説明

冷凍ミクロトーム及び顕微鏡観察用薄片の製造法

【課題】冷凍アーティファクツをできるだけ避けることができ、組織試料の取り扱いが容易な、冷凍ミクロトームと組織試料の顕微鏡観察用薄片の製造方法を提供する。
【解決手段】組織試料(60)の顕微鏡観察用の薄片を製造するための冷凍ミクロトーム(10)であって、該組織試料を冷凍するための冷却装置(24、34、36、38、40、42、46、48、50、52)、冷凍した該組織試料を切断する切断装置(26)、ならびに内部に該切断装置及び、該冷却装置の少なくとも一部、が配置されている作業用区画(20)を含む。該作業用区画内に配置された該冷却装置の一部に冷却液(70)を含み、それに該組織試料を挿入して冷凍する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の記載)
本願は、2009年4月17日出願に係るドイツ特許出願DE102009017848.1の優先権を主張するものであり、当該出願の全記載内容は引用をもって本書に組み込み記載されている。
本発明は、冷凍ミクロトーム及び組織試料の顕微鏡観察用薄片の製造法に関する。特に本発明は、組織試料を冷凍する冷却装置、冷凍した組織試料を切断する切断装置ならびに切断装置及び、冷却装置の少なくとも一部が配置されている作業用区画を含む冷凍ミクロトームに関する。
【背景技術】
【0002】
前述のようなタイプの冷凍ミクロトームにより、組織試料から薄片化された試料が製造され、診断のために顕微鏡により観察される。このため、組織試料は冷却装置(ないし冷凍機とも称する)によりまず冷凍され、次に切断装置により切断される。冷却装置と切断装置はともに冷凍ミクロトームの作業用区画に配置される。
【0003】
冷却装置は通常、冷凍リブを含み、それに組織試料を保持するスライド(複数)が取り付けられる。このタイプの試料冷却は、冷凍処理の間に細胞内及び細胞外の水が結晶化し、組織内部に長い氷の結晶を成長させる。これは組織の細胞及び細胞結合構造に孔を開け、組織学的な悪影響を与える。このような組織の損傷は、冷凍アーティファクツ(Gefrierartefakte)ともいわれる。この冷凍アーティファクツの悪影響としては、例えば損傷した細胞から内因性酵素が放出され、それがRNA調製の際に活性化し、調製に用いる基材が劣化することである。これにより試料の質が低下し、そのため信頼性の高い診断が困難となる。
【0004】
冷凍アーティファクツを防止するため、組織試料を外部で、即ちミクロトームの外部で、液体窒素又は液体窒素で冷却されたイソペンタンで直接冷凍することが代替的に提案されている。しかし、液体窒素を用いることは複雑で高価である。さらに、ミクロトームの外部で冷凍することは、組織試料を混同する恐れがある。
【0005】
先行文献としてUS6615592B2が挙げられる。これには、組織試料を冷凍するため、組織試料の上に冷却液を導く冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US6615592B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、冷凍アーティファクツをできるだけ避けつつ、組織試料の取り扱いが容易な、組織試料の顕微鏡観察用薄片の製造方法とともに、上記のタイプの冷凍ミクロトームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、請求項1の主題に係る冷凍ミクロトームにより解決される。即ち、組織試料の顕微鏡観察用の薄片を製造するための冷凍ミクロトームであって、該組織試料を冷凍するための冷却装置、冷凍した該組織試料を切断するための切断装置、ならびに内部に該切断装置及び、該冷却装置の少なくとも一部、が配置されている作業用区画(Arbeitskammer)を含む。該冷却装置は、該作業用区画内に配置される、該組織試料を挿入(浸漬)して冷凍するための冷却液を受容するタンクを含み、該冷却液で冷凍した該組織試料を、冷却した洗浄液で洗浄するための洗浄装置が該作業用区画内に配置されている。(実施態様1)
【0009】
本発明の更なる視点において、請求項11により、顕微鏡観察のための組織試料の薄片試料の製造方法が提供される。即ち、顕微鏡観察用の薄片の製造方法であって、冷凍ミクロトーム内に冷却液を配置する工程と、該組織試料を冷凍するために該冷却液中に挿入し、冷凍された該組織試料を該冷凍ミクロトームの切断装置で切断する工程と、を含み、該冷凍された組織試料を切断する前に該組織試料を洗浄するための洗浄液を、該冷凍ミクロトーム内に備える。(実施態様11)
