説明

化粧液,化粧液の製造方法及び化粧方法

【課題】 防腐剤を使用することなく、保存を容易にするとともに、使用の際にも取り扱いが容易で、しかも保湿機能の高い化粧液及び化粧液の製造方法を提供する。
【解決手段】 ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を、多価アルコールに分散させるとともに、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物とは異なる有機酸及び/または有機酸塩を上記多価アルコールに分散させ、水を含まない形態にする。ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.01〜2.0重量%、多価アルコールを97重量%以上含有し、有機酸及び/または有機酸塩により、5≦pH<7の弱酸性にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を含有する化粧液に係り、特に、皮膚に対する保湿力に優れ、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくする効果のある化粧液,この化粧液の製造方法及びこの化粧液を用いた化粧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物は、皮膚に対する保湿力に優れ、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくする効果のあることが知られており、このヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を用いた化粧液が種々開発されている。
従来、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を含有する化粧液としては、例えば、ヒアルロン酸化合物としてヒアルロン酸ナトリウムを用い、水に0.1%程度のヒアルロン酸ナトリウムを混合し、微生物の繁殖を防ぐために、防腐剤として例えばフェノキシエタノールやパラべン等の防腐剤を混合したものが普及している。
ところで、この化粧液にあっては、防腐剤が添加されているので、皮膚に対する刺激があり、長期間皮膚に接触した場合、経皮吸収による全身毒性などを誘発することがある等の欠点を有している。
【0003】
これを解決するために、従来においては、例えば、特開2006−182750号公報(特許文献1)に掲載されている技術が知られている。これは、ヒアルロン酸ナトリウム,アスコルビン酸誘導体,コラーゲンを配合した水溶液を凍結乾燥したものであり、出来上がった粉末を容器に入れ、この容器内を窒素ガスで置換した後ゴム栓で容器を封栓することにより、酸素が存在しない状態にして水分の吸収がないように保存している。そして、この乾燥品を使用するときには、水または化粧水などで再溶解させて使用するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−182750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来のヒアルロン酸ナトリウムを含む凍結乾燥においては、凍結乾燥化粧品の入った容器内を窒素ガスで置換した後ゴム栓で容器を封栓することにより長期保存が可能であるので、一度開封すると水分の吸収があり長期保存は不可能になる。また、使用時にも逐一粉末を水に溶解しなければならないので、取り扱いが面倒になっているという問題があった。更にまた、使用時に水に溶解するとはいっても、1回当たりの必要量を逐一溶解していたのでは、必要量は極めて少量であることから、例えば1週間分の量の粉末を水に溶解して水溶液とし、容器に入れて冷蔵庫などで保管して用いるようにすることを一般的に行う。しかしながら、このような使用方法では、結果として、水溶液の状態で、ある期間保存することになることから、その期間が短い期間であっても、微生物が繁殖して腐敗してしまうことがあるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、防腐剤を使用することなく、保存を容易にするとともに、使用の際にも取り扱いが容易で、しかも保湿機能の高い化粧液,この化粧液の製造方法及びこの化粧液を用いた化粧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明の化粧液は、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を含有する化粧液において、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を、多価アルコールに分散させ、水を含まない形態にした構成としている。ここで、ヒアルロン酸化合物には、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸塩がある。その他、アセチル化ヒアルロン酸等のヒアルロン酸の誘導体を用いることもできる。さらにヒアルロン酸のカルボキシル基や水酸基に保護基等が導入されたもの等が挙げられる。本発明において、使用するヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物の分子量は特に限定されない。
【0008】
これにより、液状になるので、容器に入れて容易に保存しておくことができる。この場合、水を含まない形態になっているとともに、従来の粉末と異なって液状であることから空気に触れても水分が吸収されにくいので、細菌、カビなどの微生物の繁殖が抑止され保存性が極めて良くなる。また、使用に際しては、周知の手動定量吐出型の容器などにより、所要量を吐出させて、例えば、手のひら等に1回分の分量を吐出させて、そのまま使用し、あるいは、新鮮な水と混合して用いる。この場合、従来の粉末と比較して、液状なのでそのまま用いるときは勿論のこと、新鮮な水で薄めて用いる場合にも混合が容易であり、取扱いがきわめて良いものになる。更にまた、水を含まないことから、防腐剤の混合が不要になり、そのため、防腐剤によって皮膚を刺激する事態がなくなり、皮膚の健康に極めて良いものになる。また、皮膚に塗布した状態では、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物が多価アルコールと共働して保湿機能を発揮し、保湿性の向上が図られ、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
【0009】
そして、必要に応じ、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.01〜2.0重量%、上記多価アルコールを97重量%以上含有する構成としている。
