説明

医療用記録装置のメンテナンス方法及びクリーニングシート

【課題】 粘着ローラを内蔵した医療用記録装置において、粘着ローラのユーザによる清掃を短時間に行い、かつ、清掃後のむら発生もなく速やかに運転再開可能なメンテナンス方法及びクリーニングシートを提供する。
【解決手段】 このクリーニングシート1は、フィルムを搬送する医療用記録装置の搬送系に設けられフィルムに付着した異物を転写し除去可能な粘着ローラ140bのクリーニングに用い、粘着ローラの軸方向で粘着ローラの表面に追従可能な可撓性を有する可撓性シート体と、可撓性シート体の少なくとも一方の面を粘着面3とするように形成された粘着層と、可撓性シート体の少なくとも一側端に沿って所定幅で粘着面に設けられかつ可撓性シート体の剛性を向上させる補助部材5,6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ローラを内蔵する医療用記録装置のメンテナンス方法及びクリーニングシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なシート搬送系では、シート搬送に伴い発生する紙粉等がローラに付着すると、摩擦係数が低下し、搬送ジャムを誘発する可能性あり、このための対策として、下記特許文献1は、紙粉をローラからはぎ取る(クリーニングする)粘着層を片面に設けたシートを装置内で搬送させて装置外ヘ排出させることにより装置内の搬送系のローラのクリーニングを行う方式を開示する。
【0003】
また、下記特許文献2は、クリーニングシートの粘着層の反対面側の表面粗さを所定の範囲に収めることで、当該シートの搬送安定性をはかる方法を開示する。
【0004】
また、下記特許文献3は、医療用レザーイメージャ等においては、露光時にフィルム乳剤面に付着した異物が、最終仕上がりフィルム上で、白ポチ(白抜け)となって表れ易いので、異物が付着し難いフィルム物性を用いることを開示する。
【0005】
また、下記特許文献4は、一般の露光系のみならず、熱現像転写方式の記録装置においても、記録材搬送系及び転写シート搬送系に介在した異物が最終画像に対し白抜け(画像欠陥)を生じるため、搬送系に粘着性を有するクリーニングシートを搬送・排出して搬送系の異物を除去する方式を開示する。
【0006】
更に、塵挨除去の考え方を進めて、下記特許文献5は、装置内で搬送を司る搬送ローラに接離可能な粘着ローラを接触させて、搬送ローラ表面をクリーニングする方式を開示する。また、下記特許文献6は、装置内を搬送される被般送媒体(シート)に直接粘着ローラを係合させて、被搬送媒体表面の異物を除去する方式を開示する。
【0007】
医療の分野、特に、乳房診断においては、読影すべき対象が、上記の白ポチ(白抜け)と類似の微小石灰化となるので、輝尽性蛍光体プレートからの読み取り画像や、仕上がりフィルム画像中に存在する画像欠陥(白ポチ、白抜け)の排除は、読影(診断)精度にも影響する重要な問題であることが知られている(下記特許文献7参照)。
【0008】
即ち、医療用装置には、上述する事務機のように所定サイクル毎に搬送系を粘着シト等でクリーニングする方式では充分では無く、粘着ローラ等を内蔵し、常に異物が除去される後者の方式が好ましいのである。
【0009】
ところで、粘着ローラを内蔵する方式においては、初期性能に問題はあまり生じないが、粘着ローラが、塵挨・異物を吸着(貼着)し続けると、ついには、一旦吸着した塵挨・異物が、シート状フィルム等に最終的に付着することになるので、仕上がり画像に影響を及ぼす前にメンテナンス(粘着ローラからの塵挨・異物等の除去)が必要になる。
【0010】
この対策として、粘着ローラから塵挨・異物を転写させる転写用ローラ(このローラも粘着性を有し、粘着力は粘着ローラよりも大きい)を粘着ローラ表面に作用させることにより仕上がり画像ヘの影響が発生までの時間を延ばす方式が提案されている。
【0011】
しかしながら、この方式は下記のような不具合を有している。
(1)最終的には転写ローラのメンテナンスが必要となる。
(2)通常の処理時に駆動系ヘの負荷を軽減するための転写ローラの圧着解除機構が必要となり機構が複雑化する(従って、転写ローラのメンテナンスも取り外し等の工数がかかる)。
