説明

半導体組成物

【課題】高い移動度を示し、高い電流オン/オフ比を示す薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】薄膜トランジスタは、下式のポリチオフェンとカーボンナノチューブとを含む半導体層を有する。


式中、Aは、二価の結合であり;各Rは、水素、アルキル、アルケニル等から選択され;nは、2〜約5,000である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄膜トランジスタ(TFT)および/または半導体層を備える他の電子機器に関する。半導体層は、本明細書に記載の半導体組成物から作られる。この組成物が、デバイスの半導体層で用いられる場合、高い移動度および優れた安定性が達成され得る。
【発明の概要】
【0002】
いくつかの実施形態では、液体と、カーボンナノチューブと、半導体ポリマーとを含む半導体組成物が開示されている。この半導体ポリマーは、室温で、液体中でポリマー凝集物を形成することができる。カーボンナノチューブは、半導体ポリマーまたはポリマー凝集物によって安定化させることができる。
【0003】
この組成物は、1週間よりも長い貯蔵寿命を有し得る。
【0004】
いくつかの実施形態では、半導体ポリマーは、組成物の2.0wt%未満であり、カーボンナノチューブは、半導体ポリマーの約1〜約50wt%である。さらなる実施形態では、カーボンナノチューブは、半導体ポリマーおよびカーボンナノチューブをあわせた合計重量の約10〜約50wt%の量で存在する。カーボンナノチューブと半導体ポリマーとの重量比は、もっと特定的には、約10:90〜約50:50であってもよい。
【0005】
さらに、いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブと、式(I)のポリチオフェンとを含む半導体組成物が開示され、
【化1】

式(I)
式中、Aは、二価の結合であり;各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アルコキシ、置換アルコキシ、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン、−CNまたは−NOから選択され;nは、2〜約5,000である。
【0006】
Rは、炭素原子を約6〜約25個含むアルキルであってもよい。ある実施形態では、アルキルは、炭素原子を約10〜約16個含む。
【0007】
カーボンナノチューブは、表面が改質されたカーボンナノチューブであってもよい。ある実施形態では、カーボンナノチューブは、単層半導体カーボンナノチューブである。
【0008】
カーボンナノチューブとポリチオフェンとの重量比は、約1:99〜約50:50であってもよい。
【0009】
ポリチオフェンは、式(II)の構造を有していてもよく、
【化2】

式(II)
式中、mは、2〜約2,500である。
【0010】
また、ポリチオフェンとカーボンナノチューブとを含む半導体組成物を製造するプロセスも開示される。このプロセスは、カーボンナノチューブおよび第1の量のポリチオフェンを溶媒に分散させ、第1の分散物を作成することと;この分散物に第2の量のポリチオフェンを加え、添加された分散物を作成することと;この第2の量のポリチオフェンを、上述の添加された分散物に分散させ、第2の分散物を作成することとを含む。他のプロセスは、カーボンナノチューブおよび第1の量の第1の半導体ポリマーを液体に分散させ、第1の分散物を作成することと;第1の分散物に、第2の量の第2の半導体を加え、添加された分散物を作成することと;第2の分散工程を行う際に、この第2の半導体を、添加された分散物に分散または溶解し、最終的な分散物を作成することとを含み、ここで、第1の半導体ポリマーは、液体中でポリマー凝集物を形成することができる。
【0011】
ある実施形態では、第1の半導体ポリマーは、式(I)の構造を有するポリチオフェンであり、
【化3】

式(I)
式中、Aは、二価の結合であり;各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アルコキシ、置換アルコキシ、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン、−CNまたは−NOから選択され;nは、2〜約5,000である。
【0012】
第1の分散物中のカーボンナノチューブと第1の半導体ポリマーとの重量比は、約10:90〜約50:50であってもよい。
【0013】
ある実施形態では、添加された分散物中の、カーボンナノチューブと、第1の半導体ポリマーおよび第2の半導体をあわせた合計との重量比は、約1:99〜約20:80である。ある場合には、第2の半導体も、半導体ポリマーである。また、第2の半導体ポリマーも式(I)を有していてもよく、第1の半導体ポリマーと同じであってもよい。
【0014】
第1の分散物は、プローブによる超音波処理によって作成してもよく、最終的な分散物は、浴による超音波処理を用いて作成してもよい。
【0015】
第2の半導体ポリマーを、異なる様式で第1の分散物に加えてもよい。第2の半導体ポリマーは、第1の分散物と、第2の半導体ポリマーを含む第2の分散物とを混合することによって、第1の分散物に加えられる。他の実施形態では、第2の半導体ポリマーを、粉末形態で第1の分散物に加える。次いで、第1の分散物を加熱して第2の半導体ポリマーに溶解させ、添加された分散物を作成する。
【0016】
半導体組成物を備える電子機器も開示されている。電子機器は、TFTであってもよい。電子機器は、半導体層を備えており、この半導体層は、カーボンナノチューブと式(I)のポリチオフェンとを含む。カーボンナノチューブは、ポリチオフェンの少なくとも10wt%の量で存在してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本開示にかかるTFTの第1実施形態の図である。
