説明

印刷装置

【課題】印刷装置に関する履歴情報をカートリッジに設けた記憶素子を用いて好適に管理することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のカートリッジ85にそれぞれ充填された各色の記録剤を用いて記録媒体に画像を印刷する印刷装置10である。印刷装置10は、残量検出部28と、記憶部及び読出部とを備える。残量検出部28は、複数のカートリッジ85にそれぞれ充填されている記録剤の残量を、カートリッジ85毎に検出する。記憶部は、カートリッジ85に設けられた記憶素子に、印刷装置10で発生又は実行された事象に関する履歴情報を記憶する。読出部は、カートリッジ85に設けられた記憶素子から履歴情報を読み出す。記憶部は、事象が新たに発生又は実行された場合、最も残量の少ないカートリッジ85に設けられた記憶素子に、新たな事象の履歴情報を記憶する(S100,S110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカートリッジにそれぞれ充填された各色の記録剤を用いて記録媒体に画像を印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置に関する提案がなされている。例えば、画像形成装置に装着されるカートリッジはメモリを備えることが特許文献1に開示されている。メモリには、消耗品の消費量や使用開始日などの使用に関する情報が随時格納される。この画像形成装置によれば、ユーザの使用状況を表す種々のデータがメモリに書き込まれるので、カートリッジのリサイクル時に製造者が利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−3194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カラー画像を印刷できる印刷装置には、複数色の記録剤がそれぞれ充填された複数のカートリッジが装着される。複数のカートリッジを装着できる印刷装置で画像が印刷されると、印刷された画像を形成する色に応じて各色の記録剤が各々消費される。従って、各カートリッジが交換されるタイミングは、各色によって異なる。このような状態において、カートリッジに記憶素子を設け、記憶素子に印刷装置で発生又は実行された所定の事象に関する履歴情報を記憶させ、カートリッジが交換された後、交換されたカートリッジを回収すると、印刷装置の製造者は、履歴情報を解析することができる。ただし、例えば、交換サイクルが長い特定の色のカートリッジに設けられた記憶素子に履歴情報が記憶されると、回収が困難となる場合がある。
【0005】
本発明は、印刷装置に関する履歴情報をカートリッジに設けた記憶素子を用いて好適に管理することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明の一側面は、複数のカートリッジにそれぞれ充填された各色の記録剤を用いて記録媒体に画像を印刷する印刷装置であって、前記印刷装置に装着された複数のカートリッジにそれぞれ充填されている記録剤の残量を、カートリッジ毎に検出する残量検出部と、カートリッジに設けられた記憶素子に、前記印刷装置で発生又は実行された所定の事象に関する履歴情報を記憶する記憶部と、カートリッジに設けられた記憶素子から、該記憶素子に記憶された履歴情報を読み出す読出部と、を備え、前記記憶部は、前記印刷装置で所定の事象が新たに発生又は実行された場合、前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、最も残量の少ないカートリッジに設けられた記憶素子に、新たな事象の履歴情報を記憶する、印刷装置である。これによれば、交換までの期間が短いと考えられるカートリッジに設けられた記憶素子に、新たな事象の履歴情報を記憶することができる。カートリッジが交換された場合、印刷装置の製造者は、交換されたカートリッジを回収することで、履歴情報を解析することができる。
【0007】
この印刷装置は、次のようにしてもよい。前記印刷装置で画像の印刷に用いられた記録剤の累積使用量を、記録剤の色毎に管理するカウンタ部を備え、前記記憶部は、前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、第一色の記録剤が充填されているカートリッジが最も残量の少ないカートリッジで、第二色の記録剤が充填されているカートリッジの残量と第一色の記録剤が充填されているカートリッジの残量との差が予め定めた一定範囲内である場合、第一色の記録剤及び第二色の記録剤うち、前記カウンタ部で管理された累積使用量が多い色の記録剤が充填されているカートリッジに設けられた記憶素子に、新たな事象の履歴情報を記憶する、ようにしてもよい。これによれば、累積使用量に基づき、交換までの期間が短く早いタイミングで交換されると考えられるカートリッジを好適に選択することができる。
【0008】
前記読出部は、前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、残量が予め定めた基準状態である第一種のカートリッジに設けられた記憶素子から、該記憶素子に記憶された第一種の履歴情報を読み出し、前記記憶部は、前記読出部によって読み出された第一種の履歴情報を、基準状態ではない第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に記憶する、ようにしてもよい。これによれば、カートリッジが基準状態である場合、基準状態である第一種のカートリッジに設けられた記憶素子に記憶された第一種の履歴情報の記憶先を、基準状態ではない第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に変更することができる。
