分析装置、イオン化装置及び分析方法
【課題】 イオンの真空部への導入損失率を低減し、感度を上昇させる。
【解決手段】 バリヤー放電、および、バリヤー放電で生じた励起分子またはイオンと試料との反応による試料のイオン化を、大気圧よりも低圧下で行う。
【解決手段】 バリヤー放電、および、バリヤー放電で生じた励起分子またはイオンと試料との反応による試料のイオン化を、大気圧よりも低圧下で行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌や大気の汚染の測定、食品の農薬検査、血中代謝物による診断など、混合試料中の微量物質をその場で簡便に、高感度に測定する装置が求められている。微量物質の高感度測定が可能な方法の一つとして、質量分析が用いられている。
【0003】
質量分析では、イオン源において物質を気相のイオンとし、これを真空部に導入して質量分離を行う。質量分析の高感度化のためには、質量分析部や検出器の改良のほかに、イオン源の性能向上による感度向上が重要である。
【0004】
固体や液体試料、あるいは、液体や気体試料から固相抽出された試料に適用できるイオン源はいくつか知られている。
【0005】
最も古くから用いられている方法は、電子衝撃イオン化である。これは、試料を加熱等で気化して試料ガスとし、真空下で試料ガスに電子線を照射し、イオン化するものである。電子衝撃イオン化はエネルギーが高いことから、試料分子構造が壊れるフラグメンテーションが起きやすく、未知試料をスペクトルパターンから推定することに用いられる。
【0006】
フラグメンテーションが少ないイオン化方法としては、大気圧化学イオン化がある(特許文献1)。これは、試料を加熱等で気化し、試料ガスを、大気圧下でのコロナ放電によって生成した種イオンと混合し、イオン分子反応によりイオン化するものである。さらに、大気圧化学イオン化よりもイオン化効率の高い方法として、最近、誘電体バリヤー放電イオン化が知られるようになった(特許文献2)。誘電体バリヤー放電では電極の間に誘電体を挟むことで、プラズマ中の中性ガスやイオンの温度の上昇を防ぎ低温のプラズマを発生させる。プラズマにより励起分子やイオンが生成し、試料ガスと反応し、試料イオンを生成する。バリヤー放電では生成する励起分子やイオンの量が多く、イオン化効率が高い。特許文献2では、大気圧中でプローブから噴出したプラズマを直接試料にあててイオン化し、生成したイオンを質量分析装置に導入している。
【0007】
フラグメンテーションが少なく、試料を加熱しないイオン化方法としては、エレクトロスプレーイオン化がある(特許文献3)。これは、試料を含む電解質溶液を、高電圧をかけながら大気圧下で噴霧することで試料をイオン化するものである。また、マトリクス支援レーザーイオン化も挙げられる(特許文献4)。これは、マトリクス試薬と混合した試料に、真空下でレーザーを照射し、イオン化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US7064320
【特許文献2】WO2009/102766
【特許文献3】US5306412
【特許文献4】WO2007/0970230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子衝撃イオン化では、試料のフラグメンテーションによりスペクトルが複雑となり、混合物試料の測定のような、複数成分の同時測定は困難であるという課題があった。
【0010】
特許文献1に記載の大気圧化学イオン化では、大気圧下で生成した試料イオンを細孔やキャピラリーを通して真空部に導入する。このため、細孔やキャピラリーを通る際にイオンの損失が発生するという課題があった。また、大気圧化学イオン化に用いられるコロナ放電の荷電粒子の密度が低いため、生成されるイオンの数が少ないという課題もあった。
【0011】
特許文献2に記載の大気圧下のバリヤー放電を利用したイオン化法では、荷電粒子の密度が高いため、生成されるイオンの数は多いが、大気圧化学イオン化イオン源の場合と同様に、生成したイオンを細孔やキャピラリーを通して真空部に導入する際のイオンの損失のため、感度が低下するという課題があった。
【0012】
また、固体や液体試料、あるいは、液体や気体試料から固相抽出された試料を大気圧下で加熱気化して試料ガスとしてからイオン化する場合、固体や液体は蒸気圧が低く、高温での加熱が必要なため、試料分子が熱分解を起こすという問題があった。また、高温加熱のため電力を多く消費するという問題があった。また、試料ガスをイオン源に導入する際に、配管表面に吸着して損失するという問題があった。
【0013】
特許文献3に記載のエレクトロスプレーイオン化では、イオン性物質などの蒸気圧の極めて低い物質でも加熱せずにイオン化できるが、試料をスプレー用溶媒と混合する作業が必要であり、簡便性に欠けるという課題があった。また、大気圧化学イオン化イオン源の場合と同様に、生成したイオンを細孔やキャピラリーを通して真空部に導入する際のイオンの損失のため、感度が低下するという課題があった。
【0014】
特許文献4に記載のマトリクス支援レーザーイオン化では、試料をマトリクスと混合する作業が必要であり、簡便性に欠けるという課題があった。また、レーザー光源を必要とし、装置が複雑で大型であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明では、バリヤー放電、および、バリヤー放電で生じた励起分子またはイオンと試料との反応による試料のイオン化を、大気圧よりも低圧下で行う構造であることを特徴としている。バリヤー放電を大気圧よりも低圧下で行うことにより、生成した試料イオンを細孔やキャピラリーを通して真空部に導入する際の損失率を低減し、感度を上昇させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、試料を簡便に高感度測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図2】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図3】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図4】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図5】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図6】試料調製方法の例。
【図7】試料調製方法の例。
【図8】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図9】本発明による質量分析装置の概観例を示す概略図。
【図10】本発明による質量分析装置の画面表示の例。
【図11】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図12】試料調製方法の例。
【図13】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図14】試料調製方法の例。
【図15】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例1)イオン化室の形状、試料加熱
図1に、本発明による質量分析装置構成の一例を示す。
【0019】
イオン化室壁16は、円錐形となっている。図はイオン化室を断面図で示している。直方体と比較してイオン化室内の体積を低減することができ、排気ポンプによる真空引きの時間を短縮することができる。また、試料イオンの拡散を抑えて高濃度に保ち、感度を向上することができる。
【0020】
また、試料台2にはヒーター17が内蔵され、試料1を加熱することができる。イオン化室3内での試料の蒸気圧を高めることで感度が向上する。排気ポンプ50による減圧下なので、大気圧下よりも低い温度で試料が気化するため、試料が分解されない程度の加熱で済み、また、ヒーターの消費電力も小さくすることができる。また、加熱速度を制御し、例えば毎分50℃程度の速さで温度を上昇させてもよい。段階的に試料を昇温することで、試料中に含まれている、沸点の異なる物質が異なる時間に気化する。この方法により、異なる物質が同じ分子量をもつ場合でも、沸点が異なれば区別して検出することができる。
【0021】
導入管4はガラスや樹脂などの誘電体でできた管であり、一方の端は大気に開放され、もう一方の端はイオン化室壁16を貫通してイオン化室3に通じている。導入管4の内部にはワイヤ電極5が通され、外部には電極6が配置されている。ワイヤ電極5と電極6には交流電源49により交流電圧がかけられ、導入管4内を流れる空気を介してバリヤー放電がおき、電極間にプラズマが発生する。
【0022】
プラズマには電子や、空気の成分から生ずる励起分子やイオンが含まれ、ガス流に乗ってイオン化室3に吹き出す。ワイヤ電極5と電極6の位置を調節することにより、試料に接触するプラズマ成分を変えることができる。導入管4内のバリヤー放電領域の位置に対し、ワイヤ電極5が放電ガス流の下流方向にさらに伸びている場合は、プラズマ内の高エネルギーの電子やイオンは試料に接触する前にワイヤ電極5に捕捉され、試料には低エネルギーのイオンや励起分子が接触するため、ソフトなイオン化が可能である。そうでない場合、高エネルギーのプラズマ成分が試料と接触するため、試料はフラグメント化が起こりやすいが、イオン化エネルギーの大きい物質がイオン化する効率は高くなる。尚、ここではワイヤ電極5と外部の電極6との組み合わせによるバリヤー放電を例に記載しているが、一対の電極により誘電体を挟むような構成であればバリヤー放電を発生させることができるため、この形態に限られない。
【0023】