【図2】図2は、本開示にかかるTFTの第2実施形態の図である。
【図3】図3は、本開示にかかるTFTの第3実施形態の図である。
【図4】図4は、本開示にかかるTFTの第4実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
用語「室温」は、20℃〜25℃範囲の温度を指す。
【0019】
本開示は、半導体ポリマー(例えば、ポリチオフェン)とカーボンナノチューブとを含む半導体組成物に関する。この組成物を製造するプロセス、およびこの組成物を含む半導体層を備える電子機器も開示されている。
【0020】
半導体組成物は、いくつかの実施形態では、1週間よりも長い(1ヶ月よりも長い、または3ヶ月よりも長い場合を含む)貯蔵寿命を有している。用語「貯蔵寿命」は、半導体組成物が使用に適さない状態にならないように保存可能な期間を指す。組成物の化学的特性または物理的特性が、顕著に変化してはいけない。いくつかの実施形態では、貯蔵時に、カーボンナノチューブが沈殿しない。
【0021】
図1は、本開示にかかるボトム−ゲート型でボトム−コンタクト型のTFT構造を示す。TFT10は、ゲート電極30と接する基板20と、ゲート誘電層40とを備えている。ゲート電極30は、ここでは基板20内の凹部に示されているが、ゲート電極は、基板の上に配置されていてもよい。ゲート誘電層40が、ゲート電極30を、ソース電極50、ドレイン電極60、半導体層70と分離していることが重要である。半導体層70は、ソース電極50およびドレイン電極60を覆うように、これらの間にある。半導体は、ソース電極50とドレイン電極60との間にチャネル長80を有している。
【0022】
図2は、本開示にかかるボトム−ゲート型でトップ−コンタクト型の別のTFT構造を示す。TFT10は、ゲート電極30と接する基板20と、ゲート誘電層40とを備えている。半導体層70は、ゲート誘電層40の上部に配置されており、ゲート誘電層40をソース電極50およびドレイン電極60から分離している。
【0023】
図3は、本開示にかかるボトム−ゲート型でボトム−コンタクト型のTFT構造を示す。TFT10は、基板20を備えており、基板20は、ゲート電極としても作用し、ゲート誘電層40と接する。ソース電極50、ドレイン電極60、半導体層70は、ゲート誘電層40の上部に配置されている。
【0024】
図4は、本開示にかかるトップ−ゲート型でトップ−コンタクト型のTFT構造を示す。TFT10は、ソース電極50、ドレイン電極60、半導体層70と接する基板20を備えている。半導体層70は、ソース電極50およびドレイン電極60を覆うように、これらの間にある。ゲート誘電層40は、半導体層70の上部にある。ゲート電極30は、ゲート誘電層40の上部にあり、半導体層70とは接していない。
【0025】
本開示の半導体組成物は、液体を含む。液体は、半導体ポリマーおよびカーボンナノチューブを溶解または分散させることができる液体である。例示的な液体としては、水、アルコール、アセテート;芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロナフタレン、メチル−ナフタレン、メシチレン;脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、デカリン、シクロヘキサン;塩素化溶媒、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン;フッ素化溶媒、例えば、ヘキサフルオロプロパノール、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロノナン;ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、およびこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、液体は、塩素化溶媒またはフッ素化溶媒である。
【0026】
本開示の半導体組成物は、ポリマー凝集物を形成することが可能な半導体ポリマーも含む。用語「ポリマー凝集物」は、ポリマーが、溶解した個々の分子鎖ではなく、ポリマー分子の別個の粒子またはクラスターを作成する能力を指す。このような粒子は、直径が約数ナノメートル〜約数マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、半導体ポリマーは、共役したポリマーであり、共役したポリマー凝集物は、粒径が、光散乱方法を用いて決定する場合、約5ナノメートル〜約1マイクロメートルであり、約5ナノメートル〜約500nmを含む。ポリマー凝集物を形成することが可能な、例示的な半導体ポリマーとしては、本明細書に記載されているポリチオフェン、ポリインドロカルバゾール、ポリ(フェニレンビニレン)などが挙げられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、室温で、液体中で安定な凝集物を形成することができる。ポリマー凝集物を作成するために、限定されないが、例えば、米国特許第6,890,868号または第6,803,262号に開示されているものを含む種々のプロセスを用いてもよい。
【0028】
特定の実施形態では、本開示の半導体組成物は、式(I)の構造を有するポリチオフェンを含み、
【化4】

式(I)
式中、Aは、二価の結合であり;各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アルコキシ、置換アルコキシ、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン、−CNまたは−NOから選択され;nは、2〜約5,000である。式(I)のポリチオフェンはホモポリマーであり、液体中でポリマー凝集物を形成することができる。
【0029】
