説明

半導体構成用の構造およびその製造方法

本発明は、半導体構成用の構造に関する。半導体を含む溶液の堆積を補助するレジスト構造は、直接、あるいは介在層を介して基板に結合される。このレジスト構造は、半導体を含む溶液(309)を堆積するくぼみ(301)と、くぼみ(309)の縁部の少なくとも一部に整列し、突出部(307)によってくぼみ(309)から分離した溝(305)とを備える。好ましくは、溝(305)は、くぼみ(309)を取り囲む。この溝により、半導体を含む溶液を固定する作用が得られ、それによって濡れ性が改善し、それにしたがって、より大きな体積の半導体を所与の区域に付着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体構成用の構造および半導体構成を製作する方法に関し、詳細には、レジスト構造(resist structure)を備える半導体構成に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ゲルマニウム、およびガリウムヒ素などの半導体材料を使用してバイポーラ・トランジスタおよび電界効果トランジスタなどの半導体電子コンポーネントを製作することが長年知られている。具体的には、多数の電子コンポーネントを含む集積回路は、基板上に導電層、半導体層、および絶縁層を堆積することによって製作される。
【0003】
近年、ペンタセン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、トリフェニルアミンなどのある種の有機材料は、半導体の特性を示すことがあることが分ってきた。有機半導体を含む半導体によるコンポーネント、構成、および回路では、溶解処理などの加工の容易さおよび機械的な柔軟性を含めて、従来型の半導体ベースの構造に比べていくつかの利点が見込まれる。したがって、有機半導体ならびに有機半導体に基づく半導体コンポーネントおよび半導体回路の製作の分野で、多くの研究がなされている。
【0004】
また、最近では、TFT(薄膜トランジスタ)ディスプレイなどの半導体ベースのディスプレイは益々普及しつつある。したがって、半導体構造、具体的には、半導体構造を適切に製作する方法、特に、有機半導体構造または半導体ベースのディスプレイを製作することに関して多くの研究がなされている。
【0005】
有機半導体ベースのディスプレイを製作する周知の方法の1つは、スピン・コーティング法によってディスプレイの有機トランジスタを付着させることを含む。しかし、この技術の欠点は、均一な半導体材料層が付着され、そのため、別のパターン化工程を必要とすることである。したがって、ポリマーを付着させる典型的な好ましい方法は、インク・ジェット印刷などの印刷工程を利用することによるものであり、それによって、半導体有機材料がパターン状に直接付着し得る。このようにして、トランジスタの機能的な特徴を著しく改善することができる。
【0006】
インク・ジェット印刷工程を簡略化するために、すなわち、インク・ジェットによる被印刷液体を所望の区域に保つために、この液体が印刷される構造は典型的には、被印刷液体が望ましくない区域に広がらないようにするレジスト構造を含む。
【0007】
このレジスト構造は一般に、印刷処理によって液体材料を充填することができるウエルまたはキャビティを含む。図1に、先行技術によるレジスト構造のウエルの断面を示す。レジスト構造101は、レジスト構造101内のくぼみとして形成されたウエル103を含む。ウエル103には、有機半導体を含む溶液の液滴105が滴下されている。
【0008】
レジスト部に対する液体の角度θが、基板に対する液体の進み接触角よりも大きい状況では、平衡状態が確立されるまで、すなわち、基板上の液体の角度が、この進み接触角に等しくなるまで、レジスト部の濡れが生じることになる。図2に、先行技術によるレジスト構造のウエルの断面を示す。図2には、平衡状態に達した後の図1と同じレジスト構造を示す。図から、レジスト部の濡れが大きく生じたことが分る。その結果、フィーチャ・サイズの制御が悪化すること(これにより、小さなフィーチャの作製が不可能になる)、重ね合わせが悪くなること(これにより、望ましくない漏れ電流および寄生容量が生じ得る)を含めて、いくつかの欠点が生じる。
【0009】
