説明

分離法

本発明は、目的放射性標識化合物を不純物から分離する方法、かかる方法を実施する装置及びかかる装置で使用する着脱式カセットに関する。本発明の分離法を含む方法で得られた目的放射性標識化合物を使用する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的放射性標識化合物を不純物から分離する方法、かかる方法を実施するための装置及びかかる装置で使用するための着脱式カセットに関する。本発明の分離法を含む方法で得られた目的放射性標識化合物の使用する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
放射性標識化合物は医用画像に用途を有しており、18F放射性標識化合物の場合は陽電子放射断層撮影(PET)に用途を有する。
【0003】
現在特に関心のもたれている放射性標識化合物は放射性標識チミジンであり、特に腫瘍学の分野でのPETイメージングのための3′−デオキシ−3′−[18F]フルオロチミジン(18FLT)である。
【0004】
18FLTは、スキーム1に示す通り、5′−O−(4′,4′−ジメトキシトリチル)チミジンから、18Fを用いた3′位での求核置換(立体化学の反転を伴う)によって合成することができる。
【0005】
【化1】

このフッ素化の際に、OH-18-との競争反応のため脱離生成物d4Tが高い収率で生成することが多く、この反応における主要不純物である。d4Tは18FLTよりも格段に高い速度で形成される傾向があり、100〜10000:1のd4T:18FLT比で存在することがある。18FLTとd4Tとの分離は厄介な問題である。
【0006】
2種類の化合物の高速液体クロマトグラフィー分離は様々な固定相を用いて実施できるが、HPLCは費用がかかり、複雑で、病院のような臨床環境では好ましい精製法とはいえない。
【0007】
HPLC法は時間がかかることもあり、半減期の短い放射性核種(18Fの半減期は約110分である。)を使用する際には特に問題となる。もう一つの重大な問題は、HPLCが、放射性標識化合物の調製と精製を簡単にする市販の合成モジュールとの使用に役立たないことである。
【0008】
国際公開第2005/025519号には、18FLTの自動合成方法及び自動合成装置が記載されており、分離はSep−Pak(登録商標)C−18固相抽出(SPE;solid phase extraction)カラムを用いて実施される。
【0009】
国際公開第2006/133732号にも、[18F]−FLTの製造方法が記載されており、分離はOasis(商標)HLB SPEカラムを用いて実施される。
【0010】
残念なことに、[18F]−FLTの製造に用いるため従前報告されたSPE法は、十分な分離をもたらさないので、臨床用途には必ずしも適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2005/025519号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/133732号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、比較的簡単で、HPLCよりも費用がかからず、分離性に優れ、特に臨床環境での使用に適した分離方法を提供することによって、上述の問題に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明は、第1の態様では、目的放射性標識化合物と1種以上の不純物とを分離する方法であって、
目的放射性標識化合物と1種以上の不純物とを含む混合物を準備する段階、
高分子表面改質吸着剤を含む固相抽出カラムに混合物を流して、目的放射性標識化合物を吸着させ、1種以上の不純物を吸着させる段階、
第1の溶出液を用いて1種以上の不純物を溶出させる段階、及び
第2の溶出液を用いて目的放射性標識化合物を溶出させる段階
を含む方法を提供する。
【0014】
「不純物」という用語は、通常の意味、つまり、化学的又は放射化学的プロセスに由来する不純物と解される。
【0015】
本発明の第1の態様に係る方法は、1種以上の不純物から、目的放射性標識化合物を、比較的簡単、経済的、堅実(ロバスト)かつ迅速に分離できるという利点がある。また、目的放射性標識化合物と不純物が固相抽出カラムに異なる親和性で吸着されるので、良好な分離が可能であるという利点もある。第1及び第2の溶出液を用いて不純物及び目的物を別々に溶出するので、分離プロセスのきめ細かな制御が可能となる。
【0016】
