説明

加齢に伴う記憶障害を治療するためのケト原性化合物の使用

【課題】加齢に伴う記憶障害(AAMI)を治療するための治療剤の提供。
【解決手段】哺乳動物においてケトン体濃度を高めることができる中鎖トリグリセリド。該化合物を含む組成物を、AAMIにおいてニューロンの代謝の減少によって引き起こされる認知機能の損失を治療または予防するのに有効な量で投与する。その他の実施態様において、該組成物は、炭水化物の存在下で投与される。また、哺乳動物においてケトン体濃度を高めることができる該中鎖トリグリセリドを含む経口用投薬形態、具体的には栄養ドリンクの投与。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
老化は、正常な成人における生理学の様々な側面において記憶性能などの低下を引き起こすが、このような加齢に関連した認知能力の低下は、長い間開業医の間では認識されていた。プラトンおよびアリストテレス(紀元前384〜322年)はいずれも、加齢に伴う精神能力の低下、および、高齢者を特定の仕事から排除するために、いかにしてこれを利用すべきかということについて書き記している:「彼等が若かった頃に彼等を助けた心の洞察力はさほど残されていないし、知性(人によっては判断力、想像力、推理力および記憶力という)に貢献した才能も残されていない。彼等はそれらが変質によって徐々に鈍っていくことがわかるし、彼等はそれらの機能を補うことがほとんど不可能であることを知っている」。
【0002】
さらに近年において、一連の認知検査によって精神的退化が定量化されており、現在では十分に容認されている現象である。いくつかの標準的な記憶検査において、高齢者における記憶性能の低下が検出されており、このような検査としては、ウェクスラー記憶検査(WMS)、および、即時の、および、即時および遅延視覚再生検査(Trahan等,Neuropsychology,1988,19(3)173〜89頁)、聴覚言語性学習検査(Rey Auditory Verbal Learning Test;RAVLT)(Ivnik,R.J.等.Psychological Assessment:A Journal of Consulting and Clinical Psychology,1990(2):304〜312頁)およびその他(総論として、LarrabeeおよびCrook,Int.Psychogeriatr,1994,6(1):95〜104頁を参照)が挙げられる。
【0003】
記憶障害をより系統的に特徴付けるために、国立精神衛生研究所(National InFF53titute of Mental Health;NIMH)は、「加齢に伴う記憶障害」(AAMI)に関する基準を提案するための作業グループを作った(Crook T.H.等.Dev.Neuropsychol,1986,2:261〜276頁)。AAMIに関する基準には、50歳を超える年齢の人における記憶障害の不満、若年成人と比較して標準化した記憶検査における欠陥、および、認知症または認知力低下を生じる可能性があるあらゆる病状を示さないことが含まれる。なぜならAAMIは「通常の」老化に関するものであって病的状態ではないため、罹患率は高く、加齢に伴って増加すると予想される。近年の推定は、被験者の年齢、および、研究された個体群に応じて18%〜85%の範囲で様々である。
【0004】
AAMIの臨床経過および原因は不十分理解されていない。AAMIは老化現象の一部であるため、その原因は細胞の損傷による全般的な肉体の劣化にあるとされることが多かった。細胞の損傷の加齢に伴う増加は、様々な源からの酸化的損傷が原因であることが多い。AAMIは通常の老化の一環であるが、AAMIを緩和するための考えられる数々の治療法が試みられており、そのうちいくつかは成功を収めている。例えばホスファチジルセリンは、AAMI試験においてある程度有効性を示した。
【0005】
ヒトの脳は、体内において最も代謝的に活性な臓器の1つであり、適切に機能するためには大量のエネルギーを必要とする。平均的なヒト(成人)の脳の酸素消費は、およそ3.5ml/100g/分である。平均的な大きさの脳(1,400グラム)の場合、脳の酸素消費は、約40ml(O)/分である。安静時の場合、平均的な人であれば、〜250ml(O)/分を使用すると予想される。従って、脳は、総O消費のうち約16パーセントを使用していることになる。これは、脳は、全体重のわずか約2パーセントしか占めていないために驚くべきことである。脳内での酸素の多くは、グルコースの酸化に用いられている。標準条件下では、グルコースが脳のための一次燃料であるが、脂肪酸の寄与率はそれより少ないとみなされる。平均的な成人の脳は、1日に約110グラムのグルコースを消費する。突然の低血糖症発症は、認知機能の減少を引き起こすために、血中グルコースレベルが低下する場合、グルコースへの依存性は脳を危険に晒す。例えば、大量のインスリンが注射される場合、これは、突然の血糖低下、および、認知機能障害、例えば、記憶障害、知覚障害を引き起こすと予想され、さらには昏睡を引き起こす可能性もある。
【0006】
しかしながら、新生児の発育または飢餓のようなグルコースレベルが制限されるある種の状況下において、肝臓は、体のための、具体的には脳ニューロンのための補足燃料としてケトン体を動員すると予想される。ケトン体(β−ヒドロキシ酪酸塩、アセトアセタート、および、アセトン)は、肝細胞とグリア細胞の両方による脂肪酸の不完全な酸化から誘導され、血流に放出されて、グルコースを補填する。ケトン体は、完全にグルコースを置き換えることはできないが、脳の代謝においてかなりの割合を占めていてもよい。初期の太ったヒト被験者を断食させて行われた研究において、脳へのケトン体の顕著な取り込みが観察された。この取り込みは脳の総O使用量のほぼ50%を占めるほど大きかった。
【0007】
脳内でグルコースを補うケトン体の能力は、脳へのグルコースの利用可能性が低い状態の治療に利用されてきた。GLUT1は、グルコースを中枢神経系(CNS)に輸送する構成的なグルコース輸送体である。グルコースが脳において高濃度であることの必要条件は、GLUT1遺伝子の2つの機能的なコピーが存在することである。1つのGLUT1のコピーが機能的ではない場合、GLUT1欠乏症候群が発症する。発達中に生じた低いグルコースレベルにより、乳児性の発作、発育の遅れ、および、小頭症が生じる。これらの症状を部分的に軽減することは、ケトン食療法を施して血清ケトンレベルを増加させることによって達成できる。従って、グルコースの摂取または利用が限定される場合、ケトン体は、エネルギー必要量を補うのに役立つ可能性がある。
【0008】
哺乳動物において老化の生理学的な顕著な特徴の一つは、脳内でのグルコース摂取および代謝の減少である。脳内で正常ではないグルコース代謝は、通常の老化の間に観察される認知障害の一因になったり、または、それを悪化させたりする可能性がある。高齢被験者における記憶の促進は、炭水化物投与によってグルコースレベルが高められた場合に起こる。しかしながら、このような治療は、高い血糖値を維持することは困難であり、過剰な高血糖症は認知障害に関連するために比較的短期間でなければならないために、課題がある。それゆえに、その他の観点からのモデルを調査することが重要である。
【0009】
実質的な科学的証拠から、数種の哺乳動物種において、老化の最中に脳のグルコース代謝の欠陥が起こることが示された。1980年代に行われた一連の研究から、老年のラットにおいて脳のグルコース代謝が減少していることが実証された。1つの研究では、老年のラットの認知力低下において代謝率の減少が果たす役割について試験された。水迷路試験(空間学習)、回転輪走行時間(運動協調性)、オープンフィールド試験(自発的活動)、および、驚愕反応などを含む一連の行動試験において、老年の(22〜24ヶ月)、および、若い(3ヶ月)ラットを試験した。またこれらの同じラットで、脳のグルコース利用も試験した。老年の動物は集団的に、より若い動物と比較したところ局部的なグルコース利用の低下を示した。また老年の群は、グルコース代謝が減少した程度および領域において大きい不均質性も示した。興味深いことに、減少した局部的なグルコース代謝の量は、認知検査における減少と相関していた。例えば、前頭前皮質におけるグルコース利用の低下は、空間学習の悪化と高い相関を示した。同様のグルコース代謝減少が、アカゲザルおよびイヌでも観察された。
【0010】
ヒトにおける陽電子射出断層撮影法を用いた初期の研究では、通常の老年の被験者において脳のグルコース代謝が減少しているという証拠を見出すことができなかった。しかしながら、さらに近年のより高い感受性を有する技術および機器を用いた研究から、グルコース代謝における局部的な減少は、通常のヒトの老化に関連していることが見出された。20〜68歳の25人の健康な志願者の研究において、脳内での総酸素消費量が10歳ごとに約6%減少していることを見出した。重要なのは、皮質の萎縮を計算に入れると低下がさらに明白であり、従ってこれは、代謝の減少が単に細胞の損失によるものではないことを示している。他方は、代謝の減少を脳の特定の領域にマッピングしており、「通常の老化の代謝に関する局所解剖学」を形成することができる。このマップでは、代謝の低下を大部分が脳の前頭部に位置づけ、20〜80歳の間における全般的な代謝率の約12%の減少を示す。
【0011】
高齢者において、グルコース利用可能性を高めることによって記憶性能を改善する試みのうちいくつかが、動物モデルとヒトの両方において成功を収めている。例えばY迷路試験において、遅延がない場合、若いマウスと高齢マウスはいずれも動物が迷路に置かれると正常に新しいアームに侵入した。これは、自発的な変更の尺度である。しかしながら1分の遅延が用いられる場合、若いマウス(2ヶ月)はそれでもなおこの課題をよくこなすが、高齢のマウス(2歳)はそうではない。しかしながら試験前にマウスにグルコースを投与した場合、高齢のマウスも若いマウスも性能を示し、若いマウスの能力の増加はみられない(Stone,W.S.等,Glucose attenuation of deficits in spontaneous alternation behavior and augmentation of relative brain 2−deoxyglucose uptake in old and scopolamine−treated mice,Psychobiology,1992,20:270〜279)。これは、高齢の群では、一般的にグルコース投与後に認知力の向上を示したが、若い群ではそうではないというヒトにおける研究と一致する。ある研究で、2セットの被験者、一方は若いのセット(平均年齢20歳)、もう一方は高齢のセット(平均年齢67歳)に、クロスオーバーデザインにおいて、交互の来院で人工甘味料で甘みを付けた糖を含まないレモンドリンク(炭水化物0g)、または、糖で甘みを付けたドリンク(炭水化物50g)のいずれかを投与した。来院ごとに、被験者に、対連合課題、前後関係の記憶の検査、即時再生の検査、および、視覚記憶の検査を含む一連の認知検査を施した。グルコースは高齢者群のスコアを改善したが、若い群では改善しなかった。このような実験を数回繰り返したところ、グルコースによって記憶を促進することは、逆U字型を特徴とすることが示され、すなわちグルコースが多すぎると効果を打ち消すようである。
【0012】
グルコース投与後に記憶が向上するメカニズムは、それでもなお不明瞭なままであるが、エネルギー生産の増加、それに対応するアセチルコリン生産の増加に関する可能性がある。しかしながらグルコースは、いくつかの理由のために高齢者において記憶を高めるための実用的な手段ではないと思われる。(1)健康な哺乳動物において、高いグルコースレベルを維持することは難しい。(2)高血糖症は記憶を改善する可能性があるが、他の臓器系には有害であることが証明される場合がある。(3)高血糖により、慢性的な高インスリンレベル、および、インスリン過剰血症に伴う問題が生じる可能性がある。
【0013】
興味深いことに、その他の基質も老年の動物において記憶を促進する可能性がある。例えばモルヒネは、記憶の形成を損なうことがわかっているが、この作用は、グルコースを共に投与することによってブロックすることができる。同様にピルビン酸塩も、モルヒネ投与の作用をブロックすることができる。
【0014】
飢餓を模擬したケトン食療法を用いた長い経験があり、これは子供のてんかんの治療に用いられている。このような食事療法は薬物療法であるため医師および/または栄養士の慎重な管理下で用いられるべきであり、食事療法は慎重にカロリーの投入量を制御し、子供は、その日のカロリーの90%が脂肪として供給されるように計算に含まれるものだけを食べなければならない。しかしながらこのような食事療法は、一般的に、(1)これらの食物中の一次的な脂肪としてコレステロールおよび長鎖トリグリセリドを取り込むことにより循環系に逆効果があり;さらに、(2)低炭水化物の食事には魅力がなく患者のコンプライアンスが悪いため、成人に使用するには不適切である。
【0015】
従来技術において、脂肪は高含有であるが炭水化物は限定されるケトン食療法の説明が示されている。要約すると、このような食餌療法の論理的説明は、脂肪の大量摂取は、長鎖または中鎖トリグリセリドのいずれかにかかわらず、炭水化物レベルがゼロかまたは限定された極めて厳密に管理された食餌療法の環境では、血中ケトンレベルを増加させる可能性があるということである。炭水化物およびインスリンの限定は、脂肪組識における再エステル化を阻害すると考えられる。数十年ケトン食療法が知られてきたが、MCT治療が、患者において、AAMIなどのあらゆる年齢に関連する認知力低下ニューロンの代謝の減少に関する病気を治療するために用いられるということを教示するか、または、提案する従来技術はないようである。
【0016】
従って、当業界において、具体的には老化した、または高齢の哺乳動物(例えばヒト)における認知障害を治療および/または予防するための組成物および方法を開発する必要がある。
【0017】
本明細書にわたり、特許、公開された出願、技術論文および学術論文などの様々な出版物を引用する。これらの引用された出版物はそれぞれ、参照によりその全体を本発明に含める。本明細書において完全に引用されていない出版物の全文の引用は、本明細書の最後に記載する。
【発明の概要】
【0018】
一実施態様において、本発明は、哺乳動物において例えば中鎖トリグリセリド(MCT)のようなケトン体濃度を高めることができる組成物化合物を含み、例えば、経口摂取するための栄養ドリンクが挙げられ、このようなドリンクは、a)D−β−ヒドロキシ酪酸塩の血中濃度を約0.1〜約5mMに高める、または、b)D−β−ヒドロキシ酪酸塩の尿排出レベルを約5mg/dL〜約160mg/dLに高めるのに十分な単位用量;L−カルニチン、複数種のビタミン;矯味矯臭薬剤、および、炭水化物源を含み:ここで、MCTが含まれる場合、MCTは、以下の式で示される:
【0019】
【化1】

