説明

動物用履物およびその製造方法

【課題】 動物用履物において、動物の足に対する装着性、脱落防止性、すべり防止性の
機能を合理的に具備せしめることにある。
【解決手段】 破断伸度が200%以上、100%伸長回復率が70%以上、静摩擦係数
が0.5以上である、伸縮性不織布,伸縮性フィルム,および伸縮性不織布と伸縮性フィ
ルムとの複合品の中から選ばれる基材からなる動物用履物。破断伸度が200%以上、1
00%伸長回復率が70%以上、静摩擦係数が0.5以上である、伸縮性不織布,伸縮性
フィルム,および伸縮性不織布と伸縮性フィルムとの複合品の中から選ばれる基材を2枚
重ね合わせ、溶融接着により、裁断および溶着する動物用履物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、犬や猫等の動物が使用する履物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、足を保護する目的のために、犬や猫等の四つ足動物に履かせる動物用靴として、
例えば、靴本体を、天然ゴムラテックス,PVCペースト,ウレタンエマルジョン等の浸
漬成形用液状弾性材を用いて浸漬成形することにより、犬や猫等の動物の足形に合わせて
構成した動物用靴が提案されている(特許文献1参照)。上記した手段によれば、動物の
足に合わせて構成される靴本体は、天然ゴムラテックス,PVCペースト,ウレタンエマ
ルジョン等の浸漬成形用液状弾性材を用いて浸漬成形することにより、一体で且つ継ぎ目
のない形状に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−32615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記浸漬成形した動物用の靴は、足挿入部が広いと脱落しやすく、狭い
と履かせることが困難であるという問題があった。
また、最近では室内犬でヘルニアにより足腰が弱くなり、フローリングでは滑ってしまい
、まっすぐに立てない状況が発生している。このような室内犬に対しては、毎日継続的に
滑らないような履物を使用することが必要となっているが、従来の履物ではこれらに対し
て十分な対応ができなくなっていた。また、室内犬の足のサイズは個々に違い、伸張応力
が大きい浸漬成形品では室内犬に苦痛を与えることとなる。
また、室内犬が夜間室内を歩行すると爪による歩行音が騒音になっている場合があり、こ
れらの課題を解決することが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、動物用履物において、動物の足に対する装着性、脱落防止性、すべり防
止性の機能を合理的に具備せしめることにある。
また、本発明の他の目的は、動物の足に対する装着性、脱落防止性、すべり防止性の機能
を有する動物用履物を簡易に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、破断伸度が200%以上、100%伸長回復率が70%以上、静摩擦係
数が0.5以上である、伸縮性不織布,伸縮性フィルム,および伸縮性不織布と伸縮性フ
ィルムとの複合品の中から選ばれる基材からなる動物用履物によって達成される。
【0007】
中でも、本発明の動物用履物は、上記伸縮性不織布または伸縮性フィルムがポリウレタン
樹脂からなることが好ましい。
中でも、本発明の動物用履物は、上記基材が溶融接着により溶着されていることが好まし
い。
【0008】
中でも、本発明の動物用履物には、足挿入部に切り込みを設けていることが好ましい。
【0009】
更に、本発明の動物用履物には、バンドまたは紐を付帯してなることが好ましい。
更に、本発明の動物用履物には、対となっているバンドまたは紐を2ヶ所以上付帯してな
ることが好ましい。
【0010】
更に、本発明の動物用履物には、バンドまたは紐を通すための開口部を複数個設けてな
ることが好ましい。
更に、本発明の動物用履物には、サイズ表示を付帯してなることが好ましい。
【0011】
更に、本発明の動物用履物底部に、静摩擦係数が0.5以上、厚みが0.2〜5mmで
ある底材を設けてなることが好ましい。
【0012】
また、本発明の目的は、破断伸度が200%以上、100%伸長回復率が70%以上、静
摩擦係数が0.5以上である、伸縮性不織布,伸縮性フィルム,および伸縮性不織布と伸
縮性フィルムとの複合品の中から選ばれる基材を2枚重ね合わせ、溶融接着により、裁断
および溶着する動物用履物の製造方法によって達成される。
【0013】
更に、本発明の動物用履物の製造方法において、足挿入部に切り込みを設ける場合は、
予め、基材1枚づつに切り込みとなる部分を溶断しておき、その基材を2枚重ね合わせ、