試料ガスはこの励起分子やイオン15と接触してイオン化し、イオン取出し管7および差動排気部8を通過して質量分析部48において質量分析される。排気管10の開口部をイオン取出し管7の周囲に設置することで、生じた試料イオンの流れがイオン取出し管7方向に向けられ、イオン取出し管7への試料イオン流入効率が向上し、感度が向上する。
【0024】
バリヤー放電領域およびイオン化室3は、排気ポンプ50およびイオン取出し管7に接続された質量分析部48の排気により100Pa-10000Paの圧力に保たれる。バリヤー放電領域およびイオン化室3の圧力が500Pa以下では、試料分子に比べて種イオンの量が多いため、イオンサプレッションの影響を受けにくいという利点がある。また、1000Pa以上の圧力では、イオン分子反応がおきやすくなることから、分子イオンを感度よく検出することができる。500〜1000Paでは、その中間の性質となる。イオン化室3の圧力は、イオン化室3に真空ゲージを設置することで測定することができる。また、排気ポンプ50およびイオン取出し管7に接続された質量分析部の排気量と、導入管4のコンダクタンスにより調整することができる。バリヤー放電領域の圧力は、イオン化室3の圧力と、導入管4内でのバリヤー放電領域の位置から算出される。例えば、排気ポンプ5の排気速度が100L/分であり、導入管4が内径0.2mm,長さ10mmのキャピラリーであった場合、イオン化室3はおおよそ500Paに保たれる。バリヤー放電領域の位置が、導入管4のイオン化室3側開口部の直近であれば、バリヤー放電領域の圧力もおおよそ500Paである。
【0025】
以上の構成により、放電ガスが空気でも、安定した放電が可能であり、特別な放電ガスを準備する必要がない。また、発生した試料イオンの質量分析部48への導入効率が向上し、感度が向上する。
【0026】
(実施例2)システム構成例
図2に、本発明による質量分析装置のシステム構成の一例を示す。
【0027】
試料1は、試料台2に乗せられ、イオン化室3内に導入される。試料を載せる試料台は、例えばカセット状のもので、イオン化室3にはめ込むようなものを使うことができる。試料は、固体、液体、固体に吸着させた物質、これらの混合物のいずれかなどである。粉末や液体の場合には、皿状の容器に入れた状態でもよい。イオン化室3には、バリヤー放電装置が接続されている。バリヤー放電装置は、ガラス、ポリマーなどの誘電体からなり、バリヤー放電用のガスをイオン化室3に導入する管4と、管内に導入されたワイヤ電極5と、管外に設置された電極6と、ワイヤ電極5と電極6の間に交流電圧を印加する交流電源からなる。バリヤー放電用のガスは、空気の他、ヘリウム、窒素、アルゴンなどを使用してもよい。バリヤー放電装置から発生した励起分子やイオン15は、試料1と接触して試料をイオン化する。また、イオン化室3にはイオン取出し管7が接続され、イオン化室3内で生成した試料イオンを差動排気室8に導く。イオン取出し管7には、イオン化室3と差動排気室8の間を接続あるいは遮断する開閉バルブ9がある。イオン化室壁27、イオン取出し管7、開閉バルブ9は、試料ガスの吸着による汚染を抑えるために加熱してもよい。また、イオン化室3にはダイヤフラムポンプやロータリーポンプなどの排気ポンプ50が排気管10を介して接続されており、排気管10にはイオン化室の真空度をモニターする真空ゲージ11、イオン化室の圧力を調整するリークバルブ12、イオン化室3と排気ポンプの間を接続あるいは遮断する開閉バルブ13が接続されている。差動排気室8には圧力をモニターする真空ゲージ14が接続されている。差動排気室8に導入された試料イオンの一部は、質量分析部48に入り、質量分析される。コンピュータ51は、交流電源49、開閉バルブ9、真空ゲージ11、リークバルブ12、開閉バルブ13、真空ゲージ14、排気ポンプ50、モニター画面52、および質量分析部48と接続され、計測値のモニタリングや各部の動作の制御を行う。また、試料イオンの測定には、質量分析のほかに、イオンモビリティー分析装置などを用いても良い。
【0028】
(動作シーケンス例)
次に、図2に示した分析装置における、分析の際の動作シーケンスの一例を述べる。
(1)初期状態は、開閉バルブ9、開閉バルブ13、およびリークバルブ12は閉、交流電源49はOFF、排気ポンプ、質量分析部48はONとなっている。
(2)コンピュータ51は、質量分析部48の正常動作および、真空ゲージ14の計測値が所定の圧力範囲で安定することを確認する。
(3)コンピュータ51は、リークバルブ12を開き、真空ゲージ11が大気圧を示したことを確認後、リークバルブ12を閉じる。
(4)ユーザは、試料台2を引き出し、試料1をのせ、試料台2を戻し、モニター画面52にて、測定開始を選択する。
(5)コンピュータ51は開閉バルブ13を開き、排気ポンプ50によりイオン化室3内を真空引きしながら真空ゲージ11の計測値をモニターし、計測値が所定の圧力範囲で安定することを確認する。
(6)コンピュータ51は開閉バルブ9を開き、真空ゲージ14の計測値をモニターし、計測値が所定の圧力範囲で安定することを確認する。このとき、イオン化室3には、導入管4から空気が流入し、管10および管7から排気された状態となっており、圧力は100Paから10000 Pa程度である。
(7)コンピュータ51は交流電源をONにし、バリヤー放電を開始する。バリヤー放電により発生した励起分子やイオン15は試料1の表面あるいは試料1から生じた試料蒸気と接触し、生成した試料イオンは、イオン取出し管7と差動排気室8を通って質量分析装置に入る。
(8)質量分析部48は質量スペクトルを取得し、コンピュータ51に送る。
(9)コンピュータ51はデータを処理し、モニター画面52に表示する。
(10)ユーザがモニター画面52上で測定終了を選択すると、コンピュータ51は交流電源49をOFF、開閉バルブ13と開閉バルブ9を閉、リークバルブ12を開とし、真空ゲージ11が大気圧を示したことを確認後、リークバルブ12を閉じ、モニター画面52に試料交換可能の表示を行う。
(11)ユーザは試料台2を引き出し、試料台2を洗浄するか、新たな試料台と交換する。連続して測定を行う場合には、上記シーケンス4に戻る。
【0029】
上記シーケンス中に、圧力計測値や、質量分析部48、交流電源49の動作に異状が確認された場合は、コンピュータ51は開閉バルブ9、および開閉バルブ13は閉、リークバルブ12は開、交流電源49はOFFとし、モニター画面52にエラーを表示する。
【0030】
この装置構成および動作シーケンスにより、固体あるいは液体試料を低圧下に置いた測定を行うことができる。バリヤー放電で生成した励起分子あるいはイオンが試料表面の試料蒸気と接触してイオン化し、差動排気部へ導入するため、イオン化効率が高く、試料イオンの損失が少ない。また、試料を大気圧で加熱気化しイオン源へ導入するプロセスがなく、導入過程で試料を損失することがない。例えば、試料ガスを配管を介してイオン化領域に導入する工程を省き、配管への試料吸着による試料の損失も防ぐことができる。以上により、固体あるいは液体試料のイオン化を高感度に行うことができる。また、バリヤー放電を用いたイオン化により、フラグメンテーションが少ないスペクトルが得られることから、複数物質の同時検出が可能である。バリヤー放電は、交流電源だけで動作できるため、装置の小型化が可能となる。
【0031】
(実施例3)放電管の向き
図3に、本発明による質量分析装置構成の一例を示す。
【0032】
試料1は試料台2に乗せられる。試料台2は高さの調節が可能であり、試料に対する導入管4やイオン取出し管7や排気管10との位置関係を調整することが可能である。導入管4と、イオン取出し管7および排気管10は、試料1を挟むように配置される。導入管4は試料台2の上面と平行か所定の角度を持って配置されてもよい。この構成により、バリヤー放電により生じた励起分子やイオンが効率よく試料表面を覆うことができ、イオン化効率が向上し、感度が向上する。
【0033】
(実施例4)SPMEの使用
図4に、本発明による質量分析装置構成の一例を示す。
【0034】
気体や液体中から目的物質を抽出する方法として、SPME(Solid phase microextraction、固相マイクロ抽出)という方法が知られている。SPMEは、ファイバにコーティングされた固相抽出剤に対し、目的物質を分配あるいは吸着で抽出するものである。このSPMEファイバ18を、ホルダー19に収納した状態で、ホルダー19の先端をセプタム20を通してイオン化室3に入れ、次に、ファイバ18を露出する。ファイバ18は、バリヤー放電により生じた励起分子やイオン15に曝され、試料がイオン化される。この構成により、SPMEにより採取した試料についても、バリヤー放電によるイオン化を用いた高感度な測定が可能となる。
【0035】
(実施例5)電熱線で加熱
図5に、本発明による質量分析装置構成の一例を示す。
【0036】
試料1は電熱線表面に固定されている。例えば、固体試料を溶媒に溶解して電熱線表面につけた後、蒸発乾固したものや、粘度の高い液体試料を電熱線表面につけたものや、あらかじめ固相抽出剤を電熱線表面にコーティングし、その固相抽出剤に試料を抽出したもの、などが使用できる。セプタム20を通して電熱線の両端から2本の導線がイオン化室3外に出ており、直流電源55が接続されている。試料1は、バリヤー放電により生じた励起分子やイオン15に曝され、試料がイオン化される。このとき、電熱線に通電することで電熱線表面の試料を加熱し、試料の気化を促進することができる。この構成により、低電力で試料の加熱ができる。また、電流を段階的に上げていくことで、試料温度を段階的に上昇させることができる。段階的に試料を昇温することで、試料中に含まれている、沸点の異なる物質が異なる時間に気化する。この方法により、異なる物質が同じ分子量をもつ場合でも、沸点が異なれば区別して検出することができる。
