説明

半導体ウェーハの取り扱い方法

【課題】 簡単に取り扱うことができ、複数の加熱工程で半導体ウェーハをそのまま取り扱える半導体ウェーハの取り扱い方法を提供する。
【解決手段】 可撓性シート層2とエラストマー層3が一体のサポートシート1を使用し、製造工程で厚さ200μm以下の半導体ウェーハを取り扱う方法であり、可撓性シート層2を5〜200μmの厚さにして120℃以上の耐熱性を付与し、可撓性シート層2を半導体ウェーハよりも大きく形成して片面にエラストマー層3を形成し、エラストマー層3を5〜200μmの厚さにして120℃以上の耐熱性を付与し、半導体ウェーハにサポートシート1を粘着する場合、チャックテーブルに吸着固定した半導体ウェーハにエラストマー層3を粘着し、半導体ウェーハの形に沿ってサポートシート1の余剰部を除去し、サポートシート1を剥離する場合、チャックテーブルに吸着固定した半導体ウェーハからサポートシート1を徐々に剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱工程を含む半導体の製造工程で薄い半導体ウェーハを取り扱う半導体ウェーハの取り扱い方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バックグラインドにより200μm以下の厚さに薄化された脆い半導体ウェーハを半導体の製造工程で取り扱う場合には、そのままの状態では半導体ウェーハに欠けや割れが生じやすいので、例えば図示しない保持リングの粘着層上に薄化された半導体ウェーハを粘着支持させて強度を確保し、この半導体ウェーハに所定の加工や処理を施している(特許文献1、2、3、4、5、6参照)。
【0003】
保持リングは、例えば硬質の材料により半導体ウェーハよりも拡径のリングに形成され、周壁の周面に粘着層の周縁部が接着されたり、挟持されることにより、緊張して支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐27720号公報
【特許文献2】特開2008‐60255号公報
【特許文献3】特開2007‐250738号公報
【特許文献4】特開2006‐32488号公報
【特許文献5】特開2003‐77869号公報
【特許文献6】特開2002‐59363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における保持リングは、以上のように構成され、優れた効果が期待できるものの、半導体ウェーハよりも大きい拡径で広いスペースを必要以上に占有するので、簡単な取り扱いが期待できない場合が考えられる。また、半導体の製造工程には、ドライエッチング工程、CVD工程、メッキ工程、ハンダリフロー工程等の加熱工程があるが、従来の保持リングは、これらの加熱工程のいずれかで使用することができるものの、複数の加熱工程を通じてそのまま使用することが困難な場合がある。その場合、専用の保持治具に半導体ウェーハを移し替える必要があり、作業の遅延を招くおそれがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、簡単な取り扱いが期待でき、しかも、複数の加熱工程で半導体ウェーハをそのまま取り扱うことのできる半導体ウェーハの取り扱い方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、可撓性シート層とエラストマー層とが一体化したサポートシートを使用することにより、加熱工程を含む製造工程で厚さ200μm以下の半導体ウェーハを取り扱う半導体ウェーハの取り扱い方法であって、
サポートシートの可撓性シート層を5〜200μmの厚さに形成して少なくとも120℃以上の耐熱性を付与し、この可撓性シート層を半導体ウェーハよりも大きく形成してその片面に自己粘着性のエラストマー層を積層形成し、このエラストマー層を5〜200μmの厚さにして少なくとも120℃以上の耐熱性を付与し、
半導体ウェーハにサポートシートを粘着する場合には、チャックテーブルに半導体ウェーハを吸着固定してその露出した裏面にサポートシートのエラストマー層を粘着し、その後、半導体ウェーハの形状に沿ってサポートシートの余剰部を除去し、
半導体ウェーハからサポートシートを剥離する場合には、チャックテーブルに半導体ウェーハを吸着固定した後、半導体ウェーハからサポートシートをその端部から徐々に剥離することを特徴としている。
【0008】
また、本発明においては上記課題を解決するため、可撓性シート層とエラストマー層とが一体化したサポートシートと、このサポートシートよりも広い幅で可撓性のセパレータとを使用することにより、加熱工程を含む製造工程で厚さ200μm以下の半導体ウェーハを取り扱う半導体ウェーハの取り扱い方法であって、
