説明

冷却装置

【課題】 被冷却物の真空冷却と冷風冷却とを実行可能な冷却装置において、処理槽の位置を高くすることなく、また減圧能力は低下させることなく、処理槽からの排気と排水とを可能とする。
【解決手段】 処理槽3内の流体を外部へ吸引排出する減圧手段6は、水封式の真空ポンプ33を備える。真空ポンプ33は、処理槽3の底部と排水管路37を介して接続されると共に、処理槽3の側部と排気管路36を介して接続される。排水管路37には排水弁42が設けられ、排気管路36には真空弁41が設けられる。真空冷却時には、排気管路36を介して、処理槽3内の気体を外部へ吸引排出する。従って、被冷却物2からの蒸気の凝縮水が排水管路37に溜まっても、減圧能力は低下しない。真空冷却後の復圧時には、排水管路37を介して、凝縮水が外部へ吸引排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱後の食材または食品に代表される各種の被冷却物の冷却を図るための冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記各特許文献に開示されるように、一つの処理槽で、食材の真空冷却と冷風冷却とを実行可能な冷却装置が提案されている。
【0003】
真空冷却とは、処理槽内の気体を外部へ吸引排出して、処理槽内を減圧することで、処理槽内の食材からの水分蒸発を促し、その気化潜熱により食材の冷却を図るものである。真空冷却は、食材の内部まで均一に冷却でき、しかも冷却速度も速いが、チルド域(3〜0℃前後)までの冷却を可能とするには、処理槽内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段の構成が大掛かりとなり、コスト高を招くものである。
【0004】
一方、冷風冷却とは、処理槽内にクーラーおよびファンを設けて、冷風により食材の冷却を図るものである。冷風冷却は、通常、チルド域まで冷却できるが、食材表面へ冷風を当てて冷却する構成のため、食材の中心部が冷えにくく、冷却に時間を要すると共に、温度ムラを生じ易い。しかも、冷風冷却は、冷却に時間を要するため、食材が雑菌繁殖温度域に晒される時間が比較的長く、衛生面で改善の余地があった。
【0005】
下記特許文献1に開示される冷却装置では、真空冷却と冷風冷却との内、いずれか一方が選択されて実行される。また、下記特許文献2に開示される冷却装置では、先に冷風冷却した後に、真空冷却が実行される。この場合、高温域で冷風冷却するため、冷却に時間を要すると共に、温度ムラも大きくなり易い。しかも、その後に真空冷却を行う構成では、低温までの冷却には減圧手段の構成が大掛かりなものとなる。
【0006】
そこで、出願人は先に、真空冷却と冷風冷却との短所を互いに補い長所を生かした装置として、真空冷却後に冷風冷却を実行する冷却装置を提案し、既に特許出願を済ませている(特願2006−10880)。この冷却装置によれば、食材の真空冷却を図った後、冷風冷却を図ることで、簡易な構成で、短時間でムラなく低温まで冷却することができる。しかも、食材が雑菌繁殖温度域に晒される時間が少ないので、衛生的な冷却を図ることができる。
【特許文献1】特開平4−198681号公報
【特許文献2】特開2002−318051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
食材を真空冷却後に冷風冷却する冷却装置においては、典型的にはチルド域または冷凍域にまで、食材は最終的に冷却される。そのため、前段の真空冷却工程により生じた蒸気の凝縮水は、後段の冷風冷却工程により、処理槽内の底部において凍結する場合がある。また、真空冷却工程で生じた凝縮水を処理槽内に残したまま、冷風冷却工程を行うと、凝縮水が負荷となってしまう。
【0008】
さらに、冷風冷却工程の有無に拘らず真空冷却工程を含んでいる限り、処理槽内の底部に凝縮水が溜まり、処理槽の扉を開けた場合に、大量の凝縮水が流れ出るおそれがある。一方、真空冷却工程の有無に関わらず冷風冷却工程を含んでいる限り、冷風冷却工程時においても食材から蒸気が発生するため、凝縮水として処理槽の底部に溜まり、凍結したり、処理槽の扉を開けた場合に流れ出たりするおそれがある。
【0009】
このような不都合を解消するために、真空冷却工程後などに、処理槽内を大気圧まで復圧し、凝縮水を重力で外部へ排出することが考えられる。しかしながら、食品工場においては、凝縮水を排水するための排水ピット(排水升)が床面よりも上方に配置されていることがあり、そのような排水ピットに凝縮水を自然排水しようとすれば、処理槽を高く配置せざるを得ず、食材の搬出入に支障を来たすおそれがある。一方、真空ポンプを用いて処理槽の底部から真空引きするだけでは、排気管路内に水が溜まった場合には、減圧能力が低下してしまい、所期の真空冷却がなされないおそれがある。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、真空冷却および/または冷風冷却が可能な冷却装置において、処理槽の位置を高くすることなく、また減圧能力が低減されることなく、凝縮水の排水を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被冷却物が収容される密閉可能な処理槽と、この処理槽の底部とそれよりも上部とにそれぞれ接続され、前記処理槽内の流体を外部へ吸引排出する減圧手段と、この減圧手段により減圧された前記処理槽内へ外気を導入して、前記処理槽内を復圧する復圧手段とを備えることを特徴とする冷却装置である。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、減圧手段を用いて、処理槽の底部から凝縮水を排水することができる。