(3)圧着解除無しであると、装置非稼働時に粘着ローラと転写ローラの貼り付きが懸念されるため、両者の粘着力を低下せざるを得なくなり、本来の塵挨・異物粘着性能を低下させることになる。
(4)転写ローラから付着した塵挨や異物を除去するのに流水で洗浄する必要があるので、乾くまで待たないと装置に再装填できない。
(5)転写ローラ表面を人手で布等で拭くと、作業定量化が難しく、逆に清掃むらが発生し易く、装置稼働再開時に仕上がりフィルムに清掃むらが転写される結果となる。
【特許文献1】特開平05−69654号公報
【特許文献2】特開平10−129078号公報
【特許文献3】特開2004一12587号公報
【特許文献4】特開平06−328742号公報
【特許文献5】特開2002−220128号公報
【特許文献6】特開2002−337370号公報
【特許文献7】特開平10−133309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、粘着ローラを内蔵した医療用記録装置において、粘着ローラのユーザによる清掃を短時間に行い、かつ、清掃後のむら発生もなく速やかに運転再開可能なメンテナンス方法及びそのメンテナンス方法に用いることのできるクリーニングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明による医療用記録装置のメンテナンス方法は、シート状の感光性フィルムを保持し載置するフィルム載置手段と、前記フィルム載置手段に載置された感光性フィルムを搬送し、所定の粘着力を有し、前記搬送される感光性フィルムに当接してその表面上の異物を除去可能な粘着ローラを有する搬送手段と、前記搬送された感光性フィルムに診断画像信号に対応する潜像を形成する露光手段と、前記フィルム載置手段、前記搬送手段及び前記露光手段を遮光状態に保つことが可能であり前記搬送手段の粘着ローラ近傍を開放可能なカバー手段と、を備える医療用記録装置のメンテナンス方法であって、前記カバー手段により粘着ローラ近傍を開放し、少なくとも片面に前記粘着ローラの粘着力よりも大きな粘着力を有し、ローラ軸方向に可撓性を有するシート状体を前記粘着ローラに係合させ、この係合状態で前記粘着ローラを回転し、前記シート状体を搬送させながら前記粘着ローラの表面上の異物を前記シート状体に転写させ、前記シート状体を取り除くことを特徴とする。
【0014】
この医療用記録装置のメンテナンス方法によれば、粘着ローラに当接可能で、少なくとも片面に粘着層を有する可撓性のシート状体を内蔵された粘着ローラに係合させて所定長さだけ搬送することで、粘着ローラの表面に十分に密着して粘着ローラの表面に付着していた塵挨・異物等をシート状体に転写させた後、そのシート状体を除去することで、粘着ローラの表面を均一にクリーニングできるので、粘着ローラを内蔵した医療用記録装置において、粘着ローラのユーザによる清掃を短時間に行い、かつ、清掃後のむら発生もなく速やかに運転再開が可能となる。
【0015】
上記医療用記録装置のメンテナンス方法において、前記異物の前記シート状体への転写後、前記シート状体と前記粘着ローラの係合を解除することが好ましい。
【0016】
また、上記医療用記録装置の前記粘着ローラが感光性フィルムフィルムを搬送するニップローラ機能を兼ねる場合に、粘着ローラを取り外すことなくクリーニングを行うことができるので、クリーニングがし易い。
【0017】
また、前記シート状体と前記粘着ローラを係合させ、前記粘着ローラを正逆転させることで、粘着ローラを比較的ゆっくりと回転できるので、粘着ローラからの塵挨・異物等をシート状体に効率よく転写でき除去できる。
【0018】
前記粘着ローラがフィルムの潜像形成面に当接するように配置されることが好ましく、画像形成面における異物を除去でき、読影(診断)精度にも影響する最終画像における白抜け等の画像欠陥の発生を防止できる。
【0019】
