説明

化粧料

【課題】 毛髪に対しては艶やかさと滑りの良さおよび良好な櫛通り性を付与し、皮膚に対しては、なめらかさ、良好な滑り性およびべたつきのないしっとり感を付与する効果に優れ、しかもイオン性物質を多く含む化粧品処方でも保存安定性に優れる化粧料を提供する。
【解決手段】タンパク質加水分解物のアミノ酸側鎖のアミノ基を含むアミノ基の50%以上に下記の一般式(1)
【化1】


(式中、Rは炭素数4〜22のアルキル基、炭素数4〜22のアルケニル基またはフェニル基を示す)で表されるアルキルグリセリル基が結合したタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体と多価アルコールを含有させて化粧料を構成する。タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の含有量は0.1〜30質量%が好ましく、多価アルコールの含有量は0.1〜20質量%であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質加水分解物のアミノ基にアルキルグリセリル基が付加したタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体と多価アルコールを含有する化粧料に関し、さらに詳しくは、毛髪に対しては艶やかさ、滑りの良さ、良好な櫛通り性および潤い感(しっとり感)を付与し、皮膚に対しては、なめらかさ、良好な滑り性およびべたつきのないしっとり感を付与する効果に優れ、しかもイオン性物質を多く含む化粧品処方でも保存安定性に優れる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然由来のタンパク質を加水分解したタンパク質加水分解物(加水分解ペプチドまたは加水分解タンパクとも言う)やその誘導体は、毛髪化粧料や皮膚化粧料に広く用いられている。それは、タンパク質加水分解物やその誘導体が、皮膚や毛髪と親和性があり、しかも、天然タンパク質由来で毛髪や皮膚に対する刺激が少なく安全性が高い上に、生分解性に優れるためである。
【0003】
毛髪は一般に損傷が進むほど疎水性が失われ、滑りや櫛通り性が悪くなるが、疎水性を保つためにN−アシル化タンパク質加水分解物誘導体(特許文献1)やN−高級アルキル第4級アンモニウム誘導体(特許文献2)などが毛髪化粧料に配合されてきた。
【0004】
しかしながら、N−アシル化タンパク質加水分解物誘導体を通常の化粧料に配合する場合は、アルカリ金属塩や有機アミン塩などの塩の形で配合されるが、N−アシル化タンパク質加水分解物の塩は界面活性剤の機能を有するため、多量に配合すると使用法によっては泡立ちやべたつきを生じることがあり、その機能を充分に発揮させる量を配合出来ないという問題があった。
【0005】
一方、N−高級アルキル第4級アンモニウム誘導体は第4級窒素を有するため毛髪や皮膚に対する吸着性は良いが、カチオン性が強いためアニオン性物質と複合体を形成しやすいという欠点があり、特にヘアコンディショナーなどの毛髪処理剤では、粘度低下を引き起こすため、増粘目的で配合されるアニオンポリマーとは併用できないという問題があった。また、N−高級アルキル第4級アンモニウム誘導体は水に難溶あるいは不溶であり、水溶性の化粧料には界面活性剤を併用する必要があるという問題もあった。
【0006】
これらの問題点を解決するために、タンパク質加水分解物のアミノ基にアルキルグリセリル基を結合させたタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体が開発されているが(特許文献3)、毛髪化粧料に配合した際に、アルキル基の鎖長によっては毛髪が重く感じる、しっとり感がないという問題があり、充分に普及していないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−101449号公報
【特許文献2】特開平2−134586号公報
【特許文献3】特開2009−263205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、上記の問題点を解決し、毛髪に対しては艶やかさ、滑りのよさおよび潤い感(しっとり感)を付与し、皮膚に対してはなめらかさ、良好な滑り性およびべたつきのないしっとり感を付与する効果に優れ、しかもイオン性物質を多く含む化粧品処方でも保存安定性に優れる化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、タンパク質加水分解物のアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の50%以上に下記の一般式(I)
【化1】