0.01重量%よりも低いと、保湿効果が発揮されにくくなり、2.0重量%を超えると、分散したヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物が多価アルコールに溶解しきれずに析出しやすくなり、品質の低下を招くおそれがある。
望ましくは、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.1〜1.0重量%含有することである。この範囲で確実に分散溶解させることができる。また、化粧液として高価なヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を大量に使わなくても多価アルコールとの併用で高い保湿効果が得られるので、消費者にとって大きなメリットがある。
【0010】
そしてまた、必要に応じ、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物とは異なる有機酸及び/または有機酸塩を上記多価アルコールに分散させ、5≦pH<7の弱酸性にした構成としている。
一般に、健康な皮膚の表面はpH5.5〜6.0の弱酸性を保っている。ところで、例えば、アルカリ性の石鹸で洗顔した直後は肌表面がアルカリ性に傾いているが、この状態で本化粧液を用いると、本化粧液は有機酸及び/または有機酸塩の分散により弱酸性になっていることから、皮膚をすぐに弱酸性の環境に戻すことができ、皮膚のバリア機能や生理機能を正常に保持し、健康な肌を維持することができるようになる。
【0011】
この場合、上記有機酸及び/または有機酸塩として、有機酸であるクエン酸を用い、該クエン酸を0.0005〜0.2重量%含有することが有効である。0.0005重量%に満たないと、その効果が薄く、pHが中性に近くなり、0.2重量%を超えると、酸性度が高くなりすぎる。
好ましくは、0.001〜0.1重量%、より好ましくは、0.005〜0.07重量%、更に好ましくは、0.01〜0.04重量%含有することである。
クエン酸は柑橘類などに含まれる有機化合物で、ヒドロキシ酸のひとつであり、常温で無色あるいは白色の固体である。ここで、クエン酸を用いるのは、生体成分であり、食品添加物としても使用され、安全性が高いからである。
この範囲のクエン酸を含有する化粧液を水に溶解したときに理想的な弱酸性となる。上記のとおり、一般に、健康な皮膚の表面はpH5.5〜6.0の弱酸性を保っている。ところで、例えば、アルカリ性の石鹸で洗顔した直後は肌表面がアルカリ性に傾いているが、この状態で本化粧液を用いると、クエン酸が含まれていることから、すぐに弱酸性の環境に戻すことができ、皮膚のバリア機能や生理機能を正常に保持し、健康な肌を維持することができるようになる。
【0012】
また、必要に応じ、上記多価アルコールを、グリセリン単体若しくはグリセリンと他の多価アルコールとの混合物で構成している。グリセリンの配合量は、化粧液重量に対して50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
グリセリンは、皮脂の分解によって生成される天然の皮膚保湿成分でもあり、もっとも古くから用いられてきた保湿剤であり、皮膚に対してうるおいを与え、しっとりとした感触を与える。そのため、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物と相まって、相乗的に保湿能力を向上させ、より一層、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明の上記の化粧液の製造方法は、多価アルコールの溶液に、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を添加して溶解する第一溶解工程と、該第一溶解工程後の溶液に、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物とは異なる有機酸及び/または有機酸塩を添加して溶解し5≦pH<7の弱酸性にする第二溶解工程とを備えた構成としている。
これにより、上記の化粧液が製造される。この場合、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物は多価アルコールには溶けにくい物質であり、有機酸及び/または有機酸塩も例えばクエン酸等のように多価アルコールには溶けにくい物質もあり、これらを同時に添加すると、溶解が進まない場合にどちらの物質が溶解しないかなど溶解具合を視認することができないが、本製造方法では、これらの物質を第一溶解工程と第二溶解工程との夫々別の工程で添加するので、溶け具合を確認することができ、そのため、確実に溶解を行うことができるようになる。
また、有機酸及び/または有機酸塩はpHを調節するものであるが、微量でもpHの変動が大きいものでは、有機酸及び/または有機酸塩を第二溶解工程で後から添加するので、第一溶解工程での溶液の分量等の条件に合わせてその添加量を調整することができ、確実にpH調整を行うことができるようになる。そのため、品質の高い化粧液を製造することができる。
【0014】
そして、必要に応じ、上記第一溶解工程において、30℃〜70℃の多価アルコールの溶液に、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を添加して撹拌し、次に、該溶液を80℃±5℃に加温する構成としている。
多価アルコールの温度が30℃に満たないと、多価アルコールは粘度が高く撹拌しにくい。70℃を越えると蒸気の影響でヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物が容器(釜)に付着しやすくなる。望ましくは、多価アルコールの溶液を60℃±5℃に加温し、この加温過程で、あるいは加温後に、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を添加する。そして、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を添加した後、望ましくは撹拌しながら、溶液を80℃±5℃に加温する。これにより、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を確実に多価アルコールに溶解することができるようになる。
【0015】
また、必要に応じ、上記第二溶解工程において、溶液を60℃±5℃にし、この状態で上記有機酸及び/または有機酸塩を添加して撹拌し、その後、40℃以下まで冷却する構成としている。
有機酸及び/または有機酸塩は、80℃±5℃に加温した溶液に添加するのではなく、冷却する等して60℃±5℃にした溶液に添加するのは、温度が高いとpHが変化する等調整が難しく、化粧液の使用温度で添加するのが望ましいが、温度が低すぎると溶解しにくくなる。60℃±5℃にした溶液に有機酸及び/または有機酸塩を溶解することで、溶解させやすく、また、適正なpH調整を行うことができるようになる。更に、40℃以下まで冷却するので、安定化を早めることができる。