サポートシートの可撓性シート層を5〜200μmの厚さに形成して少なくとも120℃以上の耐熱性を付与し、この可撓性シート層を半導体ウェーハよりも大きく形成してその片面に自己粘着性のエラストマー層を積層形成し、このエラストマー層を5〜200μmの厚さにして少なくとも120℃以上の耐熱性を付与し、
半導体ウェーハにサポートシートを粘着する場合には、サポートシートを予め取り扱う半導体ウェーハの形状に対応する形状に形成し、このサポートシートの可撓性シート層をセパレータの微粘着層に着脱自在に粘着保持させ、チャックテーブルに吸着固定した半導体ウェーハの露出した裏面にサポートシートのエラストマー層を粘着し、その後、セパレータを変形させてサポートシートから徐々に剥離し、
半導体ウェーハからサポートシートを剥離する場合には、チャックテーブルに半導体ウェーハを吸着固定した後、半導体ウェーハからサポートシートをその端部から徐々に剥離することを特徴としている。
【0009】
なお、サポートシートの可撓性シート層にセパレータの微粘着層を着脱自在に粘着し、サポートシートのエラストマー層に着色されたカバー保護層を着脱自在に粘着することができる。
【0010】
ここで、特許請求の範囲におけるサポートシートの可撓性シート層、エラストマー層、カバー保護層には、必要な着色を適宜施すことができる。可撓性シート層やエラストマー層には、光透過性を付与して透明にすることができる。製造工程の加熱工程には、少なくともドライエッチング工程、CVD工程、メッキ工程、ハンダリフロー工程等が含まれる。また、半導体ウェーハには、少なくともφ150、200、300、450mmタイプが含まれる。この半導体ウェーハの裏面にサポートシートのエラストマー層を粘着する際、確実な粘着を得たい場合には、減圧された雰囲気で粘着することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、サポートシートを半導体ウェーハと略同形状に形成し、このサポートシートにより半導体ウェーハをサポートするので、半導体ウェーハの取り扱い中に余分な広いスペースを占有することが少ない。また、サポートシートの可撓性シート層とエラストマー層とが共に120℃以上の耐熱性を有するので、複数の加熱工程を通じてサポートシートをそのまま使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な取り扱いが期待でき、しかも、複数の加熱工程で半導体ウェーハをそのまま取り扱うことができるという効果がある。
【0013】
また、請求項2記載の発明によれば、半導体ウェーハにサポートシートを粘着する前段階で、半導体ウェーハに対応する形状に加工されたサポートシートを半導体ウェーハに適切に粘着することができる。
また、請求項3記載の発明によれば、カバー保護層により、エラストマー層の半導体ウェーハに粘着する粘着面の汚染を防ぐことができる。さらに、カバー保護層の着色を利用すれば、視覚による把握が容易になるので、半導体ウェーハにサポートシートやカバー保護層を適切に位置決めすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態におけるサポートシートとセパレータとを模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態におけるサポートシートとセパレータとを模式的に示す説明図である。
【図3】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態におけるチャックテーブルの表面に半導体ウェーハを吸着固定し、この半導体ウェーハにサポートシートを粘着する状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図4】図3の半導体ウェーハの形状に沿ってサポートシートの余剰部を切断して除去した状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図5】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態におけるチャックテーブルにサポートシート付きの半導体ウェーハを真空吸着固定する状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図6】図5の半導体ウェーハからサポートシートをめくるよう引き上げて剥離する状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図7】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