〔式中、Rは炭素数4〜22のアルキル基、炭素数4〜22のアルケニル基またはフェニル基を示す〕
で表されるアルキルグリセリル基を結合させてなるタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体と多価アルコールとを含有する化粧料では、毛髪や皮膚に優れた滑り性や潤い感を付与し、特に毛髪に適用した場合は、毛髪に艶を与え、櫛通り性を向上させることができ、かつ毛髪をしなやかな感触に仕上げることができ、しかもイオン性物質を多く含む化粧品でも保存安定性に優れていることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0010】
すなわち本発明は、タンパク質加水分解物のアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の50%以上に前記一般式(I)で表されるアルキルグリセリル基が結合したタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体と多価アルコールとを含有することを特徴とする化粧料である(請求項1)。
【0011】
本発明の化粧料に含有させるタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体は、タンパク質加水分解物のアミノ基の50%以上にアルキルグリセリル基が結合したもので、タンパク質加水分解物のイオン性が弱められていて、多量のイオン性物質を配合する化粧品処方でも会合体を形成することなく保存安定性に優れ、アルキル基に由来する艶や滑り性を皮膚や毛髪に付与する。従って、毛髪化粧料に配合した際には、毛髪を疎水化して良好な艶、滑り性、櫛通り性を付与し、皮膚化粧料に配合した際には、皮膚に良好な滑り感を付与する。さらに、同時に含まれる多価アルコールは、水溶性化粧料中でタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の安定性を保つと共に、毛髪や皮膚に保湿感(しっとり感)を付与する。
【0012】
ここでタンパク質加水分解物とは、タンパク質を酸、アルカリ、酵素あるいはそれらの併用によって部分加水分解して得ることができるものである。従って、アミノ酸や、複数のアミノ酸単位がペプチド結合したものから構成され、その末端にアミノ基およびカルボキシ基を有する。また、タンパク質加水分解物を構成するアミノ酸単位には、中性アミノ酸単位とともに、側鎖にアミノ基を有する塩基性アミノ酸単位、側鎖にカルボキシ基を有する酸性アミノ酸単位を含むことができる。すなわち、塩基性アミノ酸単位が含まれる場合には、タンパク質加水分解物は、前記末端のアミノ基に加えて、側鎖にもアミノ基を有する。
【0013】
一般式(I)で表されるアルキルグリセリル基によってアルキルグリセリル化されるアミノ基の割合は、タンパク質加水分解物のイオン性を下げ、保存安定性を向上させるためや毛髪や皮膚への艶や滑り性の付与効果を発揮させるためには、タンパク質加水分解物のアミノ酸重合度によって多少の違いはあるが、全アミノ基の50%以上がアルキルグリセリル化されている必要がある。
【0014】
第二の必須成分である多価アルコールとしては、水溶性で水酸基を2個以上有していれば特に制限はない。水酸基が2個以上の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン縮合物類などが挙げられるが、べたつきの少ないしっとり感の付与効果や化粧料中でのタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の安定性の保持という面から、グリコール類やグリセリンが好ましい。
【0015】
請求項2の発明は、前記タンパク質加水分解物のアミノ酸重合度が3〜50であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料である。タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体を構成するタンパク質加水分解物部分のアミノ酸重合度は、毛髪や皮膚への吸着性や化粧品に配合した際の安定性の面から、2〜50が好ましく、3〜30がより好ましい。なお、アミノ酸重合度は理論的には整数であるが、実際には、タンパク質加水分解物は異なるアミノ酸重合度を有する分子の混合物であるので、実際に表されるアミノ酸重合度はその数平均値であり、必ずしも整数ではない。
【0016】
請求項3の発明は、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の含有量が0.1〜30質量%であり、多価アルコールの含有量が0.1〜20質量%である請求項1または請求項2のいずれかに記載の化粧料である。化粧料中のタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の含有量の好適な範囲は、化粧料の種類や使用の形態、タンパク質加水分解物のタンパク質の種類やアミノ酸重合度などによって変動するが、毛髪や皮膚に優れた艶や滑り感を付与するためには、通常、化粧料全量に対して0.1〜30質量%が好ましく、0.2〜25質量%がより好ましい。
【0017】
タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の含有量が0.1質量%以下では、毛髪や皮膚に優れた艶や滑り感を付与したり、毛髪の櫛通り性を向上させる効果が発揮されないおそれがあり、また、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の含有量が30質量%を超えても配合量に見合う効果の向上が見られないだけでなく、毛髪や皮膚にべたつき感を与えるおそれがあり、さらに、水性化粧料中での安定性が低下するおそれがある。