【0020】
式中、グリセロール主鎖にエステル結合しているR、RおよびRは、それぞれ独立して、5〜12個の炭素を含む炭素鎖を有する脂肪酸である。
その他の実施態様において、本発明は、加齢に伴う記憶障害(AAMI)の治療方法を含み、本方法は、AAMIを示す、または、その危険性がある哺乳動物を認識する工程;および、該哺乳動物に、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を、AAMIにおいてニューロンの代謝の減少によって引き起こされる認知機能の損失を治療または予防するのに有効な量で投与する工程を含む。
【0021】
本発明はまた、加齢に関連した認知力低下、または、AAMIの治療方法にも関し、本方法は、AAMIを示す健康な老年の哺乳動物の個体群を認識する工程、該個体群を、少なくとも1つの対照群、および、1またはそれより多くの検査群に分割する工程、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を運搬するための少なくとも1種の送達システムを、個々の哺乳動物における少なくとも1種のケトン体の血中濃度を高めるのに有効な量で配合する工程を含み、ここで、長期的に、各検査群には、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を運搬する調合物が投与され、対照群には、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を全く投与させない。本方法は、対照群および検査群における少なくとも1種の神経心理学検査の結果を比較する工程、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を運搬するための送達システムのうちどれが、少なくとも1種の神経心理学検査の結果の改善において有効であるかを決定する工程;および、老年の哺乳動物の個体群に、前の工程で決定された治療の基礎となる送達システムを投与することによって、AAMIを治療する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】AAMIの同齢集団のあらゆるセット規模に関して、記憶走査における反応時間の改善によって測定された精神能力の改善を示す。
【図2】AAMIの同齢集団のあらゆるセット規模に関して、記憶走査における反応時間の改善によって測定された精神能力の改善を示す。
【発明の詳細な記述】
【0023】
本発明の新たな知見は、例えば中鎖トリグリセリド(MCT)および/または中鎖脂肪酸(MCFA)のようなケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物は、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者における治療および予防措置として有用であることである。これらの状態は、ニューロンの代謝の減少に関連する。本明細書で用いられる「ニューロンの代謝の減少」は、ニューロンの代謝の減少を引き起こす可能性がある可能性のあるあらゆるメカニズムを意味する。このようなメカニズムとしては、これらに限定されないが、ミトコンドリアの機能障害、フリーラジカルによる攻撃、活性酸素種(ROS)の生成、ROSによって誘導されたニューロンのアポトーシス、障害のあるグルコース輸送または解糖、膜のイオン電位における不均衡、カルシウム流出における機能障害などが挙げられる。
【0024】
上記で考察された脳内でのエネルギー代謝の不足を治療するその他の方法がないという観点から、本発明は、記憶性能を改善するためのその他の物質の使用を考慮しており、このような物質としては具体的にはケトン体であり、これは、脳で容易に利用できることがわかっている。
【0025】
ケトン体、具体的にはβ−ヒドロキシ酪酸塩(βHB)、および、アセトアセタートは、脳ニューロンの発達と健康状態において重要な役割を果たす。多数の研究によれば、発達中の哺乳動物の新生児の脳にとって好ましい基質は、ケトン体であることが示されている。ケトン体は、成人のヒトの脳で、たとえ高齢者でも濃度依存性の方式で利用されることを実証するたくさんの証拠がある。ケトン体(KB)は、高齢者における記憶の促進に関してグルコースにいくつもの利点を提供する。(1)KBは、大量の中鎖トリグリセリド(MCT)を投与することによってグルコースレベルを変更させずに人工的に高めることができる。(2)高ケトン血を誘発して、数時間維持することができる。(3)KBは容易に血液脳関門を通過する。(4)KBは、脳ニューロンによって容易に代謝され、ATPおよびアセチルコリンの生成に用いることができる。具体的には、発明者等により開発された組成物のケタシン(KetasynTM)は、高ケトン血を誘発する簡単で安全な方法を提供する。
【0026】
ケタシンTMの活性成分は、MCTである。MCTは、5〜12個の炭素からなる鎖長を有する脂肪酸で構成され、広範囲にわたり研究されている。MCTは、より一般的な長鎖トリグリセリド(LCT)とは異なって代謝される。具体的には、LCTと比較して、MCTは、より容易に消化されて、中鎖脂肪酸(MCFA)を放出するが、その入り口での吸収速度は増加を示し、これらは強制的な酸化を受ける。MCFAは長鎖脂肪酸(LCFA)よりもかなり低い融点を有するため、MCFAおよびそれに対応するMCTは室温で液体である。MCFAは、LCFAと比較して小さく、生理学的なpHでより多くイオン化されるため、MCFAは、水溶液中でかなり高い可溶性を有する。MCTの小さいサイズと低い疎水性のために、LCTに比べて消化および吸収速度は高い。
【0027】
MCTを摂取すると、MCTは、まずグリセロール主鎖から脂肪酸鎖を切断するリパーゼでプロセシングされる。前十二指腸における数種のリパーゼは、選択的にLCTよりもMCTを加水分解し、続いて放出されたMCFAは、胃粘膜によって直接部分的に吸収される。胃で吸収されないMCFAは門脈に直接吸収されるので、リポタンパク質に封入されない。通常の食事脂肪から誘導されたLCFAはLCTに再エステル化され、リンパ液における輸送のためのカイロミクロンに封入される。それにより、MCTに比べてLCT代謝は極めて遅くなる。血液はリンパ液よりもかなり急速にMCFAを輸送するため、MCFAは迅速に肝臓に到達する。
【0028】
肝臓において、MCFAは強制的な酸化を受ける。給餌条件下で、LCFAは、肝臓において主としてマロニル−CoAの阻害作用のためにほとんど酸化を受けない。脂肪の貯蔵が望ましい条件下で、マロニル−CoAは、脂質生成における中間体として生産される。マロニル−CoAは、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIをアロステリックに阻害し、それによってミトコンドリアへのLCFA輸送を阻害する。このフィードバックメカニズムは、脂肪分解および脂質生成の無駄なサイクルを予防する。MCFAは、大体において、LCFAの酸化を制御する調節に対して免疫を有する。MCFAは、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIを用いずにミトコンドリアに入るため、MCFAは、この調節工程をバイパスし、生物の代謝条件に関係なく酸化される。重要なことは、MCFAは急速に肝臓に入り迅速に酸化されることにより、MCFAから大量のケトン体が容易に生産されるため、MCTの大量の経口用量(およそ20mL)によって、持続的な高ケトン血が実現できると予想されることである。発明者の新たな知見は、MCTは、ケトン食療法の状況下以外でも投与が可能なため、本発明において、炭水化物を、MCTとして同時に消費することが可能であることである。これは、ケトン食療法の状況下のみでのMCTの使用を説明している従来技術を超える有意な利点を提供する。このような食餌療法は、食事中の炭水化物とタンパク質両方を大きく制限するため、実際には患者に遵守させることが極めて難しい。本発明は従来技術のケトン食療法を越える有意な利点を提供するものであり、すなわち本発明において被験者はあらゆる食事を自由にとることができ、どのような食事制限にも固執する必要がない。
【0029】
本発明によれば、高い血中ケトンレベルは、脳の細胞に、MCFAのケトン体への迅速な酸化によってグルコース代謝と折衷させたエネルギー源を供給すると予想され、それにより、認知機能、記憶、運動性能、脳血管機能、および/または、1種またはそれより多くの挙動の性能の改善、および/または、それらの低下の回復、予防、減少および/または遅延がもたらされる。本明細書で用いられる「患者」は、あらゆる哺乳動物を意味し、例えば、ニューロンの代謝の減少が原因の病気および状態の治療によって利益を得る可能性があるヒトが挙げられる。
【0030】
本方法および本発明のその他の形態に関する様々な用語が、本明細書および請求項にわたり用いられている。このような用語は、特に他の指定がない限り、当業界におけるそれらの通常の意味を有する。その他の特別に定義された用語は、本明細書で示された定義と一致するように解釈される。
【0031】
本発明の背景は、以下のように本発明を支持する。(1)脳のニューロンは、自発呼吸に関してグルコースとケトン体の両方を使用できる。(2)加齢に伴う認知力低下、例えばAAMIを示す患者のニューロンは、グルコース代謝における欠陥を有していてもよい。(3)老化は、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を受けやすい基礎となり得る代謝の欠陥を引き起こす可能性がある。従って、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者にMCTを補給することは、ニューロンの代謝を回復させると予想される。
【0032】
一実施態様において、哺乳動物の体内におけるケトン体濃度を高めることができる化合物としては、「中鎖トリグリセリド」または「MCT」が挙げられ、これは3個の脂肪酸分子(それぞれの脂肪酸分子は、5〜12個の炭素を含む炭素鎖を有する)と結合したあらゆるグリセロール分子エステルを意味する。MCTは、以下の一般式で示すことができる:
【0033】
【化2】

【0034】
式中、R、RおよびRは、グリセロール主鎖にエステル結合した炭素主鎖において5〜12個の炭素を有する脂肪酸である。本発明の構造を有する脂質は当業界既知のあらゆる方法によって製造してもよく、例えば直接のエステル化、転位、分割、エステル交換反応などが挙げられる。例えば、上記脂質は、ヤシ油のような植物油の転位によって製造してもよい。鎖長の長さおよび分布は油の源に応じて様々であってよく、例えばMCTは、1〜10%のC6、30〜60%のC8、30〜60%のC10、1〜10%のC10を含み、一般的にはパーム油およびヤシ油から誘導される。MCTは、R、RおよびRにおいて約95%より多くのC8を含み、オクタン酸のグリセリンへの半合成エステル化によって製造してもよい。このようなMCTは、本明細書で用いられるMCTという用語と同様の挙動を示し、それらに包含される。
【0035】
「有効量」は、具体的な生物学的な結果を達成するのに有効な、本明細書で説明されている化合物、材料または組成物の量を意味する。このような結果としては、これらに限定されないが、少なくとも以下のうち1種である:具体的には老化した、または高齢の哺乳動物における、認知機能の強化、記憶の改善、肝臓機能の改善、日中の活動の増加、学習力の改善、注意力の改善、社会的行動の改善、運動性能の改善、および/または、脳血管機能の改善。様々な実施態様において、「有効量」は、上記の性質、例えば認知機能または性能、記憶、学習速度または能力、問題解決能力、注意持続時間、および、課題または問題への集中力、運動機能または性能、社会的行動などの低下を回復させる、減少させる、予防する、または、遅延させることができる量を意味する。好ましくは、個体または個体群における低下の回復、予防、減少または遅延は、同齢集団、例えば対照の哺乳動物、または、治療を受けていない同齢の個体群と相対的である。このような有効な活性は、例えば、哺乳動物に、または、哺乳動物の個体群に本発明の組成物を投与することによって達成できる。
【0036】
上述の状態の治療の有効性は、少なくとも1種の神経心理学検査の結果の改善によって評価してもよい。これらの神経心理学検査は当業界既知であり、例えば、なかでも変化の臨床的全般的印象(Clinical Global Impression of Change;CGIC)、聴覚言語性学習検査(Rey Auditory Verbal Learning Test;RAVLT)、ファースト−ラストネーム連想検査(First−Last Names Association Test;FLN)、テレフォン・ダイアリング検査(Telephone Dialing Test;TDT)、記憶を評価する臨床的自己評価尺度(Memory Assessment Clinics Self−Rating Scale;MAC−S)、記号数字のコーディング検査(Symbol Digit Coding;SDC)、SDC遅延再生課題(SDC Delayed Recall Task;DRT)、注意分配検査(Divided Attention Test;DAT)、視覚的な順序の比較(Visual Sequence Comparison;VSC)、DAT二重課題(DATデュアル)、および、老人性うつ病尺度(Geriatric Depression Scale;GDS)が挙げられる。
【0037】
用語「認知機能」は、特殊な、通常の、または、適切な生理学的な脳の活性を意味し、このような活性としては、これらに限定されないが、以下のうち少なくとも1種:精神安定、記憶/想起能力、問題解決能力、推理能力、思考能力、判断能力、学習能力、感覚、洞察力、注意力、および、意識性が挙げられる。「認知機能の強化」または「認知機能の改善」は、特殊な、通常の、または、適切な生理学的な脳の活性におけるあらゆる改善を意味し、このような活性としては、これらに限定されないが、以下のうち少なくとも1種:精神安定、記憶/想起能力、問題解決能力、推理能力、思考能力、判断能力、学習能力、感覚、洞察力、注意力、および、意識性が挙げられ、これらは当業界において適切なあらゆる手段によって測定される。
【0038】
「挙動」は、本明細書において広義で用いられ、哺乳動物が所定の刺激に応答または反応して起こす何らかの行動、または、一まとまりの状態を意味する。「挙動の強化」または「挙動の改善」は、哺乳動物が所定の刺激に応答または反応して起こす何らかの行動、または、一まとまりの状態におけるあらゆる改善を意味する。
【0039】
前述のカテゴリーのいずれか、または、個体における性質または機能(特徴または表現型)の特定のタイプの「低下」は、一般的に、性質または機能における改善または強化の逆である。組成物の「有効量」(上記で考察したような)は、低下を完全に予防する、または、実質的に低下を予防する(低下「を予防する」)のに必要な量、低下の程度または速度を減少させる(低下を[減少」させる)のに必要な量、または、低下の発病または進行を遅延させる(低下「を遅延させる」)のに必要な量、または、以前の低下からの改善を起こす(低下の「回復」)のに必要な量であり得る。病気ではない老年の哺乳動物と共に働く場合、「低下」の予防、減少または遅延は、より有用な比較基準となることが多い。回復、予防、減少および、遅延は、治療を受けていない(例えば対象の組成物が投与されていない)対照または同齢集団と比較して考察することができる。有害な性質または状態いずれかの発病、または、具体的な機能における低下速度の回復、予防、減少もしくは遅延は、個体を基準にして、または、いくつかの実施態様においては個体群を基準にして測定し、考察することができる。低下を回復させる、予防する、減少させる、または、遅延させることの正味の作用は、単位時間あたりの、または、所定の評価項目における記憶、認知、運動または行動機能における減少を少なくすることである。言い換えれば、理想的には個体に関して、または、個体群において、認知、運動および行動機能は、可能な限り長い時間、可能な限り最高のレベルに維持される。本発明の目的において、個体は、対照の個体、グループまたは個体群と比較することができる。同様に個体群は、実際の個体、標準化した測定、個体ごとに、または、グループまたは個体群と有用かどうかに関して比較することができる。
【0040】
本明細書で用いられる「老化」は、哺乳動物が、その個々の種の平均寿命の50%を超える程度の高齢であることを意味する。本明細書では、老年の哺乳動物を「老化した」または「高齢の」または「年配の」と言う場合もある。健康な老年の哺乳動物は、既知の病気、具体的には認知機能の損失に関する病気、例えば結果を悪化させる可能性がある病気病気に罹っていない動物である。健康な老年の哺乳動物を用いた研究において、同齢集団の哺乳動物も、好ましくは健康な老年の哺乳動物であるが、適切な記憶、認知、運動または行動機能を示すその他の健康な哺乳動物が、比較サンプルとしての使用に適している可能性がある。特定の病気が診断された哺乳動物、または、記憶、認知、運動または挙動に限界を示す哺乳動物が用いられる場合、同齢集団の哺乳動物は、同様に診断された哺乳動物、または、類似の病気の兆候、または、記憶、認知、運動または挙動の限界を示す哺乳動物を含むと予想される。
【0041】
投与は、必要または要求に応じて、例えば、毎月1回、週1回、毎日、または、1日1回より多く行ってもよい。同様に投与は、1日おき、1週間おき、または、1月おき、3日に1回、3週間に1回、または、3月に1回、4日に1回、4週間に1回、または、4月に1回などで行ってもよい。投与は、1日あたり複数回行ってもよい。本組成物が日常的な食事条件を補うものとして利用される場合、本組成物は、哺乳動物に直接投与してもよいし、または、別の方法で毎日の飼料または食品と接触させたり、または、それらに混合してもよい。毎日の飼料または食品として利用される場合、投与法は、当業者周知であると予想される。
【0042】
また投与は、例えば、哺乳動物における治療計画の一環として定期的に行ってもよい。治療計画は、本発明の組成物を、哺乳動物における認知機能、記憶および挙動を強化するのに有効な量で哺乳動物に規則的に摂取させることを含んでもよい。規則的な摂取は、1日1回、または、1日2回、3回、4回またはそれより多い回数、毎日または毎週1回の頻度であってもよい。同様に規則的な投与は、1日または1週間おき、3日または3週に1回、4日または4週に1回、5日または週に1回、または、6日または週に1回であってもよく、このような処方計画において、投与は1日あたり複数回施してもよい。規則的な投与の目標は、哺乳動物に、本明細書において例示したような最適な用量の本発明の組成物を提供することである。
【0043】
一実施態様において、本明細書で示された組成物は「長期的な」消費を目的としており、本明細書において場合によっては「長期間」とも言う。本明細書で用いられる「長期的な」投与は、一般的に、1ヶ月より長い期間を意味する。2、3または4ヶ月よりも長い期間も本発明の一実施態様に含まれる。また実施態様にはより長い期間も含まれ、例えば、5、6、7、8、9または10ヶ月よりも長い期間である。また11ヶ月または1年より長い期間も含まれる。本明細書において、また1年、2年、3年またはそれより長い年数にわたるより長い期間の使用も考慮される。所定の老年の哺乳動物の場合、哺乳動物が、その生命の残りの期間にわたり定期的に本組成物の消費を継続することも想定される。本明細書で用いられる「規則的な頻度」は、本組成物の少なくとも週1回の投与または消費を意味する。より高頻度の投与または消費、例えば週2回または3回も含まれる。また、少なくとも1日1回の消費を含む処方計画も含まれる。当業者であれば当然ながら、達成されるケトン体または特定のケトン体の血中濃度は、投与頻度の有用な尺度であり得る。本明細書において明確に例示されたかどうかに関係なく、測定された化合物の血中濃度を許容できる範囲内に維持することができるのであればどのような頻度でも本明細書において有用であるとみなすことができる。当業者であれば当然ながら、投与頻度は、消費または投与しようとする組成物の性質に応じて調節されるべきであり、ある種の組成物は、程度の差はあるが、測定された化合物(例えばケトン体)の望ましい血中濃度を維持するために頻繁な投与を必要とする場合がある。
【0044】
本明細書で用いられる用語「経口投与」または「〜を経口投与することができる」とは、本明細書で説明されている組成物の1種またはそれより多くを、哺乳動物が摂取する、または、管理者が哺乳動物に与えることを指示される、または、哺乳動物に食べさせることを意味する。本組成物を与えることを人間に指示する場合、このような指示は、使用する人間に本組成物について教示する、および/または、情報提供することは、前述した利点、例えば、認知機能を強化すること、記憶の改善、肝臓機能の改善、学習の改善、注意力の改善、社会的行動の改善、運動性能の改善および/または脳血管機能の改善、または、このような前述の機能または性質の低下を予防、減少もしくは遅延させることを提供する可能性がある、および/または、予想される。このような指示は、口頭の指示(例えば、例えば医師、獣医師またはその他の健康に関する専門家からの口頭での説明、または、ラジオまたはテレビ媒体(すなわち広告)によって)、または、文書での指示(例えば、例えば医師、獣医師またはその他の健康に関する専門家による文書での指示(例えば処方箋によって)、営業担当者または組織(例えば、例えば製品カタログ、パンフレットまたはその他の説明用品によって)、文書媒体(例えば、インターネット、電子メールまたはその他のコンピューター関連の媒体)、および/または、本組成物に付随する包装(例えば、本組成物を保持する容器上に記された標識)であってもよい。
【0045】
本発明は、ニューロンの代謝の減少に関する病気、例えばあらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)の治療または予防方法を提供し、本方法は、哺乳動物(例えば患者)の体内におけるケトン体の濃度を高めることができる化合物(例えば中鎖トリグリセリド)を少なくとも1種含む組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。一般的に、有効量は、(1)治療しようとする病気の症状を減少させること、または、(2)治療しようとする病気の治療に関連する変化を誘導することのいずれかに有効な量である。あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)の場合、有効量は、認知スコアを高める;記憶を改善するのに有効な量を含む。本明細書で用いられるように、および、本明細書のどこかで考察されているように、本発明のMCTは、以下の式で示される:
【0046】
【化3】