レジスト部の濡れは、レジスト部に対する液体の接触角によって決まり、また、液体の体積が所与の値の場合には、レジスト障壁の高さによっても決まる。したがって、濡れを低減するための可能な解決策は、レジスト障壁の高さを高くすることである。しかし、画素電極などの他の表示要素の上部に厚いレジスト層があると、ディスプレイの性能に悪影響を及ぼす。というのは、より大きな駆動電圧が必要とされ、また、電極がより不透明になり、それによって反射性ディスプレイでは、前面スクリーンの性能が悪くなることがあるからである。さらに、レジスト構造のアスペクト比が大きくなると、機械的な安定性が悪くなる。
【0010】
例えばCFまたはCHFのプラズマなどの表面処理によって接触角を大きくする別の選択肢によれば、基板に対する液体の接触角が大きくなる。しかし、このような処理は、トランジスタの特性に関して好ましくないと思われる。
【0011】
したがって、半導体構成用の改善された構造および半導体構成を製作する改善された方法は有利となろう。特に、半導体を含む溶液に対する濡れ性を低減させる改善された構造は有利となろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、好ましくは、本発明では、先に述べた欠点の1つまたは複数を、単独で、あるいは任意に組み合わせて、緩和し、軽減し、また取り除くことを試みる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様によれば、半導体構成用の構造が提供される。この半導体構成用の構造は、基板に結合したレジスト構造を含む。このレジスト構造は、半導体またはその前駆体を含む溶液を堆積するくぼみと、このくぼみの縁部の少なくとも一部に整列し、突出部によってこのくぼみから分離した溝とを備える。
【0014】
本発明により、可溶性半導体(またはその前駆体)を含む溶液の体積が、この溶液が溝の先まで延びることなく大きくなり得る。半導体を含む溶液の濡れ性に関連する接触角は、半導体を含む溶液の表面と、レジスト構造の全体的な表面との間の接触角ではなく、半導体を含む溶液の表面と、溝の壁の表面との間の接触角とし得る。したがって、くぼみに隣接する表面よりも、有機半導体を含む溶液の表面に関する角度が大きくなるように溝の側面を形成することによって、接触角が大きくなり、そのため、濡れ性を低減し得る。
【0015】
このレジスト構造により、全体的な基板表面に関する(濡れ性の尺度である)最大接触角が、例えば約10〜20°の典型的な値から、約90°またはそれ以上に大きくなり得る。
【0016】
本発明では、有機半導体を含む溶液によって覆われる区域がより良好に画定され、各くぼみごとに、有機半導体ボリュームを含むかなり多くの溶液を堆積することができる。
【0017】
好ましくは、このレジスト構造の深さは0.5〜15μmとしてよく、特に、深さを2〜5μmにすると、特に有利な結果をもたらすことが分っている。同様に、好ましくは、くぼみの深さは0.5〜15μmとしてよく、特に、深さを2〜5μmにすると、特に有利な結果をもたらすことが分っている。溝の幅はあまり重要ではないが、例えば2〜15μmの範囲とし得る。好ましくは、くぼみと溝の第1側面との間隔は、やはり2〜15μmである。溶液中の半導体の濃度は一般に、0.1%〜10%の範囲であり、1%程度であることが多い。
【0018】
突出部の形状は、矩形断面、切り取られた円錐形、(例えば、壁の上部よりも底部のところで幅が狭い)上下逆に切り取られた円錐形、または上部が丸い側壁を含めて、異なるものとしてよい。
【0019】
このレジスト構造は基板と結合するが、必ずしも基板と直接接触しない。そのため、基板とレジスト構造との間に他の層があってもよい。具体的には、このレジスト構造は、半導体構成の機能層の一部である層内に形成してもよいし、製作工程で使用する層内に形成してもよい。例えば、このレジスト構造は、ゲート誘電体層、相互接続ライン間の絶縁層、または下にある層のパターン化に使用するフォトレジスト層の中に形成し得る。
【0020】
このレジスト構造は、フォトリソグラフィ、エンボス加工、マイクロ・コンタクト印刷、および射出成形を含めて、様々なやり方で作製することができる。
【0021】
本発明の特徴によれば、このレジスト構造は、半導体構成の単一層内に形成される。
【0022】
本発明の別の特徴によれば、溝はくぼみを実質的に取り囲む。こうすると、濡れ性があらゆる方向に改善される。
【0023】
本発明の別の特徴によれば、半導体は有機半導体である。
【0024】