【0009】
前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、残量が予め定めた基準状態である第一種のカートリッジに設けられた記憶素子に記憶された第一種の履歴情報が、基準状態ではない第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に記憶された第二種の履歴情報より新しい履歴情報であるか否かを判断する判断部を備え、前記読出部は、前記判断部によって、第一種の履歴情報が第二種の履歴情報より新しい履歴情報であると判断された第一の場合、第一種のカートリッジに設けられた記憶素子から第一種の履歴情報を読み出し、第二種のカートリッジに設けられた記憶素子から第二種の履歴情報を読み出し、前記判断部によって、第一種の履歴情報が第二種の履歴情報より新しい履歴情報ではないと判断された第二の場合、第一種のカートリッジに設けられた記憶素子から第一種の履歴情報を読み出さず、第二種のカートリッジに設けられた記憶素子から第二種の履歴情報を読み出さず、前記記憶部は、前記第一の場合、第一種のカートリッジに設けられた記憶素子に、前記読出部によって読み出された第二種の履歴情報を記憶し、第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に、前記読出部によって読み出された第一種の履歴情報を記憶し、前記第二の場合、第一種のカートリッジに設けられた記憶素子に第二種の履歴情報を記憶せず、第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に第一種の履歴情報を記憶しない、ようにしてもよい。これによれば、基準状態ではない第二種のカートリッジに設けられた記憶素子には、新しい履歴情報(第一種の履歴情報)が記憶され、基準状態である第一種のカートリッジに設けられた記憶素子には、古い履歴情報(第二種の履歴情報)が記憶された状態とすることができる。
【0010】
前記読出部は、前記第一の場合、第二種の履歴情報として、第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に記憶された履歴情報のうち、最も古い履歴情報を読み出す、ようにしてもよい。これによれば、最も古い履歴情報を第二種の履歴情報とし、これを基準状態である第一種のカートリッジに設けられた記憶素子に記憶することができる。
【0011】
前記記憶部は、最も残量の少ないカートリッジに設けられた記憶素子が記憶容量不足の状態で、新たな事象の履歴情報を記憶できない場合、最も残量の少ないカートリッジ以外のカートリッジに設けられた記憶素子に、該新たな事象の履歴情報を記憶し、全てのカートリッジに設けられた記憶素子が記憶容量不足の状態で、新たな事象の履歴情報を記憶できない場合、最も古い履歴情報を、該最も古い履歴情報が記憶された記憶素子から削除する、ようにしてもよい。これによれば、新たな事象の履歴情報を、何れかのカートリッジに設けられた記憶素子に記憶することができる。
【0012】
前記記憶部は、全てのカートリッジに設けられた記憶素子が記憶容量不足の状態で、新たな事象の履歴情報を記憶できず、最も古い履歴情報を、該最も古い履歴情報が記憶された記憶素子から削除した場合、全てのカートリッジに設けられた記憶素子に記憶された全ての履歴情報を対象として、前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、残量の少ないカートリッジほど、古い履歴情報が記憶された状態となるように各履歴情報の記憶先を再配置し、再配置が実行されたことを条件として、前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、最も残量の多いカートリッジに設けられた記憶素子に、新たな事象の履歴情報を記憶する、ようにしてもよい。これによれば、新たな事象の履歴情報を含む全ての履歴情報を、残量及び履歴情報の時系列に応じてまとめることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷装置に関する履歴情報をカートリッジに設けた記憶素子を用いて好適に管理することができる印刷装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】履歴記憶処理のフローチャートである。
【図3】エンプティ時処理のフローチャートである。
【図4】履歴情報管理の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。他の構成を含むようにしてもよい。
【0016】
<印刷装置>
印刷装置10について、図1等を参照して説明する。本実施形態では、印刷装置10が、インクジェット方式の印刷装置であるとして説明する。印刷装置10では、複数のカートリッジ85にそれぞれ充填された各色の記録剤を用いて記録媒体にカラー画像が印刷される。インクジェット方式の印刷装置10では、画像の印刷に用いられる記録剤は、インクである。印刷装置10は、CPU12と、プログラムROM13と、RAM14と、フラッシュROM15と、印刷部18と、操作部20と、表示部22と、計時部24と、装着検出部26と、残量検出部28と、IC読書部30と、接続インターフェース(接続I/F)32とを備える。
