説明

化粧ブラシ用芯鞘型導電性繊維

【課題】 獣毛のような滑らかな触感を有し、フェースパウダーやチークパウダー等のパウダー類を顔等の被塗布部に塗布するときに使用する化粧ブラシの毛材として用いると、パウダー類の毛材からの離れ性が良い化粧ブラシ用導電性繊維を提供する。また、本発明の芯鞘型導電性繊維は、芯成分にカーボンブラックを含有させたポリアミド系樹脂を用いることでブリッスル加工時のカーボンブラックの脱落が無い。
【解決手段】 鞘成分がポリブチレンテレフタレート系樹脂であり、芯成分がカーボンブラックを30〜40質量%含有するポリアミド系樹脂である、化粧ブラシ用芯鞘型導電性繊維。単糸繊度が50〜120デシテックスであることを特徴とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェースブラシ、チークブラシ等の化粧ブラシに用いられる芯鞘型導電性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧ブラシ用の毛材には、獣毛が使用されてきた。獣毛は肌当たりがよく、また、キューティクルを有するため、パウダーの獣毛への付き性が良く、更に、そのパウダーを肌に転着させる際の、パウダーの獣毛からの離れ性が良好である。
【0003】
しかしながら、獣毛は、生産性が低く、品質安定性に乏しいことから、近年、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、更には、アクリル系繊維等の合繊繊維が多く用いられるようになった。
中でも、獣毛が持つ滑らかな触感を得るために、ポリブチレンテレフタレートからなる合成繊維が好適に用いられている(特許文献1等参照)。
【0004】
また、一般的にブラシとしては、繊維先端部が尖鋭形状を有する、クリーニング性能や除電性能に優れたブラシ用導電性繊維が提案されている(特許文献2等参照)。また、帯電ブラシなどに用いた場合に、トナーの付着量が少なく、また抵抗値変化の小さい、ポリアミド系導電性繊維が提案されている(特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−109990号公報
【特許文献2】特開平4−20303号公報
【特許文献3】特開2005−273054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリアミド系繊維やポリエステル系繊維等の合成繊維を用いた化粧ブラシは静電気によってパウダーの離れ性が悪い。
また、上記特許文献1においては、導電性繊維を用いてもよいとの記載があるが、その具体的な構成については何ら開示されていない。
更に、上記特許文献2及び3においては、化粧ブラシ用導電性繊維については記載されていない。
【0007】
本発明の目的は、獣毛のような滑らかな触感を有し、パウダーの離れ性が良好な化粧ブラシ用導電性繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、鞘成分がポリブチレンテレフタレート系樹脂であり、芯成分がカーボンブラックを30〜40質量%含有するポリアミド系樹脂である、化粧ブラシ用芯鞘型導電性繊維によって達成される。
また、化粧ブラシ用芯鞘型導電性繊維の単糸繊度は50〜120デシテックスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の芯鞘型導電性繊維は、フェースパウダーやチークパウダー等のパウダー類を顔等の被塗布部に塗布するときに使用する化粧ブラシの毛材として用いると、パウダー類の毛材からの離れ性が良い。
【0010】
また、本発明の芯鞘型導電性繊維は、芯成分にカーボンブラックを含有させたポリアミド系樹脂を用いることでブリッスル加工時のカーボンブラックの脱落が無い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する
【0012】
本発明の芯鞘型導電性繊維は、鞘成分がポリブチレンテレフタレート系樹脂であり、芯成分がカーボンブラックを30〜40質量%含有するポリアミド系樹脂である。
本発明の芯鞘型導電性繊維は、化粧ブラシにする際、通常ブリッスル加工を施すことから、同心タイプの芯鞘型とすることが好ましい。また、芯成分が完全に鞘成分に覆われた芯鞘型が好ましい。
【0013】
本発明におけるポリブチレンテレフタレート系樹脂は、テレフタル酸と1,4−ブチレングリコールを重縮合して得られる熱可塑性ポリエステルである。
また、本発明におけるポリブチレンテレフタレート系樹脂は、テレフタル酸及び1,4−ブチレングリコールの一部を他のジカルボン酸成分や他のグリコール成分で置き換えた共重合ポリエステルであっても良い。
【0014】
化粧ブラシを製造する際、通常、芯鞘型導電性繊維に対して、アルカリ溶液でブリッスル加工を行うため、芯成分に用いる樹脂はポリアミド系樹脂を用いる。
【0015】
ポリアミド系樹脂としては、アミド結合を有する重合体であればよく、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、これらの共重合体等が挙げられ、中でも、安価で、ポリブチレンテレフタレートと複合する際に、融点が近いので樹脂の酸化劣化のリスクがなく、また、複合紡糸後のポリブチレンテレフタレートとの剥離がなく、カーボンブラックの脱落がない6−ナイロンが好ましい。
【0016】
カーボンブラックの含有量はポリアミド系樹脂中、30〜40質量%とすることが好ましい。含有量が少ないと体積固有抵抗値が高くなりパウダーの離れ性が悪くなる傾向にあり、含有量が多いと体積固有抵抗値が低くなりパウダーの付きが悪くなる傾向にある。
【0017】
カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。この中で、ファーネスブラックが、大量生産に向き、粒子径やストラクチャーをコントロールしやすい点で好ましく、良好な分散性を維持することができ、導電性繊維にした場合、体積固有抵抗値のバラツキが少ない。