本発明によるクリーニングシートは、感光性フィルムシート、または、輝尽性蛍光体シートを搬送する医療用記録装置の搬送系に設けられ前記シートに付着した異物を転写し除去可能な粘着ローラのクリーニングに用いるクリーニングシートであって、前記粘着ローラの軸方向で前記粘着ローラの表面に追従可能な可撓性を有する可撓性シート体と、前記可撓性シート体の少なくとも一方の面を粘着面とするよう前記一方の面に形成された粘着層と、前記可撓性シート体の少なくとも一側端に沿って所定幅で前記粘着面に設けられかつ前記可撓性シート体の剛性を向上させる補助部材と、を備えることを特徴とする。
【0020】
このクリーニングシートによれば、少なくとも片面にある粘着面を粘着ローラに係合させることで、粘着ローラの表面に十分に密着して粘着ローラの表面に付着していた塵挨・異物等を粘着面に転写させた後、そのクリーニングシートを除去することで、粘着ローラの表面を均一にクリーニングできるので、粘着ローラを内蔵した医療用記録装置において粘着ローラのユーザによる清掃を短時間に行い、かつ、清掃後のむら発生もなく速やかに運転再開が可能となる。
【0021】
上記クリーニングシートにおいて前記補助部材の表面が滑面性を有することが好ましく、表面離型性を得ることができ、粘着ローラにいったん当接したときに離れ易くなり、取り扱い易くなる。
【0022】
また、前記補助部材はその端部が前記粘着面からはみ出ていることが好ましく、粘着ローラに係合させるときに、粘着面が粘着ローラの表面以外に付いて取り扱い難くなることがない。
【0023】
また、前記粘着面を覆うカバーシートを有し、クリーニング使用時には前記カバーシートを除去し、前記粘着面を露呈させることが可能であることが好ましい。
【0024】
上記クリーニングシートは、上述の医療用記録装置のメンテナンス方法における前記シート状体として用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明のメンテナンス方法によれば、粘着ローラを内蔵した医療用記録装置において、粘着ローラのユーザによる清掃を短時間に行い、かつ、清掃後のむら発生もなく速やかに装置の運転を再開できる。
【0026】
本発明のクリーニングシートによれば、上記メンテナンス方法に用いることができ、粘着ローラを内蔵した医療用記録装置において、粘着ローラのユーザによる清掃を短時間に行い、かつ、清掃後のむら発生もなく速やかに装置の運転を再開できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態によるメンテナンス方法を適用可能な医療用記録装置の要部を示す正面図である。図2は図1の医療用記録装置の露光部を概略的に示す図である。
【0028】
図1に示すように医療用記録装置100は、シート状の熱現像感光材料である熱現像感光フィルム(以下、「フィルム」という場合もある。)を所定枚数でパッケージした包装体を装填し載置する第1及び第2の装填部11,12と、フィルムを1枚づつ露光・現像のために搬送する搬送部15とを有する供給部110と、供給部110から給送されたフィルムを露光し潜像を形成する露光部120と、潜像を形成されたフィルムを熱現像する熱現像部130と、現像されたフィルムの濃度を測定し濃度情報を得る濃度計200や搬送ローラ144A等を含む冷却搬送部150と、を備える。
【0029】
供給部110の第1及び第2の装填部11,12には、サイズの異なるフィルムをそれぞれ装填し保持することができ、第1の装填部11または第2の装填部12からフィルムが1枚づつ搬送部5、搬送ローラ対139,140,141により図1の矢印方向(1)に搬送される。搬送ローラ対139,140,141が第1搬送手段を構成し、フィルムを露光部120に向け下降搬送する。
【0030】
次に、フィルムは、矢印方向(2)に水平搬送され搬送ローラ対142で副走査搬送されながら露光部120で診断画像信号に基づいてレーザ光が照射され潜像が形成される。
【0031】
次に、搬送ローラ対146,145,144,143により矢印方向(3)へ搬送される。搬送ローラ対146,145,144,143が第2搬送手段を構成し、潜像の形成されたフィルムを熱現像部130に向け上昇搬送する。
【0032】
次に、フィルムは熱現像部130で潜像が可視像化され、更に矢印方向(4)へ搬送ローラ144Aにより搬送され冷却搬送部150で冷却されてから排出部160に排出される。
【0033】