【0017】
CPU12は、演算処理を実行し、印刷装置10を制御する。プログラムROM13は、後述する処理(図2及び図3参照)のためのコンピュータプログラムの他、印刷装置10で実行される処理のための各種のコンピュータプログラムを記憶する。RAM14は、CPU12が、コンピュータプログラムを実行する際の記憶領域である。RAM14には、各種の処理に用いられる情報(データ)等が記憶される。フラッシュROM15は、不揮発性のメモリによって構成され、印刷装置10で管理される情報(データ)を記憶する。フラッシュROM15には、例えば、印刷装置10で画像の印刷に使用された色毎のインクの量を示す累積使用量が登録されたカウンタ情報が記憶される。CPU12が、プログラムROM13に記憶された各種のコンピュータプログラムを、RAM14を利用して実行することによって、各種の機能部が実現され、印刷装置10において、各種の機能が実行される。
【0018】
印刷部18は、インクジェット方式の印刷機構である。印刷部18は、記録ヘッド81C,81M,81Y,81Kと、装着部83C,83M,83Y,83Kとを備える。記録ヘッド81Cは、シアンインクを吐出するための記録ヘッドである。記録ヘッド81Mは、マゼンタインクを吐出するための記録ヘッドである。記録ヘッド81Yは、イエローインクを吐出するための記録ヘッドである。記録ヘッド81Kは、ブラックインクを吐出するための記録ヘッドである。装着部83Cには、シアンインクが充填されたカートリッジ85Cが装着される。装着部83Mには、マゼンタインクが充填されたカートリッジ85Mが装着される。装着部83Yには、イエローインクが充填されたカートリッジ85Yが装着される。装着部83Kには、ブラックインクが充填されたカートリッジ85Kが装着される。
【0019】
装着部83C,83M,83Y,83Kに、カートリッジ85C,85M,85Y,85Kがそれぞれ装着された場合、各色用の記録ヘッド81は、それぞれ、インク送液用の送液路87にて、対応する色のカートリッジ85と接続された状態となる。このような状態において、カートリッジ85Cに充填されているシアンインクは、送液路87Cを流れて、記録ヘッド81Cに供給される。カートリッジ85Mに充填されているマゼンタインクは、送液路87Mを流れて、記録ヘッド81Mに供給される。カートリッジ85Yに充填されているイエローインクは、送液路87Yを流れて、記録ヘッド81Yに供給される。カートリッジ85Kに充填されているブラックインクは、送液路87Kを流れて、記録ヘッド81Kに供給される。記録ヘッド81C,81M,81Y,81Kでは、供給された各色のインクが、印刷装置10で受信又は生成等され、印刷装置10に入力された印刷ジョブに対応して、それぞれ吐出される。
【0020】
カートリッジ85C,85M,85Y,85Kには、それぞれICチップが設けられる。ICチップには、各種の情報が記憶される。例えば、履歴情報が記憶される。履歴情報は、印刷装置10で発生又は実行された所定の事象に関する情報であって、所定の事象が発生又は実行されたタイミングを示す時間情報(年月日及び時刻)を含む。履歴情報には、例えば、印刷ログ、カートリッジ交換ログ、クリーニングログ、テストプリントログ等が含まれる。印刷ログは、印刷装置10で画像の印刷が行われたことを示すログである。カートリッジ交換ログは、充填されたインクがなくなり、新たなカートリッジ85に交換されたことを示すログである。カートリッジ交換ログは、インク色毎に分類される。クリーニングログは、記録ヘッド81のクリーニング処理が実行されたことを示すログである。テストプリントログは、印刷装置10でテスト画像が印刷されたことを示すログである。テストプリントは、例えば、クリーニング処理が完了した場合に実行される。
【0021】
本実施形態では、記録ヘッド81C,81M,81Y,81Kを、区別しない場合又はこれらを総称する場合、記録ヘッド81という。同様に、装着部83C,83M,83Y,83Kは、装着部83という。カートリッジ85C,85M,85Y,85Kは、カートリッジ85という。送液路87C,87M,87Y,87Kは、送液路87という。
【0022】
操作部20は、複数のキーを含む。ユーザは、操作部20を操作し、印刷装置10に対して、所定の指示を入力する。表示部22は、所定の情報を表示する。計時部24は、時計機能を有し、現在時刻を計測する。計時部24は、カレンダー機能も有する。計時部24によれば、年月日及び時刻が計測される。装着検出部26は、装着部83へのカートリッジ85の装着を検出するためのセンサである。図1では図示を簡略化しているが、装着検出部26は、装着部83C,83M,83Y,83Kに対してそれぞれ設けられる。従って、印刷装置10では、カートリッジ85C,85M,85Y,85Kのそれぞれについて、装着の有無を検出することができる。残量検出部28は、装着部83に装着されたカートリッジ85に充填されているインクの残量を検出するためのセンサである。図1では図示を簡略化しているが、残量検出部28は、装着部83C,83M,83Y,83Kに装着されるカートリッジ85C,85M,85Y,85Kのそれぞれに対応して設けられる。従って、印刷装置10では、カートリッジ85C,85M,85Y,85Kのそれぞれについて、インクの残量を検出することができる。
【0023】