好ましくは、目的放射性標識化合物は放射性標識チミジン又はチミジン誘導体である。さらに好ましくは、目的放射性標識化合物は放射性標識3′−デオキシ−3′−チミジン又はその誘導体である。
【0017】
放射性標識チミジン又はその誘導体は、PET及び単光子放射断層撮影(SPECT)に有用な放射性標識化合物であり、腫瘍学を始めとする様々な領域に用途を有するので、好適である。
【0018】
目的放射性標識化合物は、様々な放射性核種で放射性標識することができる。本発明で特に適しているのは、SPECTイメージングに適したγ線放出型放射性ハロゲン又はPETイメージングに適した陽電子放射性核種である。γ線放出型放射性ハロゲンの例として、123I、131I及び77Brが挙げられるが、123Iが好ましい。PETイメージングに適した放射性核種としては、11C、18F、75Br、76Br及び124Iが挙げられるが、11C及び18Fが好ましく、18Fが最も好ましい。かかる放射性標識化合物を得るための各種方法は、Handbook of Radiopharmaceuticals(Wiley;2003:Welch and Redvanly,Eds.)に記載されている。
【0019】
本発明の好ましい目的放射性標識化合物は、18F−標識FLT(3′−デオキシ−3′−[18F]フルオロチミジン)である。18F−標識FLTは、Hamacher et al(1986 J.Nuc.Med.;27;235)に記載された方法で得ることができる。
【0020】
FLTの製造プロセスでは、副反応のため不純物が生じることがある。不純物としては、特にチミジン又はチミジン誘導体がある。特に問題とされる不純物は、2′,3′−ジデヒドロ−3′−デオキシチミジンである。
【0021】
本発明の第1の態様に係る方法は、高分子表面改質吸着剤を含む固相抽出カラムを用いて実施される。表面改質吸着剤は、吸着剤粒子の表面(通常は細孔の内部表面を含む)に化学官能基を導入することによって改質された担体(シリカ又はポリマーなど)を含む吸着剤である。吸着剤の表面改質には、担体の種類にもある程度依存するが、多種多様な化学基を使用し得る。高分子表面改質吸着剤は、担体吸着剤を性質(特に表面積、空隙率及び粒径)の種々異なる数多くのポリマーから選択することができて、ある吸着剤で様々な選択性(例えば、疎水性、親水性、π−π相互作用)と広いpH域(1〜14)での優れた安定性をもたらすので、特に有利である。
【0022】
高分子表面改質吸着剤の場合、高分子表面改質吸着剤は好ましくは表面改質ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)からなる。これが好ましいのは、ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)は広範な粒径、表面積及び空隙率で入手でき、各種化学基の導入によって比較的簡単に表面改質できるからである。ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)の表面改質法の一つは、国際公開第03/064478Aに記載されており、ベースポリマー表面の残存遊離ビニル基のラジカル開始表面グラフト改質によるものである。
【0023】
好ましい高分子表面改質吸着剤は、ピロリドン又はピペリドン誘導体、さらに好ましくは2−ピロリドン又は2−ピペリドン誘導体で表面改質される。これが好ましいのは、かかる表面改質ポリマー吸着剤は、2種類の溶出液を用いた目的放射性標識化合物と不純物との優れた分離(特に放射性標識チミジン又はチミジン誘導体に対して)をもたらすからである。
【0024】
固相抽出カラムは、一般に、分離すべき混合物の体積を考慮に入れた適当な大きさのものであればよい。ただし、臨床環境では、固相抽出カラムは一般に1〜10ml(cm3)、通常2〜8cm3又は3〜6cm3の有効容積を有する。
【0025】
固相抽出カラムには、通常、目的放射性標識化合物と不純物との良好な分離が確保される十分な高分子表面改質吸着剤が充填される。一般に、固相抽出カラムには、固相抽出カラムの有効容積を基準にして、10mg/cm3〜200mg/cm3の表面改質吸着剤が充填される。好ましくは、固相抽出カラムには、20mg/cm3〜145mg/cm3、さらに好ましくは50〜100mg/cm3、最も好ましくは50〜約90mg/cm3が充填される。固相抽出カラムの典型的な好ましい充填量は、3cm3のカラムに対して60mg(20mg/cm3に相当)から6cm3のカラムに対して850mg(約142mg/cm3に相当)であろう。