【0018】
本発明の化粧料に含有する第二の必須成分である多価アルコールの含有量は、毛髪や皮膚に良好なしっとり感(保湿感、潤い感)を付与し、かつ化粧料中でのタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の安定性を保つためには、化粧料全量中0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
【0019】
多価アルコールの含有量が0.1質量%以下では毛髪や皮膚にしっとり感を付与する効果が見られないだけでなく、水性化粧料では、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の安定性を保てないおそれがあり、多価アルコールの含有量が20質量%を超えるとべたつきを生じるようになるおそれがある。
【0020】
本発明の化粧料としては、例えば、毛髪セット剤、整髪料、パーマネントウェーブ用剤、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、染毛剤、染毛料、養毛剤などの毛髪化粧料、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、エモリエントクリームなどのクリーム類、化粧水、乳液、洗顔料、ボディシャンプー、各種石鹸、メイクアップ用品、日やけ止め用品などの皮膚化粧料が挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の化粧料は、毛髪に対しては艶や滑り性を与え、櫛通り性を向上させ、かつしなやかな感触に仕上げることができ、皮膚に適用した場合は、優れた滑り性やしっとり感(保湿感)を付与し、しかも多量のイオン性物質との併用が可能であり、保存安定性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の化粧料はタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体と多価アルコールを必須成分として構成されるが、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体は、タンパク質加水分解物のアミノ末端および塩基性アミノ酸側鎖のアミノ基の50%以上に上記一般式(I)で表されるアルキルグリセリル基が結合したものである。以下、タンパク質加水分解物、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体、それを配合する化粧料の順に説明する。
【0023】
[タンパク質加水分解物]
本発明の化粧料に含有させるタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体を構成するタンパク質加水分解物は、タンパク源(天然由来のタンパク質など)を、公知の方法で、酸、アルカリ、酵素あるいはそれらの併用によって部分加水分解して得られる。
【0024】
タンパク質加水分解物のタンパク源としては、例えば、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、フィブロイン、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏などの卵黄タンパク、卵白タンパクなどの動物由来のもの、大豆、エンドウ、小麦、米(米糠)、ゴマ、トウモロコシ、イモ類のタンパクなどの植物由来のもの、アマノリ、コンブ、スピルリナなどの海藻由来のもの、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)やクロレラより分離した微生物由来のものが挙げられる。
【0025】
タンパク質加水分解物部分のアミノ酸重合度の範囲は、配合する化粧品の種類によっても異なるが、化粧品に配合した際の化粧品の安定性の面から、通常、2以上200以下の範囲から選択される。さらに、毛髪や皮膚への吸着性や浸透性の面からは、アミノ酸重合度は2〜50が好ましく、3〜30がより好ましい。
【0026】
タンパク質加水分解物のアミノ酸重合度が上記範囲の上限を超えると、このタンパク質加水分解物から構成されるタンパク質加水分解物のアルキルグリセル化誘導体の毛髪や皮膚への吸着性が、上記範囲内のものに比べて減少する傾向があるので好ましくない。さらに、保存中に凝集しやすくなって化粧品の安定性が劣るようになり、さらに、皮膚や毛髪に適用したときには、つっぱり感を与えるおそれがある。一方、タンパク質加水分解物のアミノ酸重合度が2未満となる場合でも、毛髪への吸着作用が減少し、その効果を充分に発揮できなくなるおそれがある。なお、タンパク質加水分解物のアミノ酸重合度は、タンパク源の部分加水分解の条件、例えば、反応系における酸、アルカリ、酵素等の濃度、反応温度、反応時間を調整することによって、容易に調整することができる。
【0027】
〔タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体〕
本発明の化粧料に含有させるタンパク質加水分解物のアルキルグリセル誘導体は、タンパク質加水分解物のアミノ基に、アルキルグリセリル基を導入したものであり、例えば、下記一般式(II)
【0028】
【化2】