IC読書部30は、カートリッジ85に設けられたICチップからの情報(データ)の読み出しと、ICチップへの情報(データ)の書き込み(記憶)と、ICチップに記憶された情報(データ)の削除とを実行する。図1では図示を簡略化しているが、IC読書部30は、装着部83C,83M,83Y,83Kに装着されるカートリッジ85C,85M,85Y,85Kのそれぞれに対応して設けられる。従って、印刷装置10では、カートリッジ85C,85M,85Y,85Kのそれぞれに設けられたICチップに対して前述したような処理を実行することができる。接続I/F32は、印刷装置10と外部装置90とをデータ通信可能に接続するための通信インターフェースである。
【0024】
<履歴記憶処理>
履歴記憶処理について、図2を参照して説明する。履歴記憶処理は、印刷装置10において所定の事象が新たに発生又は実行された場合に開始される。履歴記憶処理を開始したCPU12は、装着部83C,83M,83Y,83Kに装着され、残量検出部28によって残量が検出されたカートリッジ85C,85M,85Y,85Kのうち、最も残量の少ないカートリッジ85を特定する(S100)。特定されたカートリッジ85は、後述するS110での履歴情報の記憶先の候補とされる。
【0025】
続けて、CPU12は、履歴情報の記憶先の候補として特定されているカートリッジ85に充填されているインクの残量との差が予め定めた一定範囲内であるカートリッジ85があるか否かを判断する(S102)。具体的に、直前の処理がS100であった場合、S102でCPU12は、最も残量の少ないカートリッジ85以外のカートリッジ85にそれぞれ充填されているインクの残量と、最も残量の少ないカートリッジ85に充填されているインクの残量との差を求め、求められた残量差が予め定めた一定範囲内となるカートリッジ85があるか否かを判断する。直前の処理が後述するS114であった場合、S102でCPU12は、S114で特定されたカートリッジ85以外のカートリッジ85にそれぞれ充填されているインクの残量と、S114で特定されたカートリッジ85に充填されているインクの残量との差を求め、求められた残量差が予め定めた一定範囲内となるカートリッジ85があるか否かを判断する。S102では、S100又はS114で特定されたカートリッジ85と比較されるこれ以外のカートリッジ85(比較対象)について、既にS100又はS114と、後述するS106とで特定されたカートリッジ85は、比較対象から除外するようにしてもよい。
【0026】
残量差が一定範囲内のカートリッジ85がない場合(S102:No)、CPU12は、処理をS108に移行する。残量差が一定範囲内のカートリッジ85がある場合(S102:Yes)、CPU12は、残量差が一定範囲内のカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量が、S100又はS114で特定されたカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量より多いか否かを判断する(S104)。各色のインクの累積使用量は、フラッシュROM15に記憶されたカウンタ情報に登録されている。CPU12は、カウンタ情報にアクセスする。残量差が一定範囲内のカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量が、S100又はS114で特定されたカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量以下である場合(S104:No)、CPU12は、処理をS108に移行する。この場合、最も残量の少ないカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量は、残量差が一定範囲内のカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量以上となる。履歴情報の記憶先は、S100又はS114で既に特定されたカートリッジ85のままとされる。残量差が一定範囲内のカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量が、S100又はS114で特定されたカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量より多い場合(S104:Yes)、CPU12は、S110での履歴情報の記憶先の候補として、残量差が一定範囲内のカートリッジ85を特定する(S106)。即ち、S106によって、S110での履歴情報の記憶先が、S100又はS114で特定されたカートリッジ85から、残量差が一定範囲内のカートリッジ85に変更される。S106を実行した後、CPU12は、処理をS108に移行する。
【0027】
S108でCPU12は、S100、S106又はS114で特定されたカートリッジ85に設けられたICチップに履歴情報を記憶させるための空き容量があるか否かを判断する。空き容量がない場合(S108:No)、CPU12は、処理をS112に移行する。空き容量がある場合(S108:Yes)、CPU12は、履歴記憶処理が開始されるトリガとなった新たな事象の履歴情報がS100、S106又はS114で特定されたカートリッジ85に設けられたICチップに記憶されるようにIC読書部30を制御する(S110)。IC読書部30は、前述のICチップに履歴情報を書き込む。これによって、ICチップには、新たな事象の履歴情報が記憶される。S110を実行した後、CPU12は、履歴記憶処理を終了する。
【0028】
