説明

加熱調理器およびその鍋状容器の乾燥方法

【課題】水分が付着した鍋状容器を特別に設けた加熱手順により良好に乾燥させることができる加熱調理器を得ることを目的とする。
【解決手段】鍋状容器3と、鍋状容器3を収容する本体1と、本体1に設けられ鍋状容器3を加熱する加熱手段4と、本体1に開閉可能に取り付けられ鍋状容器3の開口部を閉塞する蓋体2とを備えた加熱調理器100において、鍋状容器3が乾燥したことを検出する乾燥検出手段M05と、鍋状容器3が乾燥したことを報知する報知手段17と、乾燥モードが選択された際に起動し加熱手段4を作動させて鍋状容器3を加熱して乾燥させるとともに、乾燥検出手段M05からの乾燥判断結果に基づいて報知手段15,17を作動させて鍋状容器3が乾燥したことを報知する乾燥制御手段M01とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鍋状容器中の食材に対して加熱調理する加熱調理器に関するものであり、特に水が付着した鍋状容器を乾燥させることができる加熱調理器および鍋状容器の乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電磁誘導加熱炊飯器等の加熱調理器において、食材が付着しにくい鍋状容器とするとともに、保温時の省エネルギー化を図る目的で、鍋状容器をセラミック材またはセラミックとガラスの混合材等の材質にて作製することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、セラミック等の多孔質の材料で構成される鍋状容器は、容器に形成された多数の微細孔のなかに水分が浸透するので、良く乾燥させないとカビや悪臭の原因となることがある。そのため、水分が付着したままの鍋状容器を調理器中に保管することは衛生上好ましくない。一方、洗った後の鍋状容器をテーブル上等に放置したままにしておくと、ほこり等が付着してしまう可能性がある。
【0005】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、水分が付着した鍋状容器を特別に設けた加熱手順により良好に乾燥させることができる加熱調理器およびこの加熱調理器に用いる鍋状容器の乾燥方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、この発明に係る加熱調理器は、鍋状容器と、この鍋状容器を収容する本体と、本体に設けられ鍋状容器を加熱する加熱手段と、本体に開閉可能に取り付けられ鍋状容器の開口部を閉塞する蓋体とを備えた加熱調理器において、鍋状容器が乾燥したことを検出する乾燥検出手段と、鍋状容器が乾燥したことを報知する報知手段と、乾燥モードが選択された際に起動し加熱手段を作動させて鍋状容器を加熱して乾燥させるとともに、乾燥検出手段からの乾燥判断結果に基づいて報知手段を作動させて鍋状容器が乾燥したことを報知する乾燥制御手段とを備えている。
【0007】
また、この発明に係る加熱調理器の鍋状容器の乾燥方法は、鍋状容器と、鍋状容器を収容する本体と、本体に設けられ鍋状容器を加熱する加熱手段と、本体に開閉可能に取り付けられ鍋状容器の開口部を閉塞する蓋体とを備えた加熱調理器の鍋状容器の乾燥方法であって、加熱手段を作動させて鍋状容器を加熱する加熱乾燥工程と、乾燥検出手段により、鍋状容器が乾燥したことを検出する乾燥判定工程と、乾燥動作が完了したことを報知する報知工程とを備えている。
【0008】
ここで、乾燥検出手段による鍋状容器の乾燥をしたか否かの判断、つまり鍋状容器に付着する水分が無くなったか否かの判断は、鍋状容器の温度を測定する温度センサ(例えば、実施の形態の釜底温度センサ)の出力に基づいて、鍋状容器の温度変化が所定の特徴(例えば、温度の急上昇)を示したときに乾燥したと判断してもよいし、或いは予め求めておいた乾燥に達するまでの時間を計測するタイマの出力に基づいてもよいし、さらには蒸気噴出口に設けられた湿度センサの出力に基づくものであってもよい。
【0009】
また、乾燥制御手段による鍋状容器の所定温度に達したか否かの判断は、鍋状容器の温度を測定する温度センサ(例えば、実施の形態の釜底温度センサ)の出力に基づいてもよいし、或いは予め求めておいた所定温度に達するまでの時間を計測するタイマの出力に基づいてもよい。
【0010】