〔式中、Rは塩基性アミノ酸単位の側鎖の末端アミノ基を除く残基を表し、Rは酸性アミノ酸単位の側鎖の末端カルボキシ基を除く残基を表し、Rは中性アミノ酸単位の側鎖を表す。aは0〜100、bは0〜100、cは0〜100で、a+b+cは2〜200を示す(但し、a,bおよびcはアミノ酸の数を示すのみで、配列の順序を示すものではない)〕
で表されるタンパク質加水分解物と、例えば、下記式(III)
【0029】
【化3】

(式中、Rは炭素数4〜22のアルキル基、炭素数4〜22のアルケニル基またはフェニル基を示す)
で表されるアルキルグリセリル化剤を反応させることで、前記一般式(II)のアミノ基に前記一般式(I)で表されアルキルグリセリル基が結合する。
【0030】
具体的には、タンパク質加水分解物の10〜50質量%水溶液に、撹拌下、上記一般式(III)のアルキルグリセリル化剤を添加し、両者を接触させることにより行われる。アルキルグリセリル化剤の添加時間は、タンパク質加水分解物の量や分子量、アルキルグリセリル基の導入率によって異なるが、30分〜5時間程度が好ましく、アルキルグリセリル化剤の添加終了後、さらに1〜5時間程度撹拌を続けて反応を完結させるのが好ましい。
【0031】
反応は塩基性側で進行するので、タンパク質加水分解物水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ溶液を添加して、pH8〜11、特にpH9〜10にしておく必要がある。
【0032】
反応温度は、温度が高くなるほど反応速度は速くなるが、pHが高い状態で温度が高くなると、タンパク質加水分解物がさらに分解したり着色物質を生成したりするおそれがあり、また、アルキルグリセリル化剤のエポキシ環が急激に開環してタンパク質加水分解物のアミノ基と反応する前にアルキルグリセリル化剤同士が重合する恐れもある。そのため、反応は100℃以下で行うのが好ましく、50〜70℃で行うのがより好ましい。
【0033】
反応の進行と終了は、バンスライク(van Slyke)法などにより、反応中あるいは反応後のタンパク質加水分解物のアミノ態窒素量を測定することによって確認することができる。
【0034】
反応終了後、反応液は中和し、適宜濃縮して化粧料に配合できるが、電気透析、イオン交換樹脂、透析膜、ゲル濾過や限外濾過膜などで適宜精製して化粧料に配合してもよい。なお、アルキルグリセリル基のアルキル鎖長が長い場合は、反応液を濃縮すると不溶性物質が生じてくることもあるが、その場合は、水溶性のアルコール類を添加して可溶化してもよい。その際、多価アルコールを可溶化剤に用いると本発明の化粧料の必須成分混合液となる。
【0035】
タンパク質加水分解物のアミノ基へのアルキルグリセリル基の導入率は、タンパク質加水分解物の分子量やタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の使用目的によっても異なる。すなわち、分子量の大きなタンパク質加水分解物や塩基性アミノ酸が少ないタンパク質加水分解物に低い導入率でアルキルグリセリル基を付加すると、得られるタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル誘導体は疎水性が乏しく、毛髪に適用した際の疎水化は期待できない。そのため、毛髪の疎水化や滑り性を期待するなら、タンパク質加水分解物の全アミノ基の50%以上にアルキルグリセリル基が導入されているのが好ましい。
【0036】
全アミノ基の50%以上にアルキルグリセリル基を導入するためには、タンパク質加水分解物のアミノ酸重合度やタンパク質の種類によっても異なるが、タンパク質加水分解物の全アミノ基に対して、通常、モル比で0.7〜2.0当量のアルキルグリセリル化剤を用いる。ただし、タンパク質加水分解物によっては、立体障害などで反応しにくく、さらに多量のアルキルグリセリル化剤を用いる必要がある場合もある。
【0037】
一般式(III)において、Rの炭素数が長くなると毛髪や皮膚に適用した際、疎水化の効果はより大きいが、油性感が強くなりすぎて感触は悪くなる上に、化粧料中での安定性が悪くなるおそれがある。一方、Rの炭素鎖長が短いと毛髪や皮膚への疎水化効果が得られず、毛髪化粧料では毛髪への艶や良好な櫛通り性の付与効果が期待できなくなる。
【0038】
[化粧料]
本発明の化粧料としては、例えば、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、枝毛コート、ヘアクリーム、パーマネントウェーブ用第1剤および第2剤、セットローション、染毛剤、染毛料、液体整髪料、養毛・育毛剤などの毛髪化粧料、化粧水、クレンジングクリーム、エモリエントクリーム、ハンドクリーム、アフターシェーブローション、シェービングフォーム、洗顔クリーム、洗顔料、ボディシャンプー、各種石鹸、脱毛剤、フェイスパック、乳液、メイクアップ用品、日焼け止め用品などの皮膚化粧料などが挙げられる。
【0039】
そして、本発明の化粧料に含有させるタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の量は、化粧品の種類や使用目的によっても異なるが、概ね化粧品中0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜25質量%程度にするのがよい。すなわち、化粧料中での含有量が上記範囲より少ない場合は、毛髪に対しては艶やかさと滑りの良さおよび良好な櫛通り性を付与する効果が発揮しない恐れがあり、皮膚に対してはなめらかさや良好な滑り性を付与する効果が発現しないおそれがある。一方、含有量が上記範囲より多くなっても、それに見合う効果の向上が見られず、むしろ毛髪や皮膚にタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体が過剰に吸着してべたつきを生じるおそれがある。
【0040】
また、本発明の化粧料に含有させる多価アルコールは、前述のようにグリコール類やグリセリンが好ましく、具体的にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0041】
多価アルコールの量も化粧品の種類や使用目的によっても異なるが、概ね、化粧料中0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%にするのがよい。すなわち、化粧料中での含有量が上記範囲より少ない場合は、毛髪や皮膚に良好なしっとり感(潤い感)を付与したり、化粧料中でのタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の安定性を保つことができず、一方、含有量が上記範囲を超えるとべたつきを生じるおそれがある。
【0042】
本発明の化粧料は、上記一般式(I)で表されるアルキルグリセリル基が結合したタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体と多価アルコールを必須成分として含有することで構成されるが、これらの必須成分と併用して配合できる成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマーなどの合成ポリマー、半合成ポリマー類、動植物油、炭化水素類、エステル油、高級アルコール類、シリコーン油などの油剤、天然多糖類、保湿剤、低級アルコール類、アミノ酸類、増粘剤、動植物抽出物、防腐剤、香料、動植物由来および微生物由来の蛋白質を加水分解した加水分解タンパクおよびそれらの第4級アンモニウム誘導体、アシル化誘導体およびその塩、シリル化誘導体などが挙げられるが、それら以外にも本発明の化粧品基材の特性を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
【実施例】
【0043】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例などにおいて、溶液や分散液などの濃度を示す%はいずれも質量%である。
【0044】
実施例1および比較例1A〜1B
表1に示す組成の3種類のヘアリンスを調製し、それぞれのヘアリンスをシャンプーで洗浄した毛髪に使用し、使用後の毛髪の艶、滑り性、櫛通り性および潤い感(しっとり感)を官能評価した。なお、表1中の各成分の配合量はいずれも質量部によるものであり、配合量が固形分量でないものについては、成分名のあとに括弧書きで固形分濃度を示している。これは、以下の組成を示す表3、表5、表7、表9、表11などにおいても同様である。
【0045】
実施例1では、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体としてアルキルグリセリル化率73%のエンドウタンパクタンパク加水分解物のブチルグリセリル化誘導体(タンパク質加水分解物部分のアミノ酸重合度は5.8)を用い、多価アルコールとしては1,3−ブチレングリコールを用いている。比較例1Aでは、実施例1の原料でもあるアミノ酸重合度5.8のエンドウタンパク加水分解物と1,3−ブチレングリコールを用いている。また、比較例1Bでは、実施例1で用いているエンドウタンパクタンパク加水分解物のブチルグリセリル化誘導体を配合しているが多価アルコールは配合していない。
【0046】
【表1】