本発明の別の特徴によれば、基板から遠い方の突出部の端部の幅は、基板に近い方の突出部の端部の幅よりも広い。幅が広がる突出部により、接触角を大きくすることができ、接触角は90°よりも大きくなり得る。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、基板に近い方の突出部の端部の幅は、基板から遠い方の突出部の端部の幅よりも広い。幅が狭まる突出部により、この突出部を機械的により堅固にすることができ、所望のより小さな最大接触角が得られる。
【0026】
本発明の別の特徴によれば、この突出部の断面は、実質的に切頭円錐形である。こうすると、機械的な特性及びレジスト部の特性が適切であり、製作工程の複雑さを低くするのに適した突出部が得られる。
【0027】
本発明の別の特徴によれば、このレジスト構造は、ポリマー層によって形成される。ポリマー材料は、半導体構成用のレジスト構造の形成に特に適した特性を有する。これは、有機半導体を使用するときに特にそうである。
【0028】
本発明の別の特徴によれば、くぼみ方向にほぼ直交するくぼみの断面は、丸い角を含む。基板を上から見たとき、くぼみの縁部は、滑らかであり、尖った縁部、角、または不連続部がないことが好ましい。こうすると、半導体を含む溶液とレジスト部との接触を改善することができ、濡れ性が向上する。
【0029】
本発明の別の特徴によれば、くぼみ方向にほぼ直交するくぼみの断面は、ほぼ矩形である。基板を上から見たとき、くぼみの縁部は、ほぼ矩形であることが好ましいが、角が丸いことが好ましい。こうすると、例えば電界効果トランジスタを形成するために半導体を堆積するのに特に適した形状になり得る。
【0030】
本発明の別の特徴によれば、溝の深さは、くぼみの深さとほぼ同じである。こうすると、同じパラメータを用いて同じ操作で溝およびくぼみを形成することができ、製作工程を簡単にし得る。具体的には、くぼみおよび溝の深さは、レジスト層の深さに等しくしてよく、それによって、例えばエッチング技術によって適切な場所で層全体を除去することによって、くぼみと溝を形成し得る。
【0031】
本発明の別の特徴によれば、くぼみは、電界効果トランジスタの活性層を形成する半導体を含む。したがって、本発明により、電界効果トランジスタ用の半導体を正確に堆積するのに適した構造が得られる。製作工程を簡単にすることができる。
【0032】
本発明の別の特徴によれば、電界効果トランジスタは、複数の交差指型電極を有するソースおよびドレイン、ならびにこれら複数の交差指型電極を横切って延びるゲートを備える。
【0033】
本発明の別の特徴によれば、くぼみは、これら相互にかみ合った指部の長手方向にほぼ直交する方向にゲートの先まで延びる。こうすると、トランジスタのパラメータが特に適切なものになり、このほぼ直交する方向に、電界効果トランジスタの導体によって画定されたチャネル区域の先まで半導体が延びることができる。これにより、キャビティと下にある層との重なりがわずかに変動することによって生じる寄生容量の変動が低減するか、あるいはなくなる。これは、トランジスタがディスプレイの一部であり、重ね合わせの変動が表示品質に悪影響を及ぼし得る場合に特に有利である。
【0034】
本発明の別の特徴によれば、くぼみは、これら相互にかみ合った指部の長手方向にほぼ整列する方向にゲートを越えて延びない。こうすると、トランジスタのパラメータが特に適切なものになり、このほぼ整列する方向に、電界効果トランジスタの導体によって画定されたチャネル区域の先まで半導体が延びることがなくなる。これはノーマリ・オン型トランジスタに特に重要である。ノーマリ・オン型トランジスタでは、有機半導体はすでに、ゲート電極に印加される電圧がゼロのとき、ソースからドレインおよびドレインからソースの少なくとも一方に電荷担体を運ぶことができる。ゲートの先まで延長されると、ソース電極とドレイン電極の間に漏れ経路が形成されることになる。
【0035】
好ましくは、この構造は、集積回路、(薄膜)トランジスタ・アクティブ・マトリックス型ディスプレイ、アクティブ・マトリックス型バックプレーン、またはエレクトロ・ルミネッセンス・デバイスで使用し得る。
【0036】
本発明の第2態様によれば、半導体構成を製作する方法が提供される。この方法は、基板を提供するステップと、基板に結合したレジスト構造を適用するステップとを含む。このレジスト構造は、半導体またはその前駆体を含む溶液を堆積するためのくぼみと、このくぼみの縁部の少なくとも一部に整列し、突出部によってこのくぼみから分離した溝とを備える。この方法はさらに、このくぼみの中に溶液を堆積するステップを含む。
