説明

医薬組成物

【課題】従来の難点を克服するか、または少なくとも軽減し、更に、有効な薬物を頻繁に投与しなくてよい(例えば1日に一回)有利な特性を提供し、一方、少量の薬物を頻繁に(1日に2回以上)投与することで達成されるような血中(血漿)レベルを達成する可溶性の薬物、例えば11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは製剤学上認容性の塩の徐放性製剤を提供する。
【解決手段】ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]ジベンゾ−[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤上認容性の塩を、1種以上の製剤上認容性の賦形剤と共に含有する徐放性製剤によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物および、より詳細には11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤上認容性の塩からなる徐放性医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの疾患の治療では、医薬的有効成分を徐放性の形で提供することは、治療および予防の両面で所望される。徐放性は、長時間にわたる一般に均一で一定の放出速度を提供し、薬剤を頻繁に投与することなしに長時間にわたり有効成分を安定で所望の血中(血漿)レベルにするという点で望ましい。
【0003】
ゲル化剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する多数の徐放性製剤は、該分野において公知であるが、幾つかの理由のため可溶性の薬剤およびゲル化剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる徐放性製剤を製造するのは困難であると解される。まず、水溶性の有効成分は、用量ダンピング(dose dumping)として公知の現象を受けやすい徐放性生成物を生成する傾向にある。すなわち、有効成分の放出はしばらくは遅延するが、放出し始めたらその放出速度は非常に速くなる。更に、毒性の恐れを増加させる有効成分の血漿濃度に変動が発生しやすくなる。また更に、有効成分の血漿濃度に日毎に多少の変動が観察される。最後に、所望の崩壊プロフィールの達成または可溶性薬剤の放出速度の制御は困難であると解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第240228号明細書
【特許文献2】欧州特許第282236号明細書
【特許文献3】米国特許第4,879,288号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、可溶性の薬物、例えば11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは製剤学上認容性の塩の徐放性製剤が必要である。該製剤は、1つ以上の前記の難点を克服するか、または少なくとも軽減し、更に、有効な薬物を頻繁に投与しなくてよい(例えば1日に一回)有利な特性を提供し、一方、少量の薬物を頻繁に(1日に2回以上)投与することで達成されるような血中(血漿)レベルを達成する。
【0006】
化合物11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(以下の式I参照)およびその製剤学上認容性の塩は、有用な抗ドパミン作動性活性を示し、かつ例えば抗精神病薬(例えば精神的疾患の発現の制御治療のため)または機能亢進の治療剤として使用してもよい。
【0007】
【化1】

該化合物は、副作用、例えば急性ジストニー、急性ジスキネジー、偽パーキンソン症候群および遅発性ジスキネジーを引き起こす可能性を実質的に低下させる抗精神病薬として使用してもよいため特に重要である。他の抗精神病薬または神経弛緩薬の使用は、これらの副作用を引き起こすことがある。
【0008】
11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよびその製剤学上認容性の塩の製造、物理的特性および有益な薬理学的特性は、公開された欧州特許第240228号明細書および欧州特許第282236号明細書ならびに米国特許第4,879,288号明細書中に記載されており、これらの文献の全内容は本明細書中に引用される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、ゲル化剤、有利にはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩を1種以上の製剤学上認容性の賦形剤と共に含有する徐放性製剤が提供される。有利には、徐放性製剤は、ゲル化剤、有利にはヒドロキシプロピルメチルセルロースで構成される親水性マトリクス、および11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩を1種以上の製剤学上認容性の賦形剤と共に含有する。
【0010】
本明細書におけるゲル化剤とは、水と接触するとゲルを形成する任意の物質、特に親水性の物質を意味する。従って、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボマー、ナトリウム カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよび類似物質のような物質、またはその混合物が包含される。有利なゲル化剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0011】
有利には、ゲル化剤、有利にはヒドロキシプロピルメチルセルロースの量は、有効成分が制御された様式で、4時間以上、有利には8時間以上、かつ特に8〜24時間にわたって製剤から放出されるように選択する。前記の時間が経過した時点で有効成分は少なくとも60%が放出されているようにする。
【0012】
ゲル化剤、有利にはヒドロキシプロピルメチルセルロースは、適切には約5〜50%(重量%)、より適切には約5〜40%、最も有利には約8〜35%、かつ特に約10〜35%で存在する。一般に、ゲル化剤、有利にはヒドロキシプロピルメチルセルロースは、約10〜30%、より有利には15〜30%で存在する。