S112でCPU12は、履歴記憶処理を開始した後、既に実行されたS100、S106及びS114で特定されていない未特定のカートリッジ85があるか否かを判断する。未特定のカートリッジ85がある場合(S112:Yes)、CPU12は、未特定のカートリッジ85のうち、最も残量の少ないカートリッジ85を特定する(S114)。カートリッジ85に充填されているインクの残量は、上述した通り、残量検出部28によって検出される。S114を実行した後、CPU12は、処理をS102に戻す。この場合において、S102以降の処理は、上述した通りに実行される。
【0029】
S100、S106及びS114で特定されていない未特定のカートリッジ85がない場合(S112:No)、CPU12は、装着部83C,83M,83Y,83Kに装着されたカートリッジ85C,85M,85Y,85Kの各ICチップに記憶された履歴情報うち、最も古い履歴情報を、この最も古い履歴情報が記憶されたICチップから削除する(S116)。CPU12は、最も古い履歴情報を、履歴情報に含まれる時間情報により抽出する。これによって、1つの履歴情報を記憶するための記憶領域が、何れかのカートリッジ85に設けられたICチップに確保される。
【0030】
次に、CPU12は、全てのカートリッジ85に設けられたICチップに記憶された全ての履歴情報を対象として、残量検出部28によって残量が検出されたカートリッジ85のうち、残量の少ないカートリッジ85ほど、古い履歴情報が記憶された状態となるように各履歴情報の記憶先を再配置する(S118)。S118での再配置は、履歴情報に含まれる時間情報に従い実行される。S116によって、何れかのカートリッジ85に設けられたICチップに確保された履歴情報のための記憶領域が、最も残量の多いカートリッジ85に設けられたICチップに移行される。
【0031】
S116を実行した後、CPU12は、履歴記憶処理が開始されるトリガとなった新たな事象の履歴情報が最も残量の多いカートリッジ85に設けられたICチップに記憶されるようにIC読書部30を制御する(S120)。IC読書部30は、前述のICチップに履歴情報を書き込む。これによって、ICチップには、新たな事象の履歴情報が記憶される。S120を実行した後、CPU12は、履歴記憶処理を終了する。
【0032】
<エンプティ時処理>
エンプティ時処理について、図3を参照して説明する。エンプティ時処理は、印刷装置10の電源がオンされた場合に開始される。エンプティ時処理が開始されると、残量検出部28は、装着部83C,83M,83Y,83Kに装着されたカートリッジ85C,85M,85Y,85Kのそれぞれに充填されているインクの残量を継続的に検出する。残量検出部28によって、カートリッジ85C,85M,85Y,85Kのうち、何れかのカートリッジ85に充填されているインクが空(インクエンプティ)となったことが検出された場合、CPU12は、インクエンプティを検出する(S200)。CPU12は、残量検出部28によって検出される残量に従い、インクエンプティとなったカートリッジ85を特定する。印刷装置10では、エンプティ時処理において後述するS202〜S208が実行される基準状態として、インクエンプティが予め定められている。基準状態は、インクエンプティとは異なる状態、例えば、残量が残り「Xcc」又は「X%」(Xは、0より大きな予め定めた値)というようにしてもよい。以下では、インクエンプティを例に説明する。インクエンプティとなったカートリッジ85を、第一種のカートリッジ85という。インクエンプティではないカートリッジ85を、第二種のカートリッジ85という。第一種のカートリッジ85が、カートリッジ85C,85M,85Y,85Kの何れか1つである場合、第二種のカートリッジ85は、残りの3つのカートリッジ85を総称するものである。
【0033】
次に、CPU12は、第一種のカートリッジ85に設けられたICチップに、第二種のカートリッジ85に設けられたICチップに記憶された履歴情報より新しい履歴情報が記憶されているか否かを判断する(S202)。S202での新旧の判断は、履歴情報に含まれる時間情報に従い実行される。新しい履歴情報が記憶されていない場合(S202:No)、CPU12は、処理をS200に戻し、S200以降の各処理を繰り返す。この場合、CPU12は、後述するS204〜S208の各処理を実行しない。
【0034】
新しい履歴情報が記憶されている場合(S202:Yes)、CPU12は、第二種のカートリッジ85に設けられたICチップに記憶された履歴情報より新しい履歴情報を、第一種のカートリッジ85に設けられたICチップから読み出すようにIC読書部30を制御する(S204)。IC読書部30は、第一種のカートリッジ85に設けられたICチップから、このICチップに記憶された新しい履歴情報を読み出す。読み出された新しい履歴情報は、RAM14に記憶される。S204でCPU12は、RAM14に記憶された新しい履歴情報が第一種のカートリッジ85に設けられたICチップから削除されるように制御する。IC読書部30は、第一種のカートリッジ85に設けられたICチップから、RAM14に記憶された新しい履歴情報を削除する。
【0035】