溶融接着するようにすると好適である。
【0014】
更に、本発明の動物用履物の製造方法において、基材を溶融接着する際、2枚の基材の
間に、バンドまたは紐の端部を挟み、溶着と同時に基材に付帯するようにすると好適であ
る。
【0015】
更に、本発明の動物用履物の製造方法において、基材を溶融接着する際、2枚の基材の
間に、サイズ表示の端部を挟み、溶着と同時に基材に付帯するようにすると好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の動物用履物は、破断伸度が200%以上、100%伸長回復率が70%以上、
摩擦抵抗値が0.5以上である、伸縮性不織布,伸縮性フィルムおよび伸縮性不織布と伸
縮性フィルムとの複合品の中から選ばれる基材から構成するものであるから、本発明の動
物用履物を動物の足に履かせる際に、履物の足挿入部を引き伸ばすことにより、スムース
に足先から履かせることが可能であり、動物の爪の引っ掛かりを防止して円滑に履かせる
ことができる。また、動物の足に履かせた後は、適度に収縮して動物の足に密着し、脱落
しにくい。
更に、ヘルニアにより、足腰が弱くなり、フローリングされた床では体形を保持するのが
困難であった犬に本発明の動物用履物を履かせると、滑ることがなく、自力で立ち上がる
ことができ、体形を保持することができ、また、歩行することができる。
そして、上記特性を有する基材のみを用いることで履物とすることができるので、その製
造も簡易である。
【0017】
また、本発明の動物用履物の足挿入部に切り込みを入れることにより、より履かせ易くす
ることが可能である。
本発明の動物用履物を履かせた後は、市販のテープ、包帯、ゴム等、好ましくは自着性伸
縮包帯を巻き、履物を固定することで、動物の足から履物が脱げることはない。
【0018】
また、動物用履物にバンドや紐を付帯することにより、本発明の履物を履かせた後には、
バンドや紐を結ぶこと等により、動物の足に固定することができ、より一層動物の足から
履物が脱げるようなこともない。
更に、伸縮性フィルムまたは伸縮性不織布と伸縮性フィルムとの複合品を用いたものは、
良好な防水性を有するため、動物の散歩中に、水たまり等に入っても、履物の内部に水が
浸透して動物の足が濡れてしまう心配もない。よって、動物が足に怪我をしてしまった場
合に、傷口のカバーとして有効に利用することもできる。また、履物が汚れても、簡単に
洗浄し、且つ短時間のうちに乾燥することができる。
【0019】
また、動物用履物の底部に底材を設けてなるものにおいては、上記底材により、滑り防止
性に優れると共に、底部の強度を増大せしめ、接地時における衝撃を効果的に吸収するこ
とができるので、歩行中において足に受ける衝撃力を吸収し、動物の足に加わる負荷を低
減することができる。特に、足を負傷している場合などは、傷口に加わる負担を効果的に
低減することができる。
【0020】
また、本発明の動物用履物の製造方法により、上記特性を有する基材のみを用い、溶融接
着により、簡易に動物用履物を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の動物用履物の一実施態様を示す説明図である。
【図2】本発明の動物用履物の一実施態様(足挿入部に切り込みを具備した履物)を示す説明図である。
【図3】本発明の動物用履物の一実施態様(1対のバンドを具備した履物)を示す説明図である。
【図4】本発明の動物用履物の一実施態様(バンドを通す開口部を設けた履物)を示す説明図である。
【図5】本発明の動物用履物の一実施態様(底材及びサイズ表示を具備した履物)を示す説明図である。
【図6】本発明の動物用履物の一実施態様(2対のバンドを具備した履物)を示す説明図である。
【図7】本発明の動物用履物の一実施態様(紐を通す開口部を設けた履物)を示す説明図である。
【図8】本発明の動物用履物の一実施態様(くびれを設けた履物)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の動物用履物は、破断伸度が200%以上、100%伸長回復率が70%以上、
摩擦抵抗値が0.5以上である、伸縮性不織布,伸縮性フィルム,およびこれらの複合品
のいずれかから選ばれた基材よりなるものである。
【0023】
本発明の動物用履物は、上記基材が有する弾性伸縮性により、足挿入部を大きく引き伸ば
した状態にて動物の足にはめ込むことができる。また、動物の足に履かせた後の履物は、
適度に収縮して動物の足に密着する。
また、上記基材の静摩擦係数が0.5以上であり、フローリング処理された床等において
も滑ることなく、通常の歩行ができる。
【0024】
縮性不織布としては、例えば、ポリウレタン系エラストマー樹脂や、ポリエステル系エ
