説明

化粧料

【課題】シワ、たるみ、シミ、ソバカス等の皮膚老化現象に対してすぐれた予防、改善効果を発揮して、皮膚を若々しく健全な状態に保持し、又は改善するとともに、皮膚に対する刺激が少なく生体安全性にもすぐれた新規な美肌化及び美白成分を天然物中に見出し、かかる成分を配合することにより、すぐれた美肌化及び美白効果、並びにすぐれた生体安全性を兼ね備えた化粧料を提供する。
【解決手段】ユリ科(Liliaceae)ユリ属(Lilium)に属する植物の蕾から得られ、エラスターゼ活性抑制作用、抗酸化作用、タンパク質糖化抑制作用及びチロシナーゼ活性抑制作用を有する抽出物を有効成分とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すぐれた美肌化、美白作用を有し、安全性の高い化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚の老化は、加齢に伴う細胞増殖・分化の不活化、ホルモン分泌の低下、細胞外マトリックス成分の量的低下などの内的要因と、太陽光(紫外線)に誘発される活性酸素による細胞・組織の損傷、又は炎症などの外的要因とが複雑に絡み合って生ずる現象である。それらのうち内的要因としては、真皮線維芽細胞の活性低下又は増殖能の低下、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの細胞外マトリックス成分の減少、表皮基底細胞の不活化が挙げられる。これらの内的要因により、皮膚角質層のバリア機能、皮脂分泌機能、及び水分保持機能が低下し、その結果、皮膚の形態的・生理的変化として、シワ、たるみ、肌荒れなどの症状が現れる。
【0003】
また、皮膚老化の外的要因である活性酸素は皮膚細胞に直接傷害を及ぼすばかりでなく、細胞外マトリックス成分のコラーゲンを変性又は架橋させてシワの形成や皮膚の弾力性の低下をもたらし、さらにはメラニン色素の異常沈着を誘発してシミ、ソバカスを生じさせるなど、肌に様々なダメージを与える。
【0004】
この皮膚の老化を防ぎ、皮膚を健全、かつ、若々しい状態に保持するため、従来、種々の活性成分の使用が提案され、それら美肌化及び美白成分を配合した化粧品が上市されている。例えば、ビタミンC、ビタミンE、スーパーオキシドジスムターゼ(Superoxide dismutase;以下SODと略記)、カタラーゼなどの抗酸化剤;グリチルリチン酸などの抗炎症剤;各種紫外線吸収剤;α−ヒドロキシカルボン酸、胎盤抽出液、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸などの細胞賦活成分;コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの細胞外マトリックス成分;尿素などの保湿剤がそれである。また、皮膚のシミ、ソバカス等の色素沈着の発生を抑制する物質としては、アルブチン、コウジ酸などが知られており、美白剤の有効成分として広く使用されている。
【0005】
しかし、それら従来の美肌化剤及び美白剤には、皮膚などに対する安全性、また、実際に皮膚に適用した際の有効性の観点で問題が存在する。また、種々の天然成分由来の美肌化剤及び美白剤も提案されているが、それらの剤の美肌化及び美白効果は、化粧料配合原料として見た場合に、皮膚などに対する安全性、また、実際に皮膚に適用した際の有効性の観点で問題が存在する。従って、かかる点が改善された化粧料配合成分を含む化粧料が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点に鑑みて、皮膚安全性の観点から天然物由来の新たな美肌化及び美白成分を見出すべく鋭意研究を行った。その結果、ユリ科ユリ属植物の蕾の抽出物が、エラスチンの分解酵素であるエラスターゼの活性抑制作用、抗酸化作用、さらには、チロシナーゼ活性抑制作用を有し、当該蕾の抽出物を配合することですぐれた美肌化及び美白効果を有し、かつ、皮膚安全性にすぐれた化粧料の提供が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
従来、ユリ科ユリ属植物の花、葉の抽出物が保湿、肌荒れ改善の効果を有し、抗老化有効成分して化粧料に配合されることが公知である(特許文献1〜2)。また、ユリ科ユリ属植物の花の抽出物がメラニン生成抑制効果を有し、美白有効成分として、化粧料に配合されることも公知である(特許文献3)。しかし、ユリ科ユリ属植物の蕾の抽出物がすぐれた抗老化作用又は美白作用を有することについては何ら報告がなかった。
以上のことに鑑みて、本発明者が鋭意研究を行った結果、ユリ科ユリ属植物の特に蕾の抽出物が、他の部位(花、葉、茎)の抽出物と比較して、すぐれたエラスターゼ活性抑制作用、抗酸化作用を有し、かつ、チロシナーゼ活性抑制作用に基づく美白効果も併せ持つことを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者は、ユリ科ユリ属植物の蕾の抽出物が、近年、皮膚老化の一つのメカニズムとして注目を集めているタンパク質糖化反応(メイラード反応)、及びその反応により生じるアドバンスドグリケーションエンドプロダクツ(advanced glycation end products(AGEs))と呼ばれるタンパク質糖化反応最終産物の蓄積を抑制することも新たに見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
【特許文献1】特開2003−012489号
