半田ごておよび半田ごて用こて先
【課題】作業効率を向上できる。
【解決手段】把持部20とこて先11との間において、こて先11の角度を変更可能な角度変更部12をそなえる。
【解決手段】把持部20とこて先11との間において、こて先11の角度を変更可能な角度変更部12をそなえる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、棒状のこて先をそなえた半田ごてに関する。
【背景技術】
【0002】
半田ごては、半田付けにおいて半田及び接合対象物を加熱するために用いる工具である。半田付けは、接合対象物である金属部品間に溶融した半田を流し込むことにより、これらの金属部品を接合する手法である。なお、接合対象物は、例えば、電子回路基板のパッドや電子部品の足,リード線等である。
図10及び図11はそれぞれ従来の半田ごての構成を模式的に示す図である。半田ごて500aは、例えば、図10に示すように、こて先部501a,加熱部502及びグリップ503をそなえている。
【0003】
加熱部502は、こて先部501aを加熱するものであり、例えば、ニクロム線ヒーターやセラミックヒーター等である。図10に示す例においては、この加熱部502におけるこて先部501aとは反対側の端部はグリップ503に取り付けられている。
グリップ503は、半田ゴテ500aの使用者が半田付けを行なう際に把持する部位であり、例えば、円筒形状を有する。又、図10に示す例においては、このグリップ503内には加熱部502に電力を供給するための電線が貫通している。
【0004】
こて先部501aは半田や接合対象物を加熱するものであり、加熱部502によって加熱される。このこて先部501aは、銅等の熱伝導性の高い金属材料で形成され、加熱部502によって半田の溶融温度以上となるように加熱されて、半田に接触してこの半田を溶融させる。
図10に示すこて先部501aは、例えば、先端部が円錐形の柱状に形成されており、その中心軸が、グリップ503の中心軸と同一直線上になるように取り付けられている。
【0005】
そして、作業者は、こて先部501aを半田の溶融温度以上になった半田ごて500aを操作して、接合対象物や半田を加熱し、半田付けを行なう。
また、接合対象物の形状や配置等によっては、こて先部501aの先端を接合対象物に接触させることができない場合がある。このような場合に対処するために、半田ごて500aの他に、図11に示すような、屈曲した形状のこて先部501bを有する半田ごて500bを用意し、これらの複数の半田ごて500a,500bを適宜使い分けて用いる。
【0006】
また、従来においては、こて先部を交換可能な半田ごても知られている(例えば、下記特許文献1)。そこで、上述の如く半田ごて500a,500bのような複数の半田ごてを用意して使い分ける代わりに、半田ごて500aのこて先部501aを、必要に応じて、こて先部501bに交換して使用することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−328822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の半田ごてにおいて、こて先の形状が異なる複数種類の半田ごてを用意することは、作業スペースやコンセント数,電源容量等を確保する必要があり煩雑であるという課題がある。
また、こて先部を交換する作業は煩雑であるとともに、こて先部の交換を行なうために、こて先部を一旦冷却させる必要があり、作業効率が低下するという課題もある。
【0009】
本件の目的の一つは、このような課題に鑑み創案されたもので、作業効率を向上できるようにすることである。
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の1つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、半田ごては、把持部と棒状のこて先とをそなえた半田ごてであって、該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部をそなえる。
この半田ごて用こて先は、把持部をそなえた半田ごて本体の先端に取り付け可能な半田ごて用こて先であって、棒状のこて先と、該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部とをそなえる。
【発明の効果】
【0011】
開示の半田ごておよび半田ごて用こて先によれば、以下の少なくともいずれか1つの効果ないし利点が得られる。
(1)こて先の角度を変形させることができるので、半田付けを容易に行なうことができ、利便性が高い。
(2)複数の半田ごてを用意する必要がないので、経済的であり、又、利便性が高い
(3)煩雑なこて先の交換を行なう必要がなく、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の一例としての半田ごての構成を模式的に示す側断面図である。
【図2】実施形態の一例としての半田ごての構成を模式的に示す側断面図である。
【図3】実施形態の一例としての半田ごての構成を模式的に示す平断面図である。
【図4】実施形態の一例としての半田ごての構成を模式的に示す平断面図である。
【図5】(a),(b)は実施形態の一例としての半田ごてにおける挟持板の構成を模式的に示す図である。
【図6】実施形態の一例としての半田ごてのこて先ユニットの構成を模式的に示す斜視図である。
【図7】実施形態の一例としての半田ごての変形方法を説明するための図である。
【図8】実施形態の一例としての半田ごての変形例を説明するための図である。
【図9】実施形態の一例としての半田ごてのロック機構付きヒンジの構成例を模式的に示す図である。
【図10】従来の半田ごての構成を模式的に示す図である。
【図11】従来の半田ごての構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)一実施形態の説明
以下、図面を参照して本半田ごてに係る実施の形態を説明する。
図1〜図4は実施形態の一例としての半田ごての構成を模式的に示す図であり、図1,図2はその側断面図、図3,図4はその平断面図である。
実施形態の一例としての半田ごて1は、図1に示すように、こて先部2,グリップ20及び加熱部21をそなえている。
【0014】
グリップ(把持部)20は、半田ごて1の使用者が半田付けを行なう際に把持する部分であり、例えば、円筒形を有する。なお、このグリップ20の形状は円筒形に限定されるものではなく、例えば、円以外の断面形状をそなえてもよく、又、銃把形状等の筒状以外の形状を有してもよい。
加熱部21は、後述するこて先部2のこて先11を加熱するものであり、例えば、ニクロム線ヒーターやセラミックヒーター等である。図1に示す例においては、この加熱部21はグリップ20内に内蔵されている。この加熱部21は、後述するこて先ユニット10の軸部13を加熱し、この軸部13に加えられた熱は、同じく後述する屈曲部12を介してこて先11に伝導され、こて先11が加熱される。
【0015】
なお、この加熱部21は、こて先11を所定の温度に保つための定温制御装置をそなえてもよい。このような定温制御装置は、既知の手法により実現することができ、その詳細な説明は省略する。
また、この加熱部21には、軸部13が着脱可能に接続されるようになっており、例えば、加熱部21に形成されたヒータユニットをそなえた穴に軸部13を抜差し可能に構成されている。
【0016】
こて先部(半田ごて用こて先)2は、図1に示すように、こて先ユニット10と固定部40とをそなえている。
こて先ユニット10は、半田や接合対象物を加熱するものであり、加熱部21によって加熱される。このこて先ユニット10は、図1に示すように、こて先11,屈曲部12及び軸部13をそなえている。
【0017】
こて先11は、加熱部21によって半田の溶融温度以上となるように加熱されて、半田に接触してこの半田を溶融させる。このこて先11は、例えば円柱の如き棒状に形成されるとともに、図1に示す例においては、その先端部11aは円錐状に形成されている。又、こて先11の基部11bは屈曲部12の一端に固着されている。
また、こて先11における先端部11aと基部11bとの間においては、図3,図4に示すように、一対の突出部111,111が形成されている。これらの突出部111,111は、それぞれドーム形状をそなえており、こて先11における基部11bから等距離の位置において、互いに反対の方向に突出するように形成されている。
【0018】
軸部13は、こて先11の基部とほぼ同じ断面形状を有する軸状の部材であって、その一端部(図1の右側)には屈曲部12が固定されており、又、その他端部は加熱部21に接続される。この軸部13は、グリップ20内、グリップ20の中心軸に沿って挿入され、グリップ20内部で加熱部21に接続される。