ラストマー樹脂、ポリオレフィン系エラストマー樹脂等を使用したスパンボンド法やメル
トブロー法による不織布が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる不織布の平均繊維径は、50μm以下であることが好適である。50
μm以下であれば、目的とする伸度と柔軟性が得られる。
【0026】
また、不織布の目付は、好ましくは20〜300g/m、より好ましくは50〜20
0g/mである。
厚みは、好ましくは0.1〜1.2mm、より好ましくは0.2〜0.8mmである。
破断強度は、5N/25mm以上であることが好適である。
【0027】
また、本発明で用いられる伸縮性フィルムとしては、同じくポリウレタン系エラストマー
樹脂や、ポリエステル系エラストマー樹脂、ポリオレフィン系エラストマー樹脂等を使用
し、一般的なフィルム製造方法により製造されたフィルムが挙げられる。
【0028】
フィルムの目付は、好ましくは25〜260g/mである。
厚みは、好ましくは20〜200μmである。
破断強度は、5N/25mm以上であることが好適である。
【0029】
また、上記伸縮性不織布と伸縮性フィルムは、それぞれ単独で使用してよいが、両者を
ラミネート加工した複合品として用いてもよい。複合品を用いる場合には、履物としたと
き、伸縮性フィルムが外側となるようにするのがよい。
【0030】
本発明の基材となる樹脂には通常使用されている各種添加剤が含有されていてもよい。か
かる添加剤は、例えば、増粘剤、硬化剤、架橋剤、顔料、光安定剤、酸化防止剤、紫外線
吸収剤、抗菌剤、難燃剤等である。
【0031】
上記のような基材からなる動物用履物の形態としては、例えば、図1〜図8に示すよう
な形態が挙げられる。このような形態は例えば高周波ウェルダーを用いて加工する場合、
金型にて事前に形が形成されているので、それぞれの形態に合う金型を作成すれば容易に
作成可能である。
【0032】
すなわち、図1に示す動物用履物1は、2枚の基材の周縁部を溶融接着し、足挿入部が
底部より大きくなるような先細り形状に構成された形態である。このような動物用履物を
履かせた後、例えば、市販のテープ、包帯、ゴム等、特に自着性伸縮包帯で足挿入部を絞
ることで脱落防止をはかることができる。
【0033】
図2に示す動物用履物1は、2枚の基材の周縁部を溶融接着し、足挿入部が底部より大き
くなるような先細り形状に構成され、足挿入部に、足を入れやすくするための切り込みを
設けた形態である。切り込みの長さは適宜設定すればよい。また、切り込みの位置は特に
限定しないが、溶融接着部近辺に切り込みを入れることが、強度の面から好ましい。この
ような動物用履物を履かせた後、例えば、市販のテープ、包帯ゴム等、特に自着性伸縮性
包帯で足挿入部を絞ることで脱落防止をはかることができる。
【0034】
図3に示す動物用履物1は、2枚の基材の周縁部を溶融接着し、足挿入部が底部より大
きくなるような先細り形状に構成された基材2上方に1対のバンド4を具備した形態であ
る。
【0035】
本発明においては、上記のように、基材に、バンドまたは紐を付帯することが好適であ
る。
これらバンドや紐は、基材と同じ素材としてもよいし、通常バンドや紐として使用され
ている素材のものを使用してもよい。また、バンドには、その端部等に面ファスナー等を
設けると、バンドを留め易くなり、好適である。
バンドまたは紐は、1本を付帯してもよいが、2本を1対として付帯させてもよい。
このように、足挿入部を大きく開け、履かせ易くし、履かせた後は帯や紐で足挿入部を絞
ることで更に良好に脱落防止をはかることができる。
【0036】
また、図4に示す動物用履物1は、2枚の基材の周縁部を溶融接着し、足挿入部が底部
より大きくなるような先細り形状に構成された基材2上方に、バンドを通す開口部5を両
面に各2箇所設けた形態である。
このように、開口部5を設けることにより、そこに、履かせる前または履かせた後にバ
ンド等を通し、バンド等を結ぶこと等により履物の脱落防止をはかることができる。
【0037】
また、図5に示す動物用履物1は、2枚の基材の周縁部を溶融接着し、足挿入部が底部よ
り大きくなるような先細り形状に構成された基材2上方に、サイズ表示部5を付帯し、ま
た、履物1の底部に、底材7を設けてなる履物である。
【0038】
このように、動物用履物の底部に底材を設けてもよい。この場合、底材により、履物底部
の強度が増大し、接地時における衝撃を上記底材により吸収することができる。
【0039】
底材としては、静摩擦係数が0.5以上であることが必要であり、基材に用いられる樹脂
を用いた、シート状物,合成皮革もしくは発泡体、また天然皮革等が挙げられる。
