説明

化粧シート

【課題】身近にある小さく硬質なもの(コインなど)や爪などによる傷が付きにくく、また付いたとしても、目立たないような化粧シートを提供する。
【解決手段】着色熱可塑性樹脂層1の上に絵柄模様層2、透明熱可塑性樹脂層4、表面保護層5を少なくともこの順に設けてなる化粧シートにおいて、該化粧シートの表面全面に、波長が200〜500μmで振幅が10〜30μmの一様な梨地状の凹凸6を有し、前記表面保護層に6.5〜20μmのガラスビーズ7を1〜10重量部含有した化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系ボード類、無機質系ボード類、金属板等の表面に接着剤で貼り合わせて化粧板として用いる化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
前記化粧シートは、木質系ボード類、無機質系ボード類、金属板等の表面の保護、装飾等を目的として、木質板、プラスチック板等の表面に貼着して用いられている。そして、これによって得られた化粧板は、各種の建材、家具等に使用されている。
【0003】
前記化粧シートには、その最下面に着色熱可塑性樹脂層を設けることにより、木質系ボード類、無機質系ボード類、金属板等の表面を隠蔽することが出来る。
【0004】
前記化粧シートには、意匠性を付与するため所望の絵柄を施すことができる。前記絵柄としては、例えば、木目柄、レザー柄、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0005】
化粧シートは、通常、最表面に表面保護層を有する。最表面に表面保護層を設けることにより、化粧シートに耐擦傷性等を付与することができる。
【0006】
しかしながら、身近にある小さく硬質なもの(コインなど)や爪などにより、表面保護層に傷がついてしまうことがあり、表面の模様によっては特に目立つ為に著しく意匠を損ねるものとなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題点を解決する為になされたものであり、すなわちその課題とするところは、身近にある小さく硬質なもの(コインなど)や爪などによる傷が付きにくく、また付いたとしても、目立たないような化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、着色熱可塑性樹脂層の上に絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を少なくともこの順に設けてなる化粧シートにおいて、該化粧シートの表面全面に、波長が200〜500μmで振幅が10〜30μmの一様な梨地状の凹凸を有することを特徴とする化粧シートである。
【0009】
またその請求項2記載の発明は、前記表面保護層に6.5〜20μmのガラスビーズを1〜10重量部含有したことを特徴とする請求項1記載の化粧シートである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明により、化粧シート表面に梨地状の凹凸を作ることにより、表面を乱反射させシートに付いた傷を紛らわせ、外観上見苦しくない化粧シートとすることが可能となる。
【0011】
請求項2の発明により、最表層に適量、適当な大きさのガラスビーズを添加することにより傷つき難くし、またガラスビーズがシート最表層に不規則に配置されるため、化粧シート表面に傷が付いてもガラスビーズが表面に出て、梨地状の凹凸と同じように見える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【図2】本発明における化粧シートの波長と振幅を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す。図2に本発明における波長と振幅の範囲を示す。着色熱可塑性樹脂層1の上に絵柄模様層2、適宜設ける接着剤層3、透明熱可塑性樹脂層4、表面保護層5を有し、表面全面に梨地状の凹凸6が設けられてなる。また、表面保護層5には適宜ガラスビーズ7が含有されてなる。
【0014】
本発明における着色熱可塑性樹脂層1に用いる熱可塑性樹脂としては、種類は特に限定されず、例えば従来、係る化粧シート用の基材シートの素材として使用されている公知の任意の熱可塑性樹脂を使用することができる。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(以後ASとする)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(以後ABSとする)等のスチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等、またはこれらから選ばれる2種または3種以上の共重合体や混合物、複合体、積層体等を使用することができる。さらに押出し同時エンボスや押出し後にエンボスを施しても良い。
【0015】
前記着色熱可塑性樹脂層1の厚みとしては20〜200μm程度、更に好ましくは50〜150μm程度の範囲内で選ばれると印刷しやすさ、基材に貼るときにある程度形状を保持したほうがの貼りやすさの点で好適である。
【0016】
着色するときの着色剤としては、高屈折率で耐候性、隠蔽性に優れた無機顔料を使用することが望ましい。具体的には、例えば黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、バリウムイエロー、キナクリドン、オーレオリン、モリブデートオレンジ、弁柄、マルスバイオレット、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、紺青、エメラルドグリーン、ビリジアン、鉄黒、カーボンブラック等の有色顔料や、例えば酸化チタン(チタン白、チタニウムホワイト)、酸化亜鉛(亜鉛華)、塩基性炭酸鉛(鉛白)、塩基性硫酸鉛、硫化亜鉛、リトポン、チタノックス等の白色顔料等を使用することができる。また、各種充填剤、耐候性処方(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などの各種添加剤を適宜添加することも任意である。以上の樹脂をそれぞれ単独でまたは複数種混合して使用することができる。
【0017】
本発明における絵柄模様層2としては、耐候性を有する顔料インキをグラビア印刷法等によって設けられた印刷層からなるものであり、前記顔料としては、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛、酸化塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料、蛍光顔料、夜光顔料等、またはこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。また、各種充填剤、耐候性処方(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などの各種添加剤を適宜添加することも任意である。
