説明

印刷物の製造方法

【課題】透かし情報を埋め込む領域が限定されることがなく、かつ、複写した場合に透かし情報を認識不可能とする。
【解決手段】紙基材103上に、ノンカーボンブラックインク、シアンインク、マゼンダインク及びイエローインクを用いて、黒色印字情報101a、青色印字情報101b、赤色印字情報101c及び黄色印字情報101dからなる表示情報101を印刷し、この表示情報101が印刷された紙基材103上に、カーボンブラックインクを用いてドットパターンからなる透かし情報102を印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透かし情報が埋め込まれた印刷物を製造する印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、印刷物は情報を伝達するために製造、使用されており、伝達すべき情報が紙等の媒体に印刷され、視認されることにより伝達されることになる。すなわち、印刷物には伝達したい情報が視認可能に印刷されている必要があり、視認不可能あるいは視認困難に印刷された情報は伝達されにくい。
【0003】
近年、このような性質を利用して、秘匿とする情報を透かし情報として印刷物に埋め込む様々な方法が考えられており、実現されている。このような印刷物としては、印刷される情報を構成する線幅を変えたり、ドットの配置や大きさを変えたりすることによって透かし情報を表現し、これらの変化を検出することで透かし情報を認識させるものが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。また、地紋や背景に透かし情報を視認困難に埋め込み、読み取られた情報から透かし情報を抽出して認識させるものが考えられている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特許第2958396号公報
【特許文献2】特開2003−143391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように、印刷される情報の線幅やドットを用いて透かし情報を表現したり、地紋や背景に透かし情報を埋め込んだりするものにおいては、透かし情報を認識するためには、印刷された透かし情報とその印刷面との間にて透かし情報を認識可能な程度のコントラストが必要となるため、印刷物において透かし情報を埋め込み可能な領域が限定されてしまうという問題点がある。また、線幅の変化の度合いやドットの大きさによっては、透かし情報を保持した状態で複写することができてしまうという問題点がある。
【0005】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、透かし情報を埋め込む領域が限定されることがなく、かつ、複写した場合に透かし情報を認識不可能とすることができる印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、
表示情報が印刷されるとともに透かし情報が埋め込まれた印刷物を製造する印刷物の製造方法であって、
カーボンが含有されていないインクを用いて媒体上に黒色を具備する前記表示情報を印刷する工程と、
前記表示情報が印刷された媒体上に、カーボンが含有された黒色インクを用いて前記透かし情報を構成するドットパターンを印刷する工程とを有する。
【0007】
上記のように構成された本発明においては、まず、カーボンが含有されていないインクを用いて媒体上に黒色を具備する表示情報が印刷され、その後、表示情報が印刷された媒体上に、カーボンが含有された黒色インクを用いて透かし情報を構成するドットパターンが印刷される。このように製造された印刷物においては、表示情報が印刷された媒体上に印刷された透かし情報が、表示情報上に印刷されたドットパターンによって構成されているため、視認が困難な状態となっている。そして、カーボンが含有されていないインクは赤外線域波長を吸収し、カーボンが含有されたインクは赤外線域波長において反射、発色するため、赤外線を照射することにより、ドットパターンによって構成される透かし情報が認識されることになる。
【0008】
また、透かし情報を含んで構成される表示情報が印刷されてなる印刷物の製造方法であって、
前記表示情報を構成する情報のうち前記透かし情報以外の情報を、カーボンが含有されていないインクを用いて媒体上に黒色にて印刷する工程と、
