説明

医療用人工呼吸器のためのループ状テザー

閉鎖式吸引カテーテルにおいて、継手部材に係止されている吸引カテーテルを引っ張り過ぎたときに前記吸引カテーテルが前記継手部材から抜け出すのを防止するためループ状テザーが提供される。本発明のループ状テザーは、一本の糸またはストランドをその長さの中間位置で折り返し、2つの遊離端を互いに結び合わせてループを形成することにより作製される。また、閉鎖式吸引カテーテルにおいて継手部材に係止されている吸引カテーテルを引っ張り過ぎたときに前記吸引カテーテルが前記継手部材から抜け出すのを防止するためのシステムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用人工呼吸器のためのループ状テザーに関する。
【背景技術】
【0002】
医療処置中及び医療処置後、患者が十分に自発呼吸を行えるようになって補助呼吸から解放されるまで患者の呼吸を補助するために、気管カテーテルが用いられる。気管カテーテルの一種である気管内チューブ(ETチューブ)は、患者の口から挿入され、声帯及び声門を通して気管内に導入される。患者への挿管後、ETチューブは、患者の肺を機械的に換気するための人工呼吸器(ベンチレータまたはレスピレータ)に接続される。別の種類の気管カテーテルである気管切開チューブは、患者の喉に形成した瘻孔を通して気管内に直接的に挿入される。この気管切開チューブも、人工呼吸器に接続され得る。このようなベンチレータユニットは、ホースセット、すなわち、換気ガスを患者に送達する換気システムとしての換気チューブまたはチューブ回路に接続される。
【0003】
気管・気管支樹からの分泌物の除去は、挿管され機械的人工換気または他の人工換気を受けてる患者に対して行われるケアに不可欠なものである。分泌物は一部の呼吸器疾患において過剰に産生することがあり、そのような呼吸器疾患を患っている患者にとっては深刻な脅威となる。気管カテーテルの存在は、自然な咳によって分泌物を吐き出そうとする患者の努力の妨げになる。現在の医療処置では、そのような分泌物を患者の気道から吸引によって取り除くために、吸引カテーテルが肺に挿入される。
【0004】
吸引は、「開放式」システムまたは「閉鎖式」システムを用いて行うことができる。開放式システムでは、吸引カテーテルは、気管カテーテルの換気ルーメンに挿入される単なる柔軟性プラスチックチューブであり、吸引カテーテルの近位端には吸引源が接続される。吸引カテーテルを所望する位置まで前進させた後、分泌物を除去するために吸引力が加えられる。吸引カテーテルがルーメン挿入前に接触するものは全て滅菌状態に保たれている必要があるので、患者の周囲に「滅菌野」を形成する必要がある。使用後の吸引カテーテルの表面は患者の分泌物で覆われることになるので、使用後の吸引カテーテルは慎重に取り扱わなければならない。対照的に、例えば共同所有の米国特許第4,569,344号明細書(特許文献1)に開示されているような「閉鎖式」システムでは、分泌物を吸引するために使用することができる吸引デバイス10は、使用前における吸引カテーテルの汚染をなくするかまたは最小限にするために、略円筒状のプラスチックバッグ14内に封入された吸引カテーテル12を用いる(図1)。これは、「閉鎖式吸引カテーテル」と一般的に呼ばれており、バラード・メディカル・プロダクツ社(キンバリー・クラーク社)からトラックケア(TRACH CARE)(登録商標)という商品名で販売されている。患者が分泌物の人為的な除去を必要としているときに、吸引カテーテル12を、プラスチックバッグ14の一端から接続継手16を通して気管カテーテル内へ、そして必要に応じて、患者の一方の主気管支内へ前進させることができる。吸引カテーテル12の他端すなわち近位端17は、吸引源19に接続される。分泌物を除去するために、指で制御するフィンガーバルブ18を用いて吸引カテーテル12の近位端17に吸引力が加えられる。他方の主気管支も同じように吸引することができる。このように、システムの閉鎖系を維持したままで、分泌物は吸引カテーテル12のルーメンに吸い込まれ除去される。吸引カテーテル12はその後、気管チューブから引き抜かれ、プラスチックバッグ14内に戻され、それによって回路の閉鎖系は維持される。閉鎖式吸引システムの方が医療提供者を患者の分泌物からより良く保護することができるので、医療提供者には、閉鎖式吸引システムが一般的に好まれている。開放式吸引システムでは患者に対して吸引を行うたびに滅菌領域を作る必要があるが、閉鎖式吸引システムではその必要がないので、閉鎖式吸引システムはより容易にかつより迅速に使用することができる。
【0005】
