説明

加飾シート及びインモールド成形方法

【課題】延伸性と耐熱性を共に具備する加飾シートを提供すること、及び、優れた加飾画像を有するインモールド射出成形品を成形することができるインモールド成形方法を提供すること。
【解決手段】樹脂シート上に、順次、画像層及び画像流れ防止領域が設けられ、前記画像層が、(a)重合性化合物、(b)重合開始剤、及び、(c)着色剤、を含有するインクのインク硬化画像であり、前記画像流れ防止領域が、(a)重合性化合物、及び、(b)重合開始剤、を含む流れ防止用組成物の硬化層であり、前記インク硬化画像よりも前記硬化層の方が、耐熱性に優れることを特徴とする加飾シート、及び、この加飾シートを使用する射出成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シート及びインモールド成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インモールド成形は、多くの分野に応用されており、家電、通信、雑貨等、の分野において、三次元加飾成形の方法として広く採用されている。インモールド成形においては、加飾シートを射出成形機の空洞部の内壁に固定し、樹脂を射出成形して加飾シート上の画像層と一体的な成形を行う。この加飾シートの製造は、従来から、印刷、塗装、などによることが多い。しかしながら、小部数であるか、又は、短い納期である場合には、インクジェット記録方法により加飾シートを製造することが簡便である。インクジェット記録方法を使用した加飾シート及び成形品は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−67860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット法により加飾シートを製造する場合でも、加飾シートは、延伸性と高い耐熱性を有することが好ましい。すなわち、インモールド射出成形のために使用する加飾シートは、成形加工に適した延伸性及び画像流れを防止した耐熱性が求められる。この延伸性と耐熱性とは、上述のように、一般には相反する傾向がある。例えば、インクジェットインクによる硬化画像の架橋密度を高くすると、耐熱性は向上して、耐インク流れ耐性を有するが、延伸性が犠牲になってしまう。ここで、流れ防止は、射出成形の際に注入される溶融樹脂に対する画像の耐熱性に関する特性である。
本発明が解決しようとする一つの課題は、延伸性と耐熱性を共に具備する加飾シートを提供することである。本発明が解決しようとする他の一つの課題は、優れた加飾画像を有するインモールド射出成形品を成形することができるインモールド成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、以下の解決手段<1>及び<8>により達成することができた。好ましい実施態様である<2>〜<7>及び<9>と共に列記する。
<1>樹脂シート上に、順次、画像層及び画像流れ防止領域が設けられ、前記画像層が、(a)重合性化合物、(b)重合開始剤、及び、(c)着色剤、を含有するインクのインク硬化画像であり、前記画像流れ防止領域が、(a)重合性化合物、及び、(b)重合開始剤、を含む流れ防止用組成物の硬化層であり、前記インク硬化画像よりも前記硬化層の方が、耐熱性に優れることを特徴とする加飾シート、
<2>インモールド成形用材料である、<1>に記載の加飾シート、
<3>前記インクよりも前記流れ防止用組成物の方が、全重合性化合物に占める多官能重合性化合物の重量比が大きい、<1>又は<2>に記載の加飾シート、
<4>前記インク硬化画像よりも前記硬化層の方が、ガラス転移温度(Tg)が高い、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の加飾シート、
<5>前記流れ防止用組成物が無機粒子を含む、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の加飾シート、
<6>前記画像層と前記画像流れ防止領域の間に反射層が設けられ、前記反射層が、白色顔料及び/又は金属粉末顔料を含む、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の加飾シート、
<7>前記樹脂シートが、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、及び、アクリル樹脂よりなる群から選ばれた、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の加飾シート、
<8>対向配置された固定金型と移動金型により形成された空洞部の内壁に<1>〜<7>のいずれか1項に記載された加飾シートを固定する工程、及び、ゲートから前記空洞部に注入される溶融樹脂が前記画像流れ防止領域に当たるようにゲート位置を前記画像流れ防止領域に対向する位置に配置して射出成形する工程を含む、インモールド成形方法、
<9>前記加飾シートを固定する工程が、真空成形又は圧空成形した加飾シートを固定する工程である、<8>に記載のインモールド成形方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明よれば、延伸性と耐熱性を共に具備する加飾シートを提供することができた。また、本発明により、優れた画質を有する画像で加飾されたインモールド成形品を製造することができるインモールド成形方法が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の加飾シート及び加飾成形品の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のインモールド成形方法の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の加飾シートは、樹脂シート上に、順次、画像層及び画像流れ防止領域が設けられ、前記画像層が、(a)重合性化合物、(b)重合開始剤、及び、(c)着色剤、を含有するインクのインク硬化画像であり、前記画像流れ防止領域が、(a)重合性化合物、及び、(b)重合開始剤、を含む流れ防止用組成物の硬化層であり、前記インク硬化画像よりも前記硬化層の方が、耐熱性に優れることを特徴とする。
【0009】
ここで、「耐熱性」とは、高温雰囲気下で力を加えられた際の変化の程度によって評価される。硬化インク膜の耐熱性の評価方法としては、溶融樹脂射出時や、高温風の吹きつけ時の変形/変色や、高温での粘弾性率測定等が挙げられる。
また、「流れ防止」とは、インモールド成形において、ゲートから射出される成形樹脂によって加飾シートに形成された画像層が、熱変形したり、熱損傷することを防止することをいう。「流れ防止領域」とは、流れ防止のために画像層の上に、また、特定の領域に限定して設けられる硬化した層をいう。
【0010】
以下にこの加飾シートの概要について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る加飾シート1及び成形品1Aの一例を模式的な断面図で示す。
図1中(1)において、加飾シート1は、樹脂シート2の上に、順次、画像層4及び画像流れ防止領域6が設けられている。この加飾シート1はインモールド成形に使用できる。
図1中(2)において、成形品1Aは加飾シート1と熱可塑性樹脂8とが一体に成形されている。