静摩擦係数が基材と同様に0.5以上であると、滑り防止効果が良好に得られる。
また、底材の厚みは、0.2〜5mm、より好ましくは1〜3mmである。
厚みが上記範囲であれば、履物底部の強度を増大させ、また、接地時における衝撃を良好
に吸収することができる。
【0040】
また、図6に示す動物用履物1は、2対のバンド4を具備した動物用履物である。
また、図7に示す動物用履物1は、紐等を通す開口部5を多段にわたって設け、複数本の
紐等を使用できるようにした動物用履物である。
また、図8に示す動物用履物1は、基材2形状にくびれ部を設け、また、基材2中央部に
1対のバンド4を付帯した動物用履物である。
上記したように、本発明の動物用履物は、その形態を色々変更することができ、装着性、
脱落防止性を向上させることができる。
【0041】
上記したような動物用履物は、基材を2枚重ね合わせ、溶融接着法により裁断および溶着
することにより製造することが好適である。
溶融接着させる方法としては、高周波ウェルダーを用いる方法、超音波ミシンを用いる方
法等が挙げられる。
【0042】
また、足挿入部に切り込みを設ける場合は、例えば、以下の製造方法が好適である。すな
わち、予め、基材1枚毎に切り込みとなる部分を、高周波ウェルダー、超音波ウェルダー
等を用いて溶断しておき、その基材を2枚重ね合わせ、高周波ウェルダーか超音波ミシン
等で溶融接着し、履物の形態に裁断および溶着することにより、足挿入部に切り込みを設
けた履物を製造する。
【0043】
また、バンドや紐またはサイズ表示を基材に付帯する場合には、溶融接着する際に、基材
の間にその端部を挟み込み、基材の溶着と同時に付帯するようにすると好適である。
尚、バンドや紐またはサイズ表示を、基材の溶融接着後に、別途付帯するようにしてもよ
い。
また、開口部の付与も溶融接着時に、カッター等を用いることにより、溶着と同時に裁断
を行うようにすると好適である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
実施例の基材の評価は下記に示す方法により測定を実施した。
【0045】
不織布の平均繊維径:走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織布表面の500倍拡大
写真を撮影し、50本の繊維の直径を測定し平均値を平均繊維径とした。
【0046】
基材の目付:JIS L1906に準拠して測定した。目付は100×100mmの試
験片を採取し、重量を測定して1mあたりに換算した。
【0047】
基材の強度及び伸度:JIS L1906に準拠して測定した。幅25mm、長さ20
0mmの試験片を採取し、引張試験機(オリエンテック製)を用いて、チャック間を10
0mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/minで伸長させ、試験片が破
断した時の強度(25mm幅)及び伸度を測定した。
【0048】
基材の伸張回復率:JIS L1096に準拠して測定した。ただし、本発明における
評価は伸度100%での回復率とし、幅25mm、長さ200mmの試験片を採取し、引
張試験機(オリエンテック製)を用いて、チャック間を100mmに設定し試験片を固定
した。引張速度300mm/minで100%まで伸張させた後、クロスヘッドを伸張時
と同じ速度で元の位置に戻し、不織布にかかる応力を0とした。再び同じ速度で100%
まで伸張させ、応力負荷が再び始まる時の不織布の伸びた長さをLmmとした。伸張回復
率は次式に従って求めた。
伸張回復率(%)=((100−L)/100)×100
【0049】
基材の厚み:JIS L−1098に準じて測定した。測定器として、定圧厚さ測定器
TYPE PF−11(ラフロック社製)を用いた。
【0050】
基材の摩擦係数:JIS K−7125に準じて測定した。すなわち、試験片の長軸が試
験テーブルの長軸に一致するように、最初の試験片の右側の端を両面テープ(又は適当な
クランプ)で試験テーブルの右端に固定した。2番目の試験片の左端を両面テープで補助
板に取り付けて固定した。この補助板の質量は、5gを超えないようにした。スプリング
を通して補助板をロードセルに接続した。2番目の試験片を最初の試験片に重ね、2番目
の試験片の中央に上面にショックを与えないように静かに滑り片を置いた(著しいブロッ
キングを起こしたり、摩擦力の他の力が生じたりするような試験片に対しては、接触面積
、すなわち上部試験片の大きさは、滑り片の面積に可能な限り近づくように小さくした。
)。試験を始める前に、装置にかかる力は取り除いておいた。15秒後に試験テーブルの
運動を開始し、記録をスタートさせた。最初に得られる最大応力が静摩擦力である。