減圧手段を用いて排水するので、処理槽の位置を比較的低く抑えることができる。また、処理槽には、底部だけでなくそれより上部においても、減圧手段が接続される。これにより、凝縮水が溜まらない管路を介して、処理槽内の気体を外部へ吸引排出することができ、所期の真空冷却を実現することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記減圧手段は、水封式の真空ポンプを備え、この真空ポンプは、前記処理槽の底部と排水管路を介して接続されると共に、前記処理槽の側部または上部と排気管路を介して接続されており、前記排水管路には、この排水管路を開閉する排水弁が設けられ、前記排気管路には、この排気管路を開閉する真空弁が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置である。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、排水管路の排水弁と、排気管路の真空弁とを個別に開閉することで、より効果的に、処理槽内の減圧と、処理槽内からの凝縮水の排水とを行うことができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記排水弁を閉じた状態で前記真空弁を開いて、前記減圧手段により前記処理槽内を減圧する工程を含む真空冷却工程、前記真空弁を閉じた状態で、前記復圧手段により前記処理槽内を復圧する復圧工程、を順次に実行し、前記復圧工程中または前記復圧工程後、前記排水弁を開いて、前記減圧手段により前記処理槽内の底部から凝縮水を排水することを特徴とする請求項2に記載の冷却装置である。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、処理槽内の底部に溜まった凝縮水は、真空冷却工程後に排水されるので、処理槽の扉を開けた際に、凝縮水が処理槽から流れ出るのを防止することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記処理槽内の圧力変化、および/または経過時間に基づき、前記減圧手段による前記処理槽内の底部からの凝縮水の排水の完了を検知することを特徴とする請求項3に記載の冷却装置である。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、処理槽内からの凝縮水の排水を、速やかに確実に行うことができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記処理槽内には、冷却器を介して冷風を前記被冷却物へ供給するファンが設けられ、前記復圧工程後、前記排水弁および前記真空弁を閉じた状態で、前記冷却器および前記ファンを機能させる冷風冷却工程を実行することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の冷却装置である。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、真空冷却後に冷風冷却を実行することで、減圧手段の構成を大掛かりなものとすることなく、短時間でムラなく低温まで冷却することができる。しかも、被冷却物が雑菌繁殖温度域に晒される時間が少ないので、衛生的な冷却を図ることができる。さらに、真空冷却後に凝縮水を排水しておくことで、真空冷却後に冷風冷却を行っても、凝縮水が凍結してしまうことがない。
【0021】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記処理槽内には、冷却器を介して冷風を前記被冷却物へ供給するファンが設けられ、前記排水弁および前記真空弁を閉じた状態で、前記冷却器および前記ファンを機能させる冷風冷却工程を実行し、この冷風冷却工程中、一時的に前記排水弁を開いて、前記減圧手段により前記処理槽内の底部から凝縮水を排水することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の冷却装置である。
【0022】
請求項6に記載の発明は、冷風冷却工程中に被冷却物から生じた蒸気が、凝縮水として処理槽の底部に溜まっても、適時に排水することで、凝縮水の凍結を防止することができる。また、冷却処理後、処理槽の扉を開けた場合に、凝縮水が処理槽から流れ出るのを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明の冷却装置によれば、処理槽の位置を高くすることなく、また減圧能力が低減されることなく、真空冷却および/または冷風冷却により生ずる凝縮水を、外部へ排水することができる。これにより、冷風冷却する場合でも、凝縮水が凍結するのを防止できる。また、真空冷却および/または冷風冷却後に処理槽の扉を開けた際、凝縮水が処理槽から大量に流れ出るのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の冷却装置は、被冷却物の真空冷却を少なくとも実行可能に構成され、より好ましくは、被冷却物の真空冷却と冷風冷却とを実行可能に構成される。この冷却装置にて冷却を図られる被冷却物は、その種類を特に問わないが、典型的には加熱調理後の食材または食品である。
【0025】
本実施形態の冷却装置は、被冷却物が収容される処理槽、この処理槽内を減圧する減圧手段、減圧された処理槽内を復圧する復圧手段の他、制御手段を備える。さらに、真空冷却に加えて冷風冷却も実行可能に構成する場合には、処理槽内を冷却する冷却器の他、処理槽内で風を起こし、冷却器を介した冷風を被冷却物へ吹き付けるファンをさらに備える。
【0026】
処理槽は、被冷却物を収容可能に中空構造に形成され、典型的には略矩形の中空ボックス状に形成された金属製の缶体である。処理槽は、被冷却物が収容される処理槽本体と、この処理槽本体の開口部を開閉する扉とから構成される。扉が閉じられた状態では、処理槽本体と扉との隙間は、パッキンにて封止される。