図2は、本発明の加飾シートを使用するインモールド成形方法に用いられるインモールド成形用金型10の一例を模式的に示す断面図である。固定金型12と移動金型14により形成された空洞部16内に、樹脂シート2上に画像層4及び画像流れ防止領域6を有する加飾シート1が位置決めされ固定されている。この空洞部16にゲート18から熱可塑性樹脂を注入して加飾シートと一体に成形品が製造される。
以下にこの加飾シートの製造に使用する材料について、詳細に説明する。インモールド成形については加飾シートの後に詳しく説明する。
【0011】
<樹脂シート>
本発明に使用する樹脂シートは、加飾シートの基材を構成する。樹脂シートとしては、透明性の高い各種の合成樹脂のフィルム又はシートが好ましく使用される。合成樹脂の好ましい例としては、熱可塑性樹脂があり、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、スチレン、アクリル樹脂が代表的である。その他、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、変性ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体、ポリアミド、又はこれらの2種以上からなるポリマーアロイなども使用される。中でも、耐熱性、耐衝撃性、透明性、及び3次元加工性に適している点から、ポリカーボネートが好ましい。また、樹脂シートの厚さは、好ましくは0.025〜1mmであり、より好ましくは0.03〜0.8mmであり、特に好ましくは0.035〜0.5mmである。この厚さの範囲であると、成形時に溶融樹脂の圧力で基材の破損を防止することができ、かつ、加飾シートの成形が容易である。
樹脂シートの層構成は、単層でもよく、また異種の樹脂を2層以上積層した積層体のいずれでもよい。
なお、本発明において、数値範囲を表す「A〜B」(ただしAよりBが大きい。)の記載は「A以上B以下」と同義である。
【0012】
樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂中には、必要に応じ適宜、添加剤が添加される。添加剤としては、表面光沢やガラス転移温度などの熱的挙動に支障をきたさない範囲で、各種添加剤が適量添加される。添加剤として、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル補捉剤等の光安定剤、シリコーン樹脂、ワックス等の滑剤、着色剤、可塑剤、熱安定剤、抗菌剤、防黴剤、帯電防止剤などが例示できる。
【0013】
<画像層及び画像流れ防止領域>
樹脂シート上に、必須の層として、順次、画像層及び画像流れ防止領域が設けられる。
上記の画像層は、(a)重合性化合物、(b)重合開始剤、及び、(c)着色剤、を含有するインク組成物(本発明において単に「インク」ともいう。)のインク硬化層である。このインク組成物は、インクジェットインクであることが好ましい。
インク組成物も流れ防止用組成物も、硬化性であり、後に詳しく述べるように、付加重合性であり、かつ、活性放射線の照射により硬化性を有することが好ましい。
また、前記画像流れ防止領域は、(a)重合性化合物、及び、(b)重合開始剤、を含む、画像流れ防止用組成物の硬化層である。この組成物には、(c)着色剤は任意成分であり、着色剤を含まない透明な組成物であっても、例えば、白色顔料を含む白色の組成物でもよい。
画像層は支持体上に全面にわたり設けることが好ましい。これに対して、画像流れ防止領域は、画像層の上に少なくとも部分的に設ける。画像流れ防止領域を画像層の上に全面に設けることを排除するものではないが、その必要に乏しいことは、以下の説明から明らかになるであろう。
【0014】
本発明に係る加飾シートは、インモールド成形材料として好ましく使用される。
「インモールド成形」とは、樹脂シート上に画像を形成した加飾シートを一対の金型により形成される空洞部の内壁に固定した後、熱可塑性樹脂を前記の空洞部に射出して、加飾シートと熱可塑性樹脂とが一体に成形された製品を製造することをいう。インモールド成形では、射出成形後に金型内で樹脂シートと画像層とを分離してもよい。一方、フィルムインサート成形は、射出成形時に金型内に固定した加飾シートと注入した熱可塑性樹脂とを一体に成形し、樹脂シートを含めた最終製品とする。
本発明の「インモールド成形」は、上位概念であり、樹脂シートを分離するインモールド成形の他にフィルムインサート成形を含むものである。
インモールド成形方法は、後に詳しく説明する。
【0015】
本発明において使用するインク組成物の成分について説明する。
(a)重合性化合物、及び(b)重合開始剤は、画像層及び画像流れ防止領域を形成するために共通の成分であるから、以下にまずインク及び流れ防止用組成物に好ましく使用される、重合性化合物について説明する。
【0016】
<(a)重合性化合物(成分a)>
成分aは、インク及び流れ防止用組成物の硬化性成分である。「重合性」とは付加重合性を意味し、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物がカチオン重合性化合物よりも好ましく、エチレン性不飽和化合物であることがより好ましい。
【0017】
(エチレン性不飽和化合物)
「エチレン性不飽和化合物」とは、ラジカル重合性のエチレン性不飽和基を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、分子量ないし構成単位の数により、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。エチレン性不飽和化合物は、分子中のエチレン性不飽和基を1つしか有しないか、複数有するかにより、単官能エチレン性不飽和化合物及び多官能エチレン性不飽和化合物に大別される。エチレン性不飽和化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上させるために任意の比率で2種以上を併用してもよい。
【0018】
なお、ラジカル重合性のエチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のエチレン性不飽和化合物が例示できる。
【0019】
本発明に使用するインクは、単官能のエチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。単官能のエチレン性不飽和化合物は、硬化画像中に線状のポリマーを形成するために柔軟な硬化画像を与え、画像層に延伸性を付与することに寄与する。
本発明に使用するインクは、多官能のエチレン性不飽和化合物を併用してもよい。多官能のエチレン性不飽和化合物は、硬化物の架橋密度を上げ、耐熱性を向上させるが、延伸性を低下させる傾向がある。
【0020】
以下に、本発明のインクに含有される、単官能エチレン性不飽和化合物及び多官能エチレン性不飽和化合物について説明する。
【0021】
単官能エチレン性不飽和化合物としては、N−ビニル化合物及び/又は炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環基を有する化合物が好ましい。
以下に、これらの単官能エチレン性不飽和化合物について説明する。
【0022】
(N−ビニル化合物)
本発明のインク組成物に用いられるN−ビニル化合物としては、N−ビニルラクタム類が好ましく挙げられる。N−ビニルラクタム類としては、式(a)で表される化合物が好ましい。