さらに、報知手段は、鍋状容器が乾燥したことを報知するものであるが、同時に乾燥モードが終了したことを報知するものでもある。乾燥制御手段は、本体或いは蓋体に設けられて表示によりこれを知らせるものであってもよいし、電子音など音により知らせるものであってもよいし、或いは外部の報知装置(例えば、管理室に設けられた表示盤、携帯電話等)に信号を出力するものであってもよいし、さらにはこれらを組み合わせたものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、水分が付着した鍋状容器を特別に設けた加熱手順により良好に乾燥させることができ、カビや悪臭の発生を防ぐことができ、衛生上優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る加熱調理器およびその鍋状容器の乾燥方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明に係る加熱調理器の実施の形態1である電磁誘導加熱炊飯器の横断面図である。図1において、電磁誘導加熱炊飯器100は、上部が開口した炊飯器本体1と、炊飯器本体1の後方上部に設けられた図示しないヒンジ部を介して炊飯器本体1の上部開口部を開閉自在に覆うように取り付けられた蓋体2と、炊飯器本体1内に着脱自在に収容される鍋状容器である内鍋3と、炊飯器本体1内に設けられて内鍋3を電磁誘導加熱する加熱手段である加熱コイル4とを有している。
【0014】
炊飯器本体1は、炊飯器本体1の外装および内装を構成する本体ケース5を有している。本体ケース5は、概略円筒状を成し炊飯器本体1の外側壁6aおよび上枠6bを形成する上ケース6と、上ケース6と一体に構成され外周端部が上ケース6の外側壁6aの下端部に結合して炊飯器本体1の底面7aを形成する概略円板状の下ケース7と、概略円筒状を成し上端部が上ケース6の上枠6bに結合して炊飯器本体1の内側壁を形成し、かつ内鍋3の収容部10の一部を形成する内ケース8と、概略椀状を成し内鍋3の下部を覆う形状に形成され上端部が内ケース8の下端部に一体に結合されて内ケース8とともに内鍋3の収容部10を形成してさらに収容部10の底面9aを形成して下面側に加熱コイル4が配設されたコイル台9とによって構成されている。内ケース8の上端部は、所定幅が全周にわたって外方向に折り曲げられて形成されたような形状を成すフランジ部8aとされている。フランジ部8a上に、内鍋3を支持する3つの支持突起8bが形成されている。そして、このフランジ部8aには、さらに、3つの支持突起8bにそれぞれ隣接するように、3つの鍋セットスイッチ12が設けられている。
【0015】
コイル台9の下面に、電磁誘導加熱用の加熱コイル4が配設されている。加熱コイル4は、コイル台9の裏面の平坦部に設けられた内側コイル4aと外周側の湾曲部に設けられた外側コイル4bとから構成されている。内側コイル4aと外側コイル4bは各々スパイラル状に旋回され直列に接続され、高周波電流が供給される。
【0016】
収容部10の底面9aを形成するコイル台9のほぼ中心部には、鍋底温度センサ13を配設するためのセンサ穴9bが穿孔されている。そして、センサ穴9b内に、概略円柱状の鍋底温度センサ13がセンサ穴9bから出没するように配設されている。そして、鍋底温度センサ13は、底面7aとの間に縮設された圧縮ばね14に付勢されて、上端面を内鍋3の底部裏面に当接している。鍋底温度センサ13は、このように上端面を内鍋3の底部裏面に当接した状態で内鍋3の温度を計測する。
【0017】
蓋体2は、ほぼ中心部に、蒸気噴出口20aを有する蒸気排出装置20が着脱自在に装着される取付穴18aを備え、蓋体2の上面側を形成する外蓋18と、外蓋18の下方に配設され、蒸気排出装置20が装着される開口孔19aを有し、蓋体2の下面側を形成する内蓋19とによって構成されている。内蓋19の外周縁部には、本体ケース5の上枠6bに載置される内鍋3のフランジ部3bに圧接して内鍋3内を気密に保持する蓋パッキン24が取り付けられている。外蓋18の前面側には炊飯スイッチや予約スイッチ等を有する操作パネル15が設けられている。外蓋18の前面側には、さらに炊飯器の異常を音によって知らせる電子音スピーカ17が設けられている。また、操作パネル15の裏面にあたる外蓋18の内部には、マイコン16が配設されている。
【0018】