【0013】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、1種以上の品種のポリマーを含有してもよく、かつ幾つかの登録商標、例えばMETHOCEL(R)E、F、JおよびK(ダウケミカル社、米国)ならびにMETALOSETMSH(シンエツ有限会社、日本)として商業的に入手可能である。与えられた登録商標で入手できる種々の異なる品種では、メトキシおよびヒドロキシプロピル含有量ならびに粘度が異なる。メトキシ含有量は16.5〜30重量%の範囲内であり、ヒドロキシプロピル含有量は4〜32重量%の範囲内であり、かつ2%水溶液の粘度は、20℃で、3cps〜100000cpsの範囲内である。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、有利には、(a)粘度約40〜60cps(特に約50cps)、メトキシ含有量約28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜9重量%未満を有するポリマー;または(b)粘度約3500〜5600cps(特に約4000cps)、メトキシ含有量約28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜12重量%を有するポリマー;または(c)粘度約80〜120cps(特に約100cps)、メトキシ含有量約19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜9重量%未満を有するポリマー;または(d)粘度約3500〜5600cps(特に約4000cps)、メトキシ含有量約19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜12重量%を有するポリマー、またはこれらの混合物からなる。より有利には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、前記のような(a)〜(d)またはそれらの混合物からなる群から選択される、但し、製剤が前記の(d)に記載したヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するならば、製剤中に存在するヒドロキシプロピルメチルセルロースの総量は25.8重量%以上でなければならない。
【0014】
1つの態様においては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、粘度約4000cpsを有するポリマー8〜12%、有利には約5〜10%からなる。更なる態様においては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、粘度約50cpsを有するポリマー10〜35%、有利には約10〜15%からなる。
【0015】
特定の態様においては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、粘度約50cpsを有するポリマー15%、および場合により、粘度約4000cpsを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースポリマー約5%からなる。
【0016】
特に、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩(有利にはヘミフマレート塩:hemifumarate salt)は、約10〜90重量%、有利には約20〜80重量%、より有利には約35〜65重量%、最も有利には約40〜60重量%、かつ特に約43.2〜57.6重量%で存在する。
【0017】
一般に、該製剤は、1種以上の賦形剤を含有している。そのような賦形剤には、希釈剤、例えばラクトース、微結晶性セルロース、デキストロース、マンニトール、スクロース、ソルビトール、ゼラチン、アラビアゴム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一カルシウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムおよびその類似物質、有利にはラクトースおよび微結晶性セルロース;滑沢剤、例えばステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウムおよびそれらの類似物質、有利にはステアリン酸マグネシウム;結合剤、例えばスクロース、ポリエチレングリコール、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、トウモロコシ(cornまたはmaize)デンプン、α−デンプンおよびそれらの類似物質、有利にはポビドン(ポリビニルピロリドン);着色剤、例えば酸化鉄、FD&C染料、レーキおよびそれらの類似物質;フレーバー;ならびに適当な有機酸またはそのアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウム)塩を包含するpH調整剤、例えば安息香酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸およびそれらの類似物質または相応のアルカリ金属塩、有利には前記の酸のアルカリ金属塩、特にクエン酸のナトリウム塩(すなわちクエン酸ナトリウム)が包含される。一般に、賦形剤は、約10〜90重量%、有利には約20〜80重量%、より有利には約20〜45重量%、最も有利には約20〜40重量%、かつ特に約22.4〜36.8重量%で存在する。有利には、製剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウムおよびポビドンからなる群から選択される1種以上の製剤学上認容性の賦形剤を含有してもよい。特に、該製剤は1種以上の、(a)有利には約4〜20重量%の量の微結晶性セルロース、(b)有利には約5〜20重量%の量のラクトース、(c)有利には約1〜3重量%の量のステアリン酸マグネシウム、(d)約10〜30重量%、有利には約12.5〜25重量%、かつ特に約12.5重量%のクエン酸ナトリウム、および(e)約1〜15重量%、有利には約4〜6重量%、かつ特に約5重量%のポビドン(ポリビニルピロリドン)を含有してもよい。
【0018】
また、本発明によれば、ゲル化剤、有利にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、および11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩を、1種以上の製剤学上認容性の賦形剤(その中の1種類はpH調整剤である)と共に含有する徐放性製剤を提供している。