【特許文献2】特開2010−018594号
【特許文献3】特開2003−238343号
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はユリ科(Liliaceae)ユリ属(Lilium)に属する植物の蕾の抽出物を配合したことを特徴とする化粧料である。
また、上記ユリ科ユリ属に属する植物としては、栽培品種であるカサブランカが特に好ましい。
【発明の効果】
【0010】
ユリ科ユリ属に属する植物の蕾抽出物を配合してなる本発明の化粧料は、有効成分として含む蕾の抽出物の示す強いエラスターゼ活性抑制作用、抗酸化作用により、肌の弾力、張り、艶を向上させて、肌のシワ、たるみを予防、改善することができる。さらに、抗酸化作用、及びチロシナーゼ活性抑制作用により、シミ、ソバカス等の色素沈着を予防・改善することもできる。加えて、当該抽出物は天然物由来のものであるため、皮膚に対する刺激が少なく安全性にすぐれている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いるユリ科(Liliaceae)ユリ属(Lilium)の植物の種は、特に限定されるものではなく、例えば、ヤマユリ(Lilium auratum Lindl.)、オニユリ(Lilium lancifolium Thunb.)、ハカタユリ(Lilium brownii F.E.Br.)、タモトユリ(Lilium nobilissimum Makino)、マドンナ・リリー(Lilium candidum L.)、ヒメユリ(Lilium concolor Salisb.)、タカサゴユリ(Lilium formosanum Wallace)、オニユリ(Lilium leichtlinii Hook.f.var.tigrinum (Regel)Nichols.)、テッポウユリ(Lilium longiflorum
Thunb.)、イワトユリ(Lilium
maculatumThunb.)、クルマユリ(Lilium medeoloides A.Gray)、細葉百合(Lilium pumilium)、リーガル・リリー(Lilium regale Wils.)、オトメユリ(Lilium rubellum Baker)、カノコユリ(Lilium speciosum Thunb.)、イトハユリ(Lilium tenuifolium Fisch.)、又はそれらユリ属植物の変種・交配種等を用いることもできる。これらのユリ属の植物には、アジアティック・ハイブリッド、ロンギフローラム・ハイブリッド、マルタゴン・ハイブリッド、トランペット・ハイブリッド、オリエンタル・ハイブリッド等多くの栽培品種が知られており、これらの栽培品種のユリを用いてもよいが、本発明においては、その効果並びに収率のよさから、オリエンタル・ハイブリットとして知られているカサブランカを用いることが好ましい。なお、カサブランカは、上述したヤマユリ、カノコユリ、タモトユリ等を交配して育成される品種である。
【0012】
ユリ科ユリ属植物の蕾としては、未熟なものから、開花に近づいた状態のものまで、いずれの時期のものも使用できるが、その長径が1cm〜10cmの範囲のものを使用するのが好ましい。
【0013】
抽出物の調製は、ユリ科ユリ属植物の蕾を、必要ならば予め水洗して異物を除いた後、そのまま又は乾燥した上、必要に応じて細切又は粉砕し、浸漬法や超臨界抽出法等の常法に従って抽出溶媒と接触させることで行うことが可能である。
【0014】
抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類;n−ヘキサン、トルエン、クロロホルムなどの炭化水素系溶媒などが挙げられ、それらは単独で又は二種以上混合して用いられる。
【0015】
それら抽出溶媒のうちでも、得られる抽出物のエラスターゼ活性抑制作用、抗酸化作用、及びチロシナーゼ活性抑制作用の観点から、又化粧料への幅広い適用が可能であるという点からも、本発明においては水、低級アルコール類又は多価アルコール類などの親水性溶媒が好適である。この親水性溶媒を用いる場合の好ましい例としては、例えば、水もしくは低級アルコール類(特にエタノール)の単独使用、水と低級アルコール類(特にエタノール)との混合溶媒、又は水と多価アルコール類(特に1,3−ブチレングリコールもしくはプロピレングリコール)との混合溶媒の使用等が挙げられるが、なかでも水の単独使用が最も好ましい。
【0016】
混合溶媒を用いる場合の混合比は、例えば水とエタノールとの混合溶媒であれば、容量比(以下同じ)で1:1〜25:1、水とグリセリンとの混合溶媒であれば1:1〜20:1、水と1,3−ブチレングリコールとの混合溶媒であれば、1:1〜20:1の範囲とすることが好ましい。
【0017】
また、ユリ科ユリ属に属する植物の蕾(乾燥したもの)と抽出溶媒との重量比は1:1〜1:50の範囲が好ましく、さらに、1:5〜1:30の範囲が特に好ましい。
【0018】
抽出物の調製に際して、そのpHに特に限定はないが、一般には4〜8の範囲とすることが好ましい。かかる意味で、必要であれば前記抽出溶媒に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性調整剤、又はクエン酸、塩酸、リン酸、硫酸などの酸性調整剤を配合し、所望のpHとなるように調整してもよい。
【0019】