【0047】
上記ヘアリンスによる処理に先立ち、長さ15cmで重さ1.5gの毛束を3本用意し、毛髪の損傷度を一定にするため、3%過酸化水素水と1%アンモニアを含む水溶液に30℃で30分間浸漬してブリーチ処理を行い、水道水で洗浄後、さらにイオン交換水でゆすいだ。このブリーチ処理を行った毛束を、タンパク質加水分解物やその誘導体類などを含まない市販のシャンプーで洗浄し、お湯でゆすいだ。この洗浄後の毛束に対して、上記実施例1および比較例1A〜1Bのヘアリンスをそれぞれ2gずつ用いて処理し、お湯でゆすぎ、ヘアドライヤーで乾燥した。このシャンプー洗浄、ヘアリンス処理、ドライヤー乾燥の工程を5回繰り返した後、各毛束について、毛髪の艶、滑り性、櫛通り性および潤い感を下記の評価基準で10人の女性パネリストに評価させた。その結果を表2に10人の平均値で示す。
【0048】
艶の評価基準
3:艶やかである
2:やや艶がある
1:艶がない
滑り性の評価基準
3:滑りがよい
2:やや滑りがよい
1:滑りが悪い
櫛通り性の評価基準
3:櫛通りが非常に良好である
2:櫛通りがやや良好である
1:櫛通りが悪い
潤い感(しっとり感)の評価基準
3:しっとりしている
2:しっとりしているがややべたつく
1:しっとり感がない
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示したように、エンドウタンパク加水分解物のブチルグリセリル化誘導体を含有する実施例1のヘアリンスで処理した毛髪は、毛髪の艶、滑り性、櫛通り性および潤い感のいずれの評価項目においてもエンドウタンパク加水分解物を含有する比較例1Aのヘアリンス処理した毛髪より評価値が高かった。また、エンドウタンパク加水分解物のブチルグリセリル化誘導体は含有するが多価アルコールを含有しない比較例1Bのヘアリンスで処理した毛髪に比べても評価値が高く、エンドウタンパク加水分解物のブチルグリセリル化誘導体と多価アルコールの1,3−ブチレングリコールを併用すると、毛髪への滑り性、櫛通り性、潤い感がより高められることが明らかであった。
【0051】
実施例2および比較例2A〜2B
表3に示す組成の3種類の毛髪スタイリングジェルを調製し、それぞれの毛髪スタイリングジェルを洗浄した毛束に使用して、処理後の毛髪の艶、滑り性、ウェーブの感触(しなやかさ)および潤い感を評価した。
【0052】
実施例2では、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体としてアルキルグリセリル化率68%のシルク加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体(シルク加水分解物部分のアミノ酸重合度は11)と多価アルコールはグリセリンを用い、比較例2Aではシルク加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体の原料であるアミノ酸重合度が11のシルク加水分解物とグリセリンを用いている。比較例2Bはタンパク質加水分解物やその誘導体などは用いず、実施例2や比較例2Aと同量のグリセリンを配合している。なお、実施例2で用いたシルク加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体は30%溶液であるが、シルク加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体とグリセリンと水の質量比3:2:5の混合物で得られたものであり、表3のようにシルク加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体溶液を10%配合するとグリセリンも2%配合されることになり、表3中の実施例2のグリセリン欄の2.00はこの量を指している。
【0053】
【表3】