図2は収容部10に内鍋3が収容される様子を示す斜視図である。図2において、内ケース8の上端部に設けられた3つの鍋セットスイッチ12は、スイッチ本体を上ケース6の外側面に固着され、押し込まれてオンとなるロッド12aをフランジ部8aに設けられた貫通穴から上方に出没可能に突出させている。内鍋3は、概略椀状を成す内鍋本体3aと、この内鍋本体3aの開口部から外方に全周にわたって鍔状に形成されたフランジ部3bとから構成されている。内鍋3の材質は、熱伝導が良好な炭素95%〜100%の焼成体を基材として構成し、内側にはフッ素コーティング等が施してある。炭素、所謂炭により内鍋を構成すると、まず、炭が加熱されて赤外線を発生するので美味しいご飯を炊くことができる。また、炭の脱臭作用により水道水のカルキが吸収されて風味のある美味しいご飯を炊くことができる。また、焼成体は比較的割れ易いため、従来の金属系容器の板厚に対して略2〜5倍の板厚である4〜10mmで構成している。このため、焼成体を基材とした内鍋3であっても十分な強度が得られる。さらに、この内鍋3の比重は、略1.7g/cm3前後と金属系容器に対して軽量であり、且つ同寸法のアルミニウムは1.5倍、鉄は4.3倍、銅は4.8倍の重量となり、略2〜5倍の板厚で従来の金属系容器と同等の重量となる。このような構成の内鍋3は、図2の矢印で示すように収容部10に挿入され、フランジ部3bの裏面に当接する3つの支持突起8bによって支持されて正規の位置に載置される。このとき、内鍋3が正常に正規の位置に載置されると、3つの鍋セットスイッチ12のロッド12aは、すべて内鍋3のフランジ部3bに押し込まれてオンする。このとき、内鍋本体3aの裏面中央部が鍋底温度センサ13に当接する。
【0019】
図3は操作パネル15の正面図である。本実施の形態の操作パネル15は、炊飯スイッチ15aの他に、乾燥モードを選択する乾燥スイッチ15bが設けられている。メニュー15cには、「白米」、「無洗米」、「ふつう」および「かため」に加えて、乾燥モードが選択されていることを示す「乾燥」の表示が設けられている。
【0020】
図4は電磁誘導加熱炊飯器100の電気系統を模式的に示す電気系統図である。制御の中心として働くマイコン16には、本実施の形態に関係のある機能部として、主制御部16aおよび駆動制御部16bが設けられている。そして、マイコン16には、交流電源からの電力を供給して誘導加熱コイル4を駆動する駆動回路35、鍋セットスイッチ12、鍋底温度センサ13、操作パネル15、および電子音スピーカ17が電気的に接続されている。主制御部16aは、駆動制御部16bを介して駆動回路35を制御して炊飯(調理)動作をする。
【0021】
図5は電磁誘導加熱炊飯器100の乾燥制御に関連する機能構成を示す機能構成図である。乾燥制御手段M01は、主に主制御部16aに記憶された乾燥モードプログラムより構成され、乾燥スイッチ15bが押されて乾燥モードが選択されたときに起動し、内鍋3の乾燥動作を実行する。加熱手段M02は、主に駆動回路35および誘導加熱コイル4により構成され、乾燥制御手段M01の指示に基づいて内鍋3を加熱する。この加熱手段M02は、食材を加熱調理する為の加熱手段(米を炊飯する加熱手段)と兼用とされている。そのため、装置のコスト増大を伴うことがない。操作入力手段M03は、操作パネル15により構成され、各種操作入力(信号)を入力する。乾燥モードもこの操作パネル15から選択される。そのため、ユーザは炊飯モードを選択するごとく、容易な方法により乾燥モードを選択することができる。報知手段M04は、電子音スピーカ17および操作パネル15により構成され、各種状態や異常を報知する。乾燥検出手段M05は、鍋底温度センサ13で構成されている。事前確認手段M06は、鍋セットスイッチ12で構成されている。
【0022】
図6は本実施の形態の乾燥制御手段M01(乾燥モードプログラム)の乾燥制御の手順を示すフローチャートである。図7はこの乾燥制御の手順が行われたときに、内鍋3が通常通り乾燥したときの温度の変化を示すグラフである。縦軸は、内鍋3の鍋底の温度と加熱手段M02の出力の変化を表している。横軸は時間の変化を表している。図6にそって乾燥制御の手順を説明する。乾燥制御手段M01(乾燥モードプログラム)は、操作パネル15の乾燥スイッチ15bが押されることにより起動する。
【0023】
[事前確認工程]