【0027】
処理槽には、好ましくは、処理槽内の圧力を検出する圧力センサ、処理槽内の温度を検出する温度センサ、処理槽内の被冷却物の温度(品温という)を検出する品温センサとの内、いずれか一以上のセンサが備えられる。好ましくは、これら三つのセンサが、すべて備えられる。
【0028】
被冷却物は、直接にまたは適宜の容器に入れられて、処理槽内に収容される。その際、被冷却物は、台車(ワゴンを含む)を介して、処理槽に対し出し入れしてもよい。あるいは、被冷却物は、処理槽内に設けた棚に保持してもよい。
【0029】
減圧手段は、処理槽内の流体を外部へ吸引排出する手段である。減圧手段は、真空ポンプ、またはそれに代えてもしくはそれに加えて、蒸気エゼクタまたは水エゼクタを備える。但し、減圧手段は、水封式の真空ポンプで構成するのが簡易である。減圧手段は、処理槽の底部とそれよりも上部とにそれぞれ接続される。具体的には、減圧手段は、処理槽の底部と排水管路を介して接続されると共に、処理槽の側部(前後左右のいずれか)または上部と排気管路を介して接続される。そして、排水管路の中途には、排水弁が開閉可能に設けられ、排気管路の中途には、真空弁が開閉可能に設けられる。排気管路の中途には、排気管路内の蒸気を凝縮させるための熱交換器を備えてもよい。
【0030】
復圧手段は、減圧手段により減圧された処理槽内へ外気を導入して、処理槽内を復圧する手段である。この復圧手段により、処理槽内へ外気を導入することで、処理槽内を大気圧まで復圧することができる。処理槽内への外気の導入は、衛生面を考慮して、フィルターを介して行うのが望ましい。フィルターを介した清浄空気は、給気管路を介して処理槽内へ供給される。給気管路の中途に設けた真空解除弁を開閉することで、処理槽内への外気導入の有無が切り替えられる。
【0031】
被冷却物の冷風冷却も実行可能に構成する場合、処理槽内には冷却器とファンとがさらに備えられる。冷却器は、処理槽内を冷却する熱交換器であり、被冷却物を冷風冷却によりチルド域まで冷却可能な低温(たとえば−10℃以下)とすることができる熱交換器とするのがよい。冷却器は、典型的には冷凍機の蒸発器から構成される。
【0032】
本実施形態では、冷却器は、冷凍機のコンデンシングユニットから供給される液化冷媒を蒸発させて、処理槽内の気体を冷却する蒸発器から構成される。但し、冷却器は、冷水製造装置(チラー)から供給される冷水、またはブラインチラーから供給されるブラインを冷媒とする熱交換器としてもよい。冷風冷却時には、冷却器を機能させた状態でファンを回転させることで、ファンへの吸込空気またはファンからの吐出空気は、冷却器を介して冷風として被冷却物へ吹き付けられる。
【0033】
制御手段は、減圧手段、復圧手段、冷凍機やファンなどを制御する。逆にいうと、これら各構成は、制御手段により制御され、予め設定されたプログラムに従い、所定の工程が順次に実行される。その際、圧力センサにより検出される処理槽内圧力、温度センサにより検出される処理槽内温度、品温センサにより検出される品温や、経過時間などを用いて制御される。
【0034】
冷却装置は、その運転方法を特に問わないが、少なくとも真空冷却工程を実行可能に構成されている。そして、好ましくは、その真空冷却工程後に冷風冷却工程を実行可能に構成されている。この場合、前段の真空冷却工程では、被冷却物の内部まで均一に冷却できるので、温度ムラが生じることがなく、しかも迅速な冷却を図ることができる。そして、後段の冷風冷却工程では、さらに低温(典型的にはチルド域)まで冷却することができる。真空冷却により予め温度ムラなく冷却した後にさらに冷風冷却を図ることで、冷風冷却により仮に温度ムラが生じても、その温度差を微小範囲に抑えることができる。しかも、真空冷却のみでは、大掛かりな減圧手段が必要になる低温までの冷却を図ることができる。
【0035】
真空冷却工程は、第一真空冷却工程と第二真空冷却工程とに分けられる。第一真空冷却工程は、真空冷却工程に必須の工程であるが、第二真空冷却工程は、所望により実行される工程である。
【0036】
第一真空冷却工程は、減圧手段により処理槽内を減圧することで、被冷却物の真空冷却を図る工程である。具体的には、排水弁および真空解除弁は閉じた状態で、真空弁を開いて、減圧手段により処理槽内の気体を外部へ吸引排出すればよい。
【0037】
第一真空冷却工程では、処理槽の底部およびそこに接続された排水管路には、食材などからの蒸気の凝縮水が溜まる。従って、仮に処理槽の底部のみから処理槽内の気体を外部へ吸引排出する構成とした場合には、その配管内に水が溜まると、処理槽内を所望圧力まで減圧できないおそれがある。ところが、本実施形態によれば、処理槽の底部の排水管路とは別に、処理槽の側部または上部に排気管路を接続して、その排気管路を介して処理槽内の気体を外部へ吸引排出する構成である。従って、処理槽の底部や排水管路に水が溜まっても、処理槽内を所望圧力まで確実に減圧することができる。
【0038】
第一真空冷却工程後に第二真空冷却工程を実行しようとする場合、第一真空冷却工程の後半には、処理槽内へ蒸気および/または温水を供給して、その蒸気と共に処理槽内の空気を減圧手段により排出するのがよい。これにより、後述する第二真空冷却工程を、より効果的に行うことができる。
【0039】
第二真空冷却工程では、第一真空冷却工程により減圧された処理槽内を密閉した状態で、冷却器を機能させる。これにより、処理槽内の蒸気を凝縮して処理槽内をさらに減圧でき、被冷却物の真空冷却をさらに図ることができる。このような真空冷却工程の終了後には、処理槽内を大気圧まで復圧する復圧工程がなされる。
【0040】
