説明

動体視力改善剤

本発明は、動体視力を効果的に改善することができる動体視力改善剤を提供することを目的とするものである。 動体視力改善剤の有効成分として、バコパ・モニエラ抽出物及び/又はグリセロリン脂質を使用し、該動体視力改善剤を食品や医薬品として提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動体視力を効果的に改善することができる動体視力改善剤に関する。また、本発明は、動体視力を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動体視力は、視覚的に動く対象を認識する能力であり、車の運転等の日常生活において不可欠な能力である。この動体視力は競技技能と関連性があると言われており、競技レベルが高く、優れたパフォーマンスを発揮するトップアスリートは、動体視力がよいことが知られている。また、動体視力は、知的機能の指標である迷路解答速度の増加に正相関することが報告されており、動体視力は知的機能とも関連していることが予想される。この動体視力は、静止視力に比べて加齢による低下が著しく、40歳以降は静止視力との差が加齢に伴い広がることが知られている。
【0003】
動体視力は、遠近運動を認識する動体視力(KVA;Kinetic visual acuity)と、平行運動を認識する動体視力(DVA;Dynamic visual acuity)に大別される。KVAとDVAは、大脳皮質の異なるニューロンが別々に認知しており、両者には相関がないといわれている。そのため、動体視力を改善するには、KVAとDVAの双方の点において、改善効果を奏することが有効である。
【0004】
従来、動体視力を改善する成分として、ホワートルベリーエキスやドコサヘキサエン酸(DHA)等が報告されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。しかしながら、これらの成分についてはあくまでKVAに対する改善作用が知られているに過ぎず、DVAに効果を有する成分は未だ知られていない。また、動体視力低下を抑制する成分については、KVAとDVAの双方で検討した例はない。
【0005】
ところで、これまでに、ホスファチジルセリン等のリン脂質や、バコパモニエラの抽出物又はバコサイドについては、学習や記憶能力を亢進させる作用が報告されているが、動体視力に対して如何なる作用を及ぼすかについては一切知られていない。
【非特許文献1】沢木啓祐等、「DHA摂取がスポーツ選手の動体視力に及ぼす影響」、KISO TO RINSHO 31(7):2667−2673、1997年
【非特許文献2】小出良平等、「視機能に及ぼすホワートルベリーエキスの効果」、あたらしい眼科11(1):117−121、1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、動体視力を効果的に改善することができる動体視力改善剤を提供することである。より具体的には、本発明は、KVAとDVAの双方を改善することにより、効果的に動体視力の増強乃至低下抑制をする動体視力改善剤を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、動体視力を改善する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質は、KVAとDVAの双方を改善でき、動体視力の増強乃至低下抑制において優れた作用を発揮することを見出した。本発明はかかる知見に基づいて、更に検討を重ねて開発されたものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる動体視力改善剤である:
項1.バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種を有効成分とする動体視力改善剤。
項2.バコパ・モニエラ抽出物が、水、炭素数1〜5の低級アルコール、又は該アルコールと水の混合液の抽出物である、項1に記載の動体視力改善剤。
項3.バコサイドを有効成分とする、動体視力改善剤。
項4.グリセロリン脂質が、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、アシル化ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール及びジホスファチジルグリセロールよりなる群から選択される少なくとも1種のリン脂質である、項1に記載の動体視力改善剤。
項5.リン脂質がホスファチジルセリンである、項1に記載の動体視力改善剤。