なお、図1において、フィルムは、潜像の形成される乳剤面F1(図4)が搬送ローラ対139,140,141では図の右面に位置し、露光部120の搬送ローラ対142では図の上面に位置し、搬送ローラ対146,145,144,143では図の左面に位置する。
【0034】
次に、露光部について説明する。図2のように、露光部120は、診断画像信号Sに基づき強度変調されたレーザ光Lを、回転多面鏡113によって偏向して、フィルムF上を主走査すると共に、フィルムFをレーザ光Lに対して主走査の方向と略直角な方向に相対移動させることにより副走査し、レーザ光Lを用いてフィルムFに潜像を形成するものである。
【0035】
露光部120のより具体的な構成を以下に述べる。図2において、外部の画像出力装置121から出力された画像データをネットワーク等を介して受信し、その診断画像データのデジタル信号である診断画像信号Sは、D/A変換器122においてアナログ信号に変換され、変調回路123に入力される。変調回路123は、かかるアナログ信号に基づき、レーザ光源部110aのドライバ124を制御して、レーザ光源部110aから変調されたレーザ光Lを照射させるようになっている。
【0036】
レーザ光源部110aから照射されたレーザ光Lは、レンズ112を通過し、シリンドリカルレンズ115により上下方向にのみ収束されて、図中矢印A’方向に回転する回転多面鏡113に対し、その駆動軸に垂直な線像として入射するようになっている。回転多面鏡113は、レーザ光Lを主走査方向に反射し偏向し、偏向されたレーザ光Lは、2枚のレンズを組み合わせてなるシリンドリカルレンズを含むfθレンズ114を通過した後、光路上に主走査方向に延在して設けられたミラー116で反射されて、搬送ローラ対142により、矢印Y方向に搬送されている(副走査される)フィルムFの被走査面117上を、矢印X方向に繰り返し主走査する。すなわち、レーザ光Lを、フィルムF上の被走査面117の全面にわたって走査する。
【0037】
fθレンズ114のシリンドリカルレンズは、入射したレーザ光LをフィルムFの被走査面117上に、副走査方向にのみ収束させるものとなっており、また前記fθレンズ114から前記被走査面までの距離は、fθレンズ114全体の焦点距離と等しくなっている。このように、露光部120においては、シリンドリカルレンズを含むfθレンズ114及びミラー116を配設しており、レーザ光Lが回転多面鏡113上で、一旦副走査方向にのみ収束させるようになっているので、回転多面鏡113に面倒れや軸ブレが生じても、フィルムFの被走査面117上において、レーザ光Lの走査位置が副走査方向にずれることがなく、等ピッチの走査線を形成することができるようになっている。回転多面鏡113は、例えばガルバノメータミラー等、その他の光偏光器に比べ走査安定性の点で優れているという利点がある。以上のようにして、フィルムFに診断画像信号Sに基づく診断画像の潜像が形成されることとなる。
【0038】
図1の熱現像部130は、フィルムFを外周にほぼ密着して保持しつつ加熱及び回転可能な加熱部材としての加熱ドラム14を有し、加熱ドラム14の内周部には通電制御により発熱し温度制御されるヒータが配置されている。また、加熱ドラム14の外方には、案内部材かつ押圧部材として加熱ドラム14に比べて小径の回転自在の対向ローラ16が加熱ドラム14に接するように複数本設けられており、加熱ドラム14に対して平行に対向するように配置されている。
【0039】
加熱ドラム14は、上述のように潜像が形成されたフィルムFを複数の対向ローラ16との間に挟んだ状態で加熱し回転しながら搬送することで、所定の最低熱現像温度以上に、所定の熱現像時間維持することによって、フィルムFに潜像を可視の診断画像として形成する。ここで、最低熱現像温度とは、フィルムFに形成された潜像が熱現像され始める最低温度のことであり、例えば95℃以上である。一方、熱現像時間とは、フィルムFの潜像を所望の現像特性に現像するために、最低熱現像温度以上に維持するべき時間をいう。
【0040】
次に、図1の医療用記録装置100の搬送ローラ対140に配置された粘着ローラのクリーニング処理操作のための構成について図3,図4を参照して説明する。図3は図1の医療用記録装置の筐体から側面カバー部材を開放した状態を示す要部斜視図である。図4は図1の搬送ローラ対139,140,141(第1搬送手段)の概略的な側面図である。