【0037】
(実施例6)溶液からのサンプリングの方法
図6に、本発明による質量分析装置に導入する試料の調製方法の一例として、固相抽出による方法を示す。
【0038】
測定対象としては、水や土壌の汚染検査や、食品からの抽出液の農薬検出、血液、尿、唾液などの生体試料中の代謝物質や薬物の検出などに適用できる。
【0039】
ガラスやプラスチックや金属からなる容器22に、溶液試料24を入れる。固相抽出剤21を溶液試料24に浸し、フタ23を閉じる。このとき、容器を振る、撹拌子で撹拌する、超音波をかけるなどして撹拌することで、抽出時間を短縮することができる。また、試料溶液24に、内部標準物質を添加することで、分析の定量性を向上することができる。また、抽出したい試料の性質に応じ、溶液試料24に酸やアルカリを添加する、緩衝液を添加して液性を調整する、塩を添加する、有機溶媒を添加する、などして、目的物質の固相との親和性を高め、抽出効率を向上することができる。内部標準物質や酸、アルカリ、緩衝剤、塩、有機溶媒などの物質は、あらかじめ容器22に計量してあっても良い。固相抽出剤としては、シリコーン、ポリアクリレートなどの樹脂、イオン交換樹脂、シリカ、アルミナ、金属や、その表面に化学修飾を施したもの、抗体を固定したもの、多孔質のものなどを使用できる。
【0040】
一定時間の抽出後、固相抽出剤21を容器22に残した状態で、溶液試料24を捨て、代わりに洗浄液を入れて固相抽出剤21をすすぐ。洗浄液を捨て、固相抽出剤21をピンセットなどで取り出し、図1の試料台2に乗せて測定を行う。この試料調製方法により、溶液試料中の目的物質を固相抽出剤に濃縮して装置に導入することができ、感度が向上する。
【0041】
(実施例7)溶液からのサンプリングの方法2
図7に、本発明による質量分析装置に導入する試料の調製方法の一例として、固相抽出による方法を示す。
【0042】
ガラスやプラスチックや金属からなる容器22に、溶液試料24を入れ、フタ25を閉じる。フタ25には、あらかじめ固相抽出剤21が固定されており、溶液試料24の上のヘッドスペースガスに曝され、ヘッドスペースガス中の目的物質を抽出する。あるいは、溶液試料24を入れてフタ25を閉じた後、容器22を倒置することで、溶液試料24から直接目的物質を抽出することもできる。容器22とフタ25に同一の試料ラベルを貼ることで、試料の取り違えを防止することができる。一定時間の抽出後、フタ25を開け、固相抽出剤21をピンセットなどで取り出し、図1の試料台2に乗せて測定を行う。この試料調製方法により、溶液試料のヘッドスペースガス中の目的物質を簡便に、固相抽出剤に濃縮して装置に導入することができる。
【0043】
(実施例8)サンプリングのフタをそのままつけられる試料導入部
図8に、図7に示した固相抽出方法で取得した試料を測定するための質量分析装置構成の一例を示す。
【0044】
イオン化室壁27は円筒形であり、上面に図7のフタ25をねじ込むネジ部が設けられており、サンプル抽出後、フタをそのまま取り付けることでイオン化室3への試料の設置ができる。イオン化室壁27とフタ25の間はパッキン26が挟まれ、イオン化室3の気密が保たれる。イオン取出し管7を曲げて試料イオンが最も効率的に取込める場所にイオン取出し管の開口部を設置する。この図8の質量分析装置構成を内蔵したポータブル分析計の外観の一例を図9に示す。装置筐体28には充電電源接続口30、電源スイッチ31、バッテリー残量表示32、画面33、パーソナルコンピュータ接続口34、テンキー35、印字紙排出口36、扉37、試料導入口フタ38がある。また、持ち手29がついており、手に提げて持ち運ぶことができる。薬物検査を行う場合の画面表示の一例を図10に示す。
【0045】
図10(a)のように、画面33に測定条件の選択肢が表示され、ユーザはタッチパネル操作、あるいはテンキー35などにより測定条件を選択する。
【0046】
図10(b)のように、ユーザに試料導入が指示される。図9に示した装置では、扉37を開けることで、インターロックが作動し、交流電源49がOFFとなり、イオン化室3は大気圧となる。試料導入口フタ38を外し、ネジ部に試料抽出後のフタ25をねじ込んで取り付ける。扉37を閉じるとインターロックが解除され、測定可能となる。ユーザは画面33の表示にしたがって、測定開始を選択する。
【0047】
測定中は図10(c)のように、画面33に測定進行率が表示される。この間、扉37はロックされ、開放不可となる。バリヤー放電用のガスは採気口56から大気がフィルタを介して導入される。空気以外の気体を放電ガスとして使用する際は、採気口56にガスボンベ等から配管を接続してガスを導入する。
【0048】
測定が終了すると、図10(d)のように画面33に終了の表示と結果が表示される。測定結果と時刻、その他必要に応じ、測定者名や試料名などが紙に印字され印字紙排出口36から排出される。質量分析装置により測定されたスペクトルや検査の判定結果、測定の時刻やその他のパラメータは装置内部のコンピュータに保存される。
【0049】
試料測定後、フタ25を取り外して試料導入口フタ38を取り付ける。試料測定と同様に測定を行い、試料残留物による汚染が無いか確認し、汚染が確認された場合はクリーニング動作に入り、図10(e)のように、画面33にクリーニング実行の表示を行う。クリーニングは、図8中のイオン化室壁27、導入管4、イオン取出し管7を加熱するか、洗浄液で洗浄する。測定データの取出し、質量分析装置のパラメータ設定変更、分析ソフトウェアの変更などを行う場合は、パーソナルコンピュータ接続口34にパーソナルコンピュータを接続して操作を行う。
このような装置構成により、固相抽出した試料を簡便に高感度測定することができる。
【0050】
(実施例9)試料を挟んでバリヤー放電
図11(A)に、本発明による質量分析装置構成の一例を示す。
【0051】
イオン化室壁27には空気導入口39が設けられ、空気をイオン化室3に導入する。空気導入口39の内径や長さにより、空気の流入量を調節できる。あるいは、空気導入口39にバルブを設けてもよい。また、イオン化室壁27には排気管10とイオン取出し管7が設けられ、イオン化室3内は減圧される。試料台40には、複数の試料を置くことができる。一例として、試料台40に複数種類の固相抽出剤を固定し、この試料台40を溶液試料に浸漬し、各固相抽出剤に異なる物質を抽出してもよい。固相抽出剤21は、試料台40の下に設置した電極6と、上に設置したワイヤ電極5とに挟まれた位置にある。試料台40や固相抽出剤21は材質が誘電体である。そこで電極6とワイヤ電極5の間に交流電圧を印加すると、固相抽出剤21をはさんでバリヤー放電が起こり、発生した励起分子やイオン15により、固相抽出剤21に保持された試料がイオン化される。この構成により、試料に近接した空間に励起分子やイオンを発生させることができ、試料のイオン化効率が向上し、感度が向上する。
【0052】
試料台40は、一例として図11(B)に示すように円形で中心を軸として回転し、電極間に各試料を移動させることができる。この構成により、局所的に試料に励起分子やイオンを当てることができ、複数種類の試料を同一の試料台に設置しても、同時にイオン化されることなく、別々に分析することができる。
【0053】
(実施例10)溶液からのサンプリングの方法3 円筒の内側に固相
図12に、本発明による質量分析装置に導入する試料の調製方法の一例として、固相抽出による方法を示す。
【0054】
ガラスやプラスチックや金属からなる円筒状の容器22の内壁に、固相抽出剤21が固定されている。この容器22に、試料溶液を通液する。試料溶液を複数回通液し、目的物質の抽出量を向上させることもできる。あるいは、容器22の両開口部にフタ25を取り付けて密閉できる構造とし、溶液試料を入れ、溶液を攪拌するなどして一定時間の抽出後、フタ25を開け、溶液試料を捨てる。次に、洗浄液を通液して固相抽出剤21表面や容器22の内壁に残った溶液試料を除去する。
【0055】
図13に、図12の容器22を取り付けて試料の測定を行うことができる質量分析装置の一例を示す。容器22の開口部の一方をバルブ41に接続する。もう一方の開口部に、ワイヤ電極5と空気導入口39が付属したフタ42を接続する。容器22の周囲に、電極6を固定する。バルブ41を開くことにより、容器22内は減圧され、バリヤー放電の起こる領域は圧力100Paから10000Paの間のいずれかの値に保たれる。ワイヤ電極5と電極6の間に交流電圧を印加することにより、固相抽出剤21をはさんでバリヤー放電が起こり、固相抽出剤21に保持された物質はイオン化され、バルブと第一差動排気室43と第二差動排気室44を通過して質量分析部48に入り、スペクトルを取得する。
【0056】
このような試料調製方法および装置構成により、広い面積を有する固相抽出剤を用いた抽出と測定が行えるため、抽出時間の短縮、および、抽出量の向上による感度向上が可能となる。また、誘電体部および固相が一体であり、測定毎に簡単に交換できる構造であることから、バリヤー放電に接する領域、および試料を設置する領域の管壁や器壁の汚れによる測定感度低下を防ぐことができる。
【0057】
(実施例11)溶液からのサンプリングの方法4 多孔質の固相
図14に、本発明による質量分析装置に導入する試料の調製方法の一例として、固相抽出による方法を示す。
【0058】