用語「アリール」は、完全に炭素原子と水素原子とで構成されている芳香族基を指す。アリールは、ある数値範囲の炭素原子と組み合わせて記載される場合、置換された芳香族置換基を含むと解釈するべきではない。例えば、句「炭素原子を6〜10個含むアリール」は、フェニル基(炭素原子6個)またはナフチル基(炭素原子10個)のみを指すと解釈すべきであり、メチルフェニル基(炭素原子7個)を含むと解釈すべきではない。例示的なアリール基としては、フェニル、ビフェニル、フルオレニルが挙げられる。
【0030】
用語「アリーレン」は、2個の異なる水素以外の原子と単結合を形成する能力を有する芳香族基を指す。例示的なアリーレンは、フェニレン(−C−)である。
【0031】
用語「アルコキシ」は、酸素原子に接続したアルキル基、すなわち−O−C2n+1を指す。
【0032】
用語「ヘテロ原子を含有する基」は、環状の基の環に少なくとも1個のヘテロ原子を有するような、環状の基を指す。環状の基は、芳香族であってもよく、芳香族でなくてもよい。ヘテロ原子は、一般的に、窒素、酸素または硫黄である。
【0033】
用語「置換された」は、記載されている基の上にある少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン、−CN、−NO、−COOH、−SOHのような別の官能基で置換されていることを指す。例示的な置換アルキル基は、アルキル基の1個以上の水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、ヨウ素、臭素)と置き換わったペルハロアルキル基である。上述の官能基以外に、アルキル基、アルキレン基、アルケニル基またはアルキニル基は、アリール基で置換されていてもよい。例示的な置換アルケニル基は、フェニルエテニル(−CH=CH−C)である。例示的な置換アルキニル基は、フェニルエチニル(−C≡C−C)である。また、アリール基、アリーレン基またはヘテロ原子を含有する基は、アルキルまたはアルコキシで置換されていてもよい。例示的な置換アリール基としては、メチルフェニルおよびメトキシフェニルが挙げられる。例示的な置換アリーレン基としては、メチルフェニレンおよびメトキシフェニレンが挙げられる。
【0034】
一般的に、アルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基は、それぞれ独立して、炭素原子を1〜30個含むが、特定の実施形態では、炭素原子を2〜10個含んでもよい。同様に、アリール基およびアリーレン基は、独立して、炭素原子を6〜30個含む。いくつかの実施形態では、nは、約5〜約5,000である。
【0035】
用語「二価の結合」は、2個の異なる水素以外の原子と単結合を形成し、これらの2個の異なる原子を互いに接続することができる任意の部分を指す。例示的な二価の結合としては、−O−、−NH−、アルキレン、アリーレンが挙げられる。
【0036】
二価の結合Aは、式(I)の2個のチエニル部分それぞれと単結合を形成する。例示的な二価の結合Aとしては、以下のもの
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

およびこれらの組み合わせが挙げられ、各R’は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルコキシまたは置換アルコキシ、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン、−CN、または−NOから選択される。これらの1つ以上の部分が、二価の結合Aに存在していてもよい。それに加え、1個以上の特定の部分が、二価の結合Aに存在していてもよい。
【0037】
二価の結合Aは、常に、式(I)で示される2個のチオフェンモノマーとは異なることに留意しておくべきである。言いかえると、式(I)は、単なる1種類の部分から作られたポリチオフェンであるというところまで狭まることはない。特定の実施形態では、Aは、式(I)に示される2個のチオフェン部分とは異なるチエニル部分である。例えば、Aがチエニル部分である場合、RおよびR’は、同じではない。
【0038】
式(I)の特定の実施形態では、Rは、炭素原子を約6〜約25個含むアルキルである。ある実施形態では、ポリチオフェンは、式(II)の構造を有していてもよく、
【化9】


式(II)
式中、mは、2〜約2,500である。このポリチオフェンは、PQT−12と呼ばれることがある。
【0039】
半導体組成物は、カーボンナノチューブも含んでいる。カーボンナノチューブは、炭素の同素体である。カーボンナノチューブは、円筒形の炭素分子の形態をなしており、ナノテクノロジー、エレクトロニクス、光学分野、他の材料科学分野における広範囲の用途で有用な新しい特性を有している。カーボンナノチューブは、並はずれた強度を示し、固有の電気特性を示し、十分な熱伝導性を示す。ナノチューブの直径は小さく、典型的には、約0.5ナノメートル〜数ナノメートルの大きさである。ナノチューブの長さは、典型的には、これより長く、ある場合には、数ミリメートルまで達する。言いかえると、カーボンナノチューブは、高いアスペクト比(すなわち、直径に対する長さの比率)を有していてもよい。
【0040】
カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、または多層カーボンナノチューブであってもよい。単層カーボンナノチューブは、長方形のグラフェンシートの縁を接続することによって作られる円筒形である。多層カーボンナノチューブは、異なる直径を有する多くの円筒形カーボンナノチューブで構成されており、互いに同軸に作られている。カーボンナノチューブは、任意の適切な長さおよび直径を有していてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)である。SWCNTは、直径が約0.5ナノメートル〜約2.5ナノメートルであり、約0.7〜約2.5nmを含む。ある特定の実施形態では、SWCNTは、直径が、約0.7〜1.2nm、または約0.7〜約1.0nmであってもよい。SWCNTは、長さが、約0.1〜約10マイクロメートルであってもよく、約0.5〜約5マイクロメートル、約0.5〜約2.5マイクロメートル、または約0.7〜約1.5マイクロメートルを含む。SWCNTのアスペクト比は、約500〜約10,000であってもよく、約500〜5,000、または500〜1500を含む。これらの文章は、すべてのナノチューブが同じ直径、同じ長さ、または同じアスペクト比を有することが必要であると解釈されるべきではない。むしろ、ナノチューブは、上に列挙した分布範囲内で、異なる直径、異なる長さ、または異なるアスペクト比を有していてもよい。特定の実施形態では、カーボンナノチューブは、単層半導体カーボンナノチューブである。