【0016】
更に、必要に応じ、上記第二溶解工程後に、溶液をろ過して上記多価アルコールに溶解しないヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を除去するろ過工程を設けた構成としている。
これにより、多価アルコールに溶解しないヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物がろ過により除去されるので、より均質になり、品質が向上する。
【0017】
更に、本発明の化粧方法は、化粧液を皮膚に塗布する化粧液ステップを備えた化粧方法において、該化粧液ステップにおいて、上記の化粧液を使用し、使用する使用化粧液をそのまま用い、あるいは、当該使用化粧液にその自重の0.5〜100倍量の水を混合して用いる構成としている。そのまま使用すると、粘性により使用感が重たく感じるので、水を混合すると良い。水を混合するときは、水を、使用化粧液の自重の0.5〜100倍量、好ましくは、5〜50倍量、より好ましくは、10〜20倍量用いる。この場合、従来の粉末と比較して、液状なので、新鮮な水で薄めて用いる場合にも混合が容易であり、取扱いがきわめて良いものになる。そして、皮膚に塗布した状態では、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物が多価アルコールと共働して保湿機能を発揮し、保湿性の向上が図られ、皮膚に弾力性、潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。この場合、防腐剤の混合がないことから、防腐剤によって皮膚を刺激する事態がなくなり、皮膚の健康に極めて良いものになる。
【0018】
そして、必要に応じ、上記化粧水ステップの前に、洗顔料を用いて洗顔を行う洗顔ステップを備え、該洗顔料として、合成界面活性剤を含まない石鹸を用いる構成としている。
一般に、洗顔クリーム、洗顔フォームは脂肪酸石鹸やその他の合成界面活性剤と保湿剤、油分等を配合して作られている。合成界面活性剤は、水分と油分のように、表面張力が違い、互いに混じり合わない物質の仲立ちをし、溶け込んだ状態にする物質である。このような合成界面活性剤は、皮膚に塗布した際、表皮の皮脂膜を部分的に溶解する相対的能力のために、皮膚に刺激反応を誘発しやすく、また表皮の角質層蛋白質に合成界面活性剤が結合して、肌荒れの原因となることが指摘されている。また、合成界面活性剤が環境に放出されると水生生物の生態に悪影響を及ぼすという環境上の問題もある。
そのため、本発明のように、洗顔料として合成界面活性剤を含まない石鹸を用いることにより、皮膚に刺激反応を誘発する事態が防止され、肌荒れが防止される。この結果、化粧水ステップにおいて塗布する化粧液の効果をより一層確実に発揮させることができる。
【0019】
また、必要に応じ、上記洗顔ステップの前に、クレンジング料を用いてメイクを落とすメイク落としステップを備え、該クレンジング料として、合成界面活性剤を含まない油性材料のみを用いる構成としている。一般に、油性の化粧は洗顔料のみでは落とせない。そこでメイクとなじみのよい油性成分に合成界面活性剤を配合した洗い流せるメイク落しがよく使用されている。上記の通り、合成界面活性剤は、皮膚に刺激反応を誘発しやすく、肌荒れの原因となることが指摘されているが、本発明のように、合成界面活性剤を含まないクレンジング料を用いることにより、皮膚に刺激反応を誘発する事態が防止され、肌荒れが防止される。この結果、洗顔ステップによる効果及び化粧水ステップにおいて塗布する化粧液の効果をより一層確実に発揮させることができる。
【0020】
更に、必要に応じ、上記化粧水ステップの後に、仕上げ料を皮膚に塗布する仕上げステップを備え、該仕上げ料として、合成界面活性剤を含まない油性材料のみを用いる構成としている。一般に、乳液、クリームは水、保湿成分、油性成分が合成界面活性剤により乳化されたものであり、化粧水を塗布した上に使用することで、肌の閉塞効果で水分の蒸散を防ぎ肌の保湿を促進する。上記の通り、合成界面活性剤は、皮膚に刺激反応を誘発しやすく、肌荒れの原因となることが指摘されているが、本発明のように、合成界面活性剤を含まない仕上げ料を用いることにより、皮膚に刺激反応を誘発する事態が防止され、肌荒れが防止される。この結果、メイク落としステップの効果,洗顔ステップによる効果及び化粧水ステップにおいて塗布する化粧液の効果をより一層確実に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を多価アルコールに分散させ、水を含まない形態にしたので、液状になることから、容器に入れて容易に保存しておくことができる。この場合、水を含まない形態になっているとともに、従来の粉末と異なって液状であることから空気に触れても水分が吸収されにくいので、細菌、カビなどの微生物の繁殖が抑止され保存性が極めて良くなる。また、使用に際しては、手動の定量吐出型の容器などにより、所要量を吐出させて、例えば、手のひら等に1回分の分量を吐出させて、そのまま使用し、あるいは、新鮮な水と混合して用いる。この場合、従来の粉末と比較して、液状なのでそのまま用いるときは勿論のこと、新鮮な水で薄めて用いる場合にも混合が容易であり、取扱いがきわめて良いものになる。更にまた、水を含まないことから、防腐剤の混合が不要になり、そのため、防腐剤によって皮膚を刺激する事態がなくなり、皮膚の健康に極めて良いものになる。また、皮膚に塗布した状態では、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物が多価アルコールと共働して保湿機能を発揮し、保湿性の向上を図ることができ、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
また、5≦pH<7の弱酸性にする上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物とは異なる有機酸及び/または有機酸塩を添加すれば、アルカリ性に傾いた肌表面を、すぐに弱酸性の環境に戻すことができ、皮膚のバリア機能や生理機能を正常に保持し、健康な肌を維持することができるようになる。
【0022】
