説明

再生コンベヤベルトの製造方法

【課題】コンベヤベルトを更生する場合、バフ掛け作業を行うことにより切削屑を含む粉状物の舞い上がりが不可避であり、その上、コンベヤベルトは長いので、バフ掛け作業をしなければならない作業工数上の問題があった。
【解決手段】コンベヤベルト15から刃物を用いた切除方法により摩耗したカバーゴム15aを切除して、台ベルト11にカバーゴム切除面11aを形成し、新たなカバーゴムとする加硫済み板ゴム13の、カバーゴム切除面11aに接合される面を、刃物を用いた切除方法と同一の方法によって切除して板ゴム接合面13aとし、カバーゴム切除面11aに、未加硫のゴム部材12を介して板ゴム接合面13aを、接合面をもって重ね合わせることで、台ベルト11に加硫済み板ゴム13を積層し、台ベルト11に加硫済み板ゴム13を積層したまま加硫成形して、台ベルト11と加硫済み板ゴム13とを一体化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、摩耗したカバーゴムを新しいカバーゴムに取り替えてコンベヤベルトを更生する、再生コンベヤベルトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉱石その他の被搬送物の搬送によってカバーゴムが摩耗した際、摩耗したカバーゴムを取り除いて新しいカバーゴムに取り替えることによりコンベヤベルトを更生する方法としては、例えば、特許文献1に記載された方法が知られている。
この方法は、摩耗したベルト表面のカバーゴム層をカッターで切削除去した後、バフロールで切削屑を除くとともに研削し、続いて、清掃用エアにより研削面の細片までを完全に吹き払い、そして、研削した面に、有機溶剤を含むゴムセメントなどを塗布ロールにより塗布し、次いで、補修用ゴム板巻きドラムから、切削した、ベルトのカバーゴム層と同一幅の補修用ゴム板をゴムセメント塗布面に載せ、最後に、加圧ロールによってそのゴム板を加圧接着することにより、コンベヤベルトを再生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01-150609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のこのコンベヤベルト再生方法にあっては、ゴムセメントなどを塗布する塗布面に対する、その接着剤の十分な接着力を確保するための凹凸面を形成するべく、摩耗したカバーゴム層の切削除去後に、台ベルトにバフ掛け作業を行うことが必要であることから、コンベヤベルトの更生に当たっての、バフ掛け作業に起因する切削屑を含む粉状物の舞い上がりが不可避であり、その上、コンベヤベルトは長いので、長時間バフ掛け作業をしなければならないという作業工数上の問題があった。
つまり、接着力の確保のために行うバフ掛け作業は、作業環境の悪化と併せて、ベルト再生作業の能率の低下を招いていた。
さらに、上記ゴムセメントは有機溶剤を含んでおり、環境面への影響が懸念されていることから、使用量の低減、削減が望まれている。
【0005】
この発明の目的は、摩耗したカバーゴム層を除去した後のバフ掛け作業、及び有機溶剤を含むゴムセメントの必要なしにコンベヤベルトを更生することができる、再生コンベヤベルトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明に係る再生コンベヤベルトの製造方法は、 搬送面を形成するカバーゴムが摩耗した場合、摩耗したカバーゴムの代わりに加硫済みの新たな板ゴムを用いてコンベヤベルトを更生する再生コンベヤベルトの製造方法において、コンベヤベルトに長手方向の張力を加えるとともに、カバーゴムに切り込ませた刃物をコンベヤベルトの幅方向に変位させながら、コンベヤベルト又は刃物をコンベヤベルトの長手方向に相対変位させて磨耗したカバーゴムを切除して、台ベルトに新たなカバーゴム切除面を形成し、次いで、新たなカバーゴムとする加硫済み板ゴムの、前記カバーゴム切除面に接合される面を、前記刃物を用いた切除方法と同一の方法によって切除してなる板ゴム接合面とし、前記カバーゴム切除面に、未加硫のゴム部材を介して前記板ゴムを、前記接合面をもって重ね合わせることで、前記台ベルトに前記加硫済み板ゴムを積層し、前記台ベルトに前記加硫済み板ゴムを積層したまま加硫成形して、前記台ベルトと前記加硫済み板ゴムとを未加硫ゴム部材の架橋反応によって一体化させることを特徴とする。