項6.動体視力増強剤又は動体視力低下抑制剤として使用される、項1乃至5のいずれかに記載の動体視力改善剤。
項7.動体視力改善剤が、動体視力改善用の食品組成物である、項1乃至5のいずれかに記載の動体視力改善剤。
項8.動体視力改善剤が、動体視力改善用の医薬組成物である、項1乃至5のいずれかに記載の動体視力改善剤。
【0009】
また、本発明は、下記に掲げる動体視力改善方法を提供するものである:
項9.バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種の有効量を、動態視力の改善が望まれる患者に摂取させることを特徴とする、動体視力の改善方法。
項10.バコパ・モニエラ抽出物が、水、炭素数1〜5の低級アルコール、又は該アルコールと水の混合液の抽出物である、項9に記載の改善方法。
項11.バコサイドの有効量を、動態視力の改善が望まれる患者に摂取させることを徴とする、動体視力の改善方法。
項12.グリセロリン脂質が、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、アシル化ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール及びジホスファチジルグリセロールよりなる群から選択される少なくとも1種のリン脂質である、項9に記載の動体視力改善剤。
項13.項1乃至7のいずれかに記載の動体視力改善剤を、動態視力の改善が望まれる患者に摂取させる、項9に記載の改善方法。
【0010】
更に、本発明は、下記態様の使用である:
項14.バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種の、動体視力改善剤の製造のための使用。
項15.バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種の、動体視力改善用の医薬組成物の製造のための使用。
項16.バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種の、動体視力改善用の食品組成物の製造のための使用。
項17.バコサイドの動体視力改善剤の製造のための使用。
項18.バコサイドの、体視力改善用の医薬組成物の製造のための使用。
項19.バコサイドの動体視力改善用の食品組成物の製造のための使用。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[図1]実施例に示す動体視力改善効果評価試験において、製剤摂取期間中の安静時のKVAの変化値を示す図である。
[図2]実施例に示す動体視力改善効果評価試験において、製剤摂取期間中の安静時のDVAの変化値を示す図である。
[図3]実施例に示す動体視力改善効果評価試験において、迷路解答試験におけるKVAの変化値を示す図である。
[図4]実施例に示す動体視力改善効果評価試験において、迷路解答試験におけるDVAの変化値を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.動体視力改善剤
本発明の動体視力改善剤は、有効成分として、バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される成分を使用するものである。
バコパ・モニエラ抽出物
本発明の動体視力改善剤の有効成分であるバコパ・モニエラ抽出物は、バコパ・モニエラを原料として、これを溶媒抽出して得ることができる。当該バコパ・モニエラは、野生種であってもよいし、品種改良されたものであってもよい。バコパ・モニエラの抽出部位については特に制限されない。例えば、本発明の有効成分のバコサイドとして、バコパ・モニエラの全草又は葉から得られる抽出物を使用することができる。
【0013】
上記バコパ・モニエラ抽出物は、通常用いられている植物抽出物の調製方法に従って製造することができる。具体的には、上記バコパ・モニエラ抽出物は、抽出対象物をそのまま、或いは必要に応じて乾燥、細切、破砕、圧搾又は煮沸処理したものを、冷水、温水、熱水等の水、若しくは有機溶剤、あるいは水と有機溶剤の混合液で抽出することにより取得することができる。この抽出に使用される有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の単独或いは2種以上の組み合わせを挙げることができる。当該抽出溶媒としては、好ましくは水、炭素数1〜5の低級アルコール、及び該アルコールと水の混合液、特に好ましくはエタノール又はエタノールと水の混合液を挙げることができる。炭素数1〜5の低級アルコールと水の混合液を使用する場合、該混合液の総重量に対する該アルコールの含有割合としては、例えば0.01〜100重量%、好ましくは5〜55重量%、更に好ましくは45〜55重量%となる割合を挙げることができる。