更に、本発明の化粧液の製造方法においては、上記の作用,効果を奏する化粧液を製造することができる。この場合、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物は多価アルコールには溶けにくい物質であり、有機酸及び/または有機酸塩も例えばクエン酸等のように多価アルコールには溶けにくい物質もあり、これらを同時に添加すると、溶解が進まない場合にどちらの物質が溶解しないかなど溶解具合を視認することができないが、本製造方法では、これらの物質を第一溶解工程と第二溶解工程との夫々別の工程で添加するので、溶け具合を確認することができ、そのため、確実に溶解を行うことができるようになる。また、有機酸及び/または有機酸塩はpHを調節するものであるが、微量でもpHの変動が大きいものでは、有機酸及び/または有機酸塩を第二溶解工程で後から添加するので、第一溶解工程での溶液の分量等の条件に合わせてその添加量を調整することができ、確実にpH調整を行うことができるようになり、品質の高い化粧液を製造することができる。
【0023】
更にまた、本発明の化粧方法においては、防腐剤や合成界面活性剤の混合がないことから、防腐剤や合成界面活性剤によって皮膚を刺激する事態がなくなり、皮膚の健康に極めて良いものになる。そのため、本化粧液による保湿性の向上を図ることができ、皮膚に弾力性、潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る化粧液の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る化粧液の製造方法を示す工程図である。
【図3】本発明の実施例1乃至7及び比較例について、溶解安定性の試験結果を示す表図である。
【図4】本発明の実施例1及び比較例について、微生物の発生試験の結果を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る化粧液及び化粧液の製造方法について詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る化粧液は、図1に示すように、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を、多価アルコールに分散させるとともに、5≦pH<7の弱酸性にする上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物とは異なる有機酸及び/または有機酸塩を該多価アルコールに分散させて、水を含まない形態にしたものである。
【0026】
ヒアルロン酸化合物には、例えば、ヒアルロン酸塩がある。ヒアルロン酸塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等の無機塩酸;酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩,亜鉛塩,コバルト塩等とすることができる。また、その他ヒアルロン酸の誘導体を用いることもできる。具体的には、アセチル化ヒアルロン酸、ヒアルロン酸メチルエステル等、さらにヒアルロン酸のカルボキシル基や水酸基に保護基等が導入されたもの等が挙げられる。
本発明において、使用するヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物の分子量は特に限定されない。ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物は、皮膚によく吸収されてべとつかず、角質の水分量を高める効果を奏する。また、空気中の湿度に左右されることなく、その保湿性を一定に保つ特性がある。
【0027】
ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物として、例えば、汎用のヒアルロン酸ナトリウムが知られている。ヒアルロン酸ナトリウムは、鶏の鶏冠、動物の皮膚などの動物組織等から抽出する抽出法あるいは微生物の培養による発酵法で工業的に生産されているが、本発明に用いられるヒアルロン酸ナトリウムは、抽出法あるいは発酵法のいずれの方法で生産されたものでも良い。一般に、ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は比較的小さいものから数百万になるものまで多岐にわたり、本発明に用いるヒアルロン酸ナトリウムは、いずれのものでも使用できる。
【0028】
多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等)、3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等)、4価のアルコール(例えば、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等)、5価のアルコール(例えば、キシリトール等);6価のアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等)、多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等)を一種若しくは二種以上用いることができる。
【0029】
例えば、多価アルコールとして、グリセリン単体若しくはグリセリンと他の多価アルコールとの混合物を用いることができる。グリセリンの配合量は、化粧液重量に対して50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
グリセリンは、皮膚に於いては皮脂の分解によって生成される天然の皮膚保湿成分でもあり、もっとも古くから用いられてきた保湿剤であり、皮膚に対してうるおいを与え、しっとりとした感触を与える。そのため、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物と相まって、相乗的に保湿能力を向上させることができる。
【0030】
有機酸としては、例えば、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、タンニン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸等が挙げられる。
有機酸塩としては、例えば、上記の有機酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
これらの有機酸及び有機酸塩は、1種を単独で又は二種以上を組合わせて使用することができる。有機酸及び/または有機酸塩を多価アルコールに分散させることにより、5≦pH<7の弱酸性にする。
実施の形態では、クエン酸を用いた。クエン酸は、柑橘類などに含まれる有機化合物で、ヒドロキシ酸のひとつであり、常温で無色あるいは白色の固体である。このクエン酸を分散させることで、弱酸性にすることができる。ここで、クエン酸を用いるのは、生体成分であり、食品添加物としても使用され、安全性が高いからである。
【0031】
そして、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.01〜2.0重量%、多価アルコールを97重量%以上含有する構成としている。