なお、特許請求の範囲に記載した図面参照符号は、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、最新の発見に基づき、冷凍アーティファクツをほとんど発生させず、組織試料を冷凍ミクロトーム内部で冷凍できる冷却液の統合を提供するものである。冷却液と切断装置の双方が冷凍ミクロトームの作業用区画(ないしチャンバ)内に合わせて配置されるので、組織試料の薄片化のための取り扱いが容易となることが保証される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施態様1において、前記冷却液は、前記組織試料を冷凍するために、概略、−60℃〜0℃の温度を有することが好ましい。(実施態様2)
前記冷却液は、概略、1.6〜3.5kJ/kg・Kの比熱を有することが好ましい。(実施態様3)
前記冷却装置は、前記冷却液を冷却するための圧縮冷凍機を含むことが好ましい。(実施態様4)
前記圧縮冷凍機は、前記タンク内に配置された蒸発器を含むことが好ましい。(実施態様5)
前記圧縮冷凍機は、前記作業用区画内であって、前記タンク外に配置された、さらに別の蒸発器を含むことが好ましい。(実施態様6)
前記作業用区画を上部に配置し、前記圧縮冷凍機の一部、特に圧縮機を下部に配置した、筐体を含むことが好ましい。(実施態様7)
前記冷却装置は、前記冷却液を貯蔵する貯蔵容器と、該貯蔵容器に貯蔵される該冷却液を冷却するための冷却システムと、該冷却液を該貯蔵容器から前記タンクに送り込み、そして該タンクから該貯蔵容器へ戻す循環ポンプとを備える循環流装置を含むことが好ましい。(実施態様8)
前記洗浄装置は洗浄タンクを含み、該洗浄タンクは冷却された洗浄液を含み、前記作業用区画内に配置された前記冷却装置の部材の近傍に配置されていることが好ましい。(実施態様9)
前記洗浄液の温度は、前記冷却液の温度とほぼ同じ温度に調節されることが好ましい。(実施態様10)
また、実施態様11において、前記組織試料を、前記冷却液中に挿入する前に保護カバーで覆う工程をさらに含むことが好ましい。(実施態様12)
前記組織試料を、前記保護カバーとともに切断することが好ましい。(実施態様13)
各前記組織試料を、前記冷却液中に挿入する前に保持装置に取付ける工程と、該組織試料を該保持装置とともに該冷却液中に挿入する工程と、冷凍後に該冷却液から取り出す工程と、を含むことが好ましい。(実施態様14)
前記組織試料を冷凍するための前記冷却液の温度が、概略、−60℃〜0℃の範囲で選択されることが好ましい。(実施態様15)
前記冷却液の比熱は、概略、1.6〜3.5kJ/kg・Kの範囲で選択されることが好ましい。(実施態様16)
【0012】
組織試料を冷凍させるため、冷却液は概略、−60℃〜0℃の範囲にあることが好ましい。さらに比熱が概略、1.6〜3.5kJ/kg・Kの範囲にあることが好ましい。このような冷却液を用いることにより、組織を冷凍した際に細胞内及び細胞外の水分は小さな球状の氷の結晶しか生成せず、細胞や細胞壁を損傷しないことが判明した。したがって、冷凍時にも元の組織形態の大部分が保存される。このように形態が保存されることにより、病理学者のいわゆる即時的な薄片診断が促進される。細胞と細胞間結合構造の大部分が保存されるので、上述の内因性劣化酵素がほとんど放出されず、非常に不安定なmRNA分子を比較的高い濃度で抽出することができる。このような情報分子は、例えば癌の診断に関して重要性を増しているので、上述のような冷却液の使用により、診断において大きな進展を約束するものである。
【0013】
冷却装置は、冷却液と組織試料を収容するための、作業用区画内に配置されたタンクを含むことが好ましい。作業用区画内に配置されたこのタンクは、本発明に係る冷凍ミクロトームの種々の実施形態を実現できる。特に好ましく簡単な実施形態において、冷却液は例えば外部で、即ちミクロトームの外部で冷却され、そしてタンクに導入される。しかし取り扱いを容易にするため、冷却液が冷凍ミクロトーム内部で冷却されることが有利である。
【0014】
このため、冷却装置は、例えば冷却液を冷却するための圧縮冷凍機を備えることができる。これは圧縮/膨張要素と熱交換器とにより、熱力学的サイクルを行うものである。
【0015】
圧縮冷凍機は、タンク内に蒸発器を備えることが好ましい。この蒸発器はチューブで構成され、内部には例えばR404aのような冷媒を蒸発させ、タンク内のチューブを取り囲む冷却液の熱を吸収する。