【0054】
上記毛髪スタイリングジェルによる処理に先立ち、長さ30cmで重さ2.5gの毛束を3本用意し、あらかじめ2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾した。この毛束を直径25mmのカール用ロッドに巻き付け、そのロッドに巻き付けた毛束に実施例2および比較例2A〜2Bの毛髪スタイリングジェルをそれぞれ2gずつ塗布し、ヘアドライヤーで乾燥した。乾燥後、毛束をロッドから外し、毛髪の艶、滑り性、ウェーブの感触(しなやかさ)および潤い感を評価した。艶、滑り性および潤い感については実施例1と同じ基準で評価した。また、ウェーブの感触(しなやかさ)については下記の評価基準で10人の女性パネリストに評価させた。その結果を表4に10人の平均値で示す。
【0055】
ウェーブの感触(しなやかさ)の評価基準
3:しなやかで弾力がある
2:しなやかでやや弾力がある
1:しなやかさや弾力性がない
【0056】
【表4】

【0057】
表4に示したように、シルク加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体を含有する実施例2の毛髪スタイリングジェルで処理した毛髪は、その原料であるシルク加水分解物を含有する比較例2Aや化粧品に一般に用いられるグリセリンを含有する比較例2Bの毛髪スタイリングジェルで処理した毛髪より、艶、滑り性、ウェーブの感触および潤い感のいずれの評価項目でも評価値が高く、シルク加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体は毛髪に艶、滑り性、良好なウェーブの感触および潤い感を付与する作用に優れていることが明らかであった。
【0058】
実施例3および比較例3A〜3B
表5に示す組成の3種類のパーマネントウェーブ用第1剤を調製し、それぞれのパーマネントウェーブ用第1剤と、6%臭素酸ナトリウム水溶液からなるパーマネントウェーブ用第2剤を用いて毛束にパーマネントウェーブ処理を施し、毛髪の艶、滑り性、ウェーブの感触および潤い感を評価した。
【0059】
実施例3では、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体としてアルキルグリセリル化率70%のケラチン加水分解物のラウリルグリセリル化誘導体(ケラチン加水分解物部分のアミノ酸重合度は8)と多価アルコールとして1,3−ブチレングリコールを用い、比較例3Aでは、ケラチン加水分解物のラウリルグリセリル誘導体の原料であるアミノ酸重合度8のケラチン加水分解物を用い、比較例3Bでは、ケラチン加水分解物やその誘導体は用いず、多価アルコールのみを用いている。
【0060】
【表5】