【0026】
吸着剤量は、カラムにロードされる試料の量にも影響を与える。この量は一般に吸着剤量の5〜10%である。
【0027】
好ましくは、第1及び/又は第2の溶出液はアセトニトリル、アルカノール及び水から選択される1種以上の溶媒を含む。好ましいアルカノールはエタノールを含む。
【0028】
一般に、第1及び第2の溶出液は各々、アセトニトリル又はエタノールのいずれかと水とを含むが、2つの系における水中のアセトニトリル又はエタノールの割合が異なる。これは、不純物又は目的放射性標識化合物のどちらを溶出するかを水中のアセトニトリル又はエタノールの割合の変更に応じて左右できるので、不純物又は目的放射性標識化合物のいずれかを溶出させるためのカラムへの溶出液の供給が簡単になるという利点がある。また、水とアセトニトリル又はエタノールとの比の微調整によって、分離プロセスの細かな制御が可能になるという利点もある。通例、不純物ではなく目的化合物を溶出させるには、アセトニトリル又はエタノールの割合を高くする必要がある。水中のアセトニトリル又はエタノールの典型的な割合は、(不純物の溶出のための)3〜5%から(目的化合物の溶出のための)12〜20%までである。
【0029】
エタノールは、得られた溶液を患者に直接注射できるので(7%v/v以下に希釈されている場合)、好ましい溶媒である。注射前の追加の溶媒交換段階は必要ない。
【0030】
本発明の利点の1つは、固相抽出カラムによる分離を達成するのに、比較的低い圧力を使用できることである。典型的な圧力は大気圧付近であるが、必要に応じて、高い圧力(例えば約800kPa(8bar)以下)を使用してもよい。
【0031】
一般に、本発明の第1態様では、溶出は、第1又は第2の溶出液を0.5〜20ml/分の流速で固相抽出カラムに流すことを含む。さらに好ましくは0.5〜15ml/分、1.0〜5.0ml/分、最も好ましくは1.0〜3.0ml/分の流速を使用できる。流速が低い方が概して良好な分離をもたらす。
【0032】
固相抽出カラムを本発明の方法に使用する前に、「コンディショニング」する必要がある。これは単に有機溶媒での初期洗浄を要し、有機溶媒は通常はプロセスの残りの部分で使用される溶媒である。
【0033】
本発明の方法は、固相抽出カラムの吸着剤を乾燥させる乾燥段階(おそらくは分離すべき試料をカラムにロードした後で溶出する前の乾燥段階)を始めとする数多くの追加段階を含んでいてもよい。分離プロセスに追加してもよいその他の段階は、固相抽出カラムを洗浄するためのフラッシュ段階又は洗浄段階であり、一般に分離手順の適当な段階で実施し得る。
【0034】
本発明の分離法は、不純物からの目的放射性標識化合物の効率的な分離ができるので、非常に有益である。典型的には、第1の溶出液を用いた不純物の溶出で得られる1以上の画分は、合計で目的放射性標識化合物の10%未満、さらに好ましくは目的放射性標識化合物の5%以下、最も好ましくは目的放射性標識化合物の2%以下しか含まない。
【0035】
さらに、本方法は、一般に、第2の溶出液を用いた目的放射性標識化合物の溶出で、目的化合物の純度が90%を超える1以上の画分が得られるという利点がある。さらに好ましくは、第2の溶出液は、目的化合物の純度が94、95又は96%を超える1以上の画分をもたらす。
【0036】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1態様の分離方法を含む目的放射性標識化合物の合成方法を提供する。
【0037】
目的放射性標識化合物並びに分離方法の好ましい実施形態及び最も好ましい実施形態は、本発明の第1態様で記載した通りである。
【0038】
特に好ましい実施形態では、目的放射性標識化合物の合成方法は自動化される。例えば、米国特許第6172207号には、複数のストップコックマニホールドと使い捨て滅菌シリンジを用いて[18F]−FDGを合成する方法が記載されている。これはGE Healthcare社から市販のTRACERlab(登録商標)MXFDG装置に相当する。
【0039】
本発明は、第3の態様では、目的放射性標識化合物の自動合成装置であって、合成が、目的放射性標識化合物と1種以上の不純物とを分離することを含んでおり、当該装置が、
目的放射性標識化合物を吸着させるとともに1種以上の不純物を吸着させるための固相抽出カラムであって、高分子表面改質吸着剤を含む固相抽出カラムと、
不純物を溶出させるために、第1の溶出液をカラムに供給する手段と、
目的放射性標識化合物を溶出させるために、第2の溶出液をカラムに供給する手段と
を備える装置を提供する。