抽出温度、抽出時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類やpHによっても異なるが、例えば水を抽出溶媒とする場合であれば、抽出温度は4〜90℃の範囲が好ましく、また、抽出時間は1〜6時間の範囲が好ましい。
【0020】
上記条件により得られる抽出物は、一般にはpHを4〜8に調整した上、これをそのまま化粧料配合剤として使用しても、減圧濃縮等により所望の濃度として使用しても良い。
【0021】
また、本発明で用いられる抽出物は、本発明の効果を損なわない範囲で溶媒分画やカラム精製、活性炭処理、脱臭処理、脱色処理などの処理を行ったものでも良い。
【0022】
以上のように調製される本発明の抽出物は、後述の試験例に示す通り、顕著なエラスターゼ活性抑制作用、抗酸化作用、及びチロシナーゼ活性抑制作用を有すると共に、皮膚に対する刺激性が少なく生体安全性にもすぐれているので、当該抽出物を配合した化粧料は、シワ、たるみ、シミ、ソバカスの発生を予防し又はそれらの症状を改善して、肌を若々しく健全な状態に維持することできる。
【0023】
本発明のユリ科ユリ属植物の蕾の抽出物を含む化粧料としては、例えば乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パックなどの基礎化粧料、口紅、ファンデーション、リクイドファンデーション、メイクアッププレスパウダー、ほほ紅、白粉などのメイクアップ化粧料、洗顔料、ボディシャンプー、石けんなどの清浄用化粧料、さらには浴剤等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明の化粧料におけるユリ科ユリ属に属する植物の蕾の抽出物の配合量は、抽出物の固形分として、基礎化粧料の場合は、一般に0.002〜1.0重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%の範囲、メイクアップ化粧料の場合は、一般に0.002〜1.0重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%の範囲、又清浄用化粧料の場合は、一般に0.002〜10.0重量%、好ましくは0.02〜7.0重量%の範囲である。
【0025】
本発明の化粧料には、必須成分のユリ科ユリ属に属する植物の蕾の抽出物のほかに、通常化粧料に用いられる成分、例えば油性成分、界面活性剤(合成系、天然物系)、保湿剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、粉体成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。また、本発明のユリ科ユリ属に属する植物の蕾の抽出物の有効性、特長を損なわない限り、他の生理活性成分と組み合わせて化粧料に配合することも何ら差し支えない。
【0026】
ここで、油性成分としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、植物由来スクワランなどの植物由来の油脂類;ミンク油、タートル油などの動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリンなどのロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワランなどの炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、cis−11−エイコセン酸などの脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2−エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)などの合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0027】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α−スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩などのアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級〜第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩などのカチオン界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N−アシルアミドプロピル−N′,N′−ジメチル−N′−β−ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどの両性界面活性剤等を使用することができる。
また、乳化剤乃至乳化助剤として、酵素処理ステビアなどのステビア誘導体、レシチン及びその誘導体、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀など)、ジュアゼイロ(Rhamnaceae zizyphus joazeiro)抽出物等を配合することもできる。