態におけるチャックテーブルに半導体ウェーハを吸着固定し、サポートシートの可撓性シート層をセパレータの微粘着層に粘着保持させた状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図8】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態における半導体ウェーハにサポートシートのエラストマー層を押圧ローラを介して粘着する状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図9】図8のセパレータを変形させてサポートシートから徐々に剥離する状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図10】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態におけるチャックテーブルにサポートシート付きの半導体ウェーハを配置して吸着固定する状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図11】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態におけるサポートシートの周縁部に粘着剥離テープを粘着した状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図12】図11の半導体ウェーハからサポートシートを端部から徐々に剥離する状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における半導体ウェーハの取り扱い方法は、図1ないし図12に示すように、屈曲可能な可撓性を有するサポートシート1とセパレータ4のうち、少なくともサポートシート1を使用して着脱することにより、加熱工程を有する半導体の製造工程で薄化された脆い半導体ウェーハ10を取り扱うようにしている。
【0016】
サポートシート1は、図1や図2等に示すように、基本的には可撓性シート層2と、この可撓性シート層2に形成されて半導体ウェーハ10に着脱自在に粘着するエラストマー層3とを一体的な二層構造に備え、可撓性シート層2の露出した表面に着脱自在のセパレータ4が状況に応じて粘着されるとともに、エラストマー層3の半導体ウェーハ10に粘着する表面に着脱自在のカバー保護層7が必要に応じて粘着される。
【0017】
サポートシート1、換言すれば、可撓性シート層2とエラストマー層3とは、当初は取り扱う半導体ウェーハ10よりも大きく形成される(図3参照)が、最終的には、エラストマー層3が半導体ウェーハ10に粘着する粘着作業の前後で半導体ウェーハ10の形状に略対応するよう平面円形に加工される。具体的には、半導体ウェーハ10の周縁部付近から食み出す余剰部が打ち抜きや切断等で除去されることにより、半導体ウェーハ10と同じ大きさに整合されるか、あるいは僅かに1mm程度小さな円形にカットされる。
【0018】
可撓性シート層2は、図1や図2等に示すように、所定の成形材料を使用して薄いシートに成形され、作業の便宜を図る観点から白色、黄色、橙色等の彩色が選択的に着色されており、少なくとも120℃以上の耐熱性が付与される。この可撓性シート層2は、例えば280℃の耐熱性を有するポリイミド、280℃の耐熱性を有する液晶ポリマー(LCP)、160℃の耐熱性を有するポリエチレンテレフタレート、180℃の耐熱性を有するポリエチレンナフタレート、160℃の耐熱性を有するポリブチレンテレフタレート、180℃の耐熱性を有するPBN、230℃の耐熱性を有するポリエーテルイミド、200℃の耐熱性を有するポリエーテルエーテルケトン、200℃の耐熱性を有するポリフェニレンスルフィド、120℃の耐熱性を有するポリカーボネート、160℃の耐熱性を有するポリエーテルスルホン、120℃の耐熱性を有するABS樹脂、150℃の耐熱性を有するガラス等の補強フィラーが配合されたポリイミド、200℃の耐熱性を有するポリフェニレンエーテル等を単独あるいは複数種使用して成形される。
【0019】
可撓性シート層2の厚さは、5〜200μm、好ましくは12〜50μm、より好ましくは20〜25μmの範囲に調整される。これは、可撓性シート層2の厚さが5μm未満の場合には、サポートシート1としての強度や剛性に欠けるからである。逆に、可撓性シート層2の厚さが200μmを越える場合には、半導体ウェーハ10からサポートシート1を剥離する際、サポートシート1が十分に変形せず、薄い半導体ウェーハ10の破損を招くおそれがあるからである。
【0020】