乾燥制御手段M01は、起動するとまず、ステップS1にて、事前確認手段M06(鍋セットスイッチ12)からの信号に基づき、乾燥動作が可能か否かを確認する。つまり、内鍋3が正常にセットされているか否かを確認する。そして、内鍋3が正常にセットされていなければ、ステップS6に移行して、報知手段M04の電子音スピーカ17から異常を表す音を発音することで内鍋3が正常にセットされていないことを報知して動作を終了する。
【0024】
[加熱乾燥工程]
一方、ステップS1にて内鍋3が正常にセットされていると判断したときには、ステップS2に移行し、加熱手段M02(駆動回路35および誘導加熱コイル4)を動作させて誘導加熱コイル4の第1の出力にて加熱を開始する。図7に示すように、内鍋3の温度は緩やかに上昇する。この状態で、ステップS3に移行する。ステップS3では、鍋底温度センサ13の出力に基づいて、内鍋3が所定の温度(ここでは、40℃)に達したか否かを判断する。達していない場合は、ステップS2に戻り、そのまま加熱を続ける。
【0025】
そして、所定の温度に達した場合には、ステップS4へ移行し、内鍋3が所定の温度(40℃)を保つように、今度は第1の出力より小さい第2の出力にて加熱を続ける。図7に示すように、内鍋3の温度は40℃を維持する。
【0026】
[乾燥判定工程]
そして、ステップS5へ移行して、乾燥検出手段M05(鍋底温度センサ13)の出力に基づいて、内鍋3の温度が所定の温度(40℃)から急激に上昇したか否かを判断する。炭素の焼成体を基材とする内鍋3においては、同じ熱の加え方をしていても、水分が無くなった時点で急激に温度が上昇する。そのため、この性質を利用して、急激な温度上昇を検出したときに内鍋3が乾燥したと判断する。そして、内鍋3が乾燥したと判断すると、加熱手段M02の動作を停止する。ここで、急激な温度変化の検出は、例えば、前回測定した内鍋3の温度をマイコン16に記憶しておき、そこからの時間の経過と温度の変化とから判断する。
【0027】
[報知工程]
このようにして正常に乾燥動作が終了したときには、ステップS6にて、報知手段M04の電子音スピーカ17から正常終了を表す音を発音させ、さらに同じく報知手段M04の操作パネル15に乾燥モードの動作が正常に終了した旨の表示をして動作を終了する。一方、内鍋3が正常にセットされず動作が行われなかったときは、上述のように異常を報知して動作を終了する。
【0028】
このように構成された電磁誘導加熱炊飯器100において炊飯を行う場合、まず、所定量の米と水が入った内鍋3を炊飯器本体1内(内ケース8およびコイル台9からなる収容部10)に収容して蓋体2を閉める。ついで、炊飯器の電源を入れて炊飯器本体1の前面側に設けられた操作パネル15の炊飯スイッチ15aを押下すると、マイコン16内に設けられた主制御部16aは、加熱コイル4に通電する。加熱コイル4が交流電流で駆動されると、加熱コイル4が発生する交番磁界の磁束が内鍋3に渦電流を発生させる。内鍋3は、この渦電流と自らの電気抵抗によって発熱する。このような原理により、主制御部16aは、内鍋3の底面に渦電流を発生させて内鍋3を発熱させて炊飯動作を開始する。そして、鍋底温度センサ13の検知温度に基づいて予熱、炊飯、むらしの各工程を制御して内鍋3内の米を炊き上げる。
【0029】
以上のように、本実施の形態の加熱調理器の鍋状容器の乾燥方法は、加熱手段M02を作動させて内鍋3を加熱する加熱乾燥工程と、乾燥検出手段M05により、内鍋3が乾燥したことを検出する乾燥判定工程と、乾燥動作が完了したことを報知する報知工程とを有している。このように特別に設けた加熱手順により、水分が付着した内鍋3を乾燥させるので、無駄なく良好に内鍋3を乾燥させることができ、カビや悪臭の発生を防ぐことができ、衛生上優れたものとすることができる。
【0030】
また、加熱乾燥工程の前に、鍋状容器が正常に収容されていることを確認する事前確認工程を有し、事前確認工程での確認結果に基づいて、乾燥動作可能な状態でないときは、乾燥加熱工程および乾燥判定工程をしないので、ユーザが誤って内鍋3のセットを忘れても内鍋3が無い状態で電磁誘導加熱コイル4が動作してしまうことがなく、安全性が向上する。
【0031】
さらに、加熱乾燥工程では、まず、電磁誘導加熱コイル4の第1の出力にて内鍋3を加熱し、内鍋3が所定の温度に達した判断すると、第1の出力より小さい第2の出力にて内鍋3を加熱するので、効率よく経済的な加熱をすることができる。
【0032】