【0014】
本発明の動体視力改善剤の有効成分であるバコパ・モニエラ抽出物には、主成分として下記構造式で示されるバコサイド(化1にはバコサイドAを示し、化2にはバコサイドBを示す)が含有されており、該バコサイトそのものを動体視力改善剤の有効成分とすることもできる。本発明で使用するバコサイドは、バコサイドA(Bacoside A:Levorotory)及びバコサイドB(Bacoside B:Dextrorotatory)の別を問わない。本発明で使用するバコサイドは、バコサイドA及びバコサイドBのいずれか一方であってもよいし、また、これらが混在するものであってもよい。
【0015】

【0016】

【0017】
グリセロリン脂質
また、本発明の動体視力改善剤の有効成分であるグリセロリン脂質としては、食品衛生上又は薬学的に許容されるものであれば、特に制限されない。当該グリセロリン脂質として、具体的には、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、アシル化ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール及びジホスファチジルグリセロール等が例示される。これらの中で、好ましくは、ホスファチジルセリンである。
【0018】
本発明に使用されるグリセロリン脂質の由来についても特に制限されず、植物由来及び動物由来のいずれのものを使用してもよい。例えば、ホスファチジルセリンの場合であれば、大豆、魚、獣脳、獣肉、卵、乳製品等に由来するものを使用することができる。
【0019】
当該グリセロリン脂質の構成脂肪酸は、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、当該グリセロリン脂質の構成脂肪酸の一例として、炭素数5〜30の飽和又は不飽和脂肪酸を挙げることができる。当該脂肪酸として、具体的には、ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,ベヘニル酸,オレイン酸,リノール酸,リノレン酸等を例示できる。
【0020】
上記グリセロリン脂質は、1種単独で使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明の動体視力改善剤には、上記バコパ・モニエラ抽出物、バコサイド及びグリセロリン脂質の中からいずれか1種を単独で使用してもよいし、これらの中から2種以上の有効成分を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の動体視力改善剤は、遠近運動を認識する動体視力(KVA)と共に、平行運動を認識する動体視力(DVA)を改善する作用を発揮でき、これによって動体視力を増強する作用及び動体視力の低下を抑制する効果が奏される。従って、本発明の動体視力改善剤は、動体視力増強剤又は動体視力低下抑制剤として使用することができる。
【0023】
本発明の動体視力改善剤は、経口摂取される形態で、即ち食品や医薬品として使用される。換言すれば、本発明の動体視力改善剤は、動体視力改善用、動体視力増強用、又は動体視力低下抑制用の食品組成物や医薬組成物として提供される。
以下、本発明の動体視力改善剤の一形態である食品組成物及び医薬組成物について、説明する。
【0024】
食品組成物
食品分野では、本発明の動体視力改善剤は、上記有効成分を含み、体視力改善効果を奏する食品組成物として提供される。即ち、本発明は、食品の分野において、動体視力改善用、動体視力増強用、又は動体視力低下抑制用と表示された食品組成物を提供するものである。当該食品組成物としては、一般の食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品等を挙げることができる。より具体的には、飲料(炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、アルコール飲料、果汁飲料、茶類、栄養飲料等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、菓子類(ガム、キャンディー、クッキー、グミ、ビスケット、ゼリー等)、パン、麺類、シリアル、調味料(ソース、ドレッシング等)、かき氷、アイスクリーム、冷凍食品、レトルト食品、フィルム等を例示できる。また、特定保健用食品や栄養補助食品等の場合であれば、粉末、顆粒、カプセル、トローチ、シロップ、フィルム等の形態のものであってもよい。これらの中で好適なものとして、飲料、ガム、キャンディー、グミ等を挙げることができる。