【0023】
【化1】

【0024】
式(a)中、nは2〜6の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは3〜5の整数であることが好ましく、nが3又は5であることがより好ましく、nが5である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化層の記録媒体及び画像層との良好な密着性が得られるので好ましい。
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上の水素原子がアルキル基、アリール基等の置換基により置換されていてもよく、ラクタム環と飽和又は不飽和環構造とが連結していてもよい。
式(a)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
N−ビニル化合物の含有量は、重合性化合物の全重量に対し、5重量%以上であることが好ましく、15〜30重量%であることがより好ましい。この配合量とすると画像層に十分な硬度が得られ、画像流れ防止領域の耐熱性が向上する。
【0026】
(炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環基を有する単官能エチレン性不飽和化合物)
本発明に使用するインク及び流れ防止用組成物には、成分aの重合性化合物として、炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環基を有する単官能エチレン性不飽和化合物を好ましく用いることができる。
炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環基を有する単官能エチレン性不飽和化合物を用いることにより、インク硬化画像の膜硬度と耐熱性を改良することができる。
【0027】
炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環基を有する単官能エチレン性不飽和化合物としては、式(I)〜式(III)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0028】
【化2】

(式(I)〜式(III)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、Y1は単結合、エーテル結合、アルキレンオキシ基、ポリ(アルキレンオキシ)基の二価の連結基を表し、Y1は脂肪族炭化水素環の任意の位置に結合し、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、s、t及びuはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、nは環状炭化水素構造を表す。)
【0029】
式(I)〜式(III)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、水素原子が特に好ましい。
【0030】
式(I)〜式(III)中、X1は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合であり、エステル結合であることが特に好ましい。エチレン性不飽和基は、アクリロキシ基であることが特に好ましい。
【0031】
式(I)〜式(III)中、Y1は、単結合、エーテル結合、アルキレンオキシ基、ポリ(アルキレンオキシ)基の二価の連結基を表し、Y1は脂肪族炭化水素環の任意の位置に結合することができる。Y1は、単結合及びアルキレンオキシ基がより好ましい。単結合が特に好ましい。
【0032】
式(I)〜式(III)中、R2〜R4はそれぞれ独立に置換基を表し、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基がより好ましい。メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基が更に好ましい。
s、t及びuは、それぞれ独立に0〜5の整数を表し、好ましくは0〜3の整数であり、2以上の場合、脂肪族炭化水素環の同一炭素原子に1個及び/又は2個結合することができる。
s個存在するR2、t個存在するR3、及び、u個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0033】
式(II)中、nが表す環状炭化水素構造としては、下記の構造が好ましく挙げられる。
【0034】
【化3】

【0035】
式(II−a)〜式(II−c)中、R1、R3、X1、Y1及びtは、式(II)中のR1、R3、X1、Y1及びtと同義である。
【0036】
式(I)〜式(III)で表される化合物は、脂肪族炭化水素環にアクリロキシ基が直接結合したアクリレート化合物が好ましい。
【0037】
炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環基を有する単官能エチレン性不飽和化合物としては、具体的に式(a−1)〜式(a−12)の化合物を挙げることができる。
【0038】
【化4】

【0039】
炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環基を有する単官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、重合性化合物の全重量に対し、1重量%以上であることが好ましく、1〜15重量%であることがより好ましい。この配合量であると、画像層及び特に画像流れ防止領域に十分な耐熱性が得られる。
【0040】
(他の単官能エチレン性不飽和化合物)
本発明のインク組成物は、他の単官能エチレン性不飽和化合物を更に含有していてもよく、上記以外の(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。以下に、例示する。
【0041】
上記以外の(メタ)アクリレート化合物としては、以下の式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物が例示される。
【0042】
【化5】

(式(2)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又は二価の連結基を表す。)
【0043】
式(2)におけるR1は、水素原子又はメチル基を表し、硬化速度の点で、水素原子が好ましい。
式(2)におけるXとしては、アルキレン基、又は、1以上のアルキレン基とエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれた1以上の結合とを組み合わせた基が好ましく例示でき、アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はポリアルキレンオキシ基がより好ましく例示できる。
前記アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はポリアルキレンオキシ基は、炭素数2〜10であることが好ましく、炭素数2〜4であることがより好ましく、炭素数2であることが特に好ましい。また、前記アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はポリアルキレンオキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等が例示できる。