カーボンが含有された黒色インクを用いて前記媒体上に前記透かし情報を印刷する工程とを有する印刷物の製造方法。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、まず、表示情報を構成する情報のうち透かし情報以外の情報が、カーボンが含有されていないインクを用いて媒体上に黒色にて印刷され、その後、カーボンが含有された黒色インクを用いて媒体上に透かし情報が印刷される。このように製造された印刷物においては、透かし情報を含んで構成される表示情報が視認可能となっているものの、表示情報が全て黒色にて印刷されているため、この表示情報に含まれる透かし情報は表示情報を構成する他の情報に対して識別不可能となっている。そして、カーボンが含有されていないインクは赤外線域波長を吸収し、カーボンが含有されたインクは赤外線域波長において反射、発色するため、赤外線を照射することにより、表示情報を構成する情報のうち透かし情報が認識されることになる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明においては、カーボンが含有されていないインクを用いて媒体上に印刷された表示情報上に、カーボンが含有された黒色インクによってドットパターンが印刷されて透かし情報が構成されたり、透かし情報を含んで構成される表示情報を構成する情報のうち透かし情報以外の情報が、カーボンが含有されていないインクを用いて媒体上に黒色にて印刷され、カーボンが含有された黒色インクを用いて媒体上に透かし情報が印刷されたりするため、透かし情報を埋め込む領域が限定されることがなく、かつ、複写した場合に透かし情報を認識不可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の印刷物の製造方法によって製造される印刷物の第1の実施の形態を示す図である。
【0013】
本形態における印刷物は図1に示すように、媒体となる紙基材103上に、表示情報101が印刷されるとともに、ドットパターンからなる透かし情報102が印刷されて構成されている。表示情報101は、カーボンが含有されていないノンカーボンブラックインクを用いて印刷された黒色印字情報101aと、シアンインクを用いて印刷された青色印字情報101bと、マゼンダインクを用いて印刷された赤色印字情報101cと、イエローインクを用いて印刷された黄色印字情報101dとが組み合わされて表現されている。透かし情報102は、表示情報101が印刷された紙基材103上に、カーボンが含有されたカーボンブラックインクを用いて印刷された微細なドットパターンから構成されている。
【0014】
図2は、図1に示した印刷物100に印刷された透かし情報102の構成を示す図である。
【0015】
図2に示すように、図1に示した印刷物100に印刷された透かし情報102は、所定の間隔で升目状に配列された基準ドット102aと、基準ドット102aによって形成される升目内に配置された情報ドット102bとから構成されている。基準ドット102a及び情報ドット102bは、4〜32μm程度のドットサイズを有する微細なものであり、付与された印刷情報に従って印刷されることになるが、透かし情報102が読み取られる際、基準ドット102aと情報ドット102bとが読み取られ、情報ドット102bの基準ドット102aに対する相対位置に応じて透かし情報102が認識されることになる。なお、ドットサイズについては、複数のドットを集合させて印字することにより大きくすることもできる。
【0016】
以下に、上記のように構成された印刷物100の製造方法について説明する。
【0017】
図3は、図1に示した印刷物100を製造するためのプリンタの一構成例を示す図である。
【0018】
本形態におけるプリンタは図3に示すように、インクタンク(不図示)に収容されたインクを紙基材103に吐出することにより画像を形成する、黒色印字部12a、青色印字部12b、赤色印字部12c、黄色印字部12d及び透かし情報印字部12eと、印刷情報13a,13bに基づいて、黒色印字部12a、青色印字部12b、赤色印字部12c、黄色印字部12d及び透かし情報印字部12eを制御する制御部11とが設けられている。黒色印字部12aは、ノンカーボンブラックインクが収容されたインクタンクに連通してノンカーボンブラックインクを吐出し、また、青色印字部12bは、シアンインクが収容されたインクタンクに連通してシアンインクを吐出し、また、赤色印字部12cは、マゼンダインクが収容されたインクタンクに連通してマゼンダインクを吐出し、また、黄色印字部12dは、イエローインクが収容されたインクタンクに連通してイエローインクを吐出し、また、透かし情報印字部12eは、カーボンブラックインクが収容されたインクタンクに連通してカーボンブラックインクを吐出する。なお、黒色印字部12aに連通したインクタンクに収容されたブラックインクは、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクを配合して作製することも考えられる。
【0019】
制御部11は、印刷物100に印刷される表示情報101の印刷情報13aに従って、黒色印字部12a、青色印字部12b、赤色印字部12c及び黄色印字部12dの吐出動作を制御し、また、印刷物100に印刷される透かし情報102の印刷情報13bに従って透かし情報印字部12eの吐出動作を制御する。