ガラスやプラスチックなどの誘電体からなる注射器筒45の内部に、穴の開いた固相抽出剤46が固定されている。このような固相抽出剤としては、例えば、メンブレンフィルター、充填したシリカや樹脂などの固相ビーズ、モノリス構造を持ったポリマー、多孔質シリコーンや、これらの表面に化学修飾を施したもの、これらの混合物などを用いることができる。この注射器筒45に、試料溶液24をプランジャー47を引いて吸い込み、固相抽出剤46を通過させた後、プランジャー47を押して吐き出す。試料溶液を複数回通液し、目的物質の抽出量を向上させることもできる。次に、水、緩衝液、洗剤液、あるいは有機溶媒などの洗浄液を通液して固相抽出剤46や注射器筒45の内壁に残った溶液試料を除去する。次に、空気を通して、固相抽出剤46の孔内に残った液体を除去する。試料は、気体や微粒子でもよい。この試料調製方法では、固相抽出剤の表面積が大きく、試料が効率よく固相抽出剤と接触することから、抽出時間が短縮される。また、簡便な試料の濃縮が可能となる。
【0059】
図15に、図14の注射器筒45を取り付けて試料の測定を行うことができる分析装置の一例を示す。注射器筒45の開口部を開閉バルブ41に接続する。注射器筒45の先端に、ワイヤ電極5を、注射器筒45の先端部位の周囲に、電極6を固定する。開閉バルブ41を開くことにより、注射器筒45内は減圧され、圧力はおよそ100Paから10000Paの間のいずれかの値に保たれる。注射器筒45の先端からは空気が流入しており、ワイヤ電極5と電極6の間に交流電圧を印加することにより、バリヤー放電が起こり、励起分子あるいはイオン15が生成され、固相抽出剤46の穴を通過する。このとき、固相抽出剤に保持された物質がイオン化され、生成した試料イオンは開閉バルブ41と第一差動排気室43と第二差動排気室44を通過して質量分析部48に入り、スペクトルを取得する。
【0060】
このような装置構成により、バリヤー放電で生成した励起分子やイオンは全て固相表面を通過し、また、広い面積を有する固相抽出剤からの試料のイオン化が行えるため、イオン化効率が向上し、感度が向上する。
【符号の説明】
【0061】
1…試料、2…試料台、3…イオン化室、4…導入管、5…ワイヤ電極、6…電極、7…イオン取出し管、8…差動排気室、9…開閉バルブ、10…排気管、11…真空ゲージ、12…リークバルブ、13…開閉バルブ、14…真空ゲージ、15…励起分子あるいはイオン、16…イオン化室壁、17…ヒーター、18…SPMEファイバ、19…ホルダー、20…セプタム、21…固相抽出剤、22…容器、23…フタ、24…溶液試料、25…フタ、26…パッキン、27…イオン化室壁、28…装置筐体、29…持ち手、30…充電電源接続口、31…電源スイッチ、32…バッテリー残量表示、33…画面、34…パーソナルコンピュータ接続口、35…テンキー、36…印字紙排出口、37…扉、38…試料導入口フタ、39…空気導入口、40…試料台、41…開閉バルブ、42…フタ、43…第一差動排気室、44…第二差動排気室、45…注射器筒、46…固相抽出剤、47…プランジャー、48…質量分析部、49…交流電源、50…排気ポンプ、51…コンピュータ、52…モニター画面、53…ロータリーポンプ、54…ターボ分子ポンプ、55…直流電源、56…採気口
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌や大気の汚染の測定、食品の農薬検査、血中代謝物による診断など、混合試料中の微量物質をその場で簡便に、高感度に測定する装置が求められている。微量物質の高感度測定が可能な方法の一つとして、質量分析が用いられている。
【0003】
質量分析では、イオン源において物質を気相のイオンとし、これを真空部に導入して質量分離を行う。質量分析の高感度化のためには、質量分析部や検出器の改良のほかに、イオン源の性能向上による感度向上が重要である。
【0004】
固体や液体試料、あるいは、液体や気体試料から固相抽出された試料に適用できるイオン源はいくつか知られている。
【0005】
最も古くから用いられている方法は、電子衝撃イオン化である。これは、試料を加熱等で気化して試料ガスとし、真空下で試料ガスに電子線を照射し、イオン化するものである。電子衝撃イオン化はエネルギーが高いことから、試料分子構造が壊れるフラグメンテーションが起きやすく、未知試料をスペクトルパターンから推定することに用いられる。
【0006】
フラグメンテーションが少ないイオン化方法としては、大気圧化学イオン化がある(特許文献1)。これは、試料を加熱等で気化し、試料ガスを、大気圧下でのコロナ放電によって生成した種イオンと混合し、イオン分子反応によりイオン化するものである。さらに、大気圧化学イオン化よりもイオン化効率の高い方法として、最近、誘電体バリヤー放電イオン化が知られるようになった(特許文献2)。誘電体バリヤー放電では電極の間に誘電体を挟むことで、プラズマ中の中性ガスやイオンの温度の上昇を防ぎ低温のプラズマを発生させる。プラズマにより励起分子やイオンが生成し、試料ガスと反応し、試料イオンを生成する。バリヤー放電では生成する励起分子やイオンの量が多く、イオン化効率が高い。特許文献2では、大気圧中でプローブから噴出したプラズマを直接試料にあててイオン化し、生成したイオンを質量分析装置に導入している。
【0007】
フラグメンテーションが少なく、試料を加熱しないイオン化方法としては、エレクトロスプレーイオン化がある(特許文献3)。これは、試料を含む電解質溶液を、高電圧をかけながら大気圧下で噴霧することで試料をイオン化するものである。また、マトリクス支援レーザーイオン化も挙げられる(特許文献4)。これは、マトリクス試薬と混合した試料に、真空下でレーザーを照射し、イオン化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US7064320
【特許文献2】WO2009/102766
【特許文献3】US5306412
【特許文献4】WO2007/0970230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子衝撃イオン化では、試料のフラグメンテーションによりスペクトルが複雑となり、混合物試料の測定のような、複数成分の同時測定は困難であるという課題があった。
【0010】
特許文献1に記載の大気圧化学イオン化では、大気圧下で生成した試料イオンを細孔やキャピラリーを通して真空部に導入する。このため、細孔やキャピラリーを通る際にイオンの損失が発生するという課題があった。また、大気圧化学イオン化に用いられるコロナ放電の荷電粒子の密度が低いため、生成されるイオンの数が少ないという課題もあった。
【0011】
特許文献2に記載の大気圧下のバリヤー放電を利用したイオン化法では、荷電粒子の密度が高いため、生成されるイオンの数は多いが、大気圧化学イオン化イオン源の場合と同様に、生成したイオンを細孔やキャピラリーを通して真空部に導入する際のイオンの損失のため、感度が低下するという課題があった。
【0012】
また、固体や液体試料、あるいは、液体や気体試料から固相抽出された試料を大気圧下で加熱気化して試料ガスとしてからイオン化する場合、固体や液体は蒸気圧が低く、高温での加熱が必要なため、試料分子が熱分解を起こすという問題があった。また、高温加熱のため電力を多く消費するという問題があった。また、試料ガスをイオン源に導入する際に、配管表面に吸着して損失するという問題があった。
【0013】
特許文献3に記載のエレクトロスプレーイオン化では、イオン性物質などの蒸気圧の極めて低い物質でも加熱せずにイオン化できるが、試料をスプレー用溶媒と混合する作業が必要であり、簡便性に欠けるという課題があった。また、大気圧化学イオン化イオン源の場合と同様に、生成したイオンを細孔やキャピラリーを通して真空部に導入する際のイオンの損失のため、感度が低下するという課題があった。
【0014】
特許文献4に記載のマトリクス支援レーザーイオン化では、試料をマトリクスと混合する作業が必要であり、簡便性に欠けるという課題があった。また、レーザー光源を必要とし、装置が複雑で大型であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明では、バリヤー放電、および、バリヤー放電で生じた励起分子またはイオンと試料との反応による試料のイオン化を、大気圧よりも低圧下で行う構造であることを特徴としている。バリヤー放電を大気圧よりも低圧下で行うことにより、生成した試料イオンを細孔やキャピラリーを通して真空部に導入する際の損失率を低減し、感度を上昇させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、試料を簡便に高感度測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図2】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図3】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図4】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図5】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図6】試料調製方法の例。
【図7】試料調製方法の例。
【図8】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図9】本発明による質量分析装置の概観例を示す概略図。
【図10】本発明による質量分析装置の画面表示の例。
【図11】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図12】試料調製方法の例。
【図13】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【図14】試料調製方法の例。
【図15】本発明による質量分析装置の構成例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例1)イオン化室の形状、試料加熱
図1に、本発明による質量分析装置構成の一例を示す。
【0019】