【0025】
本発明の動体視力改善剤を含有する食品組成物において、該食品組成物中の該動体視力改善剤の配合割合については、該食品組成物の種類、有効成分の種類、対象者の年齢、性別、期待される効果等に応じて、適宜設定することができる。一例として、上記食品組成物の総重量に対して、上記有効成分が総量で1〜99重量%となる割合を挙げることができる。より具体的には、動体視力改善剤の有効成分がバコパ・モニエラ抽出物又はバコサイドの場合であれば、食品組成物の総重量に対して、該食品組成物に含まれるバコサイドが例えば1〜70重量%、好ましくは2〜50重量%、更に好ましくは5〜20重量%となる割合を挙げることができる。また、動体視力改善剤の有効成分がグリセロリン脂質の場合であれば、食品組成物の総重量に対して、該グリセロリン脂質が例えば1〜70重量%、好ましくは2〜50重量%、更に好ましくは5〜20重量%となる割合を挙げることができる。
【0026】
動体視力改善剤を含有する食品組成物の摂取量については、年齢、体重、症状等により異なるが、例えば、成人1日当たりの摂取量として上記有効成分が10〜10000mgに相当する量を挙げることができる。より具体的には、動体視力改善剤の有効成分がバコパ・モニエラ抽出物又はバコサイドの場合であれば、成人1日当たりの摂取量として、摂取されるバコサイドが、好ましくは30〜1000mg、更に好ましくは50〜300mgに相当する量を挙げることができる。また、動体視力改善剤の有効成分がグリセロリン脂質の場合であれば、成人1日当たりの摂取量として、該グリセロリン脂質が、好ましくは50〜1000mg、更に好ましくは100〜500mgに相当する量を挙げることができる。
【0027】
医薬組成物
また、医薬分野では、本発明の動体視力改善剤は、上記有効成分が薬学的に許容される基材や担体と共に製剤化され、動体視力改善用の医薬組成物として提供される。当該医薬組成物には、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、湿潤化剤、緩衝剤、保存剤、香料等の薬学的に許容される添加剤を任意に配合してもよい。当該医薬組成物の形態としては、特に制限されるものではないが、一例として、フィルム剤、トローチ、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、流エキス剤等を挙げることができる。これらの中で好適なものとして、錠剤及びカプセル剤を挙げることができる。
【0028】
当該医薬組成物の投与量については、有効成分の種類、投与対象者の年齢や体重、症状、投与回数等によって異なり一律に規定することはできないが、例えば、成人1日当たりの摂取量として上記有効成分が10〜10000mgに相当する量を挙げることができる。より具体的には、動体視力改善剤の有効成分がバコパ・モニエラ抽出物又はバコサイドの場合であれば、成人1日当たりの医薬組成物の投与量として、投与されるバコサイドが、好ましくは30〜1000mg、更に好ましくは50〜300mgに相当する量を挙げることができる。また、動体視力改善剤の有効成分がグリセロリン脂質の場合であれば、成人1日当たりの医薬組成物の投与量として、該グリセロリン脂質が、好ましくは50〜1000mg、更に好ましくは100〜500mgに相当する量を挙げることができる。
【0029】
当該医薬組成物の投与回数については、有効成分の種類、投与対象者の年齢や体重、症状、該医薬組成物の1回当たりの投与量等に応じて適宜設定できる。当該医薬組成物の1日当たりの投与回数の一例として、2〜4回を挙げることができる。
【0030】
なお、当該医薬組成物における上記有効成分の配合割合については、該医薬組成物の形態や前記投与量等に応じて適宜設定することができる。
【0031】
2.動体視力の改善方法
前述するように、バコパ・モニエラ抽出物、バコサイト及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種の成分には、経口摂取されることにより動体視力を改善する作用がある。故に、本発明は、更に、バコパ・モニエラ抽出物、バコサイト及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種の有効量を、動態視力の改善が望まれる患者に摂取させることを特徴とする、動体視力の改善方法を提供する。
【0032】
