説明

印刷装置および印刷方法

【課題】 複数のネットワークセクションにて分割されて送られてくる印刷データにおいて、オーバーレイデータを示す印刷データが別の印刷データとして記憶されていると、再印刷時に所望の結果が得られない。
【解決手段】 他の印刷データを使用する印刷データを記憶する際に、該印刷データと他の印刷データとをリンクし、再印刷時にそれらを使用できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネットワークセッションが異なる印刷データを1つのジョブとして扱うコネクション認識機能を有する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セントロなどのインターフェイスを使用していた機器においてはデータが分割して送られてきた場合でも1つの印刷シーケンスとして扱われていた。このため、ジョブという概念がないPDLやジョブ単位で区切らない印刷データ形式も許容するPDLにおいては、印刷データを複数に分割し、オーバーレイ、マクロまたはダウンロードフォントなどの登録データとそれを使用する複数の印刷データという形で転送され印刷されることがあった。しかしながら、インターフェイスがネットワークになり、印刷データもジョブという単位で区切られるようになった印刷装置においてはジョブという概念のないデータはネットワークの通信単位で区切られ、1つのジョブとして扱われるようになった。それを避けるため、ネットワークセッションが切れたとしても1つのジョブとして扱うためにネットワークのコネクションを認識しないようにするコネクション認識機能が使用されている。しかしながら、データの扱う単位はネットワークの単位ごとに扱われるため、1つのジョブとして扱われる印刷データがリプリント時にばらばらに扱われることになった。
また、特許文献1においてはジョブ内の章やページごとに別途印刷を行うように制御しているが別々の印刷データにおいてリンクを張り1つのデータとして制御はしていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−16056
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記の方法では印刷データはネットワークの通信単位ごとに印刷装置内に記憶されるために関連する印刷データが分からない。このため、リプリント時に印刷データを指定するとオーバーレイ、マクロおよびダウンロードフォントの入ったデータが選択されず、印刷されてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷装置は、異なるネットワークセッションで受信した複数の印刷データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された印刷データ内に、該印刷データとは異なるネットワークセッションで受信された他の印刷データを使用する命令が含まれるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記記憶された印刷データが前記他の印刷データを使用する印刷データであると判断された場合に、前記記憶手段の記憶内容から前記他の印刷データを検索する検索手段と、前記検索手段の検索により検索された前記他の印刷データと前記印刷データとをリンクするリンク手段と、前記記憶手段に記憶された印刷データの再印刷を指示する指示手段と、前記指示手段により再印刷が指示された場合に、再印刷が指示された印刷データと、該印刷データにリンクされた前記他の印刷データを用いて印刷処理を行う再印刷手段とを有する。
【発明の効果】
【0006】
1つのジョブがばらばらに送信されてきた場合でも各データのリンクを持たせることで、登録データを使用する印刷データの印刷時に登録データ部分の印刷の抜けをなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コネクション認識機能を使用した場合の印刷処理の概念図である。
【図2】リプリント時の印刷処理における本発明の動作を示した概念図である。
【図3】MFPの制御ユニットの概略構成を示すブロック図である。
【図4】リプリントのために記憶された印刷データの管理テーブルを表した概念図である。
【図5】登録データと印刷データのリンクを行う際の印刷処理の過程を示すフローチャートを示す図である。
【図6】リプリント時の印刷処理の過程を示すフローチャートを示す図である。
【図7】登録データと印刷データのリンクを行う際の印刷処理の過程を示すフローチャートを示す図である。