上述した閉鎖式カテーテルシステムの短所の1つは、吸引カテーテル12のプラスチックスリーブ14内への過度の引き込みである。ユーザが吸引カテーテルを引っ張り過ぎると、吸引カテーテル12が接続継手16の近位端から抜けて外れてしまう。その場合、吸引カテーテル12と接続継手16との間の密閉性が失われ、ベンチレータからの圧縮空気がプラスチックスリーブ14に入るため、プラスチックスリーブ14が膨張して破裂する恐れがある。プラスチックスリーブ14が破損すると、現場にいる医療従事者が、患者の浮遊分泌物に曝される恐れがある。また、このような損傷は、患者にとっての人工呼吸器の効率を減少させたり、患者に合併症をもたらしたりし、場合によっては患者を死に至らせることもある。
【0006】
吸引カテーテルが接続継手から引き出されるのを防止するために、様々な「止め具」が提案されてきた。例えば、吸引カテーテルの遠位端を、接続継手を通り抜けることができないほど大きく作製することが提案されてきたが、そのようにしても、医療従事者が吸引カテーテルを力任せに引っ張って接続継手から無理やり引き出すことが依然として可能であり、無理やり引き出すときに吸引カテーテルの一部が壊れて取れて患者の気道内に落下する恐れがあるため採用されなかった。
【0007】
米国特許第5,598,840号明細書(特許文献2)及び第5,088,486号明細書(特許文献3)には、プラスチックスリーブの遠近両端間に渡らせた1本のひも(ランヤード、コード、テザー)についての簡単な記載がある。しかし、前記両文献には、前記1本のひもをどのようにして配置または取り付けるか、あるいは前記1本のひもが何から作製されているかについての説明はない。米国特許第7,188,623号明細書(特許文献4)には、閉鎖式吸引カテーテルの遠近各端部に圧入部品を圧入し、この2つの圧入部品の間に、1本の、好ましくは単一フィラメントのテザーを渡らせ、前記圧入部品のピンチで前記テザーを固定することによって、引っ張り過ぎのときに加えられた力に耐えるようにしたことが記載されている。しかし残念なことに、また非常に驚くべきことに、圧入部品を用いてテザーを固定することは不十分であることが判明している。一般的な医療従事者は、通常の力によって、圧入部品のピンチからテザーの端部を引き出すのに十分な力を容易に加えることができる。別の驚くべき発見は、中程度の力を加えたときの単一フィラメントが伸張する程度は、上記の使用に不適切であるということである。
【0008】
そしてに、製造に関してだが、ひもを或る長さで切断し、閉鎖式吸引カテーテルの遠近各端部に結合させると、各結合部において許容公差が追加される。この製造公差の追加は、当該技術分野では「スタックアップ(stack up)」と呼ばれることもあり、吸引システムの各部品がその製造公差内に収まっている場合でも、吸引カテーテルを引き込んだときに吸引カテーテルの先端が本来あるべき正しい位置から或る距離離れた位置に位置する恐れがある。
【0009】
従来技術の問題点を解決し、接続継手からの吸引カテーテルの過度な引っ張りを防止することができ、吸引カテーテルにかかる引っ張り力をより均等に分散させることができ、かつ比較的単純で製造コスト効率の良いシステムを持つことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,569,344号明細書
【特許文献2】米国特許第5,598,840号明細書
【特許文献3】米国特許第5,088,486号明細書
【特許文献4】米国特許第7,188,623号明細書
【特許文献5】米国特許第5,735,271号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
閉鎖式吸引カテーテルデバイスにおいて、継手部材に係止されている吸引カテーテルを引っ張り過ぎたときに前記吸引カテーテルが前記継手部材から抜け出すのを防止するためループ状テザーが提供される。本発明のループ状テザーは、前記デバイスの第1の端部から第2の端部まで延びた後に第1の端部に戻るというループ状の形状を有し、スリーブ内に収容されている。吸引カテーテルが所定の位置から抜け出したり、前記デバイスが破壊されたりしないようにするために、ループ状テザーは前記デバイスの端部にかかる引っ張り力または結合力をより良く分散させる。ループ状テザーは、組み立てが比較的容易であるというさらなる利点を有する。また、閉鎖式吸引カテーテルにおいて継手部材に係止されている吸引カテーテルを引っ張り過ぎたときに前記吸引カテーテルが前記継手部材から抜け出すのを防止するためのシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】特許文献1に記載されている、患者の肺から分泌物を除去するために用いることができるデバイスを示す図である。
【図2】特許文献1の気管ケアデバイスと換気回路との間に配置することができ、特許文献5に記載されているようにして取り付けられるマルチアクセス・マニホールドを示す図である。
【図3】(A)はループ状テザーを有する閉鎖式吸引カテーテルを示す図であり、(B)は(A)に示した吸引カテーテルの分解図である。
【図4】吸引カテーテルの遠位継手のループタブとループ状テザーとの結合を示す図である。