【0028】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース等の糖類、乳酸菌醗酵米、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体など)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、ビャッキュウ抽出物、魚介類由来コラーゲン及びその誘導体、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0029】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻又は紅藻由来成分;ビャッキュウ抽出物;ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体等の多糖類;キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム等のガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体;ポリグルタミン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0030】
防腐・殺菌剤としては、例えば尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、1,2−ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物等がある。
【0031】
粉体成分としては、例えばセリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビなど)のパウダー、豆類(大豆、小豆など)のパウダー等がある。
【0032】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−ターシャリーブチル−4−メトキシベンゾイルメタン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0033】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ビタミンE及びその誘導体、ビャッキュウ抽出物、イネ抽出物等がある。
【0034】
生理活性成分としては、例えば美白成分として、t−シクロアミノ酸誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン誘導体、エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、4−メトキシサリチル酸カリウム塩、マグノリグナン(5,5'−ジプロピル−ビフェニル−2,2’−ジオール)、4−HPB(ロドデノール、4−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ブタノール))、AMP(アデノシンモノホスフェイト、アデノシン1リン酸)、胎盤抽出液、ニコチン酸及びその誘導体、ソウハクヒ抽出物、ユキノシタ抽出物、米糠抽出物、米糠抽出物加水分解物、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀類)、白芥子抽出物、白芥子加水分解抽出物、ムラサキシキブ抽出物、ハス種子発酵物、シャクヤク抽出物、党参抽出物、ハトムギ発酵物、酒粕発酵物、パンダヌス・アマリリフォリウス(Pandanus
amaryllifolius Roxb.)抽出物、アルカンジェリシア・フラバ(Arcangelicia flava
Merrilli)抽出物、カミツレ抽出物(商品名:カモミラET)、コンブ等の海藻の抽出物、アマモ等の海草の抽出物、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリポソーム化リノール酸など)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体等が、又皮膚老化防止・美肌化成分として、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩等)、t−シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、アラントイン、α−ヒドロキシ酸類、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、ゲンチアナエキス、甘草エキス、ハトムギエキス、カミツレエキス、ニンジンエキス、アロエエキスなどの生薬抽出エキス、米抽出物加水分解物、米糠抽出物加水分解物、米醗酵エキス、ミツイシコンブ抽出物、アナアオサ抽出物、アマモ等の海草の抽出物、ソウハクヒエキス、ジュアゼイロ(Rhamnaceae zizyphus
joazeiro)抽出物等がある。
【0035】
上記のコウジ酸誘導体としては、例えばコウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸ジブチレートなどのコウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類、コウジ酸グルコシドなどのコウジ酸糖誘導体等が、アスコルビン酸誘導体としては、例えばL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルマグネシウムなどのアスコルビン酸エステル塩類、L−アスコルビン酸−2−グルコシド(2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸)、L−アスコルビン酸−5−グルコシド(5−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸)などのアスコルビン酸糖誘導体、それらアスコルビン酸糖誘導体の