これらの中でも、式(2)で表される化合物としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、フェノキシエチルアクリレートが特に好ましい。
【0044】
また、その他の単官能(メタ)アクリレート化合物の例として、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−フタルイミドエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、5−(メタ)アクリロイルオキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
他の単官能エチレン性不飽和化合物としては、芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物の芳香族基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
前記式(2)で表される化合物以外の芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、2−α−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−β−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリル(メタ)アクリレート、1−フェナントリル(メタ)アクリレート、2−フェナントリル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート(以下、「エチレンオキサイド」を「EO」ともいう。)、p−ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フリル(メタ)アクリレート、2−フルフリル(メタ)アクリレート、2−チエニル(メタ)アクリレート、2−テニル(メタ)アクリレート、1−ピロリル(メタ)アクリレート、2−ピリジル(メタ)アクリレート、2−キノリル(メタ)アクリレート、N−(1,1−ジメチル−2−フェニル)エチル(メタ)アクリルアミド、N−ジフェニルメチル(メタ)アクリルアミド、N−フタルイミドメチル(メタ)アクリルアミド、N−(1,1’−ジメチル−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル))プロピル(メタ)アクリルアミド等を例示できる。
【0046】
(他の単官能エチレン性不飽和化合物)
他の単官能エチレン性不飽和化合物には、単官能ビニルエーテル化合物も含まれる。
このような単官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0047】
(多官能エチレン性不飽和化合物)
本発明に使用するインク及び流れ防止用組成物には、多官能(メタ)アクリレート化合物を好ましく使用できる。
多官能(メタ)アクリレート化合物には、2官能(メタ)アクリレート化合物及び3官能以上の(メタ)アクリレート化合物が含まれる。
【0048】
2官能(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、等が挙げられる。
中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、ジプロピレングリコールジアクリレートが特に好ましい。
【0049】
2官能(メタ)アクリレート化合物としては、炭素数5以上の分岐を有していてもよい炭化水素鎖を有する2官能(メタ)アクリレート化合物が好ましく使用できる。
2官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、炭素数5以上の炭化水素鎖を分子内に有する2官能(メタ)アクリレート化合物であり、具体的には、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
3官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。4官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
また、インク及び/又は流れ防止用組成物には多官能ビニルエーテル化合物も用いることができる。
好適に用いられる多官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0052】
本発明において、インク組成物の重合性化合物の全重量に対する多官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、0〜20重量%が好ましく、0〜15重量%がより好ましく、1〜10重量%が特に好ましい。
【0053】
本発明において、流れ防止用組成物の全重合性化合物の全重量に対する多官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、5〜100重量%であることが好ましく、10〜100重量%であることがより好ましく、20〜100重量%であることが特に好ましい。
【0054】
本発明に使用するインクは、単官能のエチレン性不飽和化合物と多官能のエチレン性不飽和化合物を併用することが好ましい。ただし、インクよりも画像流れ防止領域を形成する組成物の方が、全重合性化合物に占める多官能のエチレン性不飽和化合物の重量比を大きくすることが好ましい。画像層のインク硬化画像よりもインク画像流れ防止領域の硬化層の耐熱性を高くするためである。
【0055】
本発明の加飾シートにおいて、インク硬化画像よりも流れ防止用組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)を高くすることが好ましい。ガラス転移温度は、硬化物の弾性率を一定の昇温速度の下で測定することにより測定できる。
Tgを高くするための処方としては、インクよりも流れ防止用組成物に、インクよりも、前出のN−ビニル化合物及び/又は炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環基を有する単官能エチレン性不飽和化合物の含有量を大きくすることが含まれる。また多官能エチレン性不飽和化合物/単官能エチレン性不飽和化合物の比率を向上させて、架橋密度を上げることもガラス転移温度を向上させる。
【0056】
<(b)重合開始剤>
本発明に使用するインク及び流れ防止用組成物は、(b)重合開始剤を含有する。
重合開始剤は、熱重合開始剤と光重合開始剤とに大別され、いずれも本発明において使用できるが、光重合開始剤の方が好ましく使用される。この場合、支持体上に吐出されたインク及び流れ防止領域は、活性放射線を照射することによって硬化する。インク組成物に含まれる光重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の作用により重合性化合物の付加重合反応が開始されるためである。
なお、本発明における重合開始剤は、活性放射線等の外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物だけでなく、特定の活性放射線を吸収して重合開始剤の分解を促進させる化合物(いわゆる、増感剤)も含まれる。