そして、軸部13の他端部は加熱部21によって加熱され、この加熱部21によって加えられた熱を屈曲部12を介してこて先11に伝導する。
【0019】
屈曲部12は、バネ等の弾性部材であり、その一端側(図1の右側)にこて先11の基部11bが、又、その他端側(図1の左側)に軸部13が、それぞれ固着されている。すなわち、屈曲部12はこて先11と軸部13とを連結している。そして、この屈曲部12は、こて先11と軸部13との角度を変更可能な角度変更部として機能する。
具体的には、屈曲部12によりこて先11と軸部13とを連結した状態において、図1に示すように、こて先11の先端部11aを首振り方向A,Bのいずれかに沿って移動させることにより、屈曲部12はこて先11の姿勢に追従して屈曲(変形)する。すなわち、屈曲部12は、グリップ20とこて先11との間において、こて先の角度を変更可能な角度変更部として機能する。なお、屈曲部12は、使用者がこて先11の角度を容易に移動させられる程度に小さい弾性力を有することが望ましい。
【0020】
以下、屈曲部12が変形していない状態、すなわち、軸部13とこて先11とが同一直線状に並んだ状態を直線状態(第1の状態)という場合がある。又、屈曲部12が変形していない状態、すなわち、軸部13とこて先11とが同一直線状に並んでいない状態を変形状態(第2の状態)という場合がある。なお、本実施形態においては、直線状態において、こて先11がグリップ20の中心軸と平行になるように取り付けられている。
【0021】
また、上述したこて先11,屈曲部12及び軸部13は、それぞれ鉄や銅等の耐熱性が高く、且つ、熱伝導性の高い材料で形成されている。
固定部40は、こて先11を固定するものであって、図1〜4に示すように、挟持板43a,43b及び挟持固定装置30をそなえている。
図5(a),(b)は実施形態の一例としての半田ごて1における挟持板43a,43bの構成を模式的に示す図であり、図5(a)はその斜視図、図5(b)はその平断面図である。又、図6は実施形態の一例としての半田ごて1のこて先ユニット10の構成を模式的に示す斜視図である。
【0022】
挟持板(第1部材)43a及び挟持板(第2部材)43bは、それぞれ板状の部材であって、加熱部21によって加熱されたこて先ユニット10に接触しても溶融や変形が生じない耐熱性の高い材質(例えば、鉄等の金属材料)で形成されている。そして、図3,図4に示すように、これらの挟持板43aと挟持板43bとを平行に配設した状態において、これらの挟持板43aと挟持板43bとの間には、こて先ユニット10が配置される。すなわち、これらの挟持板43aと挟持板43bとにより、こて先ユニット10を挟持する。
【0023】
また、これらの挟持板43a,43bは、図6に示すように、角筒状のホルダ14内に、このホルダ14において対向する2つの壁面14c,14dと平行に格納される。又、挟持板43a,43bは、ホルダ14において対向する2つの壁面14a,14bに沿って、互いに近づく方向および遠ざかる方向に摺動可能に配設されている。
具体的には、図3,4に示すように、挟持板43aは、ホルダ14における、壁面14a,14bの双方に直行する壁面14cに、1以上(図3,図4に示す例では2つ)の引張部材141aを介して取り付けられている。同様に、挟持板43bは、ホルダ14における、壁面14cに対向する壁面14dに、1以上(図3,図4に示す例では2つ)の引張部材141b,141bを介して取り付けられている。
【0024】
そして、これらの引張部材141a,141bは、金属等の耐熱性の高い素材で形成されたバネ等の弾性部材であって、それぞれ挟持板43a,43bを壁面14c,14d側に引き付けている。これにより、引張部材141a,141bは、挟持板43a,43bを互いに遠ざける方向、すなわち、挟持板43a,43bの間隙を開く方向に移動させる。
【0025】
また、挟持板43a,43bは、それぞれ、ホルダ14内において図示しないレール等に沿って案内され、互いに平行もしくはほぼ平行に移動するよう構成されている。
なお、以下、引張部材を示す符号としては、複数の引張部材のうち1つを特定する必要があるときには符号141a,141bを用いるが、任意の引張部材を指すときには符号141を用いる。
【0026】
また、挟持板43a,43bにおけるこて先ユニット10に接触する側の面には、それぞれ複数(図1に示す例では7個)のくぼみ431が弧状に並べて形成されている。そして、挟持板43a,43bの間にこて先11を配置した状態で、これらの挟持板43a,43bを互いに近づけることにより、これらのくぼみ431にこて先11から突出する突出部111が嵌挿される。
【0027】
また、挟持板43a,43bのそれぞれにおいて、複数のくぼみ431は、こて先11に形成されたその屈曲部12における屈曲中心に相当する位置を中心とする円弧に沿って配置されている。
これらのくぼみ431は、こて先11の突出部111の外形とほぼ同じ形状をそなえており、これにより、くぼみ431内に突出部111を収納して、こて先11の移動を抑止する可能に構成されている。
【0028】
これにより、こて先ユニット10のこて先1の角度を屈曲部12を屈曲させながら変更させ、その変形状態において、挟持板43a,43bに形成されたくぼみ431のいずれかに、こて先11の突出部111,111を嵌挿することができる。例えば、図2に示す例においては、上から2つ目のくぼみ431,431に、こて先11の突出部111,111が嵌挿されている状態を示している。
【0029】
すなわち、くぼみ431は突出部111を収納することによりこて先11の位置決めや固定を行なう。
挟持固定装置30は、挟持板43a,43bを、これらの挟持板43a,43bでこて先11を挟持した状態で固定するものである。この挟持固定装置30は、図1〜図4に示すように、クリップ31,つまみ33および接続部32をそなえている。
【0030】
クリップ31は、互いに平行する一対の面31a,31aと、これらの面31a,31aと直行し、これらの面31a,31aにおける対向する一辺どうしを連結する面31cとをそなえ、これらの面31a,31a,31cにより、ほぼコの字形に形成されている。又、面31a,31aにおける面31cとは反対側の各辺には、それぞれ、面31aに接続された側から間隔が漸増するように傾斜を付けて(ハの字型に)面31b,31bが形成されている。
【0031】
また、クリップ31における対向する面31a,31aの間隔は、軸部13の軸径に挟持板43a,43bの各板厚を加えた寸法と同一もしくはほぼ同一に形成されている。
つまみ33は、接続部32を介してクリップ31に接続されている。接続部32はL字型の柱状部材として形成され、その一端がつまみ33に、又、その他端がクリップ31の面31cに接続されている。又、接続部32は、グリップ20の内部に配設され、そのクリップ31が接続された側の反対側の端部が、グリップ20において挟持板43a,43bと平行に形成されたレール22を貫通して、グリップ20の外部に位置する。そして、このグリップ20の外部において接続部32につまみ33が固定されている。
【0032】
これにより、つまみ33,接続部32およびクリップ31が一体となって、レール22に沿って移動可能に構成されている。すなわち、つまみ33を、レール22に沿って、こて先11側(図1〜図4の右側:以下、こて先側)からグリップ20の尾部側(図1〜図4の左側:以下、尾部側)にかけて往復して摺動させることができる。これに従い、クリップ31も、こて先側から尾部側にかけて往復して摺動可能に構成されている。
【0033】
なお、図3に示すように、つまみ33がレール22における最も尾部側に位置する状態においては、挟持板43a,43bにおける尾部側の各端部は、クリップ31の面31b,31bの間に位置するようになっている。
図3に示すように、つまみ33がレール22における最も尾部側に位置する状態においては、挟持板43a,43bはクリップ31の面31a,31a間の空間から離脱する。
【0034】
この状態においては、挟持板43a,43bは引張部材141a,141bにより互いに遠ざかるように引っ張られ、挟持板43a,43bはこて先ユニット10から引き離される。すなわち、挟持板43a,43b間において、こて先ユニット10は解放状態となる。
この解放状態においては、こて先11の突出部111は挟持板43a,43bのくぼみ431から離脱する。これにより、こて先11は、首振り方向A,Bに沿って任意にその角度を変更することができる。
【0035】
一方、図4に示すように、つまみ33がレール22における最もこて先側に位置する状態においては、挟持板43a,43bはクリップ31の面31a,31a間に、挟持板43a,43bがこて先ユニット10に密接した状態(閉状態)で挟持される。すなわち、挟持板43a,43b間において、こて先ユニット10は固定状態となる。又、この際、こて先11の突出部111,111は、挟持板43a,43bのいずれかのくぼみ431に挿入されるように位置決めする。