【0061】
上記パーマネントウェーブ用第1剤による毛髪の処理は下記のように行った。すなわち、長さ20cmに揃えた毛髪をあらかじめ2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾し、これらの毛髪50本からなる毛束を3本作製し、それらをそれぞれ長さ10cmで直径1cmのロッドに巻き付けた。そのロッドに巻き付けた毛束に、実施例3および比較例3A〜3Bのパーマネントウェーブ用第1剤をそれぞれ2mlずつ塗布し、それらの毛束をラップで覆い、15分間放置後、流水で静かに10秒間洗浄した。ついで、パーマネントウェーブ用第2剤を2mlずつ塗布し、ラップで覆い、15分間放置した後、毛束をロッドからはずし、流水中で30秒間静かに洗浄した。各毛束は60℃の熱風乾燥機中で乾燥し、乾燥後、毛髪の艶、滑り性、ウェーブの感触および潤い感について10人のパネリストに実施例1および2と同じ評価基準で評価させた。その結果を表6に10人の平均値で示す。
【0062】
【表6】

【0063】
表6の結果から明らかなように、ケラチン加水分解物のラウリルグリセリル化誘導体と1,3−ブチレングリコールを含有する実施例3のパーマネントウェーブ用第1剤で処理した毛髪は、ケラチン加水分解物と1,3−ブチレングリコールとを含有する実施例3Aや1,3−ブチレングリコールを含有する比較例3Bのパーマネントウェーブ用第1剤で処理した毛髪より、艶、滑り性、ウェーブの感触および潤い感のいずれの評価項目でも評価値は高かった。すなわち、ケラチン加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体と1,3−ブチレングリコールの配合は、毛髪に艶、滑り性、良好なウェーブの感触および潤い感を付与する効果が高いことが示されていた。
【0064】
実施例4および比較例4A〜4B
表7に示す組成の3種類の化粧水を調製し、それぞれの化粧水を肌に塗布したときの、肌のなめらかさ、滑り性およびしっとり感(保湿感)を評価した。
【0065】
実施例4では、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体としてアルキルグリセリル化率73%のエンドウタンパクタンパク加水分解物のブチルグリセリル化誘導体(タンパク質加水分解物部分のアミノ酸重合度は5.8)を用い、多価アルコールとしてプロピレングリコールを用いている。比較例4Aでは比較例2と同じアミノ酸重合度が5.8のエンドウタンパク加水分解物と多価アルコールとしてプロピレングリコールを用い、比較例4Bは、実施例4と同じエンドウタンパクタンパク加水分解物のブチルグリセリル化誘導体のみを用いていて、多価アルコールを配合していない。
【0066】
【表7】

【0067】
上記実施例4および比較例4A〜4Bの化粧水の評価は下記のように行った。すなわち、10人の女性パネリストに、各人の前腕部にそれぞれの化粧水を塗布させ、塗布後の肌の滑り感、べたつき感、しっとり感を下記の評価基準で評価させた。その結果を表8に10人の平均値で示す。
【0068】
なめらかさの評価基準
3:なめらかである
2:ややなめらかである
1:なめらか感がない
滑り性の評価基準
3:すべすべしている
2:やや滑りを感じる
1:滑り感がない
しっとり感の評価基準
3:しっとりしている
2:ややしっとりしている
1:しっとりしない
【0069】
【表8】

【0070】
表8に示したように、エンドウタンパク加水分解物のブチルグリセリル誘導体とプロピレングリコールを含有する実施例4の化粧水は、エンドウタンパク加水分解物とプロピレングリコールを含有する比較例4Aの化粧水に比べて、なめらかさ、滑り性、しっとり感のいずれも評価値が高かった。また、エンドウタンパク加水分解物のブチルグリセリル誘導体のみを配合して多価アルコールを用いていない比較例4Bではなめらかさ、滑り性については比較的評価値は高かったが、しっとり感がなく、しっとり感の付与には多価アルコールが必要であることが明らかであった。
【0071】
実施例5および比較例5A〜5B
表9に示す組成の3種類のハンドクリームを調製し、それぞれのハンドクリームを皮膚に塗布し、塗布後の皮膚のなめらかさ、滑り性およびしっとり感を評価した。
【0072】
実施例5では、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体としてアルキルグリセリル化率80%の魚皮由来コラーゲン加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体(コラーゲン加水分解物部分のアミノ酸重合度は19)を用い、多価アルコールとして1,3−ブチレングリコールを用いている。比較例5Aでは実施例5の魚皮由来コラーゲン加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体の原料であるアミノ酸重合度が19の魚皮由来コラーゲン加水分解物と多価アルコールとしてグリセリンを用い、比較例5Bではタンパク質加水分解物などは用いず多価アルコールのグリセリンのみを用いている。なお、実施例5で用いた魚皮由来コラーゲン加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体は30%溶液であるが、魚皮由来コラーゲン加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体とグリセリンと水の質量比3:2:5の混合物で得られたものであり、表9のように魚皮由来コラーゲン加水分解物のステアリルグリセリル化誘導体溶液を5%配合するとグリセリンも1%配合されることになり、表9の実施例5のグリセリン欄の1.00はこの量を指している。
【0073】
【表9】