本発明のインク又は流れ防止用組成物において、重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤も活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤との相互作用によって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。増感剤としては例えば、特開2008−208190号公報に記載のものが挙げられる。
本発明に使用される重合開始剤として、(成分b−1)チオキサントン化合物、及び、(成分b−2)ビスアシルホスフィン化合物を含有することが好ましい。前記重合開始剤と、重合性化合物の組み合わせにより、インク硬化画像及び流れ防止領域に形成される硬化組成物の膜硬度、高温時の延伸性、及びインク流れ耐性に優れるインクジェットインクが得られる。
以下に、成分b−1及び成分b−2の化合物について説明する。
【0057】
<(成分b−1)チオキサントン化合物>
本発明のインク組成物は、(成分b−1)チオキサントン化合物を好ましく含有することができる。
チオキサントン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、式(D−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0058】
【化6】

【0059】
前記式(D−1)において、R1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基(一置換及び二置換の場合を含む。なお、以下においても同様である。)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0060】
チオキサントン化合物としては、硬化性の観点から、チオキサントン、2,3−ジエチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−シクロヘキシルチオキサントン、4−シクロヘキシルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンが好ましく、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
【0061】
成分b−1の合計含有量は、インク全体の0.1〜5.0重量%が好ましく、0.5〜3.0重量%がより好ましい。
【0062】
<(成分b−2)ビスアシルホスフィン化合物>
(成分b−2)ビスアシルホスフィン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、式(D−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0063】
【化7】

(式(b−2)中、R1E、R2E及びR3Eはそれぞれ独立に、メチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0064】
ビスアシルホスフィン化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:チバ・ジャパン(株)製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどが好ましい。
【0065】
成分b−2の含有量は、インク組成物又は流れ防止用組成物の全体の1〜8重量%が好ましく、2〜7重量%であることがより好ましい。
【0066】
本発明における成分bの好ましい態様は、成分b−1を含むことであり、より好ましくは成分b−1と成分b−2の両者を含有することである。
【0067】
本発明における成分bの総含有量は、インク組成物全体の0.1〜15.0重量%であることが好ましく、1.0〜12.0重量%であることがより好ましく、2.0〜10.0重量%であることが更に好ましい。
上記範囲であると、成分a〜成分cと組み合わせて使用することにより、インク画像の膜硬度、高温時の延伸性、に優れたインク組成物が得られる。
【0068】
本発明のインク組成物は、成分b−1及びb−2の重合開始剤以外のその他の重合開始剤を含んでもよい。その他の重合開始剤としては、モノアシルホスフィン化合物、α−ヒドロキシケトン、α−アミノアルキルケトン、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
上記重合開始剤の詳細については、当業者に公知であり、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されている。
【0069】
<(c)着色剤>
本発明のインク組成物は、画像層を形成するために、特に着色画像、好ましくはフルカラーの画像を形成するため、着色剤を含有する。着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、インクジェット分野において公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないために、重合反応を禁止又は抑制しない化合物を選択することが好ましい。
【0070】
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド3(「Pigment Red 3」ともいう。)、5、19、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、202、208、216、226、257、C.I.ピグメントバイオレット3(「Pigment Violet 3」ともいう。)、19、23、29、30、37、50、88、C.I.ピグメントオレンジ13(「Pigment Orange 13」ともいう。)、16、20、36、青又はシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1(「Pigment Blue 1」ともいう。)、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、22、27、28、29、36、60、緑顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7(「Pigment Green 7」ともいう。)、26、36、50、黄顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1(「Pigment Yellow 1」ともいう。)、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109、110、120、137、138、139、150、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、黒顔料としては、C.I.ピグメントブラック7(「Pigment Black 7」ともいう。)、28、26、白色顔料としては、C.I.ピグメントホワイト6(「Pigment White 6」ともいう。)、18、21などが目的に応じて使用できる。
【0071】
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、201、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9等が挙げられる。
【0072】