【0016】
さらに好ましい実施形態において、圧縮冷凍機はさらに別の蒸発器を備える。これはタンクの外側の、作業用区画の内部に設けられる。この別の蒸発器は、例えば作業用区画内の空気を冷却するように構成される。
【0017】
冷凍ミクロトームは、冷却装置が、冷却液を貯蔵する貯蔵容器と、貯蔵容器に貯蔵される冷却液を冷却するための冷却システムと、冷却液を貯蔵容器からタンクに送り込み、そしてタンクから貯蔵容器へ戻す循環ポンプとを備える循環流装置を含むように構成することができる。この循環流装置は上述の圧縮冷凍機の代替として、或いは追加として備えることができる。後者の場合、冷却システムは例えば貯蔵容器に貯蔵された冷却液を予備冷却し、圧縮冷凍機はタンク内の冷却液を冷却するために用いる。
【0018】
冷凍ミクロトームは、冷却液で冷却された組織試料を冷却した洗浄液で洗浄するための洗浄装置を作業用区画内に有する。もしも組織試料が冷却液との相互汚染を防止するための保護カバーで覆われている場合は、組織試料を保護カバーとともに切断装置に移送する前に、保護カバーに付着した冷却液を洗浄装置で除去することができる。
【0019】
洗浄装置は、洗浄液の入った洗浄タンクを、作業用区画内の冷却装置の部材の近傍に配置することが好ましい。洗浄タンクをこのように配置することで、組織試料の保護カバーに付着した冷却液で切断装置が汚染されるのを防ぐことができる。洗浄液として、例えば希釈した、或いは希釈しないエタノール又はイソプロパノールを用いることができる。
【0020】
さらに洗浄液も冷却することが好ましい。そのため、洗浄装置と関連させた独立した冷却装置を、作業用区画内に配置することができる。代替的に、冷却液を冷却するための冷却装置を、洗浄液を冷却するために用いることができる。圧縮冷凍機を用いる場合は、例えば洗浄タンクに追加の蒸発器を設けることで可能である。
【0021】
冷却した洗浄液の温度は、冷却液とおよそ同じ温度であることが好ましい。それにより、組織試料が洗浄中であっても低温を保つことができ、冷凍アーティファクツを防止するために最適である。特に、組織試料が洗浄中に溶けて切断工程に支障が出る事態が避けられる。
【0022】
組織試料は、冷却液中に挿入する前に保護カバーで覆うことが好ましい。保護カバーとしては、例えばプラスチック製のホース(チューブ)状のものが用いられる。保護カバーにより、組織試料が冷却液と直接接触することが避けられる。よって冷却液を介した汚染を防止することができる。
【0023】
組織試料は、冷却液中に挿入される前に覆った保護カバーとともに切断することができる。これにより、迅速に処理方法を遂行することができる。
【0024】
個々の組織試料を冷却液に挿入する前に保持装置に取り付け、そして保持装置とともに冷却液に挿入し、冷凍後に保持装置とともに冷却液から取り出すことにより、この方法をさらに迅速に行うことができる。
【実施例】
【0025】
以下に図面を参照しつつ、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施例に係る冷凍ミクロトーム10の斜視図である。冷凍ミクロトーム10は、筐体12の上にコンソール14が載置されている。ボタンと表示要素を含むコントロールパネル16、18がコンソール14の上に配置されており、オペレータはこのボタンと表示要素によって冷凍ミクロトーム10を操作することができる。
【0027】
冷凍ミクロトーム10には、可動カバー22を持つ作業用区画20を有する。図1では、可動カバー22は収納されており、作業用区画20は開放されている。作業用区画20には、タンク24と切断装置26とが配置されている。冷凍ミクロトーム10が稼動する際には、タンク24には図1には図示しない冷却液が入れられる。組織試料は、温度範囲が概略、−60℃〜0℃である冷却液中に挿入される。冷却液により、組織試料は冷凍され、固化される。そして、固化された組織試料から、切断装置26により薄片試料が製造される。
【0028】
切断装置26は、クランプ装置28とクランプ装置28に面したナイフ(図1には図示せず)を含む。クランプ装置28には、組織試料を保持するスライドを取り付けることができる。クランプ装置28は、それに面したナイフに近づけることができる。クランプ装置28をナイフに近づけて、組織試料とともに上下に動かすことにより、薄片試料が冷凍した組織試料からかんなで削るように切り取られる。このクランプ装置28の上下動は、ハンドホイール30により手動で行われるか、モータ駆動で行うことができる。