【0007】
ここで好ましくは、前記カバーゴム切除面及び前記板ゴム接合面のそれぞれを、前記刃物でできた微小な凹凸がベルト長手方向および幅方向に沿って形成される、適度の平面粗度、たとえば、Ra≧1μmの平坦面とする。
また、好ましくは、前記未加硫のゴム部材を、接着ゴム或いは粘着ゴムで構成する。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る再生コンベヤベルトの製造方法によれば、コンベヤベルトから、刃物を用いた切除方法により摩耗したカバーゴムを切除して、カバーゴム切除後の残余部分である台ベルトにカバーゴム切除面を形成し、新たなカバーゴムとする加硫済み板ゴムの、カバーゴム切除面に接合される面を、カバーゴムを切除したときの刃物を用いた切除方法と同一の方法によって、より好ましくは同一の切除条件で切除してなる板ゴム接合面とし、前記カバーゴム切除面に、未加硫のゴム部材を介して板ゴムを、前記接合面をもって重ね合わせることで、台ベルトに加硫済み板ゴムを積層し、この積層状態を維持したまま加硫成形して、台ベルトと加硫済み板ゴムを一体化させるので、摩耗したカバーゴムを除去した後のバフ掛け作業を必要とせずに、コンベヤベルトを更生して再生コンベヤベルトを製造することができる。
【0009】
従って、カバーゴムの切除面を研削等して所要の表面粗さを付与するバフ掛け作業は不要になり、コンベヤベルトの更生に際して、切削屑を含む粉状物が舞い上がることがないので、作業環境の悪化を招かず、バフ掛け作業に伴う再生作業の能率低下を有効に防ぐことができる。
また、この発明において、カバーゴム切除面及び板ゴム接合面のそれぞれを、前記刃物でできた微小な凹凸がベルト長手方向および幅方向に沿って形成される、適度の平面粗度からなる平滑面とした場合は、バフ掛け作業を行わなくても、バフ掛け作業を行った場合と同等の接着力を確保して、摩耗したカバーゴムを切除した切削面へのバフ掛け作業等の、切除面を研削等して表面粗さを付与する特別の作業を不要としてなお、未加硫ゴム部材の加硫に基づく、より十分な接着強度を確保することができる。
【0010】
そしてまた、未加硫のゴム部材を、所要の接着ゴム或いは粘着ゴムで構成したときは、新しいカバーゴムとして、今までコンベヤベルトに用いられていたカバーゴムとは種類の異なるゴムを用いる場合でも、新しいカバーゴムを台ベルトに所期した通りの強度で確実に接合させることができる。
さらに、所期した通りの強度で確実に接合させることが可能となるため、環境面で悪影響を及ぼす、有機溶剤を含むゴムセメントが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施の形態に係る再生コンベヤベルトの製造方法によって更生されたコンベヤベルトの構造を模式的に示す正面図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係る製造工程を示し、(a)〜(d)は、手順(その一)から手順(その四)の略線正面図である。
【図3】図2に示す摩耗したカバーゴムを、エンドレスに連続する刃物で切除する状態を示す要部斜視図であり、(a)は、刃物に対してコンベヤベルトをベルトの長手方向に変位させる場合を示す斜視図であり、(b)は、コンベヤベルトに対して刃物をコンベヤベルトの長手方向に変位させる場合を示す斜視図である。
【図4】図3の変形例であり、コンベヤベルトをその幅方向が垂直方向となるように配置して、摩耗したカバーゴムを板状の刃物で切除する状態を示す要部斜視図であり、(a)は、刃物に対してコンベヤベルトをベルトの長手方向に変位させる場合を示す斜視図であり、(b)は、コンベヤベルトに対して刃物をコンベヤベルトの長手方向に変位させる場合を示す斜視図である。
【図5】図3及び図4に示す刃物の刃先を誇張して示す要部斜視図であり、(a)は直線状の刃先を備える刃物の斜視図であり、(b)は鋸歯状の刃先を備える刃物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