復圧工程では、真空弁を閉じた状態で、真空解除弁を開くことで、処理槽内へ外気を導入して、処理槽内の復圧が図られる。この復圧工程中または復圧工程直後には、排水弁を開いて、減圧手段により処理槽内の底部から排水が図られる。これにより、真空冷却工程後に扉を開けた際に、凝縮水が処理槽から流れ出るのを防止することができる。また、仮に排水せずに冷風冷却工程を実行すると、冷風冷却工程により凝縮水が凍結して扉が開かなくなるおそれがあるが、冷風冷却工程前に排水しておくことで、そのような不都合を防止することができる。さらに、冷風冷却工程前に排水しておくことで、処理槽の底部に溜まった凝縮水が冷風冷却時の負荷になるのを防止することもできる。
【0041】
処理槽内からの排水は、通常、減圧手段を作動させた状態で排水弁を設定時間だけ開いてなされる。但し、これに代えてまたはこれに加えて、処理槽内の圧力変化に基づき、凝縮水の排水の完了を検知して、排水処理を終了してもよい。たとえば、復圧工程の中途(たとえば終盤)で排水弁を開いて排水する場合、減圧手段は、当初は排水管路内の水を吸引するので復圧速度が速いが、排水管路内の水が排水された後は、処理槽内の気体を吸引排出するので復圧速度が鈍るか、処理槽内圧力が下がり始めることになる。従って、これを検知すれば、処理槽内からの排水の完了を検知して、設定時間経過しなくても排水処理を終了してもよい。
【0042】
復圧工程後、所望により、ファンおよび冷却器を機能させて、被冷却物の冷風冷却を図る冷風冷却工程がなされる。冷風冷却工程においても、被冷却物から生じた蒸気が、凝縮して処理槽内の底部に溜まるおそれがあるので、前記したのと同様に、適宜の排水処理を実行してもよい。但し、この際、真空解除弁は開けずに、一時的に排水弁だけを開いて、排水処理を実行することができる。
【0043】
本実施形態の冷却装置は、上述したとおり、少なくとも第一真空冷却工程が実行可能とされ、所望により、さらに第二真空冷却工程および/または冷風冷却工程が実行可能とされる。但し、場合により、冷風冷却後に真空冷却したり、冷風冷却のみを実行したりしてもよい。つまり、真空冷却と冷風冷却とを実行可能に構成された冷却装置であって、真空冷却と冷風冷却とを自在に切り替えて、いずれか一方のみ、または双方を適宜組み合わせて実行する冷却装置に、本発明を適用することができる。
【実施例】
【0044】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の冷却装置の一実施例を示す概略図であり、図1は、処理槽の扉を半分程開いた状態を示す斜視図、図2は、一部を断面にして示す全体構成図である。また、図3は、図1の冷却装置の正面図であり、一部を省略して示している。さらに、図4は、図3におけるIV−IV断面図であり、一部を切り欠いて示している。
【0045】
本実施例の冷却装置1は、真空冷却と冷風冷却との両機能を備え、自在に切り替えて運転することにより、真空冷却と冷風冷却との内、いずれか一方が実行されるかまたは双方が実行されて、被冷却物2の冷却を図る装置である。被冷却物2は、特に問わないが、典型的には加熱調理後の食材または食品である。
【0046】
本実施例の冷却装置1は、被冷却物2が収容される処理槽3、処理槽3内に風を起こすファン4、処理槽3内を冷却し特にファン4による風を冷却する冷却器5、処理槽3内の流体を外部へ吸引排出する減圧手段6、減圧手段6により減圧された処理槽3内を復圧する復圧手段7、処理槽3内へ蒸気および/または温水を供給する給蒸手段8の他、これらを制御する制御手段9を備える。
【0047】
処理槽3は、略矩形の中空ボックス状に形成された金属製の缶体である。処理槽3は、前面へ開口して中空部を有する処理槽本体10と、この処理槽本体10の開口部を開閉する扉11とから構成される。処理槽本体10は、略矩形の中空部が前面へ開口して形成されると共に、その略矩形の開口部の外周に沿って連続的にパッキン12が設けられる。
【0048】
処理槽本体10の前方上部には、左右方向へ延出すると共に処理槽本体10の右側へ延出して、レール13が設けられる。このレール13には、それに沿って左右へスライド可能に、扉11が吊り下げられる。具体的には、略矩形板状の扉11の上部には、左右二箇所にそれぞれローラ14(図3)が設けられており、このローラ14がレール13に保持される。従って、レール13に沿ってローラ14が回転しつつ、処理槽本体10に対し扉11が左右にスライド可能とされる。
【0049】
扉11は、処理槽本体10の開口部と対面する位置が全閉位置とされ、処理槽本体10の開口部を完全に露出させる位置が全開位置とされる。全閉位置においては、扉11の左右に設けた留め具15(図1)に、処理槽本体10の左右に設けた掛け具16を係合することで、扉11を処理槽本体10へ引き付けて固定することができる。これにより、処理槽本体10と扉11との隙間が、パッキン12にて確実に封止される。
【0050】
処理槽3内には、左側に被冷却物2が収容可能とされ、右側にファン4や冷却器5が設置される。被冷却物2は、台車17を介して処理槽3に出し入れすることができる。台車17は、略矩形の板材または枠材の下面四隅に、車輪(キャスター)18,18,…が設けられて構成される。台車17は、上下に複数の棚または棚枠を有していてもよいし、また手押し部を有していてもよい。本実施例では、上下に複数の棚枠を有した台車17が使用され、被冷却物2を収容した容器(たとえば、ホテルパン)19が各棚枠に保持される。但し、単に略矩形板状の荷台の下面四隅に車輪18,18,…を有して構成される台車17を使用し、被冷却物2を収容した容器(たとえば、ばんじゅう)19を、荷台の上に積み重ねてもよい。
【0051】