【図8】登録データと印刷データのリンクを行う際の印刷処理の過程を示すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、ネットワークを介して印刷データを送信する印刷システムにおいて、コネクション認識機能を有効にした際の印刷処理を示した概念図である。従来、ネットワークセッションという概念がなかったころの印刷データはデータの単位が必ずしもジョブ単位でまとまっていなかった。このため、前記のデータは1つのジョブが異なるネットワークセッションで送られてきた。このまま印刷を行うと本来一続きのデータがばらばらに印刷されてしまい、本来想定されていた印刷結果にならない。そこで、ネットワークセッションを無視し、流れてきたデータを1つのジョブとして認識するコネクション認識機能が作成された。本機能は一定時間データが流れてこない場合、およびジョブ開始命令などのジョブの単位を認識するための命令が入ったジョブ単位の印刷データが流れてきた場合にそこまでの印刷データを1つのジョブとして扱う。ただし、各印刷データが何時来るかわからない状況にあるため、リプリント用に記憶するために印刷データを記憶する際にはネットワークセッション単位で記憶している。個別に送付されてきた印刷データは1つのジョブとして扱われて印刷されるため、1つ目に送付されてきたオーバーレイやマクロ、ダウンロードフォントなどの登録データは続いて受信される各印刷データで有効となり、登録データを使う印刷の命令が入った印刷データでは登録データを使用した印刷が行われる。
【0010】
図2は本実施例におけるネットワーク認識機能によって同一ジョブと認識されながらも個別に記憶された印刷データに関してリプリント(再印刷)時の印刷処理を示した概念図である。本図においては登録データとしてオーバーレイデータを例として取り上げている。ネットワークセッションごとに印刷データは記憶される。リプリントはそれぞれ記憶された印刷データごとに指定される。いま、リプリントにおいて異なるネットワークセッションで流されたオーバーレイデータを使用した印刷データを指定し印刷を行った場合、リンクされたオーバーレイデータとともに印刷処理が行われる。これにより、オーバーレイが抜けることなく印刷を行うことができる。
【0011】
図3は、印刷装置の制御ユニットの概略構成を示すブロック図である。301はコントローラボードの本体を示す。302はCPUであり、CPU302によるこれら一連の処理の処理手順は全てROM305またはハードディスク307内にプログラムされており、このプログラムに従ってCPU302は動作する。303はネットワークインターフェイス部でありネットワーク通信を行う。PDLデータはネットワークインターフェイス部305を介して送受信される。ネットワークインターフェイス部303は他の機器と暗号化通信を行うことができる。304は一般のEEPROM等で構成する不揮発性メモリであり、以後NVRAM(Non Volatile RAM)と称す。NVRAM304には操作パネルで指定されたパネル設定値が記憶される。306はRAMであり、CPU302の処理時に記憶領域として用いられる。ハードディスク307に動作プログラムが蓄えられていた場合、プログラムはRAM上に展開され実行される。307はハードディスクであり、印刷データや印刷装置を動作させるプログラムなどを記憶する。
【0012】
図4は本実施例におけるリプリント用に記憶された印刷データの管理テーブルを示すものである。印刷データはネットワークセッションで区切られるデータ単位またはコマンドなどによりジョブが明示的に指定される場合はジョブ単位で記憶される。管理テーブルはその印刷データの名前と受信時間、印刷データの記憶先、印刷データが登録データかどうかを示すフラグ、および本発明のデータリンク手段によってリンクされた登録データへのポインタによって構成されている。データによっては印刷データ名がない場合もある。この場合、印刷データ名の欄には空欄か受信時間をベースとした生成した印刷データ名が便宜的につけられる。
【0013】
図5は本実施例における印刷時の動作を説明したフローチャートである。
ネットワーク経由で印刷データを受信する(ステップ501)。印刷データを記憶領域に記憶し、図4で示される管理テーブルに登録する(ステップ502)。受信した印刷データが明確にジョブの単位を示さないかまたは明確にジョブの単位を表わさないデータを許容するPDLのデータではないならば(ステップ503)、印刷処理を実行し、終了する(ステップ504)。コネクション認識手段が有効なPDLのデータであるが、コネクション認識手段が有効になっていないならば(ステップ505)、印刷処理を実行し、終了する(ステップ504)。コネクション認識手段が有効であり、本特許における対応する登録データがあった場合に該印刷データと登録データをリンクする手段が有効になっていないならば(ステップ506)、印刷処理を実行し(ステップ513)、次回印刷データが来るかジョブが終了するまで待つ。