【0036】
このように、固定部40は、屈曲部12によりこて先11の角度を変更した状態で、このこて先11を固定可能に構成されている。
また、半田ごて1においては、グリップ20は、挟持固定装置30よりも尾部側(図1〜図4の左側)において分割可能に構成されており、これにより、グリップ20において加熱部21が配置された側とこて先部2とに分割可能に構成されている。これにより、こて先部2を、他のこて先部2と交換可能に構成されている。
【0037】
上述の如く構成された実施形態の一例としての半田ごてを使用する際には、先ず、加熱部21に電力を供給する。これにより、加熱部21が軸部13を加熱し、軸部13に加えられた熱が屈曲部12を介してこて先11に伝導され、こて先11が加熱される。
こて先11の温度が、半田の溶融温度よりも高くなった状態で、使用者は、例えば直線状態の半田ごて1のグリップ20を保持して、こて先11を接合対象物や半田に接触させることにより加熱し、半田付けを行なう。
【0038】
なお、この半田付けは、つまみ33がレール22における最もこて先側に位置する状態において行なう。すなわち、挟持板43a,43b間において、こて先ユニット10が固定された状態で行なう。
そして、作業対象の部品の配置状況等により、こて先11を接合対象物等に接触させることが困難な状況においては、使用者は、こて先11の角度を変更させて変形状態にする。
【0039】
半田ごて1を直線状態から変形状態にするには、使用者は、先ず、つまみ33をレール22における最も尾部側に移動させる。これにより、クリップ31が尾部側に移動され、クリップ31に挟持されていた挟持板43a,43bが解放される。又、これに伴い、挟持板43a,43bが引張部材141a,141bにより互いに遠ざかるように引っ張られ、挟持板43a,43b間において、こて先ユニット10が解放状態となる。
【0040】
図7は実施形態の一例としての半田ごて1の変形方法を説明するための図である。使用者は、この図7に示すように、こて先ユニット10が解放状態となった半田ごて1のこて先11の先端部11aを、その首振り方向に沿って荷重がかかるように作業台等の耐熱性の高い面200に押し付ける。
これにより、こて先11に面200から作用する力が作用し、こて先ユニット10が屈曲部12で屈曲する。ここで、使用者は、こて先11が所望の角度になるまで屈曲部12を変形させ、こて先11の突出部111,111が挟持板43a,43bのいずれかのくぼみ431に挿入するように位置決めする。その後、使用者はつまみ33をレール22に沿ってこて先側へ移動させる。
【0041】
これに伴い、クリップ31がこて先側に移動する。又、この際、挟持板43a,43bにおける尾部側の各端部が、クリップ31の面31b,31bに案内され、挟持板43a,43bが互いに近づくように間隙を移動する。
さらに、つまみ33をレール22に沿ってこて先側へ移動させると、図4に示すように、挟持板43a,43bにおける尾部側の各端部は、クリップ31の面31a,31a内に格納され、挟持板43a,43bはこて先ユニット10を挟持した状態で固定される。
【0042】
作業者は、このようにこて先11が変形状態で固定された半田ごて1を操作して、半田付け作業を行なう。
なお、半田ごて1の変形状態から直線状態へ戻す場合にも、上述したものと同様の操作を行なう。
このように、実施形態の一例としての半田ごて1によれば、こて先11の角度を変形させることができるので、直線状態のこて先11では作業し難い箇所に対しても半田付けを容易に行なうことができる。
【0043】
特に、この際、こて先11の温度が高い状態でこて先11の方向を変更することができる。すなわち、半田ごての電源を落とす必要がなく作業効率が低下することがない。
また、交換用の半田ごてやこて先を用意する必要がなくコストを削減できる。又、複数の半田ごてを用意する必要がないので、コンセント数や電源容量に配慮する必要がなく利便性が高い。又、煩雑なこて先11の交換を行なう必要もなく生産性を向上させることができる。
【0044】
また、つまみ33をスライドさせるだけで簡単に挟持板43a,43bの改変を行なうことができ、こて先11の角度変更を容易に行なうことができる。
(B)変形例の説明
そして、開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0045】
例えば、上述した実施形態においては、挟持板43a,43bに7つのくぼみ431が形成されている例を示しているが、これに限定されるものではなく、くぼみ431の位置や数は種々変形して実施することができる。
ここで、くぼみ431の数を多くして、屈曲部12の屈曲中心に相当する位置を中心とする円弧に沿って狭い間隔で配置することにより、こて先11の角度をより精密に調整することができる。
【0046】
また、上述した実施形態においては、挟持板43a,43bを四角板状に形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、角部分等の、こて先ユニット10の保持に影響を及ぼすおそれのない部分については、切除する等、適宜変更して実施することができる。
さらに、上述した実施形態においては、挟持板43a,43bにくぼみ431が形成されている例を示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、くぼみ431に代えて、挟持板43a,43bを貫通する穴を開けてもよい。このように、くぼみ431に代えて穴を開けることによっても、挟持板43a,43bを閉じた際に、これらの穴にこて先11の突出部111を嵌挿して、こて先11の位置決めや固定を行なうことができる。
【0047】
また、上述した実施形態においては、弾性部材によって形成された屈曲部12と、挟持板43a,43bをそなえた固定部40とをそなえているが、これに限定するものではなく、種々変形して実施することができる。
図8は実施形態の一例としての半田ごて1の変形例を説明するための図、図9はそのロック機構付きヒンジの構成例を模式的に示す断面図である。
【0048】
この図8に示す半田ごて1aは、図8に示すように、上述した半田ごて1の屈曲部12および固定部40に代えて、ロック機構付きヒンジ120をそなえるものであり、その他の部分は半田ごて1と同様に構成されている。
なお、図中、既述の符号と同一の符号は同一もしくは略同一の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0049】
ロック機構付きヒンジ120は、こて先11と軸部13とを連結し、こて先11と軸部13との角度を変更可能に構成されている。具体的には、ロック機構付きヒンジ120は、軸121をそなえ、この軸121において、こて先11の基部11bと軸部13の一端部とが回動自在に枢支されている。これにより、ロック機構付きヒンジ120は、グリップ20把持部とこて先との間において、こて先の角度を変更可能な角度変更部として機能する。
【0050】
また、ロック機構付きヒンジ120は、ケーシング124,円板122及び弾性部123とをそなえている。
ケーシング124は、円筒状の内部空間を有し、この内部空間に軸121,円板122及び弾性部123を格納している。又、このケーシング124には軸部13の一端が固定されている。
【0051】
円板122は、図9に示すように、外周に複数(図9に示す例では16個)の凹凸が形成された歯車状に形成されている。又、この円板122は、その中心において軸121に軸支されるとともに、こて先11の基部11bに接続されている。これにより、こて先11の軸121周りの回動に伴って、円板122は軸121周りに回動する。
弾性部123は、凸形状を有し、ケーシング124内部の円筒面に固定されている。この弾性部123は、例えば、板バネを波型(山型)に曲げることにより成形される。なお、この弾性部123は、山型に曲げられた板バネに限定されるものではなく、凸状に形成したゴム等の弾性部材を用いてもよく、種々変形して実施することができる。
【0052】
この弾性部123は、その頂部が円板122の外周に形成された凹部に突出するように配置され、円板122の凸部に当接し、この円板122の回動を抑止する。
すなわち、ロック機構付きヒンジ120は、こて先11の角度を変更した状態で、このこて先を固定可能な固定部としても機能する。
そして、弾性部123は、円板122の回動に伴い、この円板122の凸部により押圧されて、その高さが低くなるような弾性変形を行なう。ここで、円板122が更に回動する場合には、弾性部123が更に高さを低くするように変形し、係止していた円板122の凸部が弾性部123上が通過することになる。
【0053】
また、弾性部123を押圧していた円板122の凸部が、弾性部123を越えて移動することにより、この凸部による弾性部123への押圧力が消失し、弾性部123の形状は復元する。これにより、弾性部123は、円板122において連続する次の凹部に突出し、円板122の回動を抑止する。