【0018】
芯鞘型導電性繊維の体積固有抵抗値は、10〜10Ω・cmが好ましく、この範囲にあることによりパウダーの付き性を抑える事無く導電性能を発揮できる。
【0019】
本発明の芯鞘型導電性繊維は、鞘成分としてポリブチレンテレフタレート系樹脂を100重量部、芯成分としてカーボンブラックを含有したポリアミド系樹脂を3〜10重量部とすることが好適である。
【0020】
また、芯鞘型導電性繊維の単糸繊度は、50〜120デシテックスとすることが好ましい。単糸繊度がこの範囲であれば、獣毛に近い肌触りを持つことができる。
【0021】
芯鞘型導電性繊維には、所望により、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、分散剤等の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0022】
本発明の芯鞘型導電性繊維は、例えば、上記各成分を用い、常法により、溶融紡糸した後、得られたフィラメントを延伸することにより得られる。延伸倍率は、2〜3倍とすることが好ましい。
延伸無しでは、ブリッスル加工時、強度劣化が著しく毛倒れする傾向にあり、3倍より高い倍率で延伸すると肌当りが硬くなる傾向にある。
【0023】
本発明の化粧ブラシ用芯鞘型導電性繊維を用いた毛材は、前記の導電性繊維を集束して一定長に切断し、得られた繊維収束体の一方端側をアルカリ溶液中に浸漬することが好適である。例えば、アルカリ溶液としてはNaOH水溶液(濃度35質量%)を使用し、液温が110℃前後の溶液中に繊維収束体を60〜80分間浸漬することにより、毛材の先端をテーパー状に形成する。
【0024】
アルカリ溶液中に浸漬すると、鞘成分のポリブチレンテレフタレート系樹脂が溶液中に溶解して減量され、各繊維の浸漬された部分がテーパー状に形成され、先端にアルカリで溶解されない芯成分が露出する。
このように、毛材の先端部をブリッスル加工によりテーパー状に形成することで、その肌当たりが柔らかくなると共に、パウダーの付き性や離れ性が更に良好となる。
ブリッスル加工は、毛材の状態で行ってもよく、ブラシとしてから行ってもよい。
【0025】
本発明の芯鞘型導電性繊維は、ポリブチレンテレフタレートのみからなる合成繊維等に4〜10質量%含有させて化粧ブラシとすることが好適である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
(芯鞘型導電性繊維の製造)
鞘成分として、ポリブチレンテレフタレート(三菱化学社製、η=0.851)を用い、芯成分として、6−ナイロンブライト(集盛実業社製、η=2.58)にカーボンブラックを35質量%混練したチップを用い、エクストゥルーダー型溶融押出機に供給し、鞘成分:芯成分が重量比で20:1となるように、紡糸温度265℃で溶融紡糸し、600m/分で巻き取った。次いで、80℃で2.5倍に延伸し、単糸繊度55dt、体積固有抵抗値1×106Ωの同心タイプの芯鞘型導電性繊維を得た。
なお、実施例において、体積固有抵抗値は、試料を幅2cm×長さ12cmの形状に切断し、両端1cmの部分にそれぞれ導電性ペースト(ドータイト:藤倉化成社製)を塗り乾燥させ、その後、導電性繊維の両端部の導電性ペーストを塗った部分を測定器に接続して抵抗値を測定した。得られた抵抗値に導電性繊維の断面積を掛けて体積固有抵抗値とした。測定環境は温度23℃、湿度65%RHの温湿度下で行った。
【0027】
(化粧ブラシの製造)
上記の方法で製造した芯鞘型導電性繊維を、ポリブチレンテレフタレート樹脂のみからなる合成繊維の中に7質量%混入後、集束して50mmに切断し、得られた繊維収束体を結束して毛材とした。得られた毛材の一端を柄に取り付け、化粧ブラシとした。アルカリ溶液としてNaOH水溶液(濃度35%)を使用し、液温が110℃の溶液中に繊維収束体を60分間浸漬し毛材の先端をテーパー状に形成した。
【0028】
(評価)
ポリブチレンテレフタレート100%の繊維のみからなる化粧ブラシを比較例1とし、獣毛使用の化粧ブラシを比較例2として、実施例1の化粧ブラシと共に、導電性評価及び化粧ブラシ性能の評価を実施した。
【0029】
<導電性評価>
各ブラシを用いて、JIS L−1094-1997摩擦帯電減衰測定法で帯電圧測定し導電性評価とした。表1に結果を示す。

測定条件
摩擦布:ウール
摩擦方向:ヨコ
温湿度:20℃、33%RH
【0030】
【表1】

【0031】
<化粧ブラシ評価>
離れ性能の評価として、各ブラシをウールで静電後、フェースパウダーを付着させて、その付着量を測定した。次いで、5回振動させた後のフェースパウダー残量を測定し、残量割合を算出した。表2に結果を示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表1と表2に示したように、実施例1の芯鞘型導電繊維を用いることで導電性能が良く、また、フェースパウダーの離れ性が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞘成分がポリブチレンテレフタレート系樹脂であり、芯成分がカーボンブラックを30〜40質量%含有するポリアミド系樹脂である、化粧ブラシ用芯鞘型導電性繊維。
【請求項2】
単糸繊度が50〜120デシテックスであることを特徴とする請求項1記載の化粧ブラシ用芯鞘型導電性繊維。

【公開番号】特開2012−217730(P2012−217730A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88608(P2011−88608)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】