一定時間印刷データが来ない場合やジョブで区切られたジョブが来た場合にジョブが終了したと判断する(ステップ514)。データリンク機能がONになっており、受信した印刷データがオーバレイ、マクロ、ダウンロードフォントなどの登録データならば(ステップ507)、記憶したオーバーレイデータに対応する管理テーブル上の登録データであるかどうかを示すフラグをONにする(ステップ508)。登録データではないが、異なるネットワークセッションで受信された他の印刷データである登録データを使用する命令が入っている場合は(ステップ509)、対応する登録データが記憶された印刷データの中に無いかを管理テーブルを検索する。登録データはフラグがONになっているため、記憶された印刷データ中フラグがONになった印刷データのみを検索すればよい(ステップ510)。対応する登録データがあるならば(ステップ511)、印刷データの管理テーブルにおける登録データへのポインタ領域に該登録データの管理テーブルのアドレスを記憶し、印刷データをリンクする(ステップ512)。リンク付け作業後、受信してきたデータの印刷処理を行う(ステップ513)。次回印刷データが来るかジョブが終了するまで待つ。一定時間印刷データが来ない場合やジョブで区切られたジョブが来た場合にジョブが終了したと判断する(ステップ514)。
【0014】
図6は本実施例における請求項第1項の各手段におけるリプリント時の動作を説明したフローチャートである。印刷装置の操作部から、印刷データを指定してリプリントが指示される(ステップ601)。指定されたデータが登録データとリンクされているならば(ステップ602)、管理テーブルよりリンクされた登録の印刷データを得、印刷処理を行う(ステップ603)。指定された印刷データの印刷処理を行う(ステップ604)。
【0015】
[その他の実施例]
印刷処理はデータ記憶の直後に行ってもよい。この場合印刷処理を行いながら登録データの使用命令を検索することができるため、データ内の検索処理が一度で済む。ただし、印刷データのデータリンク処理が印刷終了後になる。
【0016】
図7は本発明における印刷処理はデータ記憶の直後に行ったときのリプリント時の動作を説明したフローチャートである。ネットワーク経由で印刷データを受信する(ステップ701)。印刷データを記憶領域に記憶し、図4で示される管理テーブルに登録する(ステップ702)。印刷処理を実行する(ステップ703)。受信した印刷データが明確にジョブの単位を示さないかまたは明確にジョブの単位を表わさないデータを許容するPDLのデータであり(ステップ704)、コネクション認識手段が有効であり(ステップ705)、本特許における対応する登録データがあった場合に該印刷データと登録データをリンクする手段が有効になっていたならば(ステップ706)、受信処理中に受信した印刷データが、オーバレイ、マクロ、ダウンロードフォントなどの登録データであるか判断する(ステップ707)。記憶した印刷データが登録データならば、対応する管理テーブル上の登録データであるかどうかを示すフラグをONにする(ステップ708)。登録データではないが、異なるネットワークセッションで受信された他の印刷データである登録データを使用する命令が入っている場合は(ステップ709)、対応する登録データが記憶された印刷データの中に無いかを管理テーブルを検索する。登録データはフラグがONになっているため、記憶された印刷データ中フラグがONになった印刷データのみを検索すればよい(ステップ710)。対応する登録データがあるならば(ステップ711)、印刷データの管理テーブルにおける登録データへのポインタ領域に該登録データの管理テーブルのアドレスを記憶し、印刷データをリンクする(ステップ712)。次回印刷データが来るかジョブが終了するまで待つ。一定時間印刷データが来ない場合やジョブで区切られたジョブが来た場合にジョブが終了したと判断する(ステップ713)。
【0017】
図8は本発明における印刷処理はデータ記憶の直後に行ったときのリプリント時の動作を説明したフローチャートである。本実施例においてはネットワークセクションによって印刷データがわかれないためコネクション認識手段は必要としない。印刷データを受信する。ここで、印刷データはセントロやUSBなどの通信間隔でジョブ分割しない通信手段で送信されてくる(ステップ801)。ジョブタイムアウトしない時間内の定められた一定時間以上通信間隔が空いたならば(ステップ802)、そこまでの印刷データをリプリントで指定する印刷単位として区切り(ステップ803)、印刷データを記憶領域に記憶し、図4で示される管理テーブルに登録する(ステップ804)。印刷処理を実行する(ステップ805)。