処理槽3には、処理槽3内の圧力を検出する圧力センサ20と、処理槽3内の温度を検出する温度センサ21とが備えられる。さらに、処理槽3内に収容される被冷却物2の温度を検出する品温センサ22も備えられる。本実施例の品温センサ22は、被冷却物2へ検温部を差し込んで、被冷却物2の温度を検出する構成である。
【0052】
処理槽3の右側壁には、一または複数のファン4が設けられる。本実施例では、冷却器5が設置されるのと対応した上下方向領域に、三つのファン4,4,4が上下に等間隔に離隔して設けられる。各ファン4は、複数枚の羽根23が、処理槽3外に配置されたモータ24により、駆動軸25を介して回転駆動される構成である。各駆動軸25は処理槽3の右側壁を水平に貫通して設けられるが、この貫通部においても処理槽3の内外の封止は確保される。
【0053】
処理槽3内には、左右方向中央部よりやや右側に、直方体状の冷却器5が設けられる。これにより、処理槽3内の中空部は、冷却器5を境に左右に分けられる。但し、これら左右の空間は、冷却器5およびその前後などにおける処理槽3との隙間を介して、互いに連通される。
【0054】
冷却器5は、水平な台座26に載せられて、処理槽3内の底面から浮いた状態で設置される。台座26の高さHは、たとえば約20cmとされており、台車17の各車輪18よりも高く設定される。これにより、ファン4による風が台車17の各車輪18に当たることが防止され、処理槽3内に汚染物が舞い上がるのが防止される。一方、台車17に載せられた被冷却物2には、ファン4の風が確実に当たるように設計される。但し、そのために、台車17に載せられる一番下の容器19は、空の状態としておいてもよい。
【0055】
冷却器5は、周知の構成の冷凍機27の蒸発器から構成される。具体的には、冷却器5は、冷媒管路28を介してコンデンシングユニット29と接続されている。コンデンシングユニット29からの液化冷媒は、液電磁弁30および膨張弁31を介して蒸発器(冷却器5)へ供給され、この蒸発器にて完全に蒸発される。この際、蒸発器において冷媒は周囲から吸熱するので、蒸発器は冷却器5として機能する。
【0056】
冷凍機27を運転した状態でファン4を作動させると、図4に示すように、ファン4への吸込空気は、冷却器5にて冷却された後、冷却器5の前後における処理槽3との隙間を介して、被冷却物2の収容空間へ供給され、再び冷却器5を介してファン4へ吸い込まれる。このようにして、処理槽3内において、冷風の循環流を形成することができる。この際、冷却器5の後面と処理槽3の後面との隙間、冷却器5の前面と扉11との隙間を、それぞれある程度小さくしておくのが好ましい。これにより、風速を上げて、処理槽3の左側壁まで風を流すことができる。また、図3および図4に示すように、冷却器5の上部には、ファン4の風を冷却器5の上方へ流さないように、天板32を設けておくのがよい。
【0057】
処理槽3には、処理槽3内の流体を外部へ吸引排出する減圧手段6が接続される。本実施例では、減圧手段6は、水封式の真空ポンプ33から構成される。水封式の真空ポンプ33は、周知のとおり、封水と呼ばれる水が供給されて作動される。
【0058】
より具体的には、本実施例では、放射状に配置された羽根をもつインペラ(図示省略)は、封水が供給される円筒状ケーシング(符号省略)内に、ケーシングと偏心して設置されている。従って、インペラを高速回転させると、ケーシング内に水環ができ、しかもインペラとケーシングとを偏心させているので、一回転するたびに内部の気体が膨張と圧縮とを繰り返すことになる。そこで、ケーシングの適切な位置に吸気口と排気口とを設けておくことで、外部の気体を吸排気することができる。さらに、ケーシングには、その内部へ封水を供給するための給水口が設けられている。
【0059】
真空ポンプ33の給水口には、封水管路34が接続される。封水管路34の中途には、封水弁35と流量調整弁(図示省略)とが設けられる。封水弁35は、真空ポンプ33に連動して開かれる弁であり、本実施例では電磁弁から構成される。このようにして、真空ポンプ33には、封水弁35および流量調整弁を介して、封水が供給可能とされる。
【0060】
真空ポンプ33の吸気口には、処理槽3からの排気管路36と排水管路37とが接続される。排気管路36と排水管路37とは、真空ポンプ33の側において共通管路38とされており、この共通管路38が真空ポンプ33の吸気口に接続される。この共通管路38には、逆止弁39が設けられる。
【0061】
排気管路36は、処理槽3の右側部に接続される。本実施例では、台座26よりも若干上方において、処理槽3の右側部に排気管路36が接続される。一方、排水管路37は、処理槽3の底部に接続される。本実施例では、処理槽3内の底面には、手前側の右角部に円形の凹部40が形成されており、この凹部40に排水管路37が接続される。処理槽3を微小に傾斜させるなどして、処理槽3内の底部の水は、前記凹部40へ自然に導かれる。
【0062】
排気管路36の中途には真空弁41が設けられ、排水管路37の中途には排水弁42が設けられる。これにより、処理槽3内の気体は、真空弁41および逆止弁39を介して、真空ポンプ33へ吸引可能とされる。また、処理槽3内の底部に溜まった水は、排水弁42および逆止弁39を介して、真空ポンプ33へ吸引可能とされる。真空弁41および排水弁42は、本実施例ではそれぞれ電動弁から構成される。
【0063】
ところで、排水管路37の中途(処理槽3と排水弁42との間)には、洗浄水管路43が接続されている。所望時には、真空弁41および排水弁42を閉じると共に処理槽3の扉11を開けた状態で、洗浄水管路43の手動弁44を開けて、排水管路37に逆方向へ水を流して、排水管路37内の洗浄を図ることができる。
【0064】