【0037】
好ましくは、有機半導体を含む溶液を堆積するステップは、マイクロ・コンタクト印刷、キャピラリ内でのマイクロ・モールディング(MIMIC)、ドロップ・オン・デマンド式インク・ジェット印刷(バブル・ジェットまたは圧電による)、連続インク・ジェット印刷、スクリーン印刷、またはフレキソ印刷などの印刷工程によって行う。
【0038】
本発明の上記その他の態様、特徴、および利点は、以下で説明する1つ(または複数)の実施形態から明らかになり、それらを参照することによって理解されよう。
【0039】
図面を参照して、単なる例として本発明の実施形態を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下の説明では、有機半導体構造に適用可能な本発明の実施形態を対象とする。しかし、本発明は、このような応用例に限定されず、他の多くの半導体構成に適用し得ることが理解されよう。
【0041】
例えば、集積回路または半導体ベースのディスプレイ(例えば、薄膜トランジスタ(TFT)ディスプレイ)に電界効果トランジスタを形成するのに使用する半導体の構成および構造は一般に、基板上に様々な層を堆積し、パターン化することによって形成される。適切な材料を堆積するよく知られたコストのかからない方法は、スピン・コーティング法である。その後、典型的には、当技術分野でよく知られているように、例えばフォトリソグラフィによるフォトレジストの露光を含み得るパターン化工程があり、その後、エッチング・ステップが行われる。
【0042】
しかし、近年、半導体構成を製作する他の技術が新たに出現した。例えば半導体またはその前駆体を含む溶液をレジスト層上に直接印刷する技術は、極めて有利である。例えば、インク・ジェット印刷により、半導体を含む溶液の液滴を所望の場所に堆積することができる。これらの液滴は極めて小さく、正確に位置決めすることができるので、別のパターン化ステップを必要とせずに、この印刷工程によって直接所望のパターンを設けることが可能である。
【0043】
半導体材料は、(前駆体として提供される)CdSeなどの無機半導体、粒子の形態あるいはナノチューブまたはナノワイヤの形態のナノ材料タイプの半導体、ならびに有機半導体を含む異なる組成のものとしてよい。
【0044】
半導体を含む溶液の正確な堆積が容易に行われ、その助けとなるように、好ましくは、レジスト構造は、印刷工程によって堆積する各液滴ごとのウエルを備える。例えば、TFTディスプレイを製作する場合、表示区域全体にわたって、均等に配分された画素FETからなる配列を形成する。画素FETのチャネルを形成するために、半導体を含む溶液の各液滴を堆積することができる。したがって、半導体を含む溶液をインク・ジェット印刷する前に、所望の半導体サイズに対応するサイズの均等に分配されたウエル・アレイをレジスト部に設ける。このようなウエルは一般に、例えば、長さを400μm、幅を50μm、深さを5μmとし得る矩形である。当然のことながら、他の実施形態では、このウエルすなわちくぼみは、特定の実施形態の要件に応じて、他の寸法のものとしてもよい。ある種の実施形態では、1つのくぼみの中に複数の液滴を堆積し得る。
【0045】
図3に、本発明の実施形態によるレジスト構造の断面を示す。このレジスト構造は基板に結合され、この基板上に直接、あるいは介在層を介して、半導体構成が全部または部分的に形成される。
【0046】
半導体を含む溶液を堆積するくぼみ301は、レジスト部303内に形成される。さらに、くぼみ301の縁部の少なくとも一部に整列する溝305もレジスト部303内に形成される。溝305は、突出部307によってくぼみ301から分離している。
【0047】
印刷中に、半導体を含む溶液の液滴309が、くぼみ301に滴下される。この液滴の表面とレジスト面により、角度θが形成される。先行技術のレジスト構造では、典型的には10〜20°の範囲の所与の値よりもθが大きくなると、濡れが生じる。
【0048】
