説明

函体の継手に取り付けるゴム輪及びその函体の継手構造

【課題】函体が地震などによって震動しても安定したシール性を得ることができるとともに、継手同士の干渉による破損を防止することができるゴム輪及びその函体の継手構造を提供すること。
【解決手段】インロー嵌合可能に構成した函体の雄型継手と雌型継手のうち一方の継手の対向面に取り付け可能なシール部と、前記シール部と一体に形成され、前記一方の継手の先端面に取り付け可能な舌片部とを備え、前記シール部は、前記一方の継手に取り付けられる基部と、他方の継手の対向面に圧接可能に形成したリップ部とを有し、前記舌片部は、函体の嵌合時に一方の継手の先端面と他方の継手の段差面との間に介在するように形成してあることを特徴とするゴム輪及びその函体の継手構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックスカルバートなどの函体(円管や角管等の管体、箱体、筒体などを含む)であって、インロー嵌合可能に構成する雄型継手と雌型継手との間に介在するゴム輪およびそのゴム輪を用いた函体の継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のインロー嵌合可能に構成した函体に用いるシール部材は、ゴム輪などの弾性体を雄型(或いは雌型)の対向面に周回して取付け、当該雄型継手と雌型継手を圧入嵌合し、前記圧接されたゴム輪によって止水性を確保している。
【特許文献1】特開2005−054883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
当該従来のゴム輪は、当該継手の対向面の先端により近い位置に設ければ設けるほどゴム輪の出入り長さを長く確保する事ができるため、地震などの震動によって当該函体の継手同士の移動が大きい場合であってもシール性を確保することができる。
しかし、反対にゴム輪の移動量は大きいため、ゴム輪が受ける押圧力と引張力によってゴム輪が捲れたり破損しやすく、加えてゴム輪の基部周辺のコンクリートはゴム輪が受ける押圧力と引張力に対する反力が不足するため、当該外力に抵抗できずに、コンクリートが欠けたりゴム輪が外れたりするいといった問題を抱えている。
【0004】
また、雄型継手と雌型継手の対向面間は、ゴム輪の介在により互いが干渉して破損するおそれは少ないものの、一方の継手の先端面と他方の継手の段差面については、地震などの震動によって互いが干渉してしまい、継手の破損の原因となっている。
【0005】
従って、本発明は、ボックスカルバートなどの函体が地震などによって震動しても安定したシール性を得ることができるとともに、継手同士の干渉による破損を防止し、継手からの捲れ、捻れ、それらに伴う破損が少ない、ゴム輪及びその函体の継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、インロー嵌合可能に構成した函体の雄型継手と雌型継手のうち一方の継手に取り付けるゴム輪であって、前記ゴム輪は、前記一方の継手の対向面に取り付け可能なシール部と、前記シール部と一体に形成され、前記一方の継手の先端面に取り付け可能な舌片部とを備え、前記シール部は、前記一方の継手に取り付けられる基部と、他方の継手の対向面に圧接可能に形成したリップ部とを有し、前記舌片部は、函体の嵌合時に一方の継手の先端面と他方の継手の段差面との間に介在するように形成してあることを特徴とする、ゴム輪を提供するものである。
また、本願の第2発明は、前記舌片部が、前記シール部に対して断続的又は連続的に形成したことを特徴とする、本願の第1発明に記載の、ゴム輪を提供するものである。
また、本願の第3発明は、インロー嵌合可能に構成する函体の継手構造であって、本願の第1発明又は第2発明の何れかに記載のゴム輪を、函体の雄型継手と雌型継手のうち一方の継手に取り付けてあり、前記ゴム輪のシール部が前記一方の継手継手と他方の継手との対向面間に圧入介在するように配してあり、前記ゴム輪の舌片部が前記一方の継手の先端面と他方の継手の段差面との間に介在するように配してあることを特徴とする、函体の継手構造を提供するものである。
また、本願の第4発明は、前記ゴム輪のシール部及び舌片部のうち、少なくとも一つが一方の継手に接着材によって接着して取り付けてあることを特徴とする、本願の第3発明に記載の函体の継手構造を提供するものである。
また、本願の第5発明は、前記ゴム輪のシール部及び舌片部のうち、少なくとも一つが一方の継手と一体成形することにより取り付けてあることを特徴とする、本願の第3発明又は第4発明に記載の函体の継手構造を提供するものである。
また、本願の第6発明は、前記雄型継手及び雌型継手の対向面のうち少なくとも一つの面が、函体の軸先方向と平行に形成したことを特徴とする、本願の第3発明乃至第5発明の何れかに記載の函体の継手構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果を同時に得ることができる。
【0008】
(1)クッション性の向上