受信した印刷データが明確にジョブの単位を示さないかまたは明確にジョブの単位を表わさないデータを許容するPDLのデータであり(ステップ806)、本特許における対応する登録データがあった場合に該印刷データと登録データをリンクする手段が有効になっていたならば(ステップ807)、受信処理中に受信した印刷データが登録データであるか判断する(ステップ808)。記憶した印刷データが登録データならば、対応する管理テーブル上の登録データであるかどうかを示すフラグをONにする(ステップ809)。登録データではないが、登録データを使用する命令が入っている場合は(ステップ810)、対応する登録データが記憶された印刷データの中に無いかを管理テーブルを検索する。登録データはフラグがONになっているため、記憶された印刷データ中フラグがONになった印刷データのみを検索すればよい(ステップ811)。対応する登録データがあるならば(ステップ812)、印刷データの管理テーブルにおける登録データへのポインタ領域に該登録データの管理テーブルのアドレスを記憶し、印刷データをリンクする(ステップ813)。次回印刷データが来るかジョブが終了するまで待つ。一定時間印刷データが来ない場合やジョブで区切られたジョブが来た場合にジョブが終了したと判断する(ステップ814)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるネットワークセッションで受信した複数の印刷データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された印刷データ内に、該印刷データとは異なるネットワークセッションで受信された他の印刷データを使用する命令が含まれるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記記憶された印刷データが前記他の印刷データを使用する印刷データであると判断された場合に、前記記憶手段の記憶内容から前記他の印刷データを検索する検索手段と、
前記検索手段の検索により検索された前記他の印刷データと前記印刷データとをリンクするリンク手段と、
前記記憶手段に記憶された印刷データの再印刷を指示する指示手段と、
前記指示手段により再印刷が指示された場合に、再印刷が指示された印刷データと、該印刷データにリンクされた前記他の印刷データを用いて印刷処理を行う再印刷手段と
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記他の印刷データとのリンク動作を有効化または無効化する切替手段を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
ジョブの単位を判断可能なPDLデータを受信した場合に、前記リンク手段のリンク対象としないことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶された印刷データが、オーバレイ、マクロ、ダウンロードフォントのいずれかを含む場合に、その旨を示す情報を付与する付与手段を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
受信データの時間間隔が閾値を超えた場合に、そこまでに受信した印刷データを1つのジョブとして認識することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
異なるネットワークセッションで受信した複数の印刷データを記憶する印刷装置の印刷方法であって、
前記記憶手段に記憶された印刷データ内に、該印刷データとは異なるネットワークセッションで受信された他の印刷データを使用する命令が含まれるか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにより前記記憶された印刷データが前記他の印刷データを使用する印刷データであると判断された場合に、前記記憶手段の記憶内容から前記他の印刷データを検索する検索ステップと、
前記検索ステップの検索により検索された前記他の印刷データと前記印刷データとをリンクするリンクステップと、
前記記憶手段に記憶された印刷データの再印刷を指示する指示ステップと、
前記指示手段により再印刷が指示された場合に、再印刷が指示された印刷データと、該印刷データにリンクされた前記他の印刷データを用いて印刷処理を行う再印刷ステップと
を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
請求項6に記載された印刷方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−218235(P2012−218235A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84498(P2011−84498)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】