【0041】
図1のように、医療用記録装置100では、熱現像部130の下側部分の筐体101内に上から順に第1の装填部11、第2の装填部12、露光部120が積み重なるようにして配置されている。筐体101の両側面に設けられた側面カバー部材1a、1bは筐体101側に対しビス止め構造とされ、例えば、図3の破線のように側面カバー部材1aが筐体101側に設けられた複数のビス穴1cにビスにより取り付けられることで内部が遮光状態とされる。ビス止めを解除することで側面カバー部材1a、1bを取り外し開放可能に構成されている。なお、両側面カバー部材1a、1bは、公知のロック機構及びロック開放のためのソレノイド等で構成される開放方式を採用し、図示せぬ制御手段でソレノイドを制御することで自動開放するように構成してもよい。
【0042】
図1,図3,図4に示すように、搬送ローラ対139の下流側に配置される搬送ローラ対140は、回転方向tの一方向に回転駆動される駆動ローラ140aと、従動ローラである粘着ローラ140bと、を有し、搬送ローラ対139から送られてきたフィルムFを図1,図4の下方の方向(1)に搬送する。また、クリーニングのとき、操作レバー147を図3のように粘着ローラ140bの軸端に取り付け、操作レバー147を操作することで駆動ローラ140aを回転させることができるようになっている。
【0043】
搬送ローラ対140の駆動ローラ140aは樹脂材料から構成され、粘着ローラ140bはローラ表面が粘着性を有し、例えば、ブチルゴム系粘着ローラ、シリコンゴム系粘着ローラ、ウレタン系粘着ローラ、スチレン系エラストマー粘着ローラ等から構成できるが、これらに限定されるものではない。粘着ローラ140bはフィルムFの乳剤面F1に接触するように筐体101内部側に配置されている。粘着ローラ140bのローラ表面には塵埃等の異物が付着し易く、図4のように、粘着ローラ140bがフィルムFの乳剤面F1に接触することで、乳剤面F1に付いた塵埃等を効果的に除去することができる。
【0044】
搬送ローラ対140から送られてきたフィルムFは、図1,図3,図4のように、搬送ローラ対140の下流側に配置された搬送ローラ対141で垂直方向から水平方向に方向転換し、露光部120において搬送ローラ対142により副走査搬送される。
【0045】
図4に示すように、搬送ローラ対140の上流側には、搬送されるフィルムFの各面に対向するように一対のガイド部材148,149が配置されており、フィルムFに塵埃等ができるだけ付かないようにしている。ガイド部材148が側面カバー部材1a側に位置し、ガイド部材149が筐体101内部側に位置している。
【0046】
図4の破線に示すようにガイド部材148は側面カバー部材1aと連結部148aで連結されており、側面カバー部材1aを図3のように取り外したとき、ガイド部材148も連動して図4の実線位置から方向mに破線位置へと一体に取り外されるようになっている。
【0047】
次に、医療用記録装置100の搬送ローラ対140の粘着ローラ140bをクリーニングするためのクリーニングシートについて図5を参照して説明する。図5は本実施の形態によるクリーニングシートの斜視図(a)及び部分拡大断面図(b)である。
【0048】
図5(a)、(b)のように、クリーニングシート1は、可撓性を有する矩形状の可撓性シート体2と、可撓性シート体2の一方の面を粘着面3にするように形成された粘着層3aと、可撓性シート体2の両端に沿って所定幅で粘着面3に設けられて可撓性シート体2の剛性を向上させる補助部材5,6と、を備える。
【0049】
可撓性シート体2は例えばPETシートから構成でき、その厚さを例えば50μm程度にできる。粘着層3aは粘着面3が粘着ローラ140bの表面よりも大きい粘着力を有するように形成されている。粘着面3の粘着力は粘着ローラ140bの表面よりも5乃至10倍程度が好ましい。粘着層3aは、例えば、アクリル系溶剤型粘着剤から形成でき、その粘着力は12〜15N/25mm(JIS Z 0237による)程度が好ましい。
【0050】