μ=Fs/Fp
μ:静摩擦係数
Fs:静摩擦力(N)
Fp:滑り片の質量によって生じる法線力(=1.96N)
【0051】
〔実施例1〕
分子量2000のポリブチレンアジペート(PBA)、4,4’−ジフェニルメタンジイ
ソシアネート(MDI)および1,4−ブタンジオール(BD)を重合比率がPBA/M
DI/BD=80/59/17.5で混合し、2軸押出機連続重合装置を用いてワンショ
ット方式で塊状重合することにより、ショアーA硬度が95の熱可塑性ポリウレタンを得
た。この熱可塑性ポリウレタンを温度80℃で24時間真空乾燥した。この熱可塑性ポリ
ウレタンの水分率をカールフィッシャー法で測定すると100PPMであった。
【0052】
この熱可塑性ポリウレタンを230℃の押出機で溶融混練し、ギアポンプで計量し、直
径0.5mmの孔を2mmピッチで一列に配したメルトブローノズルから吐出させ、ノズ
ルの1ホール当り0.15g/分の吐出条件でポリマーを押出し、ノズルの両側から吹き
出す加熱エアー(238℃、9NI/cm/分)にて細化・固化することによって、平均
繊維径が25μmのフィラメントを形成し、このフィラメントをノズルから20cm離れ
た位置にある移動コンベアネット上に吹きつけて、ポリウレタン弾性繊維不織布を得た。
この不織布の物性値は次のごとくであった。