0.01重量%よりも低いと、保湿効果が発揮されにくくなり、2.0重量%を超えると、分散したヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物が多価アルコールに溶解しきれずに析出しやすくなり、品質の低下を招くおそれがある。
望ましくは、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.1〜1.0重量%含有することである。この範囲で確実に分散溶解させることができる。
【0032】
そしてまた、クエン酸を、0.0005〜0.2重量%含有する構成としている。0.0005重量%に満たないと、その効果が薄く、pHが中性に近くなり、0.2重量%を超えると、酸性度が高くなりすぎる。
好ましくは、0.001〜0.1重量%、より好ましくは、0.005〜0.07重量%、更に好ましくは、0.01〜0.04重量%含有することである。
この範囲のクエン酸を含有する化粧液を水に溶解したときに理想的な弱酸性となる。
【0033】
次に、本発明の実施の形態に係る化粧液の製造方法について説明する。
図2に示すように、実施の形態では、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物としてヒアルロン酸ナトリウムを用い、多価アルコールをグリセリン単体で構成し、有機酸及び/または有機酸塩として、有機酸であるクエン酸を用いた。実施の形態に係る化粧液の製造方法は、多価アルコール(グリセリン)の溶液に、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物(ヒアルロン酸ナトリウム)を添加して溶解する第一溶解工程と、この第一溶解工程後の溶液に有機酸及び/または有機酸塩(クエン酸)を添加して溶解し5≦pH<7の弱酸性にする第二溶解工程と、ろ過工程とを備えている。
この場合、ヒアルロン酸ナトリウムとクエン酸とは、夫々、グリセリンには溶けにくい物質であり、同時にこれらを添加すると、溶解が進まない場合にどちらの物質が溶解しないかなど溶解具合を視認することができないが、本製造方法では、これらの物質を第一溶解工程と第二溶解工程との夫々別の工程で添加するので、溶け具合を確認することができ、そのため、確実に溶解を行うことができるようになる。
また、クエン酸はpHを調節するものであり、微量でもpHの変動が大きいが、クエン酸を第二溶解工程で後から添加するので、第一溶解工程での溶液の分量等の条件に合わせてその添加量を調整することができ、確実にpH調整を行うことができるようになる。そのため、品質の高い化粧液を製造することができる。
【0034】
詳しくは、先ず、第一溶解工程において、グリセリンの溶液を30℃〜70℃、望ましくは、60℃±5℃に加温し、この加温過程で、あるいは加温後に、ヒアルロン酸ナトリウムを添加して撹拌し(S1)、次に、この溶液を80℃±5℃に加温してヒアルロン酸ナトリウムを溶解する(S2)。
グリセリンの温度が30℃に満たないと、グリセリンは粘度が高く撹拌しにくい。70℃を越えると蒸気の影響でヒアルロン酸ナトリウムが容器(釜)に付着しやすくなる。60℃±5℃に加温する過程で、あるいは加温後に、ヒアルロン酸ナトリウムを添加することで、撹拌が容易で溶解が確実に行われる。そして、ヒアルロン酸ナトリウムを添加した後、望ましくは撹拌しながら、溶液を80℃±5℃に加温するので、ヒアルロン酸ナトリウムをより一層確実にグリセリンに溶解することができるようになる。
【0035】
ヒアルロン酸ナトリウムが均一に溶解したことを確認したならば、第二溶解工程において、溶液を60℃±5℃に冷却し(S3)、この状態でクエン酸を添加して撹拌する(S4)。そして、クエン酸が均一に溶解したことを確認したならば、40℃以下まで冷却する(S5)。
クエン酸は、80℃±5℃に加温した溶液に添加するのではなく、冷却して60℃±5℃にした溶液に添加するのは、温度が高いとpHが変化する等調整が難しく、化粧液の使用温度で添加するのが望ましいが、温度が低すぎると溶解しにくくなる。60℃±5℃にした溶液にクエン酸を溶解することで、溶解させやすく、また、適正なpH調整を行うことができるようになる。更に、40℃以下まで冷却するので、安定化を早めることができる。
【0036】
また、第二溶解工程後に、ろ過工程で、溶液をろ過してグリセリンに溶解しないヒアルロン酸ナトリウムを除去する(S6)。この場合、グリセリンに溶解しないヒアルロン酸ナトリウムがろ過により除去されるので、品質を向上させることができる。尚、ヒアルロン酸ナトリウムが析出するなどしないで十分に溶解しているのであれば、ろ過工程は特に設けなくても良い。
そして、容器に充填して製品とした。これにより、液状になって容器に保存しておくことができるので、化粧液は、水を含まない形態になっているとともに、従来の粉末と異なって液状であることから空気に触れても水分が吸収されにくく、細菌、カビなどの微生物の繁殖が抑止され保存性が極めて良くなる。
【0037】
次に、本発明の実施の形態に係る化粧方法について説明する。実施の形態に係る化粧方法は、〈メイク落としステップ〉→〈洗顔ステップ〉→〈化粧水ステップ〉→〈仕上げステップ〉の順に行われる基本的なスキンケアの場合である。即ち、はじめにメイク落としで化粧を落とし、次に、洗顔をし、それから、保湿のために化粧水を塗布し、最後に、肌上に油性膜を作り、肌の水分を保ち柔軟にする。勿論、メイク落としの必要のない素肌の場合には、〈化粧水ステップ〉のみ、あるいは、〈化粧水ステップ〉→〈仕上げステップ〉でも良い。また、〈洗顔ステップ〉→〈化粧水ステップ〉、あるいは、〈洗顔ステップ〉→〈化粧水ステップ〉→〈仕上げステップ〉でも良く、適宜に行ってよい。
以下、各工程について、詳細に説明する。
【0038】
〈メイク落としステップ〉
クレンジング料を用いてメイクを落とすステップである。クレンジング料として、合成界面活性剤を含まない油性材料のみを用いる。
油性原料としては、天然資源からの植物油脂、動物油脂、ロウ類を精製してそのまま用いるほか、加水分解、水添、高圧水素還元、エステル化などの工程を経てそれぞれ誘導体として用いてもよい。例えば、アボガド油、亜麻仁油、アルガン油、アーモンド油、エゴマ油、オリーブ油、カカオ脂、カロットエキス、カロフィラムイノフィラム油、キュウリ油、キャンドルナッツ油、テオブロマグランジフロルム種子脂、クランベアビシニカ種子油、ブドウ種子油、ゴマ油、コムギ胚芽油、オリザオイル、コメヌカ油、ベニバナ油、シアバター、ダイズ油、茶油、月見草油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーシック油、パーム油、水添パーム油、パーム核油、ハトムギ油、ピスタチオナッツ油、ヒマシ油、水添ヒマシ油、ヒマワリ油、ヘーゼルナッツ油、加水分解ヘーゼルナッツタンパク、ヘンプオイル、ボラージ油、マカデミアナッツ油、マンゴバター、メドウフォーム油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、ユチャ油、落花生油、ローズヒップ油、オレンジラフィー油、牛脂、タートル油、ミンク油、卵黄油、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン、ラノリン誘導体、水添ラノリン、α―オレフィンオリゴマー、水添ポリデセン、スクワラン、植物スクワラン、ミネラルオイル、ワセリン及び、これらの混合物が含まれる。