【0018】
適宜設ける接着剤層3としては、公知の2液ウレタン樹脂接着剤等が使用可能である。乾燥後の塗布量が1〜10g/m2程度が望ましい。
【0019】
本発明における透明熱可塑性樹脂層4としては、前記着色熱可塑性樹脂層1と同様に、ポリ塩化ビニル樹脂、非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などからなる単層あるいは複数の層からなるものが用いられる。透明熱可塑性樹脂層4の厚みは、耐候性、耐熱性、巻取りのしやすさや、耐傷性等などを考慮すると70〜200μmが望ましい。
【0020】
本発明における表面保護層5としては、化粧シート表面の各種耐性を得るために設けるものであり、公知の硬化型樹脂が使用可能であり、特には紫外線硬化型樹脂が好適である。硬化型樹脂には適宜ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ガラスビーズなどを適宜添加する。表面保護層5の厚みは、耐衝撃性試験、耐キャスター性試験の復元性を考慮すると、乾燥後の塗布量で6〜15g/m2程度が好適である。
【0021】
本発明における化粧シートの表面全面には波長が200〜500μmで振幅が10〜30μmの一様な梨地状の凹凸6を設ける。図2に示すように、波長とは化粧シートの表面において隣り合った頂点間の長さあり、振幅とは化粧シート表面の凹凸の最大幅である。波長や振幅がこの範囲を超えると表面の乱反射のによる傷を紛らわせる効果が薄れ、傷が目立ち易い物となってしまう。
【0022】
本発明における表面保護層5には、適宜ガラスビーズ7を添加する。ガラスビーズ7としては公知のガラスビーズ(シリカ系、球状、屈折率約1.47)が使用可能であり、容易に且つ安価に得る事ができる。特にはその屈折率が前記表面保護層と近いものであり、内部が均質で透明度が極めて高く、真球に近くしかも表面が平滑な球状粒子が好適である。ガラスビーズ7の平均粒径と添加量は前記表面保護層5の層厚にもよるが、6.5〜20μmのガラスビーズ7を1〜10重量部含有することで、本発明の化粧シートをより傷つき難くし、またガラスビーズ7がシート最表層に不規則に配置されるため、化粧シート表面に傷が付いてもガラスビーズ7が表面に出て、梨地状の凹凸6と同じように見えるという効果が好適に発現できるものとなる。
【実施例1】
【0023】
着色熱可塑性樹脂層1として厚さ70μmのポリエチレンフィルム(リケンテクノス(株)製「FZ13317」)を使用し、その片面に絵柄模様層2としてグラビアインキ(東洋インキ製造(株)製「ラミスター」)で木目印刷をグラビア印刷機により印刷した。その後、着色熱可塑性樹脂層1の印刷を施した面とは逆の面にシリカ粉末を含有する2液ウレタン系プライマー樹脂を乾燥後の厚みが1μmとなるようにグラビア塗工した。
【0024】
前絵柄模様層2の上に接着剤層3として2液ウレタン樹脂接着剤(東洋モートン(株)製「TM−593」)を乾燥後の塗布量が10g/m2となるよう塗工し、その上に透明熱可塑性樹脂層4としてポリプロピレンを厚さ90μmになるようラミネートして設け、透明熱可塑性樹脂層4の上から平均波長300μm、振幅20μmとなるように型ロールにより梨地状の凹凸6の型をつけた。冷却乾燥硬化後、その上に表面保護層5として、平均粒径6.5μmのガラスビーズを6重量%含んだ紫外線硬化型樹脂を5μmコートして、紫外線を照射、硬化させて化粧シートを得た。
【0025】
<比較例1>
前記梨地状の凹凸の波長を800μmにした以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0026】
<比較例2>
前記梨地状の凹凸の振幅を40μmにした以外は実施例1と同様にして化粧材を得た。
【0027】
<性能評価>
木質系基材として厚み12mmのラワン合板を用いこの表面に接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(BA−10/BA−11B=100:2.5))をウェット状態で100g/m2に塗工したあと、実施例1、比較例1、2の化粧シートを貼り合わせ72時間養生し、化粧材を得た。
【0028】
<耐傷つき性試験>
10円硬化で上記床材サンプルの表面を2kgの荷重をかけつつ引掻いた。試験後、化粧材表面の状態を真上、斜光で観察し、また表面を指でなぞり、実際に化粧材表面に傷がついているかどうかを確認した。
【0029】
<摺動性試験>
化粧材サンプルをクロックメーター(大栄科学精器製作所「C−1D」)を使用し、面々同士で2000往復擦り合わせた。試験後、化粧材表面の状態を観察した。以上の結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の化粧シートは、木質系ボード類、無機質系ボード類、金属板等の表面の保護、装飾等を目的として、木質板、プラスチック板等の表面に貼着して使用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…着色熱可塑性樹脂層
2…絵柄模様層
3…接着剤層
4…透明熱可塑性樹脂層
5…表面保護層
6…梨地状の凹凸
7…ガラスビーズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色熱可塑性樹脂層の上に絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を少なくともこの順に設けてなる化粧シートにおいて、該化粧シートの表面全面に、波長が200〜500μmで振幅が10〜30μmの一様な梨地状の凹凸を有することを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記表面保護層に平均粒径6.5〜20μmのガラスビーズを1〜10重量部含有したことを特徴とする請求項1記載の化粧シート。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−234659(P2010−234659A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85487(P2009−85487)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】