しかし、図3に示すように、液滴309が溝305に接触すると、液滴309に関連する接触角はもはや、液滴309の表面とレジスト面との間の接触角ではない。そうではなくて、濡れの作用に関連する接触角は、液滴309の表面と、液滴309が接触する表面、この場合には溝305の側面311との間の接触角になる。そのため、半導体を含む溶液の濡れが継続して生じるのに関連する接触角は、接触角φである。図3に示すように、この角度は、θよりも遥かに小さい。図に示す例では、θは約60°であり(そのため、さらに濡れが生じることになる)、角度φは約−30°である。そのため、溝の側壁がレジスト部303の面にほぼ直交する図に示す例では、液滴の表面と、濡れが生じる基板の面との間の角度θは、溝が存在しない場合よりも約90°大きくなる。このように、溝ラインの機能は、液体を固定することである。
【0049】
したがって、図に示す実施形態によれば、くぼみの縁部に整列する溝を設けることによって、レジスト構造の濡れ性能が大きく改善される。そのため、最大接触角がかなり大きくなり得る。これにより、例えば、遥かに多くの量の半導体材料を所与の区域に供給することができる。このため、くぼみの外側のレジスト部区域の濡れがなくなり、このくぼみの内部により厚い半導体層が付着され、より堅固で再現性のよい工程になるという自己整合工程の利点が得られる。
【0050】
上記で説明した固定工程では、半導体を含む溶液とレジスト表面との間の接触角は、濡れ性を制御する主要な作用であると仮定することに留意されたい。表面張力の勾配のために、マランゴーニ(Marangoni)力などの他の作用が、有機半導体を含む溶液の濡れに影響を及ぼすことがあり、したがって、所与の実施例で説明するものほど改善されないことがあることが当業者には理解されよう。
【0051】
図3は例えば1つのトランジスタに対応する1つの半導体堆積物用の構造を示すことに留意されたい。具体的には、このトランジスタは、ディスプレイ用の画素トランジスタとし得る。複数のトランジスタを含む半導体構成では、このレジスト構造内に他の溝およびくぼみが形成されることになる。例えば、マトリックス・ディスプレイでは、図に示すトランジスタから所与の距離Lのところに(典型的には、直交する2方向に)他のトランジスタが形成されることになる。そのため、大きくても画素寸法の最大距離Lのところのレジスト層内に、他のくぼみが形成されることがある。最大距離Lは、典型的には100〜1000μmである。このくぼみを利用して、隣接する画素用のトランジスタが形成されることになる。
【0052】
ある種の目的のために、遥かに短い距離のところで、基部レジスト層の高さをくぼみの高さまで低くすることが有利なことがある。例えば、突出部と、この突出部と同じ大きさの外壁、さらには、突出部よりも小さい外壁とによって、溝を形成することができる。すなわち、ある種の実施形態では、このレジスト層は、くぼみまたは溝を形成するのに使用しない区域から除去してよい。
【0053】
好ましい実施形態では、くぼみおよび溝は、同じ層内に形成され、同じ深さを有する。こうすると、製作工程を、溝とくぼみの差異を設ける必要がない簡単なものにすることができる。具体的には、溝およびくぼみの深さを、この層の深さに等しくすることが好ましく、それによって、単に層全体を除去することにより、くぼみおよび層を完成させることができる。
【0054】
好ましくは、レジスト層の厚さは、1〜5μm程度である。好ましくは、このレジスト部区域は、半導体構成の区域全体を覆うが、ある種の実施形態では、くぼみが形成される区域の外側にはレジスト部が存在しない。
【0055】
このレジスト構造のパターンは、フォトリソグラフィ、エンボス加工、マイクロ・コンタクト印刷、または射出成形を含めて、当業者に周知の様々な技術を利用して形成されることができる。
【0056】
このレジスト構造は、好ましくはポリマー材料でできており、有機半導体を含む溶液は、好ましくは、ポリフェニレンビニレン、ポリチェニレン−ビニレン、ポリフルオレン、担体材料とオリゴマーの混合物、(特にペンタセン)、ポリアリールアミン、ポリチオフェンなどを含む有機半導体、オリゴマーのコポリマー、および非半導体モノマーである。これらの有機半導体としては、当業者に周知の任意の側鎖を含んでよい(特に、アルキル基、アルコキシ基であるが、これらに限定されるものではない)。さらに、このレジスト層は、第2の目的を有することがある。例えば、第2金属層と第3金属層との間の分離体としてこのレジスト層を利用してもよい。この分離体は、追加のマスクでパターン化する。下にある層を考慮すると、化学的な湿式エッチングを利用するのが好ましい。フォトレジストが、有機半導体の安定性に望ましくない影響を及ぼさないように、フォトレジストの上に誘電体層があることが好ましい。