【0047】
式中、R、R、および、Rは、独立して、炭素主鎖中で5〜12個の炭素を有するグリセロール主鎖にエステル結合した脂肪酸残基(C5〜C12脂肪酸)、炭素主鎖中で5〜12個の炭素を有するグリセロール主鎖にエステル結合した飽和脂肪酸残基(C5〜C12脂肪酸)、炭素主鎖中で5〜12個の炭素を有するグリセロール主鎖にエステル結合した不飽和脂肪酸残基(C5〜C12脂肪酸)、および、これらのうちいずれかの誘導体からなる群より選択される。本発明の構造を有する脂質は、当業界既知のあらゆる方法によって製造してもよく、例えば直接のエステル化、転位、分別、エステル交換反応などで製造してもよい。例えば上記脂質は、ヤシ油のような植物油の転位によって製造してもよい。
【0048】
一実施態様において、本方法は、MCT(式中、R、RおよびRは、6個の炭素主鎖を含む脂肪酸(トリ−C6:0)である)の使用を含む。トリ−C6:0MCTは、多数の動物モデル系において極めて急速に消化管で吸収される。高い吸収速度によって、肝臓での迅速な潅流が起こり、続いて有力なケトン体生成の応答が起こる。その他の実施態様において、本方法は、MCTの使用を含み、ここで式中、R、RおよびRは、8個の炭素主鎖を含む脂肪酸(トリ−C8:0)である。その他の実施態様において、本方法は、MCTの使用を含み、ここで式中、R、RおよびRは、10個の炭素主鎖を含む脂肪酸(トリ−C10:0)である。その他の実施態様において、本方法は、MCTの使用を含み、ここで式中、R、RおよびRは、C8:0脂肪酸とC10:0脂肪酸との混合物である。その他の実施態様において、本方法は、MCTの使用を含み、ここで式中、R、RおよびRは、C6:0、C8:0、C10:0およびC12:0脂肪酸の混合物である。その他の実施態様において、MCTのR、RおよびR炭素鎖の95%より多くが、長さが8個の炭素である。さらにその他の実施態様において、R、RおよびR炭素鎖が、6個の炭素または10個の炭素鎖である。その他の実施態様において、MCTのR、RおよびR炭素鎖の50%が、長さが8個の炭素であり、MCTのR、RおよびR炭素鎖の約50%が、長さが約10個の炭素である。加えて、MCTの利用は、乳化によって高めることができる。脂質の乳化によって、リパーゼによる作用を受けるための表面積が増加し、それによりより迅速なMCFAの加水分解および放出が起こる。これらのトリグリセリドの乳化方法は当業者周知である。
【0049】
一実施態様において、本方法は、6、8、10および12個の炭素鎖長を有するMCFA、または、それらの混合物の使用を含む。
その他の実施態様において、本発明は、ケトン体の濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物、例えば乳化したMCTと、L−カルニチンまたはL−カルニチンの誘導体とを共に投与することを含む。MCTとL−カルニチンとを組み合わせると、MCFAの酸化がわずかに増加することが認められている(Odle,J.,New insights into the utilization of medium−chain triglycerides by the neonate:observations from a piglet model,J Nutr,1997,127:1061〜7)。従って、本発明において乳化したMCTは、L−カルニチンと前記MCTの利用を高めるのに必要な用量で組み合わされる。L−カルニチンおよびMCTの投与量は、受容者の状態、送達方法、および、当業者既知のその他の要因に従って様々であると予想され、AAMIなどを治療および予防するのに必要な程度に血中ケトンレベルを高めるのに十分な量であると予想される。本発明で使用できるL−カルニチンの誘導体としては、これらに限定されないが、デカノイルカルニチン、ヘキサノイルカルニチン、カプロイルカルニチン、ラウロイルカルニチン、オクタノイルカルニチン、ステアロイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、アセチル−L−カルニチン、O−アセチル−L−カルニチン、および、パルミトイル−L−カルニチンが挙げられる。
【0050】
治療剤の治療有効量は、望ましい作用をもたらすのに十分なあらゆる量または用量が可能であり、部分的に、状態の重症度および段階、患者の大きさおよび状態、加えて当業者であれば容易に知ることができるその他の要因に依存する。投与量は、単回投与として提供してもよいし、または、数種回の用量として提供してもよく、例えば、本明細書のどこかで考察されたように数週間にわたり分割された用量が提供される。
【0051】
一実施態様において、本ケト原性化合物は、経口投与される。その他の実施態様において、本ケト原性化合物は、静脈内投与される。静脈内投与のためのMCTおよびその他のケト原性化合物溶液の、MCTおよびその他のケト原性化合物の調製物の経口投与が当業者周知である。
【0052】
一実施態様において、例えばMCTまたはMCFAのようなケトン体の濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物の経口および/または静脈内投与は、高ケトン血を引き起こす。一実施態様において、グルコースの存在下でさえも、高ケトン血によって、ケトン体が脳内でエネルギーとして利用されるようになる。加えて、高ケトン血は、脳血流の実質的な(39%)増加を引き起こす(Hasselbalch,S.G.等,Changes in cerebral blood flow and carbohydrate metabolism during acute hyperketonemia,Am J Physiol,1996,270:E746〜51)。高ケトン血は、正常なヒトにおいて全身性の低血糖症に伴う認知機能障害を減少させることが報告されている(Veneman,T.等,Effect of hyperketonemia and hyperlacticacidemia on symptoms,cognitive dysfunction,and counterregulatory hormone responses during hypoglycemia in normal humans,Diabetes,1994,43:1311〜7)。ここで、全身性の低血糖症は、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)で発生するグルコース代謝における局所的な欠陥とは異なることに留意すべきである。
【0053】
全ての実施態様において、本発明は、被験者に、ケトン体濃度を高めることができる少なくとも1種の化合物を含む組成物を提供する。またこのような化合物は、集合的にケトン体前駆体化合物、または、ケト原性化合物とも称される。このような化合物としては、例えばMCT、MCFAのような化合物、および、ケトン体のプロドラッグ、代謝前駆体などが挙げられる。例えば、一実施態様において、体内でケトン体濃度を高めることができる化合物としては、受容宿主によって対象の化合物に代謝的に変換することができる1種またはそれより多くのプロドラッグが挙げられる。本明細書で用いられるプロドラッグは、体内で化学転換を受けた後に薬理活性を示す化合物である。またプロドラッグの変換によって直接ケトン体が形成される場合、そのプロドラッグは、代謝前駆体と言うこともできる。MCTおよびMCFAは、まずアセチル−CoAに酸化され、続いてケトン体に合成される前に数種の工程を受けなければならない。ケトン体の前駆体化合物のクラスとしては、以下で説明する化合物が挙げられる。一実施態様において、ケトン体前駆体化合物は、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)の発生を治療および/または予防するのに必要なレベルに血中ケトン体濃度を高めるのに必要な投与量で投与される。これらのあらゆる化合物の適切な投与量は、当業者によって決定することができる。
【0054】
多種多様の薬物製剤が当業界既知である。例えば、プロドラッグの結合は、エステルもしくは無水物のような加水分解可能な結合、または、アミドのような酵素的に生分解可能な結合であり得る。
【0055】
本発明の組成物に適したケトン体前駆体化合物としては、哺乳動物(例えば患者)の体内におけるケトン体濃度を直接高めることができるあらゆる化合物が挙げられ、これらは当業者が判断してもよく、これらの化合物は、脂肪酸の酸化を増加させるの作用を模擬することができ、例えば、これらに限定されないが、ケトン体、D−β−ヒドロキシ酪酸塩、および、アセトアセタート、ならびにこれらの代謝前駆体が挙げられる。この実施態様において用いられる代謝前駆体という用語は、1,3−ブタンジオール、アセトアセチル、または、D−β−ヒドロキシ酪酸塩成分、例えばアセトアセチル−1−1,3−ブタンジオール、アセトアセチル−D−β−ヒドロキシ酪酸塩、および、アセトアセチルグリセロールを含む化合物を意味する場合がある。またこのような化合物のうちいずれかと、一価、二価または三価のアルコールとのエステルも、さらにその他の実施態様に含まれる。また代謝前駆体としては、D−β−ヒドロキシ酪酸塩のポリエステル、および、D−β−ヒドロキシ酪酸塩のアセトアセタートエステルも挙げられる。D−β−ヒドロキシ酪酸塩のポリエステルとしては、ヒトまたは哺乳動物によって容易に消化および/または代謝されるように設計された上記ポリマーのオリゴマーが挙げられる。これらのうち好ましくは、2〜100回の反復の長さであり、典型的には2〜20回の反復の長さであり、最も都合のよい形態としては3〜10回の反復の長さである。ケトン体前駆体として使用できるポリD−β−ヒドロキシ酪酸塩、または、末端が酸化されたポリ−D−β−ヒドロキシ酪酸塩エステルの例は、以下の通りである:
【0056】
【化4】

【0057】
いずれの場合においても、nは、ポリマーまたはオリゴマーが、ヒトまたは哺乳動物の体に投与されると容易に代謝されて、高い血液ケトン体濃度を提供するように選択される。n値は、0〜1,000の整数であり、より好ましくは0〜200であり、さらにより好ましくは1〜50であり、最も好ましくは1〜20であり、具体的には都合のよい形態としては、3〜5である。いずれの場合においても、mは、1以上の整数であり、治療または栄養摂取に使用するための、それらと1種またはそれより多くのカチオン、または、それらの塩との複合体である。カチオンおよび典型的な生理学的な塩の例は、本明細書において説明されているが、それに加えて、例えば、塩複合体を形成するそれぞれ生理学的な対イオンと相対させたナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、L−リシン、L−アルギニン、メチルグルカミン、および、当業者既知のその他のものが挙げられる。
【0058】
またケトン体前駆体化合物の定義には、老年性記憶障害を治療するのに有用なその他の数種のケトン体前駆体化合物;例えば、多価アルコールのエステル、3−ヒドロキシ酸エステル、および、グリセロールエステルも含まれ、これらは以下でより詳細に説明される。本明細書で用いられる「誘導体」は、親化合物から誘導される、または、である論理上誘導が可能な化合物、または、化合物の一部を意味し;用語「ヒドロキシル基」は、式−OHで示され;用語「アルコキシ基」は、式−ORで示され、式中Rは、アルキル基、例えば、低級アルキル基が可能であり、これらは任意に、以下で定義されるようなアルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、または、ヘテロシクロアルキル基で置換されていてもよく;用語「エステル」は、式−OC(O)Rで示され、式中Rは、以下で定義されるようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、または、ヘテロシクロアルキル基が可能であり;用語「アルキル基」は、1〜24個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状の飽和炭化水素基と定義され、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。「低級アルキル」基は、1〜10個の炭素原子を有する飽和した分岐状または非分岐状の炭化水素であり;用語「アルケニル基」は、2〜24個の炭素原子を有する炭化水素基と定義され、構造式は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含み;用語「アルキニル基」は、2〜24個の炭素原子を有する炭化水素基と定義され、構造式は、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含み;用語「ハロゲン化アルキル基」は、上記で定義されたアルキル基における1個またはそれより多くの水素原子がハロゲン(F、Cl、Br、I)で置換されたアルキル基と定義され;用語「シクロアルキル基」は、少なくとも3個の炭素原子で構成される芳香族ではない炭素ベースの環と定義される。シクロアルキル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。用語「ヘテロシクロアルキル基」は、上記で定義されたシクロアルキル基の環の炭素原子のうち少なくとも1個が、例えば窒素、酸素、硫黄またはリン(ただしこれらに限定されない)などのヘテロ原子で置換されたシクロアルキル基であり;用語「脂肪族基」は、上記で定義されたアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン化アルキル、および、シクロアルキル基を含むと定義される。「低級脂肪族基」は、1〜10個の炭素原子を含む脂肪族基であり;用語「アリール基」は、炭素ベースの芳香族基と定義され、例えば、これらに限定されないが、ベンゼン、ナフタレンなどが挙げられる。また用語「芳香族」は、「ヘテロアリール基」も含み、これは、芳香族基の環内に包含されるヘテロ原子を少なくとも1個を有する芳香族基と定義される。ヘテロ原子の例としては、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、および、リンが挙げられる。アリール基は、1個またはそれより多くの基で置換することができ、このような基としては、これらに限定されないが、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、または、アルコキシが挙げられ、または、アリール基は置換されていなくてもよい;用語「アラルキル」は、上記で定義されたアルキル基がアリール基に結合したアリール基と定義される。アラルキル基の例は、ベンジル基であり;「エステル化」は、アルコールと、カルボン酸またはカルボン酸酸誘導体とを反応させてエステルを生成することを意味し;「エステル交換反応」は、エステルとアルコールとを反応させて、新しいエステル化合物を形成することを意味する。用語「3−ヒドロキシ酪酸塩」は、用語「3−ヒドロキシ酪酸」と同じ意味で用いられる。
【0059】
一実施態様において、ケトン体濃度を高めることができる化合物としては、以下の式で示される化合物が挙げられる:
【0060】
【化5】

【0061】
式中Rは、多価アルコール残基であり;n、mおよびxは、整数を示し;および、mは、x未満であるか、または、xに等しい。
(R)−3−ヒドロキシ酪酸塩とのエステルの形成に適した生理学的に適合するアルコール、およびそれらの誘導体としては、一価および多価アルコールが挙げられる。多価アルコールのエステルは、より短い(R)−3−ヒドロキシ酪酸オリゴマーを用いた(R)−3−ヒドロキシ酪酸誘導体の当量に対して、より高密度の(R)−3−ヒドロキシ酪酸の当量を送達する。一般的に、オリゴマーが短かれば短かいほど容易に加水分解されるので、血液中で高濃度の(R)−3−ヒドロキシ酪酸塩を達成することができる。このようなエステルの製造に適した多価アルコールの例としては、炭水化物アルコールのような炭水化物、および、炭水化物誘導体が挙げられ、炭水化物の例としては、これらに限定されないが、アルトロース、アラビノース、デキストロース、エリトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、ラクトース、リキソース、マンノース、リボース、スクロース、タロース、トレオース、キシロースなどが挙げられる。(R)−3−ヒドロキシ酪酸誘導体の製造に有用な炭水化物の追加の例としては、ガラクトサミン、グルコサミン、および、マンノサミンのようなアミノ誘導体、例えば、N−アセチル誘導体、例えばN−アセチルグルコサミンなどが挙げられる。また炭水化物の例としては、アルキル配糖体のような炭水化物誘導体も挙げられる。炭水化物アルコールの例としては、これらに限定されないが、グリセロール、マンニトール、リビトール、ソルビトール、トレイトール、キシリトールなどが挙げられる。また上記で列挙した炭水化物および炭水化物アルコールのエナンチオマーも、上記の式で示される(R)−3−ヒドロキシ酪酸誘導体を製造するのに使用できる。
【0062】
ある実施態様において、nが1〜約100であり;xが1〜約20であり;mが1〜約20である化合物が含まれる。一実施態様において、式中Rが、(R)−1,3−ブタンジオールである化合物が含まれる。
【0063】
その他の実施態様において、ケトン体濃度を高めることができる化合物としては、以下の式で示される化合物:
【0064】
【化6】

【0065】
さらに、
【0066】
【化7】

【0067】
が挙げられ、式中、nおよびmは、独立して、1〜約100の整数である。いくつかの実施態様において、nおよびmは同じであるか;または、nおよびmは異なっており;ここでnおよびmは、3である。
【0068】
加えて、ケトン体濃度を高めることができる化合物としては、以下の式で示されるR−3−ヒドロキシ酪酸塩のエステル化合物が挙げられる:
【0069】
【化8】

【0070】
式中nは、1〜約100の整数である。一実施態様において、nは、3である。
ケトン体レベルを高めることができるその他の化合物としては、3−ヒドロキシ酸が挙げられる。本組成物は、3−ヒドロキシ酸、それらの直鎖状または環状オリゴマー、3−ヒドロキシ酸またはオリゴマーのエステル、3−ヒドロキシ酸の誘導体、および、それらの組み合わせを含む。一実施態様において、本組成物は、3、4または5個のモノマーのサブユニットを含むR−3−ヒドロキシ酸の環状マクロライドを含む。3−ヒドロキシ酸としては、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、および、3−ヒドロキシヘプタン酸が挙げられる。いくつかの実施態様において、上記オリゴマーの長さは、誘導体が、単量体を持続放出させるのに適した消化速度を有するようにしなければならない。その他の実施態様において、環状三量体(トリオライド(triolide))は、その他の環状オリゴライド(oligolide)、または、直鎖状エステル、および/または、それら両方の混合物と組み合わせて用いられる。
【0071】
3−ヒドロキシ酸の一般式は、以下の通りである:
【0072】
【化9】

【0073】
は、水素、メチル、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、チオール、ジスルフィド、エーテル、チオールエーテル、アミン、アミド、ハロゲンから選択される。RおよびRは、独立して、水素、メチル、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、チオールジスルフィド、エーテル、チオールエーテル、アミン、アミド、ハロゲン、ヒドロキシ、エステル、窒素で置換されたラジカル、および/または、酸素で置換されたラジカルから選択される。Rは、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、チオール、ジスルフィド、エーテル、チオールエーテル、アミン、アミド、ハロゲン、ヒドロキシ、エステル、窒素で置換されたラジカル、および/または、酸素で置換されたラジカルから選択される。さらに、Rが水素またはハロゲンではない場合、Rは、Rに直接結合することができ、Rはメチルであり得る。
【0074】
ケトン体レベルを高めることができるその他の化合物としては、グリセロールエステル、すなわち、少なくとも1種のケトまたはヒドロキシ酸を有する容易に水に溶解しないグリセリドが挙げられ、これは、以下の式で示される:
【0075】
【化10】

【0076】
式中、R、RおよびRからなる群のうち2または3個は、互いに独立して、アセトアセタート、アルファ−ケトプロピオン酸塩、ベータ−ヒドロキシ酪酸塩、および、アルファ−ヒドロキシプロピオン酸塩からなる群の1種またはそれより多くであり、R、RおよびRからなる群のうち2個だけが前記基のいずれかである場合、そのうちの3つめはヒドロキシ基であるか、または、2〜24個の炭素原子を含む飽和または不飽和脂肪酸の残基である。その他のグリセロールエステルは、想定される具体的には、少なくとも1種のケトまたはヒドロキシ酸を有する容易に水に溶解しないグリセリドであり、これは、以下の式中で示される:
【0077】
【化11】