イオン化室壁16は、円錐形となっている。図はイオン化室を断面図で示している。直方体と比較してイオン化室内の体積を低減することができ、排気ポンプによる真空引きの時間を短縮することができる。また、試料イオンの拡散を抑えて高濃度に保ち、感度を向上することができる。
【0020】
また、試料台2にはヒーター17が内蔵され、試料1を加熱することができる。イオン化室3内での試料の蒸気圧を高めることで感度が向上する。排気ポンプ50による減圧下なので、大気圧下よりも低い温度で試料が気化するため、試料が分解されない程度の加熱で済み、また、ヒーターの消費電力も小さくすることができる。また、加熱速度を制御し、例えば毎分50℃程度の速さで温度を上昇させてもよい。段階的に試料を昇温することで、試料中に含まれている、沸点の異なる物質が異なる時間に気化する。この方法により、異なる物質が同じ分子量をもつ場合でも、沸点が異なれば区別して検出することができる。
【0021】
導入管4はガラスや樹脂などの誘電体でできた管であり、一方の端は大気に開放され、もう一方の端はイオン化室壁16を貫通してイオン化室3に通じている。導入管4の内部にはワイヤ電極5が通され、外部には電極6が配置されている。ワイヤ電極5と電極6には交流電源49により交流電圧がかけられ、導入管4内を流れる空気を介してバリヤー放電がおき、電極間にプラズマが発生する。
【0022】
プラズマには電子や、空気の成分から生ずる励起分子やイオンが含まれ、ガス流に乗ってイオン化室3に吹き出す。ワイヤ電極5と電極6の位置を調節することにより、試料に接触するプラズマ成分を変えることができる。導入管4内のバリヤー放電領域の位置に対し、ワイヤ電極5が放電ガス流の下流方向にさらに伸びている場合は、プラズマ内の高エネルギーの電子やイオンは試料に接触する前にワイヤ電極5に捕捉され、試料には低エネルギーのイオンや励起分子が接触するため、ソフトなイオン化が可能である。そうでない場合、高エネルギーのプラズマ成分が試料と接触するため、試料はフラグメント化が起こりやすいが、イオン化エネルギーの大きい物質がイオン化する効率は高くなる。尚、ここではワイヤ電極5と外部の電極6との組み合わせによるバリヤー放電を例に記載しているが、一対の電極により誘電体を挟むような構成であればバリヤー放電を発生させることができるため、この形態に限られない。
【0023】
試料ガスはこの励起分子やイオン15と接触してイオン化し、イオン取出し管7および差動排気部8を通過して質量分析部48において質量分析される。排気管10の開口部をイオン取出し管7の周囲に設置することで、生じた試料イオンの流れがイオン取出し管7方向に向けられ、イオン取出し管7への試料イオン流入効率が向上し、感度が向上する。
【0024】
バリヤー放電領域およびイオン化室3は、排気ポンプ50およびイオン取出し管7に接続された質量分析部48の排気により100Pa-10000Paの圧力に保たれる。バリヤー放電領域およびイオン化室3の圧力が500Pa以下では、試料分子に比べて種イオンの量が多いため、イオンサプレッションの影響を受けにくいという利点がある。また、1000Pa以上の圧力では、イオン分子反応がおきやすくなることから、分子イオンを感度よく検出することができる。500〜1000Paでは、その中間の性質となる。イオン化室3の圧力は、イオン化室3に真空ゲージを設置することで測定することができる。また、排気ポンプ50およびイオン取出し管7に接続された質量分析部の排気量と、導入管4のコンダクタンスにより調整することができる。バリヤー放電領域の圧力は、イオン化室3の圧力と、導入管4内でのバリヤー放電領域の位置から算出される。例えば、排気ポンプ5の排気速度が100L/分であり、導入管4が内径0.2mm,長さ10mmのキャピラリーであった場合、イオン化室3はおおよそ500Paに保たれる。バリヤー放電領域の位置が、導入管4のイオン化室3側開口部の直近であれば、バリヤー放電領域の圧力もおおよそ500Paである。
【0025】
以上の構成により、放電ガスが空気でも、安定した放電が可能であり、特別な放電ガスを準備する必要がない。また、発生した試料イオンの質量分析部48への導入効率が向上し、感度が向上する。
【0026】
(実施例2)システム構成例
図2に、本発明による質量分析装置のシステム構成の一例を示す。
【0027】
試料1は、試料台2に乗せられ、イオン化室3内に導入される。試料を載せる試料台は、例えばカセット状のもので、イオン化室3にはめ込むようなものを使うことができる。試料は、固体、液体、固体に吸着させた物質、これらの混合物のいずれかなどである。粉末や液体の場合には、皿状の容器に入れた状態でもよい。イオン化室3には、バリヤー放電装置が接続されている。バリヤー放電装置は、ガラス、ポリマーなどの誘電体からなり、バリヤー放電用のガスをイオン化室3に導入する管4と、管内に導入されたワイヤ電極5と、管外に設置された電極6と、ワイヤ電極5と電極6の間に交流電圧を印加する交流電源からなる。バリヤー放電用のガスは、空気の他、ヘリウム、窒素、アルゴンなどを使用してもよい。バリヤー放電装置から発生した励起分子やイオン15は、試料1と接触して試料をイオン化する。また、イオン化室3にはイオン取出し管7が接続され、イオン化室3内で生成した試料イオンを差動排気室8に導く。イオン取出し管7には、イオン化室3と差動排気室8の間を接続あるいは遮断する開閉バルブ9がある。イオン化室壁27、イオン取出し管7、開閉バルブ9は、試料ガスの吸着による汚染を抑えるために加熱してもよい。また、イオン化室3にはダイヤフラムポンプやロータリーポンプなどの排気ポンプ50が排気管10を介して接続されており、排気管10にはイオン化室の真空度をモニターする真空ゲージ11、イオン化室の圧力を調整するリークバルブ12、イオン化室3と排気ポンプの間を接続あるいは遮断する開閉バルブ13が接続されている。差動排気室8には圧力をモニターする真空ゲージ14が接続されている。差動排気室8に導入された試料イオンの一部は、質量分析部48に入り、質量分析される。コンピュータ51は、交流電源49、開閉バルブ9、真空ゲージ11、リークバルブ12、開閉バルブ13、真空ゲージ14、排気ポンプ50、モニター画面52、および質量分析部48と接続され、計測値のモニタリングや各部の動作の制御を行う。また、試料イオンの測定には、質量分析のほかに、イオンモビリティー分析装置などを用いても良い。
【0028】
(動作シーケンス例)
次に、図2に示した分析装置における、分析の際の動作シーケンスの一例を述べる。
(1)初期状態は、開閉バルブ9、開閉バルブ13、およびリークバルブ12は閉、交流電源49はOFF、排気ポンプ、質量分析部48はONとなっている。
(2)コンピュータ51は、質量分析部48の正常動作および、真空ゲージ14の計測値が所定の圧力範囲で安定することを確認する。
(3)コンピュータ51は、リークバルブ12を開き、真空ゲージ11が大気圧を示したことを確認後、リークバルブ12を閉じる。
(4)ユーザは、試料台2を引き出し、試料1をのせ、試料台2を戻し、モニター画面52にて、測定開始を選択する。
(5)コンピュータ51は開閉バルブ13を開き、排気ポンプ50によりイオン化室3内を真空引きしながら真空ゲージ11の計測値をモニターし、計測値が所定の圧力範囲で安定することを確認する。
(6)コンピュータ51は開閉バルブ9を開き、真空ゲージ14の計測値をモニターし、計測値が所定の圧力範囲で安定することを確認する。このとき、イオン化室3には、導入管4から空気が流入し、管10および管7から排気された状態となっており、圧力は100Paから10000 Pa程度である。
(7)コンピュータ51は交流電源をONにし、バリヤー放電を開始する。バリヤー放電により発生した励起分子やイオン15は試料1の表面あるいは試料1から生じた試料蒸気と接触し、生成した試料イオンは、イオン取出し管7と差動排気室8を通って質量分析装置に入る。
(8)質量分析部48は質量スペクトルを取得し、コンピュータ51に送る。
(9)コンピュータ51はデータを処理し、モニター画面52に表示する。
(10)ユーザがモニター画面52上で測定終了を選択すると、コンピュータ51は交流電源49をOFF、開閉バルブ13と開閉バルブ9を閉、リークバルブ12を開とし、真空ゲージ11が大気圧を示したことを確認後、リークバルブ12を閉じ、モニター画面52に試料交換可能の表示を行う。
(11)ユーザは試料台2を引き出し、試料台2を洗浄するか、新たな試料台と交換する。連続して測定を行う場合には、上記シーケンス4に戻る。
【0029】
上記シーケンス中に、圧力計測値や、質量分析部48、交流電源49の動作に異状が確認された場合は、コンピュータ51は開閉バルブ9、および開閉バルブ13は閉、リークバルブ12は開、交流電源49はOFFとし、モニター画面52にエラーを表示する。
【0030】
この装置構成および動作シーケンスにより、固体あるいは液体試料を低圧下に置いた測定を行うことができる。バリヤー放電で生成した励起分子あるいはイオンが試料表面の試料蒸気と接触してイオン化し、差動排気部へ導入するため、イオン化効率が高く、試料イオンの損失が少ない。また、試料を大気圧で加熱気化しイオン源へ導入するプロセスがなく、導入過程で試料を損失することがない。例えば、試料ガスを配管を介してイオン化領域に導入する工程を省き、配管への試料吸着による試料の損失も防ぐことができる。以上により、固体あるいは液体試料のイオン化を高感度に行うことができる。また、バリヤー放電を用いたイオン化により、フラグメンテーションが少ないスペクトルが得られることから、複数物質の同時検出が可能である。バリヤー放電は、交流電源だけで動作できるため、装置の小型化が可能となる。
【0031】
(実施例3)放電管の向き
図3に、本発明による質量分析装置構成の一例を示す。
【0032】