【0057】
好ましくは、半導体を含む溶液は印刷工程によって堆積するが、任意の適切な工程を利用してもよいことが本発明で企図されている。この印刷処理は、例えば、(例えば、バブル・ジェットまたは圧電による印刷とし得る)ドロップ・オン・デマンド式インク・ジェット印刷、連続インク・ジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、マイクロ・コンタクト印刷、またはMIMIC(キャピラリ内でのマイクロ・モールディング)とし得る。
【0058】
突出部の断面の形状および寸法は、特定の応用例に適するように当業者が決めることができる。図4に、本発明の実施形態による突出部の断面の例を示す。
【0059】
図に示すように、この断面は、例えば、矩形、縁部が丸いもの、または切頭円錐形とし得る。特に、切頭円錐形状は、構造を簡単にし得るので有利であり、そのため、接触角が最大になるように最適化し得る。
【0060】
ある種の実施形態では、基板から遠い方の突出部の端部の幅は、基板に近い方の突出部の端部の幅よりも広い。例えば、図4に示す突出部の幅は、この突出部の底部よりも上部のところで広くし得る。
【0061】
中間壁をこのように上下逆に切り取った円錐形状にすると、被印刷液体(液滴)の基板に関する接触角が90°よりも大きくなり得るので、特に有利である。すなわち、レジスト構造に対して比較的薄い層でも、大量の材料を供給することが可能である。
【0062】
他の実施形態では、基板に近い方の突出部の端部の幅は、基板から遠い方の突出部の端部の幅よりも広い。例えば、図4に示す突出部の幅は、この突出部の底部よりも上部のところで狭くし得る。こうすると、最大接触角は小さくなるが、機械的により堅固な構造が得られる。
【0063】
図5に、本発明の実施形態によるレジスト構造の上面図を示す。図5は、図3のレジスト構造の上面図に対応する。
【0064】
図5に示すように、好ましくは、溝305は、くぼみを実質的に取り囲む。そのため、好ましくは、この溝は、レジスト層の面に沿ったあらゆる方向に液滴の流れを制限する。
【0065】
さらに、図に示すように、くぼみの好ましい形状は、角が丸いほぼ矩形の形状に相当する。そのため、好ましい実施形態では、くぼみの方向にほぼ直交する方向に、すなわちレジスト層の面内で、くぼみの縁部に不連続部または尖った角が存在しない。こうすると、縁部に沿った特定の部分で過剰な液体が少なくなるので、濡れ性能を改善することができる。
【0066】
好ましい実施形態では、レジスト構造および半導体を含む溶液は、FET(電界効果トランジスタ)構造の一部である。そのため、このレジスト構造は、1つまたは複数のFETの形成を容易にするのに利用される。
【0067】
一般に、有機半導体によるFETは、ボトム・ゲート構造またはトップ・ゲート構造の2つの構造をとり得る。図6に、本発明の実施形態による構造を含むボトム・ゲート構造のFETの断面を示す。
【0068】
このFETは、ソース601、ドレイン603、およびゲート605の3つの電極を備える。ソース電極601およびドレイン電極603は、1つの導電層内に存在し、ゲート電極605は、別の導電層内にある。有機半導体309は、ソース601およびドレイン603の電極と接触し、これらの電極間にチャネルを形成する。半導体309を含む液体は、(有機半導体上へのゲート電極の垂直突出部であり、チャネルと重なり合う)ゲート誘電体607によってゲート電極605から分離される。ボトム・ゲート構造では、有機半導体は、最後の層として設けられることができる。
【0069】
図6には、乾燥処理前のFET構造を示す。この乾燥処理では一般に、溶媒を蒸発させ、くぼみに含まれる状態で乾燥した半導体層を残す。
【0070】
ソース電極601およびドレイン電極603は、1対の交差指型電極として形成されることが好ましい。図7に、図6のFETの電極層の上面を示す。
【0071】
図に示すように、ソース電極601およびドレイン電極603は、互いにほぼ平行な向きの、第1方向701に延びる指部を有する。ゲートは、その垂直突出部がこれらの指部に重なるように位置決めされるが、電極指部の端部には重ならない。ゲートは、第1制限と第2制限との間を前記第1方向701に延びる。くぼみは、第1方向701に、ゲート電極の突出縁部の先まで延びないことが好ましい。すなわち、このくぼみは、相互にかみ合った指部の長手方向701にほぼ整列する方向に、ゲートを越えて延びない。