着色剤は、インク組成物に添加した後、適度に当該インク組成物内で細かく分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散の装置を用いることができる。
【0073】
着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加してもよい。また、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散あるいは溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。すなわち、本発明で使用するインク及び流れ防止組成物は、溶剤を含まないことが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、粘度の比較的低い化合物を選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0074】
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0075】
<分散剤>
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0076】
<その他の成分>
本発明に使用するインクは、必要に応じて、前記各成分以外に、界面活性剤、重合禁止剤、共増感剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、塩基性化合物等を含有してもよい。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
【0077】
<流れ防止用組成物>
流れ防止用組成物は、(a)重合性化合物、及び、(b)重合開始剤、を必須の成分とする硬化性の組成物である。成分a及び成分bは、インク組成物と共通であるから、重複した記載は割愛する。流れ防止用組成物は、(c)着色剤を、必須成分としない。ただし、(c)着色剤を含有することを排除するものではない。
【0078】
本発明の加飾シートにおいて、流れ防止用組成物が無機粒子を含有することが好ましい。
無機粒子には、無色又は有色の無機顔料が含まれる。このような無機顔料の例としては、シリカ、アルミナ、ベーマイト、合成粒子シリカ、合成粒子アルミナシリケート、気相法合成シリカ、ゼオライト、モンモリロナイト群鉱物、バイデライト群鉱物、サポナイト群鉱物、ヘクトライト群鉱物、スチーブンサイト群鉱物、ハイドロタルサイト群鉱物、スメクタイト群鉱物、ベントナイト群鉱物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム化合物、アルミナ水和物、プラスチックピグメント、尿素樹脂顔料、セルロース粒子、澱粉粒子、シリカアルミナ複合粒子などが挙げられる。
【0079】
中でも、気相法合成シリカ、シリカ、アルミナ、ベーマイトが、流れ防止用組成物に好ましく含有され、アルミナがより好ましく含有される。その硬化物の耐熱性を向上するためである。
【0080】
<画像流れ防止領域における硬化膜の形成>
画像層と画像流れ防止領域は、順次異なる工程で形成することもできる。この場合、樹脂シート上に、画像層をインクジェット記録方法で形成し、引き続いて、画像流れ防止領域をインクジェット記録方法で形成する。
画像層と画像流れ防止領域の二つを同時に形成してもよい。この場合、同じインクジェットノズルから、インクと流れ防止用組成物を樹脂シートに印画する。
【0081】
インク及び流れ防止用組成物は、重合反応により、好ましくはラジカル付加重合により、硬化させて、それぞれ、硬化画像又は硬化膜を形成することができる。
(b)重合開始剤について説明したように、重合開始剤が、熱重合開始剤が光重合開始剤に対応して、硬化反応には、加熱するか、又は、活性放射線を照射する。
本発明において好ましく使用される光重合開始剤を含有するインク又は流れ防止用組成物に対しては、これらに活性放射線を照射することによって硬化する。
硬化用の光源としては、公知の紫外線を含む公知の光源が使用できる。硬化用光源としては、メタルハライドランプやLED(発光ダイオード)等が好ましく用いられ、LEDがより好ましく用いられる。
【0082】
<加飾シートの層構成>
加飾シートは、樹脂シート上に、必須の層として、既に説明した画像層と画像流れ防止領域とを有する。
画像層と画像流れ防止領域との間に、任意の層として反射層を有してもよく、この場合反射層は、白色顔料及び/又は金属粉末顔料を含むことが好ましい。反射層は、インクジェット記録方法により白色顔料を含む硬化性インクにより形成してもよく、オーバーコートなどの塗布手段やシルクスクリーンなどの印刷手段により樹脂シートの全面に形成してもよい。反射層を設けると、画像層を樹脂シートを通して観察できる。
反射層は、画像層と画像流れ防止領域との間に設ける代わりに、画像層と画像流れ防止領域の上に、前記の塗布手段や印刷手段により設けてもよい。
樹脂シート上に画像層と画像流れ防止領域を形成した後に、又は、これらの上に反射層を設けた上に、これらの層上に、更に射出成形樹脂との密着を改良するためにバインダーを含有する層を設けることも好ましい。このバインダー含有層は、インクジェット記録方法により形成してもよく、オーバーコートなどの塗布手段により形成してもよい。
【0083】
<インモールド成形方法>
本発明のインモールド成形方法は、複数の金型により形成された空洞部の内壁に本発明の前記加飾シートを固定する工程、及び、ゲートから前記空洞部に注入される溶融樹脂が前記画像流れ防止領域に当たるようにゲート位置を前記画像流れ防止領域に対向する位置に配置して射出成形する工程を含む。
以下にこの成形方法について説明する。
【0084】
本発明のインモールド成形方法における最初の必須工程は、複数の金型により形成された空洞部の内壁に本発明の前記加飾シートを固定する工程である。
本発明において、射出成形は、射出成形機により行う。成形品を造るのに使用する金型は、対向配置された固定金型と移動金型により形成されることが好ましく、両金型により挟まれた空洞部が形成される。なお、金型は、通常、スプル、ランナー、及び、ゲートを通じてキャビティに充填された成形材料を冷却固化させた後、自動的に金型を開いて、その成形品を取り出すように作られている。
ここで、空洞部は、キャビティとも呼ばれ、成形品の形状に該当する空間部分である。この工程は、印刷された画像層及び画像流れ防止領域を有する加飾フィルムを金型の空洞内に位置決めして固定する工程である。この場合に、加飾シートの画像層が空洞部の内側になるように固定する。
【0085】
本発明の加飾シートを、予め真空成形又は圧空成形した後に、金型内に固定することもできる。この真空成形又は圧空成形により、最終的な製品の外観形状の一部に合致した形状に成形しておくことができる。この場合、最初の工程では、予め真空成形又は圧空成形した加飾シートを金型内に、好ましくは固定金型の側に、固定することになる。
真空成形又は圧空成形における加飾シートの延伸率は、加飾シートのすべての領域で200%以下であることが好ましく、150%以下であることがより好ましい。なお、多くの場合厚みのある立体を2つに分割した形状に成形する場合には、周辺部の延伸率が大きくなる傾向がある。
【0086】
本発明のインモールド成形方法における2段目の必須工程は、ゲートから前記空洞部に注入される溶融樹脂が前記画像流れ防止領域に当たるようにゲート位置を前記画像流れ防止領域に対向する位置に配置して射出成形する工程である。