【0029】
図1では、凝縮液のための集液タンク32がさらに筐体12の前面に配置されている。
【0030】
図2に、図1に係る冷凍ミクロトーム10を再度示した。
【0031】
図2には、冷凍ミクロトーム10のいくつかの部品を、特に筐体12の側面とコンソールを省略することによって第1の実施例に係る冷却装置を示している。
【0032】
この冷却装置は、図1に示すタンク22から離れた位置に、圧縮機34、集液乾燥器36、凝縮器38、管状蒸発器40、薄層(フィン式)蒸発器(Lamellenverdampfer)42及び壁型蒸発器を含む。壁型蒸発器は作業用区画20の側壁44内に配置されているため、図2では見えない。
【0033】
圧縮機34、集液乾燥器36及び凝縮器38は、筐体12の下部で作業用区画20の下に配置されている。管状蒸発器40はタンク24の内部に配置されている。薄層蒸発器42は、作業用区画の内部で、タンク24の外部に配置されている。冷却装置は、チューブ、温度センサ、膨張バルブ等の他の部品を有するが、図2では図示されていない。
【0034】
図3には、冷凍ミクロトーム10に用いられる冷却装置の冷凍サイクルを示す。
【0035】
この冷却装置は、例えばR404aのような冷媒によって作動する。冷凍サイクル内での圧縮比は、冷媒の蒸発温度が概略、−40℃〜−50℃の間になるように選択される。
【0036】
圧縮機34の内部で、蒸気の状態で存在する冷媒は圧縮され、加熱される。熱い冷媒の蒸気は次に凝縮器38で冷却され、凝縮する。続いて液体状の冷媒は集液乾燥器36に流入する。集液乾燥器36は、一つには液状の冷却剤を集めて貯蔵する役目を持つ。また一方では、冷凍サイクル内の種々の機器、例えば管状蒸発器40や薄層蒸発器42で、氷結しないように液状冷媒を脱湿する役目を持つ。
【0037】
液状冷媒はここで、一方で第1の膨張バルブ46を通って、作業用区画20内でタンク24の外部に配置された薄層蒸発器42に流入し、また一方で第2の膨張バルブ48を通ってタンク24内に配置された管状蒸発器40に流入し、作業用区画20の側壁44に配置された壁型蒸発器(図3では符号50で示した)に流入する。薄層蒸発器42が配置された冷凍サイクルの枝分かれ部に、第1の過熱(overheating)センサ52が配置されている。対応して、第2の過熱センサ54が、管状蒸発器40と壁型蒸発器50が配置された冷凍サイクルの枝分かれ部に配置されている。
【0038】
膨張バルブ46、48は、その内部を流れる液体冷媒の圧力を低下させる。蒸発器40、42、50の内部で冷媒が圧力低下のため蒸発し、各蒸発器40、42、50が配置された周囲の媒体から蒸発熱を吸収する。こうして、タンク24内で管状蒸発器40を取り囲む冷却液は、作業用区画20内の薄層蒸発器42と壁型蒸発器50を取り囲む空気とともに冷却される。
【0039】
最終的に冷媒蒸気は圧縮機34に集められ、再び圧縮され、冷凍サイクルが再開される。
【0040】
図4は、作業用区画20に洗浄装置をさらに有する第2の実施例を示す。この洗浄装置を別にすれば、実施例2は実施例1と同じである。
【0041】
第2の実施例において、洗浄装置は単に洗浄タンク(槽)56として示され、例えばエタノールのような洗浄液を洗浄タンク56に入れておき、冷却液中で冷凍され、タンク24から取り出された組織試料を洗浄することができる。
【0042】
図5に示す平面図において、洗浄タンク56は作業用区画20内のタンク24と切断装置26との間に配置されている。特に洗浄タンク56はタンク24のすぐ隣に配置されている。これにより、オペレータが冷凍した組織試料をタンク24から取り出しても、作業用区画20を冷却液で汚染されないように確保できる。
【0043】
洗浄タンク56内の洗浄液は冷却されることが好ましい。これは例えば別の蒸発器(図4、5には図示せず)を用いることで達成できる。このような蒸発器は、例えばタンク24内に配置された管状蒸発器40にならって構成することができる。洗浄液の冷却温度は、本実施例では冷却液の温度と同じである。
【0044】
上述の実施例では、冷却液は単にタンク24に入れただけである。しかしこの単純な構成は単なる例示として理解される。つまり、冷却液を筐体12内部に設けた貯蔵タンクから、供給管を介してタンク24に供給し、そして回収管を介してタンク24から貯蔵タンクに回収する循環移送をすることも考えられる。このため、循環ポンプを冷凍ミクロトーム10内に設置し、タンク24に冷却液を供給し、回収することができる。