【0078】
式中、1個のR基が水素であり、2個のR基が、(−COCH、COCH)である。加えて、各Rが、同一または異なって、水素であるか、または、(−COCH、COCH)であり、ただし、Rのうち少なくとも1個は水素ではないという条件の場合、式中、Rは、平均炭素数2〜20個の炭素からなる直鎖状の酸エステルである。
【0079】
本発明はまた、一実施態様において、様々な容器に包含させた投与単位を含む、投与が便利な調合物に関する本発明の組成物を提供する。本発明の組成物、例えばMCTを含む組成物の投与量は、ニューロンの代謝の減少に関する病気に苦しむ患者、例えばあらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者における認知能力を高めるのに有効な量で投与してもよい。
【0080】
一実施態様において、本発明の組成物によって、体内でケトン濃度が高められ、この実施態様において、本組成物は、高ケトン血を誘発するのに有効な量で投与される。一実施態様において、高ケトン血によって、ケトン体が脳内でエネルギーとして利用されるようになる。
【0081】
一実施態様において、本組成物は、哺乳動物または患者において、少なくとも1種のケトン体の循環濃度を高める。一実施態様において、循環するケトン体は、D−ベータ−ヒドロキシ酪酸塩である。循環するケトン体の量は、投与後複数の時点で測定することができ、一実施態様において、血中ピーク濃度の付近と予想される時点で測定されるが、予想の血中ピーク濃度レベルの前後に測定することもできる。次に、これらのオフピーク時で測定された量は、予想のピーク時において予想のレベルが反映されるように調節することもできる。一実施態様において、予想のピーク時間は、約2時間である。ピークの循環血中濃度およびタイミングは、当業者既知の要因によって様々であると予想され、このような要因としては、当業者既知の通り、例えば個体の消化速度、食品やドリンクなどを一緒に摂取すること、または、それらを前後に摂取することが挙げられる。一実施態様において、達成されたD−ベータ−ヒドロキシ酪酸塩のピークの血中濃度は、約0.05ミリモル(mM)〜約50mMである。D−ベータ−ヒドロキシ酪酸塩の血中濃度が、約0.05〜約50mMに高められるかどうかを決定するその他の方法は、D−ベータ−ヒドロキシ酪酸塩の尿排出レベルを約5mg/dL〜約160mg/dLの範囲で測定することによる方法である。その他の実施態様において、ピークの血中濃度は、約0.1〜約40mM、約0.1〜約20mM、約0.1〜約10mM、約0.1〜約5mMに高められ、より好ましくは、約0.15〜約2mM、約0.15〜約0.3mMに高められるが、当然ながら、例えば上記で考察したような調合物および受容者に応じて様々な変更がなされると予想される。その他の実施態様において、D−ベータ−ヒドロキシ酪酸塩の達成されたピークの血中濃度は、少なくとも約0.05mM、少なくとも約0.1mM、少なくとも約0.15mM、少なくとも約0.2mM、少なくとも約0.5mM、少なくとも約1mM、少なくとも約1.5mM、少なくとも約2mM、少なくとも約2.5mM、少なくとも約3mM、少なくとも約4mM、少なくとも約5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約15mM、少なくとも約20mM、少なくとも約30mM、少なくとも約40mM、および、少なくとも約50mMと予想される。
【0082】
本発明の組成物に関する化合物投与の有効量、すなわち、ケトン体濃度を高めることができる化合物の、AAMIにおける減少したニューロンの機能によって引き起こされる認知機能の損失の治療または予防に有効な量は、当業者にはよく知られていると予想される。本明細書の上記で考察されたように、このような有効量は、開示された血中ケトンレベルの観点から決定することができる。ケトン体濃度を高めることができる化合物が、MCTである場合、MCT用量は、一実施態様において、約0.05g/kg/日〜約10g/kg/日の範囲のMCTである。その他の実施態様において、上記用量は、約0.25g/kg/日〜約5g/kg/日のMCTの範囲と予想される。その他の実施態様において、上記用量は、約0.5g/kg/日〜約2g/kg/日のMCTの範囲と予想される。その他の実施態様において、上記用量は、約0.1g/kg/日〜約2g/kg/日の範囲と予想される。その他の実施態様において、MCTの用量は、少なくとも約0.05g/kg/日、少なくとも約0、1g/kg/日、少なくとも約0.15g/kg/日、少なくとも約0.2g/kg/日、少なくとも約0.5g/kg/日、少なくとも約1g/kg/日、少なくとも約1.5g/kg/日、少なくとも約2g/kg/日、少なくとも約2.5g/kg/日、少なくとも約3g/kg/日、少なくとも約4g/kg/日、少なくとも約5g/kg/日、少なくとも約10g/kg/日、少なくとも約15g/kg/日、少なくとも約20g/kg/日、少なくとも約30g/kg/日、少なくとも約40g/kg/日、および、少なくとも約50g/kg/日である。
【0083】
便利な投与単位の容器および/または調合物としては、なかでも錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、ハードキャンディー、栄養バー、栄養ドリンク、定量供給式のスプレー、クリーム、および、坐剤が挙げられる。本組成物は、ゼラチン、油類、および/またはその他の医薬活性物質のような製薬上許容できる賦形剤と組み合わせてもよい。例えば本組成物は、本発明の化合物とは異なるその他の治療剤または予防剤と混合するか、および/または、それらと組み合わせて用いることが有利な場合がある。多くの例において、本発明の組成物と共に投与すると、このような物質の有効性が強化される。例えば、本化合物は、抗酸化剤、グルコース利用効率を強化する化合物、および、それらの混合物と併用することが有利な場合がある。
【0084】
一実施態様において、被験者は、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者におけるニューロンの代謝の減少に関する病気の発症を治療および予防するのに必要なレベルに、MCT、MCFAのようなケト原性化合物を直接的に静脈内注入される。静脈内注入用の脂質およびケトン体溶液の製造は、当業者周知である
一実施態様において、本発明は、高い血中ケトンレベルを提供するための、MCTおよびカルニチンの混合物を含む調合物を提供する。このような調合物の性質は、持続時間および投与経路に依存すると予想される。このような調合物は、MCTを0.05g/kg/日〜10g/kg/日の範囲、および、カルニチンまたはその誘導体を0.05mg/kg/日〜10mg/kg/日の範囲で含んでいてもよい。一実施態様において、MCT用量は、0.05g/kg/日〜10g/kg/日のMCTの範囲が可能である。用量は、0.25g/kg/日〜5g/kg/日のMCTの範囲であってもよい。また用量は、0.5g/kg/日〜2g/kg/日のMCTの範囲であってもよい。いくつかの実施態様において、カルニチンまたはカルニチン誘導体の用量は、0.05mg/kg/日〜10mg/kg/日の範囲が可能である。カルニチンまたはカルニチン誘導体の用量は、0.1mg/kg/日〜5mg/kg/日の範囲であってもよい。またカルニチンまたはカルニチン誘導体の用量は、0.5mg/kg/日〜1mg/kg/日の範囲であってもよい。当然ながら、例えば調合物および/または受容者に応じて変更がなされると予想される。
【0085】
一実施態様において、調合物は、乳化したMCTを約1〜約500gの範囲で含み、加えて約1〜約2000mgのカルニチンが併用される。MCTの量は、少なくとも約1g、少なくとも約10g、少なくとも約50g、少なくとも約100g、少なくとも約150g、少なくとも約200g、少なくとも約250g、少なくとも約300g、少なくとも約400gが可能である。カルチニンの量は、少なくとも約1g、少なくとも約50g、少なくとも約100g、少なくとも約250g、少なくとも約500g、少なくとも約1000g、少なくとも約1250g、少なくとも約1500gが可能である。その他の調合物は、50gのモノおよびジグリセリドで乳化した50gのMCT(95%のトリC8:0)を含み、加えて、500mgのL−カルニチンを併用する。このような調合物は十分許容されており、一般的に、健康なヒト被験者において3〜4時間で高ケトン血を誘発する。
【0086】
またMCTの1日用量は、哺乳動物の体重(BW)1gあたりのMCTのグラムに基づき測定することもできる。MCTの1日用量は、約0.01g/kg〜約10.0g/kg(哺乳動物のBW)の範囲が可能である。好ましくは、MCTの1日用量は、約0.1g/kg〜約5g/kg(哺乳動物のBW)である。より好ましくは、MCTの1日用量は、約0.2g/kg〜約3g/kg(哺乳動物)である。さらにより好ましくは、MCTの1日用量は、約0.5g/kg〜約2g/kg(哺乳動物)である。
【0087】
いくつかの実施態様において、本発明の化合物は、炭水化物と共に投与してもよいし、または、炭水化物と共に配合してもよい。炭水化物は、1種より多くの炭水化物を含んでいてもよい。適切な炭水化物は当業界既知であり、例えば、グルコース、フルクトース、スクロースなどの単糖類が挙げられる。炭水化物が共に配合される場合、使用される炭水化物は、少なくとも約0.1g、少なくとも約1g、少なくとも約10g、少なくとも約50g、少なくとも約100g、少なくとも約150g、少なくとも約200g、少なくとも約250g、少なくとも約300g、少なくとも約400gの量で含まれていてもよい。カルニチンの量は、少なくとも約1g、少なくとも約50g、少なくとも約100gが可能である。
【0088】
その他の実施態様において、本発明の方法は、患者の遺伝子型、または、特定の対立遺伝子の決定をさらに含む。一実施態様において、患者のアポリポタンパク質E遺伝子の対立遺伝子が決定される。いくつかの実施例において、発明者は、MCTで高いケトン体レベルが誘導された場合、非E4キャリアーのほうが、E4対立遺伝子キャリアーよりも優れた成果を示すことを教示している。また、E4対立遺伝子のキャリアーは、断食時のケトン体レベルが高く、そのレベルを継続して2時間の時間間隔で高めることができる。従って、E4キャリアーは、より高いケトンまたは、存在するケトン体の利用能力を高める物質レベルを必要とする可能性がある。従って、一つの実施態様は、脂肪、MCTまたはケトン体の利用を高める物質と組み合わされたMCTの用量からなる。脂肪酸の利用を高める物質の例は、これらに限定されないが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、スタチン系薬剤(例えば、リピトール(R)、および、ゾコール(Zocor)(R))、および、フィブラートからなる群より選択してもよい。NSAIDの例としては、アスピリン、イブプロフェン(アドビル(Advil)、ニュープリン(nuprin)など)、ケトプロフェン(オルヂスKT(Orudis KT)、アクトロン(Actron))、および、ナプロキセン(アレブ(Aleve))が挙げられる。
【0089】
NSAIDは、部分的にPPAR−ガンマアゴニストとして機能する。PPAR−ガンマ活性を増加させると、FATPのような脂肪酸代謝に関連する遺伝子発現も増加する(総論としては、(Gelman,L.等,An update on the mechanisms of action of the peroxisome proliferatedactivated receptors(PPARs)and their roles in inflammation and cancer,Cell Mol Life Sci,1999,55:932〜43)を参照)。従って、MCTとPPAR−ガンマアゴニストとの組み合わせは、ニューロンの代謝の減少を示す患者にとって有益であると証明されると予想される。一実施態様において、PPAR−ガンマアゴニストは、NSAIDである。
【0090】
スタチンは、多面発現効果を有する薬物のクラスであり、最も顕著な特徴は、コレステロール合成における主要な律速段階である酵素3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoAレダクターゼの阻害である。またスタチンは、その他の生理学的な影響、例えば血管拡張作用、抗血栓作用、抗酸化作用、抗血管増殖作用、抗炎症作用およびプラークを安定化させる特性も有する。加えてスタチンは、リポタンパク質リパーゼのレベルを増加させ、同時にアポリポタンパク質C−III(リポタンパク質リパーゼの阻害剤)も減少させることによって、循環するトリグリセリド豊富なリポタンパク質を減少させる(Schoonjans,K.等,3−Hydroxy−3−methylglutaryl CoA reductase inhibitors reduce serum triglyceride levels through modulation of apolipoprotein C−III and lipoprotein lipase,FEBS Lett,1999,452:160〜4)。従って、スタチンの投与により脂肪酸利用の増加が起こり、MCT投与と相乗的に作用する可能性がある。それにより、ApoE4キャリアーにとって特に有益であることが証明されると予想される。本発明の一実施態様は、スタチンとMCTとからなる併用療法で有りうる。
【0091】
フィブラート、例えばベザフィブラート、シプロフィブラート、フェノフィブラート、および、ゲムフィプロジルは、脂質低下薬のクラスである。これらはPPAR−アルファアゴニストとして作用し、スタチンと同様に、リポタンパク質リパーゼ、アポAIおよびアポAIIの転写を増加させ、アポCIIIのレベルを減少させる(Staels,B.等,Mechanism of action of fibrates on lipid and lipoprotein metabolism,Circulation,1998,98:2088〜93)。そのようなものとして、これらは、恐らく末梢組織による脂肪酸の使用を増加させることによってトリグリセリド豊富なリポタンパク質の血漿濃度に対して主要な影響を与える。従って、本発明は、フィブラート単独、または、MCTとの併用は、ニューロンの代謝の減少を示す患者、例えばあらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者にとって有益であることが証明されると予想されることを開示する。
【0092】
カフェインおよびマオウのアルカロイドは、一般的に使用される市販の栄養補助食品である。マオウのアルカロイドは、一般的に、麻黄(シナマオウ(Ephedra sinica))のような植物源から誘導される。カフェインとマオウの組み合わせは、脂肪の利用を刺激する。マオウのアルカロイドは、アドレナリンと構造が類似しており、細胞表面上のベータ−アドレナリン受容体を活性化する。これらのアドレナリン受容体は、サイクリックAMP(cAMP)を介してシグナル伝達し、脂肪酸の利用を増加させる。cAMPは、通常、ホスホジエステラーゼ活性によって分解される。カフェインの機能の1つは、ホスホジエステラーゼ活性を阻害し、それによってcAMPが介在するシグナル伝達を増加させることである。それゆえに、カフェインは、マオウアルカロイドの活性の有効性を高める。従って、本発明は、マオウのアルカロイド単独で、ニューロンの代謝の減少に関する状態の治療または予防を提供することができることを開示する。加えて、マオウのアルカロイドとカフェインとの併用は、ニューロンの代謝の減少に関する状態の治療または予防を提供することができることもを開示する。従って、MCTとマオウとの組み合わせ、または、MCTとカフェインとの組み合わせ、または、MCT、マオウのアルカロイド、および、カフェインの組み合わせは、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者におけるニューロンの代謝の減少に関する病気の治療または予防を提供することができることを開示する。
【0093】
ケトン体は、ニューロンでアセチル−CoA源として用いられる。アセチル−CoAは、クレブス回路、または、クエン酸回路(TCA回路)でオキサロ酢酸塩と組み合わされて、クエン酸塩を形成する。ニューロンにとってアセチル−CoA源を保持することは重要であり、同様に、TCA回路の中間体にとって、効率的なエネルギー代謝を維持することは重要である。しかしながらニューロンは、合成反応、例えばグルタマートの形成のためにTCA回路の中間体を消費する。またニューロンは、ピルビン酸カルボキシラーゼ、および、リンゴ酸酵素が欠けているために、ニューロンは、ピルビン酸塩からTCA回路の中間体を補充することができない(Hertz,L.等,Neuronal−astrocytic and cytosolic−mitochondrial metabolite trafficking during brain activation,hyperammonemia and energy deprivation,Neurochem Int,2000,37:83〜102)。従って、本発明は、ケトン体とTCA回路の中間体源との組み合わせを開示し、一実施態様において。TCA回路の中間体は、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、α−ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、および、それらの混合物からなる群より選択される。本発明の一実施態様は、TCAの効率を高めるために、調合物中でTCA回路の中間体とMCTとを併用することである。
【0094】
その他のTCA回路の中間体源は、体内でTCA回路の中間体に変換される化合物(TCA中間体の前駆体)である。このような化合物の例は、2−ケト−4−ヒドロキシプロパノール、2,4−ジヒドロキシブタノール、2−ケト−4−ヒドロキシブタノール、2,4−ジヒドロキシ酪酸、2−ケト−4−ヒドロキシ酪酸、アスパラギン酸塩、加えてモノおよびジアルキルオキサロ酢酸塩、ピルビン酸塩、および、グルコース−6−リン酸塩である。従って、本発明は、TCA中間体の前駆体とケトン体との組み合わせは、代謝の減少によって生じた病気の治療および予防に有益であると予想されることが開示されている。また本発明は、TCA中間体の前駆体とMCTとの組み合わせは、代謝の減少によって生じた病気の治療および予防に有益であると予想されることも開示する。
【0095】
本発明はさらに、追加のTCA回路の中間体源、および、アセチル−CoAは、ケトン体療法と併用すると有利であることを開示する。TCA回路の中間体源、および、アセチル−CoAとしては、単糖類および二糖類、加えて様々な鎖長および構造のトリグリセリドが挙げられる。
【0096】
さらなる利点は、代謝補助物質を含む医薬組成物の調合物から得ることができる。代謝補助物質としては、ビタミン、無機質、抗酸化剤およびその他の関連の化合物が挙げられる。このような化合物は、これらにに限定されないが、以下に列挙するもの;アスコルビン酸、ビオチン、カルシトリオール、コバラミン、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン、レチノール、レチナール(レチンアルデヒド)、レチノイン酸、リボフラビン、チアミン、α−トコフェロール、フィチルメナキノン(phytylmenaquinone)、マルチプレニルメナキノン(multiprenylmenaquinone)、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、アルミニウム、亜鉛、カリウム、クロム、バナジウム、セレニウム、リン、マンガン、鉄、フッ素、銅、コバルト、モリブデン、ヨウ素から選択してもよい。従って、代謝補助物質、ケトン体レベルを高める化合物、および、TCA回路の中間体から選択される成分の組み合わせは、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者におけるニューロンの代謝の減少に関する病気の治療および予防に有益であることが証明されると予想される。
【0097】
MCTのようなケトン体の濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含み、さらにC6およびC8脂肪酸残基で構成されるトリグリセリドを含む組成物を投与すれば、大量の炭水化物が同時に消費されたとしても、高いケトン体レベルを得ることができる(総論としては、(Odle,J.,New insights into the utilization of medium−chain triglycerides by the neonate:observations from a piglet model,J Nutr,1997,127:1061〜7)を参照;さらに、同時係属中の2001年9月21日付けで出願された米国特許仮特許出願第60/323,995号の「Drug Targets for Alzheimer’s Disease and Other Diseases Associated with Decreased Neuronal Metabolism」も参照すること。本出願人のアプローチの利点は、食べるものの慎重なモニターは必要ではなく、コンプライアンスがずっと簡単であるため、明らかである。
【0098】
さらなる利点は、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者において、哺乳動物のケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を、その他の治療剤と共に含む医薬組成物の調合物から得ることができる。このような治療剤としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリン合成調節因子、アセチルコリン貯蔵の調節因子、アセチルコリン放出の調節因子、抗炎症薬、エストロゲンもしくはエストロゲン誘導体、インスリン抵抗性改善剤、β−アミロイドプラークの除去物質(ワクチンを含む)、β−アミロイドプラーク形成の阻害剤、γ−セクレターゼの調節因子、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の調節因子、神経分化誘導性の増殖因子(例えばBDNF)、セラミドもしくはセラミド類似体、および/または、NMDAグルタマート受容体アンタゴニスト(このような治療の総論としては、(Selkoe,D.J.,Alzheimer’s disease:genes,proteins,and therapy,Physiol Rev,2001,81:741〜66)(Bullock,R.,New drugs for Alzheimer’s disease and other dementias,Br J Psychiatry,2002,180:135〜9)を参照)が挙げられる。このような治療剤がまだ実験段階であったとしても、前記治療が本明細書において説明されているような脂肪酸/ケトン体を高める用途と有利に組み合わせられることは、本発明の新たな知見である。上記の説明から、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者におけるニューロンの代謝の減少に関する病気を治療および予防することにおける本発明の多数の利点は明らかになる。
【0099】
(a)あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者におけるニューロンの代謝の減少に関する病気の現行の治療は、単に一時的であって、これらの状態に関連するニューロンの代謝の減少を扱うものではない。本発明の組成物の栄養補給剤としての摂取は、グルコース代謝が弱くなったニューロン性細胞に、代謝基質としてケトン体を提供する簡単な方法である。
【0100】