【図5】吸引カテーテルの近位継手の結び目係止部とループ状テザーの結び目との結合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して説明するが、図面全体を通して、同じ参照符号は同様の部品を示している。
【0014】
図1は、特許文献1に開示されている人工呼吸器を示している。この人工呼吸器は、トラックケアー(TRACH CARE)(登録商標)という商品名でも呼ばれている。この閉鎖式吸引カテーテルデバイス10は、継手16を用いて患者の気管カテーテルに接続され、全換気回路の一部にとして含まれることもある。吸引カテーテル12は、カテーテルの汚染をなくするかまたは最小限にするために、プラスチックバッグ14内に封入されている。患者が分泌物の人為的な除去を必要としているときに、吸引カテーテルを、換気デバイスの継手16を通して吸引カテーテル(図示せず)内へ前進させ、その後、患者の気道内へ、そして患者の片方の肺内へと前進させる。分泌物を除去するために、指で制御するフィンガーバルブ18を用いてカテーテル12の近位端に吸引力が加えられる。このケアデバイスのより詳細な説明は、特許文献1に記載されている。
【0015】
図1の閉鎖式吸引デバイス10は、気管カテーテル内で実質的に直線的に移動させることができる限りは、気管カテーテルに直接的に接続して使用するか、あるいは他の構成で使用することができる。吸引デバイス10の1つの使用方法は、例えば米国特許第5,735,271号明細書(特許文献5)に示されているようなマルチアクセス・マニホールド20(図2)に接続して使用することである。ユーザが、気管カテーテルと連通させるポートを選択することができるように、マルチアクセス・マニホールド20は回転機構を有している。図2に示されているように、このマニホールドアセンブリは、医療提供者が患者に行う他の呼吸器アクセス処置とは独立的に、連続的かつ周期的な患者換気を提供する。例えば、使用後に吸引カテーテル12を引き抜くときにアクセスポート32から洗浄液を注入して、吸引カテーテル12の外側を洗浄することができる。マニホールド20の遠位端24は気管カテーテル(図示せず)に接続され、気管カテーテルを通じて患者の換気が行われる。アクセスポート26はベンチレータに接続され得、ポート28及び30には付属的なデバイスが接続され得る。1つのデバイスは、例えばポート28に隣接して示されている吸引カテーテル12であり得る。他方のポート30には、「課題を解決するための手段」に記載されているようなポート密閉部材を結合させることができる。吸引デバイスの使用を所望するときは、マニホールドを回転させて、吸引カテーテル12と遠位ポート24とが互いに一直線に並ぶようにする。その後、カテーテル12を、マニホールドを通して患者の気管支内に前進させた後、前述したようにして吸引を行うことができる。このマニホールドデバイスのより詳細な説明は、特許文献5に記載されている。
【0016】
図3Aは、例示的な閉鎖式吸引カテーテルデバイス10の図である。カテーテル12が、スリーブ14内に収容されている。患者側すなわち遠位端に遠位継手16が、近位端に吸引制御バルブ18が設けられている。図3Bは、例示的な閉鎖式吸引カテーテルデバイス10の分解図を示す。カテーテル12、スリーブ14、ループ状テザー31を明確に見ることができる。
【0017】
一実施形態では、ループ状テザーを形成するために、1本のひもを適切な長さで切断し、その両端を結び目42を作って互いに結ぶ。ループ状テザー31の最終的な長さのばらつきがほとんどなくなるように、この過程は機械で実施され得る。このことにより、一直線状のテザーよりも優れた利点が得られる。この過程の制御点はループ長さという製造公差だけだからである。一直線状のテザーには、カテーテルの遠近両端の各々への取付けという2つの製造公差がある。本発明の組み立て方式(ループ状テザー)が、カテーテル長さが極めて均一なるように制御するのに役立つことは、当業者は容易に理解できるであろう。
【0018】
カテーテル12の第1の端部(近位端部)では、ループ状テザーの結び目42は、近位継手34に設けられた少なくとも1つの結び目係止部43の下に通され、このことにより結び目42は適所に固定される(図5A及び図5B)。ループ状テザー31を近位継手34の周面に巻きつけ、複数の結び目係止部43の下を通して固定することができるように、結び目係止部43は3つ設けられること望ましい。また、ループ状テザー31は、近位継手34の周面に一周巻きつけた後に向きを変え、図5Bに示すように2本のストランドが互いに隣接するようにしてカテーテル遠位端に向かって延びるようにすることが好ましい。このことにより、結合力が近位継手34の周面により良好に分布することになるので、カテーテル近位端へのループ状テザー31の結合をより強固なものにすることができる。驚くべきことに、このようにループ状テザー31を近位継手34の周面に巻きつけないと、結び目がテザーの端部に向かって移動して、最終的には解けてしまい、ループ状テザーでなくなってしまうことが分かっている。別の実施形態では、ループ状テザーは、上述したように近位継手34の周面に一周巻きつけた後、2本のストランドを互いに別個の結び目係止部43において向きを変え、2本のストランドが互いに隣接しないようにして(所定の間隔離れた状態で)カテーテル遠位端に向かわせるようにしてもよい。
