説明

分析装置

【課題】分析装置の管理に必要な情報を円滑に参照できるとともに、提供者を特定する個人情報の漏出を防止する分析装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、検体を測定する測定機構2と測定機構2から出力された情報を分析および保存する処理機構3とを有する分析装置1において、検体の提供者に関する個人情報を処理機構3に入力する入力部32と、入力部32によって入力された個人情報のうち所定種別の個人情報に対して暗号化処理を行う暗号化処理部34と、を備え、処理機構3は、暗号化処理部34によって暗号化処理が行われた所定種別の個人情報と、所定種別以外の個人情報とを保存することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体を測定する測定機構と前記測定機構から出力された情報を分析および保存する処理機構とを有する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体に対する分析結果の信頼性を高めるため、ネットワークを介して分析装置から送信された各種情報を管理サーバに接続されたデータベースに記憶し、分析装置を管理する分析システムが提案されている。このような分析システムにおいては、データベース内に記憶すべき情報および分析装置内に記憶すべき情報の中に検体を提供した提供者の個人情報がある場合には、検体提供者の個人情報漏出防止のために全ての個人情報に対して暗号化処理を行ったうえで情報を記憶する(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−47319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、分析システムの管理者や分析装置の保守点検者が分析装置の異常などに対応するためにデータベース内の情報や分析装置内の情報を閲覧した場合、全ての個人情報が暗号化されているため、検体提供者の性別や年齢などの異常の対応に要する個人情報を取得することができず、分析装置の異常に迅速かつ適切に対応できないという問題があった。さらに、分析システムの管理者や分析装置の保守点検者は、検体提供者の性別や年齢などの異常の対応に要する個人情報を取得するため、暗号化された個人情報に対して複合化処理を行うという煩雑な処理を行わざるを得ないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分析装置の管理に必要な情報を円滑に参照できるとともに、検体提供者を特定する個人情報の漏出を防止する分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、検体を測定する測定機構と前記測定機構から出力された情報を分析および保存する処理機構とを有する分析装置において、前記検体の提供者に関する個人情報を前記処理機構に入力する入力手段と、前記入力手段によって入力された前記個人情報のうち所定種別の前記個人情報に対して暗号化処理を行う暗号化処理手段と、を備え、前記処理機構は、前記暗号化処理手段によって暗号化処理が行われた前記所定種別の個人情報と、前記所定種別以外の個人情報とを保存することを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる分析装置は、前記入力手段は、前記個人情報とともに該個人情報の種別を示すパラメータを入力し、前記暗号化処理手段は、前記パラメータをもとに前記入力手段によって入力された前記個人情報が前記所定種別の個人情報であると判断した場合に該個人情報に対して暗号化処理を行うことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、前記個人情報は、複数の種別が設定されており、前記暗号化処理手段は、前記パラメータをもとに、前記入力手段によって入力された前記個人情報が前記所定種別の個人情報であるか、または、前記所定種別以外の個人情報であるかを判断することを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、前記処理機構は、前記暗号化処理手段によって暗号化処理が行われた個人情報に、前記所定種別以外の個人情報および前記検体に関する分析結果を対応づけて保存することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、前記処理機構に接続する外部記憶装置をさらに備え、前記外部記憶装置は、前記暗号化処理手段によって暗号化処理が行われた個人情報に、前記所定種別以外の個人情報および前記検体に関する分析結果を対応づけて記憶することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析装置は、前記入力手段は、前記処理機構に接続し、または、当該分析装置に接続する外部装置であることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる分析装置は、前記暗号化処理手段は、当該分析装置特有の情報に基づく復号化情報をもとに前記暗号化処理を行った個人情報を復号化できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる分析装置は、検体提供者に関する個人情報のうち所定種別の個人情報に対して暗号化処理を行った後に保存し、所定種別以外の個人情報は暗号化処理を行わずそのまま保存するため、分析装置の管理に必要な情報を円滑に参照できるとともに、検体提供者を特定する個人情報の漏出を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0015】