なお、このロック機構付きヒンジ120を構成する、軸121,円板122,弾性部123及びケーシング124も、それぞれ鉄や銅等の耐熱性が高く、且つ、熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0054】
これにより、加熱部21によって軸部13を加熱することにより、軸部13に加えられた熱がロック機構付きヒンジ120を介してこて先11に伝導され、こて先11が加熱される。
上述の如く構成された実施形態の変形例としての半田ごてを使用する際においても、先ず、加熱部21に電力を供給ことにより、加熱部21が軸部13を加熱する。その結果、軸部13に加えられた熱がロック機構付きヒンジ120を介してこて先11に伝導され、こて先11が加熱される。
【0055】
そして、こて先11の温度が、半田の溶融温度よりも高くなった状態で、使用者は、例えば直線状態の半田ごて1のグリップ20を保持して、こて先11を接合対象物や半田に接触させることにより加熱し、半田付けを行なう。
この状態において、ロック機構付きヒンジ120においては、弾性部123が円板122の凹部に突出して、円板122の凸部に当接することにより、円板122ひいてはこて先11を固定する。
【0056】
また、作業対象の部品の配置状況等により、こて先11を接合対象物等に接触させることが困難な状況においては、使用者は、こて先11の角度を変更させて変形状態にする。
半田ごて1aを直線状態から変形状態にするには、使用者は、半田ごて1aのこて先11の先端部11aを、その首振り方向に沿って荷重がかかるように作業台等の耐熱性の高い面に押し付ける。
【0057】
これにより、この面からこて先11に作用する反力が、ロック機構付きヒンジ120において、円板122を回動させる力として働く。この円板122の回動に伴い、弾性部123が、この円板122の凸部により押圧されて弾性変形を行ない、この弾性部123によって係止されていた円板122の凸部が弾性部123上を通過する。これにより、円板122が、その凸部1つ分回転し、これに応じてこて先11の角度が変わる。なお、図9に示す例では、円板122に16個の凸部が形成されているので、22.5゜(360゜÷16)こて先11の角度が変わる。
【0058】
また、弾性部123を押圧していた円板122の凸部が、弾性部123を越えて移動することにより、この凸部による弾性部123への押圧力が消失して、弾性部123の形状は復元する。これにより、弾性部123は、円板122において連続する次の凹部に突出し、円板122の回動を抑止する。
以下、使用者は、こて先11の角度が所望の角度になるまで、上記角度変更の処理を繰り返し行なう。その後、作業者は、このようにこて先11が変形状態で固定された半田ごて500aを操作して、半田付け作業を行なう。
【0059】
このように、変形例としての半田ごて1aによれば、上述した半田ごて1と同様の作用効果を得ることができる他、ロック機構付きヒンジ120が角度変更部及び固定部としての機能を実現することにより、構成を簡素化し、小型化や部品点数を少なくすることができる。すなわち、装置を小型化することにより操作性を向上させることができ、又、部品点数を少なくすることにより、製造コストを低減することができる。
【0060】
さらに、上述した実施形態においては、挟持板43a,43bは引張部材141a,141bにより互いに遠ざかるように引っ張ることにより解放状態にされ、挟持固定装置30により閉状態に挟持しているが、これに限定されるものではない。
例えば、挟持固定装置30を取り除くとともに、引張部材141a,141bに代えて、挟持板43a,43bを互いに近づく方向に押圧する押圧部材をそなえてもよい。ここで押圧部材としては、金属等の耐熱性の高い素材で形成されたバネ等の弾性部材を用いることが望ましい。
【0061】
このように、押圧部材により挟持板43a,43bを押圧することにより、これらの挟持板43a,43bがこて先ユニット10を固定する。そして、使用者が、こて先11の角度を変更する際には、そのこて先11の先端部11aを、その首振り方向に沿って荷重がかかるように作業台等の耐熱性の高い面に押し付ける。
これにより、この面からこて先11に作用する反力が、こて先11に形成された突出部111,111に伝わり、これらの突出部111,111のドーム型の面から挟持板43a,43bを押し開く方向に作用し、こて先11を解放状態にする。この状態において、使用者が、更に、こて先11の先端部11aを押し付けることにより、こて先11の角度が変わり、突出部111,111は、そのとなりのくぼみ431に収納される。これにより、こて先11の角度を変更することができるのである。なお、本変形例においては、突出部111の表面はなめらかに形成されていることが望ましい。
【0062】
このように構成した半田ごてによっても、上述した半田ごて1と同様の作用効果を得ることができる他、構成を簡素化し、小型化や部品点数を少なくすることができる。すなわち、装置を小型化することにより操作性を向上させることができ、又、部品点数を少なくすることにより、製造コストを低減することができる。
(C)付記
以上の実施形態および各変形例に関し、更に以下の付記を開示する。
【0063】
(付記1)
把持部と棒状のこて先とをそなえた半田ごてであって、
該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部をそなえることを特徴とする、半田ごて。
(付記2)
該角度変更部が、
一端を該把持部に接続されるとともに他端を該こて先に接続され、屈曲自在に構成された屈曲部として構成されたことを特徴とする、付記1記載の半田ごて。
(付記3)
該角度変更部により該こて先の角度を変更した状態で、当該こて先を固定可能な固定部をそなえることを特徴とする、付記1又は付記2記載の半田ごて。
(付記4)
該固定部が、該こて先に沿って配設された第1部材と第2部材とで該こて先を挟持することにより、該こて先を固定することを特徴とする、付記3記載の半田ごて。
【0064】
(付記5)
把持部をそなえた半田ごて本体の先端に取り付け可能な半田ごて用こて先であって、
棒状のこて先と、
該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部とをそなえることを特徴とする、半田ごて用こて先。
(付記6)
該角度変更部が、
一端を該把持部に接続されるとともに他端を該こて先に接続され、屈曲自在に構成された屈曲部として構成されたことを特徴とする、付記5記載の半田ごて用こて先。
【0065】
(付記7)
該角度変更部により該こて先の角度を変更した状態で、当該こて先を固定可能な固定部をそなえることを特徴とする、付記5又は付記6記載の半田ごて用こて先。
(付記8)
該固定部が、該こて先に沿って配設された第1部材と第2部材とで該こて先を挟持することにより、該こて先を固定することを特徴とする、付記7記載の半田ごて用こて先。
【符号の説明】
【0066】
1 半田ごて
2 こて先部
10 こて先ユニット
11 こて先
11a 先端部
11b 基部
12 屈曲部(角度変更部)
13 軸部
14 ホルダ
14a,14b,14c,14d 壁面
20 グリップ(把持部)
21 加熱部
22 レール
30 挟持固定装置
31 クリップ
31a,31b,31c,31d 面
32 接続部
33 つまみ
40 固定部
43a 挟持板(第1部材)
43b 挟持板(第2部材)
111 突出部
120 ロック機構付きヒンジ(角度変更部,固定部)
122 円板
123 弾性部
124 ケーシング
141a,141b 引張部材
431 くぼみ
【技術分野】
【0001】
本件は、棒状のこて先をそなえた半田ごてに関する。
【背景技術】
【0002】
半田ごては、半田付けにおいて半田及び接合対象物を加熱するために用いる工具である。半田付けは、接合対象物である金属部品間に溶融した半田を流し込むことにより、これらの金属部品を接合する手法である。なお、接合対象物は、例えば、電子回路基板のパッドや電子部品の足,リード線等である。
図10及び図11はそれぞれ従来の半田ごての構成を模式的に示す図である。半田ごて500aは、例えば、図10に示すように、こて先部501a,加熱部502及びグリップ503をそなえている。
【0003】
加熱部502は、こて先部501aを加熱するものであり、例えば、ニクロム線ヒーターやセラミックヒーター等である。図10に示す例においては、この加熱部502におけるこて先部501aとは反対側の端部はグリップ503に取り付けられている。
グリップ503は、半田ゴテ500aの使用者が半田付けを行なう際に把持する部位であり、例えば、円筒形状を有する。又、図10に示す例においては、このグリップ503内には加熱部502に電力を供給するための電線が貫通している。