【0072】
このように制限すると、ノーマリ・オン型の半導体材料によるトランジスタに特に有利である。この場合、有機半導体は、ゲート電極に印加される電圧がゼロまたはそれ以上のとき、ソースからドレインおよびドレインからソースの少なくとも一方に電荷担体を運ぶことができる。ゲートの先まで延長されると、ソース電極とドレイン電極との間に漏れ経路が形成されることになる。というのは、ゲートがこの区域と重ならない場合には、ゲート電圧によって電荷担体の輸送を妨げることができないからである。
【0073】
さらに、ゲート605の突出部は、(全体的に第1方向にほぼ直交する)第2方向703に延び、この方向に、ソース電極601およびドレイン電極603の指部に重なる。好ましい実施形態では、好ましくは、くぼみは、第2方向703にゲート電極605の突出縁部の先まで延びる。すなわち、好ましくは、このくぼみは、相互にかみ合った指部の長手方向にほぼ直交する方向703にゲート605の先まで延びる。
【0074】
第2方向にくぼみとゲートを重ねることによって、くぼみと下にある層との重なりがわずかに変動することによるトランジスタ特性への悪影響がなくなるか、あるいは低減する。
【0075】
ソース、ドレイン、およびゲートの電極を形成するための適切な導電材料の例には、金、パラジウム、白金その他の(貴)金属、ITOなどの酸化物導体、特にポリ酸と組み合わせたポリアニリンおよびポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリマー導体が含まれる。n型半導体では、p型半導体に関してすでに述べた金属の他に、仕事関数が比較的小さい金属を使用することが可能である。
【0076】
適切なゲート誘電体の例には、あらゆる種類の有機絶縁体が含まれ、また、原理的には無機絶縁体も含まれる。
【0077】
好ましい実施形態では、半導体構成は、集積回路、あるいは表示またはエレクトロ・ルミネッセンス用のデバイスの一部である。
【0078】
そのため、好ましくは、上記で説明した構造を使用して多数のFETが形成される。具体的には、これらのFETは、ディスプレイ、例えば、電気泳動性の電気光学層を備えたディスプレイの画素トランジスタとして使用し得る。
【0079】
本発明は、任意の適切な形態で、任意の適切な方法、工程、および材料を用いて実施されることができる。本発明の実施形態の要素およびコンポーネントは、任意の適切なやり方で、物理的、機能的、かつ論理的に実施され得る。確かに、単一のユニットで、または複数のユニットで、あるいは他の機能ユニットの一部として、この機能を実施され得る。したがって、本発明は、単一のユニットで実施してもよいし、異なるユニット間に物理的かつ機能的に分散してもよい。
【0080】
好ましい実施形態に関連して本発明を説明してきたが、本明細書で述べた特定の形態に本発明を限定することを意図するものではない。そうではなくて、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲では、「備える」という用語は、他の要素またはステップの存在を除外するものではない。さらに、個々に列挙されているが、複数の手段、要素、または方法ステップは、例えば、単一のユニットまたはプロセッサによって実施してよい。さらに、個々の特徴は、異なる特許請求の範囲に含められていることがあるが、これらはおそらくは有利に組み合わせることができ、異なる特許請求の範囲に含まれていても、特徴の組合せが、実現可能でないか、または有利でないか、あるいはその両方であることを示唆するものではない。さらに、単数で言及しているものは、複数を除外するものではない。そのため、「1つの」、「第1の」、「第2の」などを言及していても、複数が除外されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】先行技術によるレジスト構造のウエルを示す断面図である。
【図2】先行技術によるレジスト構造のウエルを示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態によるレジスト構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態による突出部の断面の例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態によるレジスト構造を示す上面図である。