【0020】
上記のように構成されたプリンタ10を用いて図1に示した印刷物100を製造する場合について説明する。
【0021】
図4は、図3に示したプリンタ10を用いて図1に示した印刷物100を製造する方法を説明するための図である。
【0022】
まず、制御部11において、印刷情報13aに従って、紙基材103に印刷する表示情報101のうち黒色を付与すべき情報が認識され、黒色印字部12aに対して、その情報に基づく画像パターンでインクを吐出するような制御が行われ、黒色印字部12aからノンカーボンブラックインクが吐出され、それにより、紙基材103上に黒色印字情報101aが印刷される(図4(a))。
【0023】
次に、制御部11において、印刷情報13aに従って、紙基材103に印刷する表示情報101のうち青色を付与すべき情報が認識され、青色印字部12bに対して、その情報に基づく画像パターンでインクを吐出するような制御が行われ、青色印字部12bからシアンインクが吐出され、それにより、紙基材103上に青色印字情報101bが印刷される(図4(b))。
【0024】
次に、制御部11において、印刷情報13aに従って、紙基材103に印刷する表示情報101のうち赤色を付与すべき情報が認識され、赤色印字部12cに対して、その情報に基づく画像パターンでインクを吐出するような制御が行われ、赤色印字部12cからマゼンダインクが吐出され、それにより、紙基材103上に赤色印字情報101cが印刷される(図4(c))。
【0025】
次に、制御部11において、印刷情報13aに従って、紙基材103に印刷する表示情報101のうち黄色を付与すべき情報が認識され、黄色印字部12dに対して、その情報に基づく画像パターンでインクを吐出するような制御が行われ、黄色印字部12dからイエローインクが吐出され、それにより、紙基材103上に黄色印字情報101dが印刷される(図4(d))。
【0026】
ここで、一般的に、カラー印刷においては、青、赤、黄色の3原色と、黒及び白を用いれば全ての色を表現することができる。そのため、上述したように、黒色印字情報101a、青色印字情報101b、赤色印字情報101c及び黄色印字情報101dを紙基材103上に順次印刷して組み合わせることにより、カラーの表示情報101が紙基材103上に印刷されることになる。すなわち、青色印字情報101b、赤色印字情報101c及び黄色印字情報101dは、紙基材103上に単独で印刷される場合はそれぞれの色が表現されることになるが、互いに重ね合わされることにより、その組み合わせに応じて様々な色を表現することができる。また、紙基材103上に黒色にて表現される情報は、実際には、黒色印字部12aから吐出されるノンカーボンブラックインクのみで構成されるのではなく、黒色印字部12a、青色印字部12b、赤色印字部12c及び黄色印字部12dからそれぞれ吐出される、ノンカーボンブラックインク、シアンインク、マゼンダインク及びイエローインクが全て重ね合わされることによって表現される場合もある。この際、青色印字部12b、赤色印字部12c及び黄色印字部12dからそれぞれ吐出される、シアンインク、マゼンダインク及びイエローインクを重ね合わせることにより理論上では黒色が表現されることになるが、黒色印字部12aから吐出されるノンカーボンブラックインクを重ね合わせた方が好ましい。
【0027】
その後、制御部11において、印刷情報13bに従って、紙基材103に印刷する透かし情報102が認識され、透かし情報印字部12eに対して、透かし情報102を構成するドットパターンでインクを吐出するような制御が行われ、透かし情報印字部12eからカーボンブラックインクが吐出され、それにより、表示情報101が印刷された紙基材103上に透かし情報102が印刷される(図4(e))。このように印刷された透かし情報102は、紙基材103上に印字された、黒色印字情報101a、青色印字情報101b、赤色印字情報101c及び黄色印字情報101dからなる表示情報101上に印字されており、また、上述したように4〜32μm程度のドットサイズといった微細なドットパターンから構成されているため、視認が困難な状態となっている。なお、本形態においては、ノンカーボンブラックインク、シアンインク、マゼンダインク及びイエローインクが紙基材103上に順次吐出され、最後にカーボンブラックインクが紙基材103上に吐出されることにより、図4(e)に示したような印刷が施されているが、各インクの吐出順序はこれに限定されず、プリンタ10内における、黒色印字部12a、青色印字部12b、赤色印字部12c、黄色印字部12d及び透かし情報印字部12eの配置を変えて、紙基材103上に吐出するインクの吐出順序を変えてもよい。
【0028】
以下に、上記のように製造された印刷物100から透かし情報102を認識する方法について説明する。