【0039】
この、メイク落としステップでは、合成界面活性剤を配合しないので、洗い流すことはできない。化粧を浮き上がらせたら、ティッシュペーパー等で優しく押さえて取る。
一般に、油性の化粧は洗顔料のみでは落とせない。そこでメイクとなじみのよい油性成分に合成界面活性剤を配合した洗い流せるメイク落しがよく使用されている。合成界面活性剤は、水分と油分のように、表面張力が違い、互いに混じり合わない物質の仲立ちをし、溶け込んだ状態にする物質である。このような合成界面活性剤は、皮膚に塗布した際、表皮の皮脂膜を部分的に溶解する相対的能力のために、皮膚に刺激反応を誘発しやすく、また表皮の角質層蛋白質に合成界面活性剤が結合して、肌荒れの原因となることが指摘されている。また、合成界面活性剤が環境に放出されると水生生物の生態に悪影響を及ぼすという環境上の問題もある。
そのため、本実施の形態のように、合成界面活性剤を含まないクレンジング料を用いることにより、皮膚に刺激反応を誘発する事態が防止され、肌荒れが防止される。
【0040】
〈洗顔ステップ〉
洗顔料を用いて洗顔を行うステップである。洗顔料として、合成界面活性剤を含まない石鹸を用いる。石鹸とは、高級脂肪酸の塩の総称であり天然の界面活性剤である。メイク落としで、油性成分が肌に残っているものを石鹸の天然の界面活性剤が洗い流す役割をする。石鹸の製法としてはけん化法、中和法がある。合成界面活性剤を含まなければどの方法で製造してもよい。
一般に、洗顔クリーム、洗顔フォームは脂肪酸石鹸やその他の合成界面活性剤と保湿剤、油分等を配合して作られている。上記の通り、合成界面活性剤は、皮膚に刺激反応を誘発しやすく、肌荒れの原因となることが指摘されているが、本実施の形態のように、洗顔料として合成界面活性剤を含まない石鹸を用いることにより、皮膚に刺激反応を誘発する事態が防止され、肌荒れが防止される。この結果、メイク落としステップでの効果をより一層確実に保持することができる。
【0041】
〈化粧水ステップ〉
実施の形態に係る化粧液を皮膚に塗布するステップである。化粧液を使用するときは、容器から適量を吐出させ、例えば、手のひら等に1回分の分量を吐出させて、この使用化粧液を、そのまま皮膚に塗布し、あるいは、新鮮な水と混合して皮膚に塗布する。そのまま使用すると、粘性により使用感が重たく感じるので、一般には水を混合する。水としては、水道水で良いが、好ましくは、浄水器により肌に刺激になる塩素を取り除いた水道水、あるいは、ペットボトルの水を用いると良い。水を混合するときは、水を、例えば、使用化粧液の自重の0.5〜100倍量、好ましくは、5〜50倍量、より好ましくは、10〜20倍量用いる。この場合、従来の粉末と比較して、液状なのでそのまま用いるときは勿論のこと、新鮮な水で薄めて用いる場合にも混合が容易であり、取扱いがきわめて良いものになる。
【0042】
この場合、一般に、健康な皮膚の表面はpH5.5〜6.0の弱酸性を保っている。ところで、上記の洗顔ステップにおいて、アルカリ性の石鹸で洗顔した直後は肌表面がアルカリ性に傾いているが、この状態で本化粧液を用いると、クエン酸が含まれていることから、すぐに弱酸性の環境に戻すことができ、皮膚のバリア機能や生理機能を正常に保持し、健康な肌を維持することができるようになる。
【0043】
この化粧液を塗布した状態では、化粧液には防腐剤が混合していないことから、防腐剤によって皮膚を刺激する事態がなくなり、皮膚の健康に極めて良いものになる。また、ヒアルロン酸ナトリウムが多価アルコールと共働して保湿機能を発揮し、保湿性の向上が図られ、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
また、この場合、メイク落としステップ及び洗顔ステップにおいては、合成界面活性剤を含まないクレンジング料や石鹸を用いているので、皮膚に刺激反応を誘発する事態が防止され、肌荒れが防止されていることから、化粧液の使用において、より一層、その効果を確実に発揮させることができる。
【0044】
〈仕上げステップ〉
仕上げ料を皮膚に塗布するステップである。仕上げ料として、合成界面活性剤を含まない油性材料のみを用いる。一般的な乳液、クリームの代わりに使用する。
油性原料としては、天然資源からの植物油脂、動物油脂、ロウ類を精製してそのまま用いるほか、加水分解、水添、高圧水素還元、エステル化などの工程を経てそれぞれ誘導体として用いてもよい。例えば、アボガド油、亜麻仁油、アルガン油、アーモンド油、エゴマ油、オリーブ油、カカオ脂、カロットエキス、カロフィラムイノフィラム油、キュウリ油、キャンドルナッツ油、テオブロマグランジフロルム種子脂、クランベアビシニカ種子油、ブドウ種子油、ゴマ油、コムギ胚芽油、オリザオイル、コメヌカ油、ベニバナ油、シアバター、ダイズ油、茶油、月見草油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーシック油、パーム油、水添パーム油、パーム核油、ハトムギ油、ピスタチオナッツ油、ヒマシ油、水添ヒマシ油、ヒマワリ油、ヘーゼルナッツ油、加水分解ヘーゼルナッツタンパク、ヘンプオイル、ボラージ油、マカデミアナッツ油、マンゴバター、メドウフォーム油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、ユチャ油、落花生油、ローズヒップ油、オレンジラフィー油、牛脂、タートル油、ミンク油、卵黄油、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン、ラノリン誘導体、水添ラノリン、α―オレフィンオリゴマー、水添ポリデセン、スクワラン、植物スクワラン、ミネラルオイル、ワセリン及び、これらの混合物が含まれる。
【0045】
そして、この仕上げステップでは、合成界面活性剤を配合しない油性成分を、化粧水をつけた上に使用することで、肌の閉塞効果で水分の蒸散を防ぎ肌の保湿を促進する。即ち、一般に、乳液、クリームは水、保湿成分、油性成分が合成界面活性剤により乳化されたものであり、化粧水を塗布した上に使用することで、肌の閉塞効果で水分の蒸散を防ぎ肌の保湿を促進する。上記の通り、合成界面活性剤は、皮膚に刺激反応を誘発しやすく、肌荒れの原因となることが指摘されているが、本発明のように、合成界面活性剤を含まない仕上げ料を用いることにより、皮膚に刺激反応を誘発する事態が防止され、肌荒れが防止される。この結果、メイク落としステップの効果,洗顔ステップによる効果及び化粧水ステップにおいて塗布する化粧液の効果をより一層確実に発揮させることができる。