【0019】
カテーテル12の第2の端部(遠位端部)では、ループ状テザー31のループ部が、遠位継手16の近位側に形成された開口部(cleft)41に設けられた少なくとも1つのループタブ40に引っ掛けられる(図4A及び図4B)。これは手作業によって、非常に簡単に行うことができる。このことにより、引っ張り力を遠位継手の周方向に分散させることができる。
【0020】
ループタブ40に引っ掛けられたループ状テザー31はループタブ40に強固に固定されずループタブ40の周りを摺動可能であるので、ループ状テザー31はループ長さのちょうど半分のところでループタブ40に引っ掛ける必要はない。このことは、製造上の利点を提供する。ループ状テザーによって連結されている近位継手及び遠位継手を互いに対して離間させたとき、ループ状テザーにかかる引っ張り力によってループ状テザーのループ長さの中心位置が自然に位置決めされるからである。ループ状テザーをループタブ40に引っ掛けることにより提供される、直線状テザーよりも優れた他の利点は、ループ状テザーから加わる力を、ループタブの互いに反対側の2つ面に分散させることができることである。直線状テザーをタブに結合させた場合、吸引カテーテルを引っ張り過ぎたときにテザーに過剰な力がかかるため、直線状テザーは実際はタブの角部によって切断されてしまう。同じ材料から作製されたタブでも、図4Bに示すように、タブと2つの位置で接触するループ状テザーを用いると、引っ張り力が分散されるため、テザーがタブの角部によって切断されるのを避けることができる。
【0021】
ループ状テザー31を継手16、34の両方に結合し、ループ状テザー31のループ長さの中心がループタブ40の位置にくるようにした後、カテーテル12を遠位継手16の中心孔または通路に挿入し、カテーテル12、ループ状テザー31及び遠位継手16上にスリーブ14を滑らせて移動させてそれらを取り囲むように配置し、遠位継手16に遠位カラー32を圧入することにより、本デバイスの組み立てが行われる。圧入された遠位カラー32は、スリーブ14が密閉されるように、そして、ループ状テザー31がループタブ40から抜け落ちないように、スリーブ14及びループ状テザー31を圧迫する。遠位端部の組み立てと同様に、近位端部の各部品は、近位継手34に圧入された近位カラー35によって互いに結合される。近位カラー35は、近位継手34をきつく押圧することによって、近位継手34と近位カラー35との間でスリーブ14及びループ状テザー31を適所に保持し、ループ状テザーの結び目が結び目係止部43から抜け落ちないようにする。この圧入過程は、単に、ループ状テザーの遠近両端を結び目係止部またはループタブに係止させるためのものであり、吸引カテーテルを引っ張り過ぎたときにかかる力に耐えるためのピンチホールド(pinch hold)を形成するためのものではない。また、吸引カテーテルの遠近両端へのテザーの結合は本質的に接着剤を必要としないので、本発明の手法を用いることによって接着剤の使用を避けることができる。
【0022】
ループ状テザーは、この目的のための十分な引っ張り強さを有する、すなわち、4.5キログラム(10ポンド)の張力負荷時の伸長率が1%またはそれ以下である任意の「低伸張性」材料から作製され得る。ループ状テザーは、複数のストランドまたはフィラメントを編むかまたはより合わせて形成した糸から作製され得る。前記糸は、少なくとも2.3Kg(5ポンド)、少なくとも4.5キログラム(10ポンド)、さらには少なくとも11.3Kg(25ポンド)の破壊引張強さを有するべきである。これらには、低炭素鋼やアルミニウムなどの金属、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド(芳香族ポリアミド(アラミド)を含む)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、セルロース(綿、亜麻、ジュートなど)などのプラスチックが含まれる。適切な市販のポリマー材料は、KEVLRR、TWARONR、TECHNORAR、SPECTRAR、VECTRANRの商品名で販売されている。
【0023】