【0019】
また、本発明によれば、有効成分として11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース5〜40%を、1種以上の製剤学上認容性の賦形剤と共に含有する徐放性製剤をも提供している。
【0020】
また、本発明によれば、有効成分として11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩約35〜65%、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース約5〜40重量%を、1種以上の製剤学上認容性の賦形剤と共に含有する徐放性製剤を提供している。
【0021】
また、本発明によれば、有効成分として11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩約35〜65重量%、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース約15〜30重量%を、1種以上の製剤学上認容性の賦形剤約20〜45重量%と共に含有する徐放性製剤を提供している。
【0022】
また、本発明によれば、有効成分として11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩約35〜65%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース約5〜40重量%、微結晶性セルロース約4〜12%、ラクトース約8〜20%からなり、かつ残部は1種以上の更なる製剤学上認容性の賦形剤である徐放性製剤を提供している。そのような更なる賦形剤とは、製剤または剤形の製造の際に滑沢剤として作用する成分(例えばステアリン酸マグネシウム)を含有してもよい。
【0023】
また、本発明によれば、(a)粘度約40〜60cps、メトキシ含有量約28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜9重量%未満を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、(b)粘度約3500〜5600、メトキシ含有量約28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、(c)粘度約80〜120cps、メトキシ含有量約19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜9重量%未満を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに(d)粘度約3500〜5600cps、メトキシ含有量約19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの混合物で構成される群から選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロース約5〜40重量%;11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩約35〜65重量%;1種以上の製剤学上認容性の賦形剤約20〜45重量%からなる徐放性製剤を提供している、但し、該製剤が前記の(d)に記載されたヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するならば、製剤中に存在するヒドロキシプロピルメチルセルロースの総量は25.8重量%以上にするべきである。
【0024】
この後者の群の範囲内の他の製剤は、(a)粘度約40〜60cps、メトキシ含有量約28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜9重量%未満を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、(b)粘度約3500〜5600cps、メトキシ含有量約28〜30重量%、ヒドロキシプロポキシ含有量約7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、(c)粘度約80〜120cps、メトキシ含有量約19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜9重量%未満を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに(d)粘度約3500〜5600cps、メトキシ含有量約19〜24重量%、ヒドロキシプロポキシ含有量約7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの混合物で構成される群から選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロース約8〜35重量%;11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩約35〜65重量%;ならびに1種以上の製剤学上認容性の賦形剤約20〜45重量%からなるものである。
【0025】
この後者の群の範囲内の更なる他の製剤は、群(a)〜(d)またはそれらの混合物から選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロース約10〜30重量%;11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩約40〜60重量%;ならびに1種以上の製剤学上認容性の賦形剤約20〜40重量%からなるものである。
【0026】
この後者の群の範囲内の有利な製剤は、群(a)〜(d)またはそれらの混合物から選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロース約15〜30重量%;11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩約43.2〜57.6重量%;ならびに1種以上の製剤学上認容性の賦形剤約22.4〜36.8重量%からなるものである。
【0027】