6位アシル化物(アシル基は、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基など)、L−アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸テトララウリン酸エステルなどのL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル類、3−O−エチルアスコルビン酸、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−O−パルミテートナトリウム等が、ハイドロキノン誘導体としては、アルブチン(ハイドロキノン−β−D−グルコピラノシド)、α−アルブチン(ハイドロキノン−α−D−グルコピラノシド)等が、レゾルシノール誘導体としては、例えば4−n−ブチルレゾルシノール、4−イソアミルレゾルシノール等が、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体としては、例えば2,5−ジアセトキシ安息香酸、2−アセトキシ−5−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−プロピオニルオキシ安息香酸等が、ニコチン酸誘導体としては、例えばニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等が、ビタミンE誘導体としては、例えばビタミンEニコチネート、ビタミンEリノレート等が、α−ヒドロキシ酸としては、例えば乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、α−ヒドロキシオクタン酸等がある。
【0036】
次に、製造例、実施例(処方例)及び試験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下において、部はすべて重量部を、また%はすべて重量%を意味する。
【0037】
製造例1.カサブランカの蕾抽出液の調製(1)
ユリ科ユリ属植物のカサブランカの蕾を乾燥、粉砕し、粉砕物10gに精製水100gを混合し、40℃で2時間抽出を行った後ろ過し、褐色透明のカサブランカの蕾抽出液75gを得た(固形分濃度1.9%)。
【0038】
製造例2.カサブランカの蕾抽出液の調製(2)
ユリ科ユリ属植物のカサブランカの蕾を乾燥、粉砕し、粉砕物20gに精製水400gを混合し、80℃で2時間抽出を行った後ろ過し、褐色透明のカサブランカの蕾抽出液340gを得た(固形分濃度1.8%)。
【0039】
製造例3.カサブランカの蕾抽出液の調製(3)
ユリ科ユリ属植物のカサブランカの蕾を乾燥、粉砕し、粉砕物50gに精製水500gを混合し、80℃で2時間抽出を行った後ろ過し、褐色透明のカサブランカの蕾抽出液430gを得た(固形分濃度3.5%)。
【0040】
製造例4.カサブランカの蕾抽出液の調製(4)
ユリ科ユリ属植物のカサブランカの蕾を乾燥、粉砕し、粉砕物10gに精製水と1,3- ブチレングリコールの7:3(重量比)混液100gを混合し、80℃で2時間抽出を行った後ろ過し、褐色透明のカサブランカの蕾抽出液70gを得た(固形分濃度1.4%)。
【0041】
製造例5.カサブランカの蕾抽出液の調製(5)
ユリ科ユリ属植物のカサブランカの蕾を乾燥、粉砕し、粉砕物70gに精製水700gを混合し、80℃で2時間抽出を行った後ろ過し、そのろ過液を活性炭で処理し、淡黄褐色透明のカサブランカの蕾抽出液440gを得た(固形分濃度3.2%)。
【0042】
製造例6.カサブランカの蕾の乾燥物の調製(6)
製造例5と同様にして得たカサブランカの蕾抽出液300gを凍結乾燥した後粉砕し、褐色粉末10gを得た。
【0043】
比較製造例1.カサブランカの花の抽出液の調製(1)
ユリ科ユリ属植物のカサブランカの花(開花した生花)を乾燥、粉砕し、粉砕物7gに精製水70gを混合し、80℃で2時間抽出を行った後ろ過し、そのろ過液を活性炭で処理し、淡黄褐色透明のカサブランカの花抽出液37gを得た(固形分濃度4.7%)。
【0044】
比較製造例2.カサブランカの葉の抽出液の調製(1)
ユリ科ユリ属植物のカサブランカの葉を乾燥、粉砕し、粉砕物5gに精製水50gを混合し、80℃で2時間抽出を行った後ろ過し、そのろ過液を活性炭で処理し、淡黄褐色透明のカサブランカの葉抽出液35gを得た(固形分濃度4.7%)。
【0045】
比較製造例3.カサブランカの茎の抽出液の調製(1)
ユリ科ユリ属植物のカサブランカの茎を乾燥、粉砕し、粉砕物7gに精製水70gを混合し、80℃で2時間を抽出行った後ろ過し、そのろ過液を活性炭で処理し、淡黄褐色透明のカサブランカの茎抽出液39gを得た(固形分濃度4.7%)。
【0046】
実施例1.クリーム
[A成分] 部
流動パラフィン 5.0
ヘキサラン(注1) 4.0
パラフィン 5.0
グリセリルモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 6.0
ブチルパラベン 0.1
(注1)株式会社テクノーブル製 トリオクタン酸グリセリル
[B成分]
製造例5の抽出液 5.0
グリセリン 5.0
カルボキシメチルモノステアレート 0.1
モイストン・C (注2) 1.0
精製水 全量が100部となる量
(注2)株式会社テクノーブル製 NMF成分
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合してクリームを得た。