エラストマー層3は、図1や図2等に示すように、例えば耐熱性を有するシリコーン系やフッ素系のエラストマーを使用して可撓性シート層2の片面である被積層面に積層形成され、半導体ウェーハ10に対する良好な粘着性を確保する観点から、自己粘着性が付与されるとともに、少なくとも120℃以上の耐熱性が付与される。
【0021】
エラストマー層3を可撓性シート層2に積層形成する方法としては、例えば(1)可撓性シート層2の被積層面に未硬化で液状のエラストマー材料をコーティングして加熱硬化する方法、(2)未硬化でミラブルのエラストマー材料をカレンダーロールで薄く延ばして可撓性シート層2の被積層面にトッピングし、エラストマー材料を加熱硬化する方法等があげられる。
【0022】
可撓性シート層2とエラストマー層3との一体性を向上させたい場合には、可撓性シート層2の被積層面にプライマー処理や粗面化処理が選択的に施される。また、エラストマー層3の表面は、自己粘着性を得る観点から鏡面処理されることが好ましいが、自己粘着性を調整したい場合には、フィラーが添加されたり、粗面化処理が適宜施される。
【0023】
エラストマー層3の厚さは、5〜200μm、好ましくは30〜60μm、より好ましくは40〜50μmの範囲に調整される。これは、エラストマー層3の厚さが5μm未満の場合には、エラストマー層3に十分な自己密着性が発現しないからである。逆に、エラストマー層3の厚さが200μmを越える場合には、加熱工程で用いられる際、エラストマー層3が熱膨張の影響で半導体ウェーハ10を変形させ、半導体ウェーハ10の破損を招くという理由に基づく。また、厚さが200μmを越える場合、エラストマー層3の周面の露出面積が拡大し、溶剤を使用する製造工程で用いられる際、エラストマー層3の周面が侵されやすくなるという理由に基づく。
【0024】
セパレータ4は、図1や図2等に示すように、サポートシート1よりも広く大きい平面矩形で透明の樹脂シート5を備え、この樹脂シート5の表面に、サポートシート1の可撓性シート層2に着脱自在に粘着する微粘着層6が積層して形成される。樹脂シート5の材料は、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、これらの複合体や混合体が好適に使用される。このようなセパレータ4は、半導体ウェーハ10にサポートシート1のエラストマー層3が粘着する前に、サポートシート1が半導体ウェーハ10に対応する平面円形に加工される場合等に使用される。
【0025】
カバー保護層7は、同図に示すように、例えば樹脂シートや合成紙等を使用して半導体ウェーハ10の形状に対応する平面円形に形成され、目視による取り扱い作業を容易にする観点から着色(例えば白色、黄色、橙色等)が適宜施されており、エラストマー層3の表面に着脱自在に粘着してこれを汚染等から保護する。このカバー保護層7は、エラストマー層3を保護する場合の他、例えば半導体ウェーハ10にサポートシート1のエラストマー層3が粘着する前に、サポートシート1が半導体ウェーハ10に対応する平面円形に加工される場合に位置決め用に使用される。
【0026】
半導体の製造工程には加熱工程が含まれ、この加熱工程には、120℃、150℃、200℃等の温度で加熱するドライエッチング工程、150℃、180℃、280℃等の温度で加熱するCVD工程、80℃や120℃等の温度で加熱するメッキ工程、200℃、230℃、260℃等の温度で加熱するハンダリフロー工程等が該当する。
【0027】
このような複数の加熱工程を含む半導体の製造工程でサポートシート1はそのまま利用することが求められるので、半導体ウェーハ10に影響される可撓性シート層2とエラストマー層3とには、上記したように少なくとも120℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは230℃以上の耐熱性が付与される。
【0028】
半導体ウェーハ10は、例えばφ150mmのシリコンウェーハからなり、バックグラインド工程で裏面11がバックグラインドされることにより、200μm以下に薄化されており、回路パターンが形成された表面が図示しないバックグラインドテープにより保護される。このバックグラインドテープは、半導体ウェーハ10の加工処理に応じて着脱される。
【0029】
上記において、半導体の製造工程で薄化された脆い半導体ウェーハ10を取り扱うため、薄化された半導体ウェーハ10にサポートシート1を粘着する場合には、先ず、真空ポンプに接続されたチャックテーブル20の平坦な表面に半導体ウェーハ10を配置して真空吸着固定(図3参照)し、この半導体ウェーハ10の露出した裏面11に大き目のサポートシート1のエラストマー層3を粘着し、その後、半導体ウェーハ10の形状に沿ってサポートシート1の余剰部を切断等で除去すれば、半導体ウェーハ10にサポートシート1を粘着することができる(図4参照)。