【0029】
図5は、図1に示した印刷物100から透かし情報102を認識するためのシステム構成例を示す図である。
【0030】
本構成例は図5に示すように、印刷物100に印刷された透かし情報102を読み取るスキャナ20と、スキャナ20にて読み取られた透かし情報102を認識する情報処理装置30とから構成されている。
【0031】
スキャナ20は、印刷物100に対して赤外線を照射する赤外線照射部21と、赤外線照射部21から赤外線が照射された印刷物100からの反射光を検出する反射光検出部22と、赤外線照射部21及び反射光検出部22の動作を制御する制御部23と、情報処理装置30とのインタフェースを司るインタフェース部24とから構成されている。
【0032】
情報処理装置30は、スキャナ20とのインタフェースを司るインタフェース部31と、スキャナ20にて検出された反射光によって、印刷物100に印刷された透かし情報102を認識する透かし情報認識部33と、透かし情報認識部33における認識結果に基づいた情報を出力する出力部34と、情報認識部33及び出力部34の動作を制御する制御部32とから構成されている。
【0033】
図1に示した印刷物100に印刷された透かし情報102を図5に示したシステムにて認識する場合は、まず、スキャナ20の赤外線照射部21において、印刷物100に対して赤外線を照射する。
【0034】
すると、カーボンが含有されていないインクは赤外線域波長を吸収し、カーボンが含有されたインクは赤外線域波長において反射、発色するため、印刷物100に印刷された表示情報101及び透かし情報102のうち、透かし情報102を構成するドットパターンのカーボンブラックインクが赤外線を反射して発色する。
【0035】
スキャナ20の反射光検出部22においては、印刷物100からの反射光が検出されているため、印刷物100にて反射した透かし情報102のドットパターンが検出される。
【0036】
反射光検出部22にて検出されたドットパターンは、インタフェース部24を介して情報処理装置30に取り込まれ、情報処理装置30の透かし情報認識部33において、取り込まれたドットパターンによって透かし情報102が認識される。
【0037】
図6は、図1に示した印刷物100について図5に示した透かし情報認識部33にて認識された透かし情報102を示す図である。
【0038】
図6に示すように、図1に示した印刷物100に赤外線が照射されることにより、印刷物100に印刷された表示情報101及び透かし情報102のうち、透かし情報102のみが情報処理装置20にて認識されることになる。この透かし情報102は、図2に示したように、所定の間隔で升目状に配列された基準ドット102aと、基準ドット102aによって形成される升目内に配置された情報ドット102bとから構成され、情報ドット102bの基準ドット102aに対する相対位置によって表現されているため、透かし情報認識部33においては、透かし情報102を構成する情報ドット102bの基準ドット102aに対する相対位置に応じた透かし情報102の内容が予め登録されており、スキャナ20にて印刷物100から読み取られたドットパターンについて、まず、基準ドット102aが検出され、その後、この基準ドット102aに対する情報ドット102cの相対位置が認識されることにより、透かし情報102の内容が認識されることになる。
【0039】
透かし情報認識部33において透かし情報102の内容が認識された後、その透かし情報102の内容に基づいた情報が出力部34から出力されることになる。なお、この出力部34からの情報の出力は、透かし情報102の認識結果に応じて、印刷物100の真贋判定を行った結果を出力することや、透かし情報102によって表現される情報を出力すること等が考えられ、その出力の形態は、ディスプレイを用いた表示出力や、スピーカを用いた音声出力等が考えられる。
【0040】
このように本形態においては、赤外線を照射した場合の反射光を検出することにより、印刷物100に印刷された透かし情報102を認識することになるため、透かし情報102を埋め込む領域に制限がなくなる。また、この印刷物100を複写した場合、表示情報101と透かし情報102とがともに同一のインクによって印刷されることになるため、その後、複写物から透かし情報102のみを認識することができなくなる。
【0041】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の印刷物の製造方法によって製造される印刷物の第2の実施の形態を示す図である。
【0042】