S204を実行した後、CPU12は、RAM14に記憶された新しい履歴情報より古い履歴情報であって、第二種のカートリッジ85に設けられたICチップに記憶された履歴情報が読み出され、第一種のカートリッジ85に設けられたICチップにこの履歴情報が記憶されるようにIC読書部30を制御する(S206)。第二種のカートリッジ85に設けられたICチップから読み出される古い履歴情報は、例えば、第二種のカートリッジ85に設けられたICチップに記憶された全ての履歴情報のうち、最も古い履歴情報が選択される。IC読書部30は、第二種のカートリッジ85に設けられたICチップから古い履歴情報(最も古い履歴情報)を読み出す。読み出されたこの古い履歴情報は、一旦、RAM14に記憶されると共に、第二種のカートリッジ85に設けられたICチップから削除される。続けて、IC読書部30は、第一種のカートリッジ85に設けられたICチップに、RAM14に記憶された古い履歴情報を書き込む。これによって、第一種のカートリッジ85に設けられたICチップには、古い履歴情報が記憶される。
【0036】
CPU12は、S204で第一種のカートリッジ85に設けられたICチップから読み出され、RAM14に記憶された新しい履歴情報が、S206の対象となった第二種のカートリッジ85に設けられたICチップに記憶されるようにIC読書部30を制御する(S208)。IC読書部30は、RAM14に記憶された新しい履歴情報を前述の第二種のカートリッジ85に設けられたICチップに書き込む。これによって、第二種のカートリッジ85に設けられたICチップには、新しい履歴情報が記憶される。
【0037】
S202〜S208に関し、第一種のカートリッジ85に設けられたICチップに、第二種のカートリッジ85に設けられたICチップに記憶された履歴情報より新しい履歴情報が複数記憶されている場合(S202:Yes)、S204では、この複数の履歴情報が対象とされる。S206では、同数の古い履歴情報が対象とされる。対象とされる古い履歴情報は、例えば、最も古い履歴情報から古い順に選択される。S208を実行した後、CPU12は、処理をS200に戻し、上記同様にして、S200以降の各処理を繰り返す。エンプティ時処理は、印刷装置10の電源がオフされた場合に終了する。
【0038】
エンプティ時処理によれば、処理がS200に戻るタイミングで、全てのICチップ(4色分のカートリッジ85のそれぞれに設けられた4個のICチップ)に記憶されている履歴情報を時間情報順に整理した場合、最も古い履歴情報からICチップの記憶容量に対応した数の複数の履歴情報が、第一種のカートリッジ85に設けられたICチップに記憶される。インクエンプティとなった第一種のカートリッジ85は、装着部83から取り外され、同色の新しいカートリッジ85に交換される。
【0039】
<履歴情報管理の具体例>
上述した履歴記憶処理(図2参照)及びエンプティ時処理(図3参照)に基づいた履歴情報管理の一例について、図4等を参照して説明する。図4において、「インク色」の欄に図示された履歴情報の記憶状態を示すインク色毎のボックスは、各色のカートリッジ85に設けられたICチップにおいて履歴情報を記憶するための記憶領域を示すものである。図4に示す例では、各色当たり3つのボックスを図示し、各色当たり3つの履歴情報が記憶できる(記憶容量は履歴情報3つ相当)こととしている。ボックス内の「網点」は、インクの残量に対応するものである。図4に示す例では、インクの残量は、記憶領域を示すボックス単位で減少させている。図4に示す履歴情報としての「印刷ログ」に関し、これに付した数値は、印刷された順序に対応するものであって、数値が小さくなる程、古い印刷ログである。換言すれば、数値が大きくなる程、新しい印刷ログである。図4に示す印刷ログのうち、「印刷ログ1」が最も古い印刷ログであり、「印刷ログ6」は最も新しい印刷ログである。図4において、最も上段(図4の「1段目」参照)は、装着部83C,83M,83Y,83Kに、新品のカートリッジ85C,85M,85Y,85Kがそれぞれ装着された状態に対応する。この状態において、カートリッジ85C,85M,85Y,85Kには、インクがフルの状態で充填され、且つ、それぞれに設けられたICチップには、履歴情報が1つも記憶されていない。
【0040】
印刷装置10が使用され、ICチップへの履歴情報の記憶状態と、各色のインク残量とが、図4の「2段目」のような状態になったとする。この状態において、印刷装置10のユーザが、操作部20を操作し、クリーニングのための指示を入力したとする。印刷装置10では、クリーニングが実行される。クリーニングが実行されると、CPU12は、上述した履歴記憶処理(図2参照)を開始する。CPU12は、最も残量の少ないカートリッジ85としてカートリッジ85Yを特定する(S100参照)。カートリッジ85Yには、既に3つの履歴情報(「印刷ログ1」、「印刷ログ2」及び「印刷ログ4」)が記憶されている(図4の「2段目」参照)。そのため、カートリッジ85Yを対象としてS108が実行されると、その判断は否定される(S108:No)。その後、履歴記憶処理は、上述した通りに順次実行される。クリーニングが完了した時点において、カートリッジ85Cの残量は、カートリッジ85Kの残量より少ないとする。S114でCPU12は、カートリッジ85Kより残量の少ないカートリッジ85Cを特定する。カートリッジ85Cに設けられたICチップには、2つの履歴情報(「印刷ログ6」及び「ブラック交換」(カートリッジ85Kが交換されたことを示す履歴情報))が記憶されている(図4の「2段目」参照)。カートリッジ85Cに設けられたICチップには、残り1つの履歴情報を記憶することができる。このような場合、カートリッジ85Cを対象としてS108が実行されると、その判断は肯定される(S108:Yes参照)。その後、CPU12は、履歴情報としての「クリーニング」をカートリッジ85Cに設けられたICチップに記憶する(S110,図4の「3段目」参照)。
【0041】