この発明の方法に従って更生されたコンベヤベルトの構造を模式的に示す図1において、更生コンベヤベルト10は、鉱石その他の被搬送物の搬送によって、搬送面を形成するカバーゴムが摩耗した場合、摩耗したカバーゴムを取り除いて摩耗したカバーゴムの代わりに、加硫済みの新たな板ゴムを用いて更生した、コンベヤベルトであり、台ベルト11と、台ベルト11に未加硫のゴム部材を介して積層され、加硫成形によって未加硫ゴム部材を架橋させてなるゴム層12を介して台ベルト11に一体化された、加硫済み板ゴム13とを具えてなる。
【0013】
ここにおいて、台ベルト11は、コンベヤベルトの搬送面を形成するカバーゴムが摩耗した、更生対象となるコンベヤベルトから、刃物を用いた切除方法により摩耗したカバーゴムを切除したものであり、摩耗したカバーゴムを切除後の残余部分である。
この台ベルト11には、摩耗したカバーゴムを切除することによって、カバーゴム切除面が形成されており、また、コンベヤベルトの長手方向に沿って、ベルト幅の略全域に渡り、スチールコードや帆布等の芯体14が埋設配置されている。
未加硫のゴム部材は、台ベルト11と加硫済み板ゴム13の間に介装されて、加硫済み板ゴム13を台ベルト11に加硫接着させるものであり、例えば、シート状に形成された、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)をベースとする接着ゴム、或いは天然ゴム(NR)をベースとする粘着ゴムにて更生することができる。
【0014】
そして、加硫済み板ゴム13は、台ベルト11に一体化させられることにより、摩耗したカバーゴムの代わりに新たなカバーゴムとして機能する、予め加硫された板状のゴムであり、未加硫のゴム部材によって、たとえば台ベルト11に粘着させて、積層した後の加硫成形で台ベルト11に一体化される。
ところで、この加硫済み板ゴム13の、台ベルト11に形成されたカバーゴム切除面に接合される面には、摩耗したカバーゴムを切除した際の刃物を用いた切除方法と同一の方法によって加硫済み板ゴム13の一表面を切除することにより、板ゴム接合面が形成されている。
なお、芯体14の材質や太さ等、加硫済み板ゴム13の材質や厚さ等は、コンベヤベルトによって搬送される被搬送物の種類、コンベヤベルトの使用環境、コンベヤベルトの大きさ(ベルト幅やベルト長さ等)等に応じて、適宜選択することができる。
【0015】
このような更生コンベヤベルト10を製造する再生コンベヤベルトの製造方法を以下に説明する。
図2に示すように、更生コンベヤベルトの製造工程において、先ずは、図2(a)に示すように、再生対象コンベヤベルト15から摩耗したカバーゴム15aを、刃物によって切除して、芯体14を具える台ベルト11を形成する。
【0016】
この再生対象コンベヤベルト15は、図の下面側を、図示しないプーリやローラ等に巻き掛けられて、図の上面側に被搬送物を載置した状態で搬送を繰り返すことにより、搬送面となるカバーゴム15aの外表面に、例えば、局所的な凹みとなる摩耗部分が発生するので、はじめに、摩耗部分を含むカバーゴム15aの全体を再生対象コンベヤベルト15から切除する。
このカバーゴム15aの切除に際しては、例えば、再生対象コンベヤベルト15を、プーリ等から取り外すとともに引張力を作用させた状態とし、回転又は往復動する所要の刃物を用いて、再生対象コンベヤベルト15から摩耗部分を含むカバーゴム15aを切除する。
【0017】
カバーゴム15aのこの切除方法は、より具体的には、再生対象コンベヤベルト15にベルト長手方向の張力を加えた状態とし、摩耗部分を含むカバーゴム15aの切除位置(図2(a)の破線参照)に切り込ませた刃物16を、ベルト幅方向に自走させながら、再生対象コンベヤベルト15をベルトの長手方向に走行させる。