SPECTRARファイバは、Honeywell International Inc.社等から入手可能な超高分子密度形態のポリエチレンである。ゲル紡糸製造法により、分子を整列させ、材料強度を大幅に増大させることができる。それは、硬化鋼の2倍の強度(単位面積当たり)であるが、密度は10分の1であり水よりも軽い。ループ状テザーへの使用に適した糸は、ペンシルベニア州ポッツタウンのGudebrod Inc.社からTex-92の商品名で市販されている、z方向ねじれと、ソフトサイジング仕上げを有するSPECTRARファイバー4プライ糸である。この糸は、工業的にねじられ、プライされ、そして、Lubrizol社製のPERFORMAXRでコーティングされた8〜10%の最終的なねじれ及び熱結合領域が与えられた、4本のファイバーを使用している。Tex-92は、25〜26Kg(56〜58ポンド)の引っ張り強さを有しており、25〜26Kgの負荷時の伸長率は3.5〜4%である。
【0024】
ループ状テザーは、その2倍の長さを有する1本のひもを使用し、ひもの両端の近傍を互いに結ぶことによってループを形成することが望ましい。ひもを結んだ端部はここでは「結び目」と呼ぶが、この用語は本発明を限定することを意図するものではない。ひもの端部を互いに結合させる適切な方法または器具には、結び目、スリーブ、グリップ、クリップ、接合、及びオーバーモールド成形された固定具が含まれる。ループ状テザーは、吸引カテーテルの吸引制御バルブ側端部(近位端部)及び患者側端部(遠位端部)の両方に結合され、両端部間の最大スパンと、ループ状テザーの長さから継手部品に直接的に結合される部分の長さを差し引いた長さの半分の長さとが等しくなるようにする。
【0025】
説明のみを目的として、近位継手及び遠位継手へのループ状テザーの結合は、ループ状テザーの結び目を近位継手に結合させ、ループ状テザーにおける結び目から最も遠い部分を遠位継手に結合させることによって実現される。なお、この反対の構成も可能である(結び目を遠位継手に結合させ、結び目から最も遠い部分を近位継手に結合させる)。ループ状テザー31の近位継手34への結合は、ループ状テザー31の結び目42を近位継手34の係止部43に引っ掛け、ループ状テザーの残りの部分を近位継手34の本体と係止部43との間に通して近位継手34の遠位部分に巻きつけ、そして、近位継手34の本体と係止部43との間を再び通すことによりなされる(図5A及び図5B)。ループ状テザー31における結び目42のすぐ近傍の部分を近位継手34の周面に巻きつけることにより、結合力を、吸引制御バルブ側端部の近位継手34の周方向に分散させることができ、このことにより、結び目の係止部43への結合を確実にすることができる。
【0026】
加えて、いくつかの用途では、吸引カテーテルの遠近両端部にループタブ40を設けて、吸引カテーテルの一方の端部において結び目を係止部に引っ掛けるという手法を用いないようにすることができる。あるいは、両端を結んでループ状にした2つの別個のひもからループテザーを作製し、2つの結び目を吸引カテーテルの遠近両端部に設けた結び目係止部に引っ掛けるようにして、ループタブを用いないようにすることもできる。このように遠近両端部に設けたループタブあるいは結び目係止部を用いてループ状テザーを結合するようにした吸引カテーテルは、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0027】
ループ状テザーの結び目及び継手に巻きつける部分を係止部43及び近位継手34の遠位部分により強固に結合させるために、近位継手34の遠位端部に第1のチューブ状固定部材すなわち近位カラー35を圧入し、摩擦係合させる。近位カラー35と、吸引制御バルブの近位継手34の遠位端部との間に、圧潰可能(collapsible)プラスチックバッグすなわちスリーブ14の一端が挟まれ、ループ状テザー31における近位継手34の周面に巻きつけられて結合された部分と直接的に接触する。そして、ループ状テザーの未結合部分はスリーブの残りの部分の内部に配置され、結び目から最も遠い部分が遠位継手16に結合される。
【0028】
遠位継手16の近位部分には、ループ状テザーの一部を引っ掛けて結合させるための開口部(cleft)41及びループタブ40が設けられている。ループ状テザーにおける結び目から最も遠い部分が開口部41に挿入され、ループタブ40に引っ掛けられる。このことにより、ループ状テザーにかかる引っ張り力を、開口部41の少なくとも2つの隅部(ループタブ40の基部と連続する部分)に分散させることができる。随意的に、ループ状テザーをより深く引っ掛けることができるようにするために、前記開口部の隅部を滑らかな丸みを帯びた凹んだ形状に形成することもできる。また、ループ状テザーの前記開口部への挿入を容易にするために、前記開口部の周面側縁部を丸みを帯びた形状に形成することもできる。
【0029】
前記ループタブへのループ状テザーの結合をより強固にするために、遠位継手16の近位端部に第2のチューブ状固定部材すなわち遠位カラー32を圧入し摩擦係合させる。この第2のカラー32と遠位継手16の近位端部との間に、圧潰可能スリーブ14の他端が挟まれ、ループ状テザー31における前記開口部から延出したループ部分と直接的に接触する。
【0030】