当該改善方法において、使用するバコパ・モニエラ抽出物、バコサイト及びグリセロリン脂質の種類、これらの摂取有効量、1日当たりの摂取回数等については、前記動体視力改善剤の項に記載の通りである。当該改善方法は、好適には、前記動体視力改善剤を動態視力の改善が望まれる患者に摂取させることにより実施される。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下に実施例において、「PS」とはホスファチジルセリンのことを示し、「BM」とはバコパ・モニエラのことを示す。
【0034】
実施例 動体視力改善効果評価試験
以下に記載の方法に従って、PS及びBM抽出物の動体視力改善効果評価試験を行った。
<製剤の調製>
常法に従って、下記処方の製剤(実施処方例1−2、及び比較処方例1)を調製した。
【0035】
実施処方例1(PS含有ソフトカプセル製剤;1粒当たりPSを50mg含有)
配合成分 配合量(mg)
PS90PN 55.56
中鎖脂肪トリグリセライド 224.44
ミツロウ 10.00
グリセリン脂肪酸エステル 10.00
ゼラチン(被膜成分) 102.74
グリセリン(被膜成分) 35.96
二酸化チタン(被膜成分) 1.03
カラメルS−14(被膜成分) 10.27
合計 450.00mg(1粒)
* PS90PNとは、大豆由来のPSを90重量%の割合で含む製品(デグサバイオアクティブス社製(ドイツ))のことである。
【0036】
実施処方例2(BM抽出物含有ソフトカプセル製剤;1粒当たりBM抽出物を100mg含有)
配合成分 配合量(mg)
BM抽出物 100.00
中鎖脂肪トリグリセライド 180.00
ミツロウ 10.00
グリセリン脂肪酸エステル 10.00
ゼラチン(被膜成分) 102.74
グリセリン(被膜成分) 35.96
二酸化チタン(被膜成分) 1.03
カラメルS−14(被膜成分) 10.27
合計 450.00mg(1粒)
* BM抽出物とは、BMの50%含水エタノール抽出物であり、バコサイドを50重量%の割合で含んでいる製品(HILLGREEN社製(インド))のことである。
【0037】
比較処方例1(PS及びBM抽出物非含有ソフトカプセル製剤)
配合成分 配合量(mg)
中鎖脂肪トリグリセライド 280.00
ミツロウ 10.00
グリセリン脂肪酸エステル 10.00
ゼラチン(被膜成分) 102.74
グリセリン(被膜成分) 35.96
二酸化チタン(被膜成分) 1.03
カラメルS−14(被膜成分) 10.27
合計 450.00mg(1粒)
【0038】
<被験者の選択>
本試験の被験候補者に対して、同意取得後、事前検診として、視覚機能検査、血液生化学検査、血液学的検査、尿検査及び問診を行い、健康状態を確認した。その後、連続する3日間の動体視力の日間変動を確認し、裸眼又は眼鏡装着時の静止視力が0.8以上でKVAが0.4以上であり、日間変動が少ない健常成人17名を本試験の被験者として採用した。
【0039】
<製剤の投与>
被験者を実施処方例1製剤摂取群(6名)、実施処方例2製剤摂取群(6名)及び比較処方例1製剤摂取群(5名)の3群に分け、被験者に、各製剤を1日3回に分けて、食後に4粒(1日計12粒)を7週間にわたり継続摂取させた。
【0040】
<動体視力の評価>
製剤の摂取前、摂取開始1週目(摂取開始当日〜2日後)、3週目(15〜17日後)及び6週目(36〜38日後)に、安静時のKVA及びDVAを測定した。また、摂取開始7週目(37〜39日後)に、被験者に対してA4サイズのプリント用紙に印字した迷路を解答する試験を2時間行い、迷路解答開始から終了後60分までの30分毎に、KVAおよびDVAを測定して、動体視力の変動を調査した。なお、KVA及びDVAの測定は、以下の方法に従って行った。
【0041】
KVAの測定
測定機器:動体視力計AS−4D Kinetic Vision Tester(興和株式会社製)
自動測定装置:動体視力計オプションAS−4D−CB
視力値:0.1〜1.6
表示:ランドル環
視標輝度:160cd/m±16cd/m
被験者の眼へ50m先から30km/hで近づいてくるランドル環を見させ、視認しうる最も遠い距離を測定する。ランドル環の切れ目が分かった時、被験者は手元のスイッチを押し、切れ目の方向(上、下、左、右)を答える。デジタル表示された動体視力KVAの数値を記録用紙に記載し、検査成績とする。
【0042】
DVAの測定
測定機器:動体視力計HI−10Dynamic Vision Tester(興和株式会社製)
測定距離:800mm
検査用チャート:ランドル環(静止視力0.1相当)
チャート方向:上・下・右・左
チャート移動速度:15.0〜49.5(回転/分)
チャート輝度:約1350cd/m