【0040】
本発明の第3の態様の特徴は、本発明の第1の態様に関する特徴と概ね同じ(適宜修正して)である。
【0041】
本発明の第4の態様では、本発明は、目的放射性標識化合物の自動合成装置で使用する着脱式カセットであって、高分子表面改質吸着剤を含む固相抽出カラムを備えた着脱式カセットを提供する。かかる着脱式カセットは、適当に適合化した自動合成装置(TRACERlab(登録商標)など)に装着できるように設計される。着脱式カセットは、分離の費用効率、能率及び速度を向上させるという多大な利点をもたらす。また、セットアップ時間が最小限に短縮され、セットアップも簡単になるが、この二点はいずれも、特に臨床環境(病院など)で極めて重要である。着脱式カセットは、概して、本発明の前述の態様に関して記載した特徴を適宜修正して有している。
【0042】
着脱式カセットは、固相抽出カラムとは別に、前駆体化合物を収容する容器、不要な放射性イオンを除去するためのカラム、及び反応混合物を蒸発させて必要に応じて生成物を製剤化できるように接続されている適当な容器を含んでいてもよい。合成に必要な試薬、溶媒その他の消耗品も、放射能濃度、体積、送達時間などに関する顧客の必要性を満足するように自動合成器を運転することのできるソフトウェアが入ったコンパクトディスクと一緒に梱包してもよい。簡便には、運転間の汚染の危険性を最小限とし、無菌・品質を保証するため、着脱式カセットの構成要素はすべて使い捨てである。
【0043】
目的放射性標識化合物の自動合成のための着脱式カセットは、以下の(i)〜(v)を備えていてもよい。
(i)前駆体化合物を含む容器、
(ii)所望放射性核種の原料を含む容器を溶出する手段、
(iii)過剰の放射性核種を除去するためのイオン交換カートリッジ、
(iv)得られる目的放射性標識化合物を脱保護するためのカートリッジ、及び
(v)目的放射性標識化合物と1種以上の不純物とを分離するためのカートリッジであって、高分子表面改質吸着剤を含む固相抽出カラムを含むカートリッジ。
【0044】
本発明の第5の態様では、本発明は、以下の段階(i)〜(iv)を含む画像形成方法を提供する。
(i)本発明の第1の態様のプロセスを含む方法で得られた目的放射性標識化合物の検出可能な量を投与しておいた被験体を準備する段階、
(ii)目的放射性標識化合物を被験体の生体内に分布させる段階、
(iii)目的放射性標識化合物から放出された信号をインビボイメージング法で検出する段階、及び
(iv)信号の位置及び/又は量を表す画像を生成させる段階。
【0045】
本発明の第5の態様の方法は、検出可能な量の目的放射性標識化合物を投与しておいた被検体を「準備」することで開始される。この方法の最終目的は画像を得ることであるので、被験体への目的放射性標識化合物の投与は、画像の生成を容易にするために必要な準備段階であると理解することができる。
【0046】
本発明の「被験体」は好ましくは哺乳類であり、最も好ましくは、哺乳類の無傷生体である。特に好ましい実施形態では、本発明の被験体はヒトである。
【0047】
本発明の方法の「検出」段階では、放射性核種から放出された信号を、SPECT及びPET検出器のような、その信号を検知できる検出器で検出する。
【0048】
本発明の方法の「生成」段階はコンピュータによって実施され、取得した信号データに再構成アルゴリズムを適用してデータセットを得る。このデータセットを操作して、被験体内の関心領域(AOI;area of interest)を示す画像を生成させる。
【0049】
分離法及び目的放射性標識化合物の好ましい実施形態及び最も好ましい実施形態は、本発明の第1態様で記載した通りである。
【0050】
第6の態様では、本発明は、以下の段階(i)〜(iii)を含む診断方法を提供する。
(i)本発明の第1態様のプロセスを含む方法で得られた目的放射性標識化合物を被験体に投与する準備段階、
(ii)本発明の第5態様の画像形成方法の段階(i)〜(iv)、及び
(iii)画像形成方法の段階(iv)で生成した画像を評価して、病態を診断する段階。
【0051】
分離法及び目的放射性標識化合物の好ましい実施形態及び最も好ましい実施形態は、本発明の第1態様で記載した通りである。
【0052】
本発明を図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】共重合吸着剤(OASIS HLB)を用いた粗FLTの溶出を溶出液(水中5%エタノール)の体積の関数として示すグラフである。
【図2】図1の吸着剤を用いた粗FLTの溶出を溶出液(水中7%エタノール)の体積の関数として示すグラフである。