(b)ケトン体のの高い血中濃度は、中鎖トリグリセリドのようなケトン体生成の組成物が豊富な組成物または処方計画によって達成できる。
(c)多くのケト原性化合物、例えば中鎖トリグリセリドは、患者に静脈内注入してもよいし、または、経口投与してもよい。
【0101】
(d)ケトン体のレベルは、市販の製品(例えばケトスティックス(Ketostix(R)),バイエル社(Bayer,Inc.))によって尿または血液で容易に測定することができる。
【0102】
本発明によれば、あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者におけるニューロンの代謝の減少に関する病気の治療および予防措置としての、MCTまたはMCFAのようなケト原性化合物の使用が開示され、本使用は、これらの状態に関連するニューロンの代謝の減少を緩和する新規の手段を提供する。あらゆる年齢に関連する認知力低下(例えばAAMIなど)を示す患者におけるニューロンの代謝の減少に関する病気のために、MCTおよびMCFAのようなケト原性化合物を使用すると、高ケトン血が生じ、従ってそれによりニューロンの代謝の増加が提供されると予想されることは、本発明の新規かつ有意な見識である。上記の説明はかなり特定のことがらを含むが、これらは、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではなく、単に本発明の実施態様のうちいくつかの説明を提供するものとして解釈すべきである。例えば、MCTのようなケト原性化合物の補給は、硫酸バナジル、ピコリン酸クロム、および、ビタミンEのようなインスリン抵抗性改善剤と併用すると、より高い有効性を示すことが証明される可能性がある。このような物質は、弱まったニューロンにおいてグルコース利用を高めるように機能し、高ケトン血と相乗効果を示す可能性がある。その他の例において、MCTのようなケト原性化合物は、L−カルニチンおよびその誘導体のような脂肪酸利用速度を高める化合物と併用してもよいよい。このような化合物の混合物は、相乗的に循環するケトン体のレベルを高める可能性がある。
【0103】
いくつかの実施態様において、哺乳動物は、具体的にはヒトである。本発明のの範囲内でその他の哺乳動物は、コンパニオンアニマルのような哺乳動物、例えばペット、または、長期または短期に関わらずヒトを介護する哺乳動物である。いくつかの実施態様において、ペットとしての哺乳動物は、イヌまたはネコである。
【0104】
一実施態様において、哺乳動物は、本明細書の上記で定義したように、健康な老年の哺乳動物である。このような実施態様において、哺乳動物は、当業者によって決定された認知障害の明白な徴候、または、実質的な症状もしくは兆候を示すことがわかっていないと予想される。哺乳動物は、たとえ加齢に関連した健康上の問題であってもその他の健康上の問題を有していてもよいが、そのような問題は、哺乳動物の認知、運動または行動機能に実質的に影響を与えないような性質を有すると予想される。従って、当業者であれば当然ながら、老化した、または高齢の哺乳動物を、完全に「健康」に分類することは不可能と考えられるが、そのように分類することは、本明細書で示された方法および組成物を実施するのに必要ではない。その他の実施態様において、老年の哺乳動物は、認知、記憶もしくは運動障害の慣習的な診断、または、その証拠となる特質、または、このような障害の行動上の兆候などのどれによって決定されたかにかかわらず、加齢に関連した認知障害を有する哺乳動物と特に理解される。一実施態様において、哺乳動物は、加齢に関連する認知障害に関連する特徴または表現型を有し、例えば哺乳動物は、1種またはそれより多くの以下の特徴、または、加齢に伴う認知、運動または行動上の難点の表現型の発現を示す。例えば、これらの表現型を示さない対照の哺乳動物と比較した、想起能力の減少、短期記憶障害、学習速度の減少、学習能力の減少、問題解決能力の減少、注意持続時間の減少、運動性能の減少、錯乱の増加、または、認知症である。
【0105】
一実施態様において、本発明の組成物は、ペットフードのような食品組成物である。具体的な実施態様において、本組成物は、MCTに加えて、それぞれ乾燥重量に基づき約15〜50%のタンパク質、5〜40%の脂肪、5〜40%の炭水化物をさらに含み、5〜20%の含水量を有する食品組成物である。具体的な実施態様において、このような食品は、食事の完全な必要条件を供給することを目的とする。また、スナック、栄養バー、または、その他の形態の食品もしくは栄養補給剤または栄養補助食品、例えば以下で考察されるような錠剤、カプセル、ゲル、ペースト、エマルジョン、カプレット等として有用な組成物も提供される。このような食品組成物は、任意に、ドライタイプの組成物、セミモイストタイプの組成物、モイストタイプの組成物、または、それらのあらゆる混合物が可能である。
【0106】
その他の実施態様において、本発明の組成物は、特に人間の消費用に配合された食品である。このような食品としては、人間の食事の必要条件を供給することを目的とする食品および栄養素、加えて人間用のその他の栄養補助食品が挙げられる。一実施態様において、人間の消費用に配合された食品は、完全で、栄養上バランスが取れているが、一方その他の実施態様において、このような食品は、栄養補給剤として、バランスの取れた、または、配合された食物と一緒に使用することを目的とする。
【0107】
その他の実施態様において、本組成物は、栄養補助剤であり、このような栄養補助剤としては、例えば飲用水、飲料、濃縮液、ゲル、ヨーグルト、粉末、顆粒、ペースト、懸濁液、噛む食品、一口タイプの軽食(morsel)、トリート(treat)、スナック、ペレット、丸剤、カプセル、錠剤、またはその他のあらゆる送達形態が挙げられる。栄養補給剤は、具体的な種による消費に応じて特別に配合してもよいし、または、例えばペットとしての哺乳動物またはヒトのような哺乳動物の個体ごとに応じて配合してもよい。一実施態様において、栄養補給剤は、哺乳動物にそれらを少量で投与できるように、または、哺乳動物へ投与する前に希釈できるように、比較的濃縮された用量のMCTを含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、栄養補給剤またはその他のMCTを含む組成物は、例えば、用量を調節するために、もっと口当たりをよくするために、または、より少ない用量でより頻繁な投与を可能にするために、哺乳動物に投与する前に水などと混合することを必要とする場合がある。
【0108】
MCTを含む組成物は、冷却または凍結させてもよい。MCTは、必要とされる有益な量が提供されるように本組成物のその他の成分と予めブレンドされていてもよいし、乳化して、ペットフード組成物、栄養補給剤または栄養補助食品、または、人間の消費用に配合された食品にコーティングしてもよいし、または、それらを消費する前に組成物に添加してもよいし、または、哺乳動物に例えば粉末または混合物を用いて与えてもよい。
【0109】
一実施態様において、本組成物は、本組成物が投与されている哺乳動物において、認知機能および挙動を強化するのに有効な量でMCTを含む。人間の消費用に配合された調合物の場合、本組成物のパーセンテージとしてのMCTの量は、乾燥物質量に基づき組成物の約1%〜約50%の範囲であるが、それより小さい、または、大きいパーセンテージで供給してもよい。様々な実施態様において、MCTの量は、組成物の乾燥重量に基づき、約1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6%、6.5%,7%,7.5%,8%、8.5%,9%,9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%,13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%,20%、20.5%、21%、21.5%、22%、22.5%、23%、23.5%、24%、24.5%、25%、25.5%、26%、26.5%、27%、27.5%,28%、28.5%、29%、29.5%、30%、31%、32%、33%、34%,35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%またはそれより多くである。栄養補給剤は、数倍高濃度のMCTが含まれるように配合してもよく、それにより、哺乳動物に、錠剤、カプセル、濃縮液、またはその他の類似の投薬形態の形態で投与したり、または、投与前に、例えば水で希釈することによって希釈したり、ペットフードおよびその他の類似の投与様式の上に噴霧するか、または、まき散らしたりすることが可能である。栄養補給剤または栄養補助食品に関して、MCTは、単独で哺乳動物に直接投与してもよいし、または、哺乳動物の規則的な食事に直接適用してもよい。様々な実施態様における栄養補給剤または栄養補助食品の調合物は、約30%〜約100%のMCTを含むが、それより少ない量で用いてもよい。
【0110】
MCT源としては、あらゆる適切な源、半合成、合成または天然源が挙げられる。MCTの自然源の例としては、植物源、例えばココナッツおよびヤシ油、パーム核およびパーム核油、および、動物源、例えば様々な種のいずれか(例えばヤギ)からの乳汁が挙げられる。
【0111】
様々な実施態様において、本組成物は、任意に補助物質を含んでいてもよく、例えば無機質、ビタミン、塩、調味料、着色剤および保存剤である。無機の補助物質の非限定的な例としては、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、鉄、塩化物、ホウ素、銅、亜鉛、マグネシウム、マンガン、ヨウ素、セレニウムなどが挙げられる。補助的なビタミンの非限定的な例としては、ビタミンA、ビタミンBのいずれか、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、および、ビタミンKが挙げられ、それらの様々な塩、エステルまたはその他の誘導体も含まれる。また追加の栄養補助食品は、例えば、あらゆる形態のナイアシン、パントテン酸、イヌリン、葉酸、ビオチン、アミノ酸など、加えてそれらの塩および誘導体が含まれていてもよい。加えて本組成物は、有益な長鎖ポリ不飽和脂肪酸を含んでもよく、このような脂肪酸としては、例えば、(n−3)および/または(n−6)脂肪酸、アラキドン酸、エイコサぺンタエン酸、ドコサぺンタエン酸、および、ドコサヘキサ塩酸、加えてそれらの組み合わせが挙げられる。
【0112】
本明細書で示される本組成物は、任意に、全般の神経学的な健康を促進または維持するか、または、認知機能をさらに強化する1種またはそれより多くの補助物質を含んでいてもよい。このような物質としては、例えば、コリン、ホスファチジルセリン、アルファ−リポ酸、CoQ10、アセチル−L−カルニチン、および、ハーブ抽出物、例えばイチョウ(Gingko biloba)、バコパ・モンニエラ(Bacopa monniera)、セイヨウヒルガオ(Convolvulus pluricaulis)、および、スズランスイセン(Leucojum aestivum)が挙げられる。
【0113】
様々な実施態様において、本明細書で示されたペットフードまたは栄養補助食品組成は、物好ましくは、乾燥重量に基づき、約15%〜約50%の未精製のタンパク質を含む。未精製のタンパク質の材料は、動物、植物またはその他にかかわらずあらゆる源由来の1種またはそれより多くのタンパク質を含む。例えば、野菜のタンパク質、例えばダイズ、綿の実およびラッカセイが、本明細書における使用に適している。動物タンパク質、例えばカゼイン、アルブミンおよび肉のタンパク質、例えば、ポーク、ラム、馬肉、鳥肉、魚類またはそれらの混合物が有用である。
【0114】
本組成物は、乾燥重量に基づき、約5%〜約40%の脂肪をさらに含んでいてもよい。本組成物は、炭水化物源をさらに含んでいてもよい。本組成物は、典型的には、乾燥重量に基づき、約15%〜約40%の炭水化物を含む。このような炭水化物の例としては、穀物または穀草、例えば米、トウモロコシ、モロコシ、アルファルファ、オオムギ、ダイズ、カノラ、オートムギ、コムギ、または、それらの混合物が挙げられる。また本組成物は、任意にその他の成分を含んでいてもよく、このような成分としては、炭水化物、例えば乾燥乳清、および、その他の乳製品または副産物が挙げられる。
【0115】
具体的な実施態様において、本組成物はまた、少なくとも1種の繊維源も含む。食品または飼料に使用するのに適した様々な可溶性または不溶性繊維のいずれかを利用してもよく、このような繊維は当業者既知であると予想される。目下、含まれる繊維源としては、ビートパルプ(テンサイ由来)、アラビアゴム、タルハガム(gum talha)、オオバコ、米ぬか、イナゴマメゴム、シトラスパルプ、ペクチン、短鎖のオリゴフルクトースに付加されたフルクトオリゴ糖、マンノオリゴフルクトース、ダイズ繊維、アラビノガラクタン、ガラクトオリゴ糖、アラビノキシラン、または、それらの混合物が挙げられる。あるいは、繊維源は、発酵性繊維であってもよい。発酵性繊維は、コンパニオンアニマルの免疫系に利点を提供することがこれまでに説明されている。また、腸内でのプロバイオティック微生物の増殖を促進するプロバイオティック組成物を提供する発酵性繊維またはその他の当業者既知の組成物も、本発明によって哺乳動物の免疫系に提供される利点の強化に役立たせるために本組成物に包含してもよい。加えて、本組成物に、プロバイオティック微生物、例えばラクトバチルス(Lactobacillus)、または、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種を添加してもよい。当業者であれば、所定の組成物に添加するのに適切な量のMCTを決定する方法を理解していると予想される。このような考慮に入れる可能性がある要因としては、組成物のタイプ(例えば、食品組成物、ドリンク、栄養補助食品、または、人間の消費用に配合された食品)、特定のタイプの組成物の様々な哺乳動物による平均的な消費量、MCTの目的とする用量または必要な用量、おいしさ、および、対象のレシピエントまたは消費者にとって最終産物が許容できるかどうか、本組成物を製造する製造条件、購入者にとっての利便性、および、包装への考察が挙げられる。好ましくは、本組成物に添加しようとするMCTの濃度は、哺乳動物のエネルギーおよび栄養素の必要条件に基づき計算される。MCTは、本組成物の製造および/または加工中のあらゆる時点で添加することができ、このような添加は、ペットフード組成物、栄養補助食品、または、人間の消費用の食品の配合の一部としてでもよいし、または、前述のいずれかへのコーティングもしくは添加剤としてでもよい。
【0116】
本発明はまた、加齢に関連した認知力低下、または、AAMIの治療方法に関し、本方法は、AAMIを示す健康な老年の哺乳動物の個体群を認識する工程、該個体群を、少なくとも1つの対照群、および、1またはそれより多くの検査群に分割する工程、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を運搬するための少なくとも1種の送達システムを、個々の哺乳動物における少なくとも1種のケトン体の血中濃度を高めるのに有効な量で配合する工程を含み、ここで、長期的に、各検査群には、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を、個々の哺乳動物における少なくとも1種のケトン体の血中濃度を高めるのに有効な量で運搬する調合物を投与すること、および、対照群には、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を個々の哺乳動物における少なくとも1種のケトン体の血中濃度を高めるのに有効な量で全く投与させない。本方法は、対照群および検査群における少なくとも1種の神経心理学検査の結果を比較する工程、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を個々の哺乳動物における少なくとも1種のケトン体の血中濃度を高めるのに有効な量で運搬するための送達システムのうちどれが、少なくとも1種の神経心理学検査の結果の改善において有効であるかを決定する工程;および、老年の哺乳動物の個体群に、前の工程で決定された治療の基礎となる送達システムを投与することによって、AAMIを治療する工程をさらに含む。
【実施例】
【0117】
以下の実施例は、説明の目的のためだけに示すものであり、本発明の範囲を限定することは目的としない。
実施例1:栄養ドリンク
以下の成分:乳化したMCTを、5〜100g/ドリンクの範囲で、L−カルニチンを、0.1〜1グラム/ドリンクの範囲で、ビタミン混合物および無機質を推奨された1日のレベルで、および、様々な矯味矯臭薬剤を含む栄養ドリンクを製造した。
【0118】
実施例2:追加の調合物
追加の調合物は、すぐに飲めるタイプの飲料、粉末化状の飲料、栄養ドリンク、食品バー、プディング、その他の菓子類などの形態が可能である。このような調合物は当業者には明白である。
【0119】
A.すぐに飲めるタイプの飲料
すぐに飲めるタイプの飲料を、以下の成分:乳化したMCTを、5〜100g/ドリンクの範囲で、L−カルニチンを、100〜1000mg/ドリンクの範囲で、および、様々な矯味矯臭薬剤、および、おいしさ、安定性などを高めるために用いられるその他の成分が含まれるように製造した。
【0120】
B.粉末化状の飲料
MCTは、食品バーや粉末化状の飲料の調製物に有用な乾燥させた形態で製造してもよい。粉末化状の飲料を、ドリンク1本あたり以下の成分:乾燥させた乳化したMCTを、10〜50gの範囲で、L−カルニチンを、250〜500mgの範囲で、スクロースを、8〜15gの範囲で、マルトデキストリンを、1〜5gの範囲で、矯味矯臭薬剤0〜1g、および、おいしさ、安定性などを高めるために用いられるその他の成分が含まれるように製造した。
【0121】
C.食品バー
食品バーは、乾燥させた乳化したMCTを、0.1〜50g、L−カルニチンを、250〜500mg、グリセリンを、1〜5g、固形コーンシロップを、5〜25g、ココアを、2〜7g、コーティングを、15〜25gで構成した。
【0122】
D.ゼラチンカプセル
ハードまたはソフトゼラチンカプセルは、以下の成分:MCTを、0.1〜1000mg/カプセル、L−カルニチンを、250〜500mg/カプセル、スターチ、NFを、0〜600mg/カプセル;スターチの流動性粉末を、0〜600mg/カプセル;シリコーン流動体(350センチストークス)を、0〜20mg/カプセルを用いて製造した。これらの成分を混合し、篩を通過させ、カプセルに充填した。
【0123】
E.錠剤
錠剤を、以下の成分:MCTを、0.1〜1000mg/錠剤;L−カルニチンを、250〜500mg/錠剤;微結晶性セルロースを、20〜300mg/錠剤;スターチを、0〜50mg/錠剤;ステアリン酸マグネシウム、または、ステアリン酸酸を、0〜15mg/錠剤;二酸化ケイ素(ヒュームド)を、0〜400mg/錠剤;二酸化ケイ素(コロイド状)を、0〜1mg/錠剤、および、ラクトースを、0〜100mg/錠剤が含まれるように製造した。これらの成分をブレンドし、圧縮して錠剤を形成した。
【0124】
F.懸濁液
懸濁液を、以下の成分:0.1〜1000mgのMCT;250〜500mgのL−カルニチン;50〜700mg/5mlのカルボキシメチルセルロースナトリウム;0〜10mg/5mlの安息香酸ナトリウム;5mlの純水;ならびに、必要に応じて矯味矯臭薬剤および着色料が含まれるように製造した。
【0125】
G.非経口用の溶液
非経口組成物を、1.5重量%のMCT、および、10体積%のL−カルニチン、プロピレングリコール、および、水が含まれるように撹拌することによって製造した。この溶液を塩化ナトリウムで等張にし、滅菌した。
【0126】
実施例3
高齢の個体群の認知機能を、中鎖トリグリセリドを用いた治療で改善させた。
この研究では、4人の高齢の被験者(2人の男性、および、2人の女性)を採用した。平均年齢は、54.24歳であった。全ての被験者は、どのような顕著な医療上の、神経学な、または精神医学的な疾患も有していなかった。被験者は中枢神経系の薬物療法を受けていなかった。被験者は、この研究のための通院の前の夜に、最初の一晩の約12時間絶食するよう要望した。被験者は午前中に到着し、基準の測定を、3種の検査:単純な反応時間、記憶走査のパラダイム、および、心的回転課題の尺度に関して採取した。各検査で、記録には残さない一連の練習測定を行った。練習検査は、検査を繰り返す練習の影響が最小化されるように設計した。続いて被験者に検査物品を消費させ、1時間待機させ、3種の検査全てを繰り返した。
【0127】
検査物品
検査物品には、エンシュアー(EnsureTM)と混合した20グラムの50%の中鎖トリグリセリド/50%のコーンスターチ粉が含まれる。検査物品には、総計10グラムの中鎖トリグリセリドが送達された。被験者に、検査物品を10分間またはそれ未満で消費するよう要望した。
【0128】
反応時間
反応時間の検査において、コンピューターのスクリーンに示された刺激に対する反応を測定した。被験者の課題において、スクリーンの左側に刺激が現れたらZキーを押し、スクリーン右側に刺激が現れたら/キーを押した。反応時間をミリ秒で測定した。回答が不正解であるか、または、1500ミリ秒より長くかかった場合、1500ミリ秒のデフォルト値を割り当てた。各セッションは、50回の測定からなる9ブロックを含む。最初の3ブロックを記録されない練習ブロックとし、検査における練習の影響が最小化になるように設定した。それゆえに、50回の測定からなる6ブロックそれぞれを、セッションごとに総計300回の別個の測定で記録した。
【0129】
記憶走査
記憶走査課題では、被験者の、短時間で一連の数字を短期記憶で記憶する能力を測定した。被験者に、「記憶させようとする」一連の数字群を示した。その数字の数は、1〜6の間で様々であった。500ミリ秒の短い遅延を置いた後、被験者に、「検査用」の数字を示した。被験者の課題は、検査用の数字が「記憶させようとする」数字群に存在するかどうかを思い出すことである。検査用の数字が「記憶させようとする」群に含まれる場合、被験者は、キーボードの/キーを押した。検査用の数字が「記憶させようとする」群に存在しない場合、被験者はZキーを押した。正しい答えと応答に要した時間の両方を記録した。各セッションは、48回の試験からなる6ブロックで構成された。最初のブロックは練習ブロックであるため記録せず、検査における練習の影響が最小化になるように設定した。従って、48回の測定からなる5ブロックを、セッションごとに総計240回の別個の測定で記録した。
【0130】
心的回転
心的回転課題では、どれだけ迅速に被験者が物体を心的に回転させることができるかを測定した。各試験の際に、被験者に、大文字の「F」に類似している記号を示した。この記号を8方向のうち1つの方向で示し、文字「F」か、または、「F」の鏡像のいずれとした。被験者の課題は、この記号が、正しい「F」なのか、または、逆転した「F」なのかを決定すること、さらに、この記号が逆転していればZキー、または、この記号が逆転していなければ/キーを押すことによってどれだけできる限り迅速に応答できるか、である。回答が不正解の場合、または、意味のないキーを押したの場合、短い音を聞かせ、その不正解な値に対して最大時間(1500ミリ秒)を割り当てた。各セッションは、16回の試験からなる5ブロックを含む。最初のブロックは練習ブロックであるため記録せず、検査における練習の影響が最小化になるように設定した。従って、16回の測定からなる4ブロックを、セッションごとに総計64回の別個の測定で記録した。
【0131】
結果
t検定で基準と治療セッションとで平均応答時間を比較することによって結果を解析した。中鎖トリグリセリドを投与すると、記憶走査課題(p<0.0001)、加えて心的回転課題(p0.0497)において有意な改善が得られた。単純な反応時間では有意な変化は見られなかった。表1を参照。
【0132】
【表1】