この後者の群の範囲内の特に有利な製剤は、群(a)〜(d)またはそれらの混合物から選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロース約15〜30重量%;11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩約43.2〜57.6重量%;ならびに(a)微結晶性セルロース約4〜12重量%、(b)ラクトース約5〜20重量%、(c)ステアリン酸マグネシウム約1〜3重量%、(d)クエン酸ナトリウム約10〜30重量%、および(e)ポビドン(ポリビニルピロリドン)約1〜15重量%で構成される群から選択される1種以上の製剤学上認容性の賦形剤約22.4〜36.8重量%からなるものである。
【0028】
前記の製剤において、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンは、20℃で水への平衡溶解度3.29mg/mLを有するヘミフマレート塩の形が有利である。
【0029】
特に重要な製剤は、以下の実施例で記載されるものを包含し、同様に実質的に以下の実施例で定義される製剤は、本発明の更なる特徴として提供される。
【0030】
前記のように、化合物11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよびその製剤学上認容性の塩は、有用な抗ドパミン作動性活性を示し、かつ例えば抗精神病薬(例えば精神的疾患の発現の制御治療のため)または機能亢進の治療として使用してもよい。また従って、本発明は、温血動物に本発明の製剤の有効量を投与することを特徴とする、温血動物、特にヒトの精神病状態、例えば精神病の治療方法を提供している。
【0031】
また、本発明は、本発明の製剤の有効量を温血動物に投与することを特徴とする温血動物の機能亢進の治療方法を提供している。
【0032】
本発明の製剤は、当業者に公知の慣用の方法、例えば湿式造粒法、直接圧縮法、乾式圧縮法(dry compaction)(スラッグ法)またはそれらの類似の方法によって製造してもよい。従って、例えば11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩、ゲル化剤、有利にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他の賦形剤を一緒に混合し、本発明の徐放性製剤を成形する。有利には、有効成分の11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩、ゲル化剤、有利にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他の賦形剤を一緒に混合し、タブレットに圧縮するために適当である混合物を形成し、次いでその混合物を圧縮してタブレットに成形するかまたはカプセルに充填する。
【0033】
有利には、混合の工程は、成分を混合し、混合した成分に湿式の顆粒化を実施し、その混合物を乾燥させ、乾燥させた混合物を粉砕し、混合物を滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムとブレンドし、かつブレンドした混合物を圧縮することによってタブレットを成形するかまたは該混合物をカプセルに充填する。
【0034】
本発明の製剤を製造する有利な方法は、以下の工程からなる:
(a)11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤学上認容性の塩、ゲル化剤、有利にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他の賦形剤を混合し;
(b)混合した成分に湿式の顆粒化を実施し;
(c)混合物を乾燥させ;
(d)乾燥させた混合物を粉砕し;
(e)該混合物を滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムとブレンドし;かつ
(f)ブレンドした混合物を圧縮し、タブレットに成形する。
【0035】
剤形を、該分野でよく知られている被覆剤、例えばセラック、ゼイン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリメタクリレート、酢酸ポリビニルフタレート、酢酸セルロースフタレート、トリアセチン、セバシン酸ジブチル;ポリエチレングリコール、二酸化チタンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物ならびにそれらの類似物質、の1種以上で被覆してもよい。
【0036】
本発明の製剤の徐放特性は、有効成分の崩壊を監視することによって証明してもよい。有効成分の崩壊は、当業者に公知の通常の方法[例えば崩壊試験の方法、例えばU.S.薬局方(USP)に開示されている回転バスケット法(装置I)またはパドル法(装置II)]を使用して監視してもよい。前記のような方法は、製剤を水性媒体、例えば水または塩酸中に浸漬させ、かつ媒体のアリコートを24時間にわたり種々の時点で回収することを包含する。それらのアリコートを、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、通常の方法論を使用して溶解した有効成分の濃度を決定するためにUV検出で分析する。特定の例においては、タブレットを水約900mL中に浸漬させかつ崩壊プロフィールを決定する。もう1つの特定の例においては、崩壊プロフィールは、タブレットを0.1NのHCl750mL中に100rpmの速度で2時間浸漬させ、次いでpHを6.2に調整するために0.2Mのリン酸緩衝液250mLを崩壊媒体に添加することによる回転バスケット法によって決定する。
【0037】
有利には、該製剤は有効成分を約8時間以上までの時間にわたり制御された様式で放出する。例えば、以下の例2に記載される製剤は、16時間にわたり約90%の有効成分を放出し、かつ例1に記載される製剤は、8時間にわたり約90%の有効成分を放出する。
【0038】