【図3】表面改質吸着剤(Strata(商標)X)を用いた粗FLTの溶出を溶出液(水中7%エタノール)の体積の関数として示すグラフである。
【実施例】
【0054】
本発明を次の非限定的な実施例で例示する。
【0055】
実施例1〜3
実施例1〜3では、モデル化合物19FLTとd4Tの分離を固相抽出カラムを用いて検討した。19FLTは、放射性核種18Fに代えて、天然に豊富に存在する19Fでフッ素化した。
【0056】
SPE分離後の画分はHPLCで分析した(Luna C18(2)5μmカラム(Phenomenex社製)、4.6×250mm A)0.1%TFA/H2O、B)0.1%TFA/MeCN。均一濃度9%Bで15分、流速1ml/分。)。
【0057】
一般的手順は次の通りであった。
1.カラム活性化:1×6ml MeCN
2.カラム洗浄:1×6ml H2
3.試料添加:d4T:19FLT比100:1
4.不純物の溶出:例えば4×6ml 2%MeCN
5.目的物の溶出:例えば1×6ml 12%MeCN
6.最終洗浄:1×6ml 100%MeCN、
或いは
1.カラム活性化:1×6ml EtOH
2.カラム洗浄:1×6ml H2
3.試料添加:d4T:19FLT比100:1
4.不純物の溶出:例えば5×6ml 5%EtOHと例えば1×6ml 8%EtOH
5.目的物の溶出:1×6ml 20%EtOH(7%EtOHの注入体積17ml)
6.最終洗浄:100%EtOH。
【0058】
使用した吸着剤は、N−結合2−ピペリドン基で改質した表面改質ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)であり、Phenomenex社からStrata(商標)Xという商品名で入手できる。実施例1〜3におけるカラムサイズは6m1/500mg吸着剤、温度は周囲温度、圧力は大気圧であった。
【0059】
カラムのコンディショニングは、各例において試料の添加前に実施した。例えば、実施例1では、1×6mlのアセトニトリルの添加後に、1×6mlの水を添加した。
【0060】
実施例1
1.試料の添加
d4T(6mg)、19FLT(0.060mg)を300μlの水に溶解した。270μlをStrata(商標)Xカラムに添加した。
【0061】
2.カラムの洗浄
i)4×6mlの2%アセトニトリルを用いてd4Tを洗い流した。微量の19FLTが最終洗浄画分中に観察された。厳密な定量は実施しなかった。
【0062】
3.溶出
1×6mlの12%アセトニトリルを用いて19FLTを溶出させた。HPLC純度は96%であった。
【0063】
4.対照
カラムを100%アセトニトリルで洗浄して、画分をHLPCで分析した。d4Tも19FLTも検出されなかった。
【0064】
実施例2
d4T(10mg)をH2O(200μl)に溶解し、1mg/mlの19FLT溶液100μlを加えた。30μlをHPLC分析用に採取した。残る270μlをカラムに添加した。カラムを活性化し(MeCN)、水で洗浄した。以下の手順を用いた。
【0065】
5×6ml 5%EtOH/H2
2×6ml 8%EtOH/H2
l×6ml 20%EtOH/H2O。
【0066】
実験は成功し、19FLTの純度(20%EtOH画分中)は96.5%であった。8%EtOH/H2Oのいずれの画分でも検出し得る19FLTな破過は認められなかった。
【0067】
実施例3
d4T(10mg)をH2O(200μl)に溶解した。19FLT(100μlの1mg/mlH2O溶液)を加えた。30μlをHPLC分析用に採取した。270μlをStrata(商標)X(500mg/6ml)カラムに添加した。カラムをMeCNで活性化し、H2Oで洗浄してから試料を添加した。
【0068】
手順:5×6ml 6%EtOH/H2
2×6ml 8%EtOH/H2
1×6ml 20%EtOH/H2
1×6ml 100%EtOH。
【0069】
試料はHPLCを用いて分析した。
【0070】
20%EtOH画分における19FLTの純度は96.4%であった。ただし、画分7も若干の19FLTを含んでおり、画分7と8の合計で19FLTの純度は96%となった。
【0071】
実施例4
2種類の異なる吸着剤を用いてFLTと不純物の分離を検討した。
【0072】
試験1
市販の合成装置で得た粗18FLT(崩壊)生成物をいずれの事例でも2mgの19FLTと混合して分析物の合計体積を10mlとした。分析物の試料を吸着剤Oasis HLB(Waters社製)を含むSPEカートリッジで吸着させた。Oasis HLBは、所定の比のN−ビニルピロリドンとジビニルベンゼンモノマーの共重合吸着剤である。