【0133】
記憶走査課題に関して、被験者は、記憶させようとするセットサイズに関係なくより速い反応時間を示したことから、被験者の性能は改善された(図1を参照)。
図1によれば、10グラムの中鎖トリグリセリドは、記憶走査課題に関して性能を改善することが示される。実線の四角形および実線は、基準の応答時間を示す。白丸および点線は、治療における応答時間を示す。エラーバーは、標準誤差を示す。は、個々のセットサイズに関するp<0.05を示す。
【0134】
図1で示されるように、それぞれのセットサイズにおいて、MCTが補給されたドリンクは、統計学的に性能を改善した(表2を参照)。
【0135】
【表2】

【0136】
実施例4:中鎖トリグリセリド、および、L−カルニチンを用いた高齢の個体群における認知機能の改善
この研究では、3人の高齢の被験者(2人の男性、および、1人の女性)を採用した。平均年齢は、57歳であった。全ての被験者は、どのような顕著な医療上の、神経学な、または精神医学的な疾患も有していなかった。被験者は中枢神経系の薬物療法を受けていなかった。被験者は、この研究のための通院の前の夜に、最初の一晩の約12時間絶食するよう要望した。被験者は午前中に到着し、基準の測定を、3種の検査:単純な反応時間、記憶走査のパラダイム、および、心的回転課題の尺度に関して採取した。各検査で、記録には残さない一連の練習測定を行った。練習検査は、検査を繰り返す練習の影響が最小化されるように設計した。続いて被験者に検査物品を消費させ、1時間待機させ、3種の検査全てを繰り返した。中鎖トリグリセリドとL−カルニチンとの混合物が、高齢の個体群における認知能力を改善できるかどうかを検査するために、課題を設計した。
【0137】
検査物品
検査物品には、エンシュアーTMと混合した10グラムの50%の中鎖トリグリセリド/50%のコーンスターチ粉末、および、250mgのL−カルニチンが含まれる。検査物品には、総計5グラムの中鎖トリグリセリドと、250mgのL−カルニチンとが送達された。被験者に、検査物品を10分間またはそれ未満で消費するよう要望した。
【0138】
反応時間
反応時間の検査において、コンピューターのスクリーンに示された刺激に対する反応を測定した。被験者の課題において、スクリーンの左側に刺激が現れたらZキーを押し、スクリーン右側に刺激が現れたら/キーを押した。反応時間をミリ秒で測定した。回答が不正解であるか、または、1500ミリ秒より長くかかった場合、1500ミリ秒のデフォルト値を割り当てた。各セッションは、50回の測定からなる9ブロックを含む。最初の3ブロックを記録されない練習ブロックとし、検査における練習の影響が最小化になるように設定した。それゆえに、50回の測定からなる6ブロックそれぞれを、セッションごとに総計300回の別個の測定で記録した。
【0139】
記憶走査
記憶走査課題では、被験者の、短時間で一連の数字を短期記憶で記憶する能力を測定した。被験者に、「記憶させようとする」一連の数字群を示した。その数字の数は、1〜6の間で様々であった。500ミリ秒の短い遅延を置いた後、被験者に、「検査用」の数字を示した。被験者の課題は、検査用の数字が「記憶させようとする」数字群に存在するかどうかを思い出すことである。検査用の数字が「記憶させようとする」群に含まれる場合、被験者は、キーボードの/キーを押した。検査用の数字が「記憶させようとする」群に存在しない場合、被験者はZキーを押した。正しい答えと応答に要した時間の両方を記録した。各セッションは、48回の試験からなる6ブロックで構成された。最初のブロックは練習ブロックであるため記録せず、検査における練習の影響が最小化になるように設定した。従って、48回の測定からなる5ブロックを、セッションごとに総計240回の別個の測定で記録した。
【0140】
心的回転
心的回転課題では、どれだけ迅速に被験者が物体を心的に回転させることができるかを測定した。各試験の際に、被験者に、大文字の「F」に類似している記号を示した。この記号を8方向のうち1つの方向で示し、文字「F」か、または、「F」の鏡像のいずれとした。被験者の課題は、この記号が、正しい「F」なのか、または、逆転した「F」なのかを決定すること、さらに、この記号が逆転していればZキー、または、この記号が逆転していなければ/キーを押すことによってどれだけできる限り迅速に応答できるか、である。回答が不正解の場合、または、意味のないキーを押したの場合、短い音を聞かせ、その不正解な値に対して最大時間(1500ミリ秒)を割り当てた。各セッションは、16回の試験からなる5ブロックを含む。最初のブロックは練習ブロックであるため記録せず、検査における練習の影響が最小化になるように設定した。従って、16回の測定からなる4ブロックを、セッションごとに総計64回の別個の測定で記録した。
【0141】
結果
t検定で基準と治療セッションとで平均応答時間を比較することによって結果を解析した。中鎖トリグリセリドを投与すると、記憶走査課題(p<0.0001)、加えて心的回転課題(p<0.0001)において有意な改善が得られた。単純な反応時間では有意な変化は見られなかった。表3を参照。
【0142】
【表3】

【0143】
記憶走査課題に関して、MCT+カルニチンは、記憶させようとするセットサイズに関係なくより速い反応時間を示したことから、性能が改善された(図2を参照)。
図2によれば、10グラムの中鎖トリグリセリドと250mgのL−カルニチンとの併用は、記憶走査課題に関して性能を改善することが示される。実線の四角形および実線は、基準の応答時間を示す。白丸および点線は、治療における応答時間を示す。エラーバーは、標準誤差を示す。は、個々のセットサイズに関するp<0.05を示す。図2で示されるように、それぞれのセットサイズにおいて、MCTが補給されたドリンクは、統計学的に性能を改善した(表4を参照)。
【0144】
【表4】

【0145】
実施例5:老年性記憶障害(AAMI)と診断されている被験者における、中鎖トリグリセリドで治療した認知機能の改善
老年性記憶障害に関する、中鎖トリグリセリド(ケタシンTM)の、プラセボ対照無作為二重盲検、パラレルグループを用いた多重中心設計の研究を行った。
【0146】
研究の概説
この研究に、AAMIを示すと診断された159人の外来患者を参加させた。50〜85歳の62人の男性(62)、および、97人の女性(97)被験者を参加させた。平均年齢は、65歳であった。
【0147】
研究をスクリーニングする尺度
以下の検査および評価尺度を、AAMIを示す被験者を選択し、認知症または軽度認知機能障害(MCI)を示す被験者を排除するためのスクリーニングの尺度として用いた。
【0148】
記憶評価に関する診療所の質問事項(MAC−Q)
これは、成人早期から、日常生活の重要な課題を行う場合に被験者が記憶障害を経験した程度を5段階の尺度で評価するために被験者が尋ねられる5種の記憶に関する質問事項である。
【0149】
老人性うつ病尺度(Geriatric Depression Scale;GPS)
この尺度は30の質問(例えば、あなたは、基本的にあなたの人生に満足していますか?)からなり、被験者は、これらの質問のそれぞれに対して「はい」または「いいえ」でチェックする。スコアが11またはそれより高いと、うつ病の特徴を示す。
【0150】
ミニメンタルステート検査(MMSE)
これは、認知症を示す被験者を認識するための恐らく最も広く用いられている簡単な手段である。認知症を示す被験者は、方向に関する質問(例えば、あなたは今どこにいますか?)に答え、一連の単純な認知的作業を行うように要求される。
【0151】
ウェクスラー記憶検査(WMS−R)−論理的記憶下位検査I
これは、広く用いられているスクリーニングの尺度であり、被験者が短い物語を聞いた直後に、それを逐語的に想起することを要求される。スコアが19〜11(両端のスコアを含む)の場合、その個体はこの研究への参加が認められる。このような場合、または、個体のスコアが10またはそれより低い場合、以下の2つの検査は施されない。
【0152】
ウェクスラー記憶検査(WMS−R)−単語対連合検査I
この検査において、被験者に8個の単語のリストを読ませた。これらの単語のうちいくつかは、互いに関連を有する「簡単」なものであり(例えば、赤ちゃん−泣く)、その他の単語は、より難解であるため(例えば、キャベツ−ペン)、関連付けが「難しい」。8種の対を読ませた後、各対における最初の単語を異なる順番で読ませ、被験者は、関連した単語を示すよう要求された。この試験手順を3回続け、「簡単」な関連づけと「難しい」関連づけとは、別々にスコア化した。「難しい」関連づけに関して6またはそれ未満のスコアは、参加が認められる可能性がある被験者とみなされた。このような場合、以下の検査は施されなかった。
【0153】
ウェクスラー記憶検査(WMS−R)−視覚性対連合検査I
これは、上述の検査の視覚に関する類似の検査である。この場合において、被験者に、6種の抽象的な線画が示され、それぞれを異なる色と対応させた後、各図と関連する適切な色を示すよう要求された。単語対連合検査と同様に、試験手順を3回続けた。12またはそれ未満のスコアは、この研究に参加が認められる被験者とみなされた。
【0154】
この研究は、試験対象/除外基準に基づいて、被験者がこの研究に適格かどうかを決定するためのスクリーニングのための通院と名付けられた。被験者が試験対象患者基準を満しており、除外基準に基づき除外されなかった場合、その被験者は、スクリーニングのための通院の21日以内に、全ての検査における結果判定として役立つ基準の評価のために診療所で観察された(通院2)。基準の評価の後、被験者に、1日20gmのケタシンTM、または、それに対応するプラセボのいずれかを35日与え、30日後(±3日)に経過観察のための通院を予定した(通院3)。通院3において、全ての結果判定を再度実施し、あらゆる有害反応を記録した。この研究の残りの日程で、ケタシンTM投与量を1日40gmに増加させた。30日(±3)のインターバルで通院4および5を続け、いずれの場合も全ての結果判定を実施し、有害反応を記録した。通院5で治療を終了させた。通院5の14日後(±3)に通院6を行わせ、全ての結果判定を実施した。
【0155】
この研究機関における評価を6回、すなわちスクリーニング時、基準時、および、基準の30、60、90および104日後に行うように計画した。診療所は、午前中に、診療所で投与前の血液サンプルをとった後、被験者にそれらの1日用量(基準、30、60および90日目)を投与することを計画した。
【0156】
投与の概説
上記プロトコールの二重盲検期間中に、79人の被験者にケタシンTMを投与し、75人の被験者にプラセボを投与した。ケタシンは、50%の中鎖トリグリセリド(MCT)、および、50%のコーンスターチからなる流動性の粉末である。この中鎖トリグリセリドは、約50%のC8および50%のC10個の炭素鎖で構成される。それゆえに、20グラムの用量のケタシンは、10グラムの用量のMCTを送達し、40グラムの用量は、20グラムの用量のMCTを送達した。
【0157】
プラセボは、長鎖トリグリセリド(LCT)、および、タンパク質の等カロリーの混合物とした。LCTは、センテニアル(Centennial)IX(ディール社(Diehl Inc.,オハイオ州)から入手し、これは、モノおよびジグリセリドで乳化したダイズ油で構成される。タンパク質源は、乳清タンパク質分離物である(ダビスコ社(Davisco Inc.),エデンプレイリー,ミネソタ州)。プラセボの栄養プロファイルは、60%のタンパク質、31%の脂肪、および、9%の炭水化物である。
【0158】
試験化合物は、最初の30日間(30)の治療の間、20gmのケタシンTM、または、それに対応するコップ1杯の液状(すなわち好ましくはエンシュアーTM;約8オンス)QD中で混合したプラセボ粉末であった。31日目に、各被験者に40gmのケタシンTMまたはプラセボQDを与え、90日にわたり継続した。午前中の朝食の際に所定用量のQDを投与し、ただし、診療所に通院する日(基準、30、60および90日目)は投与せず、被験者に通院前に一晩断食させて、診療所で試験のための用量を投与された。診療所に通院する日に、試験化合物を、低血糖ドリンク(すなわち水、または、好ましくはアトキンズ・アドバンテージ(Atkins AdvantageTM)のすぐに飲めるタイプのシェイク)と混合した。
【0159】
遺伝子型解析
この研究において被験者は、アポリポタンパク質E遺伝子のコード領域における対立遺伝子変異に関する遺伝子型解析に承諾するよう要求された。アポリポタンパク質E遺伝子における対立遺伝子変異体は、アルツハイマー病に関する既知の危険因子であり、治療の有効性に影響を与える可能性がある。
【0160】
有効性の尺度
有効性の結果には、以下が挙げられる:
ファースト−ラストネーム連想検査(First−Last Names Association Test;FLN(Youngjohn,J.R.等,First−Last Names and the Grocery List Selective Reminding Test:two computerized measures of everyday verbal learning,Arch Clin Neuropsychol,1991,6:287〜300))−即時および遅延再生
この心理学的なバッテリーによる検査において、被験者に、コンピューターのスクリーン上ではひとつのように見えるファーストおよびラストネームの一連の6対を示した。被験者は、各対を見えたまま読むように要求された。最後の対が現れた後、それぞれのラストネームを出現させ(異なる順番で)、被験者は、それに対応するファーストネームを提示するよう要求された。この学習試験手順を3回繰り返し、その30分後、遅延再生試験を行った。FLNは、スクリーニング時、基準(通院2)、および、治療30日目(通院3)、60日目(通院4)、90日目(通院5)、および、104日目(通院6)に被験者に施された。
【0161】
血清ケトン体レベル
中鎖トリグリセリドを用いた治療の後に、血清ケトン体レベルが高くなった。投与前、および、投与後2時間の両方において血清中に存在するベータ−ヒドロキシ酪酸塩のレベルを決定することによって、ケトン体レベルを酵素的に測定した。表5を参照。
【0162】
【表5】