【0074】
実施例5および比較例5A〜5Bのハンドクリームの評価は以下のように行った。すなわち、10人の女性パネリストに毎日一度は、それぞれのハンドクリームを各1gずつ手の甲に塗布させ、それを5日間繰り返した後、乾燥後の皮膚のなめらかさ、滑り性およびしっとり感について実施例4と同じ評価基準で評価させた。その結果を表10に10人の平均値で示す。
【0075】
【表10】

【0076】
表10に示した結果から明らかなように、魚皮由来コラーゲン加水分解物のラウリルグリセリル化誘導体とグリセリンを含有するハンドクリームの使用後は、なめらかさ、滑り性、しっとり感のいずれの評価項目においても、魚皮由来コラーゲン加水分解物とグリセリンを含有する比較例5Aのハンドクリームやグリセリンのみを配合する比較例5Bのハンドクリームより評価値が高く、魚皮由来コラーゲン加水分解物のラウリルグリセリル化誘導体とグリセリンの配合は皮膚になめらかさ、滑り性およびしっとり感を付与する効果が高いことが明らかであった。
【0077】
実施例6および比較例6A〜6B
表11に示す組成の3種類の乳液を調製し、それぞれの乳液を皮膚に塗布し、使用後の皮膚のなめらかさ、滑り性およびしっとり感を評価した。
【0078】
実施例6では、タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体としてアルキルグリセリル化率75%の米タンパク加水分解物のカプリルグリセリル化誘導体(米タンパク加水分解物部分のアミノ酸重合度は3.5)を用い、多価アルコールとしてジプロピレングリコールを用いている。比較例6Aでは実施例6の米タンパク加水分解物のカプリルグリセリル化誘導体の原料であるアミノ酸重合度3.5の米タンパク加水分解物と多価アルコールとしてジプロピレングリコールを用い、比較例5Bではタンパク質加水分解物などは用いず多価アルコールのジプロピレングリコールのみを用いている。
【0079】
【表11】

【0080】
上記実施例6および比較例6A〜6Bの乳液の評価は下記のように行った。すなわち、10人の女性パネリストにそれぞれの乳液を1mlずつ手の甲に塗布させ、乾燥後の皮膚のなめらかさ、滑り性およびしっとり感について、実施例4と同じ評価基準で評価させた。その結果を表12に10人の平均値で示す。
【0081】
【表12】

【0082】
表12に示したように、米タンパク加水分解物のカプリルグリセリル化誘導体とジプロピレングリコールを含有する実施例6の乳液で処理した皮膚は、米タンパク加水分解物とジプロピレングリコールを含有する比較例6Aの乳液やジプロピレングリコールのみを含有する比較例6Bの乳液に比べて、なめらかさ、滑り性、しっとり感とも評価値が高く、米タンパク加水分解物のカプリルグリセリル化誘導体とジプロピレングリコールの併用は皮膚になめらかさ、滑り性、しっとり感を付与する効果に優れているのが明らかであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質加水分解物のアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の50%以上に下記式(I)
【化1】

〔式中、Rは炭素数4〜22のアルキル基、炭素数4〜22のアルケニル基またはフェニル基を示す〕
で表されるアルキルグリセリル基が結合したタンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体と多価アルコールを含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
前記タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体のタンパク質加水分解物部分のアミノ酸重合度が3〜50である請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
タンパク質加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体の含有量が0.1〜30質量%で、多価アルコールの含有量が0.1〜20質量%ある請求項1または2のいずれかに記載の化粧料。


【公開番号】特開2013−87075(P2013−87075A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228450(P2011−228450)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000147213)株式会社成和化成 (45)
【Fターム(参考)】