本形態における印刷物は図7に示すように、媒体となる紙基材203上に、ノンカーボン印字情報204と透かし情報202とからなる表示情報201が印刷されて構成されている。ノンカーボン印字情報204は、カーボンが含有されていないノンカーボンブラックインク、シアンインク、マゼンダインク及びイエローインクを紙基材203上に順次重ね合わせて吐出することにより黒色で印刷されている。透かし情報202は、ノンカーボン印字情報204が印刷された紙基材203上に、カーボンが含有されたカーボンブラックインクを用いて印刷されている。
【0043】
以下に、上記のように構成された印刷物200の製造方法について説明する。
【0044】
図8は、図7に示した印刷物200の製造方法を説明するための図である。
【0045】
まず、表示情報201のうち、ノンカーボン印字情報204を、ノンカーボンブラックインク、シアンインク、マゼンダインク及びイエローインクを紙基材203上に順次吐出することにより印刷する(図8(a))。ノンカーボン印字情報204は、ノンカーボンブラックインク、シアンインク、マゼンダインク及びイエローインクが全て重ね合わされているため、黒色のドットパターンとなる。なお、黒色のドットパターンは、ノンカーボンブラックインクのみを用いて表示してもよい。
【0046】
次に、表示情報201のうちノンカーボン印字情報204以外の情報となる透かし情報202を(図8(b))、ノンカーボン印字情報204が印刷された紙基材203上にカーボンが含有されたカーボンブラックインクを用いて印刷する。
【0047】
これにより、ノンカーボン印字情報204と透かし情報202とからなる表示情報201が紙基材203上に印刷されることになるが(図8(c))、上述したように、ノンカーボン印字情報204が黒色のドットパターンとなっているため、ノンカーボン印字情報204と透かし情報202とは共に黒色のドットパターンとなり、肉眼では互いに識別不可能となっている。そのため、紙基材203に印刷された透かし情報202は肉眼で認識することができない。
【0048】
上記のように構成された印刷物200においては、図5に示したシステムにて透かし情報202を認識することができる。以下にその方法について説明する。
【0049】
図7に示した印刷物200に印刷された透かし情報202を図5に示したシステムにて認識する場合は、まず、スキャナ20の赤外線照射部21において、印刷物200に対して赤外線を照射する。
【0050】
すると、カーボンが含有されていないインクは赤外線域波長を吸収し、カーボンが含有されたインクは赤外線域波長において反射、発色するため、印刷物200に印刷された表示情報201のうち、透かし情報202を構成するドットパターンのカーボンブラックインクが赤外線を反射して発色する。
【0051】
スキャナ20の反射光検出部22においては、印刷物200からの反射光が検出されているため、印刷物200にて反射した透かし情報202のドットパターンが検出される。
【0052】
反射光検出部22にて検出されたドットパターンは、インタフェース部24を介して情報処理装置30に取り込まれ、情報処理装置30の透かし情報認識部33において、取り込まれたドットパターンによって透かし情報202が認識される。
【0053】
図9は、図7に示した印刷物200について図5に示した透かし情報認識部33にて認識された透かし情報202を示す図である。
【0054】
図9に示すように、図7に示した印刷物200に赤外線が照射されることにより、印刷物200に印刷された表示情報201のうち、透かし情報202のみが情報処理装置20にて認識されることになる。
【0055】
透かし情報認識部33において透かし情報202の内容が認識された後、その透かし情報202の内容に基づいた情報が出力部34から出力される。
【0056】
本形態においては、例えば、表示情報202を印刷物200の背景情報として印刷しておくことが考えられる。その場合においても、背景情報として印刷されたノンカーボン印字情報204と透かし情報202とは、共に黒色のドットパターンからなるため、肉眼では互いに識別不可能となっている。
【0057】
このように本形態においては、赤外線を照射した場合の反射光を検出することにより、印刷物200に印刷された透かし情報202を認識することになるため、透かし情報202を埋め込む領域に制限がなくなる。また、この印刷物200を複写した場合、表示情報201を構成するノンカーボン印字情報204と透かし情報202とがともに同一のインクによって印刷されることになるため、その後、複写物についてはノンカーボン印字情報204と透かし情報202とが識別不可能となる。
【0058】
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の印刷物の製造方法によって製造される印刷物の第3の実施の形態を示す図である。
【0059】