さらにまた、本実施の形態の乾燥検出手段M05は、鍋底温度センサ13の出力に基づき、内鍋3の所定の特徴ある温度変化(本実施の形態では、急激な温度変化)を検出して内鍋3の乾燥を判定し、食材の加熱調理の制御にも用いる鍋底温度センサ13を兼用するので、そのため、装置のコスト増大を伴うことがなく、安価に実現することができる。
【0033】
なお、本実施の形態の事前確認工程では、鍋セットスイッチ12により内鍋3の有無のみを確認しているが、さらに内鍋3の中に食材等何も入ってないことを併せて検出するとさらによい。この検出は技術的に難しいが、コスト増加が許容されれば赤外線透過型スイッチ等で実現することができる。
【0034】
また、鍋セットスイッチ12は、本実施の形態のように、3つ設けることが理想であるが、1つだけ設けても、ほとんど同様の効果を得ることができ、1つだけ設けることによりコストダウンを図ることができる。
【0035】
また、本実施の形態においては、材質が多孔質の内鍋3に対して加熱乾燥動作を行うことにより、微細孔に溜まった水を蒸発させることができ、装置の性能を十分に発揮することができる。さらに、本実施の形態においては、内鍋3の材質が炭であるが、食材を加熱調理する為の加熱手段である電磁誘導加熱コイル4によって、これを加熱して乾燥させるので、蒸発しづらい炭の微細孔に溜まった水を、強力な電磁誘導加熱コイル4により蒸発させるので、良好に蒸発させることができ、装置の性能がさらに十分に発揮される。このように本実施の形態は、材質が多孔質の内鍋3に対して効果が大であるが、多孔質のものでなくとも良好な殺菌効果を得ることができる。
【0036】
また、本実施の形態においては、報知手段が蓋体2に設けられた警告音発生器としての電子音スピーカ17であるので、ユーザが電磁誘導加熱炊飯器100から離れた位置にいても確実に報知することができる。また、報知手段は、蓋体2に設けられた表示装置である操作パネル15も使って報知をして、この操作パネル15には乾燥モードが選択されている様子も表示されるので、ユーザは目視によっても容易に確認することができ、使い勝手がよい。
【0037】
実施の形態2.
図8はこの発明に係る加熱調理器である実施の形態2である電磁誘導加熱炊飯器の電気系統を模式的に示す電気系統図である。図8において、実施の形態1の電磁誘導加熱炊飯器の電気系統に加えて、タイマ23がさらに設けられている。
【0038】
図9は本実施の形態の乾燥制御手段M01(乾燥モードプログラム)の乾燥制御の手順を示すフローチャートである。図10はこの乾燥制御の手順が行われたときに、内鍋3が通常通り乾燥したときの温度の変化を示すグラフである。縦軸は、内鍋3の鍋底の温度と加熱手段M02の出力の変化を表している。横軸は時間の変化を表している。
【0039】
図9において、ステップS11からステップS15の[事前確認工程]、[加熱乾燥工程]および[乾燥判定工程]の動作は、図6に示す実施の形態1のフローチャートのステップS1からS5の動作と同様である。本実施の形態においては、ステップS15にて、急激な温度上昇を検出して内鍋3が乾燥したと判断したときに、続いてさらに抗菌工程を行う。
【0040】
[抗菌工程]
本実施の形態においては、ステップS15にて、内鍋3が乾燥したと判断すると、ステップS16に移行し、まずタイマ23を初期セットした後スタートさせる。そして、内鍋3を所定の温度に所定の時間維持する抗菌動作を行う。本実施の形態においては、60℃の温度に30分間維持する。なお、フローチャートでは省略しているが、ステップS17とステップS18の抗菌工程の加熱動作に関しては、加熱乾燥工程の動作のように、60℃に達するまでは、大きな出力にて加熱し、60℃に達した後、60℃を保つ程度の小さな出力にて加熱する。この工程では、内鍋3は既に乾燥しているので、図10に示されるように、加熱後内鍋3の温度は急激に上昇して60℃に達する。そして、この状態を30分間維持することにより内鍋3を殺菌する。この抗菌工程を追加することにより、内鍋3の衛生状態をさらに向上することができる。
【0041】
[報知工程]
このようにして正常に抗菌動作が終了したときには、ステップS19にて、報知手段M04の電子音スピーカ17から正常終了を表す音を発音させ、さらに同じく報知手段M04の操作パネル15に乾燥モードの動作が正常に終了した旨の表示をして動作を終了する。一方、内鍋3が正常にセットされず動作が行われなかったときは、実施の形態1と同じように異常を報知して動作を終了する。
【0042】
実施の形態3.