【0030】
この際、半導体ウェーハ10の裏面11にサポートシート1のエラストマー層3を押圧ローラ等を介して徐々に粘着すれば、半導体ウェーハ10とサポートシート1との間に空気が侵入するのを簡易に防止することができる。また、サポートシート1の余剰部は、チャックテーブル20に半導体ウェーハ10を真空吸着固定した状態で除去しても良いし、チャックテーブル20から半導体ウェーハ10を取り外した状態で除去しても良い。
【0031】
このようにしてサポートシート1と一体化された半導体ウェーハ10は、サポートシート1により強度が確保されて欠けや割れが未然に防止され、加熱工程を含む半導体の製造工程に供されて所定の加工や処理が施される。
【0032】
所定の加工や処理が施された半導体ウェーハ10からサポートシート1を剥離する場合には、チャックテーブル20に半導体ウェーハ10を真空吸着固定(図5参照)し、露出したサポートシート1をその周縁部からめくるよう徐々に引き上げて剥離(図6参照)すれば、半導体ウェーハ10の裏面11を露出させることができる。この際、サポートシート1を摘み、直接引き上げて剥離しても良いが、剥離作業が困難な場合には、サポートシート1の可撓性シート層2に粘着剥離テープを粘着し、これを利用してサポートシート1を剥離すれば良い。
【0033】
次に、薄化された半導体ウェーハ10にサポートシート1をセパレータ4を使用して粘着する場合には、先ず、サポートシート1のエラストマー層3にカバー保護層7を粘着し、チャックテーブル20の平坦な表面に半導体ウェーハ10を配置して真空吸着固定した後、チャックテーブル20の表面にサポートシート1を重ねて半導体ウェーハ10の露出した裏面11にサポートシート1のカバー保護層7を位置決めする。
【0034】
この際、半導体ウェーハ10の裏面11にサポートシート1のエラストマー層3をいきなり粘着すると、正確な位置合わせに支障を来たすことがあるので、半導体ウェーハ10の裏面11にカバー保護層7を先に位置決めすることが望ましい。サポートシート1は、予め半導体ウェーハ10の形状に対応する形にカットしておくのが良い。このサポートシート1の可撓性シート層2やカバー保護層7が有彩色の場合、視覚的な把握が容易になるので、簡単に位置合わせすることができる。
【0035】
半導体ウェーハ10の裏面11にサポートシート1のカバー保護層7を位置決めしたら、サポートシート1の可撓性シート層2をセパレータ4の微粘着層6に着脱自在に粘着保持(図7参照)させ、サポートシート1からカバー保護層7を剥離してエラストマー層3を露出させる。
【0036】
次いで、セパレータ4に支持されたサポートシート1のエラストマー層3を半導体ウェーハ10の裏面11に押圧ローラ21を介して端部から徐々に粘着(図8参照)し、その後、不要となったセパレータ4のみを変形させてサポートシート1から徐々に剥離(図9参照)すれば、半導体ウェーハ10にサポートシート1を粘着することができる。
【0037】
半導体ウェーハ10の裏面11にサポートシート1を粘着する際、減圧された雰囲気で粘着すれば、空気等を巻き込みにくいので、確実な粘着が大いに期待でき、CVD等の減圧工程に用いる場合に実に有益である。このようにしてサポートシート1と一体化された半導体ウェーハ10は、サポートシート1により強度が確保されて欠けや割れが未然に防止され、加熱工程を含む半導体の製造工程に供されて所定の加工や処理が施される。
【0038】
所定の加工や処理が施された半導体ウェーハ10からサポートシート1を剥離する場合には、チャックテーブル20に半導体ウェーハ10を真空吸着固定(図10参照)し、露出したサポートシート1の周縁部、具体的には可撓性シート層2の周縁部に粘着剥離テープ22を粘着(図11参照)してめくるよう引き上げ、半導体ウェーハ10の裏面11からサポートシート1を端部から徐々に剥離(図12参照)すれば、半導体ウェーハ10からサポートシート1を変形させて剥離し、半導体ウェーハ10の裏面11を露出させることができる。
【0039】
上記によれば、サポートシート1を取り扱う半導体ウェーハ10と同形状に形成し、このサポートシート1により薄く脆い半導体ウェーハ10をサポートするので、半導体ウェーハ10の取り扱い中にサポートシート1が余分な広いスペースを占有することがない。したがって、簡単な取り扱いが期待でき、作業の円滑化、簡素化、容易化を図ることができる。
【0040】