【0042】
カーボンナノチューブは、表面が改質されたカーボンナノチューブであってもよい。表面を改質する基は、カーボンナノチューブの壁面または末端に接続していてもよい。カーボンナノチューブの表面は、非共有結合および共有結合の2つの様式で改質されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、表面が改質されたカーボンナノチューブは、以下の式によってあらわされてもよく、
【数1】

式中、CNTは、カーボンナノチューブをあらわし、Rは、エステル(−COO−)およびアミド(−CONH−)から選択される接続基であり;Rは、共役した基、共役していない基、低分子量の基、無機材料、およびこれらの組み合わせである。表面の改質度は、カーボンナノチューブあたり約1個の基を有するものから、カーボンナノチューブあたり約1000個の基を有するものまでさまざまであってもよい。
【0044】
カーボンナノチューブの表面は、共役した基、共役していない基、無機材料、およびこれらの組み合わせで改質されていてもよい。
【0045】
例示的な共役した基としては、チオフェン系オリゴマー、ピレニル、フルオレニル、カルバゾリル、トリアリールアミンおよびフェニルを挙げることができる。共役した基は、カーボンナノチューブの表面に直接共有結合していてもよく、アミドまたはエステルのような接続基を介して結合していてもよい。
【0046】
例示的な共役していない基としては、アルキル、アルコキシ、シアノ、ニトロ、ウレタン、スチレン、アクリレート、アミド、イミド、エステル、シロキサンを挙げることができる。また、カルボン酸、スルホン酸、ホスフィン酸、硫酸、硝酸、リン酸などからなる群から選択される酸部分を含む共役していない基も含まれる。特定の実施形態では、表面が改質されたカーボンナノチューブは、カルボン酸、硫酸および硝酸で改質されている。カーボンナノチューブに担持された酸は、半導体層の導電性を高め、トランジスタの電界効果移動度を高めるために、半導体、特にp型半導体にドープされてもよい。
【0047】
特定の実施形態では、無機材料は、導電性であってもよく、半導体性であってもよい。例示的な無機材料としては、金属および金属酸化物、例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、カドミウム、パラジウム、白金、クロム、アルミニウム、ZnO、ZnSe、CdSe、ZnIn(a、b、cは整数である)、GaAs、ZnO・SnO、SnO、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、インジウム、酸化インジウム、インジウムスズオキシドなどが挙げられる。無機材料は、カーボンナノチューブの表面を均一に覆っていてもよく、カーボンナノチューブの表面にナノ粒子の形態で存在していてもよい。特定の実施形態では、表面が改質されたカーボンナノチューブは、金、銀、ニッケル、銅、ZnO、CdSe、ZnIn、GaAs、ZnO・SnO、SnO、ZnSeのナノ粒子からなる群から選択されるナノ粒子で改質されている。
【0048】
カーボンナノチューブの表面を改質することによって、カーボンナノチューブと半導体ポリマー(例えば、式(I)のポリチオフェン)との混和性を高めることができる。典型的には、ナノ粒子は、強いファンデルワールス力によって凝集物を形成しやすく、その結果、ナノサイズの分散を達成することは困難になる。表面の改質によって溶解度が上がり、ポリチオフェン中に、カーボンナノチューブを実際にナノサイズで分散させることができる。共役した部分で表面が改質される場合、カーボンナノチューブとポリチオフェン半導体との電荷移動性がさらに良好となる。
【0049】
カーボンナノチューブは、適切な方法によって表面改質されてもよい。例えば、反応部位がカーボンナノチューブの上に作られてもよく、次いで、オリゴマーまたは低分子量化合物が、この反応部位でナノチューブにグラフト結合してもよい。別のアプローチは、酸処理によるカーボンナノチューブ表面へのカルボン酸基の導入を含む。例えば、硫酸と硝酸の混合物を用い、カーボンナノチューブの表面にカルボン酸基を作成することができる。次いで、他の表面を改質する基を、カルボン酸基と反応させてもよい。他のアプローチは、プラズマ処理、または、ジクロロカルベンのような非常に反応性に富む化学物質と直接反応させることを含む。
【0050】
ある実施形態では、カーボンナノチューブは、表面が改質されていない。半導体ポリマーとともに分散する場合、半導体ポリマーは、例えば、カーボンナノチューブの表面を包み込むことによって、またはカーボンナノチューブとともに凝集物を形成することによって、または任意の他の可能な機構によって、液体中でカーボンナノチューブを安定化することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー凝集物を形成することができる特性は、半導体組成物中にカーボンナノチューブを分散させ、安定化するのに役立つ。分散したカーボンナノチューブは、個々のカーボンナノチューブの周りにポリマー凝集物が生成することができるように、核として機能してもよい。結果として、ポリマー凝集物は、液体にカーボンナノチューブを分散させ、安定化するのに役立つ。