図11はこの発明に係る加熱調理器の実施の形態3である電磁誘導加熱炊飯器の横断面図である。図12は本実施の形態の電磁誘導加熱炊飯器の電気系統を模式的に示す電気系統図である。図11および図12において、本実施の形態の電磁誘導加熱炊飯器110においては、実施の形態2の電磁誘導加熱炊飯器の電気系統に加えて、蒸気排出装置20の蒸気噴出口20aの近傍に蒸気噴出口湿度センサ27がさらに設けられている。図11において、蒸気排出装置20に示した矢印は、蒸気の流れを示している。本実施の形態においては、図5に示す機能構成図において、乾燥検出手段M05が、蒸気噴出口湿度センサ27で構成されている。その他の構成は実施の形態2と同様である。
【0043】
図13は本実施の形態の乾燥制御手段M01(乾燥モードプログラム)の乾燥制御の手順を示すフローチャートである。図14はこの乾燥制御の手順が行われたときに、蒸気噴出口20aから噴出する蒸気の湿度の変化と内鍋3が通常通り乾燥したときの温度の変化を示すグラフである。縦軸は、内鍋3の鍋底の温度と蒸気噴出口20aから噴出する蒸気の湿度と加熱手段M02の出力の変化を表している。横軸は時間の変化を表している。
【0044】
[事前確認工程]
図13に示された乾燥制御手段M01(乾燥モードプログラム)が、操作パネル15の乾燥スイッチ15bが押されることにより起動することは、実施の形態1の図6に示す乾燥制御手段M01の動作と同じであり、また、ステップS21の事前確認の動作は、図6に示す実施の形態1のフローチャートのステップS1の動作と同様である。
【0045】
[加熱乾燥工程]
ステップS21にて内鍋3が正常にセットされていると判断したときには、ステップS22にてタイマをスタートさせた後にステップS23に移行して、加熱手段M02を動作させて、所謂「弱加熱」にて加熱を開始する。図14に示すように、内鍋3の温度は緩やかに上昇する。また、蒸気噴出口20aから噴出する蒸気の湿度も緩やかに上昇する。そして、ステップS24に移行し、所定の時間(ここでは、3分間)経過したか否かを判断する。所定の時間経過することで、所定の温度(ここでは、40℃)に達したと判断する。
【0046】
そして、3分間経過した場合には、ステップS25へ移行し、内鍋3が40℃を保つように、「弱加熱」の出力より小さい出力の「微弱加熱」にて加熱を続ける。これにより、内鍋3は図14に示すように概略40℃に維持される。
【0047】
[乾燥判定工程]
そして、ステップS26へ移行して、蒸気噴出口20aから噴出する蒸気の湿度の変化が上昇から下降に転じ、さらに所定の値以下となったか否かを判断する。炭素の焼成体を基材とする内鍋3においては、同じ熱の加え方をしていても、水分が無くなった時点で蒸気に含まれる湿度が所定の値以下となる。そのため、この性質を利用し、湿度の低下を検出したときに内鍋3が乾燥したと判断する。そして、加熱手段M02の動作を停止する。ここで、湿度が上昇から下降に転じたか否かの判断は、例えば、前回測定した湿度の値を記憶手段であるマイコン16に記憶しておき、そこからの時間の経過と湿度の変化(差)とから判断する。
【0048】
[報知工程]
ステップS27の報知工程の事前確認の動作は、図6に示す実施の形態1のフローチャートのステップS6の動作と同様である。
【0049】
本実施の形態においては、乾燥検出手段M05は、蒸気噴出口20aに設けられた蒸気噴出口湿度センサ27と、蒸気噴出口湿度センサ27の出力に基づき、蒸気噴出口20aから吹き出す蒸気の湿度が所定の値以下となった際に内鍋3が乾燥したと判定するので、温度センサ等によって乾燥を判断するものより、確実な判断をすることができる。
【0050】
なお、本実施の形態においては、「弱加熱」の出力にて3分間の経過より40℃に達したと判断しているが、これを発展させて、加熱開始後の所定時間の経過をまって加熱乾燥工程が完了したと判断するようにしてもよい。このような構成により、精度は多少悪くなるが、特別センサを必要とすることなく制御方法も簡単になるのでコストダウンを図ることができる。
【0051】
なお、実施の形態1から3は、すべて電磁誘導加熱炊飯器であるが、本発明は電磁誘導加熱炊飯器に限らず、鍋状容器と、この鍋状容器を収容する本体と、本体に設けられ鍋状容器を加熱する加熱手段と、本体に開閉可能に取り付けられ鍋状容器の開口部を閉塞する蓋体とを有する加熱調理器であれば、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明は、鍋状容器に収納した食材に対して加熱して調理する加熱調理器に好適なものであり、特に炭、土器等の多孔質の鍋状容器を装備する加熱調理器に好適なものであり、特に炭の焼成体でなる内鍋を装備して米を食材とする電磁誘導加熱炊飯器に適用されて好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明に係る加熱調理器の実施の形態1である電磁誘導加熱炊飯器の横断面図である。