可撓性シート体2の粘着面3には、図5(a)のように、その両端側に粘着面から若干はみ出すように滑面性のある補助部材5,6が配置されて貼付けられており、かかる構成により、両端部分のクリーニングシートの剛性を上げることが可能となり、ユーザが片手で、そのクリーニングシートの先端部分をつかんで、粘着ローラのニップ部に差し込むことが可能となる。また、粘着ローラのニップ部に先端を挿入する時、2〜3度やり直しても、粘着面3の表面は先端部に露呈しておらず、補助部材5,6の滑面層となっているので、特に問題を生じることもない。なお、PETシートの厚さが決まると、補助部材5,6の厚さを適宜選定することで、所望の剛性が得られることは言うまでもない。更に、可撓性シートの両面を粘着面とし、両面に対し上記の補助部材を設けても良い。こうすることで、可撓性シート体の表裏を間違うことが防止できる。また、この際には一端部には2枚の補助部材が作用するので、剛性は向上する。
【0051】
補助部材5,6は、例えば上質紙の両面にポリエチレンラミネート加工処理を施し、片面に剥離処理を施したものから構成できる。また、補助部材5,6が粘着面3から若干はみ出すことで、粘着ローラ140bに係合させるときに、粘着面3が粘着ローラ140bの表面以外に付いて取り扱い難くなることを防ぐことができる。
【0052】
また、補助部材5,6の中央部分には補助部材5,6と同じ材料からなるカバーシート4が配置されており、クリーニングシート1をクリーニングに用いるときに、カバーシート4を剥離し除去して粘着面3を露呈させる。
【0053】
次に、図1の医療用記録装置100のメンテナンスのときに、図5のクリーニングシート1を用いて図1,図3,図4の粘着ローラ140bをクリーニングする方法について図6を参照して説明する。図6は図4の搬送ローラ対140を図5のクリーニングシート1でクリーニングする様子を示す要部側面図である。
【0054】
図1,図3,図4の搬送ローラ対140の粘着ローラ140bのクリーニングを行うときは、まず、医療用記録装置100の筐体101から側面カバー部材1aのビス止めを解除し、または、ソレノイドによる自動開放方式の場合は操作部(図示省略)からカバー開放情報を入力し、側面カバー部材1aを開放する。このとき、側面カバー部材1aが開放されると、ガイド部材148も連動して取り外される。これにより、図3のように、搬送ローラ対140の駆動ローラ140aと、粘着ローラ140bの一部が露出する。
【0055】
次に、図6のように、図5のクリーニングシート1を補助部材5が粘着ローラ140b側になるようにして搬送ローラ対140のニップ部に接近させる。このとき、オペレータはクリーニングシート1の端部の剛性がアップしている補助部材5を手で掴み、搬送ローラ対140のニップ部を目指してクリーニングシート1を容易に挿入でき、また、この挿入時に補助部材5が粘着面3よりもはみ出ているので先端が他部分に貼り付くこともないので、クリーニングがし易い。
【0056】
次に、図3の操作レバー147により、駆動ローラ140aの駆動源であるステッピングモータのロータ及びステータによる自己保持力を含む駆動系負荷に抗して、間欠的に駆動ローラ140aを一方向tに回転させることで、クリーニングシート1を搬送ローラ対140に挟持して図6の下方に移動させ、その粘着面3を粘着ローラ140bに係合させながら粘着面3の距離程度の所定長さで移動させる。これにより、可撓性シート体2は、可撓性のあるシート特性により粘着ローラ140bのローラ軸方向でローラ表面に追従可能であるため、ローラ軸方向で均一に粘着面3が粘着ローラ140bのローラ表面に係合しシワが発生することもなく、均一なクリーニングが可能となる。
【0057】
次に、駆動ローラ140aを逆方向に回転させることで、クリーニングシート1を搬送ローラ対140に挟持して図6の上方に移動させ、その粘着面3を粘着ローラ140bに係合させた状態で元に戻し、かかる往復動作を2〜3回転相当程度行うことで、粘着ローラ140bの全ローラ外周面をクリーニングする。この後、逆方向に回転させて可撓性シート体2の端部を粘着ローラ140bのニップ部より離間させる(この操作を、本発明では、シート状体と粘着ローラの係合を解除する、という。)。これにより、粘着ローラ140bの表面上の異物をクリーニングシート1の粘着面3に転写させ、粘着ローラ140bの表面を均一にクリーニングできる。なお、上述の操作ではなく、ニップ部をニップ状態のままとし、強引にクリーニングシートを引き出したりする操作や、ニップ部を手で離間させ、クリーニングシートを引き出したりする操作を行うと、再度粘着ローラ140bにせっかく除去した異物が転写する場合があり、好ましくない。