目付:75g/m
厚み:0.29mm
破断強度:1515cN/25mm
破断伸度:400%
100%伸長回復率:90%
静摩擦係数:0.86

得られた不織布を基材に用い、高周波ウェルダーにて、図1に示すような、動物用履物を
溶融接着により作成した。また、図2に示すような動物用履物は、予め基材1枚づつ切り
込みとなる部分を溶断により作成し、その基材2枚を重ねて溶融接着した。
図1及び図2に示すような形で得られた動物用履物は、犬の足に履かせた後、幅2.5c
mの自着性伸縮包帯で巻くことにより、犬の足首に固定でき、足首にフィットさせること
ができた。また、ヘルニアを患った犬は通常ではフローリング床では歩行が困難であった
が、この動物用履物を履かせることで、通常の歩行が可能となった。
特に図2に示すような切り込みを設けた動物用履物は、犬に履かせる時に履かせやすかっ
た。
【0053】
〔実施例2〕
分子量2000のポリブチレンアジペート(PBA)、4,4’−ジフェニルメタンジイ
ソシアネート(MDI)および1,4−ブタンジオール(BD)を重合比率がPBA/M
DI/BD=80/59/17.5で混合し、2軸押出機連続重合装置を用いてワンショ
ット方式で塊状重合することにより、ショアーA硬度が95の熱可塑性ポリウレタンを得
た。この熱可塑性ポリウレタンを温度80℃で24時間真空乾燥した。この熱可塑性ポリ
ウレタンの水分率をカールフィッシャー法で測定すると100PPMであった。
【0054】
この熱可塑性ポリウレタンを230℃の押出機で溶融混練し、ギアポンプで計量し、直
径0.5mmの孔を2mmピッチで一列に配したメルトブローノズルから吐出させ、ノズ
ルの1ホール当り0.15g/分の吐出条件でポリマーを押出し、ノズルの両側から吹き
出す加熱エアー(238℃、9NI/cm/分)にて細化・固化することによって、平均
繊維径が25μmのフィラメントを形成し、このフィラメントをノズルから20cm離れ
た位置にある移動コンベアネット上に吹きつけて、ポリウレタン弾性繊維不織布を得た。
この不織布の物性値は次のごとくであった。

目付:75g/m
厚み:0.29mm
破断強度:1515cN/25mm
破断伸度:400%
100%伸長回復率:90%
静摩擦係数:0.86

得られた不織布を基材およびバンドに用い、高周波ウェルダーにて、図3に示すような動
物用履物を溶融接着により作成した。
得られた動物用履物は、履物にバンドを装着することで、脱落しないようにバンドを結び
、足首にフィットさせることができた。また、ヘルニアを患った犬は通常ではフローリン
グ床では歩行が困難であったが、この動物用履物を履かせるすることで、通常の歩行が可
能となった。
【0055】
〔実施例3〕
プロピレン・エチレン共重合体とポリプロピレン樹脂を重量比率90/10で混合して
乾燥状態でドライブレンドした。この混合ペレットを220℃の押出機で溶融混練し、ギ
アポンプで計量し、直径0.5mmの孔を2mmピッチで一列に配したメルトブローノズ
ルから吐出させ、ノズルの1ホール当たり0.3g/分の吐出条件でポリマーを押し出し
、ノズルの両側から吹き出す加熱エア(235℃)にて細化・固化することによって、平
均繊維径が22μmのフィラメントを形成し、このフィラメントをノズルから20cm離
れた位置にある移動コンベアネット上に吹き付けて、オレフィン系弾性繊維不織布を得た

この不織布の物性値は次のごとくであった。

目付:75g/m
厚み:0.39mm
破断強度:830cN/25mm
破断伸度:250%
100%伸長回復率:80%
静摩擦係数:0.70

得られた不織布を用い、超音波ミシンにて、図4に示すような動物用履物を溶融接着によ
り作成した。
得られた動物用履物は、履物の開口部に別途用意したバンドを通すことで、脱落しないよ
うにバンドを結び、足首にフィットさせることができた。また、ヘルニアを患った犬はフ
ローリング床で歩行が困難であったが、この動物用履物を履かせることで、通常の歩行が
可能となった。
【0056】
〔実施例4〕
実施例1と同様のポリウレタン弾性繊維不織布を作成し、続いて、離型紙に粘着された厚
さ30μmの乾式エステル系ポリウレタンフィルムからなる表皮層の上に、C−4010
(DIC株式会社製)100重量部、コロネートL(日本ポリウレタン工業株式会社製)
8重量部、アクセルS(DIC株式会社製)5重量部、溶剤(メチルエチルケトン/トル
エン)40重量部(20/20重量部)からなるウレタン系接着剤を55g/m塗布し
、次いで、80℃で連続乾燥して溶剤を除去し、次いで、基材層として前記の目付け75
g/mのポリウレタン弾性繊維不織布を重ね合わせ、圧着ローラーでニップして接着剤
を適度に不織布に押し込んだ後、60℃で熱処理し、最後に離型紙を剥して伸縮性複合品
を得た。得られた複合品の物性値は次のごとくであった。

