ばれる一つ以上の細胞毒性薬剤を含む組成物。
【請求項14】
ポリマー、及び第一及び第二の薬剤を含む組成物であって、前記第一及び第二の薬剤が、エポシロンD、ラパマイシン、ラパマイシン類似体、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)-エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシン、及び17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンからなる群より選ばれ、前記第一及び第二の薬剤が相乗的細胞毒性を示す、前記組成物。
【請求項15】
第一の薬剤がエポシロンDであり、第二の薬剤がラパマイシン又はラパマイシン類似体である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
第一の薬剤が、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、17-[2-(ジメチルアミノ)-エチルアミノ]-17-デスメトキシ-11-O-メチルゲルダマイシン、及び17-アゼチジニル-17-デスメトキシゲルダナマイシンからなる群より選ばれ、第二の薬剤が、ラパマイシン又はラパマイシン類似体である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
第一の薬剤が、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシンであり、第二の薬剤がラパマイシン又はラパマイシン類似体である、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
第一の薬剤が17-[2-(ジメチルアミノ)エチルアミノ]-17-デスメトキシ-ゲルダナマイシンであり、第二の薬剤がラパマイシン又はラパマイシン類似体である、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
ポリマーが、ポリラクチド、光硬化性ポリ(エステル-アミド)及びポリウレタンからなる群より選ばれる、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
血管における再狭窄を、その発生の程度を低減するか又は実質的に予防するための方法であって、再狭窄の治療又は予防を要求する血管に、請求項13に記載の組成物を、そのような血管における再狭窄を実質的に低減するか又は実質的に予防するのに十分な量において送達させることを含む、前記方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−523235(P2006−523235A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509634(P2006−509634)
【出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/010212
【国際公開番号】WO2004/087045
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(504269110)コーザン バイオサイエンシス インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】