試料1は試料台2に乗せられる。試料台2は高さの調節が可能であり、試料に対する導入管4やイオン取出し管7や排気管10との位置関係を調整することが可能である。導入管4と、イオン取出し管7および排気管10は、試料1を挟むように配置される。導入管4は試料台2の上面と平行か所定の角度を持って配置されてもよい。この構成により、バリヤー放電により生じた励起分子やイオンが効率よく試料表面を覆うことができ、イオン化効率が向上し、感度が向上する。
【0033】
(実施例4)SPMEの使用
図4に、本発明による質量分析装置構成の一例を示す。
【0034】
気体や液体中から目的物質を抽出する方法として、SPME(Solid phase microextraction、固相マイクロ抽出)という方法が知られている。SPMEは、ファイバにコーティングされた固相抽出剤に対し、目的物質を分配あるいは吸着で抽出するものである。このSPMEファイバ18を、ホルダー19に収納した状態で、ホルダー19の先端をセプタム20を通してイオン化室3に入れ、次に、ファイバ18を露出する。ファイバ18は、バリヤー放電により生じた励起分子やイオン15に曝され、試料がイオン化される。この構成により、SPMEにより採取した試料についても、バリヤー放電によるイオン化を用いた高感度な測定が可能となる。
【0035】
(実施例5)電熱線で加熱
図5に、本発明による質量分析装置構成の一例を示す。
【0036】
試料1は電熱線表面に固定されている。例えば、固体試料を溶媒に溶解して電熱線表面につけた後、蒸発乾固したものや、粘度の高い液体試料を電熱線表面につけたものや、あらかじめ固相抽出剤を電熱線表面にコーティングし、その固相抽出剤に試料を抽出したもの、などが使用できる。セプタム20を通して電熱線の両端から2本の導線がイオン化室3外に出ており、直流電源55が接続されている。試料1は、バリヤー放電により生じた励起分子やイオン15に曝され、試料がイオン化される。このとき、電熱線に通電することで電熱線表面の試料を加熱し、試料の気化を促進することができる。この構成により、低電力で試料の加熱ができる。また、電流を段階的に上げていくことで、試料温度を段階的に上昇させることができる。段階的に試料を昇温することで、試料中に含まれている、沸点の異なる物質が異なる時間に気化する。この方法により、異なる物質が同じ分子量をもつ場合でも、沸点が異なれば区別して検出することができる。
【0037】
(実施例6)溶液からのサンプリングの方法
図6に、本発明による質量分析装置に導入する試料の調製方法の一例として、固相抽出による方法を示す。
【0038】
測定対象としては、水や土壌の汚染検査や、食品からの抽出液の農薬検出、血液、尿、唾液などの生体試料中の代謝物質や薬物の検出などに適用できる。
【0039】
ガラスやプラスチックや金属からなる容器22に、溶液試料24を入れる。固相抽出剤21を溶液試料24に浸し、フタ23を閉じる。このとき、容器を振る、撹拌子で撹拌する、超音波をかけるなどして撹拌することで、抽出時間を短縮することができる。また、試料溶液24に、内部標準物質を添加することで、分析の定量性を向上することができる。また、抽出したい試料の性質に応じ、溶液試料24に酸やアルカリを添加する、緩衝液を添加して液性を調整する、塩を添加する、有機溶媒を添加する、などして、目的物質の固相との親和性を高め、抽出効率を向上することができる。内部標準物質や酸、アルカリ、緩衝剤、塩、有機溶媒などの物質は、あらかじめ容器22に計量してあっても良い。固相抽出剤としては、シリコーン、ポリアクリレートなどの樹脂、イオン交換樹脂、シリカ、アルミナ、金属や、その表面に化学修飾を施したもの、抗体を固定したもの、多孔質のものなどを使用できる。
【0040】
一定時間の抽出後、固相抽出剤21を容器22に残した状態で、溶液試料24を捨て、代わりに洗浄液を入れて固相抽出剤21をすすぐ。洗浄液を捨て、固相抽出剤21をピンセットなどで取り出し、図1の試料台2に乗せて測定を行う。この試料調製方法により、溶液試料中の目的物質を固相抽出剤に濃縮して装置に導入することができ、感度が向上する。
【0041】
(実施例7)溶液からのサンプリングの方法2
図7に、本発明による質量分析装置に導入する試料の調製方法の一例として、固相抽出による方法を示す。
【0042】
ガラスやプラスチックや金属からなる容器22に、溶液試料24を入れ、フタ25を閉じる。フタ25には、あらかじめ固相抽出剤21が固定されており、溶液試料24の上のヘッドスペースガスに曝され、ヘッドスペースガス中の目的物質を抽出する。あるいは、溶液試料24を入れてフタ25を閉じた後、容器22を倒置することで、溶液試料24から直接目的物質を抽出することもできる。容器22とフタ25に同一の試料ラベルを貼ることで、試料の取り違えを防止することができる。一定時間の抽出後、フタ25を開け、固相抽出剤21をピンセットなどで取り出し、図1の試料台2に乗せて測定を行う。この試料調製方法により、溶液試料のヘッドスペースガス中の目的物質を簡便に、固相抽出剤に濃縮して装置に導入することができる。
【0043】
(実施例8)サンプリングのフタをそのままつけられる試料導入部
図8に、図7に示した固相抽出方法で取得した試料を測定するための質量分析装置構成の一例を示す。
【0044】
イオン化室壁27は円筒形であり、上面に図7のフタ25をねじ込むネジ部が設けられており、サンプル抽出後、フタをそのまま取り付けることでイオン化室3への試料の設置ができる。イオン化室壁27とフタ25の間はパッキン26が挟まれ、イオン化室3の気密が保たれる。イオン取出し管7を曲げて試料イオンが最も効率的に取込める場所にイオン取出し管の開口部を設置する。この図8の質量分析装置構成を内蔵したポータブル分析計の外観の一例を図9に示す。装置筐体28には充電電源接続口30、電源スイッチ31、バッテリー残量表示32、画面33、パーソナルコンピュータ接続口34、テンキー35、印字紙排出口36、扉37、試料導入口フタ38がある。また、持ち手29がついており、手に提げて持ち運ぶことができる。薬物検査を行う場合の画面表示の一例を図10に示す。
【0045】
図10(a)のように、画面33に測定条件の選択肢が表示され、ユーザはタッチパネル操作、あるいはテンキー35などにより測定条件を選択する。
【0046】
図10(b)のように、ユーザに試料導入が指示される。図9に示した装置では、扉37を開けることで、インターロックが作動し、交流電源49がOFFとなり、イオン化室3は大気圧となる。試料導入口フタ38を外し、ネジ部に試料抽出後のフタ25をねじ込んで取り付ける。扉37を閉じるとインターロックが解除され、測定可能となる。ユーザは画面33の表示にしたがって、測定開始を選択する。
【0047】
測定中は図10(c)のように、画面33に測定進行率が表示される。この間、扉37はロックされ、開放不可となる。バリヤー放電用のガスは採気口56から大気がフィルタを介して導入される。空気以外の気体を放電ガスとして使用する際は、採気口56にガスボンベ等から配管を接続してガスを導入する。
【0048】
測定が終了すると、図10(d)のように画面33に終了の表示と結果が表示される。測定結果と時刻、その他必要に応じ、測定者名や試料名などが紙に印字され印字紙排出口36から排出される。質量分析装置により測定されたスペクトルや検査の判定結果、測定の時刻やその他のパラメータは装置内部のコンピュータに保存される。
【0049】
試料測定後、フタ25を取り外して試料導入口フタ38を取り付ける。試料測定と同様に測定を行い、試料残留物による汚染が無いか確認し、汚染が確認された場合はクリーニング動作に入り、図10(e)のように、画面33にクリーニング実行の表示を行う。クリーニングは、図8中のイオン化室壁27、導入管4、イオン取出し管7を加熱するか、洗浄液で洗浄する。測定データの取出し、質量分析装置のパラメータ設定変更、分析ソフトウェアの変更などを行う場合は、パーソナルコンピュータ接続口34にパーソナルコンピュータを接続して操作を行う。
このような装置構成により、固相抽出した試料を簡便に高感度測定することができる。
【0050】
(実施例9)試料を挟んでバリヤー放電
図11(A)に、本発明による質量分析装置構成の一例を示す。
【0051】
イオン化室壁27には空気導入口39が設けられ、空気をイオン化室3に導入する。空気導入口39の内径や長さにより、空気の流入量を調節できる。あるいは、空気導入口39にバルブを設けてもよい。また、イオン化室壁27には排気管10とイオン取出し管7が設けられ、イオン化室3内は減圧される。試料台40には、複数の試料を置くことができる。一例として、試料台40に複数種類の固相抽出剤を固定し、この試料台40を溶液試料に浸漬し、各固相抽出剤に異なる物質を抽出してもよい。固相抽出剤21は、試料台40の下に設置した電極6と、上に設置したワイヤ電極5とに挟まれた位置にある。試料台40や固相抽出剤21は材質が誘電体である。そこで電極6とワイヤ電極5の間に交流電圧を印加すると、固相抽出剤21をはさんでバリヤー放電が起こり、発生した励起分子やイオン15により、固相抽出剤21に保持された試料がイオン化される。この構成により、試料に近接した空間に励起分子やイオンを発生させることができ、試料のイオン化効率が向上し、感度が向上する。
【0052】
試料台40は、一例として図11(B)に示すように円形で中心を軸として回転し、電極間に各試料を移動させることができる。この構成により、局所的に試料に励起分子やイオンを当てることができ、複数種類の試料を同一の試料台に設置しても、同時にイオン化されることなく、別々に分析することができる。
【0053】
(実施例10)溶液からのサンプリングの方法3 円筒の内側に固相
図12に、本発明による質量分析装置に導入する試料の調製方法の一例として、固相抽出による方法を示す。
【0054】