【0163】
結果
FLN TC1
90日目において、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4+被験者(n=17)のFLN即時再生課題試験は、基準から10.89525ポイント改善されたが、プラセボを摂取した被験者(n=18)は、平均して−0.318の低下を示した(2ウェイのANOVAを用いた処理、および、ApoE4+条件、p値=0.0012)。
【0164】
104日目において、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4+被験者(n=17)のFLN即時再生課題試験は、基準から10.9412ポイント改善されたが、プラセボを摂取した被験者(n=18)は、平均して0.0556の低下を示した(2ウェイのANOVAを用いた処理、および、ApoE4状態、p値=0.0096)。
【0165】
全ての研究のための通院を通して、FLN即時再生課題試験1において、年齢と基準からの変化との間に、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4(−)被験者(n=47)において有意な相関がみられた(r2 0.03473、p値=0.0093)。それに対して、FLN即時再生課題試験1において、年齢と基準からの変化との間に、プラセボ群におけるApoE4(−)被験者(n=45)は有意な相関がみられなかった(r2 0.009808、p値=0.1811)。
【0166】
全ての研究のための通院を通して、人種が「黒人」と同定された被験者において有意差はみられなかった。FLN即時再生課題試験において、中鎖トリグリセリドを摂取した黒人の被験者(n=2)は、平均して0.75ポイントの改善を示したが、それらのプラセボ群(n=4)は、平均して−0.25ポイントの低下を示した(人種が黒色の場合のANOVAを用いた処理、p値=0.0257)。
【0167】
90日目において、人種が「黒人」と同定された被験者において有意差はみられなかった。FLN即時再生課題試験1において、中鎖トリグリセリドを摂取した黒人の被験者(n=2)は、平均して1ポイントの改善を示したが、それらのプラセボ群(n=4)は、平均して−0.5ポイントの低下を示した(人種が黒色の場合のANOVAを用いた処理、p値=0.0257)。
【0168】
90日目において、アポリポタンパク質E遺伝子型4/3を示す被験者において有意差はみられなかった。中鎖トリグリセリドを摂取した4/3の被験者(n=13)は、FLN即時再生課題試験1において平均して0.76923ポイントの改善を示したが、プラセボ群における遺伝子型4/3の被験者(n=16)は、平均して−0.1875ポイントの低下を示した(4/3遺伝子型の場合のANOVAを用いた処理、p値=0.0158)。
【0169】
FLN TC2
全ての研究のための通院を通して、FLN即時再生課題試験2において、年齢と基準からの変化との間に、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4(−)被験者(n=47)において有意な相関がみられた(r2 0.024089、p値0.0307)。それに対して、FLN即時再生課題試験2において、年齢と基準からの変化との間に、プラセボ群におけるApoE4(−)被験者(n=45)では有意な相関がみられなかった(r2 0.000267、p値=0.8258)。
【0170】
全ての研究のための通院を通して、FLN即時再生課題試験2において、年齢と基準からの変化との間に、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4(+)被験者(n=17)において有意な相関がみられた(r2 0.080484、p値=0.0173)。それに対して、FLN即時再生課題試験2において、年齢と基準からの変化との間に、プラセボ群におけるApoE4(+)被験者(n=18)では有意な相関がみられなかった(r2 0.012599、p値=0.3479)。
【0171】
30日目において、FLN即時再生課題試験2において、年齢と基準からの変化との間に、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4(+)被験者(n=17)において有意な相関がみられた(r2 0.336024、p値=0.0147)。それに対して、FLN即時再生課題試験2において、30日目でも、年齢と基準からの変化との間に、プラセボ群におけるApoE4(+)被験者(n=18)は有意な相関がみられなかった(r2 0.000087、p値=0.9707)。
【0172】
被験者に研究のための薬物療法を施した全ての研究のための通院を通して、FLN即時再生課題試験2において、年齢と基準からの変化との間に、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4(+)被験者(n=17)において有意な相関がみられた(r2 0.082066、p値=0.0415)。それに対して、FLN即時再生課題試験2において、年齢と基準からの変化との間に、プラセボ群におけるApoE4(+)被験者(n=18)は有意な相関がみられなかった(r2 0.010056、p値=0.4706)。
【0173】
全ての研究のための通院を通して、アポリポタンパク質E遺伝子型4/2を示す被験者において有意差はみられなかった。FLN即時再生課題試験2において、中鎖トリグリセリドを摂取した4/2の被験者(n=3)は、平均して0.5ポイントの改善を示したが、プラセボ群における4/2の被験者(n=2)は、平均して−2.125ポイントの低下を示した(4/2の被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値<0.001)。
【0174】
FLN TC3
全ての研究のための通院を通して、FLN即時再生課題試験3において、年齢と基準からの変化との間に、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4(+)被験者(n=17)において有意な相関がみられた(r2 0.109441、p値=0.0052)。FLN即時再生課題試験2において、年齢と基準からの変化との間に、プラセボ群におけるApoE4(+)被験者(n=18)において有意な相関がみられなかった(r2 0.012996、p値=0.3403)。
【0175】
30日目において、FLN即時再生課題試験3において、年齢と基準からの変化との間に、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4(+)被験者(n=17)において有意な相関がみられた(r2 0.242898、p値=0.0444)。それに対して、FLN即時再生課題試験2において、30日目に、年齢と基準からの変化との間に、プラセボ群におけるApoE4(+)被験者(n=18)では有意な相関がみられなかった(r2 0.0043652、p値=0.4054)。
【0176】
全ての通院を通して、アポリポタンパク質E遺伝子型4/2を示す被験者において有意差はみられなかった。FLN即時再生課題試験3において、中鎖トリグリセリドを摂取した4/2の被験者(n=3)は、平均して1.5833ポイントの改善を示したが、プラセボ群における4/2の被験者(n=2)、−2.125ポイントの低下を示した(4/2の被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値<0.0007)。
【0177】
FLN遅延型
90日目において、FLN遅延再生課題において、中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=79)は、平均して0.5ポイントの基準からの変化で改善したが、プラセボを摂取した被験者(n=76)は、基準からの平均の変化が0.0であり改善を示さなかった(ANCOVA比較手段、治療、年齢、部位、治療*部位の相互作用、および、モデルにおける基準の共変量、p値=0.0416)。
【0178】
90日目において、FLN遅延課題において、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4被験者(N=47)は、平均して基準からの変化が0.68574ポイントの改善を示したが、プラセボを摂取した被験者(n=45)は、平均して−0.08918ポイントの低下を示した(2ウェイのANOVA、治療、および、ApoE4状態、p値=0.0124)。
【0179】
90日目において、FLN遅延課題において、ApoE3/3人の中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=37)は、基準からの変化において平均して0.8108ポイントの改善を示したが、プラセボ群における3/3の被験者(n=37)は、平均して0.1081ポイントの改善しか示さなかった(3/3の被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値=0.0393)。
【0180】
90日目において、FLN遅延課題において、中鎖トリグリセリドを摂取した女性被験者(n=46)は、基準から平均して0.667ポイントの改善を示したが、プラセボを摂取した被験者(n=51)は、FLN遅延課題において、基準から平均して−0.184ポイントの低下を示した(女性被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値=0.0068)、
全ての通院を通して、FLN遅延課題において、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4/2の被験者(n=3)は、基準からの変化において平均して1.5833ポイントの改善を示したが、そのプラセボを摂取した4/2の被験者(n=2)は、平均して−2.125ポイントの低下を示した(4/2の被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値=0.0007)。
【0181】
名前と顔の連想検査(Name−Face Association Test;NFA)−即時および遅延再生
この心理学的なバッテリーによる検査において、被験者に、個人が共通のファーストネームで自己紹介するライブビデオ発表を示した。一連の自己紹介の後に、同じ個人を異なる順番で示し、被験者にそれぞれ人の名前を示すように要求することによって再生を評価した。2回の学習試験を行い、14人の名前と顔の対が示されて、再生を評価した。30分後に遅延再生を評価した。スクリーニング時、基準(通院2)、および、治療の30日目(通院3)、60日目(通院4)、90日目(通院5)、および、104日目(通院6)に、被験者にNFAが施された。
【0182】
結果
NFA 14A
全ての研究のための通院を通して、NFA即時再生課題試験Aにおいて、中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=79)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.013446、p値=0.0364)。それに対して、NFA即時再生課題試験Aにおいて、プラセボ群の被験者(n=76)において、年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.0.000005、p値=0.9693)。
【0183】
全ての研究のための通院を通して、NFA即時再生課題試験Aにおいて、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4被験者(n=47)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.033094、p値=0.0111)。それに対して、NFA即時再生課題試験Aにおいて、プラセボ群の被験者(n=45)において、年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.005132、p値=0.3339)。
【0184】
NFA 14B
全ての研究のための通院を通して、NFA即時再生課題試験Bにおいて、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4被験者(n=47)は、平均して0.639ポイントの改善を示したが、プラセボを摂取した被験者(n=45)は、平均して−0.136ポイントの低下を示した(ApoE4被験者の場合のANOVAを用いた処理、p=0.0048)。
【0185】
30日目において、NFA即時再生課題試験Bにおいて、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4被験者(n=47)は、平均して0.40426ポイントの改善を示したが、プラセボを摂取した被験者(n=45)は、平均して−0.8ポイントの低下を示した(ApoE4被験者の場合のANOVAを用いた処理、p=0.0225)。
【0186】
90日目において、NFA即時再生課題試験Bにおいて、中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=79)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.051901、p値=0.0435)。それに対して、NFA即時再生課題試験Bにおいて、プラセボ群の被験者(n=75)において、年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.015814、p値=0.2791)。
【0187】
全ての研究のための通院を通して、NFA即時再生課題試験Bにおいて、中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=79)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.01722、p値=0.0178)。それに対して、NFA即時再生課題試験Bにおいて、プラセボ群の被験者(n=76)において、年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.000005、p値=0.9678)。
【0188】
全ての研究のための通院を通して、NFA即時再生課題試験Bにおいて、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4被験者(n=47)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.0261、p値=0.0244)。それに対して、NFA即時再生課題試験Bにおいて、ApoE4−プラセボ(n=45)の被験者において、年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.005845、p値=03023)。
【0189】
NFA 14D
全ての研究のための通院を通して、NFA遅延再生課題において、中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=79)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.017714、p値=0.0162)。それに対して、NFA遅延再生課題において、プラセボ群の被験者(n=76)において、年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.005497、p値=0.1922)。
【0190】
テレフォン・ダイアリング検査(TDT)
これは、心理学的なバッテリーによる「作業記憶」の検査であり、この検査において個体は、課題を行うのに必要な程度だけ長く情報を記憶していなければならない。この場合において、課題は、7または10個の数字が検査スクリーンに表示されたら、電話のタッチスクリーン表示上にそれらの数字をダイアルすることである。いくつかの試験で、個体は、「うるさいシグナル」の形態の妨害に遭遇するため、数を思い出してリダイアルしなければならない。TDTは、スクリーニング時、基準(通院2)、および、治療30日目(通院3)、60日目(通院4)、90日目(通院5)、および、104日目(通院6)に被験者に施された。
【0191】
妨害なしのTDT
全ての通院を通して、中鎖トリグリセリドを摂取し、6年の教育を受けた被験者において有意差はみられなかった。TDTにおいて、妨害試験を行わない場合、中鎖トリグリセリドを摂取した6年の教育を受けた被験者(n=8)は、平均して0.37966ポイントの改善を示したが、6年の教育を受けたプラセボを摂取した被験者(n=4)は、−0.04197ポイントの低下を示した(4/2の被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値<0.0314)。
【0192】
妨害前のTDT
全ての通院を通して、TDTにおいて、ApoE4+中鎖トリグリセリドを摂取した被験者において、妨害試験の前に年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた。TDTにおいて、妨害試験の前に、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4+被験者(n=17)において、年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.068747、p値=0.0283)。それに対して、プラセボ群において(n=18)、ApoE4+被験者において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.006418、p値=0.5035)。
【0193】
全ての通院を通して、TDTにおいて、妨害試験の前に、「白人」と同定された中鎖トリグリセリドを摂取した被験者において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた。TDTにおいて、妨害試験の前に、白人の中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=72)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.015959、p値=0.0303)。それに対して、プラセボ群における白色の被験者(n=69)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.000374、p値=0.7496)。
【0194】
全ての通院を通して、TDTにおいて、妨害試験の前に、「白人」と同定され中鎖トリグリセリドを摂取した男性被験者において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた。TDTにおいて、妨害試験の前に、中鎖トリグリセリドを摂取した白人男性被験者(n=35)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.03163、p値=0.0406)。それに対して、プラセボ群における白人男性被験者(n=27)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.007459、p値=0.3978)。
【0195】
全ての通院を通して、TDTにおいて、妨害試験の前に、アポリポタンパク質E遺伝子型3/3で中鎖トリグリセリドを摂取した男性被験者において、年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた。TDTにおいて、妨害試験の前に、3/3人の男性中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=15)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.03163、p値=0.0406)。それに対して、プラセボ群における白人男性被験者(n=11)年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.007459、p値=0.3978)。
【0196】
妨害後のTDT
全ての通院を通して、TDTにおいて、妨害試験の後に、ApoE4−の中鎖トリグリセリドを摂取した男性被験者において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた。TDTにおいて、妨害試験の前に、ApoE4−男性中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=23)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.076249、p値=0.0077)。それに対して、プラセボ群におけるApoE4の男性被験者(n=14)年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.000003、p値=0.9892)。
【0197】
全ての通院を通して、ApoE3/3であり中鎖トリグリセリドを摂取した男性被験者において、TDTにおいて、妨害試験の後に、年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた。TDTにおいて、妨害試験の前に、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE3/3の男性被験者(n=23)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.13174、p値=0.0051)。それに対して、プラセボ群における男性のApoE3/3被験者(n=15)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.008633、p値=0.5486)。
【0198】
視覚的な順序の比較(Visual Sequence Comparison)(VSC;(Kay,G.,Cogscreen:Professional Manual,1995))
VSCでは、回答者に、同時に一続きの2種の英数字(一方はスクリーンの右半分、もう一方は左半分)が示される。回答者は、各対に対して、両方の配列で同じ順番で同じ文字が示されたかどうかを示すために[同じ]または[異なる]を選択する。ストリングの長さは4〜8項目の範囲で様々である。各対に関して、ストリングは、1または2項目が異なっている可能性がある。20の配列対の半分は同じ配列を示し、半分は異なる配列を示す。成果の尺度としては、応答の速度(VSC速度;VSCRTC)および精度(VSC精度;VSCACC)、ならびに、1分あたりの正確に答えた問題の数(VSC処理量;VSCPUT)が挙げられる。ほとんどの被験者がほとんど全ての問題を正答すると、処理量は、最良の有効性の尺度とみなされる。この検査が扱う精神的な機能としては、視覚的な注意力、作業記憶、言葉連続性の処理、および、視覚的な知覚速度が挙げられる。
【0199】
VSCは、スクリーニング時、基準(通院2)、および、治療30日目(通院3)、60日目(通院4)、90日目(通院5)、および、104日目(通院6)に被験者に施された。
【0200】
VSC処理量
全ての研究のための通院を通して、VSC処理量課題において、2年の教育を受けた被験者において有意差はみられなかった。VCS処理量課題において、中鎖トリグリセリドを摂取した3年の教育を受けた被験者(n=1)は、平均して3.427ポイントの改善を示したが、プラセボ群の3年の教育を受けた被験者(n=2)、は、平均して−0.346ポイントの低下を示した(3年の教育を受けた被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値=0.0234)。
【0201】
DAT二重課題(DATデュアル)
第二のDAT課題は、視覚性をモニターする課題と同時に行われる視覚的な順序の比較課題である。応答速度は、モニターする課題(DAT指標の二重の速度;DATDRTC)、および、視覚的な順序の比較課題(DAT配列の比較速度;DATSCRTC)の両方に関して測定した。精度(DAT配列の比較精度;DATSCACC)、および、1分あたりの正確に答えた問題の数(DAT配列比較処理量;DATSCPUT)は、二重の条件での配列比較課題で測定した。DAT指標の二重の尚早応答(DATDPRE)は、同時の条件下で尚早期に集中した応答の数を示す。この検査では、2つの課題を同時に示すことによって、注意分配、作業記憶、および、視覚と運動、および、視知覚速度を評価する。処理量は、最も正確な尺度とみなされる。DATデュアルは、スクリーニング時、基準(通院2)、および、治療30日目(通院3)、60日目(通院4)、90日目(通院5)、および、104日目(通院6)に被験者に施された。
【0202】
DAT処理量
全ての通院を通して、中鎖トリグリセリドを摂取した被験者におけるDAT処理量スコアにおいて、年齢と基準からの変化との間ににおいて有意な相関がみられた。DAT処理量スコアにおいて、中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=79)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.025075、p値=0.0042)。それに対して、プラセボ群の被験者(n=76)において、年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.003796、p値=0.2787)。
【0203】
全ての通院を通して、DAT処理量スコアにおいて、男性中鎖トリグリセリドを摂取した被験者において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた。DAT処理量スコアにおいて、男性中鎖トリグリセリドを摂取した被験者(n=35) において、年齢と基準からの変化との間にに有意な相関がみられた(r2 0.042436、p値=0.0042)。それに対して、プラセボ群の被験者(n=27)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.005274、p値=0.4509)。
【0204】
全ての通院を通して、DAT処理量スコアにおいて、ApoE4中鎖トリグリセリドを摂取した被験者において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた。DAT処理量スコアにおいて、中鎖トリグリセリドを摂取したApoE4被験者(n=47) において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられた(r2 0.049976、p値=0.0017)。それに対して、プラセボ群の被験者(n=45)において年齢と基準からの変化との間に有意な相関がみられなかった(r2 0.01203、p値=0.1383)。
【0205】
MTS
被験者に、紫色と黄色の四角形で構成されるチェッカー盤(4×4)を示した。チェッカー盤を視界から見えなくし、代わりに1つの同一なボードと、1つの類似したボードを置いた。被験者に、同一なボードを同定するよう要望した。応答速度、精度および効率を、測定した。成果の尺度には、応答の速度(MTS速度)、および、精度(MTS精度;MTSACC)、ならびに、正確に答えた問題の数(MTS処理量;MTSPUT)が含まれる。ほとんどの被験者がほとんど全ての問題を正答すると、処理量は、最良の有効性の尺度とみなされる。この検査が扱う精神的な機能としては、視覚的な注意力、作業記憶、言葉連続性の処理、および、視覚的な知覚速度が挙げられる。MTSは、スクリーニング時、基準(通院2)、および、治療30日目(通院3)、60日目(通院4)、90日目(通院5)、および、104日目(通院6)に被験者に施された。
【0206】
90日目において、MTS処理量課題において、MTS処理量課題において、「黒人」と同定された被験者において有意差はみられなかった。中鎖トリグリセリドを摂取した黒人の被験者(n=2)は、平均して15,47ポイントの改善を示したが、プラセボ群における黒色の被験者(n=4)、は、平均して3.28ポイントの改善しか示さなかった(黒人の被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値=0.0125)。
【0207】
全ての研究のための通院を通して、MTS処理量課題において、3年の教育を受けた被験者において有意差はみられなかった。MTS処理量課題において、中鎖トリグリセリドを摂取した3年の教育を受けた被験者(n=2)は、平均して12.46ポイントの改善を示したが、プラセボ群の3年の教育を受けた被験者(n=1)は、平均して3.9ポイントの改善しか示さなかった(3年の教育を受けた被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値=0.0216)。
【0208】
全ての研究のための通院を通して、MTS処理量課題において、6年の教育を受けた被験者において有意差はみられなかった。MTS処理量課題において、中鎖トリグリセリドを摂取した6年の教育を受けた被験者(n=22)は、平均して2.99ポイントの改善を示したが、プラセボ群の6年の教育を受けた被験者(n=16)、は、平均して0.602ポイントの改善しか示さなかった(6年の教育を受けた被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値=0.0313)。
【0209】
全ての研究のための通院を通して、MTS処理量課題において、ApoE4の7年の教育を受けた被験者において有意差はみられなかった。MTS処理量課題において、ApoE中鎖トリグリセリドを摂取した47年の教育を受けた被験者(n=5)は、平均して4.879ポイントの改善を示したが、プラセボ群の6年の教育を受けた被験者(n=2)、は、平均して−6.713ポイントの低下を示した(6年の教育を受けた被験者の場合のANOVAを用いた処理、p値<0.001)。
【0210】
結論
本発明の実施例3、4および5から、中鎖トリグリセリドは、高齢の個体群における記憶、注意力および反応時間の尺度を改善するという新規の発見が開示される。この個体群には認知症の疾患がまったく含まれず、老年性記憶障害(AAMI)を有すると分類される。AAMIは、自然な老化の経過の間に発生するとみなされている。この研究における個体群の平均年齢は65.0歳であった。最低年齢は50歳であり、最高年齢は83歳であった。本発明は、10〜20グラムの中鎖トリグリセリドを1日1回投与する治療は、脳機能のいくつもの尺度を改善するのに十分であるという驚くべき発見を開示する。ファースト−ラストネーム(FLN)課題、および、名前と顔の連想(NFA)課題のような記憶課題において改善が見出された。また、注意力に関する二重課題(DAT)のような注意力に関する課題、および、見本合わせ(MTS)課題のような視覚処理の尺度においても改善が見出された。これらの結果をまとめると、高齢者の脳に追加のエネルギーが蓄えられていると、様々な認知的な活動が改善されることがわかる。
【0211】
実施例6:調合物
繊維質の栄養飲料を含むブースト(BoostTM)(ミード・ジョンソン・ニュートリショナルズ(Mead Johnson Nutritionals))、および、エンシュアーTMのような類似製品は、以下の一般的な形態および成分を有する。量は、提供が計画されている8液量オンス(一日所要量の20〜25%)の容器1つあたりの量である。以下の調合物を、老年性記憶障害を示す被験者で使用するために設定することが極めて有益であると予想される。
【0212】
カロリー、250kcal
脂肪由来のカロリー、70kcal
タンパク質、11g
脂肪、8g
飽和脂肪、1.5g
炭水化物、33g
食物繊維、3g
糖類、16g
水、200g
ビタミンA、830IU
ビタミンD、100IU
ビタミンE、5IU
ビタミンK、23mcg
ビタミンC、30mg
葉酸、100mcg
チアミン、0.37mg
リボフラビン、0.43mg
ナイアシン、5mg
ビタミンB6、0.5mg
ビタミンB12、1.5mcg
ビオチン、75mg
パントテン酸、2.5mg
カルシウム、200mg
リン、167mg
ヨウ素、25mug
鉄、3mg
マグネシウム、67mg
銅、0.33mg
亜鉛、3.3mg
マンガン、0.42mg
塩化物、330mg
カリウム、330mg
ナトリウム、170mg。
【0213】
本発明は、上記配合に、約1〜80グラムの中鎖トリグリセリド、および、約10〜2000mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物を説明する。または、より好ましくは、5〜50グラムの中鎖トリグリセリド、および、約50〜1000mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物である。または、より好ましくは、10〜30グラムの中鎖トリグリセリド、および、約100〜500mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物である。
【0214】
実施例7:調合物
ブーストTM高タンパク質粉末(ミード・ジョンソン・ニュートリショナルズ)、または、類似製品は、スキムミルクまたは水と混合することができる高いタンパク質低い脂肪の栄養補給粉末である。約54gの上記粉末は、8液量オンス(fl.oz)の水と混合することができ、これは、ほとんどの必須ビタミンおよび無機質のUS RDAの少なくとも25%を200カロリーで提供すると言われている。これは実質的に脂肪を含まない。スキムミルクと混合した場合、その混合物は、約290カロリー、および、ほとんどの必須ビタミンおよび無機質のUS RDAの約33%を提供する。以下の調合物を、老年性記憶障害を示す被験者で使用するために設定することが極めて有益であると予想される。
【0215】
水との混合物は、以下を提供する:
タンパク質、13g
炭水化物、36g
糖類、35g
水、240g
ビタミンA、1290IU
ビタミンD、33IU
ビタミンE、10IU
ビタミンC、20mg
葉酸、133mcg
チアミン、0.4mg
リボフラビン、0.2mg
ナイアシン、6.8mg
ビタミンB6、0.55mg
ビタミンB12、1mcg
ビオチン、93mcg
パントテン酸、2.7mg
カルシウム、290mg
リン、250mg
ヨウ素、40mcg
鉄、6mg
マグネシウム、105mg
銅、0.7mg
亜鉛、4mg
マンガン、1mg
塩化物、220mg
カリウム、560mg
ナトリウム、189mg。
【0216】
本発明は、上記配合に、約1〜80グラムの中鎖トリグリセリド、および、約10〜2000mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物を説明する。または、より好ましくは、5〜50グラムの中鎖トリグリセリド、および、約50〜1000mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物である。または、より好ましくは、10〜30グラムの中鎖トリグリセリド、および、約100〜500mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物である。
【0217】
実施例8:調合物
ブーストTMプディング(ミード・ジョンソン)、または、類似製品は、高齢の患者、栄養不良の癌患者、および、体重コントロールが求められている人における目的とする使用に応じて、ラベルが付される。本発明の調合物は、5オンスで240カロリー、低いナトリウムおよびコレステロール量、および、ほとんどのビタミンおよび無機質に関してUS RDA必要条件の15〜20%を提供する。以下の調合物を、老年性記憶障害を示す被験者で使用するために設定することが極めて有益であると予想される。
【0218】
タンパク質、7g
脂肪、9g
飽和脂肪、1.5g
糖類、27g
水、92g
ビタミンA、750IU
ビタミンD、60IU
ビタミンE、4.5IU
ビタミンC、9mg
葉酸、60mcg
チアミン、0.23mg
リボフラビン、0.26mg
ナイアシン、3mg
ビタミンB6、300mcg
ビタミンB12、0.9mcg
ビオチン、45mcg
パントテン酸、1.5mg
カルシウム、220mg
リン、220mg
ヨウ素、23mcg
鉄、2.7mg
マグネシウム、60mg
銅、0.3mg
亜鉛、2.3mg
塩化物、200mg
カリウム、320mg
ナトリウム、120mg。
【0219】
本発明は、上記配合に、約1〜80グラムの中鎖トリグリセリド、および、約10〜2000mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物を説明する。または、より好ましくは、5〜50グラムの中鎖トリグリセリド、および、約50〜1000mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物である。または、より好ましくは、10〜30グラムの中鎖トリグリセリド、および、約100〜500mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物である。
【0220】
実施例9:調合物
様々な食事および活動レベルに応じた栄養バー(例えば、クリフ・バー社(Clif Bar,Inc.,バークリー,カリフォルニア州)製のLuna.TM)が開発されているが、認知能力に作用するものはない。このような栄養バーの例を以下に示す。パーセントは、最小の一日所要量に対する割合である。以下の調合物を、老年性記憶障害を示す被験者で使用するために設定することが極めて有益であると予想される。
【0221】
総脂肪、4g
飽和脂肪、3g
ナトリウム、50mg
カリウム、90mg
総炭水化物、26g
食物繊維、1g
糖類、15g
その他の炭水化物、10g
タンパク質、10g
ビタミンA、25%
ビタミンC、100%
カルシウム、35%
鉄、35%
ビタミンK、100%
チアミン、100%
リボフラビン、100%
ナイアシン、100%
ビタミンB6、100%
葉酸、100%
ビタミンB12、100%
ビオチン、100%
パントテン酸、100%
リン、35%
ヨウ素、35%
亜鉛、35%
セレニウム、35%
銅、35%
マンガン、35%
クロム、35%
モリブデン、35%。
【0222】
本発明は、上記配合に、約1〜80グラムの中鎖トリグリセリド、および、約10〜2000mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物を説明する。または、より好ましくは、5〜50グラムの中鎖トリグリセリド、および、約50〜1000mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物である。または、より好ましくは、10〜30グラムの中鎖トリグリセリド、および、約100〜500mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物である。
【0223】
実施例10:調合物
フレーバー付きゼラチン(例えば、JELL−OTM)の調合物は、227gで130カロリーを提供する。以下の調合物を、活動的な高齢者で使用するために設定することが極めて有益であると予想される。パーセントは、最小の一日所要量に対する割合である。
【0224】
タンパク質、2g
脂肪、0g
飽和脂肪、0g
糖類、31g
ビタミンA、6%
ビタミンC、4%
カルシウム、0%
鉄、2%
ナトリウム、75mg。
【0225】
ゼラチンの矯味矯臭薬剤としては、なかでもアンズ、ブルーベリー、ブラックチェリー、サクランボ、クランベリー、クランベリー・ラズベリー、クランベリー・イチゴ、ブドウ、レモン、ライム、マンダリンオレンジ、マンゴー、ミックスフルーツ、オレンジ、モモ、モモ・パッションフルーツ、アイランドパイナップル、ラズベリー、イチゴ、イチゴ・バナナ、イチゴ・キウイ、スイカ、ワイルドベリー、および、ワイルドストロベリーが挙げられる。
【0226】
本発明は、上記配合に、約1〜80グラムの中鎖トリグリセリド、および、約10〜2000mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物を説明する。または、より好ましくは、5〜50グラムの中鎖トリグリセリド、および、約50〜1000mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物である。または、より好ましくは、10〜30グラムの中鎖トリグリセリド、および、約100〜500mgのL−カルニチン、または、アセチル−L−カルニチンが補足された新規の調合物である。
【0227】
本明細書で引用された全ての公報および特許出願は参照により本発明に含め、それにより、それぞれ個々の公報または特許出願が、具体的かつ個々に参照により開示に含まれることとする。
【0228】
典型的な実施態様を参照して本発明を説明したが、当業者であれば当然ながら、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変化を施すことが可能であり、それらの構成要素と、それと等価なものが置換されていてもよい。加えて、具体的な状況または材料を上記の教示に適合させるために多くの改変をそれらの必須の範囲から逸脱することなく施すことが可能である。従って、本発明は、本発明を実施するために考慮された最良の形態として開示された具体的な実施態様に限定されることは目的としないが、本発明は、添付の請求項の範囲に含まれるあらゆる実施態様を含むと予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口摂取するための栄養ドリンクであって、a)D−β−ヒドロキシ酪酸塩の血中濃度を約0.1〜約5mMに高める、または、b)D−β−ヒドロキシ酪酸塩の尿排出レベルを約5mg/dL〜約160mg/dLに高めるのに十分な単位用量;L−カルニチン、複数種のビタミン;矯味矯臭薬剤、および、炭水化物源を含み:ここで、該MCTは、式:
【化1】