前述したクリーニングが完了した後、印刷装置10のユーザが、クリーニングによって好適な画像が印刷可能となったかを確認するため、操作部20を操作し、印刷装置10にテストプリントのための指示を入力したとする。印刷装置10では、テスト画像が印刷される。テストプリントが実行されると、CPU12は、履歴記憶処理(図2参照)を開始し、上述した通りに各手順を実行する。CPU12は、カートリッジ85Kを特定する(S114参照)。カートリッジ85Kに設けられたICチップには、履歴情報は記憶されていないから(図4の「3段目」参照)、カートリッジ85Kを対象としてS108が実行されると、その判断は肯定される(S108:Yes参照)。その後、CPU12は、履歴情報としての「テストプリント」をカートリッジ85Kに設けられたICチップに記憶する(S110,図4の「4段目」参照)。テストプリントが完了した後、印刷装置10に、再度、クリーニングのための指示が入力されたとする。印刷装置10では、クリーニングが実行される。この場合についても、上述した場合と同様にして、CPU12は、履歴情報としての「クリーニング」をカートリッジ85Kに設けられたICチップに記憶する(S110,図4の「5段目」参照)。
【0042】
電源がオンされた後、エンプティ時処理(図3参照)の実行が継続されている印刷装置10で、カートリッジ85Yのインクエンプティが残量検出部28によって検出されたとする(S200参照)。この場合、CPU12は、交換対象であるカートリッジ85Yに設けられたICチップに、カートリッジ85C,85M,85Kにそれぞれ設けられたICチップに記憶された履歴情報より新しい履歴情報が記憶されているか否かを判断する(S202参照)。カートリッジ85Yがインクエンプティとなった後、カートリッジ85Yが交換されたことを示すカートリッジ交換ログが記憶される直前の記憶状態(図4の「5段目」参照)では、インクエンプティとなったカートリッジ85Yに設けられたICチップに、インクエンプティではないカートリッジ85Mに設けられたICチップに記憶された「印刷ログ3」より新しい「印刷ログ4」が記憶されている。「印刷ログ3」は、インクエンプティではないカートリッジ85C,85M,85Kに設けられたICチップに記憶された全ての履歴情報のうち、最も古い履歴情報であるとする。
【0043】
このような場合、CPU12は、S202を肯定し(S202:Yes参照)、「印刷ログ4」をカートリッジ85Yに設けられたICチップから読み出すようにIC読書部30を制御する(S204参照)。IC読書部30は、カートリッジ85Yに設けられたICチップから、このICチップに記憶された「印刷ログ4」を読み出す。読み出された「印刷ログ4」は、RAM14に記憶される。S204でCPU12は、RAM14に記憶された「印刷ログ4」がカートリッジ85Yに設けられたICチップから削除されるように制御する。IC読書部30は、カートリッジ85Yに設けられたICチップから、RAM14に記憶された「印刷ログ4」を削除する。
【0044】
その後、CPU12は、RAM14に記憶された「印刷ログ4」より古い「印刷ログ3」(最も古い履歴情報)が読み出され、カートリッジ85Yに設けられたICチップに「印刷ログ3」が記憶されるようにIC読書部30を制御する(S206参照)。IC読書部30は、カートリッジ85Mに設けられたICチップから「印刷ログ3」を読み出す。読み出された「印刷ログ3」は、一旦、RAM14に記憶されると共に、カートリッジ85Mに設けられたICチップから削除される。続けて、IC読書部30は、カートリッジ85Yに設けられたICチップに、RAM14に記憶された「印刷ログ3」を書き込む(図4の「6段目」参照)。
【0045】
CPU12は、カートリッジ85Yに設けられたICチップから読み出され、RAM14に記憶された「印刷ログ4」が、カートリッジ85Mに設けられたICチップに記憶されるようにIC読書部30を制御する(S208参照)。IC読書部30は、RAM14に記憶された「印刷ログ4」をカートリッジ85Mに設けられたICチップに書き込む(図4の「6段目」参照)。ユーザは、インクエンプティとなったカートリッジ85Yを、装着部83Yから取り外し、新品のカートリッジ85Yを装着する。カートリッジ85Yの脱着(交換)は、装着部83Yに対して設けられた装着検出部26によって検出される。交換された新品のカートリッジ85Yに設けられたICチップには、履歴情報が1つも記憶されていない(図4の「7段目」参照)。
【0046】
新品のカートリッジ85Yへの交換が完了した後、CPU12は、履歴記憶処理(図2参照)を開始し、上述した通りに各手順を実行する。カートリッジ85Y及びカートリッジ85Kの残量が等しく、且つ、ブラックインクは、イエローインクと比較して累積使用量が多いとする。CPU12は、累積使用量の多い色のカートリッジ85Kを特定する(S106参照)。カートリッジ85Kに設けられたICチップには、2つの履歴情報(「クリーニング」及び「テストプリント」)が記憶されている(図4の「6段目」参照)。カートリッジ85Kに設けられたICチップには、残り1つの履歴情報を記憶することができる。このような場合、カートリッジ85Kを対象としてS108が実行されると、その判断は肯定される(S108:Yes参照)。その後、CPU12は、履歴情報としての「イエロー交換」(カートリッジ85Yが交換されたことを示す履歴情報)を、カートリッジ85Kに設けられたICチップに記憶する(S110,図4の「7段目」参照)。
【0047】