【0051】
半導体組成物および得られた半導体層において、カーボンナノチューブと半導体ポリマー(例えば、式(I)のポリチオフェン)との重量比は、約1:99〜約50:50であってもよい。言いかえると、カーボンナノチューブとポリチオフェンとの重量比は、カーボンナノチューブおよびポリチオフェンをあわせた重量を基準とし、約1wt%〜約50wt%である。
【0052】
いくつかの実施形態では、半導体ポリマーは、半導体組成物の約5.0wt%未満である(半導体組成物の約2.0wt%未満、約1.0wt%未満を含む)。ある実施形態では、半導体ポリマーは、半導体組成物の約0.1wt%〜約0.8wt%である。カーボンナノチーブは、カーボンナノチューブおよび半導体ポリマーをあわせた合計重量の約1〜約50wt%の量で存在していてもよい。言いかえると、カーボンナノチューブと半導体ポリマーとの重量比は、約1:99〜約50:50であってもよい。特定の実施形態では、カーボンナノチューブと半導体ポリマーとの重量比は、約10:90〜約50:50である。
【0053】
半導体層中にカーボンナノチューブが存在することによって、TFTの移動度が高まる場合がある。カーボンナノチューブは、一般的に、ポリチオフェンよりも導電性が高い。カーボンナノチューブは、チャネルの中に非浸透性の配列も有していることがあると考えられる。したがって、有効チャネル長は小さくなり、移動度が顕著に高まることがある。また、カーボンナノチューブは、隣接する半導体の結晶領域と電気的に接続しているとも考えられる。これらの接続が、典型的に移動度を減らしてしまうような、粒界による障壁効果を打ち消す。いくつかの実施形態では、移動度は、半導体ポリマーのみを含むTFT機器よりも少なくとも50%高まった(少なくとも100%、または少なくとも2倍高まった場合を含む)。
【0054】
また、半導体組成物を製造するプロセスも開示されている。特に、ポリチオフェン中でのカーボンナノチューブの高い電界効果移動度および良好な分散性を達成するために、2工程プロセスを用いなければならないことがわかっている。これにより、電界効果移動度は、少なくとも100%高まり、ある実施形態では、2倍〜3倍高まる。一般的に言うと、カーボンナノチューブおよび第1の半導体ポリマーを液体に分散させ、第1の分散物を作成する。次いで、第2の半導体(半導体ポリマーまたは低分子半導体のいずれか)を第1の分散物に加え、添加された分散物を作成する。次いで、第2の半導体を、添加された分散物に溶解させるか、または分散させ、最終的な分散物を作成する。少なくとも第1の半導体ポリマーは、液体中でポリマー凝集物を形成することができ、典型的には、第1の半導体ポリマーおよび第2の半導体ポリマーが、両方とも液体中でポリマー凝集物を形成することができる。いくつかの実施形態では、第1の半導体ポリマーと第2の半導体は同じである。他の実施形態では、任意の適切な低分子半導体を用い、最終的な半導体組成物を作成してもよい。
【0055】
言いかえると、カーボンナノチューブを、溶媒中、第1の量のポリチオフェンに分散させ、第1の分散物を作成する。カーボンナノチューブは、ポリチオフェンによって安定化する。次いで、第2の量のポリチオフェンを、第1の分散物に加え、添加された分散物を作成する。次いで、第2の量のポリチオフェンを、添加された分散物に分散させ、最終的な分散物を作成する。いくつかの実施形態では、ポリチオフェンは、液体中でポリマー凝集物を形成することができる。
【0056】
例示的な詳細な手順をここで与える。第1に、第1の半導体ポリマー、カーボンナノチューブ、液体の混合物を第1の高温まで加熱する。第1の半導体ポリマーは、第1の高温で、液体に少なくとも部分的に溶解する。次いで、この温かい混合物を、第1の低温まで下げ、プローブで超音波処理して第1の分散物を作成する。超音波処理は、第1の低温まで温度を下げる前、下げている間、または下げた後に行ってもよい。温度を下げている間に、この半導体ポリマーは、第1の低温でポリマー凝集物を形成し、カーボンナノチューブは、半導体ポリマーおよびポリマー凝集物によって分散し、安定化する。次いで、第2の半導体を第1の分散物に加え、添加された分散物を作成する。添加された分散物を、場合により、第2の高温まで加熱し、この第2の高温で、第2の半導体は、液体に少なくとも部分的に溶解する。添加された分散物を、第2の低温(第2の高温よりも低い)まで下げ、超音波浴で処理し、最終的な分散物を作成する。ある実施形態では、第1の高温は、第2の高温と同じである。他の実施形態では、第1の高温は、第2の高温よりも、5〜約100℃高く、10〜約50℃高い場合を含む。ある実施形態では、第1の低温は、室温よりも低く、第2の低温は、室温である。他の実施形態では、第1の低温も第2の低温も、室温よりも低い。第2の低温まで下げた後、組成物を室温にする。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1の高温は、約40℃〜約180℃であり、約60℃〜約150℃、または約60℃〜約120℃を含む。第2の高温は、約30℃〜約150℃であり、約40℃〜約120℃、または約60℃〜約100℃を含む。第1の低温は、約−25℃(マイナス25℃)〜約15℃であり、約−10℃(マイナス10℃)〜約5℃、または0℃付近を含む。第2の低温は、約−25℃(マイナス25℃)〜約35℃であり、約−10℃(マイナス10℃)〜約25℃、または約0℃〜約25℃を含む。
【0058】
第1の分散物中の半導体ポリマーに対するカーボンナノチューブの重量比は、このポリマーおよびカーボンナノチューブをあわせた重量を基準として、約1wt%〜約50wt%であってもよい。カーボンナノチューブは、非常に高い添加量で(すなわち、1:1に近い重量比で)ポリチオフェン溶液中に非常によく分散させることができる。この第1の分散は、プローブによる超音波処理によって行うことができ、数週間の間沈殿しないであろう、非常に安定な分散物が得られる。第1の分散物は、安定化された分散物と呼ばれることもある。第2の量のポリチオフェンを加える前に、非常に安定化された分散物を得ることが重要である。この方法の利点のひとつは、半導体層を作成するのに使用する前に、第1の分散物を、長期間保存するために使用することができることである。