ここで、「ゲート」とは、射出成形用の金型において、成形材料である溶融樹脂をキャビティ内へ注入するための注入口をいう。ゲートの位置は成形する形状に適合するいくつかの候補がある。本発明において、画像流れ防止領域は、ゲート位置に対向する位置に設けられ、注入される溶融樹脂による硬化画像の流れ防止の保護機能を有する。
流れ防止領域は、加飾シートの延伸率が低いところに設定することが好ましく、延伸率20%未満である領域に設けることがより好ましく、加飾シートの中央部分近傍に設けることが特に好ましい。
【0087】
射出成形において、空洞部に注入する熱可塑性樹脂は、当業者に公知の樹脂が使用できる。この樹脂には、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポロプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂が含まれる。またこれらの少なくとも1種を含む混合樹脂を用いても良い。
射出成形の条件は、注入する熱可塑性樹脂の種類、成形品の形状等により適宜決定される。ABS樹脂の場合を例に採ると、シリンダー温度180〜260℃、金型温度40〜80℃、射出圧力500〜1,800kg重/cm2であることが好ましい。
【0088】
本発明の成形方法において、射出成形工程の後で、射出金型から製品を取り出すと、加飾された成形品が得られる。
既に述べたように、インモールド成形では、金型内で樹脂シートを画像層と分離してもよい。一方、フィルムインサート成形は、射出成形時に金型内に固定した加飾シートと注入した樹脂とを一体に成形する。
インモールド成形及びフィルムインサート成形は、多くの分野に応用されており、家電、通信、雑貨等、広く採用される成形方法に発展してきた。近年の携帯電話の普及にも大きく貢献をし、表示ウィンドウには欠かせない技術に成長してきている。
【実施例】
【0089】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示し、「%」とは「重量%」を表すものとする。
【0090】
本発明で使用した素材の詳細は下記に示す通りである。
・CINQUASIA MAGENTA RT−355−D(マゼンタ顔料、BASFジャパン(株)製)
・SOLSPERSE32000(分散剤、日本ルーブリゾール(株)製)
・V−CAP(N−ビニルカプロラクタム、ISPジャパン(株)製)
・HDDA(SR238B、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
・DPGDA(SR508、ジプロピレングリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・DVE−3(RAPI−Cure DVE−3、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ISPジャパン(株)製)
・NPGPODA(SR9003、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・PEA(SR339、フェノキシエチルアクリレート、Sartomer社製)
・IBOA(SR506、イソボロニルアクリレート、Sartomer社製)
・CN307(オリゴマー、ポリブタジエンジアクリレート、Sartomer社製)
・CN964A85(オリゴマー、脂肪族ウレタンアクリレート、2官能相当、Sartomer社製)
・TPO(DAROCUR TPO、モノアシルホスフィン光重合開始剤、BASFジャパン(株)製)
・IRG819(IRGACURE819、ビスアシルホスフィン光重合開始剤、BASFジャパン(株)製)
・ITX(増感剤、イソプロピルチオキサントン、シェルケミカルズジャパン(株)製)
・カレンズMT−PE1(連鎖移動剤、昭和電工(株)製)
・KF−353(シリコーン系界面活性剤、信越化学工業(株)製)
・UV−12(重合禁止剤、CHROMACHEM社製)
・NANOBYK3601(アルミナ分散物、D50=40nm、ビッグケミー・ジャパン(株))
【0091】
<マゼンタミルベース(顔料分散体)の調製>
・マゼンタ顔料:CINQUASIA MAGENTA RT−355D:30重量部
・PEA(フェノキシエチルアクリレート):60重量部
・ソルスパース32000:10重量部
上記の成分を撹拌し、マゼンタミルベースを得た。なお、顔料ミルベースの調製は、分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで8時間分散を行った。
【0092】
<画像層のインク組成物1〜3の調製>
上記マゼンタミルベース、表1の画像層成分に記載のモノマー、オリゴマー、重合開始剤、増感剤その他添加剤をそれぞれ表1に記載された添加量加え混合し、高速撹拌することでマゼンタ画像層のインク組成物1〜3をそれぞれ得た。
【0093】
<流れ防止用組成物1、2及び3の調製>
表2の画像流れ防止領域の成分に示す、モノマー、オリゴマー、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、界面活性剤及びその他添加剤を、それぞれ表2に記載された添加量加え混合し、高速撹拌することで画像流れ防止領域の流れ防止用組成物1〜3をそれぞれ得た。
【0094】
<実施例1〜3、及び、比較例1〜3の作製>
上記で調製した、画像層のインク組成物1〜3のいずれか1つ、及び、流れ防止用組成物1〜3のいずれか1つを用いて、下記に示すインクジェット画像記録方法により、樹脂シート上に画像層と画像流れ防止領域を、この順で、表3に記載した構成となるように設けた。
実施例2及び3には、更に画像層と画像流れ防止領域との間に、スクリーン印刷にて白色層(反射層)を設けた。スクリーン印刷の条件は、下記の通りとした。
スクリーン印刷の条件:スクリーンインキ/IPX675(白色、帝国インキ(株)製)、及び、溶剤/F−003(帝国インキ(株)製)を使用した。
IPX675に、溶剤としてF−003を10重量%、及び硬化剤#200(帝国インキ(株)製)を8重量%添加し混合調製したものを、上記インクジェット方式で設置したマゼンタ画像層の上に250メッシュでスクリーン印刷し、65℃で15分間乾燥してサンプルを得た。
【0095】
(インクジェット画像記録)
ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置を用いて、記録媒体への記録を行った。
インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に40℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜10plのマルチサイズドットを600×600dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV光を露光面照度1,200mW/cm2に集光し、記録媒体上にインク組成物が着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。紫外線ランプには、UV−LEDランプ((株)松下電工製)を使用した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