図1は、本実施の形態にかかる分析システムの全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる分析システムは、分析装置1と、ネットワークNを介して分析装置1に接続して分析装置1を管理する管理サーバ41とを備える。管理サーバ41は、各種情報を記憶するデータベース42を有する。
【0016】
分析装置1は、たとえば血液や体液等の検体の成分を生化学的または免疫学的に分析する。分析装置1は、反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2の駆動制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う処理機構3とを有する。
【0017】
測定機構2は、搬送される反応容器に、検体等の試料および試薬を順次分注し、攪拌した後、検体と試薬が反応した反応液を光学的に測定する。光学的測定が終了した反応容器は、そのまま廃棄される場合もあり、洗浄後に再度検体の分析に使用される場合もある。
【0018】
処理機構3は、一または複数のコンピュータシステムを用いて実現され、測定機構2に接続する。処理機構3は、分析装置1の各処理にかかわる各種プログラムを用いて、測定機構2の動作処理の制御を行うとともに測定機構2から出力された測定情報の分析を行い保存する。処理機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、暗号化処理部34、記憶部35、出力部36および送受信部37を備える。
【0019】
制御部31は、制御機能を有するCPU等を用いて構成され、分析装置1の各構成部位の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。制御部31は、記憶部35が記憶するプログラムをメモリから読み出すことにより分析装置1の制御を実行する。
【0020】
入力部32は、種々の情報を入力するためのキーボード、出力部36の表示画面上における任意の位置を指定するためのマウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。入力部32は、検体提供者に関する個人情報を分析装置1に入力する。入力部32は、各個人情報とともに、各個人情報の種別を示すパラメータを入力する。入力部32が入力する個人情報の種別として、提供者の氏名、提供者を識別する提供者ID、提供者の住所、提供者の連絡先、提供者の性別、提供者の年齢などがある。分析部33は、測定機構2から取得した測定結果に基づいて試料の成分分析等を行う。
【0021】
暗号化処理部34は、入力部32によって入力された個人情報のうち所定種別の個人情報に対して暗号化処理を行う。暗号化処理部34は、個人情報とともに入力されたパラメータをもとに、入力部32によって入力された個人情報が所定種別の個人情報であると判断した場合に該個人情報に対して暗号化処理を行う。個人情報は、複数の種別が設定されており、暗号化処理部34は、パラメータをもとに、入力部32によって入力された個人情報が所定種別の個人情報であるか、または、所定種別以外の個人情報であるかを判断した後に、所定種別の個人情報に対して暗号化処理を行う。また、暗号化処理部32は、分析装置特有の情報に基づく復号化情報を有し、この復号化情報をもとに暗号化処理を行った個人情報を復号化できる。なお、この復号化情報は、分析装置1のみが有するものである。
【0022】
記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。記憶部35は、暗号化処理部32によって暗号化処理が行われた所定種別の個人情報を記憶するとともに、所定種別以外の個人情報をそのまま記憶する。記憶部35は、暗号化処理部34によって暗号化処理が行われた所定種別の個人情報に、所定種別以外の個人情報、および、検体に関する分析結果を対応づけて記憶する。また、記憶部35は、暗号化処理を行う必要がある個人情報の種別と、この個人情報の種別を示すパラメータと、この個人情報における暗号化処理を行う字数とを対応させた個人情報テーブルを記憶する。
【0023】
出力部36は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。送受信部37は、通信ネットワークNを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行うインターフェースとしての機能を有する。
【0024】
つぎに、図2を参照して、分析装置1が入力された情報を記憶部35に記憶するまでの処理手順について説明する。まず、制御部31は、入力部32から情報が入力されたか否かを判断する(ステップS2)。制御部31は、情報が入力されたと判断するまでステップS2の判断を繰り返し、情報が入力されたと判断した場合(ステップS2:Yes)、暗号化処理部34は、個人情報テーブルを参照する(ステップS4)。個人情報テーブルは、図3の個人情報テーブルTに示すように、暗号化処理を行う必要がある個人情報の種別と、個人情報の種別を示すパラメータと、暗号化処理を行う字数とを対応させたものである。暗号化処理部34は、この個人情報テーブルをもとに、情報とともに入力されたパラメータをもとに入力部32によって入力された情報が所定種別の個人情報であるか否かを判断する(ステップS6)。暗号化処理部34は、入力部32によって入力された情報が所定種別の個人情報であると判断した場合(ステップS6:Yes)、この個人情報を暗号化する暗号化処理を行い(ステップS8)、暗号化した個人情報を記憶部35に記憶する保存処理を行う(ステップS10)。一方、暗号化処理部34は、入力部32によって入力された情報が所定種別の個人情報でないと判断した場合(ステップS6:No)、この個人情報に対して暗号化処理を行わず、そのまま記憶部35に記憶する保存処理を行う(ステップS10)。