【0047】
実施例2.乳液
[A成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
大豆レシチン 1.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
[B成分]
製造例5の抽出液 5.0
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0048】
実施例3.ローション
[A成分] 部
製造例5の抽出液 5.0
エタノール 10.0
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
メチルパラベン 0.2
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.1
香料 適量
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
上記の成分を混合してローションを得た。
【0049】
実施例4.化粧水
[A成分] 部
オリーブ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール
5.0
ブチルパラベン 0.1
[B成分]
製造例5の抽出物溶液 5.0
エタノール 5.0
グリセリン 5.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
メチルパラベン 0.1
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃以上に加温後、A成分にB成分を加えて攪拌し、さらにヒスコトロン(5000rpm)で2分間ホモジナイズを行った。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えて攪拌混合し、さらに30℃以下まで冷却して化粧水を得た。
【0050】
実施例5.乳液
[A成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
大豆レシチン 1.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
[B成分]
製造例5の抽出物溶液 5.0
L−アスコルビン酸−2−グルコシド 2.0
水酸化カリウム 0.5
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0051】
製造例6.乳液
実施例5のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム2.0部を用いるほかは実施例と同様にして乳液を得た。
【0052】
実施例7.乳液
実施例5のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム2.0部を用いるほかは実施例5と同様にして乳液を得た。
【0053】
実施例8.乳液
実施例5のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてアルブチン2.0部を用いるほかは実施例5と同様にして乳液を得た。
【0054】
実施例9.乳液
実施例5のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えて米糠抽出物加水分解物(株式会社テクノーブル製、商品名「グレイスノウ*雪*HP」、固形分濃度3.5%)5.0部を用いるほかは実施例5と同様にして乳液を得た。
【0055】
実施例10.乳液
実施例5のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えて白芥子抽出物(株式会社テクノーブル製、商品名「シナブランカ−WH」、固形分濃度1.0%)5.0部を用いるほかは実施例5と同様にして乳液を得た。
【0056】
実施例11.乳液
実施例5のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてγ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸1.0部を用いるほかは実施例5と同様にして乳液を得た。
【0057】
実施例12.リクイドファンデーション
[A成分] 部
ステアリン酸 2.4
モノステアリン酸プロピレングリコール 2.0
セトステアリルアルコール 0.2
液状ラノリン 2.0
流動パラフィン 3.0
ミリスチン酸イソプロピル 8.5
プロピルパラベン 0.05
[B成分] 部
製造例5の抽出物溶液 5.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.2
ベントナイト 0.5
プロピレングリコール 4.0
トリエタノールアミン 1.1
メチルパラベン 0.1
精製水 全量が100部となる量
[C成分] 部
酸化チタン 8.0
タルク 4.0
着色顔料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ加温した後混合攪拌した。これを再加温し、上記のC成分を添加して型に流し込み、室温になるまで攪拌してリクイドファンデーションを得た。
【0058】
実施例13.クリームファンデーション
[A成分] 部
ステアリン酸 5.0
セタノール 2.0
モノステアリン酸グリセリル 3.0
流動パラフィン 5.0
スクワラン 3.0
ミリスチン酸イソプロピル 8.0