真空ポンプ33の排気口には、排気セパレータ45が接続される。これにより、真空ポンプ33からの流体は、気水分離された後、排気および排水される。この排水は、排水ピット(排水升)46へ行うことができるが、この排水ピット46は、図3に示すように床面よりも上方に配置されていることがある。従って、処理槽3内からの排水を自然に行おうとすれば、処理槽3を高く設置せざるを得ず、被冷却物2の搬出入に支障を来たすおそれがあるが、本実施例によれば、真空ポンプ33を用いて排水するので、処理槽3の位置を比較的低く抑えることができる。また、単に真空ポンプ33を用いて処理槽3の底部から真空引きするだけでは、排水管路37内に水が溜まった場合には、減圧能力が低下するおそれがあるが、本実施例によれば、排水管路37とは別に排気管路36を有するので、排気管路36を用いて減圧することで減圧能力を低下させるおそれはない。
【0065】
処理槽3には、減圧手段6にて減圧された後、復圧するための復圧手段7が接続されている。本実施例の復圧手段7は、処理槽3に接続された給気管路47が、エアフィルタ48を介して外気と連通可能に設けられている。給気管路47を処理槽3の上部に接続する場合、復圧時に処理槽3内へ流入する空気が被冷却物2へ直接に当らないように、給気管路47は、ファン4や冷却器5が設置された側の上部において、処理槽3に接続するのが好ましい。給気管路47の中途には、真空解除弁49が設けられている。この真空解除弁49は、処理槽3内への外気導入の有無を切り替える弁であり、本実施例では電動弁から構成される。真空解除弁49の開放により、処理槽3内は大気圧に開放可能とされる。
【0066】
処理槽3には、処理槽3内へ蒸気および/または温水を供給する給蒸手段8が接続されている。この給蒸手段8は、ボイラから構成してもよいが、温水タンク50により構成するのが簡易である。この温水タンク50には、給水管路51を介して水が供給可能とされる。給水管路51の中途には、給水弁52が設けられる。この給水弁52は、温水タンク50への給水の有無を切り替える弁であり、本実施例では電磁弁から構成される。
【0067】
温水タンク50には、水位検出器(図示省略)が設けられている。この水位検出器による検出信号に基づき給水弁52の開閉を制御することで、温水タンク50内には設定量の水が貯留される。また、温水タンク50には水温センサ(図示省略)が設けられており、この水温センサによる検出信号に基づきヒータ53を制御することで、温水タンク50内の水は設定温度(たとえば80℃)に保持される。なお、ヒータ53には、ヒータ温度センサ(図示省略)が設けられており、ヒータ53の過熱が防止される。
【0068】
このような構成の温水タンク50は、給蒸管路54を介して処理槽3に接続される。本実施例では、給蒸管路54は、処理槽3の上部に接続される。この際、温水タンク50からの蒸気や温水が、被冷却物2に直接に当らないように、ファン4や冷却器5が設置された側の上部に接続される。給蒸管路54の中途には、給蒸弁55が設けられている。この給蒸弁55は、処理槽3内への蒸気や温水の供給の有無を切り替える弁であり、本実施例では電動弁から構成される。
【0069】
処理槽3内の減圧状態で給蒸弁55を開くことで、差圧により、温水タンク50内の蒸気は温水を伴って処理槽3内へ自然に供給される。温水をも処理槽3内へ供給することで、水の濃縮を防止することができる。処理槽3内に供給された温水は、減圧下で一層蒸発を促されて、処理槽3内に蒸気を充満させる。従って、減圧手段6を作動させておくことで、排気管路36を介して処理槽3内からの空気排除を効果的に行うことができる。ところで、冷却器5の除霜を図りたい場合にも、給蒸手段8により処理槽3内へ蒸気および/または温水を供給してもよい。
【0070】
温水タンク50には、給蒸管路54から分岐して、オーバーフロー管路56が接続されている。このオーバーフロー管路56は、温水タンク50からの余分な蒸気や水を、逆止弁57を介して排出するものである。さらに、温水タンク50には、給水管路51の中途(温水タンク50と給水弁52との間)から分岐して、ブロー管路58が接続されている。所望時には、ブロー管路58に設けた手動ブロー弁59と、温水タンク50上部に設けた手動エア入れ弁60とを開けることで、ブロー管路58を介して温水タンク50からの排水を図ることができる。
【0071】
ファン4、冷却器5、減圧手段6、復圧手段7、給蒸手段8は、制御手段9により制御される。この制御手段9は、それが把握する経過時間や前記各センサ20,21,22からの検出信号などに基づいて、前記各構成を制御する制御器61である。具体的には、ファン4のモータ24、冷凍機27のコンデンシングユニット29と液電磁弁30、真空ポンプ33と封水弁35、真空弁41、排水弁42、真空解除弁49、温水タンク50のヒータ53と給水弁52、給蒸弁55の他、圧力センサ20、温度センサ21および品温センサ22などは、制御器61に接続される。そして、制御器61は、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽3内の被冷却物2の冷却処理を行う。
【0072】
図5は、本実施例の冷却装置1による冷却処理の典型例を示すフローチャートである。基本的には、被冷却物2の真空冷却を図った後、冷風冷却を図る構成である。しかしながら、被冷却物2の温度が比較的高温の場合には、まず粗熱取り工程S1を行うのが好ましい。この粗熱取り工程S1は、被冷却物2を冷風冷却または送風冷却する工程である。
【0073】
冷風冷却のためには、処理槽3内を密閉した状態で、冷凍機27およびファン4を作動させて、被冷却物2に冷風を吹き付けて冷却を図ればよい。一方、送風冷却のためには、真空解除弁49および真空弁41を開いた状態で、真空ポンプ33を作動させればよい。また、被冷却物2に対して風を当てるために、ファン4を起動してもよい。これにより、処理槽3内へ外気を導入しつつ排出することで、被冷却物2の冷却が図られる。送風冷却時には、冷凍機27は停止すると共に、給蒸弁55は閉じた状態、排水弁42は開いた状態または閉じた状態とされる。