【0073】
カートリッジを乾燥し、次いで流速5ml/分の水中5%エタノールで溶出させた。10ml画分を回収した。結果を図1に示すが、FLTと2種類の不純物との分離がよくなかったことが分かる。
【0074】
試験2
溶出液として水中7%エタノールを使用した点を除いて、試験1を繰り返した。結果を図2に示すが、この場合も分離がよくなかったことが分かる。
【0075】
試験3
使用した吸着剤がStrata(商標)X(Phenomenex社製)であった点を除いて、試験2を繰り返した。Strata(商標)Xは、2−ピペリドンで表面改質した表面改質ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)コポリマーである。結果を図3に示すが、良好な分離であったことが分かる。
【0076】
実施例4は、FLTと不純物の分離に吸着剤及び溶出液が重要であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的放射性標識化合物と1種以上の不純物とを分離する方法であって、
目的放射性標識化合物と1種以上の不純物とを含む混合物を準備する段階、
高分子表面改質吸着剤を含む固相抽出カラムに混合物を流して、目的放射性標識化合物を吸着させ、1種以上の不純物を吸着させる段階、
第1の溶出液を用いて1種以上の不純物を溶出させる段階、及び
第2の溶出液を用いて目的放射性標識化合物を溶出させる段階
を含む方法。
【請求項2】
前記目的放射性標識化合物が放射性標識チミジン又はチミジン誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記目的放射性標識化合物が放射性標識3′−デオキシ−3′−チミジン又はその誘導体である、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記目的放射性標識化合物が18Fで放射性標識されている、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記目的放射性標識化合物が3′−デオキシ−3′−[18F]フルオロチミジンである、請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記1種以上の不純物がチミジン又はチミジン誘導体である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記不純物が2′,3′−ジデヒドロ−3′−デオキシチミジンである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記高分子表面改質吸着剤が表面改質ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)を含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記吸着剤がピロリドン又はピペリドン誘導体で表面改質されている、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ピロリドン又はピペリドン誘導体が2−ピロリドン又は2−ピペリドン誘導体である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記固相抽出カラムの有効容積が2〜8cm3である、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記固相抽出カラムに、該固相抽出カラムの有効容積を基準にして、20mg/cm3〜140mg/cm3の高分子表面改質吸着剤が充填されている、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
第1及び/又は第2の溶出液が、アセトニトリル、アルカノール及び水から選択される1種以上の溶媒を含む、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記アルカノールがエタノールを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
第1及び第2の溶出液の各々が、アセトニトリル又はエタノールのいずれかと水とを含み、2つの系でアセトニトリル又はエタノールの割合が異なる、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