雄型継手と雌型継手のうち一方の継手の先端面と他方の継手の段差面との間に、本発明に係るゴム輪の舌片部が介在してクッション材となるため継手同士の干渉による破損を防止することができる。
【0009】
(2)シール性の向上
発明に係るゴム輪のシール部が嵌入時や地震などの震動によって押圧力及び引張力を受けても、ゴム輪の舌片部が当該外力に抵抗するため、シール部の捲れや、捻れ、それらに伴う破損を防止することができ、シール性が向上する。
【0010】
特に、当該シール部を継手の先端面近傍に配置することにより、当該シール部の出入り長さを長く確保することができ、規模の大きい振動に対しても、シール性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
<1>全体構成
図1は、本発明に係るゴム輪1が雄型継手4に取り付けられている時の断面図であり、図2は、図1におけるゴム輪1の取付周辺の拡大図である。
始めに函体の雄型継手4と雌型継手5について説明する。本実施例では、函体の内側に凸部を設けた継手を雄型継手4、函体の外側に凸部を設けた継手を雌型継手5と定義するが、本発明に係るゴム輪は雄型継手4にも、雌型継手5にも取り付けることができ、本実施例に限定されるものではない。
また、雄型継手4及び雌型継手5は、図1に示すように、インロー嵌合を可能とするための対向面41と51、先端面42と52及び段差面43と53によって構成される。
【0013】
なお、対向面41及び51は、少なくとも一方或いは両方が函体の軸先方向に対して平行に形成しておくことができる。
<2>ゴム輪1
【0014】
本実施例にかかるゴム輪1は、インロー嵌合可能に構成した函体の雄型継手4と雌型継手5のうち雄型継手4に取り付けて、前記雄型継手4と雌型継手5との間に介在する部材である。
当該ゴム輪1は、前記雄型継手4の対向面41に取り付け可能に構成したシール部2と、前記シール部2と一体に形成され、前記雄型継手4の先端面42に取り付け可能に構成した舌片部3を少なくとも具備する。
以下に、各部材を説明する。
【0015】
<3>シール部2
シール部2は、前記雄型継手4の対向面41に取り付けられる基部21と、基部21の上方に設けて前記雌型継手5の対向面51に圧接するように形成するリップ部22とを有する。
前記基部21の下方は、雄型継手4の成型後に接着剤などの周知の接合方法によって取付け可能とし、前記リップ部22は、嵌合時に雌型継手5の対向面51と圧接可能に構成する。具体的には、前記対向面51に接する面に切り溝を設けた従来知られる形態を用いる。
【0016】
<4>舌片部3
舌片部3は、前記シール部2の基部21の一方の側から、下方に垂れ下がるように形成し、ゴム輪1の取付時に雄型継手4の先端面42に接着剤などの周知の接合方法によって取り付け可能に構成する。
【0017】
舌片部3の長さH1は特に限定するものではないが、前記先端面42から函体の内部にはみ出さない程度に、先端面42の長さH0より小さくすることが一般的である。
【0018】
また、舌片部3の厚さT1は、函体の雌雄嵌合時の先端面42と段差面53との間に施工時に予め設ける間隙の幅と略同等の厚さとする。
【0019】
[継手嵌合時の作用]
次に、本実施例に係るゴム輪1を取り付けた雄型継手4を雌型継手5に圧入嵌合する際のゴム輪1の作用について説明する。
図3は本実施例に係るゴム輪1を取り付けた雄型継手4と雌型継手5との嵌合途中における断面図である。
図3を参照すると、雄型継手4に取り付けられたゴム輪1のリップ部22を雌型継手5の対向面51に圧接しながら嵌合することにより、当該シール部2が雄型継手4の段差面43の方向に引っ張られる。この際、シール部2が受ける引張力に対して、先端面42に取り付けられた舌片部3が抵抗することにより、シール部2の捲れや捻れが拘束される。したがって、シール部2の捲れや捻れに伴う破損が生じることなく、確実に対向面41、51間を水封止することができる。
【0020】
[継手構造]
次に、ゴム輪1を取り付けた雄型継手4を雌型継手5に圧入嵌合後の構造を説明する。
図4は、本実施例に係るゴム輪1を取り付けた雄型継手4と雌型継手5が圧入嵌合したときの継手構造を示す断面図である。
図4を参照すると、ゴム輪1の舌片部3が雄型継手4の先端面42と、雌型継手5の段差面53の間に介在するため、クッション材として機能する。
したがって、雄型継手4と雌型継手5との間の干渉による継手端部の破損を防止することができる。
【0021】
また、対向面41に取り付けられたシール部2を先端面42の近傍まで前方に移動して配置しているため、雄型継手4と雌型継手5との間の水平方向への移動に対して、シール部2が水封止可能な出入り長さLをより長く確保することができるほか、上述した舌片部3によってシール部2が補強されるため、圧入嵌合時においてもゴム輪1が捲れたり捻れたりすることはない。
【0022】
図5に、雄型継手4と雌型継手5との間にずれが生じた場合の継手構造の状態を示す断面図を示す。