【0059】
添加された分散物中、カーボンナノチューブと、第1の半導体ポリマーおよび第2の半導体ポリマーとの重量比は、約1:99〜約20:80であってもよい。添加された分散物は、第2の量のポリチオフェンを第1の分散物に加えることによって作成してもよい。
【0060】
第2の量のポリチオフェンを加えるやり方は、少なくとも2種類の異なる方法が想定されている。第2の量のポリチオフェンを溶媒に加え、分散させて第2の分散物を作成してもよい。第2の分散物全体の重量を基準とする第2の分散物中のポリチオフェンの添加量は、第1の分散物全体の重量を基準とする第1の分散物中のポリチオフェンの添加量よりも多くなければならない。言いかえると、第2の分散物は、第1の分散物よりもポリチオフェン濃度が高くなければならない。次いで、第1の分散物および第2の分散物をあわせ、添加された分散物を作成する。ポリチオフェンに対するカーボンナノチューブの重量比は、添加された分散物では、第2の分散物を加えるために、第1の分散物よりも小さい。
【0061】
または、第2の量のポリチオフェンを、第1の分散物に粉末として加えてもよい。次いで、第1の分散物を加熱し、第2の量のポリチオフェンを第1の分散物に溶解させ、添加された分散物を作成する。
【0062】
いくつかの実施形態では、第1の分散物を、プローブによる超音波処理を用いて作成し、最終的な分散物を、浴による超音波処理を用いて作成する。用語「プローブによる超音波処理」は、プローブを、分散物を含む容器に挿入する超音波処理を指す。用語「浴による超音波処理」は、分散物を含む容器を浴に入れ、次いで、その浴を超音波処理するような超音波処理を指す。プローブによる超音波処理は、浴による超音波処理と比べて、かなり大きなエネルギー/力を与える。言いかえると、2段階プロセスの場合、第1の分散工程の間は、高い力または高いエネルギーを用い、一方、第2の分散工程の間は、かなり低いエネルギー/力を用いる。
【0063】
上に記載した半導体組成物を含み、場合により、上に記載した手順によって製造された電子機器も開示されている。ある実施形態では、電子機器は、薄膜トランジスタである。他の実施形態では、電子機器は、光発電機器である。
【0064】
当該技術分野で知られている従来のプロセスを用い、電子機器中に半導体層を作成してもよい。いくつかの実施形態では、半導体層は、液相析出技術を用いて作成される。例示的な液相析出技術としては、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、浸漬コーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スタンピング、ステンシル印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などが挙げられる。
【0065】
この半導体組成物を用いて作られる半導体層は、深さが約5ナノメートルから約1000ナノメートルであってもよい(約20〜約100ナノメートルを含む)。特定の構造(例えば、図1および図4に示される構造)において、半導体層は、ソース電極とドレイン電極を完全に覆っている。
【0066】
TFTの性能は、移動度によって測定することができる。移動度は、単位cm/V・secで測定され、移動度が大きいことが望ましい。本開示の半導体組成物を用いて得られたTFTは、電界効果移動度が、少なくとも0.1cm/V・secであってもよい(少なくとも0.2cm/V・secを含む)。本開示のTFTは、電流オン/オフ比が、少なくとも10であってもよい(少なくとも10を含む)。また、本開示のTFTは、オフ電流(すなわち、漏れ電流)が、約10−9アンペア未満、または10−10アンペア未満であってもよい。
【0067】
薄膜トランジスタは、一般的に、半導体層に加え、基板と、任意要素のゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、誘電層とを備えている。
【0068】
基板は、限定されないが、ケイ素、ガラス板、プラスチック膜またはシートを含む材料で構成されていてもよい。構造的に可とう性の機器では、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドのシートなどのようなプラスチック基板が好ましい場合がある。基板の厚みは、約10マイクロメートルから10ミリメートルを超えていてもよく、例示的な厚みは、特に、可とう性プラスチック基板の場合には、約50〜約100マイクロメートル、ガラスまたはケイ素のような剛性基板の場合には、約0.5〜約10ミリメートルであってもよい。
【0069】
誘電層は、一般的に、無機材料の膜、有機ポリマーの膜、または有機−無機コンポジットの膜であってもよい。誘電層として適する無機材料の例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムジルコニウムなどが挙げられる。適切な有機ポリマーの例としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、エポキシ樹脂などが挙げられる。誘電層の厚みは、使用される材料の誘電率によって変わり、例えば、約10ナノメートル〜約500ナノメートルであってもよい。誘電層は、導電率が、例えば、約10−12ジーメンス/センチメートル(S/cm)未満であってもよい。誘電層は、ゲート電極を作成するときに記載したプロセスを含む、当該技術分野で知られる従来のプロセスによって作られる。
【0070】