本形態における印刷物は図10に示すように、媒体となる紙基材303上に、ノンカーボン印字情報304と透かし情報302とからなるライン状パターンを有する表示情報301が印刷されて構成されている。ノンカーボン印字情報304は、カーボンが含有されていないノンカーボンブラックインク、シアンインク、マゼンダインク及びイエローインクを紙基材303上に順次重ね合わせて吐出することにより黒色で印刷されている。透かし情報302は、ノンカーボン印字情報304が印刷された紙基材303上に、カーボンが含有されたカーボンブラックインクを用いて印刷されている。
【0060】
以下に、上記のように構成された印刷物300の製造方法について説明する。
【0061】
図11は、図10に示した印刷物300の製造方法を説明するための図である。
【0062】
まず、表示情報301のうち、断続的なライン状パターンからなるノンカーボン印字情報304を、ノンカーボンブラックインク、シアンインク、マゼンダインク及びイエローインクを紙基材303上に順次吐出することにより印刷する(図11(a))。ノンカーボン印字情報304は、ノンカーボンブラックインク、シアンインク、マゼンダインク及びイエローインクが全て重ね合わされているため、黒色の断続的なライン状パターンとなる。
【0063】
次に、表示情報301のうちノンカーボン印字情報304以外の情報となる透かし情報302を(図11(b))、ノンカーボン印字情報304が印刷された紙基材303上にカーボンが含有されたカーボンブラックインクを用いて印刷する。ここで、ノンカーボン印字情報304と透かし情報302とによって構成される表示情報301がライン状パターンであり、ノンカーボン印字情報304が断続的なライン状パターンであることから、紙基材303上に印刷される透かし情報302は、ノンカーボン印字情報304のパターン間を埋めるような形状の断続的なライン状パターンとなる。
【0064】
これにより、ノンカーボン印字情報304と透かし情報302とからなる表示情報301が紙基材303上に印刷されることになるが(図11(c))、上述したように、ノンカーボン印字情報304が黒色のパターンとなっているため、ノンカーボン印字情報304と透かし情報302とからなる表示情報301は、黒色のライン状パターンとなり、ノンカーボン印字情報304と透かし情報302とは、肉眼では互いに識別不可能となっている。そのため、紙基材303に印刷された透かし情報302は肉眼で認識することができない。
【0065】
また、表示情報301は、断続的なライン状パターンのノンカーボン印字情報304と、ノンカーボン印字情報304のパターン間を埋めるように紙基材303に印刷された透かし情報302とから構成されているため、その印刷表面が平坦な状態となっている(図11(d))。
【0066】
上記のように構成された印刷物300においては、図5に示したシステムにて透かし情報302を認識することができる。以下にその方法について説明する。
【0067】
図10に示した印刷物300に印刷された透かし情報302を図5に示したシステムにて認識する場合は、まず、スキャナ20の赤外線照射部21において、印刷物300に対して赤外線を照射する。
【0068】
すると、カーボンが含有されていないインクは赤外線域波長を吸収し、カーボンが含有されたインクは赤外線域波長において反射、発色するため、印刷物300に印刷された表示情報301のうち、透かし情報302を構成するパターンのカーボンブラックインクが赤外線を反射して発色する。
【0069】
スキャナ20の反射光検出部22においては、印刷物300からの反射光が検出されているため、印刷物300にて反射した透かし情報302のパターンが検出される。
【0070】
反射光検出部22にて検出されたパターンは、インタフェース部24を介して情報処理装置30に取り込まれ、情報処理装置30の透かし情報認識部33において、取り込まれたパターンによって透かし情報302が認識される。
【0071】
図12は、図10に示した印刷物300について図5に示した透かし情報認識部33にて認識された透かし情報302を示す図である。
【0072】
図12に示すように、図10に示した印刷物300に赤外線が照射されることにより、印刷物300に印刷された表示情報301のうち、透かし情報302のみが情報処理装置20にて認識されることになる。
【0073】
透かし情報認識部33において透かし情報302の内容が認識された後、その透かし情報302の内容に基づいた情報が出力部34から出力される。
【0074】
本形態においては、表示情報301がライン状パターンからなり、この表示情報301を構成する透かし情報302が断続的なライン状パターンからなるため、例えば、バーコード情報を透かし情報302として印刷しておくことが考えられる。その場合、印刷物300毎に異なるバーコード情報となるように透かし情報302を印刷しておくことにより、図5に示した透かし情報認識部33にて認識された透かし情報302と、予め登録されたバーコード情報とを比較し、印刷物300を識別することが可能となる。
【0075】