【0074】
このようにして、被冷却物2の温度がたとえば90℃から70℃になると、次工程の真空冷却工程へ移行する。本実施例では、真空冷却工程は第一真空冷却工程S2と第二真空冷却工程S3とに分けて実行される。
【0075】
第一真空冷却工程S2では、処理槽3を密閉した状態で、真空弁41および封水弁35を開いて真空ポンプ33を作動させ、処理槽3内の空気を外部へ吸引排出して、処理槽3内を減圧する。これにより、被冷却物2からの水分蒸発が促され、その気化潜熱により被冷却物2の冷却が図られる。
【0076】
第一真空冷却工程S2では、ファン4は停止させているが、冷凍機27は運転させてもよい。これにより、蒸気を冷却器5に凝縮させつつ、処理槽3内の気体を外部へ吸引排出することができる。従って、迅速な真空冷却を図ることができる。また、真空ポンプ33の減圧能力は、封水温度に左右されることが知られているが、冷凍機27を運転しつつ真空引きを図ることで、真空ポンプ33の封水温度の上昇を抑制して、真空ポンプ33の減圧能力の低下を防止することができる。しかも、処理槽3に対する冷却器5と真空吸引口(処理槽3への排気管路36の接続開口)との配置は、本実施例のように、被冷却物2からの蒸気が冷却器5を介して排気管路36へ吸引されるように設計しておけば、これら作用効果を一層確実に達成することができる。また、従来、排気管路36には真空ポンプ33の手前に通水型熱交換器を設けて、冷却用水を給排水して排気管路36内の蒸気を凝縮させていたが、この熱交換器を不要とすることもできる。これにより、大幅な節水を図ることができる。
【0077】
第一真空冷却工程S2中に冷凍機27を運転させるのは、第一真空冷却工程S2中の常時であってもよいし、所望時であってもよい。たとえば、次に述べる処理槽3内への蒸気や温水の供給時までは、冷凍機27を運転しつつ処理槽3内の減圧が図られる。但し、圧力センサ20による処理槽内圧力、温度センサ21による処理槽内温度、品温センサ22による被冷却物温度、真空ポンプ33に設けられる封水温度センサ(図示省略)による封水温度、または第一真空冷却工程S2の経過時間などに基づき、冷却器5を機能させるか否かを制御してもよい。
【0078】
第一真空冷却工程S2の後半には、減圧手段6を作動させた状態のまま、給蒸弁55を一時的に開いて処理槽3内へ温水を伴って蒸気を供給する。これにより、処理槽3内に蒸気を充満させ、その蒸気を巻き込むことで、処理槽3内からの空気排除を一層確実に行うことができる。この際、空気より軽い蒸気を、処理槽3の上部から下方へ導入することで、処理槽3内からの空気排除を効果的に行うことができる。このようにして、真空ポンプ33の能力限界程度にまで処理槽3内を減圧する。この第一真空冷却工程S2により、被冷却物2の温度は、たとえば40℃程度にまで速やかに冷却される。
【0079】
その後の第二真空冷却工程S3では、真空弁41および封水弁35を閉じて真空ポンプ33を停止させる。そして、処理槽3内を密閉した状態で、冷凍機27を運転する。これにより、冷却器5により処理槽3内の蒸気を凝縮させて、処理槽3内をさらに減圧して被冷却物2を真空冷却することができる。この際、ファン4は作動させる必要はない。このようにして、被冷却物2の温度は、たとえば10℃にまで冷却される。第二真空冷却工程S3が終了すると、冷凍機27の運転を停止する。
【0080】
その後の復圧工程S4では、真空解除弁49を開いて、処理槽3内を大気圧まで復圧する。すなわち、復圧工程S4では、真空弁41を閉じた状態で、真空解除弁49を開くことで、処理槽3内へ外気を導入して、処理槽3内の復圧が図られる。この復圧工程S4中または復圧工程S4直後には、真空ポンプ33を作動させた状態で排水弁42を開いて、処理槽3内の底部からの排水が図られる。
【0081】
仮にこの排水をせずに次工程の冷風冷却工程S5を実行すると、処理槽3内の底部に溜まった水が、冷風冷却工程S5により凍結して扉11を開かなくするおそれがあるが、冷風冷却工程S5前に排水しておくことで、そのような不都合を回避することができる。また、仮に凍らなくても、処理槽3内に水を残したままだと、扉11を開けた際に処理槽3内から水が流れ出てしまうが、予め排水しておくことで、そのような不都合を回避することができる。さらに、冷風冷却工程S5前に排水しておくことで、処理槽3内の底部に溜まった水が冷風冷却時の負荷になるのを防止することもできる。
【0082】
処理槽3内からの排水は、通常、真空ポンプ33を作動させた状態で排水弁42を設定時間だけ開いてなされる。但し、これに代えてまたはこれに加えて、処理槽3内の圧力変化に基づき、凝縮水の排水の完了を検知して、排水処理を終了してもよい。たとえば、復圧工程S4の中途(たとえば終盤)で排水弁42を開いて排水する場合、真空ポンプ33は、当初は排水管路37内の水を吸引するので復圧速度が速いが、排水管路37内の水が排水された後は、処理槽3内の気体を吸引排出するので復圧速度が鈍るか、処理槽内圧力が下がり始めることになる。従って、これを検知すれば、処理槽3内からの排水の完了を検知して、設定時間経過しなくても排水処理を終了するよう制御してもよい。
【0083】
その後の冷風冷却工程S5では、再び処理槽3内を密閉した状態で、冷凍機27およびファン4を作動させる。この冷風冷却工程S5により、被冷却物2は、たとえば3℃まで冷却される。但し、場合により冷凍する領域まで冷却してもよい。ところで、被冷却物2がまだ高温の場合、冷風冷却工程S5においても被冷却物2から生じた蒸気が、凝縮水として処理槽3の底部に溜まるおそれがあるので、冷風冷却工程S5においても、所望により排水管路37を介して排水処理を図ってもよい。この際、上述した復圧工程S4における排水処理とは異なり、真空解除弁49は開かずに排水することもできる。このようにして、凝縮水の凍結の防止や、処理槽3の扉11を開けた場合の凝縮水の流れ出しを防止することができる。