【0046】
このように、〈メイク落としステップ〉→〈洗顔ステップ〉→〈化粧水ステップ〉→〈仕上げステップ〉の順に行われる基本的なスキンケアの場合では、合成界面活性剤、防腐剤を含まない一連の処理を行うので、皮膚バリアーが守られ、美しく健康な皮膚を保つことができるのである。
【実施例】
【0047】
次に、実施例に係る化粧水を示す。
実施例に係る化粧水おいては、ヒアルロン酸ナトリウム(「ヒアルロン酸Na」とも表記)((株)紀文フードケミファ製「ヒアルロン酸FCH60」)を用いた。
クエン酸として、昭和化工株式会社製「無水クエン酸」を用いた。
多価アルコールとして、グリセリン(花王(株)製「化粧品用濃グリセリン」)、1−3ブチレングリコール(「BG」とも表記する)(ダイセル科学工業(株)製「1,3-ブチレングリコール」)、プロピレングリコール(「PG」とも表記する)(アズマ(株)製「プロピレングリコール」)を単独もしくはこれらを組み合わせて用いた。
【0048】
そして、図3に示すように、各材料の成分比を適宜変えて、上述した製造法(但し、ろ過工程は無し)に従って、実施例1乃至7を作成した。実施例1においては、pH5.24(22.0℃)、粘度17050cps(20℃、B型粘度計、4号ローター、12rpm、60sでの測定)であった。
この各実施例,比較例1(グリセリンのみ)について、添加成分の溶解安定性(添加成分の析出がなく良く溶解している状態)について視認した。結果を図3に示す。実施例3の結果から、ヒアルロン酸ナトリウムは2.0重量%以下の範囲で良好であることが分かった。
また、ヒアルロン酸ナトリウムが1.0重量%を超えると、安定性は良いが、粘性が強くなって取り扱いが難しくなるので、ヒアルロン酸ナトリウムは1.0重量以下の範囲が望ましいことが分かった。
【0049】
次にまた、実施例1〜7及び比較例1に関し、保湿力について検証した。保湿力は、Wave Cyber社の油水分測定機WSK-P500Uを使用した。この測定機は、皮膚の測定部の水分量を0〜99の相対値で表すものである。測定する部位は前腕屈側でおこなった。化粧液を塗布する前はほとんど同じ水分量を表示する部位の皮膚に、水で2倍に溶解した実施例、比較例の化粧液をなじませ水分値を経時的に測定した。
【0050】
この結果から、プロピレングリコールや1−3ブチレングリコールに比べて、グリセリンが最も保湿力が高いことが分かった。また、グリセリンと他の多価アルコールを混合して使用する場合は、グリセリンを全多価アルコールの50%重量以上含むのが、保湿力を出すためには望ましいことが分かった。
【0051】
更に、実施例1について、比較例2,3とともに微生物試験を行った。比較例2として、精製水を用意した。また、比較例3として、精製水に、ヒアルロン酸ナトリウム((株)紀文フードケミファ製「ヒアルロン酸FCH60」)0.05重量%、グリセリン(花王(株)製「化粧品用濃グリセリン」)5.00重量%、防腐剤としてのメチルパラベン(上野製薬(株)製「メッキンスM」)0.10重量%を混合した化粧水を用意した。これら実施例1,比較例2,3の各検体を作成後、ビーカーに入れ、蓋をせずに16時間放置(開放放置)して、空気に晒した。その後、各検体を、洗浄滅菌した蓋つきガラス瓶に移し替え、40℃の恒温槽に入れて、培養した。そして、1日,4日,7日の順に、検体を取り出して、検体中の微生物の発生状況を調べた。微生物の発生状況は、ガラス瓶から検体を0.2ml取り出し、蓋付シャーレに設けたトリプトソイ寒天培地に塗布し、このシャーレを蓋をした状態で、上記と同様の恒温槽に入れ、48時間に亘って微生物の発生状況を見た。結果を図4に示す。尚、比較例2の精製水については、何れも、早期に微生物のコロニーの発生が認められたので8時間経過時に試験を中止した。
この結果から、実施例1では、防腐剤を使用していないにも関わらず、防腐剤を使用した比較例2と同等に、微生物の発生が認められず、優れていることが分かった。
【0052】
次に、化粧方法の実施例を示す。
<メイク落としステップ>
実施例に係るクレンジング料としては、オリーブ果実のオリーブオイルを搾油した残渣から、スクワレンを搾取、蒸留し、水素添加し精製した、高級アルコール工業株式会社製「オリーブスクワラン」100%を使用した。オリーブスクワランは化学的に安定で、油性感が少なく、感触の非常に良い油である。皮膚刺激はほとんどなく、エモリエント効果に優れ、クレンジングオイルとして使用するには最適な油である。
【0053】
<洗顔ステップ>
実施例に係る洗顔料としては、パーム油80%、パーム核油20%、けん化率85〜95%、けん化コールド製法、スクワランを5〜10%添加した石鹸とした。けん化コールド法で製造された石鹸は、未反応の油脂やグリセリンが残るため、洗浄力がマイルドな石鹸となる。
【0054】
<化粧液ステップ>
実施例に係る化粧水としては、実施例1のものを用いた。具体的には、ヒアルロン酸ナトリウム(「ヒアルロン酸Na」とも表記)として、(株)紀文フードケミファ製「ヒアルロン酸FCH60」)を用いた。クエン酸として、昭和化工株式会社製「無水クエン酸」を用いた。多価アルコールとして、グリセリン(花王(株)製「化粧品用濃グリセリン」)を用いた。成分比は、図3に示すとおりである。この実施例1においては、pH5.24(22.0℃)、粘度17050cps(20℃、B型粘度計、4号ローター、12rpm、60sでの測定)であった。
【0055】
<仕上げステップ>
実施例に係る仕上げ料として、深海にすむサメ類の肝油から得られるスクワレンに水素添加して得られるスクワランを使用した。スクワランは化学的に安定で、代表的な良質オイルである。皮膚刺激はほとんどなく、エモリエント効果に優れている。更に、スクワランにフラーレンを溶解することで、保湿効果以外に、抗酸化作用を発揮し、老化しにくい美しい肌を保つことができる。
【0056】
そして、上記の実施例1に係る化粧液について、パネラによる使用感テストを行った。パネラとして、市販の基礎化粧品にかぶれたことがある人を含む成人女性50名を抽出し、1か月〜1年間、実施例に係るクレンジング料,実施例1に係る化粧液,実施例に係る洗顔料,実施例に係る仕上げ料を用い、〈メイク落としステップ〉→〈洗顔ステップ〉→〈化粧水ステップ〉→〈仕上げステップ〉に従った基本的なスキンケアを行い、評価した。化粧液においては実施例1の化粧液を自重の20倍に水で薄めたものを、今までの化粧水に替えて使用してもらい、評価を得た。
【0057】
1.保湿力について
今まで使用していた基礎化粧品より保湿力高かった 50名/50名 100%
同じ、わからない 0名 0%
保湿力低かった 0名 0%
【0058】
2.肌へのやさしさについて
かゆみ、ひりひり等の肌に対する刺激感に関しなにか不都合なことがあったか