本開示において、誘電層は、表面改質剤で表面が改質されていてもよい。例示的な表面改質剤としては、低分子シラン薬剤、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、オクチルトリクロロシラン(OTS−8)、またはポリマー系改質剤、例えば、ポリシルセスキオキサン、ポリシロキサンまたはフルオロポリマーが挙げられる。半導体層は、この改質された誘電層表面に直接接していてもよい。完全に接触していてもよいし、部分的に接触していてもよい。この表面改質は、誘電層と半導体層との間に界面層を作成すると考えることもできる。
【0071】
ゲート電極は、導電性材料で構成されている。ゲート電極は、金属の薄膜、導電性ポリマー膜、導電性インクまたはペーストから作られる導電性膜、または基板自体(例えば、重金属がドープされたケイ素)であってもよい。ゲート電極の材料の例としては、限定されないが、アルミニウム、金、銀、クロム、インジウムスズ酸化物、導電性ポリマー、例えば、ポリスチレンスルホネートがドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)、カーボンブラック/グラファイトで構成される導電性インク/ペーストが挙げられる。ゲート電極は、減圧エバポレーション、金属または導電性金属酸化物のスパッタリング、従来のリソグラフィーおよびエッチング、化学真空蒸着、スピンコーティング、鋳造または印刷、または他の析出プロセスによって調製されてもよい。ゲート電極の厚みは、例えば、金属膜の場合には、約10〜約200ナノメートル、導電性ポリマーの場合には、約1〜約10マイクロメートルの範囲である。ソース電極およびドレイン電極として用いるのに適した、典型的な材料としては、アルミニウム、金、銀、クロム、亜鉛、インジウム、導電性金属酸化物、例えば、亜鉛−ガリウム酸化物、インジウムスズ酸化物、インジウム−アンチモン酸化物、導電性ポリマーおよび導電性インクのようなゲート電極の材料が挙げられる。ソース電極およびドレイン電極の典型的な厚みは、例えば、約40ナノメートル〜約1マイクロメートルであり、より特定的な厚みは、約100〜約400ナノメートルである。
【0072】
ソース電極およびドレイン電極として用いるのに適した、典型的な材料としては、金、銀、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマー、導電性インクのようなゲート電極の材料が挙げられる。特定の実施形態では、電極材料は、半導体に対する接触抵抗が低い。典型的な厚みは、例えば、約40ナノメートル〜約1マイクロメートルであり、より特定的な厚みは、約100〜約400ナノメートルである。本開示のOTFT機器は、半導体チャネルを含む。半導体チャネルの幅は、例えば、約5マイクロメートル〜約5ミリメートルであってもよく、特定的なチャネルの幅は、約100マイクロメートル〜約1ミリメートルである。半導体チャネルの長さは、例えば、約1マイクロメートル〜約1ミリメートルであってもよく、より特定的なチャネルの長さは、約5マイクロメートル〜約100マイクロメートルである。
【0073】
ソース電極は、接地されており、ゲート電極に、例えば、約+10ボルト〜約−80ボルトの電圧がかけられる場合、半導体チャネルを通って移動する電荷キャリアを集めるために、例えば、約0ボルト〜約80ボルトのバイアス電圧がドレイン電極にかけられる。電極は、当該技術分野で既知の従来のプロセスを用いて作成されるか、または析出されてもよい。
【0074】
所望な場合、電気的性質を破壊し得る環境条件(例えば、光、酸素、水分など)からTFTを守るために、防御層をTFTの上部に析出させてもよい。このような防御層は、当該技術分野で知られており、単にポリマーからなるものであってもよい。
【0075】
OTFTの種々の要素を、任意の順序で基板の上に析出させてもよい。しかし、一般的に、ゲート電極および半導体層は、両方ともゲート誘電層に接していなければならない。それに加え、ソース電極およびドレイン電極は、両方とも半導体層に接していなければならない。句「任意の順序で」は、順次作成すること、同時に作成することを含む。例えば、ソース電極およびドレイン電極を同時に作成してもよく、順次作成してもよい。用語基板「の上(on)」または基板「の上(upon)」は、基板の上部にある層および要素について、底部または支持板であるような基板に対する、種々の層および要素を指す。言いかえると、すべての要素は、すべてが基板と直接接していない場合であっても、基板の上にある。例えば、誘電層および半導体層は、一方の層が他の層よりも基板に近い場合であっても、両方とも基板の上にある。得られたTFTは、良好な移動度を有し、良好な電流オン/オフ比を有する。
【0076】
以下の実施例は、本開示をさらに説明するためのものである。この実施例は、単なる説明であり、ここに記載した材料、条件またはプロセスパラメータにしたがって製造された機器に限定することを意図したものではない。すべての部は、他の意味であると示されていない限り、容積基準である。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
単層カーボンナノチューブ(Bucky USA、BU−203)を、カーボンナノチューブの濃度が0.1wt%になるまで1,2−ジクロロベンゼンに加えた。この混合物を、室温で、出力50%で20秒間、プローブによって超音波処理し、分散物を作成した。PQT−12の濃度が0.1wt%になるまで、このカーボンナノチューブ分散物にPQT−12粉末を加えた。この時点で、カーボンナノチューブとPQT−12との重量比は1:1であった。この混合物を約80℃まで加熱してPQT−12を溶解させ、次いで、氷水浴(0〜5℃)中、プローブによって20秒間超音波処理し、非常に安定なカーボンナノチューブおよびPQT−12ナノ粒子の分散物を製造した。この分散物を30分間遠心分離処理し、沈殿はみられなかった。PQT−12は、1,2−ジクロロベンゼン溶媒中でナノサイズの凝集物を形成することができる。ポリマー凝集物が、カーボンナノチューブ分散物を安定化するのに役立つと考えられる。この組成物は、PQT−12で安定化されたCNT分散物と呼ばれる。