【0025】
つぎに、図2の各処理手順について具体的に説明する。図4は、入力部32から入力される個人情報群を例示する図である。たとえば、一の提供者に対する個人情報は、提供者の氏名、提供者ID、提供者の住所、提供者の連絡先、提供者の年齢、提供者の性別、提供者の身長、提供者の体重などがある。
【0026】
たとえば、提供者の氏名に関しては、図4の個人情報群Dの領域A1に示すように、領域K1に示すパラメータ「na」の後に提供者の氏名を示す情報が続いて入力される。この場合、暗号化処理部34は、図3に示すテーブルTを参照し(ステップS4)、テーブルTの行R1にあるように、パラメータ「na」が暗号化処理を行う必要がある個人情報である「氏名」を示すパラメータであることを判断する(ステップS6:Yes)。そして、暗号化処理部34は、テーブルTの行R1にあるように、パラメータ「na」の後に続く「20」字を暗号化した後(ステップS8)、記憶部35は、暗号化処理を行われた提供者の氏名を記憶する(ステップS10)。
【0027】
一方、提供者IDに関しては、図4の個人情報群Dに示すように、領域K2に示すパラメータ「ID」の後に提供者IDを示す情報が続いて入力される。この場合、暗号化処理部34は、図3に示すテーブルTを参照する(ステップS4)。このテーブルTには、暗号化処理を行う必要がある個人情報としてパラメータ「ID」が記載されていないため、暗号化処理部34は、この提供者IDは、暗号化処理を行う必要がない個人情報であると判断し(ステップS6:No)、パラメータ「ID」に続く提供者IDを暗号化せずにそのまま記憶する(ステップS10)。
【0028】
そして、提供者の住所に関しては、図4の個人情報群Dの領域A3に示すように、領域K3に示すパラメータ「ad」の後に提供者の住所を示す情報が続いて入力される。この場合、暗号化処理部34は、図3に示すテーブルTの行R3にあるように、パラメータ「ad」が暗号化処理を行う必要がある個人情報である「住所」を示すパラメータであることを判断する(ステップS6:Yes)。そして、暗号化処理部34は、テーブルTの行R3にあるように、パラメータ「ad」の後に続く「100」字を暗号化し(ステップS8)、記憶部35は、暗号化された住所を記憶する(ステップS10)。さらに、提供者の連絡先に関しては、図4の個人情報群Dの領域A4に示すように、領域K4に示すパラメータ「te」の後に提供者の連絡先を示す情報が続いて入力される。この場合、暗号化処理部34は、図3に示すテーブルTの行R4にあるように、パラメータ「te」が暗号化処理を行う必要がある個人情報である「連絡先」を示すパラメータであることを判断する(ステップS6:Yes)。そして、テーブルTの行R4にあるように、パラメータ「te」の後に続く「13」字を暗号化し(ステップS8)、記憶部35は、暗号化された連絡先を記憶する(ステップS10)。このように、暗号化処理部34は、テーブルTを参照することによって、暗号化処理を行う必要がある個人情報を識別するとともに暗号化処理を行う字数を取得して暗号化処理を行っている。
【0029】
暗号化処理を行わず保存された分析結果は、図5に示す分析結果Paのように、欄B2における提供者ID、欄B5における提供者の年齢、欄B6における提供者の性別、欄B7における検査結果に加え、欄B1における提供者氏名、欄B3における提供者の住所、欄B4における提供者の連絡先がそのまま示されている。
【0030】
これに対し、暗号化処理部34による暗号化処理後に記憶された分析結果は、図6に示す分析結果Pbのように、欄B1における提供者氏名、欄B3における提供者の住所、欄B4における提供者の連絡先が暗号化され、種々の文字および数字が無作為に示されている。言い換えると、分析装置1においては、検体提供者に関する個人情報のうち、提供者を直接的に特定する提供者氏名、提供者の住所、提供者の連絡先を暗号化した状態で保存している。これらの暗号化された個人情報は、暗号化処理部34において、当該分析装置自身に関する復号化情報のみによってしか復号化できない。したがって、分析装置1は、提供者を直接的に特定する個人情報を判別できない状態で分析装置1外に出力できる。
【0031】
また、分析装置1は、分析結果Pbに示すように、提供者ID、提供者の年齢、提供者の性別、検査結果においては暗号化されておらず、そのまま出力する。これらの提供者ID、提供者の年齢、提供者の性別、検査結果は、提供者の個人情報であるものの、提供者を直接的に特定する提供者氏名、提供者の住所、提供者の連絡先と組み合わせられることによってはじめて提供者を特定する事が可能である。言い換えると、提供者ID、提供者の年齢、提供者の性別、検査結果自体は、提供者を直接的に特定することができるものではない。
【0032】
ここで、分析装置は、精密機器であるため、分析装置における異常を分析装置の操作者が解決できない場合には、分析装置の保守点検を専門的に行うサービスマンが、分析装置が配置されている施設に出向き、分析装置を修理していた。サービスマンは、分析装置の修理や分析システムの管理部門への異常報告のために、分析装置の記憶部から必要な情報を印刷やディスプレイの表示などによって取得することがある。従来においては、図5に示す分析結果Paのように個人情報を含む全ての情報がそのまま開示された状態でしか必要な情報を取得することができなかった。このため、秘匿すべき個人情報がサービスマンや管理部門に開示されてしまうという問題があった。また、従来においては、個人情報を含む全ての情報が暗号化されており、検体提供者の性別や年齢などの異常の対応に要する個人情報を、復号化処理を行わなければ参照することができず、分析装置の異常に迅速かつ適切に対応できないという問題があった。