【0058】
次に、クリーニングシート1をニップ部より取り除くことでクリーニングが完了する。このようにして粘着ローラ140bの表面から塵挨等の異物を除去してから、外装カバー1aを閉じれば、直ちに診断画像をプリント可能となる。
【0059】
また、本発明者等の検討によれば、粘着ローラ140bからクリーニングシート1への転写は、粘着力が同一の場合、クリーニングシート1の移動速度が遅いほうが転写率がよく、この状況に鑑み、供給部110から露光部120までの搬送系の搬送ローラ対140の粘着ローラに対応する外装カバーを開放し、粘着ローラ自体または搬送系の駆動系をユーザーがマニュアルで比較的ゆっくりと移動(回転)させることが好ましい。なお、通常、外装カバー開放時は、安全上の観点から駆動部品への電源供給をOFFするので、この点からも好ましい。
【0060】
また、クリーニングシート1の搬送長さは、粘着ローラ140bの外周面長さ以上であることが好ましいが、マニュアルによる移動を続け、クリーニングシート1の端が下流側に行き過ぎて取り除くことが困難にならない程度の長さであることが好ましい。
【0061】
また、クリーニングシート1による粘着ローラ140bのメンテナンス方法によれば、オペレータとなる放射線科の技師等は、メンテナンス対象の粘着ローラに直接は触れず、クリーニングシート1の先端を搬送ローラ対140のニップ部に挿入するだけでよいので、作業者による拭きむら等が発生することなく、クリーニングの均一化が可能となる。
【0062】
また、搬送ローラ対においてフィルムの乳剤面側及びバックコート面側ともに粘着ローラが設けられている場合には、上記粘着面を可撓性シート体2の両面に設け、補助部材も両面端部に設けることが好ましい。
【0063】
以上のように、本実施の形態のメンテナンス方法によれば、クリーニングシート1により粘着ローラ140bの表面を均一にクリーニングできるので、粘着ローラを内蔵した医療用記録装置100において粘着ローラのユーザによる清掃を短時間に行い、かつ、清掃後のむら発生もなく速やかに装置の運転再開が可能となる。また、画像形成面である乳剤面における異物を充分に除去できるので、読影(診断)精度にも影響する最終画像における白抜け等の画像欠陥の発生を確実に防止できる。
【0064】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、搬送ローラ対139,141等にも粘着ローラを配置する構成としてもよく、フィルムの乳剤面から効率的に異物を除去できる。
【0065】
また、第2搬送手段(搬送ローラ対146,145,144,143)側にも図4と同様の粘着ローラを配置してもよく、図4と同様の構成とすることでクリーニングシート1により粘着ローラの清掃を充分にかつ均一に実行できる。これにより、フィルムに塵埃等の異物が付着したままフィルムを加熱し欠陥を形成してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施の形態による医療用記録装置の要部を示す正面図である。
【図2】図1の医療用記録装置の露光部を概略的に示す図である。
【図3】図1の医療用記録装置の筐体から側面カバー部材を開放した状態を示す要部斜視図である。
【図4】図1の搬送ローラ対139,140,141の概略的な側面図である。
【図5】本実施の形態によるクリーニングシートの斜視図(a)及び部分拡大断面図(b)である。
【図6】図4の搬送ローラ対140を図5のクリーニングシート1でクリーニングする様子を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 クリーニングシート(シート状体)
1a 側面カバー部材