ガラスやプラスチックや金属からなる円筒状の容器22の内壁に、固相抽出剤21が固定されている。この容器22に、試料溶液を通液する。試料溶液を複数回通液し、目的物質の抽出量を向上させることもできる。あるいは、容器22の両開口部にフタ25を取り付けて密閉できる構造とし、溶液試料を入れ、溶液を攪拌するなどして一定時間の抽出後、フタ25を開け、溶液試料を捨てる。次に、洗浄液を通液して固相抽出剤21表面や容器22の内壁に残った溶液試料を除去する。
【0055】
図13に、図12の容器22を取り付けて試料の測定を行うことができる質量分析装置の一例を示す。容器22の開口部の一方をバルブ41に接続する。もう一方の開口部に、ワイヤ電極5と空気導入口39が付属したフタ42を接続する。容器22の周囲に、電極6を固定する。バルブ41を開くことにより、容器22内は減圧され、バリヤー放電の起こる領域は圧力100Paから10000Paの間のいずれかの値に保たれる。ワイヤ電極5と電極6の間に交流電圧を印加することにより、固相抽出剤21をはさんでバリヤー放電が起こり、固相抽出剤21に保持された物質はイオン化され、バルブと第一差動排気室43と第二差動排気室44を通過して質量分析部48に入り、スペクトルを取得する。
【0056】
このような試料調製方法および装置構成により、広い面積を有する固相抽出剤を用いた抽出と測定が行えるため、抽出時間の短縮、および、抽出量の向上による感度向上が可能となる。また、誘電体部および固相が一体であり、測定毎に簡単に交換できる構造であることから、バリヤー放電に接する領域、および試料を設置する領域の管壁や器壁の汚れによる測定感度低下を防ぐことができる。
【0057】
(実施例11)溶液からのサンプリングの方法4 多孔質の固相
図14に、本発明による質量分析装置に導入する試料の調製方法の一例として、固相抽出による方法を示す。
【0058】
ガラスやプラスチックなどの誘電体からなる注射器筒45の内部に、穴の開いた固相抽出剤46が固定されている。このような固相抽出剤としては、例えば、メンブレンフィルター、充填したシリカや樹脂などの固相ビーズ、モノリス構造を持ったポリマー、多孔質シリコーンや、これらの表面に化学修飾を施したもの、これらの混合物などを用いることができる。この注射器筒45に、試料溶液24をプランジャー47を引いて吸い込み、固相抽出剤46を通過させた後、プランジャー47を押して吐き出す。試料溶液を複数回通液し、目的物質の抽出量を向上させることもできる。次に、水、緩衝液、洗剤液、あるいは有機溶媒などの洗浄液を通液して固相抽出剤46や注射器筒45の内壁に残った溶液試料を除去する。次に、空気を通して、固相抽出剤46の孔内に残った液体を除去する。試料は、気体や微粒子でもよい。この試料調製方法では、固相抽出剤の表面積が大きく、試料が効率よく固相抽出剤と接触することから、抽出時間が短縮される。また、簡便な試料の濃縮が可能となる。
【0059】
図15に、図14の注射器筒45を取り付けて試料の測定を行うことができる分析装置の一例を示す。注射器筒45の開口部を開閉バルブ41に接続する。注射器筒45の先端に、ワイヤ電極5を、注射器筒45の先端部位の周囲に、電極6を固定する。開閉バルブ41を開くことにより、注射器筒45内は減圧され、圧力はおよそ100Paから10000Paの間のいずれかの値に保たれる。注射器筒45の先端からは空気が流入しており、ワイヤ電極5と電極6の間に交流電圧を印加することにより、バリヤー放電が起こり、励起分子あるいはイオン15が生成され、固相抽出剤46の穴を通過する。このとき、固相抽出剤に保持された物質がイオン化され、生成した試料イオンは開閉バルブ41と第一差動排気室43と第二差動排気室44を通過して質量分析部48に入り、スペクトルを取得する。
【0060】
このような装置構成により、バリヤー放電で生成した励起分子やイオンは全て固相表面を通過し、また、広い面積を有する固相抽出剤からの試料のイオン化が行えるため、イオン化効率が向上し、感度が向上する。
【符号の説明】
【0061】
1…試料、2…試料台、3…イオン化室、4…導入管、5…ワイヤ電極、6…電極、7…イオン取出し管、8…差動排気室、9…開閉バルブ、10…排気管、11…真空ゲージ、12…リークバルブ、13…開閉バルブ、14…真空ゲージ、15…励起分子あるいはイオン、16…イオン化室壁、17…ヒーター、18…SPMEファイバ、19…ホルダー、20…セプタム、21…固相抽出剤、22…容器、23…フタ、24…溶液試料、25…フタ、26…パッキン、27…イオン化室壁、28…装置筐体、29…持ち手、30…充電電源接続口、31…電源スイッチ、32…バッテリー残量表示、33…画面、34…パーソナルコンピュータ接続口、35…テンキー、36…印字紙排出口、37…扉、38…試料導入口フタ、39…空気導入口、40…試料台、41…開閉バルブ、42…フタ、43…第一差動排気室、44…第二差動排気室、45…注射器筒、46…固相抽出剤、47…プランジャー、48…質量分析部、49…交流電源、50…排気ポンプ、51…コンピュータ、52…モニター画面、53…ロータリーポンプ、54…ターボ分子ポンプ、55…直流電源、56…採気口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリヤー放電部と、バリヤー放電に用いられるガスが導入されるガス導入口と、バリヤー放電により生成するプラズマ成分によりイオン化される試料を設置する試料設置部と、イオン化された試料を取り出すイオン取出し開口と、ガス排気口とを備えたイオン化室と、
前記ガス排気口から前記イオン化室内を排気して大気圧よりも低い圧力にする排気装置と、
前記イオン取出し開口から取り出された試料の分析をする分析部とを有する分析装置。
【請求項2】
前記バリヤー放電部は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1,2の電極の間に設けられた誘電体部と、前記第1,2のいずれか一方に交流電圧を印加し前記第1,2の電極の間に放電を発生させる電源を有し、バリヤー放電は、100Pa以上10000Pa以下の圧力で行われることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記バリヤー放電は、500Pa以上の圧力で行われることを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項4】
前記バリヤー放電は、1000Pa以上の圧力で行われることを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項5】
前記分析部は、質量分析計又はイオンモビリティー分析計であることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項6】
前記バリヤー放電部の前記誘電体部は筒状であり、筒の一端が前記ガス導入開口部であり、もう一端が前記イオン化室内に設けられていることを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項7】
前記試料設置部が、前記バリヤー放電部の前記誘電体部であることを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項8】
前記試料設置部は、同心円上に複数の試料を設置する部位と、前記試料設置部の回転機構を備え、前記複数の試料を設置する部位の少なくとも1つが前記第1,2の電極の間になるように配置されることを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項9】
前記試料設置部は、設置される試料を加熱する加熱部を有することを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項10】
前記加熱部は、段階的に昇温することを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項11】
前記試料設置部は、取り外し可能なカセットであり、前記イオン化室は、前記試料設置部を取り付けられて構成されることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項12】
前記排気口に前記イオン取出し開口部を有していることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項13】
前記ガス導入口に対し、前記イオン取出し開口部と前記ガス排気口は、前記試料設置部を間に挟んで設けられていることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項14】
前記試料は、固相抽出剤に保持されていることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項15】
前記試料は、電熱線に保持されていることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項16】
バリヤー放電部と、バリヤー放電に用いられるガスが導入されるガス導入口と、バリヤー放電により生成するプラズマ成分によりイオン化される試料を設置する試料設置部と、イオン化された試料を取り出すイオン取出し開口と、ガス排気口とを備えたイオン化室と、
前記ガス排気口から前記イオン化室内を排気して大気圧よりも低い圧力にする排気装置とを備えたことを特徴とするイオン化装置。
【請求項17】
前記バリヤー放電部は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1,2の電極の間に設けられた誘電体部と、前記第1,2のいずれか一方に交流電圧を印加し前記第1,2の電極の間に放電を発生させる電源を有し、バリヤー放電は、100Pa以上10000Pa以下の圧力で行われることを特徴とする請求項16記載のイオン化装置。