【0033】
これに対し、本実施の形態にかかる分析装置1においては、個人情報のうち、提供者を直接的に特定する個人情報を暗号化した状態で保存し、それ以外の情報に対してはそのまま保存している。
【0034】
したがって、分析装置1においては、サービスマンの記憶部35の閲覧や情報の出力によって、提供者を直接的に特定する秘匿すべき個人情報が開示されることはなく、個人情報の流出を防止することができる。
【0035】
さらに、分析装置1においては、提供者を直接的に特定する秘匿すべき個人情報以外の個人情報は検査結果等とともにそのまま出力される。このため、サービスマンや管理部門は、暗号化処理を行われた個人情報に対して復号化処理を行わなくとも、検体提供者の性別や年齢などの異常の対応に要する個人情報を円滑に参照することができ、データトラブルなどの分析装置の異常に迅速かつ適切に対応することができる。また、出力された検査結果は、暗号化処理を行われた個人情報に対して復号化処理を行わなくとも提供者IDや提供者の性別および年齢などの個人情報と検査結果等とがそのまま利用できるため、サービスマン等による異常対応時以外に、病院での医師および看護師による医療行為についてもそのまま利用可能である。
【0036】
また、分析装置1は、提供者を直接的に特定する個人情報のみを暗号化した状態でネットワークNを介して管理サーバ41に情報を送信でき、管理サーバ41は、提供者を直接的に特定する個人情報のみを暗号化した情報をデータベース42内に記憶する。このため、データベース42内を閲覧された場合であっても、提供者を直接的に特定する秘匿すべき個人情報が開示されることはなく、個人情報の漏出を防止することができる。
【0037】
このように、実施の形態1にかかる分析装置においては、提供者を直接的に特定する秘匿すべき個人情報のみを暗号化することによって、復号化せずとも分析装置の管理などに必要な情報を円滑に参照できるとともに、提供者を特定する個人情報の漏出を防止することが可能になる。
【0038】
また、分析装置1においては、保存する情報のうち選択的に暗号化処理を行うため、保存すべき情報全体を暗号化した場合と比して高速に暗号化処理を行うことができる。さらに、分析装置1においては、保存する情報のうち選択的に情報を暗号化処理するため、保存すべき情報全体を暗号化処理する場合と比して、暗号化処理後の情報量の増大を低減できる。このため、分析装置1は、保存すべき情報全体を暗号化処理する場合と比して、記憶部35に記憶される容量やネットワークを介して管理サーバ41に送信する情報量を少なくすることができる。
【0039】
また、分析装置1においては、暗号化する個人情報の種別をパラメータによって設定できることから、分析装置1の使用方法等に応じて、暗号化する個人情報の種別を簡易かつ柔軟に変更することができる。具体的には、図3に例示する個人情報テーブルの内容を変更することによって、暗号化する個人情報の種別を変更することができる。
【0040】
なお、制御部31は、分析装置1の操作者のうち特定の操作者が分析装置1にログインした場合にのみ暗号化処理部34に対して復号化処理を許可し、提供者を直接的に特定する秘匿すべき個人情報を厳密に管理してもよい。
【0041】
また、分析装置1は、情報の出力指示があった場合に、暗号化された個人情報を削除した情報を出力してもよい。図7は、分析装置1が入力された情報を記憶部35に記憶するまでの他の処理手順を示すフローチャートである。図7に示すように、分析装置1は、図2に示すステップS2〜ステップS10と同様に、情報入力判断処理(ステップS22)、個人情報テーブル参照処理(ステップS24)、所定種別の個人情報に対する判断処理(ステップS26)、暗号化処理(ステップS28)、保存処理(ステップS30)を行う。そして、制御部31は、情報の出力を指示する指示情報をもとに、出力指示があるか否かを判断する(ステップS32)。制御部31は、出力指示がないと判断した場合(ステップS32:No)、そのまま終了する。一方、制御31は、情報の出力指示があると判断した場合(ステップS32:Yes)、暗号化された個人情報を削除した出力情報を生成する削除処理を行い(ステップS34)、生成した出力情報を出力部36から出力する出力処理を行う(ステップS36)。ステップS36において出力される出力情報は、図6に示す分析結果Paの欄B1、欄B3、欄B4が空白であるほか、図8に示す分析結果Pcのように、欄B1、欄B3、欄B4内を意味を成さない記号などの他の文字に置き換えたものでもよい。このように、暗号化された個人情報を削除して、提供者を直接的に特定する個人情報を厳密に管理してもよい。
【0042】