2 可撓性シート体
3 粘着面
3a 粘着層
4 カバーシート
5,6 補助部材
11,12 装填部(フィルム載置手段)
100 医療用記録装置
101 筐体
110 供給部
120 露光部
130 熱現像部
139,140,141 搬送ローラ対(搬送手段)
140a 駆動ローラ
140b 粘着ローラ
146,145,144,143 搬送ローラ対
F フィルム(感光性フィルムシート)
F1 乳剤面
S 診断画像信号


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の感光性フィルムを保持し載置するフィルム載置手段と、
前記フィルム載置手段に載置された感光性フィルムを搬送し、所定の粘着力を有し、前記搬送される感光性フィルムに当接してその表面上の異物を除去可能な粘着ローラを有する搬送手段と、
前記搬送された感光性フィルムに診断画像信号に対応する潜像を形成する露光手段と、
前記フィルム載置手段、前記搬送手段及び前記露光手段を遮光状態に保つことが可能であり前記搬送手段の粘着ローラ近傍を開放可能なカバー手段と、を備える医療用記録装置のメンテナンス方法であって、
前記カバー手段により粘着ローラ近傍を開放し、
少なくとも片面に前記粘着ローラの粘着力よりも大きな粘着力を有し、ローラ軸方向に可撓性を有するシート状体を前記粘着ローラに係合させ、
この係合状態で前記粘着ローラを回転し、前記シート状体を搬送させながら前記粘着ローラの表面上の異物を前記シート状体に転写させ、前記シート状体を取り除くことを特徴とする医療用記録装置のメンテナンス方法。
【請求項2】
前記異物の前記シート状体への転写後、前記シート状体と前記粘着ローラの係合を解除する請求項1に記載の医療用記録装置のメンテナンス方法。
【請求項3】
前記粘着ローラが感光性フィルムフィルムを搬送するニップローラ機能を兼ねる請求項1または2に記載の医療用記録装置のメンテナンス方法。
【請求項4】
前記シート状体と前記粘着ローラを係合させ、前記粘着ローラを正逆転させる請求項1,2または3に記載の医療用記録装置のメンテナンス方法。
【請求項5】
前記粘着ローラがフィルムの潜像形成面に当接する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医療用記録装置のメンテナンス方法。
【請求項6】
感光性フィルムシート、または、輝尽性蛍光体シートを搬送する医療用装置の搬送系に設けられ前記シートに付着した異物を転写し除去可能な粘着ローラのクリーニングに用いるクリーニングシートであって、
前記粘着ローラの軸方向で前記粘着ローラの表面に追従可能な可撓性を有する可撓性シート体と、
前記可撓性シート体の少なくとも一方の面を粘着面とするよう前記一方の面に形成された粘着層と、
前記可撓性シート体の少なくとも一側端に沿って所定幅で前記粘着面に設けられかつ前記可撓性シート体の剛性を向上させる補助部材と、を備えることを特徴とするクリーニングシート。
【請求項7】
前記補助部材の表面が滑面性を有する請求項6に記載のクリーニングシート。
【請求項8】
前記補助部材はその端部が前記粘着面からはみ出ている請求項6または7に記載のクリーニングシート。
【請求項9】
前記粘着面を覆うカバーシートを有し、クリーニング使用時には前記カバーシートを除去し、前記粘着面を露呈させることが可能である請求項6,7または8に記載のクリーニングシート。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医療用記録装置のメンテナンス方法における前記シート状体として用いられることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載のクリーニングシート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−3515(P2006−3515A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178151(P2004−178151)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】