本明細書に開示されている医療デバイスの変更形態及び変形形態は、前述の詳細な説明から当業者には明らかであろう。このような変更形態及び変形形態は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖式吸引カテーテルデバイスであって、
前記デバイスの遠近両端部に結合されたループ状テザーを含み、
前記ループ状テザーが、前記デバイスの前記遠近両端部の一方の端部から他方の端部まで延びた後に前記一方の端部に戻るループ状の形状を有することを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記ループ状テザーを、前記デバイスの端部に設けられた少なくとも1つのループタブに引っ掛け、ループ方向に移動可能に結合させたことを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記ループ状テザーは、1本のテザーの両端を、結び目、スリーブ、グリップ、クリップ、接合、ねじり、及びオーバーモールド成形された固定具から選択される方法または器具によって互いに結ぶことによって形成されたことを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスであって、
前記ループ状テザーの結び目を、前記デバイスの前記一方の端部に結合させたことを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスであって、
前記ループ状テザーの前記結び目の近傍部分を前記デバイスの前記一方の端部の周面に巻きつけて、前記ループ状テザーから前記デバイスの前記一方の端部にかかる結合力を前記一方の端部の周方向に分散させるようにしたことを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項2に記載のデバイスであって、
前記デバイスの組み立て中に前記ループ状テザーにかかる引っ張り力によって、前記ループ状テザーのループ長さの中心が前記ループタブの位置にくるように自然に位置決めされることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記デバイスの前記遠近両端部に対する前記ループ状テザーの結合は、本質的に接着剤を必要としないことを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記ループ状テザーが、セルロース、ポリアミド、ポリオレィン、ポリビニルアルコール、ポリエステル及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーから作製されることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記ループ状テザーが、より合わされたかまたは編まれた少なくとも1本のファイバであることを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスであって、
前記ループ状テザーが、強度を高めるために、あるいは摩擦力を分散させるために、コーティングされていることを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記ループ状テザーが、4.5Kg(10ポンド)の引張負荷時に1%未満の伸長率を有することを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項1に記載のデバイスであって、少なくとも
前記ループ状テザーが、少なくとも2.27Kg(5ポンド)の引張強さを有することを特徴とするデバイス。
【請求項13】
閉鎖式吸引カテーテルデバイスにおいて、継手部材に係止されている吸引カテーテルを引っ張り過ぎたときに前記吸引カテーテルが前記継手部材から抜け出すのを防止するためのシステムであって、
低伸張性材料から作製されたループ状テザーで前記デバイスの遠近両端間を連結したことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、
前記デバイスの一方の端部に設けられた係止部に前記ループ状テザーの結び目を係止させ、前記カテーテルデバイスの他方の端部に設けられたループタブに前記ループ状テザーを引っ掛けたことを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−505047(P2013−505047A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529367(P2012−529367)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053737
【国際公開番号】WO2011/033405
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)