また、分析装置1における処理機構は、図9に示すように、測定機構2に接続する一または複数のコンピュータシステムを用いて実現される。図9に示す本体部101は、処理機構3における制御部31、分析部33、暗号化処理部34、記憶部35および送受信部37に対応し、ディスプレイ102は、出力部36に対応し、キーボード103とマウス104とは、入力部32に対応する。ここで、分析装置1に入力される検体の提供者に関する個人情報等は、フレキシブルディスク(FD)108、CD−ROM109、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの可搬用の物理媒体を介して入力されてもよい。分析装置1は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる外部入力装置と接続し、この外部入力装置から個人情報等が入力されてもよい。また、分析装置1は、ネットワークNを介して接続した管理サーバ41、または、ネットワークを介して接続した他のコンピュータシステム111などの外部装置から個人情報が入力されてもよい。また、図10に示すように、分析装置1の処理機構3には、外部記憶装置51が接続され、外部記憶装置51は、暗号化処理を行われた所定種別の個人情報に、所定種別以外の個人情報、および、この暗号化処理処理を行われた所定種別の個人情報に関する分析情報を対応づけて記憶してもよい。
【0043】
また、上記実施の形態で説明した分析装置1は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置1の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワークNを介して接続した管理サーバ41、他のコンピュータシステム111からプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置1の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施の形態にかかる分析システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す分析装置が入力された情報を記憶するまでの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す記憶部が記憶する個人情報テーブルを例示する図である。
【図4】図1に示す入力部から入力される個人情報群を例示する図である。
【図5】従来技術にかかる分析装置が保存する分析結果を例示する図である。
【図6】図1に示す分析装置が保存する分析結果を例示する図である。
【図7】図1に示す分析装置が入力された情報を記憶するまでの他の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図1に示す出力部から出力される情報を例示する図である。
【図9】実施の形態を用いたコンピュータシステムの構成を示す構成図である。
【図10】実施の形態にかかる分析システムの他の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 分析装置
2 測定機構
3 処理機構
31 制御部
32 入力部
33 分析部
34 暗号処理部
35 記憶部
36 出力部
37 送受信部
41 管理サーバ
42 データベース
51 外部記憶装置
101 本体部
102 ディスプレイ
103 キーボード
104 マウス
108 フレキシブルディスク(FD)
109 CD−ROM
111 他のコンピュータシステム
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を測定する測定機構と前記測定機構から出力された情報を分析および保存する処理機構とを有する分析装置において、
前記検体の提供者に関する個人情報を前記処理機構に入力する入力手段と、
前記入力手段によって入力された前記個人情報のうち所定種別の前記個人情報に対して暗号化処理を行う暗号化処理手段と、
を備え、前記処理機構は、前記暗号化処理手段によって暗号化処理が行われた前記所定種別の個人情報と、前記所定種別以外の個人情報とを保存することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記入力手段は、前記個人情報とともに該個人情報の種別を示すパラメータを入力し、
前記暗号化処理手段は、前記パラメータをもとに前記入力手段によって入力された前記個人情報が前記所定種別の個人情報であると判断した場合に該個人情報に対して暗号化処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記個人情報は、複数の種別が設定されており、
前記暗号化処理手段は、前記パラメータをもとに、前記入力手段によって入力された前記個人情報が前記所定種別の個人情報であるか、または、前記所定種別以外の個人情報であるかを判断することを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記処理機構は、前記暗号化処理手段によって暗号化処理が行われた個人情報に、前記所定種別以外の個人情報および前記検体に関する分析結果を対応づけて保存することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項5】
前記処理機構に接続する外部記憶装置をさらに備え、
前記外部記憶装置は、前記暗号化処理手段によって暗号化処理が行われた個人情報に、前記所定種別以外の個人情報および前記検体に関する分析結果を対応づけて記憶することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項6】
前記入力手段は、前記処理機構に接続し、または、当該分析装置に接続する外部装置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項7】
前記暗号化処理手段は、当該分析装置特有の情報に基づく復号化情報をもとに前記暗号化処理を行った個人情報を復号化できることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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