目付:180g/m
厚み:0.45mm
破断強度:4410cN/25mm
破断伸度:280%
100%伸張回復率:80%
静摩擦係数:0.82

得られた複合品を用い、高周波ウェルダーにて、図5に示すような動物用履物を溶融接着
により作成した。この成形時に動物用履物の端にサイズ表示の文字を表示させるようにし
た。
更に、底材(ポリウレタン製合成皮革、静摩擦係数0.83、厚み1mm)を接着し、耐
久性及びクッション性を具備させることができた。
また、ヘルニアを患った犬はフローリング床で歩行が困難であったが、この動物用履物を
履かせることで、通常の歩行が可能となった。
【0057】
〔実施例5〕
実施例1と同様に動物用履物を作成したが、このときにベルトを図6に示すように2対
取り付けるように成形を行った。
その結果、得られた動物用履物は、動物の足首に固定するときに少しサイズが合わない場
合でも、2箇所で固定することで、脱落することがなく使用することができた。また、ヘ
ルニアを患った犬はフローリング床で歩行が困難であったが、この動物用履物を履かせる
ことで、通常の歩行が可能となった。
【符号の説明】
【0058】
1 動物用履物
2 基材
3 切り込み
4 バンド
5 開口部
6 サイズ表示部
7 底材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断伸度が200%以上、100%伸長回復率が70%以上、静摩擦係数が0.5以上で
ある、伸縮性不織布,伸縮性フィルム,および伸縮性不織布と伸縮性フィルムとの複合品
の中から選ばれる基材からなる動物用履物。
【請求項2】
伸縮性不織布または伸縮性フィルムがポリウレタン樹脂からなる請求項1記載の動物用履
物。
【請求項3】
基材が溶融接着されてなる請求項1または2記載の動物用履物。
【請求項4】
足挿入部に切り込みを設けた請求項1〜3いずれか1項記載の動物用履物。
【請求項5】
動物用履物に、バンドまたは紐を付帯してなる請求項1〜4いずれか1項に記載の動物用
履物。
【請求項6】
動物用履物に、対となっているバンドまたは紐を2ヶ所以上付帯してなる請求項1〜4い
ずれか1項に記載の動物用履物。
【請求項7】
バンドまたは紐を通すための開口部を複数個設けてなる1〜4いずれか1項に記載の動
物用履物。
【請求項8】
動物用履物に、サイズ表示を付帯してなる請求項1〜7いずれか1項に記載の動物用履物

【請求項9】
動物用履物底部に、静摩擦係数が0.5以上、厚みが0.2〜5mmである底材を設け
てなる1〜8いずれか1項に記載の動物用履物。
【請求項10】
破断伸度が200%以上、100%伸長回復率が70%以上、静摩擦係数が0.5以上で
ある、伸縮性不織布,伸縮性フィルム,および伸縮性不織布と伸縮性フィルムとの複合品
の中から選ばれる基材を2枚重ね合わせ、溶融接着により、裁断および溶着する動物用履
物の製造方法。
【請求項11】
基材を2枚重ね合わせて溶融接着する際、予め足挿入部の切り込みを溶断した基材を用
いる請求項10記載の動物用履物の製造方法。
【請求項12】
基材を溶融接着する際、2枚の基材の間に、バンドまたは紐の端部を挟み、溶着と同時
に基材に付帯するようにしてなる請求項10または11記載の動物用履物の製造方法。
【請求項13】
基材を溶融接着する際、2枚の基材の間に、サイズ表示の端部を挟み、溶着と同時に基
材に付帯するようにしてなる請求項10〜12いずれか1項に記載の動物用履物の製造方
法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−284156(P2010−284156A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47562(P2010−47562)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)