【0004】
こて先部501aは半田や接合対象物を加熱するものであり、加熱部502によって加熱される。このこて先部501aは、銅等の熱伝導性の高い金属材料で形成され、加熱部502によって半田の溶融温度以上となるように加熱されて、半田に接触してこの半田を溶融させる。
図10に示すこて先部501aは、例えば、先端部が円錐形の柱状に形成されており、その中心軸が、グリップ503の中心軸と同一直線上になるように取り付けられている。
【0005】
そして、作業者は、こて先部501aを半田の溶融温度以上になった半田ごて500aを操作して、接合対象物や半田を加熱し、半田付けを行なう。
また、接合対象物の形状や配置等によっては、こて先部501aの先端を接合対象物に接触させることができない場合がある。このような場合に対処するために、半田ごて500aの他に、図11に示すような、屈曲した形状のこて先部501bを有する半田ごて500bを用意し、これらの複数の半田ごて500a,500bを適宜使い分けて用いる。
【0006】
また、従来においては、こて先部を交換可能な半田ごても知られている(例えば、下記特許文献1)。そこで、上述の如く半田ごて500a,500bのような複数の半田ごてを用意して使い分ける代わりに、半田ごて500aのこて先部501aを、必要に応じて、こて先部501bに交換して使用することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−328822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の半田ごてにおいて、こて先の形状が異なる複数種類の半田ごてを用意することは、作業スペースやコンセント数,電源容量等を確保する必要があり煩雑であるという課題がある。
また、こて先部を交換する作業は煩雑であるとともに、こて先部の交換を行なうために、こて先部を一旦冷却させる必要があり、作業効率が低下するという課題もある。
【0009】
本件の目的の一つは、このような課題に鑑み創案されたもので、作業効率を向上できるようにすることである。
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の1つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、半田ごては、把持部と棒状のこて先とをそなえた半田ごてであって、該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部をそなえる。
この半田ごて用こて先は、把持部をそなえた半田ごて本体の先端に取り付け可能な半田ごて用こて先であって、棒状のこて先と、該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部とをそなえる。
【発明の効果】
【0011】
開示の半田ごておよび半田ごて用こて先によれば、以下の少なくともいずれか1つの効果ないし利点が得られる。
(1)こて先の角度を変形させることができるので、半田付けを容易に行なうことができ、利便性が高い。
(2)複数の半田ごてを用意する必要がないので、経済的であり、又、利便性が高い
(3)煩雑なこて先の交換を行なう必要がなく、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の一例としての半田ごての構成を模式的に示す側断面図である。
【図2】実施形態の一例としての半田ごての構成を模式的に示す側断面図である。
【図3】実施形態の一例としての半田ごての構成を模式的に示す平断面図である。
【図4】実施形態の一例としての半田ごての構成を模式的に示す平断面図である。
【図5】(a),(b)は実施形態の一例としての半田ごてにおける挟持板の構成を模式的に示す図である。
【図6】実施形態の一例としての半田ごてのこて先ユニットの構成を模式的に示す斜視図である。
【図7】実施形態の一例としての半田ごての変形方法を説明するための図である。
【図8】実施形態の一例としての半田ごての変形例を説明するための図である。
【図9】実施形態の一例としての半田ごてのロック機構付きヒンジの構成例を模式的に示す図である。
【図10】従来の半田ごての構成を模式的に示す図である。
【図11】従来の半田ごての構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)一実施形態の説明
以下、図面を参照して本半田ごてに係る実施の形態を説明する。
図1〜図4は実施形態の一例としての半田ごての構成を模式的に示す図であり、図1,図2はその側断面図、図3,図4はその平断面図である。
実施形態の一例としての半田ごて1は、図1に示すように、こて先部2,グリップ20及び加熱部21をそなえている。
【0014】
グリップ(把持部)20は、半田ごて1の使用者が半田付けを行なう際に把持する部分であり、例えば、円筒形を有する。なお、このグリップ20の形状は円筒形に限定されるものではなく、例えば、円以外の断面形状をそなえてもよく、又、銃把形状等の筒状以外の形状を有してもよい。
加熱部21は、後述するこて先部2のこて先11を加熱するものであり、例えば、ニクロム線ヒーターやセラミックヒーター等である。図1に示す例においては、この加熱部21はグリップ20内に内蔵されている。この加熱部21は、後述するこて先ユニット10の軸部13を加熱し、この軸部13に加えられた熱は、同じく後述する屈曲部12を介してこて先11に伝導され、こて先11が加熱される。
【0015】
なお、この加熱部21は、こて先11を所定の温度に保つための定温制御装置をそなえてもよい。このような定温制御装置は、既知の手法により実現することができ、その詳細な説明は省略する。
また、この加熱部21には、軸部13が着脱可能に接続されるようになっており、例えば、加熱部21に形成されたヒータユニットをそなえた穴に軸部13を抜差し可能に構成されている。
【0016】
こて先部(半田ごて用こて先)2は、図1に示すように、こて先ユニット10と固定部40とをそなえている。
こて先ユニット10は、半田や接合対象物を加熱するものであり、加熱部21によって加熱される。このこて先ユニット10は、図1に示すように、こて先11,屈曲部12及び軸部13をそなえている。
【0017】
こて先11は、加熱部21によって半田の溶融温度以上となるように加熱されて、半田に接触してこの半田を溶融させる。このこて先11は、例えば円柱の如き棒状に形成されるとともに、図1に示す例においては、その先端部11aは円錐状に形成されている。又、こて先11の基部11bは屈曲部12の一端に固着されている。
また、こて先11における先端部11aと基部11bとの間においては、図3,図4に示すように、一対の突出部111,111が形成されている。これらの突出部111,111は、それぞれドーム形状をそなえており、こて先11における基部11bから等距離の位置において、互いに反対の方向に突出するように形成されている。
【0018】
軸部13は、こて先11の基部とほぼ同じ断面形状を有する軸状の部材であって、その一端部(図1の右側)には屈曲部12が固定されており、又、その他端部は加熱部21に接続される。この軸部13は、グリップ20内、グリップ20の中心軸に沿って挿入され、グリップ20内部で加熱部21に接続される。
そして、軸部13の他端部は加熱部21によって加熱され、この加熱部21によって加えられた熱を屈曲部12を介してこて先11に伝導する。
【0019】
屈曲部12は、バネ等の弾性部材であり、その一端側(図1の右側)にこて先11の基部11bが、又、その他端側(図1の左側)に軸部13が、それぞれ固着されている。すなわち、屈曲部12はこて先11と軸部13とを連結している。そして、この屈曲部12は、こて先11と軸部13との角度を変更可能な角度変更部として機能する。
具体的には、屈曲部12によりこて先11と軸部13とを連結した状態において、図1に示すように、こて先11の先端部11aを首振り方向A,Bのいずれかに沿って移動させることにより、屈曲部12はこて先11の姿勢に追従して屈曲(変形)する。すなわち、屈曲部12は、グリップ20とこて先11との間において、こて先の角度を変更可能な角度変更部として機能する。なお、屈曲部12は、使用者がこて先11の角度を容易に移動させられる程度に小さい弾性力を有することが望ましい。
【0020】
以下、屈曲部12が変形していない状態、すなわち、軸部13とこて先11とが同一直線状に並んだ状態を直線状態(第1の状態)という場合がある。又、屈曲部12が変形していない状態、すなわち、軸部13とこて先11とが同一直線状に並んでいない状態を変形状態(第2の状態)という場合がある。なお、本実施形態においては、直線状態において、こて先11がグリップ20の中心軸と平行になるように取り付けられている。
【0021】
