説明

分注装置の試薬置場

【課題】1回の分注作業の中で特性の異なる複数種類の試薬ボトルを同時に使用できる試薬置場を提供する。
【解決手段】分注する試薬が貯留されている試薬ボトル1を装着する分注装置の試薬置場8において、同一寸法のボトルホルダ3に収容されている複数の試薬ボトル1を、該ボトルホルダ3を単位に装着する装着部9と、該装着部9を、前記ボトルホルダ3の寸法間隔に区切った複数の装着エリア9A〜9Eと、該装着エリア9A〜9Eを単位に設置された、試薬の特性に対応して用いられる特性対応手段として、冷却装置10、試薬用カップ11、試薬載置台12、攪拌装置13を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置の試薬置場、自動分注装置に試薬ボトルを設置する際に適用して好適な分注装置の試薬置場に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分注装置では、所定位置の試薬置場に予め設置されている試薬ボトルから、順次搬送されてくる検体等の試料に試薬を分注することが行なわれている。
【0003】
このような分注装置の試薬置場としては、例えば特許文献1に開示されているように、試薬ボトルを円形の試薬置場に放射状に配列されたホルダに支持し、該ホルダを回転させることにより、一定の位置で試薬を供給できるようにした構造のものが多い。
【0004】
このような試薬置場で、試薬の持つ特性に応じて、例えば性能維持のために試薬を冷却する必要がある場合は冷媒を試薬置場全体に流して冷却を行なうことになる。従って、試薬性能を維持する等、試薬の特性に応じた手段を用いる必要がある場合には、1つの試薬置場に1種類の手段しか適用できないのが一般的である。
【0005】
【特許文献1】特開平5−280851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のような従来の分注装置の試薬置場では、1回の分注作業の中で、冷却の必要がある試薬や必要の無い試薬、更に攪拌の必要がある試薬を混在して使用する等、特性の異なる試薬を同時使用することは、事実上不可能である。即ち、1つの試薬置場を複数種類の試薬に応じたエリアに区分けし、各エリア毎に試薬性能維持に必要な装置(手段)を設けると共に、これら装置を制御し、使い分けることは、試薬ボトルの回転運動を行なう構造の前記試薬置場では、電力供給や制御信号を伝達する配線、冷媒を輸送する配管等にねじれが発生することになるため困難である。従って、特性の異なる複数の試薬を1回の分注作業の中で使用するためには、特性の数に応じた複数の試薬置場を設置する必要があるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、1回の分注作業の中で特性の異なる複数種類の試薬を、同一の試薬置場で同時に使用することができる分注装置の試薬置場を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、分注する試薬が貯留されている試薬ボトルを装着する分注装置の試薬置場において、同一寸法のボトルホルダに収容されている複数の試薬ボトルを、該ボトルホルダを単位に装着する装着部と、該装着部を、前記ボトルホルダの寸法間隔に区切った複数の装着エリアと、該装着エリアを単位に設置された、試薬の特性に対応して用いられる特性対応手段と、を備えたことにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
本発明においては、前記特性対応手段が、冷却装置及び攪拌装置の少なくとも一方を含むようにしてもよい。
【0010】
又、本発明においては、前記試薬ボトルが、前記ボトルホルダを搭載するトレイを介して前記装着部に装着されることとしてもよく、この場合は、前記ボトルホルダ及びトレイの対応する底部には、それぞれ試薬ボトルの底部が露出する抜き穴を形成するようにすることが好ましい。
【0011】
更に、本発明においては、前記ボトルホルダが、横断面が矩形のチャンバを有する試薬ボトルを、厚さ方向に複数個収容可能な収容空間と、該収容空間を、略試薬ボトルの厚さ間隔に仕切る仕切板とを備えているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の試薬ボトルをボトルホルダに収容し、該ボトルホルダを単位に、特性対応手段がそれぞれ設置可能な同一試薬置場内の装着エリア毎に、試薬ボトルを装着するようにしたので、一つの試薬置場において1回の分注作業の中で、特性の異なる複数の試薬を分注することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る第1実施形態の分注装置の試薬置場に試薬ボトルを装着するためのボトルホルダを、一部に収容されている試薬ボトルと共に示す斜視図、図2は1つの試薬ボトルを拡大して示す斜視図、図3はトレイを示す斜視図、図4は本実施形態の分注装置の試薬置場に、上記トレイを介して部分的に試薬ボトルが装着されている状態を示す斜視図である。
【0015】
試薬ボトル1は、試薬を充填(貯留)するチャンバ2が、横断面が矩形の薄い箱形に形成されていると共に、その幅方向両端の外壁部に鍔部1Aが形成されている。この試薬ボトル1の厚さは、使用量や機能(試薬攪拌用の攪拌子の使用が可能等)に合わせて設計されていると共に、図1のボトルホルダ3に同種類の試薬ボトル1を隙間無く並べられるように設計されている。