また、サポートシート1の可撓性シート層2とエラストマー層3とが共に120℃以上の耐熱性を有するので、複数の加熱工程を通じてサポートシート1をそのまま使用することができる。したがって、専用の保持治具に半導体ウェーハ10を移し替える必要が全くなく、作業の遅延を防止して作業の円滑化や迅速化が期待できる。
【0041】
なお、上記実施形態では半導体ウェーハ10にサポートシート1を手動操作で着脱したが、自動操作で着脱しても良い。また、カバー保護層7の位置決めの便宜等を向上させたい場合には、サポートシート1のエラストマー層3に光透過性を付与して透明や半透明にしても良い。また、半導体の製造工程で酸、アルカリ、有機溶剤等が使用されることにより、サポートシート1のエラストマー層3の汚染等が問題になる場合には、エラストマー層3をパーフロロエラストマー等で形成してエラストマー層3の耐性を向上させても良い。
【0042】
また、セパレータ4を長尺の巻物として複数のサポートシート1を所定の間隔で粘着保持させ、このセパレータ4を順次繰り出すような場合には、セパレータ4に位置決めマークを形成したり、サポートシート1を粘着保持する面とは反対側の面に離型処理を施し、カバー保護層7を省略することができる。さらに、透明のセパレータ4に半導体ウェーハ10の周縁部に対応する輪郭線を形成し、この輪郭線を活用して半導体ウェーハ10にサポートシート1やそのカバー保護層7を適切に位置決めすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法は、半導体の製造分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 サポートシート
2 可撓性シート層
3 エラストマー層
4 セパレータ
5 樹脂シート
6 微粘着層
7 カバー保護層
10 半導体ウェーハ
11 裏面
20 チャックテーブル
21 押圧ローラ
22 粘着剥離テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性シート層とエラストマー層とが一体化したサポートシートを使用することにより、加熱工程を含む製造工程で厚さ200μm以下の半導体ウェーハを取り扱う半導体ウェーハの取り扱い方法であって、
サポートシートの可撓性シート層を5〜200μmの厚さに形成して少なくとも120℃以上の耐熱性を付与し、この可撓性シート層を半導体ウェーハよりも大きく形成してその片面に自己粘着性のエラストマー層を積層形成し、このエラストマー層を5〜200μmの厚さにして少なくとも120℃以上の耐熱性を付与し、
半導体ウェーハにサポートシートを粘着する場合には、チャックテーブルに半導体ウェーハを吸着固定してその露出した裏面にサポートシートのエラストマー層を粘着し、その後、半導体ウェーハの形状に沿ってサポートシートの余剰部を除去し、
半導体ウェーハからサポートシートを剥離する場合には、チャックテーブルに半導体ウェーハを吸着固定した後、半導体ウェーハからサポートシートをその端部から徐々に剥離することを特徴とする半導体ウェーハの取り扱い方法。
【請求項2】
可撓性シート層とエラストマー層とが一体化したサポートシートと、このサポートシートよりも広い幅で可撓性のセパレータとを使用することにより、加熱工程を含む製造工程で厚さ200μm以下の半導体ウェーハを取り扱う半導体ウェーハの取り扱い方法であって、
サポートシートの可撓性シート層を5〜200μmの厚さに形成して少なくとも120℃以上の耐熱性を付与し、この可撓性シート層を半導体ウェーハよりも大きく形成してその片面に自己粘着性のエラストマー層を積層形成し、このエラストマー層を5〜200μmの厚さにして少なくとも120℃以上の耐熱性を付与し、
半導体ウェーハにサポートシートを粘着する場合には、サポートシートを予め取り扱う半導体ウェーハの形状に対応する形状に形成し、このサポートシートの可撓性シート層をセパレータの微粘着層に着脱自在に粘着保持させ、チャックテーブルに吸着固定した半導体ウェーハの露出した裏面にサポートシートのエラストマー層を粘着し、その後、セパレータを変形させてサポートシートから徐々に剥離し、
半導体ウェーハからサポートシートを剥離する場合には、チャックテーブルに半導体ウェーハを吸着固定した後、半導体ウェーハからサポートシートをその端部から徐々に剥離することを特徴とする半導体ウェーハの取り扱い方法。
【請求項3】
サポートシートの可撓性シート層にセパレータの微粘着層を着脱自在に粘着し、サポートシートのエラストマー層に着色されたカバー保護層を着脱自在に粘着する請求項2記載の半導体ウェーハの取り扱い方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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