図2に示される有効成分の時間に対する血漿濃度のプロフィールは、以下の方法を使用して得られた。32人の患者を各グループが患者16人ずつになるようにグループAまたはグループBのどちらかに割り当てた。薬を2日間投与しなかった期間(1日目および2日目)後に、全ての患者に1日に2回、9日間(3〜11日目)、25〜200mgの間の固定した段階で用量を増加させ、例12の速放性製剤の経口用量を与えた。12日目から、患者に各グループ(グループAまたはB)内で無作為の治療順序を実施した。グループAの患者には、それぞれの以下の有効成分の製剤1種類を無作為の順序で投与することを包含する治療順序を実施した:空腹時に例12の速放性製剤の100mgのタブレット2個を12時間おきに1個ずつ投与(治療1)、空腹時に例2の製剤の400mgのタブレット1個を投与(治療2)および食事と共に例2の製剤の400mgのタブレット1個を投与(治療3)。グループBの患者には、それぞれの以下の有効成分の製剤の1種類を無作為の順序で投与することを包含する治療順序を無作為化した:空腹時に例12の速放性製剤の100mgのタブレット2個を12時間おきに1個ずつ投与(治療1)、空腹時に例1の製剤の400mgのタブレット1個を投与(治療4)および食事と共に例1の製剤の400mgのタブレット1個を投与(治療5)。12日目、16日目および20日目に、患者に、割り当てた治療の順序で試験的な治療をした。13日目と17日目の夕方に、患者に例12の速放性製剤200mg用量を投与し、かつ14日目、15日目、18日目および19日目に、患者に1日に2回、例12の速放性製剤200mg用量を投与した。血液試料を、3日目、10日目、11日目、14日目、15日目、18日目および19日目にそれぞれの被験者から朝の投与前に採取した。12日目、16日目および20日目に、投与の直前、および投与直後から投与後36時間までの間の規定した時間間隔でそれぞれの被験者から血液試料を採取した。血液試料中の有効成分の濃度は、液−液抽出および紫外線吸収検出装置を備える高性能液体クロマトグラフィーを使用して定量した。実施例1(n=11)、実施例2(n=10)および実施例12(群A:n=10、群B:n=12)の製剤に関する有効成分の血漿濃度の経時的プロフィールは図2に示した。表Aは、各実施例に関する24時間の投与間隔の曲線下の平均面積(AUC)値および平均最高血液濃度(Cmax)の一覧である。
表A
【表1】

【0039】
本発明の化合物の投与用量は、当業者に公知の基準により、投与経路、治療期間、精神的状態の程度、患者の体型および年齢、有効成分の効能およびそれに対する患者の反応を検討して変更する必要がある。従って、有効成分の有効量は、臨床医が全ての条件を検討し、かつ患者のために最良の判断を行うことにより容易に決定できる。一般に、該化合物を、温血動物(例えばヒト)に対して有効用量が受けられるように投与する、一般には1日に約0.01〜40mg/体重(kg)の用量の範囲で投与する。例えば、経口投与の場合、一般に約0.1〜40mg/体重(kg)の範囲内で投与する。有利には、本発明の化合物を、約25、50、200、300または400mg濃度(strength)で投与する。
【0040】
一般に、本発明の製剤は、単位剤形(unit dosage form)であり、かつ特に製剤はタブレットの形である。
【0041】
該製剤が他の予防薬または治療薬および/または医学的に不適合ではない薬剤との併用が可能なことは当業者には明白である。一般に、本発明の製剤は、実験動物に有効成分の最低有効用量の数倍を投与しても明白な毒性はなかった。
【0042】
更に、本発明は、以下の限定されない実施例によって示され、その際、温度は摂氏温度で表す。化合物11−[4−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]ジベンゾ[b,f][1,4]−チアゼピンおよびその製剤学上認容性の塩は、公開されている欧州特許第240228号明細書または欧州特許第282236号明細書ならびに米国特許第4,879,288号明細書に記載されているように製造してもよく、その全内容が本明細書中に引用されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、例8、9および10の徐放性製剤の放出(崩壊)プロフィールを示している。これは、適当なタブレットを0.1NのHCl750mL中に37℃、100rpmで2時間浸漬させ、次いで崩壊媒体に0.2Mのリン酸ナトリウム緩衝液250mLを添加し、pHを6.2に調整することによって得られる。
【図2】図2は、例1および2の徐放性製剤ならびに例12の速放性製剤のための有効成分の、時間に対する血漿濃度のプロフィールを示している。
【実施例】
【0044】
実施例1
以下の方法を、表1で定義した組成を有するタブレットを製造するために使用した。
【0045】
11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ−[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレート(3453.8g)、ラクトース(1144.7g)、微結晶性セルロース(381.5g)およびMETHOCEL(R)E50LV(900g)を、遊星形ミキサー中で約3分間ブレンドした。
【0046】
その混合物を精製水を使用して遊星形ミキサー中で湿式の顆粒化を実施した。この湿った顆粒を、水分バランスによって測定する際に、乾燥減量が約3%未満になるまで流動床乾燥器中で約65℃で乾燥させた。
【0047】
乾燥させた顆粒を、高速度でナイフ処理する、前方に適当なふるい(例えば20〜40メッシュ)を備えるハンマーミルまたは類似のミルを使用して粉砕した。
【0048】
ステアリン酸マグネシウムを適当なふるいに通過させた(例えば20〜40メッシュ)。
【0049】
前記の乾燥させた顆粒状材料を、慣用の配合器(例えばPatterson-Kelley Twin Shell)中で、ふるいに通過させたステアリン酸マグネシウムと約3分間ブレンドした。
【0050】
ブレンドした混合物を慣用の回転タブレット圧縮機(例えばKilian LX-21)を使用してタブレットに圧縮した。
【0051】
表1
【表2】

(a)有効成分は、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレートである。
(b)METHOCEL(R)E50LVプレミアムは、粘度40〜60cps、メトキシ含有量28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、米国)から入手してもよい。この製品はMPMC2910USPの規格を満たしている。この実施例中で使用している特定のMETHOCEL(R)E50LVは、粘度48cps、メトキシ含有量28.9重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量9.0重量%未満(例えば8.0%)を有している。
(c)添加したが保持しなかった。