また、上述したこて先11,屈曲部12及び軸部13は、それぞれ鉄や銅等の耐熱性が高く、且つ、熱伝導性の高い材料で形成されている。
固定部40は、こて先11を固定するものであって、図1〜4に示すように、挟持板43a,43b及び挟持固定装置30をそなえている。
図5(a),(b)は実施形態の一例としての半田ごて1における挟持板43a,43bの構成を模式的に示す図であり、図5(a)はその斜視図、図5(b)はその平断面図である。又、図6は実施形態の一例としての半田ごて1のこて先ユニット10の構成を模式的に示す斜視図である。
【0022】
挟持板(第1部材)43a及び挟持板(第2部材)43bは、それぞれ板状の部材であって、加熱部21によって加熱されたこて先ユニット10に接触しても溶融や変形が生じない耐熱性の高い材質(例えば、鉄等の金属材料)で形成されている。そして、図3,図4に示すように、これらの挟持板43aと挟持板43bとを平行に配設した状態において、これらの挟持板43aと挟持板43bとの間には、こて先ユニット10が配置される。すなわち、これらの挟持板43aと挟持板43bとにより、こて先ユニット10を挟持する。
【0023】
また、これらの挟持板43a,43bは、図6に示すように、角筒状のホルダ14内に、このホルダ14において対向する2つの壁面14c,14dと平行に格納される。又、挟持板43a,43bは、ホルダ14において対向する2つの壁面14a,14bに沿って、互いに近づく方向および遠ざかる方向に摺動可能に配設されている。
具体的には、図3,4に示すように、挟持板43aは、ホルダ14における、壁面14a,14bの双方に直行する壁面14cに、1以上(図3,図4に示す例では2つ)の引張部材141aを介して取り付けられている。同様に、挟持板43bは、ホルダ14における、壁面14cに対向する壁面14dに、1以上(図3,図4に示す例では2つ)の引張部材141b,141bを介して取り付けられている。
【0024】
そして、これらの引張部材141a,141bは、金属等の耐熱性の高い素材で形成されたバネ等の弾性部材であって、それぞれ挟持板43a,43bを壁面14c,14d側に引き付けている。これにより、引張部材141a,141bは、挟持板43a,43bを互いに遠ざける方向、すなわち、挟持板43a,43bの間隙を開く方向に移動させる。
【0025】
また、挟持板43a,43bは、それぞれ、ホルダ14内において図示しないレール等に沿って案内され、互いに平行もしくはほぼ平行に移動するよう構成されている。
なお、以下、引張部材を示す符号としては、複数の引張部材のうち1つを特定する必要があるときには符号141a,141bを用いるが、任意の引張部材を指すときには符号141を用いる。
【0026】
また、挟持板43a,43bにおけるこて先ユニット10に接触する側の面には、それぞれ複数(図1に示す例では7個)のくぼみ431が弧状に並べて形成されている。そして、挟持板43a,43bの間にこて先11を配置した状態で、これらの挟持板43a,43bを互いに近づけることにより、これらのくぼみ431にこて先11から突出する突出部111が嵌挿される。
【0027】
また、挟持板43a,43bのそれぞれにおいて、複数のくぼみ431は、こて先11に形成されたその屈曲部12における屈曲中心に相当する位置を中心とする円弧に沿って配置されている。
これらのくぼみ431は、こて先11の突出部111の外形とほぼ同じ形状をそなえており、これにより、くぼみ431内に突出部111を収納して、こて先11の移動を抑止する可能に構成されている。
【0028】
これにより、こて先ユニット10のこて先1の角度を屈曲部12を屈曲させながら変更させ、その変形状態において、挟持板43a,43bに形成されたくぼみ431のいずれかに、こて先11の突出部111,111を嵌挿することができる。例えば、図2に示す例においては、上から2つ目のくぼみ431,431に、こて先11の突出部111,111が嵌挿されている状態を示している。
【0029】
すなわち、くぼみ431は突出部111を収納することによりこて先11の位置決めや固定を行なう。
挟持固定装置30は、挟持板43a,43bを、これらの挟持板43a,43bでこて先11を挟持した状態で固定するものである。この挟持固定装置30は、図1〜図4に示すように、クリップ31,つまみ33および接続部32をそなえている。
【0030】
クリップ31は、互いに平行する一対の面31a,31aと、これらの面31a,31aと直行し、これらの面31a,31aにおける対向する一辺どうしを連結する面31cとをそなえ、これらの面31a,31a,31cにより、ほぼコの字形に形成されている。又、面31a,31aにおける面31cとは反対側の各辺には、それぞれ、面31aに接続された側から間隔が漸増するように傾斜を付けて(ハの字型に)面31b,31bが形成されている。
【0031】
また、クリップ31における対向する面31a,31aの間隔は、軸部13の軸径に挟持板43a,43bの各板厚を加えた寸法と同一もしくはほぼ同一に形成されている。
つまみ33は、接続部32を介してクリップ31に接続されている。接続部32はL字型の柱状部材として形成され、その一端がつまみ33に、又、その他端がクリップ31の面31cに接続されている。又、接続部32は、グリップ20の内部に配設され、そのクリップ31が接続された側の反対側の端部が、グリップ20において挟持板43a,43bと平行に形成されたレール22を貫通して、グリップ20の外部に位置する。そして、このグリップ20の外部において接続部32につまみ33が固定されている。
【0032】
これにより、つまみ33,接続部32およびクリップ31が一体となって、レール22に沿って移動可能に構成されている。すなわち、つまみ33を、レール22に沿って、こて先11側(図1〜図4の右側:以下、こて先側)からグリップ20の尾部側(図1〜図4の左側:以下、尾部側)にかけて往復して摺動させることができる。これに従い、クリップ31も、こて先側から尾部側にかけて往復して摺動可能に構成されている。
【0033】
なお、図3に示すように、つまみ33がレール22における最も尾部側に位置する状態においては、挟持板43a,43bにおける尾部側の各端部は、クリップ31の面31b,31bの間に位置するようになっている。
図3に示すように、つまみ33がレール22における最も尾部側に位置する状態においては、挟持板43a,43bはクリップ31の面31a,31a間の空間から離脱する。
【0034】
この状態においては、挟持板43a,43bは引張部材141a,141bにより互いに遠ざかるように引っ張られ、挟持板43a,43bはこて先ユニット10から引き離される。すなわち、挟持板43a,43b間において、こて先ユニット10は解放状態となる。
この解放状態においては、こて先11の突出部111は挟持板43a,43bのくぼみ431から離脱する。これにより、こて先11は、首振り方向A,Bに沿って任意にその角度を変更することができる。
【0035】
一方、図4に示すように、つまみ33がレール22における最もこて先側に位置する状態においては、挟持板43a,43bはクリップ31の面31a,31a間に、挟持板43a,43bがこて先ユニット10に密接した状態(閉状態)で挟持される。すなわち、挟持板43a,43b間において、こて先ユニット10は固定状態となる。又、この際、こて先11の突出部111,111は、挟持板43a,43bのいずれかのくぼみ431に挿入されるように位置決めする。
【0036】
このように、固定部40は、屈曲部12によりこて先11の角度を変更した状態で、このこて先11を固定可能に構成されている。
また、半田ごて1においては、グリップ20は、挟持固定装置30よりも尾部側(図1〜図4の左側)において分割可能に構成されており、これにより、グリップ20において加熱部21が配置された側とこて先部2とに分割可能に構成されている。これにより、こて先部2を、他のこて先部2と交換可能に構成されている。
【0037】
上述の如く構成された実施形態の一例としての半田ごてを使用する際には、先ず、加熱部21に電力を供給する。これにより、加熱部21が軸部13を加熱し、軸部13に加えられた熱が屈曲部12を介してこて先11に伝導され、こて先11が加熱される。
こて先11の温度が、半田の溶融温度よりも高くなった状態で、使用者は、例えば直線状態の半田ごて1のグリップ20を保持して、こて先11を接合対象物や半田に接触させることにより加熱し、半田付けを行なう。
【0038】
なお、この半田付けは、つまみ33がレール22における最もこて先側に位置する状態において行なう。すなわち、挟持板43a,43b間において、こて先ユニット10が固定された状態で行なう。
そして、作業対象の部品の配置状況等により、こて先11を接合対象物等に接触させることが困難な状況においては、使用者は、こて先11の角度を変更させて変形状態にする。
【0039】