ここで刃物16は、例えばエンドレスに連続するものとすることができる。図3(a)に示すところでは、エンドレスの刃物16は、その内側に、間隔をおいて配置した2個のプーリRによって弛み無く張られていて、これらプーリRの片方或いは双方の回転駆動によって、一方向に連続して走行できるようになっている。一方、再生対象コンベヤベルト15は、図示しない巻き出し装置から巻き取り装置に向けて、このコンベヤベルト15の幅方向が水平方向となる水平姿勢として、引張力の作用下で繰り出し走行され、このとき刃物16は、その変位方向を再生対象コンベヤベルト15の幅方向とする水平姿勢で配置されている。
【0018】
上記のように再生対象コンベヤベルト15と刃物16を配置して、摩耗した部分を含むカバーゴム15aを切除するには、このコンベヤベルト15の長手方向に張力を加えておき、カバーゴム15aに刃物16を切り込ませて、その刃物16を再生対象コンベヤベルト15の幅方向に変位させながら(図中、矢印参照)、再生対象コンベヤベルト15を巻き出し装置から巻き取り装置に向けて繰り出し走行させる。この時再生対象コンベヤベルト15は、その長手方向に張力が加えられているので、略水平姿勢のままで送り出すことができるため、刃物16の直下に再生対象コンベヤベルト15を下方から支える支持体を設けても、設けなくてもよい。
【0019】
このようにして摩耗した部分を含むカバーゴム15aを切除することで、カバーゴム15aの切除残部の切除面11aは略水平でかつ適度の平面粗度の平滑面となり、この切除面11aには、微小な凹凸が再生対象コンベヤベルト15の長手方向に沿って形成される。なお、芯体14が再生対象コンベヤベルト15の厚み方向に多少波打って埋設されている場合があるため、カバーゴム15aの切除位置は、芯体14の外表面がカバーゴム切除面11aに露出しない位置であればよい。
また、図3(b)に示すところでは、図3(a)に示した再生対象コンベヤベルト15の繰り出し走行に代えて、刃物16を再生対象コンベヤベルト15の長手方向に変位させる(図中、矢印参照)ことで、摩耗した部分を含むカバーゴム15aを切除する。
【0020】
そしてまた、上記のエンドレスの刃物16に代えて、往復変位する板状の刃物17を採用することもできる。この場合、例えば図4(a)に示すように、再生対象コンベヤベルト15を、その幅方向が垂直方向となる垂直姿勢で配置するとともに、刃物17の往復変位方向が、再生対象コンベヤベルト15の幅方向となるように、刃物17を垂直姿勢で配置する。そして、再生対象コンベヤベルト15に、それの長手方向に張力を加えた状態で、刃物17の往復変位位置に対して、再生対象コンベヤベルト15を長手方向に送り出すことで、摩耗した部分を含むカバーゴム15aを切除する。またここでは、図4(b)に示すように、刃物17を、往復変位を伴って再生対象コンベヤベルト15の長手方向に変位させて、このカバーゴム15aを切除することもできる。
【0021】
ところで、刃物16,17の刃先の形状を、図5(a)に示すように略直線状とした場合は、カバーゴム15aの切除残部の切除面をより平滑にできるとともに、切粉の発生を有効に抑えることができる。一方、刃物16,17の刃先の形状を、図5(b)に示すように鋸歯状にすることも可能であり、この場合は切粉が多少発生するものの、カバーゴム15aの切除残部の切除面に形成される凹凸をより大きくすることができるので、カバーゴム用の加硫済み板ゴム13と、カバーゴム15aの切除残部との加硫接着を、より強固にすることができる。
【0022】
なお、図3(a)、(b)に示すところにおいて、再生対象コンベヤベルト15と刃物16を垂直姿勢としてもよいし、図4(a)、(b)に示すところにおいて、再生対象コンベヤベルト15と刃物17を水平姿勢としてもよく、これらの姿勢は作業性や他の装置の配置等に応じて適宜選択することができる。
このようにして、再生対象コンベヤベルト15から、摩耗部分を含むカバーゴム15aを切除することにより、芯体14を具えた台ベルト11が残り、この台ベルト11には、切除後の露出面となるカバーゴム切除面11aが形成される。このカバーゴム切除面11aは、略水平で適度の平面粗度、たとえばRa≧1μmの平坦面となり、この平坦面には、刃物でできた微小な凹凸がベルト長手方向および幅方向に沿って形成されている。
【0023】