【図6】本発明の実施形態による構造を含むボトム・ゲート構造のFETを示す断面図である。
【図7】図6のFETの電極層を示す上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体構成用の構造であって、基板に結合したレジスト構造を含み、前記レジスト構造は、
半導体またはその前駆体を含む溶液を堆積するくぼみと、
前記くぼみの縁部の少なくとも一部に整列し、突出部によって前記くぼみから分離された溝とを備える、半導体構成用の構造。
【請求項2】
前記レジスト構造は、前記半導体構成の単一層に形成される、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記溝は、前記くぼみを実質的に取り囲む、請求項1に記載の構造。
【請求項4】
前記半導体は有機半導体である、請求項1に記載の構造。
【請求項5】
前記基板から遠い方の前記突出部の端部の幅は、前記基板に近い方の前記突出部の端部の幅よりも広い、請求項1に記載の構造。
【請求項6】
前記基板に近い方の前記突出部の端部の幅は、前記基板から遠い方の前記突出部の端部の幅よりも広い、請求項1に記載の構造。
【請求項7】
前記突出部の断面は、実質的に切頭円錐形である、請求項5または6に記載の構造。
【請求項8】
前記レジスト構造は、ポリマー層によって形成される、請求項1に記載の構造。
【請求項9】
くぼみ方向にほぼ直交する前記くぼみの断面は、丸い角を含む、請求項1に記載の構造。
【請求項10】
くぼみ方向にほぼ直交する前記くぼみの断面は、ほぼ矩形である、請求項1に記載の構造。
【請求項11】
前記溝の深さは、前記くぼみの深さとほぼ同じである、請求項1に記載の構造。
【請求項12】
前記くぼみは、電界効果トランジスタの活性層を形成する半導体を含む、請求項1に記載の構造。
【請求項13】
前記電界効果トランジスタは、複数の交差指型電極を有するソースおよびドレイン、ならびに前記複数の交差指型電極を横切って延びるゲートを備える、請求項12に記載の構造。
【請求項14】
前記くぼみは、前記相互にかみ合った指部の長手方向にほぼ直交する方向に前記ゲートの先まで延びる、請求項13に記載の構造。
【請求項15】
前記くぼみは、前記相互にかみ合った指部の長手方向にほぼ整列する方向に前記ゲートを越えて延びない、請求項14に記載の構造。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載のレジスト構造を備える電子デバイス。
【請求項17】
請求項12に記載の構造を有する集積回路を備える、請求項16に記載の電子デバイス。
【請求項18】
請求項12に記載の構造を有するアクティブ・マトリックス型バックプレーンまたはアクティブ・マトリックス型ディスプレイを備える、請求項16に記載の電子デバイス。
【請求項19】
請求項12に記載の構造を有するエレクトロ・ルミネッセンス・デバイス。
【請求項20】
半導体構成を製作する方法であって、
基板を提供するステップと、
前記基板に結合したレジスト構造を適用するステップとを含み、前記レジスト構造は、半導体またはその前駆体を含む溶液を堆積するためのくぼみと、前記くぼみの縁部の少なくとも一部に整列し、突出部によって前記くぼみから分離した溝とを備え、前記方法はさらに、
前記くぼみの中に前記半導体を含む前記溶液を堆積するステップを含む、方法。
【請求項21】
前記溶液を堆積する前記ステップは、印刷工程によって行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記溶液を堆積する前記ステップは、インク・ジェット印刷工程によって行われる、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−515776(P2007−515776A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530832(P2006−530832)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050669
【国際公開番号】WO2004/105104
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】