ない 50名/50名 100%
あった 0名 0%
【0059】
3.今後使用したいと思うか
とても使用したい 49名/50名 98%
まあ使用したい 1名 2%
どちらでもない 0名 0%
使用したくない 0名 0%
【0060】
この結果から、合成界面活性剤、防腐剤を含まないクレンジング料,化粧液,洗顔料,仕上げ料を用い、一連のスキンケアを行うことにより、皮膚バリアーが守られ、肌に刺激感がなく、美しく健康な皮膚を保つことができることが分かった。また、実施例1に係る化粧液がきわめて優れていることが分かった。
【0061】
尚、本発明の実施の形態においては、多価アルコールに、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物、有機酸及び/または有機酸塩のみを添加したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、多価アルコールに、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物、有機酸及び/または有機酸塩以外に、水分を含有しないことを条件に、化粧品又は皮膚科学の分野で一般に使用される、防腐殺菌剤、合成界面活性剤以外の他の成分を配合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
成人女性の90%以上が毎日使っている従来の化粧水はほとんどが水であり、これら大量の化粧水が世の中を流通していることを鑑みれば、本発明が提供する化粧液は、水が入ってない状態で消費者の手に渡ることになることから、容器の問題、保存する空間の問題、輸送費の問題等、様々な有利な点が挙げられる。また、化粧液として高価なヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を大量に使わなくても多価アルコールとの併用で高い保湿効果が得られるので、消費者にとって大きなメリットがある。
また、化粧料に防腐剤、合成界面活性剤が入ってないことで、皮膚刺激がなくなり、かぶれる人が減り、医療費の軽減につながるなど、有用性がきわめて高くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を含有する化粧液において、
上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を、多価アルコールに分散させ、水を含まない形態にしたことを特徴とする化粧液。
【請求項2】
上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.01〜2.0重量%、上記多価アルコールを97重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の化粧液。
【請求項3】
上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.1〜1.0重量%含有することを特徴とする請求項2記載の化粧液。
【請求項4】
上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物とは異なる有機酸及び/または有機酸塩を上記多価アルコールに分散させ、5≦pH<7の弱酸性にしたことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の化粧液。
【請求項5】
上記有機酸及び/または有機酸塩として、有機酸であるクエン酸を用い、該クエン酸を0.0005〜0.2重量%含有することを特徴とする請求項4記載の化粧液。
【請求項6】
上記多価アルコールを、グリセリン単体若しくはグリセリンと他の多価アルコールとの混合物で構成したことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の化粧液。
【請求項7】
上記請求項1乃至6何れかに記載の化粧液の製造方法において、
多価アルコールの溶液に、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を添加して溶解する第一溶解工程と、該第一溶解工程後の溶液に、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物とは異なる有機酸及び/または有機酸塩を添加して溶解し5≦pH<7の弱酸性にする第二溶解工程とを備えたことを特徴とする化粧液の製造方法。
【請求項8】
上記第一溶解工程において、30℃〜70℃の多価アルコールの溶液に、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を添加して撹拌し、次に、該溶液を80℃±5℃に加温することを特徴とする請求項7記載の化粧液の製造方法。
【請求項9】
上記第二溶解工程において、溶液を60℃±5℃にし、この状態で上記有機酸及び/または有機酸塩を添加して撹拌し、その後、40℃以下まで冷却することを特徴とする請求項7または8記載の化粧液の製造方法。
【請求項10】
上記第二溶解工程後に、溶液をろ過して上記多価アルコールに溶解しないヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を除去するろ過工程を設けたことを特徴とする請求項7乃至9何れかに記載の化粧液の製造方法。
【請求項11】
上記請求項1乃至6何れかに記載の化粧液を皮膚に塗布する化粧液ステップを備えた化粧方法において、該化粧液ステップにおいて、使用する使用化粧液をそのまま用い、あるいは、当該使用化粧液にその自重の0.5〜100倍量の水を混合して用いることを特徴とする化粧方法。
【請求項12】
上記化粧水ステップの前に、洗顔料を用いて洗顔を行う洗顔ステップを備え、該洗顔料として、合成界面活性剤を含まない石鹸を用いることを特徴とする請求項11記載の化粧方法。
【請求項13】
上記洗顔ステップの前に、クレンジング料を用いてメイクを落とすメイク落としステップを備え、該クレンジング料として、合成界面活性剤を含まない油性材料のみを用いることを特徴とする請求項12記載の化粧方法。
【請求項14】
上記化粧水ステップの後に、仕上げ料を皮膚に塗布する仕上げステップを備え、該仕上げ料として、合成界面活性剤を含まない油性材料のみを用いることを特徴とする請求項11乃至13何れかに記載の化粧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−250970(P2012−250970A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228093(P2011−228093)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(509353001)
【Fターム(参考)】