説明

半導体素子

【目的】 AlGaInN系結晶から成る半導体素子に低抵抗かつ安定なオーミックコンタクトを形成する。
【構成】 AlGaInN系結晶のうえにGaP層18,19などの他のIIIV族化合物半導体をエピタキシャル成長し、このうえにオーミック電極を形成する。
【効果】 低抵抗かつ安定なオーミックコンタクトが得られ、素子の性能と信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は窒化物結晶を主体とする半導体素子、とくに発光素子にかかわる。
【0002】
【従来の技術】窒化物半導体結晶を用いた素子、特に発光素子の最近の進歩は著しく、その研究開発の現状は例えば、I.Akasaki and H.Amano、ならびにH.Morkocの論文に記されている(Proc.1993 International Semiconductor Device Research Symposium,December 1-3, 1993, Charlottesville, Virginia, U.S.A., volume 2, p705, p709)。これらの論文においては、AlGaN/GaN/AlGaNやGaN/GaInN/GaNなどの二重異種接合や、n-GaNに対するオーミック電極、および発光ダイオードの性質などが論じられており、窒化物半導体結晶を用いた発光ダイオードは実用の段階に入ってきたといえる。今後は半導体レーザやバイポーラ素子、あるいはFETの開発が進められることになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】GaNなどの窒化物結晶に対するオーミックコンタクトはp型結晶に対しては金、n型結晶に対してはアルミニウムの蒸着膜が一般に使われている。しかしながらこれらの金属と窒化物結晶は合金を形成せず、そのためにコンタクトの長期安定性に問題がある。また、アルミニウムは酸化しやすく、かつ半田とも反応しやすく信頼性のあるボンデングを得ることが難しい。
【0004】本発明の目的は、上記問題点を解決した窒化物結晶を主体とする半導体素子を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的は、AlGaIaN系の多元結晶から成る二重異種接合を有する半導体素子において、その最上層にさらに窒化物以外の他のIIIV族化合物半導体層をつけることによって達成される。また上記半導体素子が活性層とバリア層を含む場合は、活性層を挟むバリア層の片方または両方の外側に、バリア層よりも禁制帯幅の狭いGaIaN系の結晶層をつける。上記の他のIIIV族化合物半導体層は金属電極とオーミック電極を形成するようにされる。上記の他のIIIV族化合物半導体層の具体的材料としては例えばp型GaPを主成分とする化合物半導体がある。すなわち窒化物結晶GaN上に、高濃度に不純物をドープすることができ、しかも電極金属と安定かつ低接触抵抗である結合を形成する他の化合物半導体をエピタキシャル成長してやれば良い。また窒化物結晶とこのような化合物半導体のあいだに大きなバンドギャップ差があるので、それを緩和するためにはGaNよりもバンドギャップの小さいGaInN結晶を介在させると良い。上記化合物半導体でAlGaInN系に最も良く適合するものとしては上述のとおりGaPを挙げることが出来る。これによりAlGaInN系結晶からなる半導体素子に低抵抗かつ安定なオーミックコンタクトを形成できる。
【0006】
【作用】GaPは窒化物結晶上でエピタキシャル成長をするため、両者の結合は極めて強固である。またGaPはp型n型ともに高濃度にドーピングすることが出来るのできわめて低抵抗の結晶となり、かつこれまで十分に技術開発が行われてきた電極形成技術を適用することが出来る。この結果極めて低抵抗かつ高信頼性の電極を窒化物結晶を用いた半導体素子に形成することが出来る。ここで半導体素子とは発光素子、例えば発光ダイオードや半導体や半導体レーザを含むものである。
【0007】
【実施例】本実施例では、トリメチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリメチルインジウムならびにアンモニア、フォスフィンをそれぞれIII族ならびにV族のプレカーサとし、モノシランならびにビスシクロペンタジエニルマグネシウムをn型およびp型ドーピング用のプレカーサとして用いる有機金属気相エピタキシャル成長方法を採用する。まず、図1に示すように、サファイアの(0001)基板結晶11の上にn-GaN層12,n-AlGaN層13,p-GaInN層14,p-AlGaN層15,p-GaN層16,p-GaInN層17,p-GaP層18をこの順序でつぎつぎに成長する。このウエハをフォトリソグラフィならびにドライエッチングを用いて図2のごとく加工し、n-GaN層12の一部を露出させる。そして、ふたたびフォトリソグラフィとCVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて他の部分をSiO2で被い、ここにn-GaP層19を成長させる。p-GaP層18の上にはCr/Au電極20を蒸着し、n-GaP層19の上にはAuGeNi/Cr/Au電極21を蒸着する。
【0008】これをダイヤモンド・ソーでチップに切断すると発光波長460nmの青色発光ダイオードが得られる。この発光ダイオードは、その立ちあがり電圧が3.6Vから3.3Vに、微分直列抵抗が25Ωから18Ωに下がり、電極不良にもとづく素子の寿命は二万時間から四万時間に向上した。本実施例では発光ダイオードを例に説明したが、半導体レーザにも当然適用可能である。
【0009】
【発明の効果】本発明によれば、抵抗抗かつ安定なオーミックコンタクトが得られ、素子の性能と信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウエハの断面図。
【図2】加工したウエハの断面図。
【符号の説明】
11…サファイア基板結晶、12…n-GaN層、13…n-AlGaN層、14…p-GaInP層、15…p-AlGaN層、16…p-GaN層、17…p-GaInN層、18…p-GaP層、19…n-GaP層、20…Cr/Au電極、21…AuGeNi/Cr/Au電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】AlGaInN系の多元結晶から成る二重異種接合を有する半導体素子において、その最上層にさらに窒化物以外の他のIIIV族化合物半導体層をつけた構造を有する半導体素子。
【請求項2】上記半導体素子は活性層及びバリア層を有し、上記活性層を挾む上記バリア層の片方または両方の外側に、上記バリア層よりも禁制帯幅の狭いGaInN系の結晶層をつけた構造を有する請求項1記載の半導体素子。
【請求項3】上記の他のIIIV族化合物半導体層が金属電極とオーミック電極を形成して成る請求項1又は2に記載の半導体素子。
【請求項4】上記の他のIIIV族化合物半導体層がp型GaPを主成分とする化合物半導体から成る請求項1又は2に記載の半導体素子。

【図1】
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【図2】
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