【図2】収容部に内鍋が収容される様子を示す斜視図である。
【図3】操作パネルの正面図である。
【図4】電磁誘導加熱炊飯器の電気系統を模式的に示す電気系統図である。
【図5】電磁誘導加熱炊飯器の乾燥制御に関連する機能構成を示す機能構成図である。
【図6】実施の形態1の乾燥制御手段の乾燥制御の手順を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1の乾燥動作における内鍋の温度の変化を示すグラフである。
【図8】この発明に係る加熱調理器の実施の形態2である電磁誘導加熱炊飯器の電気系統を模式的に示す電気系統図である。
【図9】実施の形態2の乾燥制御手段の乾燥制御の手順を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態2の乾燥動作における内鍋の温度の変化を示すグラフである。
【図11】この発明に係る加熱調理器の実施の形態3である電磁誘導加熱炊飯器の横断面図である。
【図12】電磁誘導加熱炊飯器の電気系統を模式的に示す電気系統図である。
【図13】実施の形態3の乾燥制御手段の乾燥制御の手順を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態3の乾燥動作における蒸気の湿度の変化と内鍋の温度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1 炊飯器本体(本体)
2 蓋体
3 内鍋(鍋状容器)
4 加熱コイル(加熱手段)
5 本体ケース
6 上ケース
7 下ケース
8 内ケース
9 コイル台
10 収容部
12 鍋セットスイッチ
13 鍋底温度センサ(温度センサ)
15 操作パネル(表示装置:報知手段)
16 マイコン(記憶手段)
17 電子音スピーカ(警告音発生器:報知手段)
20 蒸気排出装置
20a 蒸気噴出口
23 タイマ
27 蒸気噴出口湿度センサ
35 駆動回路
100,110 電磁誘導加熱炊飯器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋状容器と、
前記鍋状容器を収容する本体と、
前記本体に設けられ鍋状容器を加熱する加熱手段と、
前記本体に開閉可能に取り付けられ前記鍋状容器の開口部を閉塞する蓋体とを備えた加熱調理器において、
前記鍋状容器が乾燥したことを検出する乾燥検出手段と、
前記鍋状容器が乾燥したことを報知する報知手段と、
乾燥モードが選択された際に起動し前記加熱手段を作動させて前記鍋状容器を加熱して乾燥させるとともに、前記乾燥検出手段からの乾燥判断結果に基づいて前記報知手段を作動させて前記鍋状容器が乾燥したことを報知する乾燥制御手段と
を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記鍋状容器の材質が、多孔質である
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記鍋状容器の材質が、炭である
ことを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱手段は、食材を加熱調理する為の加熱手段である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記加熱手段は、電磁誘導加熱コイルを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記乾燥モードは、操作入力により選択され、
前記操作入力をするスイッチが前記本体および前記蓋体のいずれかに設けられている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記鍋状容器が正常に収容されていることを確認する事前確認手段をさらに有し、
前記乾燥制御手段は、前記事前確認手段の確認結果に基づいて、乾燥動作可能でないときは乾燥動作をしない
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記乾燥制御手段は、起動の後、前記加熱手段の第1の出力にて前記鍋状容器を加熱し、前記鍋状容器が所定の温度に達した判断すると、前記第1の出力より小さい第2の出力にて前記鍋状容器を加熱する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記乾燥検出手段は、前記鍋状容器の温度を測定する容器温度測定手段と、