地震などによって函体が振動した場合であっても、シール部2が水封止可能な出入り長さLの分だけ継手間のずれを許容することができるため、地震などの震動に対して、より高いシール性を得ることができる。
【0023】
本実施例に係るゴム輪1を用いることにより、シール部2の出入り長さが確保できることと、圧入嵌合時におけるシール部2の補強という2つの課題を同時に解決してシール性を向上することができるとともに、継手同士の干渉による継手端部の破損を防止することができる。
【実施例2】
【0024】
図6に、本発明の第2実施例の斜視図を示す。
ゴム輪1にかかる舌片部3は、函体の雄型継手4に対して全周設けなくてもよく、図6のように周回方向に対して、部分的或いは断続的に設けてもよい。
舌片部3の配置は、雄型継手4の周回軌跡のうち直線部分の場所に設けるほうが、ゴム輪1の製造面、施工面から望ましい。
【実施例3】
【0025】
図7に、本発明の第3実施例の断面図を示す。
図7に示す雄型継手4は、対向面41と先端面42との交差部分に新たに溝部44を設けてあり、当該溝部44にゴム輪1の基部21を取り付けて構成してある。
このとき、雄型継手4のシール部2が受ける圧入嵌合時の外力に対して、舌片部3と溝部44の側面441が付着力によって抵抗するほか、雄型継手4の抜き出し時に受ける外力に対しては、前記溝部44の側面441が抵抗するため、よりシール部2を強固に補強することができ、シール性を高めることができる。
また、雄型継手4の溝部44を雄型継手4の周回方向に対して部分的に設けてある場合には、溝部44の配置形状に合わせるように、ゴム輪1の基部21の厚さを夫々変更するように構成してもよい。
【実施例4】
【0026】
図8に、本発明の第4実施例の断面図を示す。
図8に示すように、ゴム輪1は、当該ゴム輪1の基部21の下方にアンカ部211を設けてもよい。前記アンカ部211を雄型継手4の成型時に埋め込んで一体化することにより、より強固にゴム輪1を固定することができ、シール性の向上を図ることができる。また、アンカ部211は、雄型継手4の周回方向に対して部分的或いは断続的に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1における雄型継手4の断面図。
【図2】図1におけるゴム輪1の取付周辺の拡大図。
【図3】本発明の実施例1における継手構造の嵌合途中の断面図。
【図4】本発明の実施例1における継手構造の嵌合後の断面図。
【図5】本発明の実施例1における継手構造の振動発生時の状態を示す断面図。
【図6】本発明の第2実施例における雄型継手4の部分斜視図。
【図7】本発明の第3実施例における雄型継手4の断面図。
【図8】本発明の第4実施例における雄型継手4の断面図。
【符号の説明】
【0028】
1:ゴム輪
2:シール部
21:基部
211:アンカ部
22:リップ部
3:舌片部
4:雄型継手
5:雌型継手
41、51:対向面
42、52:先端面
43、53:段差面
44:溝部
441:側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インロー嵌合可能に構成した函体の雄型継手と雌型継手のうち一方の継手に取り付けるゴム輪であって、
前記ゴム輪は、前記一方の継手の対向面に取り付け可能なシール部と、
前記シール部と一体に形成され、前記一方の継手の先端面に取り付け可能な舌片部とを備え、
前記シール部は、前記一方の継手に取り付けられる基部と、他方の継手の対向面に圧接可能に形成したリップ部とを有し、
前記舌片部は、函体の嵌合時に一方の継手の先端面と他方の継手の段差面との間に介在するように形成してあることを特徴とする、
ゴム輪。
【請求項2】
前記舌片部が、前記シール部に対して断続的又は連続的に形成したことを特徴とする、請求項1に記載の、ゴム輪。
【請求項3】
インロー嵌合可能に構成する函体の継手構造であって、
請求項1又は2の何れかに記載のゴム輪を函体の雄型継手と雌型継手のうち一方の継手に取り付けてあり、
前記ゴム輪のシール部が前記一方の継手と他方の継手との対向面間に圧入介在するように配してあり、
前記ゴム輪の舌片部が前記一方の継手の先端面と他方の継手の段差面との間に介在するように配してあることを特徴とする、
函体の継手構造。
【請求項4】
前記ゴム輪のシール部及び舌片部のうち、少なくとも一つが一方の継手に接着材によって接着して取り付けてあることを特徴とする、請求項3に記載の函体の継手構造。
【請求項5】
前記ゴム輪のシール部及び舌片部のうち、少なくとも一つが一方の継手と一体成形することにより取り付けてあることを特徴とする、請求項3又は4に記載の函体の継手構造。
【請求項6】
前記雄型継手及び雌型継手の対向面のうち少なくとも一つの面が、函体の軸先方向と平行に形成したことを特徴とする、請求項3乃至5の何れかに記載の函体の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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