【0045】
同様のサイクルを洗浄タンク56の洗浄液についても行うことができる。この場合、洗浄液の貯蔵タンク、循環ポンプ、洗浄タンク56のための供給管、回収管を冷凍ミクロトーム10内に設ける。
【0046】
図6(A)〜(C)を参照すると、どのようにして組織試料の顕微鏡観察用の薄片試料が冷凍ミクロトーム10により製造されるかを、一例として示している。
【0047】
図6(A)に示すように、最初に60で示す組織試料が、本実施例では単にプラスチックチューブとして構成される保護カバー62の中に入れられる。保護カバー62は、図6(B)に示すように、保持装置64に内部の組織試料60とともにクランプされる。ここで、保護カバー62は、例えば最初開いていた両端部を、それぞれペアとしたクランプアーム66、68で圧接して閉じることができる。クランプアーム66、68は保持装置64に形成されており、図6(B),(C)の側面図ではクランプアーム66、68のそれぞれ片方ずつが図示されている。図6(B),(C)ではこれが模式的に示されている。
【0048】
図6(C)に示したように、保持装置64は次に保護カバー62とともに、冷却液70を含むタンク24に入れられる。
【0049】
本実施例では、保持装置64は単にオペレータによりタンク24に入れられ、取り出されるように構成される。そのため、保持装置64はタンク24の底部に置くことができるように脚72を有する。さらに保持装置64は、タンク24に保持装置64を入れた際に、冷却液70から突き出るように取手74を有する。オペレータは取手74により、保持装置64を冷却液70から取り出すことができる。
【0050】
組織試料60が冷却液70内で冷凍されると、それは保持装置64とともに切断装置26に供給され、所望の薄片が製造される。
【0051】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施例に係る冷凍ミクロトームの斜視図である。
【図2】図1に示す冷凍ミクロトームの斜視図であり、一部を除去して示した。
【図3】図1、図2の冷凍ミクロトームに装備された冷凍サイクルを示す図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る冷凍ミクロトームの斜視図である。
【図5】図4に示す冷凍ミクロトームの平面図である。
【図6A】組織試料を覆って冷却液に挿入する説明模式図である。
【図6B】組織試料を覆って冷却液に挿入する説明模式図である。
【図6C】組織試料を覆って冷却液に挿入する説明模式図である。
【符号の説明】
【0053】
10 冷凍ミクロトーム
12 筐体
14 コンソール
16、18 コントロールパネル
20 作業用区画
22 カバー
24 タンク
26 切断装置
28 クランプ装置
30 ハンドホイール
32 集液タンク
34 圧縮機
36 集液乾燥器
38 凝縮器
40 管状蒸発器
42 薄層(フィン式)蒸発器
44 側壁
46、48 膨張バルブ
50 壁型蒸発器
52、54 過熱センサ
56 洗浄タンク
60 組織試料
62 保護カバー
64 保持装置
66、68 クランプアーム
70 冷却液
72 脚
74 取手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料(60)の顕微鏡観察用の薄片を製造するための冷凍ミクロトーム(10)であって、
該組織試料(60)を冷凍するための冷却装置(24、34、36、38、40、42、46、48、50、52)、冷凍した該組織試料(60)を切断するための切断装置(26)、ならびに内部に該切断装置(26)及び、該冷却装置(24、34、36、38、40、42、46、48、50、52)の少なくとも一部、が配置されている作業用区画(20)を含み、
該冷却装置(24、34、36、38、40、42、46、48、50、52)は、該作業用区画(20)内に配置される、該組織試料(60)を挿入して冷凍するための冷却液(70)を受容するタンク(24)を含み、
該冷却液(70)で冷凍した該組織試料(60)を、冷却した洗浄液で洗浄するための洗浄装置(56)が該作業用区画(20)内に配置されている、ことを特徴とする、冷凍ミクロトーム。
【請求項2】
前記冷却液(70)は、前記組織試料(60)を冷凍するために、−60℃〜0℃の温度を有することを特徴とする、請求項1に記載の冷凍ミクロトーム(10)。
【請求項3】