【0016】
上記ボトルホルダ3には、その上端部両側に外側に突出した鍔部3Aが形成され、該鍔部3Aに上記試薬ボトル1の鍔部1Aを当接することにより、該鍔部1Aより下方部分を収容することができる深さの収容空間が形成されている。
【0017】
このボトルホルダ3には、4つの試薬ボトル1を、厚さ方向に隙間無く並べた状態で収容すると共に、転倒防止のために、上記収容空間を略該試薬ボトル1の厚さ間隔で仕切る仕切板4とを備えている。そして、このボトルホルダ3は、後述する図3のトレイを介して、図示しない分注装置に設置されている、後述する試薬置場に装着可能になっている。
【0018】
上記仕切板4は、ボトルホルダ3の側壁の内側に設けられている縦溝(切欠)5に差し込み、挿入することにより試薬ボトル1の厚さに合った位置に固定されると共に、取り外しが可能になっている。
【0019】
又、この仕切板4が、厚さが異なる試薬ボトル1に合わせて前記収容空間の仕切位置を変更することが可能になっている。即ち、前記縦溝5は、使用される異なる種類の試薬ボトル1の厚さに合せた間隔に設けられ、1つのボトルホルダ3で1種類の試薬ボトル1を隙間無く並べることができるようになっていると共に、このように隙間無く並べる収容パターンを複数種類の試薬ボトル1に対して採ることができるように異なる間隔の位置に設けられている。
【0020】
又、このボトルホルダ3の底部には、鍔部3A方向の両端部近傍を除き切り欠いた形状の抜き穴3Bが形成され、この抜き穴3Bから収容された試薬ボトル1の底部が露出するようになっている。
【0021】
又、図3に示したトレイ6には、ボトルホルダ3を、鍔部3Aより下方部分が収容された状態で、試薬ボトル1が厚さ方向に並ぶようにして、複数個搭載可能な長さの搭載部7が形成され、この例では5個のボトルホルダ3を搭載可能な長さに設けられている。従って、このトレイ6には、最大5種類の試薬ボトル1を搭載できることになる。
【0022】
又、このトレイ6の底部には、長さ方向の左右にサイドガイド6Aが取付けられ、この上に搭載されるボトルホルダ3の抜き穴3Bの両側に位置する底部が載置され、支持されるようになっている。即ち、左右のサイドガイド6Aの間には、抜き穴3Bに対応する抜き穴が形成されている。図4には、トレイ6に、試薬ボトル1が収容されたボトルホルダ3が搭載された状態の横断面を模式的に示す。
【0023】
以上詳述したように、図1に示した試薬ボトル1は、ボトルホルダ3内を仕切板4で仕切って形成した空間に挿入する形で収容保持され、左右、高さ方向の位置決めがされる。従って、ボトルホルダ3には1種類の試薬ボトルを複数個まとまった単位で隙間無く設置することが可能となっている。
【0024】
又、試薬ボトル1の容量や機能により、ボトルホルダ3内の試薬ボトル1の個数が変化する場合は、仕切板4の挿入位置を変更することにより対応することが可能である。
【0025】
このように、試薬ボトル1が複数個挿入されたボトルホルダ3は、図5に示すようにトレイ6に複数個搭載され、このトレイ6を図示しない分注装置に設置されている本実施形態の試薬置場8にスライドさせて挿入することにより、所定位置に装着することができる。
【0026】
本実施形態の試薬置場8は、試薬ボトル1を、同一寸法のボトルホルダ3を単位に装着可能な複数の装着エリアに区分けされた装着部9を有している。
【0027】
この装着部9と、装着エリア9A〜9Eの関係を、便宜上装着されている試薬ボトル1の上端高さに対応させて示す。
【0028】
この例では、装着部9がトレイ6に搭載可能なボトルホルダ3と同数の5つに分割され、第1エリア9Aには4つの試薬ボトル1がボトルホルダ3に収容されて装着され、第2エリア9Bには厚さが薄い6つの試薬ボトル1が同一寸法のボトルホルダ3に収容されて装着され、第4エリア9Dには第1エリアより厚い試薬ボトル1が3つ同様に装着されているとともに、第3エリア9Cと第5エリア9Eは未装着になっている。
【0029】
このように、厚さが異なる試薬ボトル1がそれぞれ同一寸法のボトルホルダ3に収容された状態で隙間無く配列して装着可能になっている。
【0030】
本実施形態においては、第1エリア9A〜第3エリア9Cには、それぞれ対向するボトル側壁に沿った両サイドに、ペルチェ素子からなる冷却装置10が配設され、各エリア毎に収容される試薬ボトル1を所望の温度に冷却し、調整することが可能になっている。
【0031】
第4エリア9Dには、試薬ボトル1に貯留されている試薬の調整に使用する第2の液体試薬を貯留しておく試薬用カップ11が付設されている。又、第5エリア9Eには、図示しない試薬ボトル1の側壁に沿って、同じく試薬の調整に使用する錠剤を用意しておく試薬載置台12が付設されていると共に、トレイ6の前記サイドガイド6Aの中間に位置する抜き穴の下方に、マグネティック・スターラからなる攪拌装置13が、それぞれ試薬ボトル1に対応させて配設されている。
【0032】
以上の各装着エリア毎(ボトルホルダ3の幅間隔)に配設される、冷却装置10、攪拌装置13、試薬用カップ11及び試薬載置台12は、それぞれ対応するエリアに装着された試薬ボトル1に貯留されている試薬の特性に対応して必要とされる機能を有する特性対応手段である。