その後は、加硫済み板ゴム13の、台ベルト11のカバーゴム切除面11aに接合する接合側の表層を、図2(b)に示すように、摩耗部分を含むカバーゴム15aを切除した刃物を用いた、その切除方法と同一の方法で、より好ましくは、同一の切除条件の下で切除する。
つまり、加硫済み板ゴム13に対し、エンドレス走行、回転又は往復動する刃物を板ゴム13の幅方向に変位させつつ、該板ゴム13又は刃物を、板ゴム13の長手方向に相対変位させて、加硫済み板ゴム13の接合側の表層を薄く切除し、板ゴム接合面13aを形成する。
【0024】
これにより、板ゴム接合面13aは、カバーゴム切除面11aと同様の形状及び状態、即ち、刃物でできた微小な凹凸が板ゴム13の長手方向および幅方向に沿って形成されている、略水平で適度の平面粗度からなる平坦面となる。この板ゴム接合面13aは、台ベルト11のカバーゴム切除面11aに加硫済み板ゴム13を接合するときの接合面となる。
【0025】
次いで、図2(c)に示すように、台ベルト11のカバーゴム切除面11a上に、未加硫のゴム部材12aを配置する。未加硫のゴム部材12aを、接着ゴムで構成した場合は、カバーゴム切除面11aに接着ゴムが載置された状態になり、粘着ゴムで構成した場合は、カバーゴム切除面11aに粘着ゴムが貼着された状態になる。
【0026】
また、台ベルト11の、未加硫のゴム部材12aが配置されたカバーゴム切除面11a側に、図2(d)に示すように、板ゴム接合面13aを対向させた状態で加硫済み板ゴム13を載置し、カバーゴム切除面11aに、未加硫のゴム部材12aを介して加硫済み板ゴム13を重ね合わせた状態にする。
これにより、台ベルト11と加硫済み板ゴム13は、相互に対向するカバーゴム切除面11aと板ゴム接合面13aとの間に未加硫のゴム部材12aを挟み込んで、台ベルト11に加硫済み板ゴム13を積層した状態になる。
【0027】
さらには、台ベルト11に加硫済み板ゴム13を積層した状態のまま、加熱加圧下で加硫成形することにより、台ベルト11と加硫済み板ゴム13は、介在させた未加硫のゴム部材12aの架橋反応によって積層状態で一体化する。
この場合、台ベルト11のカバーゴム切除面11a及び、加硫済み板ゴム13の板ゴム接合面13aのそれぞれには、長手方向および幅方向に沿って微小の同等凹凸が形成されているので、この凹凸に未加硫のゴム部材12aが入り込むことに基づき、カバーゴム切除面11aと板ゴム接合面13aはゴム層12によって強固に接着されることになる。
これらのことによって、摩耗したカバーゴムの代わりに加硫済み板ゴム13を有する更生コンベヤベルト10(図1参照)が製造され、以後は、加硫済み板ゴム13が新しいカバーゴムとして機能することになる。
【0028】
ところで、台ベルト11及び加硫済み板ゴム13のそれぞれは予め加硫されていることから、台ベルト11と加硫済み板ゴム13との加硫接着に当たって、再び加硫されることになるが、コンベヤベルトを更正するに当たっては、コンベヤベルトがこれまで加硫された回数や、コンベヤベルトのゴムの物性等の調査を行い、加硫条件を調整した上で、その加硫接着を行うことで、コンベヤベルトの過度の加硫による性能の低下を抑えることができる。
なお、台ベルト11に加硫済み板ゴム13を積層した後、それらを直ちに加硫成形せずに保管する場合は、積層状態で台ベルト11に加硫済み板ゴム13を圧着すればよい。このように、ただ重ね合わせるだけではなく、圧力をかけることで密着度が増し、部材同士が剥がれ難く、ずれ難くなる効果がある。
【0029】
このように、この発明に係る再生コンベヤベルトの製造方法によれば、再生対象コンベヤベルト15から摩耗部分を含むカバーゴム15aを切除して形成した、カバーゴム切除面11aを有する台ベルト11に、未加硫のゴム部材12aを用いて加硫済み板ゴム13を接合することにより、摩耗したカバーゴムを取り除いて新しいカバーゴムに取り替え更生したコンベヤベルト10を製造することができるが、製造に際して、摩耗カバーゴムの切削面等へのバフ掛け作業を全く不要にすることができる。
【0030】