ポリオキシエチレン(20)モノステアリン酸グリセリル 2.0
プロピルパラベン 0.1
[B成分] 部
製造例5の抽出物溶液 5.0
ソルビトール 3.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
トリエタノールアミン 1.5
メチルパラベン 0.1
精製水 全量が100部となる量
[C成分] 部
酸化チタン 8.0
タルク 2.0
カオリン 5.0
ベントナイト 1.0
着色顔料 適 量
[D成分]
香料 0.3
C成分を混合し、粉砕機で粉砕した。B成分を混合し、これに粉砕したC成分を加え、コロイドミルで均一分散させた。A成分及び均一分散させたB、C成分をそれぞれ80℃に加温後、B、C成分にA成分を攪拌しながら加え、さらにヒスコトロン(5000rpm)で2分間ホモジナイズを行った。これを50℃まで冷却した後、D成分を加えて攪拌混合し、さらに攪拌しながら30℃以下まで冷却してクリームファンデーションを得た。
【0059】
実施例15.ボディシャンプー
[A成分]

N−ラウロイルメチルアラニンナトリウム 25.0
ヤシ油脂肪酸カリウム液(40%) 26.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.0
メチルパラベン 0.1
[B成分] 部
製造例5の抽出物溶液 5.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解した後、A成分にB成分を加え、攪拌を続けて室温まで冷却してボディシャンプーを得た。
【0060】
試験例1.エラスターゼ活性抑制試験
製造例5の抽出液、及び比較製造例1〜3の抽出液について、それぞれのエラスターゼ活性抑制作用を調べた。
[試験方法]
<調製溶液>
(1)10容量%NCS含有イーグルMEM
(2)細胞溶解液
(3)基質溶液
<調製方法>
(1)イーグルMEM培地(日水製薬(株)製)9.4gに蒸留水1Lを加え、それぞれ終濃度10容量%NCS(仔牛血清)、1.4重量%炭酸水素ナトリウム、0.03重量%グルタミン酸を添加して調製する。
(2)1mM PMSF、1% TritonX−100を100mM
Tris−HCl(pH 8.0)に溶解した。
(3)スクシニル-L-アラニル-L-アラニル-L-アラニン-p-ニトロアニリド(Suc-Ala-Ala-Ala-pNA)を100mM Tris−HCl(pH 8.0)に溶解した。
<測定方法>
製造例5及び比較製造例1〜3の抽出液をそれぞれ2.5%又は5.0%の濃度(溶液として)となるよう希釈して試料溶液に調製した。なお、試料無添加(コントロール)として、5%PBS(−)溶液を使用した。
正常ヒト皮膚由来線維芽細胞(NB1RGB)を10容量%NCS含有イーグルMEMにて1×10個/mLに調製し、96穴マイクロプレートに100μLずつ播種して、5%炭酸ガス、飽和水蒸気下、37℃で培養した。48時間後、培養液を除去し、PBS(−)で細胞を1回洗浄した後、細胞溶解液を50μL添加し室温で10分間静置することにより細胞を溶解し、これを酵素液として用いた。96穴マイクロプレートに、酵素液50μLに対して各試料溶液50μL添加し、さらに、基質溶液を100μLずつ添加後、37℃で、暗所で2時間反応させた。ブランクとしては酵素液の代わりに細胞溶解液を試験に供した。その後、プレートリーダーで、405nmにおける反応後の吸光度を測定した。各吸光度の測定値から以下の式(1)を用いて、エラスターゼ活性率を算出した。なお、陽性対照として、1mMのEDTAを試料溶液として用いて同様の試験を行った。
式(1):線維芽細胞エラスターゼ活性率(%)= (Es-Esb)/(Ec-Ecb)×100
Ec;コントロール(PBS(-))の試験区の吸光度
Ecb;コントロール(PBS(-))のブランク区の吸光度
Es;試料溶液を添加した試験区の吸光度
Esb;試料溶液を添加したブランク区の吸光度
【0061】
[結果]
試験例1の結果を表1に示す。
[表1]

表1の結果から、ユリ科ユリ属に属する植物(カサブランカ)の蕾の抽出液が、他の部位(花、葉、茎)の抽出液と比較して、エラスターゼ活性を顕著に抑制することが認められた。また、陽性対照である1mMのEDTAと比較しても特段にすぐれたエラスターゼ活性抑制効果が認められた。
【0062】
試験例2.活性酸素消去能(SOD様活性)試験
製造例5の抽出液、及び比較製造例1〜3の抽出液について、それぞれのSOD様活性を調べた。
[試験方法]
1Mトリス−塩酸緩衝液0.15mL、1mMエチレンジアミン四酢酸・二ナトリウム塩溶液0.30mL、1mMキサンチン溶液0.30mL、0.75mMニトロブル-テトラゾリウム溶液0.20mL、製造例5の抽出液0.10mL及び精製水1.90mLを混合して試験溶液を調製した。比較のため、上記試験溶液において、製造例5の抽出液に代えて比較製造例1〜3の各抽出液0.10mLを用いる他は上記試験溶液と同様の組成からなる混合液を調製した。又試験溶液において、製造例5の抽出液0.10mLと精製水1.90mLに代えて精製水2.00mLを用いる他は上記試験溶液と同様の組成からなる混合液(試料無添加)を調製した。又試験液において製造例5の抽出液0.10mLに代えて、0.875又は8.75Unit/mLのスーパーオキシドジスムターゼ溶液0.10mLを用いる他は上記試験溶液と同様の組成からなる混合液(陽性対照)を調製した。