【0084】
ところで、真空冷却工程は、必ずしも第一真空冷却工程S2と第二真空冷却工程S3とに分けて実行する必要はなく、場合によっては第一真空冷却工程S2のみとすることもできる。第二真空冷却工程S3を実行しない場合、第一真空冷却工程S2の後半に、処理槽3内へ蒸気および/または温水を供給する必要はない。
【0085】
また、本実施例の冷却装置1は、真空冷却後に冷風冷却する構成に加えて、真空冷却または冷風冷却のいずれかのみ機能させて運転可能とするのがよい。真空冷却工程のみを実行する場合でも、その復圧時に排水しておくことで、処理後に扉11を開けた際に、凝縮水が処理槽3から流れ出るのを防止することができる。さらに、真空冷却後に冷風冷却する構成に加えて、冷風冷却後に真空冷却するよう構成することもできる。これらの場合における真空冷却工程や冷風冷却工程は、上述した各工程と同様の工程である。但し、真空冷却工程は、第一真空冷却工程S2とその後の第二真空冷却工程S3との内、少なくとも第一真空冷却工程S2をいう。
【0086】
本発明の冷却装置1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、処理槽3の右側にファン4や冷却器5などが設置され、処理槽3の左側に被冷却物2が収容されたが、これとは左右対称に構成してもよい。すなわち、この場合、処理槽3の左側にファン4や冷却器5などが設置され、処理槽3の右側に被冷却物2が収容されることになる。
【0087】
また、前記実施例では、ファン4への吸込みにより、処理槽3内に風を起こす構成としたが、これとは逆に、ファン4からの吐出により、処理槽3内に風を起こす構成としてもよい。
【0088】
また、前記実施例では、真空冷却と冷風冷却とを実行可能に構成したが、本発明は、少なくとも真空冷却が実行可能であれば足りる。その場合、前記実施例において、ファン4などの設置を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の冷却装置の一実施例を示す概略斜視図である。
【図2】図1の冷却装置の全体構成図であり、一部を断面にして示している。
【図3】図1の冷却装置の正面図であり、一部を省略して示している。
【図4】図3におけるIV−IV断面図であり、一部を切り欠いて示している。
【図5】図1の冷却装置による冷却処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1 冷却装置
2 被冷却物
3 処理槽
4 ファン
5 冷却器
6 減圧手段
7 復圧手段
33 真空ポンプ
36 排気管路
37 排水管路
41 真空弁
42 排水弁
S2 第一真空冷却工程
S3 第二真空冷却工程
S4 復圧工程
S5 冷風冷却工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物が収容される密閉可能な処理槽と、
この処理槽の底部とそれよりも上部とにそれぞれ接続され、前記処理槽内の流体を外部へ吸引排出する減圧手段と、
この減圧手段により減圧された前記処理槽内へ外気を導入して、前記処理槽内を復圧する復圧手段と
を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記減圧手段は、水封式の真空ポンプを備え、
この真空ポンプは、前記処理槽の底部と排水管路を介して接続されると共に、前記処理槽の側部または上部と排気管路を介して接続されており、
前記排水管路には、この排水管路を開閉する排水弁が設けられ、
前記排気管路には、この排気管路を開閉する真空弁が設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記排水弁を閉じた状態で前記真空弁を開いて、前記減圧手段により前記処理槽内を減圧する工程を含む真空冷却工程、
前記真空弁を閉じた状態で、前記復圧手段により前記処理槽内を復圧する復圧工程、を順次に実行し、
前記復圧工程中または前記復圧工程後、前記排水弁を開いて、前記減圧手段により前記処理槽内の底部から凝縮水を排水する
ことを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記処理槽内の圧力変化、および/または経過時間に基づき、前記減圧手段による前記処理槽内の底部からの凝縮水の排水の完了を検知する
ことを特徴とする請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記処理槽内には、冷却器を介して冷風を前記被冷却物へ供給するファンが設けられ、
前記復圧工程後、前記排水弁および前記真空弁を閉じた状態で、前記冷却器および前記ファンを機能させる冷風冷却工程を実行する
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記処理槽内には、冷却器を介して冷風を前記被冷却物へ供給するファンが設けられ、
前記排水弁および前記真空弁を閉じた状態で、前記冷却器および前記ファンを機能させる冷風冷却工程を実行し、
この冷風冷却工程中、一時的に前記排水弁を開いて、前記減圧手段により前記処理槽内の底部から凝縮水を排水する
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−298297(P2008−298297A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141338(P2007−141338)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】