このように本形態においては、赤外線を照射した場合の反射光を検出することにより、印刷物300に印刷された透かし情報302を認識することになるため、透かし情報302を埋め込む領域に制限がなくなる。また、この印刷物300を複写した場合、表示情報301を構成するノンカーボン印字情報304と透かし情報302とがともに同一のインクによって印刷されることになり、ノンカーボン印字情報304と透かし情報302とが識別不可能となる。
【0076】
なお、本形態において、表示情報301と同一の形状でノンカーボン印字情報304をライン状に紙基材303に印刷した後、このノンカーボン印字情報304上に断続的なライン形状の透かし情報302を印刷する構成とすることも考えられ、その場合でも上述したように透かし情報302を肉眼では視認不可能とすることができるが、本形態のように、断続的なライン状パターンのノンカーボン印字情報304を紙基材303に印刷した後に、ノンカーボン印字情報304のパターン間を埋めるように透かし情報302を紙基材303に印刷した構成とすれば、図11(d)に示したようにその印刷表面を平坦な状態とすることができる。
【0077】
また、上述した3つの実施の形態においては、表示情報や透かし情報が印刷される媒体として紙基材を例に挙げて説明したが、本発明によって製造される印刷物の媒体としては、紙からなるものに限らない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の印刷物の製造方法によって製造される印刷物の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】図1に示した印刷物に印刷された透かし情報の構成を示す図である。
【図3】図1に示した印刷物を製造するためのプリンタの一構成例を示す図である。
【図4】図3に示したプリンタを用いて図1に示した印刷物を製造する方法を説明するための図である。
【図5】図1に示した印刷物から透かし情報を認識するためのシステム構成例を示す図である。
【図6】図1に示した印刷物について図5に示した透かし情報認識部にて認識された透かし情報を示す図である。
【図7】本発明の印刷物の製造方法によって製造される印刷物の第2の実施の形態を示す図である。
【図8】図7に示した印刷物の製造方法を説明するための図である。
【図9】図7に示した印刷物について図5に示した透かし情報認識部にて認識された透かし情報を示す図である。
【図10】本発明の印刷物の製造方法によって製造される印刷物の第3の実施の形態を示す図である。
【図11】図10に示した印刷物の製造方法を説明するための図である。
【図12】図10に示した印刷物について図5に示した透かし情報認識部にて認識された透かし情報を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
10 プリンタ
11,23,32 制御部
12a 黒色印字部
12b 青色印字部
12c 赤色印字部
12d 黄色印字部
13a,13b 印刷情報
20 スキャナ
21 赤外線照射部
22 反射光検出部
24,31 インタフェース部
30 情報処理装置
33 透かし情報認識部
34 出力部
100,200,300 印刷物
101,201,301 表示情報
101a 黒色印字情報
101b 青色印字情報
101c 赤色印字情報
101d 黄色印字情報
102,202,302 透かし情報
102a 基準ドット
102b 情報ドット
103,203,303 紙基材
204,304 ノンカーボン印字情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示情報が印刷されるとともに透かし情報が埋め込まれた印刷物を製造する印刷物の製造方法であって、
カーボンが含有されていないインクを用いて媒体上に黒色を具備する前記表示情報を印刷する工程と、
前記表示情報が印刷された媒体上に、カーボンが含有された黒色インクを用いて前記透かし情報を構成するドットパターンを印刷する工程とを有する印刷物の製造方法。
【請求項2】
透かし情報を含んで構成される表示情報が印刷されてなる印刷物の製造方法であって、
前記表示情報を構成する情報のうち前記透かし情報以外の情報を、カーボンが含有されていないインクを用いて媒体上に黒色にて印刷する工程と、
カーボンが含有された黒色インクを用いて前記媒体上に前記透かし情報を印刷する工程とを有する印刷物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−268904(P2007−268904A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98895(P2006−98895)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】