溶出段階が、固相抽出カラムに第1又は第2の溶出液を0.5〜20ml/分の流速で流すことを含む、請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記混合物をカラムに流す前に、固相抽出カラムをコンディショニングする段階をさらに含む、請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
1回以上の固相抽出カラム洗浄段階をさらに含む、請求項1乃至請求項17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
第1の溶出液を用いて不純物を溶出させる段階で、目的放射性標識化合物を合計10%未満しか含まない1以上の画分を生じる、請求項1乃至請求項18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
第2の溶出液を用いて目的放射性標識化合物を溶出させる段階が、目的化合物の純度が90%を超える1以上の画分を生じる、請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の方法を含む、目的放射性標識化合物の合成方法。
【請求項22】
自動化された請求項21記載の方法。
【請求項23】
目的放射性標識化合物の自動合成装置であって、合成が、目的放射性標識化合物と1種以上の不純物とを分離することを含んでおり、当該装置が、
目的放射性標識化合物を吸着させるとともに1種以上の不純物を吸着させるための固相抽出カラムであって、高分子表面改質吸着剤を含む固相抽出カラムと、
不純物を溶出させるために、第1の溶出液をカラムに供給する手段と、
目的放射性標識化合物を溶出させるために、第2の溶出液をカラムに供給する手段と
を備える装置。
【請求項24】
前記高分子表面改質吸着剤が表面改質ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)を含む、請求項23記載の装置。
【請求項25】
前記吸着剤がピロリドン又はピペリドン誘導体で表面改質されている、請求項23又は請求項24のいずれか1項記載の装置。
【請求項26】
前記ピロリドン又はピペリドン誘導体が2−ピロリドン又は2−ピペリドン誘導体である、請求項25記載の装置。
【請求項27】
前記固相抽出カラムの有効容積が2〜8cm3である、請求項23乃至請求項26のいずれか1項記載の装置。
【請求項28】
前記固相抽出カラムに、固相抽出カラムの有効容積を基準にして、20mg/cm3〜140mg/cm3の表面改質吸着剤が充填されている、請求項23乃至請求項27のいずれか1項記載の装置。
【請求項29】
請求項23乃至請求項28のいずれか1項記載の装置で使用するための着脱式カセットであって、前記固相抽出カラムを含むカセット。
【請求項30】
画像形成方法であって、
(i)請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の方法を含む方法で得られた目的放射性標識化合物の検出可能な量を投与しておいた被験体を準備する段階、
(ii)目的放射性標識化合物を被験体の生体内に分布させる段階、
(iii)目的放射性標識化合物から放出された信号をインビボイメージング法で検出する段階、及び
(iv)信号の位置及び/又は量を表す画像を生成させる段階
を含む、画像形成方法。
【請求項31】
診断方法であって、
(i)請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の方法を含む方法で得られた目的放射性標識化合物を被験体に投与する準備段階、
(ii)本発明の第5態様の画像形成方法の段階(i)〜(iv)、及び
(iii)画像形成方法の段階(iv)で生成した画像を評価して、病態を診断する段階
を含む診断方法。
【請求項32】
前記画像をPET又はSPECTを用いて生成させる、請求項30又は請求項31記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−525931(P2010−525931A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552273(P2009−552273)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000777
【国際公開番号】WO2008/110757
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】