【請求項18】
固相抽出剤を備えた容器に試料を導入する工程と、
前記試料を前記固相抽出剤に抽出する工程と、
試料が抽出された前記固相抽出剤を、バリヤー放電部とイオン取出し口と備えたイオン化室に設置する工程と、
前記イオン化室を排気し、前記バリヤー放電部の備える電極に交流電圧を印加して、バリヤー放電により試料をイオン化する工程と、
前記イオン取出し口から取出されたイオンの分析をする工程とを有するイオン分析方法。
【請求項19】
前記イオン化室を100Pa以上10000Pa以下に排気することを特徴とする請求項18記載のイオン分析方法。
【請求項20】
前記固相抽出剤は前記容器の蓋に備えられ、前記容器の蓋をイオン化室にはめて密封することにより前記固相抽出剤を設置することを特徴とする請求項18記載のイオン分析方法。
【請求項21】
前記固相抽出剤は前記容器の内壁に備えられ、前記容器の開口部を前記バリヤー放電部と前記イオン取出し口とにはめ込むことによりイオン化室とすることを特徴とする請求項18記載のイオン分析方法。
【請求項22】
前記容器は注射器の形状をし、試料の吸引排出を繰り返すことにより、前記試料を前記固相抽出剤に抽出することを特徴とする請求項18記載のイオン分析方法。
【請求項23】
前記容器の開口部と前記イオン取出し口との間にはバルブが設けられ、前記バルブを開くことにより前記容器を排気することを特徴とする請求項18記載のイオン分析方法。
【請求項24】
試料設置部と、
設置される試料をイオン化するバリヤー放電部と、
バリヤー放電に用いられるガスを導入する開口部と、
前記バリヤー放電によりイオン化された試料を測定する測定部と、
バリヤー放電を大気圧より低い圧力で行うように排気する排気部と、
測定の動作を入力させる入力部と、
前記入力部への入力に基づいて測定を制御する制御部と、
前記測定部による測定状態を出力する表示部とを備えた測定装置。
【請求項25】
前記試料設置部は扉を備え、前記扉の開閉により、前記バリヤー放電部と前記排気部の動作が制御されることを特徴とする請求項24記載の測定装置。
【請求項26】
前記試料設置部は、試料を固相抽出した固相抽出剤を備えた部材をはめ込ませて試料を設置させることを特徴とする請求項24記載の測定装置。
【請求項1】
バリヤー放電部と、バリヤー放電に用いられるガスが導入されるガス導入口と、バリヤー放電により生成するプラズマ成分によりイオン化される試料を設置する試料設置部と、イオン化された試料を取り出すイオン取出し開口と、ガス排気口とを備えたイオン化室と、
前記ガス排気口から前記イオン化室内を排気して大気圧よりも低い圧力にする排気装置と、
前記イオン取出し開口から取り出された試料の分析をする分析部とを有する分析装置。
【請求項2】
前記バリヤー放電部は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1,2の電極の間に設けられた誘電体部と、前記第1,2のいずれか一方に交流電圧を印加し前記第1,2の電極の間に放電を発生させる電源を有し、バリヤー放電は、100Pa以上10000Pa以下の圧力で行われることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記バリヤー放電は、500Pa以上の圧力で行われることを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項4】
前記バリヤー放電は、1000Pa以上の圧力で行われることを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項5】
前記分析部は、質量分析計又はイオンモビリティー分析計であることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項6】
前記バリヤー放電部の前記誘電体部は筒状であり、筒の一端が前記ガス導入開口部であり、もう一端が前記イオン化室内に設けられていることを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項7】
前記試料設置部が、前記バリヤー放電部の前記誘電体部であることを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項8】
前記試料設置部は、同心円上に複数の試料を設置する部位と、前記試料設置部の回転機構を備え、前記複数の試料を設置する部位の少なくとも1つが前記第1,2の電極の間になるように配置されることを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項9】
前記試料設置部は、設置される試料を加熱する加熱部を有することを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項10】
前記加熱部は、段階的に昇温することを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項11】
前記試料設置部は、取り外し可能なカセットであり、前記イオン化室は、前記試料設置部を取り付けられて構成されることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項12】
前記排気口に前記イオン取出し開口部を有していることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項13】
前記ガス導入口に対し、前記イオン取出し開口部と前記ガス排気口は、前記試料設置部を間に挟んで設けられていることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項14】
前記試料は、固相抽出剤に保持されていることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項15】
前記試料は、電熱線に保持されていることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項16】
バリヤー放電部と、バリヤー放電に用いられるガスが導入されるガス導入口と、バリヤー放電により生成するプラズマ成分によりイオン化される試料を設置する試料設置部と、イオン化された試料を取り出すイオン取出し開口と、ガス排気口とを備えたイオン化室と、
前記ガス排気口から前記イオン化室内を排気して大気圧よりも低い圧力にする排気装置とを備えたことを特徴とするイオン化装置。
【請求項17】
前記バリヤー放電部は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1,2の電極の間に設けられた誘電体部と、前記第1,2のいずれか一方に交流電圧を印加し前記第1,2の電極の間に放電を発生させる電源を有し、バリヤー放電は、100Pa以上10000Pa以下の圧力で行われることを特徴とする請求項16記載のイオン化装置。
【請求項18】
固相抽出剤を備えた容器に試料を導入する工程と、
前記試料を前記固相抽出剤に抽出する工程と、
試料が抽出された前記固相抽出剤を、バリヤー放電部とイオン取出し口と備えたイオン化室に設置する工程と、
前記イオン化室を排気し、前記バリヤー放電部の備える電極に交流電圧を印加して、バリヤー放電により試料をイオン化する工程と、
前記イオン取出し口から取出されたイオンの分析をする工程とを有するイオン分析方法。
【請求項19】
前記イオン化室を100Pa以上10000Pa以下に排気することを特徴とする請求項18記載のイオン分析方法。
【請求項20】
前記固相抽出剤は前記容器の蓋に備えられ、前記容器の蓋をイオン化室にはめて密封することにより前記固相抽出剤を設置することを特徴とする請求項18記載のイオン分析方法。
【請求項21】
前記固相抽出剤は前記容器の内壁に備えられ、前記容器の開口部を前記バリヤー放電部と前記イオン取出し口とにはめ込むことによりイオン化室とすることを特徴とする請求項18記載のイオン分析方法。
【請求項22】
前記容器は注射器の形状をし、試料の吸引排出を繰り返すことにより、前記試料を前記固相抽出剤に抽出することを特徴とする請求項18記載のイオン分析方法。
【請求項23】
前記容器の開口部と前記イオン取出し口との間にはバルブが設けられ、前記バルブを開くことにより前記容器を排気することを特徴とする請求項18記載のイオン分析方法。
【請求項24】
試料設置部と、
設置される試料をイオン化するバリヤー放電部と、
バリヤー放電に用いられるガスを導入する開口部と、
前記バリヤー放電によりイオン化された試料を測定する測定部と、
バリヤー放電を大気圧より低い圧力で行うように排気する排気部と、
測定の動作を入力させる入力部と、
前記入力部への入力に基づいて測定を制御する制御部と、
前記測定部による測定状態を出力する表示部とを備えた測定装置。
【請求項25】
前記試料設置部は扉を備え、前記扉の開閉により、前記バリヤー放電部と前記排気部の動作が制御されることを特徴とする請求項24記載の測定装置。
【請求項26】
前記試料設置部は、試料を固相抽出した固相抽出剤を備えた部材をはめ込ませて試料を設置させることを特徴とする請求項24記載の測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−228072(P2011−228072A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95619(P2010−95619)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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