【0052】
実施例1の製剤に関する有効成分の時間に対する血漿濃度のプロフィールを図2に示した。
【0053】
実施例2
実施例1に記載された方法を繰り返した、但しMETHOCEL(R)E50LVの代わりにMETHOCEL(R)E50LVおよびMETHOCEL(R)E4Mを使用し、以下の成分のタブレットが得られた。
【0054】
表2
【表3】

(a)有効成分は、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレートである。
(b)METHOCEL(R)E50LVプレミアムは、粘度40〜60cps、メトキシ含有量28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、米国)から入手してもよい。この製品はHPMC2910USPのための規格を満たしている。この実施例で使用している特定のMETHOCEL(R)E50LVプレミアムは、粘度48cps、メトキシ含有量28.9重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量9.0重量%未満(例えば8.0重量%)を有している。
(c)添加したが保持しなかった。
(d) METHOCEL(R)E4MプレミアムCRは、粘度3500〜5600cps、メトキシ含有量28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品はHPMC2910USPの規格を満たしている。この実施例で使用している特定のMETHOCEL(R)E4MプレミアムCRは、粘度4364cps、メトキシ含有量28.5重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7.8重量%を有している。
【0055】
実施例2の製剤に関する有効成分の時間に対する血漿濃度のプロフィールは、図2に示した。
【0056】
実施例3
実施例1に記載したものと類似の方法で、以下の成分のタブレットを製造することができた。
【0057】
表3
【表4】

(a)有効成分は、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレートである。
(b)METHOCEL(R)K100LVプレミアムCRは、粘度80〜120cps、メトキシ含有量19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%であり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2208USPの規格を満たしている。この実施例で使用している特定のMETHOCEL(R)K100LVプレミアムCRは、ヒドロキシプロポキシ含有量が9.0重量%未満でなければならない。
(c)METHOCEL(R)K4MプレミアムCRは、粘度3500〜5600cps、メトキシ含有量19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%であり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2208USPの規格を満たしている。
(d)添加したが保持しなかった。
【0058】
実施例4
実施例1に記載したものと類似の方法で、以下の成分のタブレットを製造することができた。
【0059】
表4
【表5】

(a)有効成分は、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレートである。
(b)METHOCEL(R)K100LVプレミアムCRは、粘度80〜120cps、メトキシ含有量19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2208USPの規格を満たしている。この実施例で使用している特定のMETHOCEL(R)K100LVプレミアムCRが有するヒドロキシプロポキシ含有量は9.0重量%未満でなくてはならない。
(c)METHOCEL(R)E4MプレミアムCRは、粘度3500〜5600cps、メトキシ含有量28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2910USPの規格を満たしている。
(d)添加したが保持しなかった。
【0060】
実施例5
実施例1に記載したものと類似の方法で、以下の成分のタブレットを製造することができた。
【0061】
表5
【表6】

(a)有効成分は、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレートである。
(b)METHOCEL(R)K100LVプレミアムCRは、粘度80〜120cps、メトキシ含有量19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2208USPの規格を満たしている。この実施例で使用している特定のMETHOCEL(R)K100LVプレミアムCRが有するヒドロキシプロポキシ含有量は、9.0重量%未満でなければならない。
(c)添加したが保持しなかった。
【0062】
実施例6
実施例1に記載したものと類似の方法で、以下の成分のタブレットを得ることができた。
【0063】
表6
【表7】

(a)有効成分は、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレートである。
(b)前記の試薬は、K値29〜32を有するポリビニルピロリドンポリマーであり、これは、ISPテクノロジー社(ウェイン、ニュージャージー、USA)から、商品名PLASDONE(R)K−29/32で入手してもよい。この製品は、ポビドンUSPの規格を満たしている。
(c)METHOCEL(R)E50LVプレミアムは、粘度40〜60cps、メトキシ含有量28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2910USPの規格を満たしている。この実施例で使用している特定のMETHOCEL(R)E50LVプレミアムCRが有するヒドロキシプロポキシ含有量は9.0重量%未満でなければならない。
(d)METHOCEL(R)E4MプレミアムCRは、粘度3500〜5600cps、メトキシ含有量28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2910USPの規格を満たしている。