前記容器温度測定手段の出力に基づき、前記鍋状容器の所定の特徴ある温度変化を検出して前記鍋状容器が乾燥したと判定する判定手段とを有する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記容器温度測定手段は、食材の加熱調理の制御にも用いられる温度センサである
ことを特徴とする請求項9に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記乾燥検出手段は、蒸気噴出口に設けられた湿度センサと、
前記湿度センサの出力に基づき、前記蒸気噴出口から吹き出す蒸気の湿度が所定の値以下となった際に前記鍋状容器が乾燥したと判定する判定手段とを有する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記乾燥検出手段は、前記加熱手段による加熱開始からの時間を計測するタイマと、
前記タイマの出力に基づき、加熱開始の後に所定時間経過した際に前記鍋状容器が乾燥したと判定する判定手段とを有する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記乾燥制御手段は、前記鍋状容器の乾燥動作完了の後、前記鍋状容器を所定の温度に所定の時間維持する抗菌動作をする
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項14】
前記報知手段は、前記本体および前記蓋体のいずれかに設けられた警告音発生器である ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項15】
前記報知手段は、前記本体および前記蓋体のいずれかに設けられた表示装置を含む
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項16】
前記表示装置は、前記乾燥モードが選択されている様子も表示する
ことを特徴とする請求項15に記載の加熱調理器。
【請求項17】
鍋状容器と、前記鍋状容器を収容する本体と、前記本体に設けられ鍋状容器を加熱する加熱手段と、前記本体に開閉可能に取り付けられ前記鍋状容器の開口部を閉塞する蓋体とを備えた加熱調理器の前記鍋状容器の乾燥方法であって、
前記加熱手段を作動させて前記鍋状容器を加熱する加熱乾燥工程と、
乾燥検出手段により、前記鍋状容器が乾燥したことを検出する乾燥判定工程と、
乾燥動作が完了したことを報知する報知工程と
を備えたことを特徴とする加熱調理器の鍋状容器の乾燥方法。
【請求項18】
前記加熱乾燥工程の前に、前記鍋状容器が正常に収容されていることを確認する事前確認工程をさらに有し、
前記事前確認工程での確認結果に基づいて、乾燥動作可能な状態でないときは、前記乾燥加熱工程および前記乾燥判定工程をしない
ことを特徴とする請求項17に記載の加熱調理器の鍋状容器の乾燥方法。
【請求項19】
前記加熱乾燥工程では、まず、前記加熱手段の第1の出力にて前記鍋状容器を加熱し、前記鍋状容器が所定の温度に達した判断すると、第1の出力より小さい第2の出力にて前記鍋状容器を加熱する
ことを特徴とする請求項17または18に記載の加熱調理器の鍋状容器の乾燥方法。
【請求項20】
前記乾燥判定工程では、前記鍋状容器の温度を測定して、該温度が所定の特徴ある温度変化をしたとき前記鍋状容器が乾燥したと判定する
ことを特徴とする請求項17から19のいずれか1項に記載の加熱調理器の鍋状容器の乾燥方法。
【請求項21】
前記乾燥判定工程では、蒸気噴出口から吹き出す蒸気の湿度を測定し、該湿度が所定の値以下となった際に前記鍋状容器が乾燥したと判定する
ことを特徴とする請求項17から19のいずれか1項に記載の加熱調理器の鍋状容器の乾燥方法。
【請求項22】
前記乾燥判定工程では、前記タイマの出力に基づき、加熱開始の後に所定時間経過した際に前記鍋状容器が乾燥したと判定する
ことを特徴とする請求項17から19のいずれか1項に記載の加熱調理器の鍋状容器の乾燥方法。
【請求項23】
前記乾燥検出工程の後に、前記鍋状容器を所定の温度に所定の時間維持する抗菌工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項17から22のいずれか1項に記載の加熱調理器の鍋状容器の乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−44306(P2007−44306A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232521(P2005−232521)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】