【0033】
以上詳述した本実施形態によれば、試薬ボトル1をボトルホルダ3毎に管理し、該ボトルホルダ3の寸法に合わせて、試薬性能維持等に必要な攪拌装置13や冷却装置10、試薬用カップ11、試薬載置台12を配置することにより、攪拌速度、冷却温度、調製に必要な液体や錠剤の試薬の種類をボトルホルダ3毎に変化させることが可能である。又、これら各手段(装置)の制御や設置を行なわないことで、これら手段を使用しないことも可能である。従って、1つの試薬置場8においてより多くの種類の試薬を扱うことができ、更にそれらを混在して使用することが可能となる。
【0034】
又、仕切板4の差込み位置を変えることができるボトルホルダ3を用いることにより、該ボトルホルダ3を単位に試薬ボトル1の種類を変更することができることから、1つの試薬置場8の中で複数種類の試薬ボトル1を混在させて使用することが可能となる。
【0035】
又、ボトルホルダ3をトレイ6に搭載して試薬置場8へ組み込む装着方法を採用することにより、複数個のボトルホルダ3を一括して試薬置場8へ装着することが可能となる。
【0036】
又、ボトルホルダ3に抜き穴3Bを設け、これに対応する位置のトレイ6にも抜き穴を設けて、試薬ボトル1の底部が露出されるようにしたので、磁気を利用した攪拌装置13を用いて、該試薬ボトル1内に入れた攪拌子を回転させ、貯留されている試薬を攪拌することができる。
【0037】
更に、試薬ボトル1はボトルホルダ3に収容する形で設置できることに加えて、ボトルホルダ3毎の試薬ボトル1の管理が可能となり、該試薬ボトル1の移動、交換、順序入替え等が容易になるという効果もある。
【0038】
図6には、本発明に係る第2実施形態の試薬置場を示す。この試薬置場は、第3エリア9Cに明示するように、同一のエリアに冷却装置10と共に攪拌装置を設置するようにしたものであり、他の構成は第1実施形態と同様である。
【0039】
このように、1つのボルトホルダ3に対応するエリアに複数種類の特性対応手段を配設することにより、この例のように攪拌と冷却を同時に行なうことができるようになり、一段と性能維持が難しい試薬等を扱うことができるようになる。
【0040】
なお、ボトルホルダ3は、トレイ6を使用せずに、試薬置場8に直接装着するようにしてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の試薬置場に適用可能なボトルホルダと試薬ボトルを示す斜視図
【図2】上記ボトルホルダに収容可能な試薬ボトルを拡大して示す斜視図
【図3】ボトルホルダを搭載可能なトレイを示す斜視図
【図4】トレイ、ボトルホルダ及び試薬ボトルの関係を模式的に示す横断面図
【図5】本発明に係る第1実施形態の試薬置場の特徴を示す斜視図
【図6】本発明に係る第2実施形態の試薬置場の特徴を示す斜視図
【符号の説明】
【0042】
1…試薬ボトル
2…チャンバ
3…ボトルホルダ
3B…抜き穴
4…仕切板
5…縦溝
6…トレイ
6A…サイドガイド
7…搭載部
8…試薬置場
9…装着部
9A〜9E…第1〜第5(装着)エリア
10…冷却装置
11…試薬用カップ
12…試薬載置台
13…攪拌装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注する試薬が貯留されている試薬ボトルを装着する分注装置の試薬置場において、
同一寸法のボトルホルダに収容されている複数の試薬ボトルを、該ボトルホルダを単位に装着する装着部と、
該装着部を、前記ボトルホルダの寸法間隔に区切った複数の装着エリアと、
該装着エリアを単位に設置された、試薬の特性に対応して用いられる特性対応手段と、を備えたことを特徴とする分注装置の試薬置場。
【請求項2】
前記特性対応手段に、冷却装置及び攪拌装置の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の分注装置の試薬置場。
【請求項3】
前記試薬ボトルが、前記ボトルホルダを搭載するトレイを介して前記装着部に装着されることを特徴とする請求項1に記載の分注装置の試薬置場。
【請求項4】
前記ボトルホルダ及びトレイの対応する底部には、それぞれ試薬ボトルの底部が露出する抜き穴が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の分注装置の試薬置場。
【請求項5】
前記ボトルホルダが、
横断面が矩形のチャンバを有する試薬ボトルを、厚さ方向に複数個収容可能な収容空間と、
該収容空間を、略試薬ボトルの厚さ間隔に仕切る仕切板とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の分注装置の試薬置場。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−212211(P2007−212211A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30658(P2006−30658)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【出願人】(000162478)協和メデックス株式会社 (42)
【Fターム(参考)】