半田ごて1を直線状態から変形状態にするには、使用者は、先ず、つまみ33をレール22における最も尾部側に移動させる。これにより、クリップ31が尾部側に移動され、クリップ31に挟持されていた挟持板43a,43bが解放される。又、これに伴い、挟持板43a,43bが引張部材141a,141bにより互いに遠ざかるように引っ張られ、挟持板43a,43b間において、こて先ユニット10が解放状態となる。
【0040】
図7は実施形態の一例としての半田ごて1の変形方法を説明するための図である。使用者は、この図7に示すように、こて先ユニット10が解放状態となった半田ごて1のこて先11の先端部11aを、その首振り方向に沿って荷重がかかるように作業台等の耐熱性の高い面200に押し付ける。
これにより、こて先11に面200から作用する力が作用し、こて先ユニット10が屈曲部12で屈曲する。ここで、使用者は、こて先11が所望の角度になるまで屈曲部12を変形させ、こて先11の突出部111,111が挟持板43a,43bのいずれかのくぼみ431に挿入するように位置決めする。その後、使用者はつまみ33をレール22に沿ってこて先側へ移動させる。
【0041】
これに伴い、クリップ31がこて先側に移動する。又、この際、挟持板43a,43bにおける尾部側の各端部が、クリップ31の面31b,31bに案内され、挟持板43a,43bが互いに近づくように間隙を移動する。
さらに、つまみ33をレール22に沿ってこて先側へ移動させると、図4に示すように、挟持板43a,43bにおける尾部側の各端部は、クリップ31の面31a,31a内に格納され、挟持板43a,43bはこて先ユニット10を挟持した状態で固定される。
【0042】
作業者は、このようにこて先11が変形状態で固定された半田ごて1を操作して、半田付け作業を行なう。
なお、半田ごて1の変形状態から直線状態へ戻す場合にも、上述したものと同様の操作を行なう。
このように、実施形態の一例としての半田ごて1によれば、こて先11の角度を変形させることができるので、直線状態のこて先11では作業し難い箇所に対しても半田付けを容易に行なうことができる。
【0043】
特に、この際、こて先11の温度が高い状態でこて先11の方向を変更することができる。すなわち、半田ごての電源を落とす必要がなく作業効率が低下することがない。
また、交換用の半田ごてやこて先を用意する必要がなくコストを削減できる。又、複数の半田ごてを用意する必要がないので、コンセント数や電源容量に配慮する必要がなく利便性が高い。又、煩雑なこて先11の交換を行なう必要もなく生産性を向上させることができる。
【0044】
また、つまみ33をスライドさせるだけで簡単に挟持板43a,43bの改変を行なうことができ、こて先11の角度変更を容易に行なうことができる。
(B)変形例の説明
そして、開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0045】
例えば、上述した実施形態においては、挟持板43a,43bに7つのくぼみ431が形成されている例を示しているが、これに限定されるものではなく、くぼみ431の位置や数は種々変形して実施することができる。
ここで、くぼみ431の数を多くして、屈曲部12の屈曲中心に相当する位置を中心とする円弧に沿って狭い間隔で配置することにより、こて先11の角度をより精密に調整することができる。
【0046】
また、上述した実施形態においては、挟持板43a,43bを四角板状に形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、角部分等の、こて先ユニット10の保持に影響を及ぼすおそれのない部分については、切除する等、適宜変更して実施することができる。
さらに、上述した実施形態においては、挟持板43a,43bにくぼみ431が形成されている例を示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、くぼみ431に代えて、挟持板43a,43bを貫通する穴を開けてもよい。このように、くぼみ431に代えて穴を開けることによっても、挟持板43a,43bを閉じた際に、これらの穴にこて先11の突出部111を嵌挿して、こて先11の位置決めや固定を行なうことができる。
【0047】
また、上述した実施形態においては、弾性部材によって形成された屈曲部12と、挟持板43a,43bをそなえた固定部40とをそなえているが、これに限定するものではなく、種々変形して実施することができる。
図8は実施形態の一例としての半田ごて1の変形例を説明するための図、図9はそのロック機構付きヒンジの構成例を模式的に示す断面図である。
【0048】
この図8に示す半田ごて1aは、図8に示すように、上述した半田ごて1の屈曲部12および固定部40に代えて、ロック機構付きヒンジ120をそなえるものであり、その他の部分は半田ごて1と同様に構成されている。
なお、図中、既述の符号と同一の符号は同一もしくは略同一の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0049】
ロック機構付きヒンジ120は、こて先11と軸部13とを連結し、こて先11と軸部13との角度を変更可能に構成されている。具体的には、ロック機構付きヒンジ120は、軸121をそなえ、この軸121において、こて先11の基部11bと軸部13の一端部とが回動自在に枢支されている。これにより、ロック機構付きヒンジ120は、グリップ20把持部とこて先との間において、こて先の角度を変更可能な角度変更部として機能する。
【0050】
また、ロック機構付きヒンジ120は、ケーシング124,円板122及び弾性部123とをそなえている。
ケーシング124は、円筒状の内部空間を有し、この内部空間に軸121,円板122及び弾性部123を格納している。又、このケーシング124には軸部13の一端が固定されている。
【0051】
円板122は、図9に示すように、外周に複数(図9に示す例では16個)の凹凸が形成された歯車状に形成されている。又、この円板122は、その中心において軸121に軸支されるとともに、こて先11の基部11bに接続されている。これにより、こて先11の軸121周りの回動に伴って、円板122は軸121周りに回動する。
弾性部123は、凸形状を有し、ケーシング124内部の円筒面に固定されている。この弾性部123は、例えば、板バネを波型(山型)に曲げることにより成形される。なお、この弾性部123は、山型に曲げられた板バネに限定されるものではなく、凸状に形成したゴム等の弾性部材を用いてもよく、種々変形して実施することができる。
【0052】
この弾性部123は、その頂部が円板122の外周に形成された凹部に突出するように配置され、円板122の凸部に当接し、この円板122の回動を抑止する。
すなわち、ロック機構付きヒンジ120は、こて先11の角度を変更した状態で、このこて先を固定可能な固定部としても機能する。
そして、弾性部123は、円板122の回動に伴い、この円板122の凸部により押圧されて、その高さが低くなるような弾性変形を行なう。ここで、円板122が更に回動する場合には、弾性部123が更に高さを低くするように変形し、係止していた円板122の凸部が弾性部123上が通過することになる。
【0053】
また、弾性部123を押圧していた円板122の凸部が、弾性部123を越えて移動することにより、この凸部による弾性部123への押圧力が消失し、弾性部123の形状は復元する。これにより、弾性部123は、円板122において連続する次の凹部に突出し、円板122の回動を抑止する。
なお、このロック機構付きヒンジ120を構成する、軸121,円板122,弾性部123及びケーシング124も、それぞれ鉄や銅等の耐熱性が高く、且つ、熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0054】
これにより、加熱部21によって軸部13を加熱することにより、軸部13に加えられた熱がロック機構付きヒンジ120を介してこて先11に伝導され、こて先11が加熱される。
上述の如く構成された実施形態の変形例としての半田ごてを使用する際においても、先ず、加熱部21に電力を供給ことにより、加熱部21が軸部13を加熱する。その結果、軸部13に加えられた熱がロック機構付きヒンジ120を介してこて先11に伝導され、こて先11が加熱される。
【0055】
そして、こて先11の温度が、半田の溶融温度よりも高くなった状態で、使用者は、例えば直線状態の半田ごて1のグリップ20を保持して、こて先11を接合対象物や半田に接触させることにより加熱し、半田付けを行なう。
この状態において、ロック機構付きヒンジ120においては、弾性部123が円板122の凹部に突出して、円板122の凸部に当接することにより、円板122ひいてはこて先11を固定する。
【0056】
また、作業対象の部品の配置状況等により、こて先11を接合対象物等に接触させることが困難な状況においては、使用者は、こて先11の角度を変更させて変形状態にする。