記録媒体として、ポリカーボネート(膜厚500μm、帝人化成(株)社製、商品名:パーンライト)を用いた。
【0096】
紫外線照射においては、画像はヘッドが6往復して形成されるため、最初に打適されたインクは6往復分の露光量が照射される。1往復約50mJ/cm2の露光量であるため、6往復した場合の総露光量は300mJ/cm2となる。
【0097】
上記で作製した、実施例及び比較例のサンプルについて、加熱延伸率、及びインク流れ耐性の評価を行った。各評価方法は以下の通りであり、評価結果は表3に記載した。
【0098】
前記インクジェット記録方法に従い、透明基材(ポリカーボネート)のシート上に、実施例又は比較例として表3に記載した組み合わせのインク及び画像流れ防止領域組成物を使用して実施例1〜3及び比較例1〜3の試料を作成した。なお、画像層は、平均膜厚が30μmのベタ画像となるようにインク描画を行った。また、画像流れ防止層は、やはりインクジェット記録方法により、硬化画像が平均厚さ30μmの硬化層となるように作成した。
【0099】
<延伸性の評価>
得られた各試料から、5cm×2cmの大きさに測定片をカットして、下記の延伸機械により下記の温度条件で引っ張り試験を行い、延伸率を測定した。
使用機械:テンシロン((株)島津製作所製)
測定条件:温度180℃、引張り速度50ミリメートル/分,破断時の長さを測定し延伸率を算出した。ここで延伸率は、{(破断時の長さ−延伸前の長さ/延伸前の長さ)×100、により求めた。((例)10cmで破断した場合、{(10cm−5cm)/5cm}×100=100%延伸と算出される。)
加熱延伸性の評価基準は下記の通りである。
◎:延伸率150%以上
○:延伸率100%以上150%未満
△:延伸率50%以上100%未満
×:延伸率50%未満
評価において、◎がもっとも優れており、評価◎〜△が実用上問題のない範囲である。
【0100】
<インク流れ耐性の評価>
前記インクジェット記録方法に従い、透明基材(ポリカーボネート)の樹脂シート上に、実施例及び比較例が表3に記載の構成となるように、平均膜厚が30μmのベタ画像のインク描画を行い、インク膜を作製した。
射出成形機として住友重機械工業(株)製SG−50を用いて、加飾シートを5.5cm×5.5cmの空洞部の内壁に固定して、ゲートから注入される溶融樹脂が前記シートの前記画像流れ防止領域に当たるようにゲート位置を画像流れ防止領域に対抗する位置に設けて射出成形した。加飾シートの画像流れ防止領域に対向するゲートから220℃のABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)樹脂を射出し成形した。成形品についてインク流れ耐性を評価した。
【0101】
インク流れ適性の評価基準は、以下のように4段階基準とした。
◎:射出された箇所での膜厚減少が20%未満であった。
○:射出された箇所での膜厚減少が20%以上100%未満であった。
△:射出された箇所で膜が消失しており、かつ膜が消失している部分の半径が2mm未満であった。
×:射出された箇所で膜が消失しており、かつ膜が消失している部分の半径が2mm以上であった。
評価◎がもっとも優れており、評価◎〜○が実用上問題のない範囲である。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
流れ防止用組成物1及び2を使用して、前記画像形成方法と同様の方法にて画像形成を行った。その後、射出成形機として住友重機械工業(株)製SG−50を用いて、加飾シートを5.5cm×5.5cmの空洞部の内壁に固定して、ゲートから注入される溶融樹脂が前記シートの前記画像流れ防止領域に当たるようにゲート位置を画像流れ防止領域に対抗する位置に設けて射出成形した。加飾シートの画像流れ防止領域に対向するゲートから220℃のABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)樹脂を射出し成形した。射出成形後の画像流れ防止領域に対して、前記のインク流れ耐性の評価を行った。
【0105】
インク流れ耐性の評価の結果、流れ防止用組成物1の評価は○であり、流れ防止用組成物2の評価は×であり、流れ防止用組成物3の評価は◎であった。尚、インク流れ耐性が良好であることは、即ち耐熱性が良好であることを意味する。
【0106】
【表3】

【符号の説明】
【0107】
1:加飾シート
1A:成形品
2:樹脂シート
4:画像層
6:画像流れ防止領域
8:熱可塑性樹脂
10:インモールド成形用金型
12:固定金型
14:移動金型
16:空洞部
18:ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シート上に、順次、画像層及び画像流れ防止領域が設けられ、
前記画像層が、(a)重合性化合物、(b)重合開始剤、及び、(c)着色剤、を含有するインクのインク硬化画像であり、
前記画像流れ防止領域が、(a)重合性化合物、及び、(b)重合開始剤、を含む流れ防止用組成物の硬化層であり、
前記インク硬化画像よりも前記硬化層の方が、耐熱性に優れることを特徴とする
加飾シート。
【請求項2】
インモールド成形用材料である、請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記インクよりも前記流れ防止用組成物の方が、全重合性化合物に占める多官能重合性化合物の重量比が大きい、請求項1又は2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記インク硬化画像よりも前記硬化層の方が、ガラス転移温度(Tg)が高い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記流れ防止用組成物が無機粒子を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項6】
前記画像層と前記画像流れ防止領域の間に反射層が設けられ、前記反射層が、白色顔料及び/又は金属粉末顔料を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項7】
前記樹脂シートが、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、及び、アクリル樹脂よりなる群から選ばれた、請求項1〜6のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項8】
対向配置された固定金型と移動金型により形成された空洞部の内壁に請求項1〜7のいずれか1項に記載された加飾シートを固定する工程、及び、
ゲートから前記空洞部に注入される溶融樹脂が前記画像流れ防止領域に当たるようにゲート位置を前記画像流れ防止領域に対向する位置に配置して射出成形する工程を含む、
インモールド成形方法。
【請求項9】
前記加飾シートを固定する工程が、真空成形又は圧空成形した加飾シートを固定する工程である、請求項8に記載のインモールド成形方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−43361(P2013−43361A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182364(P2011−182364)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】