(e)添加したが保持しなかった。
【0064】
実施例7
実施例1に記載したものと類似の方法で、以下の成分のタブレットを製造することができた。
【0065】
表7
【表8】

(a)有効成分は、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレートである。
(b)前記の試薬は、K値90を有するポリビニルピロリドンポリマーであり、これは、ISPテクノロジー社(ウェイン、ニュージャージー、USA)から、商品名PLASDONE(R)K−90として入手してもよい。この製品は、ポビドンUSPの規格を満たしている。
(c)METHOCEL(R)E50LVプレミアムは、粘度40〜60cps、メトキシ含有量28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2910USPの規格を満たしている。この実施例で使用している特定のMETHOCEL(R)E50LVプレミアムが有するヒドロキシプロポキシ含有量は、9.0重量%未満でなければならない。
(d)METHOCEL(R)E4MプレミアムCRは、粘度3500〜5600cps、メトキシ含有量28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2910USPの規格を満たしている。
(e)添加したが保持しなかった。
【0066】
実施例1に記載したものと類似の方法で、以下の成分のタブレットを製造することができた:
表8
【表9】

(a)有効成分は、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレートである。
(b)METHOCEL(R)K100LVプレミアムCRは、粘度80〜120cps、メトキシ含有量19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2208USPの規格を満たしている。この実施例で使用している特定のMETHOCEL(R)K100LVプレミアムCRは、粘度90cps、メトキシ含有量22.7重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量8.5重量%を有している。
(c)METHOCEL(R)K4MプレミアムCRは、粘度3500〜5600cps、メトキシ含有量19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品はHPMC2208USPの規格を満たしている。この実施例で使用している特定のMETHOCEL(R)K4MプレミアムCRは、粘度4105cps、メトキシ含有量22.3重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量9.7重量%を有している。
(d)添加したが保持しなかった。
【0067】
実施例8、9および10の製剤の放出溶解プロフィールを図1に示した。
【0068】
実施例11
実施例1に記載したものと類似の方法で、以下の成分のタブレットを製造した:
【表10】

(a)有効成分は、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレートである。
(b)前記の試薬は、K値90を有するポリビニルピロリドンポリマーであり、これは、ISPテクノロジー社(ウェイン、ニュージャージー、USA)から、商品名PLASDONE(R)K−90として入手してもよい。この製品は、ポビドンUSPの規格を満たしている。
(c)METHOCEL(R)E4MプレミアムCRは、粘度3500〜5600cps、メトキシ含有量28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、これは、ダウケミカル社(ミシガン、USA)から入手してもよい。この製品は、HPMC2910USPの規格を満たしている。この実施例で使用しているMETHOCEL(R)E4MプレミアムCRは、粘度4364cps、メトキシ含有量28.5重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7.8重量%を有している。
(d)添加したが保持しなかった。
【0069】
実施例12
【表11】

(a)有効成分は、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンヘミフマレートである。
(b)前記の試薬は、K値29〜32を有するポリビニルピロリドンポリマーであり、これは、ISPテクノロジー社(ウェイン、ニュージャージー、USA)から、商品名PLASDONE(R)K−29/32として入手してもよい。この製品は、ポビドンUSPの規格を満たしている。
(c)添加したが保持しなかった。
(d)この実施例で使用しているヒドロキシプロピルメチルセルロースは、PHARMACOAT(R)606であり、これは、シンエツ有限会社(日本)から入手してもよく、かつ粘度の範囲4.5〜8.0cps、メトキシ含有量28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量7〜12重量%を有している。
【0070】
前記の速放性組成物は以下の工程で製造することができる:有効成分、ポビドン、リン酸二カルシウム二水和物、ならびに微結晶性セルロースおよびデンプングリコール酸ナトリウムの部分を、ミキサー造粒機(例えば、Littleford MGT)中で約5分間混合した。混合しながら、適当な配合物が得られるまで精製水を添加した。湿った顆粒を、適当なふるい(例えば6.35mm)を装備するコーンミルに通し、かつ次いで注入口の温度が約65℃の流動床乾燥器中で乾燥減量2.5%w/w未満の程度まで乾燥させた。乾燥させた顆粒を、適当なふるい(例えばハンマーミル中の#20のメッシュ)を装備した適当なミルに通した。その顆粒を配合器(例えばV-blender)中でラクトース、ならびに微結晶性セルロースおよびデンプングリコール酸ナトリウムの残部と混合し、かつ約5分間ブレンドした。ステアリン酸マグネシウムを、適当なふるい(例えば40のメッシュ)を装備した適当なミルに通し、前記の乾燥させた顆粒材料に添加し、かつ約3分間ブレンドした。次いで、ブレンドした混合物を、慣用の回転圧縮装置を使用してタブレットに圧縮した。そのタブレットを、注入口の温度約80℃で慣用のドラム塗装装置を使用してフィルムコーティング成分(すなわち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール400、黄色酸化鉄および二酸化チタン)の水性懸濁液でフィルムコーティングした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤および11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]ジベンゾ−[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤上認容性の塩を、1種以上の製剤上認容性の賦形剤と共に含有する徐放性製剤。