半田ごて1aを直線状態から変形状態にするには、使用者は、半田ごて1aのこて先11の先端部11aを、その首振り方向に沿って荷重がかかるように作業台等の耐熱性の高い面に押し付ける。
【0057】
これにより、この面からこて先11に作用する反力が、ロック機構付きヒンジ120において、円板122を回動させる力として働く。この円板122の回動に伴い、弾性部123が、この円板122の凸部により押圧されて弾性変形を行ない、この弾性部123によって係止されていた円板122の凸部が弾性部123上を通過する。これにより、円板122が、その凸部1つ分回転し、これに応じてこて先11の角度が変わる。なお、図9に示す例では、円板122に16個の凸部が形成されているので、22.5゜(360゜÷16)こて先11の角度が変わる。
【0058】
また、弾性部123を押圧していた円板122の凸部が、弾性部123を越えて移動することにより、この凸部による弾性部123への押圧力が消失して、弾性部123の形状は復元する。これにより、弾性部123は、円板122において連続する次の凹部に突出し、円板122の回動を抑止する。
以下、使用者は、こて先11の角度が所望の角度になるまで、上記角度変更の処理を繰り返し行なう。その後、作業者は、このようにこて先11が変形状態で固定された半田ごて500aを操作して、半田付け作業を行なう。
【0059】
このように、変形例としての半田ごて1aによれば、上述した半田ごて1と同様の作用効果を得ることができる他、ロック機構付きヒンジ120が角度変更部及び固定部としての機能を実現することにより、構成を簡素化し、小型化や部品点数を少なくすることができる。すなわち、装置を小型化することにより操作性を向上させることができ、又、部品点数を少なくすることにより、製造コストを低減することができる。
【0060】
さらに、上述した実施形態においては、挟持板43a,43bは引張部材141a,141bにより互いに遠ざかるように引っ張ることにより解放状態にされ、挟持固定装置30により閉状態に挟持しているが、これに限定されるものではない。
例えば、挟持固定装置30を取り除くとともに、引張部材141a,141bに代えて、挟持板43a,43bを互いに近づく方向に押圧する押圧部材をそなえてもよい。ここで押圧部材としては、金属等の耐熱性の高い素材で形成されたバネ等の弾性部材を用いることが望ましい。
【0061】
このように、押圧部材により挟持板43a,43bを押圧することにより、これらの挟持板43a,43bがこて先ユニット10を固定する。そして、使用者が、こて先11の角度を変更する際には、そのこて先11の先端部11aを、その首振り方向に沿って荷重がかかるように作業台等の耐熱性の高い面に押し付ける。
これにより、この面からこて先11に作用する反力が、こて先11に形成された突出部111,111に伝わり、これらの突出部111,111のドーム型の面から挟持板43a,43bを押し開く方向に作用し、こて先11を解放状態にする。この状態において、使用者が、更に、こて先11の先端部11aを押し付けることにより、こて先11の角度が変わり、突出部111,111は、そのとなりのくぼみ431に収納される。これにより、こて先11の角度を変更することができるのである。なお、本変形例においては、突出部111の表面はなめらかに形成されていることが望ましい。
【0062】
このように構成した半田ごてによっても、上述した半田ごて1と同様の作用効果を得ることができる他、構成を簡素化し、小型化や部品点数を少なくすることができる。すなわち、装置を小型化することにより操作性を向上させることができ、又、部品点数を少なくすることにより、製造コストを低減することができる。
(C)付記
以上の実施形態および各変形例に関し、更に以下の付記を開示する。
【0063】
(付記1)
把持部と棒状のこて先とをそなえた半田ごてであって、
該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部をそなえることを特徴とする、半田ごて。
(付記2)
該角度変更部が、
一端を該把持部に接続されるとともに他端を該こて先に接続され、屈曲自在に構成された屈曲部として構成されたことを特徴とする、付記1記載の半田ごて。
(付記3)
該角度変更部により該こて先の角度を変更した状態で、当該こて先を固定可能な固定部をそなえることを特徴とする、付記1又は付記2記載の半田ごて。
(付記4)
該固定部が、該こて先に沿って配設された第1部材と第2部材とで該こて先を挟持することにより、該こて先を固定することを特徴とする、付記3記載の半田ごて。
【0064】
(付記5)
把持部をそなえた半田ごて本体の先端に取り付け可能な半田ごて用こて先であって、
棒状のこて先と、
該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部とをそなえることを特徴とする、半田ごて用こて先。
(付記6)
該角度変更部が、
一端を該把持部に接続されるとともに他端を該こて先に接続され、屈曲自在に構成された屈曲部として構成されたことを特徴とする、付記5記載の半田ごて用こて先。
【0065】
(付記7)
該角度変更部により該こて先の角度を変更した状態で、当該こて先を固定可能な固定部をそなえることを特徴とする、付記5又は付記6記載の半田ごて用こて先。
(付記8)
該固定部が、該こて先に沿って配設された第1部材と第2部材とで該こて先を挟持することにより、該こて先を固定することを特徴とする、付記7記載の半田ごて用こて先。
【符号の説明】
【0066】
1 半田ごて
2 こて先部
10 こて先ユニット
11 こて先
11a 先端部
11b 基部
12 屈曲部(角度変更部)
13 軸部
14 ホルダ
14a,14b,14c,14d 壁面
20 グリップ(把持部)
21 加熱部
22 レール
30 挟持固定装置
31 クリップ
31a,31b,31c,31d 面
32 接続部
33 つまみ
40 固定部
43a 挟持板(第1部材)
43b 挟持板(第2部材)
111 突出部
120 ロック機構付きヒンジ(角度変更部,固定部)
122 円板
123 弾性部
124 ケーシング
141a,141b 引張部材
431 くぼみ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と棒状のこて先とをそなえた半田ごてであって、
該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部をそなえることを特徴とする、半田ごて。
【請求項2】
該角度変更部が、
一端を該把持部に接続されるとともに他端を該こて先に接続され、屈曲自在に構成された屈曲部として構成されたことを特徴とする、請求項1記載の半田ごて。
【請求項3】
該角度変更部により該こて先の角度を変更した状態で、当該こて先を固定可能な固定部をそなえることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の半田ごて。
【請求項4】
把持部をそなえた半田ごて本体の先端に取り付け可能な半田ごて用こて先であって、
棒状のこて先と、
該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部とをそなえることを特徴とする、半田ごて用こて先。
【請求項1】
把持部と棒状のこて先とをそなえた半田ごてであって、
該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部をそなえることを特徴とする、半田ごて。
【請求項2】
該角度変更部が、
一端を該把持部に接続されるとともに他端を該こて先に接続され、屈曲自在に構成された屈曲部として構成されたことを特徴とする、請求項1記載の半田ごて。
【請求項3】
該角度変更部により該こて先の角度を変更した状態で、当該こて先を固定可能な固定部をそなえることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の半田ごて。
【請求項4】
把持部をそなえた半田ごて本体の先端に取り付け可能な半田ごて用こて先であって、
棒状のこて先と、
該把持部と該こて先との間において、該こて先の角度を変更可能な角度変更部とをそなえることを特徴とする、半田ごて用こて先。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−156552(P2011−156552A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19031(P2010−19031)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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