上記試験溶液、又は試料無添加の混合液をそれぞれ37℃でインキュベートした後、これに1Unit/mLキサンチンオキシダーゼ溶液0.05mLを添加し、一定時間経過後(5分)、各被験液の560nmにおける吸光度(被験液中のスーパーオキシドアニオン量の指標)を測定した。結果は、試料無添加(精製水)の混合液の吸光度を100%とした時の各試験溶液、又は陽性対照(スーパーオキシドジスムターゼ)の混合液の吸光度を%で示した。
【0063】
[結果]
結果を表2に示す。
[表2]

表2の結果から明らかな通り、本発明のユリ科ユリ属に属する植物(カサブランカ)の蕾の抽出液は、他の部位(花、葉、茎)の抽出液と比較して、より高いSOD様活性を有していることが明らかになった。また、陽性対照のスーパーオキシドジムスターゼと同等又はそれ以上のSOD様活性を有することも明らかになった。
なお、本試験と並行して行ったキサンチン−キサンチンオキシダーゼ反応試験の結果では、製造例5の抽出液は本評価試験における1段階目の反応であるキサンチン−キサンチンオキシダーゼ反応を抑制していないことが確認された。
【0064】
試験例3.細胞内チロシナーゼ活性抑制作用
製造例5の抽出液、比較製造例1〜3の抽出液について、それぞれの細胞内チロシナーゼ活性抑制作用を調べた。
[試験方法]
培養B16マウスメラノーマ細胞を、96穴マイクロプレートに8×10個/穴播種し、10%仔牛血清(FBS)含有イーグル最少必須培地(MEM)中、37℃、5%COの条件下に1日間プレ培養した後、10%FBS含有イーグルMEMで、製造例5の抽出液、比較製造例1〜3の抽出液をそれぞれ2.5%、及び5.0%の濃度(溶液として)となるように希釈した液に置換し、同条件で2日間培養した。
次に培養液を除去し、0.3mg/mLのMTT溶液を添加するか、又は、界面活性剤(Triton X-100)と5mMのLドーパ溶液を添加して37℃で反応を行った後、マイクロプレートリーダー(Model 450、バイオラッド社製)を用い、波長570−630nmでMTT値を、波長490nmでドーパ値をそれぞれ測定した。
なお、比較のため、PBS(−)の添加の場合及びコウジ酸の添加の場合(陽性対照)についても同様の試験を行った。
【0065】
[結果]
結果を表3に示す。
[表3]

表3に示す通り、特に2.5%の低濃度において、本発明のユリ科ユリ属に属する植物(カサブランカ)の蕾抽出液が他の部位(花、葉、茎)の抽出液と比較して、培養B16マウスメラノーマ細胞の活性を低下・阻害させることなく、より強いチロシナーゼ活性抑制作用を有していることが明らかになった。
【0066】
試験例4.タンパク質糖化抑制効果試験
さらに、本試験では、グルコースを介したBSA(牛血清アルブミン)の蛍光の発生、発色により、AGEの発生抑制効果、すなわち、タンパク質糖化抑制効果を評価した。まず、製造例5の抽出液40μLと、50mg/mLのBSA水溶液40μLと、2.5Mのグルコース水溶液40μLと、PBS(−)溶液80μLを混合、攪拌して試料溶液を調製した。試料溶液は製造例5の抽出液の最終濃度がそれぞれ1.0%、2.0%、5.0%となるように調製した。次に、試料溶液を50℃で7日間静置し、7日後、各試料溶液について、蛍光発生(励起:355nm、放射:460nm:蛍光マイクロプレートリーダー(フルオロスキャンアセント、Thermo Fisher Scientific社製))、及び吸光度(波長405nm:マイクロプレートリーダー(Model 450、バイオラッド社製))を測定した。また、製造例5の抽出液に代えて精製水を用いた試料無添加(コントロール)の場合について同様の操作を行い、ここで得られた蛍光測定値、及び吸光度に対する各試料溶液の蛍光測定値、及び吸光度の相対値(%)を求め、タンパク質糖化率(%)とした。さらに、製造例5の抽出液の代わりに陽性対照として1mMのアミノグアニジン(AG)を添加した場合についても同様の試験を行った。
【0067】
試験例4の結果を表4,5に示す。表4は蛍光測定結果に基づいて算出したタンパク質糖化率を示すものであり、表5は吸光度の測定結果に基づいて算出したタンパク質糖化率を示すものである。
[表4]

【0068】
[表5]

【0069】
表4、5に示すように、本発明のユリ科ユリ属に属する植物(カサブランカ)の蕾抽出液が、グルコースを介したBSAの蛍光の発生、発色が抑制されていること、すなわち、本発明のカサブランカの蕾の抽出液が顕著なタンパク質糖化抑制効果を有することが確認された。なお、陽性対照であるAGも蛍光発生を抑制していることから、本試験系が正常であることも確認された。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユリ科(Liliaceae)ユリ属(Lilium)に属する植物の蕾の抽出物を有効成分とすることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
ユリ科ユリ属植物がカサブランカであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料。



【公開番号】特開2011−225564(P2011−225564A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80725(P2011−80725)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000162021)共栄化学工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】