【請求項2】
ゲル化剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1記載の徐放性製剤。
【請求項3】
(a)粘度約40〜60cps、メトキシ含有量約28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜9重量%未満を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、(b)粘度約3500〜5600cps、メトキシ含有量約28〜30重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、(c)粘度約80〜120cps、メトキシ含有量約19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜9重量%未満を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに(d)粘度約3500〜5600cps、メトキシ含有量約19〜24重量%およびヒドロキシプロポキシ含有量約7〜12重量%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはその混合物約5〜50重量%を含有するが、但し、製剤が前記の(d)のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する場合、製剤中に存在するヒドロキシプロピルメチルセルロースの総量は25.8重量%以上でなければならない、請求項1または2記載の徐放性製剤。
【請求項4】
(a)〜(d)からなる群から選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはその混合物約5〜40重量%を含有する、請求項3記載の徐放性製剤。
【請求項5】
(a)〜(d)からなる群から選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはその混合物約8〜35重量%を含有する、請求項4記載の徐放性製剤。
【請求項6】
(a)〜(d)からなる群から選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはその混合物約10〜30重量%を含有する、請求項5記載の徐放性製剤。
【請求項7】
(a)〜(d)からなる群から選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはその混合物約15〜30重量%を含有する、請求項6記載の徐放性製剤。
【請求項8】
1種以上の製剤上認容性の賦形剤を、微結晶性セルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウムおよびポビドンからなる群から選択する、請求項1から7までのいずれか1項記載の製剤。
【請求項9】
1種以上の製剤上認容性の賦形剤を、(a)微結晶性セルロース約4〜20重量%、(b)ラクトース約5〜20重量%、(c)ステアリン酸マグネシウム約1〜3重量%、(d)クエン酸ナトリウム約10〜30重量%および(e)ポビドン約1〜15重量%からなる群から選択する、請求項8記載の製剤。
【請求項10】
11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]ジベンゾ−[b,f][1,4]チアゼピンがヘミフマレート塩の形である、請求項1から9までのいずれか1項記載の製剤。
【請求項11】
1種以上の製剤学上認容性の賦形剤のうちの1種類がpH調整剤である、請求項1から7までのいずれか1項記載の製剤。
【請求項12】
pH調整剤がクエン酸ナトリウムである、請求項11記載の製剤。
【請求項13】
精神病状態または機能亢進の治療のために使用する請求項1から12までのいずれか1項記載の徐放性製剤。
【請求項14】
徐放性製剤の製造方法において、11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]ジベンゾ−[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤上認容性の塩、ゲル化剤および他の賦形剤を混合することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の徐放性製剤の製造方法。
【請求項15】
徐放性製剤の製造方法において、
(a)11−[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル]ジベンゾ−[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製剤上認容性の塩、ゲル化剤および他の賦形剤の混合、
(b)混合した成分の湿式の顆粒化、
(c)該混合物の乾燥、
(d)乾燥させた混合物のミル、
(e)該混合物と滑沢剤とのブレンド、
(f)ブレンドした混合物の圧縮によるタブレットへの成形、を含むことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の徐放性製剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−31206(P2012−31206A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243832(P2011−243832)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2007−30991(P2007−30991)の分割
【原出願日】平成9年5月27日(1997.5.27)
【出願人】(300022113)アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【Fターム(参考)】