前記冷却液(70)は、1.6〜3.5kJ/kg・Kの比熱を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷凍ミクロトーム(10)。
【請求項4】
前記冷却装置(24、34、36、38、40、42、46、48、50、52)は、前記冷却液(70)を冷却するための圧縮冷凍機を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の冷凍ミクロトーム(10)。
【請求項5】
前記圧縮冷凍機は、前記タンク(24)内に配置された蒸発器(40)を含むことを特徴とする、請求項4に記載の冷凍ミクロトーム(10)。
【請求項6】
前記圧縮冷凍機は、前記作業用区画(20)内であって、前記タンク(24)外に配置された、さらに別の蒸発器(42、50)を含むことを特徴とする、請求項5に記載の冷凍ミクロトーム(10)。
【請求項7】
前記作業用区画(20)を上部に配置し、前記圧縮冷凍機の一部を下部に配置した、筐体(12)を含むことを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一に記載の冷凍ミクロトーム(10)。
【請求項8】
前記冷却装置は、前記冷却液(70)を貯蔵する貯蔵容器と、該貯蔵容器に貯蔵される該冷却液(70)を冷却するための冷却システムと、該冷却液(70)を該貯蔵容器から前記タンク(24)に送り込み、そして該タンク(24)から該貯蔵容器へ戻す循環ポンプとを備える循環流装置を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の冷凍ミクロトーム(10)。
【請求項9】
前記洗浄装置は洗浄タンク(56)を含み、該洗浄タンクは冷却された洗浄液を含み、前記作業用区画(20)内に配置された前記冷却装置の部材の近傍に配置されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に記載の冷凍ミクロトーム(10)。
【請求項10】
前記洗浄液の温度は、前記冷却液(70)の温度とほぼ同じ温度に調節されることを特徴とする、請求項9に記載の冷凍ミクロトーム(10)。
【請求項11】
顕微鏡観察用の薄片(60)の製造方法であって、
冷凍ミクロトーム(10)内に冷却液(70)を配置する工程と、
該組織試料(60)を冷凍するために該冷却液(70)中に挿入し、冷凍された該組織試料(60)を該冷凍ミクロトーム(10)の切断装置(26)で切断する工程と、を含み、
該冷凍された組織試料(60)を切断する前に該組織試料を洗浄するための洗浄液を、該冷凍ミクロトーム(10)内に備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記組織試料(60)を、前記冷却液(70)中に挿入する前に保護カバー(62)で覆う工程をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組織試料(60)を、前記保護カバー(62)とともに切断することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各前記組織試料(60)を、前記冷却液(70)中に挿入する前に保持装置(64)に取付ける工程と、該組織試料を該保持装置(64)とともに該冷却液(70)中に挿入する工程と、冷凍後に該冷却液(70)から取り出す工程と、を含むことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一に記載の方法。
【請求項15】
前記組織試料(60)を冷凍するための前記冷却液(70)の温度が、−60℃〜0℃の範囲で選択されることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一に記載の方法。
【請求項16】
前記冷却液(70)の比熱は、1.6〜3.5kJ/kg・Kの範囲で選択されることを特徴とする、請求項11〜15のいずれか一に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2010−249821(P2010−249821A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95725(P2010−95725)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(500113648)ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】