被験者を中心として円弧上を左から右へ水平に移動するランドル環の視認し得る最も速いスピードを測定する。ランドル環は回転するごとに自動的に徐々に減速していき、ランドル環の切れ目が分かった時、被験者は手元のスイッチを押し、切れ目の方向(上、下、左、右)を答える。デジタル表示された、その時の回転数を記録用紙に記載し、検査成績とする。
【0043】
<結果>
得られた結果を図1〜4に示す。製剤摂取期間中のKVAの変化を図1に、製剤摂取期間中のDVAの変化を図2に、迷路解答試験におけるKVAの変化を図3に、並びに迷路解答試験におけるDVAの変化を図4に示す。なお、製剤摂取期間中の安静時の動体視力の変化(図1及び2)は、製剤摂取前の動体視力の値を基準として、これに対する動体視力の測定値の変化値(変化値Δ)として評価した。また、迷路解答試験における動体視力の変化(図3及び4)は、迷路解答負荷前の動体視力の値を基準として、これに対する動体視力の測定値の変化値(変化値Δ)として評価した。
【0044】
この結果、実施処方例1製剤の摂取ではKVAが有意に増強し、実施処方例2製剤の摂取ではKVA及びDVAの双方の動体視力が有意に増強されることが確認された(図1及び2)。また、実施処方例1及び2の製剤を摂取することにより、KVA及びDVAの双方の点で、動体視力の低下を抑制できることが明らかとなった(図3及び4)。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の動体視力改善剤によれば、遠近運動を認識する動体視力(KVA)のみならず平行運動を認識する動体視力(DVA)に対しても優れた改善効果を奏するので、効果的に動体視力を改善することが可能となる。
【0046】
また、本発明の動体視力改善剤は、食品や医薬品の形態で提供できるので、動体視力を改善する手段を多岐にわたり提供できるという利点がある。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種を有効成分とする動体視力改善剤。
【請求項2】
バコパ・モニエラ抽出物が、水、炭素数1〜5の低級アルコール、又は該アルコールと水の混合液の抽出物である、請求項1に記載の動体視力改善剤。
【請求項3】
バコサイドを有効成分とする、動体視力改善剤。
【請求項4】
グリセロリン脂質が、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、アシル化ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール及びジホスファチジルグリセロールよりなる群から選択される少なくとも1種のリン脂質である、請求項1に記載の動体視力改善剤。
【請求項5】
リン脂質がホスファチジルセリンである、請求項1に記載の動体視力改善剤。
【請求項6】
動体視力改善剤が、動体視力改善用の食品組成物である、請求項1に記載の動体視力改善剤。
【請求項7】
動体視力改善剤が、動体視力改善用の医薬組成物である、請求項1に記載の動体視力改善剤。
【請求項8】
バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種の有効量を、動態視力の改善が望まれる患者に摂取させることを特徴とする、動体視力の改善方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の動体視力改善剤を、動態視力の改善が望まれる患者に摂取させる、請求項8に記載の改善方法。
【請求項10】
バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種の、動体視力改善剤の製造のための使用。
【請求項11】
バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種の、動体視力改善用の医薬組成物の製造のための使用。
【請求項12】
バコパ・モニエラ抽出物及びグリセロリン脂質よりなる群から選択される少なくとも1種の、動体視力改善用の食品組成物の製造のための使用。
【請求項13】
バコサイドの動体視力改善剤の製造のための使用。

【国際公開番号】WO2005/070435
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517279(P2005−517279)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000768
【国際出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】