[式中、グリセロール主鎖にエステル結合しているR、RおよびRは、それぞれ独立して、5〜12個の炭素を含む炭素鎖を有する脂肪酸である]
で示される、上記ドリンク。
【請求項2】
、RおよびR炭素鎖の約95%より多くが、長さが8個の炭素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
その残りのR、RおよびRが、6個の炭素または10個の炭素鎖である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
、RおよびR炭素鎖の約50%が、長さが8個の炭素であり、R、RおよびR炭素鎖の約50%が、長さが約10個の炭素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
食品組成物であり、乾燥重量に基づき、約5〜50%のタンパク質、約5〜40%の脂肪、約5〜40%の炭水化物をさらに含み、含水量が約5〜20%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
乾燥重量に基づき少なくとも約1%〜約50%のMCTを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
加齢に伴う記憶障害(AAMI)の治療方法であって、AAMIを示す、または、その危険性がある哺乳動物を確認すること;および、該哺乳動物に、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を、AAMIにおいてニューロンの代謝の減少によって引き起こされる認知機能の損失を治療または予防するのに有効な量で投与することを含む、上記治療方法。
【請求項8】
前記ケトン体濃度を高めることができる化合物が、ケトン体への代謝前駆体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ケトン体への代謝前駆体が、以下からなる群より選択される、請求項8に記載の方法:
(a)以下の式で示されるケトン体のポリエステル:
【化2】

[式中nは、0〜1,000の整数である];
(b)以下の式で示される多価アルコールのエステル:
【化3】

[式中Rは、多価アルコール残基であり;n、mおよびxは、整数を示し;および、mは、x未満であるか、または、xに等しい];
(c)以下の式で示される3−ヒドロキシ酸:
【化4】

[式中Rは、水素、メチル、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、チオール、ジスルフィド、エーテル、チオールエーテル、アミン、アミド、ハロゲンから選択され、RおよびRは、独立して、水素、メチル、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキルから選択される];および、
(d)以下の式で示されるグリセロールエステル:
【化5】

[式中、基R、RおよびRからなる群のうち2または3個は、互いに独立して、アセトアセタート、アルファ−ケトプロピオン酸塩、ベータ−ヒドロキシ酪酸塩、および、アルファ−ヒドロキシプロピオン酸塩からなる群の1種またはそれより多くであり、ここで、R、RおよびRからなる群のうち2個だけが前記基のいずれかである場合、そのうちの3つめは、ヒドロキシ基、または、2〜24個の炭素原子を含む飽和または不飽和脂肪酸である残基である]。
【請求項10】
前記ケトン体濃度を高めることができる化合物が、式:
【化6】

[式中、グリセロール主鎖にエステル結合しているR、RおよびRは、それぞれ独立して、5〜12個の炭素鎖を有する脂肪酸である]
で示される中鎖トリグリセリド(MCT)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
、RおよびR炭素鎖の95%より多くが、長さが8個の炭素である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
残りのR、RおよびR炭素鎖が、6個の炭素または10個の炭素鎖である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
、RおよびR炭素鎖の約50%が、長さが8個の炭素であり、R、RおよびR炭素鎖の約50%が、長さが約10個の炭素である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、グルコースをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記ケトン体濃度を高めることができる化合物が、高ケトン血を誘発するのに有効な量で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記高ケトン血によって、ケトン体が脳内でエネルギーとして利用されるようになる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、前記哺乳動物における少なくとも1種のケトン体の循環濃度を高める、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳動物の血中で、前記β−ヒドロキシ酪酸塩の量が高められる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記β−ヒドロキシ酪酸塩の量が、投与の約2時間後に約0.1ミリモル〜約10ミリモルに高められる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記β−ヒドロキシ酪酸塩の量が、投与の約2時間後に約0.15ミリモル〜0.3ミリモルに高められる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
β−ヒドロキシ酪酸塩の尿排出レベルが、約5〜約160mg/dLである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、約0.05g/kg/日〜約10g/kg/日の用量で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、約0.1g/kg/日〜約2g/kg/日の用量で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、すぐに飲めるタイプの飲料、粉末化状の飲料調合物、ゼラチンカプセルもしくは錠剤からなる群より選択される栄養補給剤または栄養補助食品、懸濁液、非経口用の溶液、または、人間の消費用に配合された食品である、請求項7に記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳動物がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項26】
前記投与工程が、定期的に少なくとも1日1回行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、毎日の治療計画の一環として、少なくとも約1週間投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、毎日の治療計画の一環として、少なくとも約3ヶ月投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物のApoE状態を決定する追加の工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項30】
前記哺乳動物がApoE4(−)である場合、治療する哺乳動物を選択する追加の工程を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記AAMIにおいてニューロンの代謝の減少によって引き起こされる認知機能の損失の治療または予防に関する有効性は、少なくとも1種の神経心理学検査の結果によって決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項32】
前記神経心理学検査が、変化の臨床的全般的印象(Clinical Global Impression of Change;CGIC)、聴覚言語性学習検査(Rey Auditory Verbal Learning Test;RAVLT)、ファースト−ラストネーム連想検査(First−Last Names Association Test;FLN)、テレフォン・ダイアリング検査(Telephone Dialing Test;TDT)、記憶を評価する臨床的自己評価尺度(Memory Assessment Clinics Self−Rating Scale;MAC−S)、記号数字のコーディング検査(Symbol Digit Coding;SDC)、SDC遅延再生課題(SDC Delayed Recall Task;DRT)、注意分配検査(Divided Attention Test;DAT)、視覚的な順序の比較(Visual Sequence Comparison;VSC)、DAT二重課題(DATデュアル)、および、老人性うつ病尺度(Geriatric Depression Scale;GDS)からなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
加齢に伴う記憶障害(AAMI)の治療方法であって:
(a)AAMIを示す健康な老年の哺乳動物の個体群を認識する工程;
(b)該個体群を、少なくとも1つの対照群、および、1またはそれより多くの検査群に分割する工程;
(c)ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を運搬するための少なくとも1種の送達システムを、個々の哺乳動物における少なくとも1種のケトン体の血中濃度を高めるのに有効な量で配合する工程;ここで、長期的に、各検査群には、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を、個々の哺乳動物における少なくとも1種のケトン体の血中濃度を高めるのに有効な量で運搬する調合物を投与すること、および、対照群には、ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物を個々の哺乳動物における少なくとも1種のケトン体の血中濃度を高めるのに有効な量で全く投与させない;
(d)対照群および検査群における少なくとも1種の神経心理学検査の結果を比較する工程;
(e)MCTを含む組成物を運搬するための送達システムのうちどれが、少なくとも1種の神経心理学検査の結果の改善において有効であるかを決定する工程;および、
(f)老年の哺乳動物の個体群に、工程(e)で決定された治療の基礎となる送達システムを投与することによって、AAMIを治療する工程、
を含む、上記方法。
【請求項34】
前記ケトン体濃度を高めることができる化合物を少なくとも1種含む組成物が、中鎖トリグリセリド(MCT)を含み、ここで該MCTは、式:
【化7】

[式中、グリセロール主鎖にエステル結合しているR、RおよびRは、それぞれ独立して、5〜12個の炭素を有する脂肪酸である]
で示される、請求項32に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−82716(P2013−82716A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−267035(P2012−267035)
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2009−504423(P2009−504423)の分割
【原出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(502398171)アクセラ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】