【0078】
このPQT−12で安定化されたCNT分散物を用い、2種類の異なる方法で半導体組成物を調製した。
【0079】
第1の方法では、1,2−ジクロロベンゼン中に0.5wt%のPQT−12を含む濃いPQT−12分散物を調製した。PQT−12で安定化されたCNT分散物と、上述の濃いPQT−12分散物を室温で混合し、重量比(CNT:PQT−12)が10%の最終的な分散物を作成した。次いで、この混合物を、氷水浴中、超音波浴で超音波処理し、安定なCNT/PQT−12組成物を作成した。
【0080】
第2の方法では、PQT−12粉末を、PQT−12で安定化されたCNT分散物に直に加え、重量比(CNT:PQT−12)10%を達成した。この分散物を約80℃まで加熱し、PQT−12粉末を溶解した。次いで、この混合物を、氷水浴中、超音波浴で超音波処理し、安定なCNT/PQT−12組成物を作成した。
【0081】
(実施例2)
実施例1のCNT/PQT−12組成物を用い、ケイ素ウェハ基板の上に薄膜トランジスタを製造し、半導体層を作成した。N−ドープされたケイ素は、ゲートとして機能し、200nmの酸化ケイ素層は、誘電層として機能した。酸化ケイ素を、オクチルトリクロロシランで改質した。CNT/PQT−12組成物をウェハ上に1,000rpmで120秒間スピンコーティングした。析出させた半導体組成物を、減圧乾燥器中、80℃で乾燥させ、140℃でアニーリングし、半導体層を作成した。金のソース電極およびドレイン電極を、シャドウマスクによって半導体の上にエバポレーションした。
【0082】
CNT/PQT−12半導体層を用いて製造したTFTは、0.3cm/V・secまでの電界効果移動度を示し、10〜10の高い電流オン/オフ比を示した。
【0083】
(比較例1)
実施例2の一般的な手順にしたがい、但し、実施例1の組成物を含む半導体層の代わりに、純粋なPQT−12半導体層を用いた。PQT−12のみを含むTFTは、約0.1cm/V・secの移動度を示し、この値は、半導体組成物がカーボンナノチューブを含む場合の値の約3分の1であった。実施例2および比較例1の比較から、半導体組成物にカーボンナノチューブが含まれると、その組成物から作られる機器の移動度が上がることが示されている。
【0084】
(比較例2)
実施例1の一般的な手順にしたがい、但し、PQT−12をポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)に置き換えた。超音波浴で超音波処理した後、CNT/P3HT混合物を製造した。沈殿が観察された。この沈殿は、CNT分散物を安定化させるために、P3HTがPQT−12ほど有効ではなさそうであることを示唆している。P3HTは、1,2−ジクロロベンゼン溶媒中でポリマー凝集物を形成することができない。実施例2と比較例2との比較から、選択された特定のポリチオフェンが、安定性を達成するのに重要であることを示唆している。
【0085】
(比較例3)
0.1wt%のカーボンナノチューブをジクロロベンゼンに分散した。PQT−12粉末を加え、重量比(CNT:PQT−12)を10%にした。この混合物を約80℃まで加熱することによってPQT−12を溶解し、この混合物を、氷水浴中、プローブによって20秒間超音波処理した。この組成物を、実施例2の一般的な手順にしたがって製造したTFT中の半導体組成物として用いた。製造された機器は、約0.05〜0.09cm/V・secの電解効果移動度を示した。実施例2と比較例3との比較から、本明細書に開示されるような多段階工程でポリチオフェンを加えると、もっと高い移動度を達成することができることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と;
カーボンナノチューブと;
半導体ポリマーとを含み、この半導体ポリマーが、室温で、前記液体中でポリマー凝集物を形成することが可能な、半導体組成物。
【請求項2】
カーボンナノチューブと;
式(I)のポリチオフェンとを含み、
【化1】

式(I)
式中、Aは、二価の結合であり;各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アルコキシ、置換アルコキシ、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン、−CNまたは−NOから選択され;nは、2〜約5,000である、半導体組成物。
【請求項3】
半導体ポリマーとカーボンナノチューブとを含む半導体組成物を製造するプロセスであって、このプロセスが、
カーボンナノチューブおよび第1の半導体ポリマーを液体に分散させ、第1の分散物を作成することと;
第1の分散物に第2の半導体を加え、添加された分散物を作成することと;
この第2の半導体を、添加された分散物に溶解または分散し、最終的な分散物を作成することとを含み、
ここで、第1の半導体ポリマーは、前記液体中でポリマー凝集物を形成することが可能な、プロセス。
【請求項4】
半導体層を備え、この半導体層が、
カーボンナノチューブと;
式(I)のポリチオフェンとを含み、
【化2】

式(I)
式中、Aは、二価の結合であり;各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アルコキシ、置換アルコキシ、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン、−CNまたは−NOから選択され;nは、2〜約5,000である、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−156501(P2012−156501A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4310(P2012−4310)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】