つまり、台ベルト11に新しいカバーゴムを接着する接着部材として接着剤を用いる従来技術とは、接着剤を塗布する接着面に対する接着剤の十分な接着力を確保するための凹凸を形成するべく、摩耗したカバーゴム層の切削除去後にバフ掛け作業を行うことが必要であったが、この発明では、接着面となるカバーゴム切除面11aと板ゴム接合面13aとのそれぞれは、同一の刃物を用いた同一の切除方法によって形成されて、ともに、適度の平面粗度からなる平坦面になるので、バフ掛け作業を行わなくても、バフ掛け作業を行った場合と略同等の、それらの両面に対する、ゴム層12の接着力を確保することができる。
【0031】
従って、摩耗したカバーゴム層を切除した切削面に対する、切削屑を含む粉状物の舞い上がりが不可避であったバフ掛け作業を行うことが不要となり、コンベヤベルトを更生する場合の、作業環境の低下を招かず、コンベヤベルトの再生作業の能率の低下を来たすこともない。更に、再生することを前提とした構成部材の追加、例えば、ベルトカバーゴム内にあらかじめ再生を前提とした剥離しやすくするための部材(帆布など)を挿入しておくこと等、も必要としない。
【0032】
また、摩耗部分を含むカバーゴム15aに代えて、既に加硫処理された加硫済み板ゴム13を用いて更生コンベヤベルト10を製造するので、未加硫の生カバーゴムを用いた場合に不可避であった生カバーゴムの日限管理もまた不要とすることができる。
また、台ベルト11と加硫済み板ゴム13の接合に、接着ゴム或いは粘着ゴムを使用するときは、加硫済み板ゴム13として、台ベルト11に用いられているゴムとは種類の異なるゴムを用いた場合でも、加硫済み板ゴム13を台ベルト11に確実に接合することができる。特に、粘着ゴムを使用した場合は、台ベルト11に粘着ゴムを介して加硫済み板ゴム13を積層することで、粘着ゴムに固有の粘着力によってその積層状態を十分に維持することができるので、未加硫状態のままでも、相互の位置ずれなしに保管することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 再生コンベヤベルト
11 台ベルト
11a カバーゴム切除面
12 ゴム層
12a 未加硫のゴム部材
13 加硫済みカバーゴム
13a 板ゴム接合面
14 芯体
15 再生対象コンベヤベルト
15a 摩耗部分を含むカバーゴム
16,17 刃物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面を形成するカバーゴムが摩耗した場合、摩耗したカバーゴムの代わりに加硫済みの新たな板ゴムを用いてコンベヤベルトを更生する再生コンベヤベルトの製造方法において、
コンベヤベルトに長手方向の張力を加えるとともに、カバーゴムに切り込ませた刃物をコンベヤベルトの幅方向に変位させながら、コンベヤベルト又は刃物をコンベヤベルトの長手方向に相対変位させて磨耗したカバーゴムを切除して、台ベルトに新たなカバーゴム切除面を形成し、
次いで、新たなカバーゴムとする加硫済み板ゴムの、前記カバーゴム切除面に接合される面を、前記刃物を用いた切除方法と同一の方法によって切除してなる板ゴム接合面とし、
前記カバーゴム切除面に、未加硫のゴム部材を介して前記板ゴムを、前記接合面をもって重ね合わせることで、前記台ベルトに前記加硫済み板ゴムを積層し、
前記台ベルトに前記加硫済み板ゴムを積層したまま加硫成形して、前記台ベルトと前記加硫済み板ゴムとを、未加硫のゴム部材の架橋反応によって一体化させる
ことを特徴とする再生コンベヤベルトの製造方法。
【請求項2】
前記カバーゴム切除面及び前記板ゴム接合面のそれぞれを、前記刃物でできた微小な凹凸がベルト長手方向および幅方向に沿って形成されている、適度の平面粗度からなる平滑面であることを特徴とする請求項1に記載の再生コンベヤベルトの製造方法。
【請求項3】
前記未加硫のゴム部材を、接着ゴム或いは粘着ゴムで構成することを特徴とする請求項1または2に記載の再生コンベヤベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144324(P2012−144324A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3374(P2011−3374)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】