カートリッジ85Yを交換したタイミング、又は、交換から所定期間経過した後、ユーザが、操作部20を操作し、印刷装置10にテストプリントのための指示を入力したとする。印刷装置10では、テスト画像が印刷される。テストプリントが実行されると、CPU12は、履歴記憶処理(図2参照)を開始し、上述した通りに各手順を実行する。CPU12は、カートリッジ85Yを特定する(S114参照)。カートリッジ85Yに設けられたICチップには、履歴情報は記憶されていないから(図4の「7段目」参照)、カートリッジ85Yを対象としてS108が実行されると、その判断は肯定される(S108:Yes参照)。その後、CPU12は、履歴情報としての「テストプリント」をカートリッジ85Yに設けられたICチップに記憶する(S110,図4の「8段目」参照)。以降、印刷装置10では、所定の事象が新たに発生又は実行される毎に、履歴記憶処理(図2参照)が実行され、また、インクエンプティが検出される毎に、エンプティ時処理(図3参照)が実行される。これによって、カートリッジ85にそれぞれ設けられたICチップに、適宜、履歴情報が記憶される。
【0048】
<本実施形態による効果>
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0049】
(1)履歴記憶処理(図2参照)では、事象が新たに発生又は実行された場合、最も残量の少ないカートリッジ85を特定し(S100参照)、新たな事象の履歴情報を、特定されたカートリッジ85に設けられたICチップに記憶する(S110参照)こととした。そのため、交換までの期間が短いと考えられるカートリッジ85に設けられたICチップに、新たな事象の履歴情報を記憶することができる。カートリッジ85が交換された場合、印刷装置10の製造者は、交換されたカートリッジ85を回収することで、履歴情報を解析することができる。
【0050】
(2)履歴記憶処理(図2参照)では、最も残量の少ないカートリッジ85との残量差が一定範囲内であるカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量が、最も残量の少ないカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量より多い場合(S104:Yes)、履歴情報の記憶先として、この残量差が一定範囲内のカートリッジ85を特定し(S106参照)、新たな事象の履歴情報を、S106で特定されたカートリッジ85に設けられたICチップに記憶する(S110参照)こととした。一方、最も残量の少ないカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量が、最も残量の少ないカートリッジ85との残量差が一定範囲内であるカートリッジ85に充填されているインクの累積使用量より多い、又は、両累積使用量が同一である場合(S104:No参照)、新たな事象の履歴情報を、最も残量の少ないカートリッジ85に設けられたICチップに記憶する(S110参照)こととした。そのため、累積使用量に基づき、交換までの期間が短く早いタイミングで交換されると考えられるカートリッジ85を好適に特定し、特定されたカートリッジ85に設けられたICチップに新たな事象の履歴情報を記憶することができる。
【0051】
(3)履歴記憶処理(図2参照)では、S100又はS106で特定されたカートリッジ85に設けられたICチップに履歴情報を記憶させるための空き容量がない場合(S108:No参照)、空き容量のある別のカートリッジ85を特定し(S114、S108:Yes参照)、この別のカートリッジ85に設けられたICチップに新たな履歴情報を記憶する(S110参照)こととした。一方、全てのカートリッジ85に設けられたICチップにおいて、空き容量がない場合(S108:No、S112:No参照)、全てのカートリッジ85の各ICチップに記憶された履歴情報のうち、最も古い履歴情報を、この最も古い履歴情報が記憶されたICチップから削除する(S116参照)こととした。そのため、新たな事象の履歴情報を、何れかのカートリッジ85に設けられたICチップに記憶する(S120参照)ことができる。
【0052】
最も古い履歴情報が記憶されたICチップから削除した場合、全てのカートリッジ85に設けられたICチップに記憶された全ての履歴情報を対象として、残量検出部28によって残量が検出されたカートリッジ85のうち、残量の少ないカートリッジ85ほど、古い履歴情報が記憶された状態となるように各履歴情報の記憶先を再配置する(S118参照)こととした。その上で、新たな事象の履歴情報が最も残量の多いカートリッジ85に設けられたICチップに記憶される(S120参照)こととした。そのため、新たな事象の履歴情報を含む管理対象とされる履歴情報を、残量及び履歴情報の時系列に応じてまとめることができる。
【0053】
(4)エンプティ時処理(図3参照)では、インクエンプティが検出され(S200参照)、インクエンプティとなった第一種のカートリッジ85に設けられたICチップに、インクエンプティではない第二種のカートリッジ85に設けられたICチップに記憶された履歴情報より新しい履歴情報が記憶されている場合(S202:Yes参照)、新旧の履歴情報の記憶先を変更する(S204〜S208参照)こととした。第一種のカートリッジ85に設けられたICチップに記憶されることとなる古い履歴情報としては、第二種のカートリッジ85に設けられたICチップに記憶された全ての履歴情報のうち、最も古い履歴情報が選択される。そのため、インクエンプティではない第二種のカートリッジ85に設けられたICチップに新しい履歴情報が記憶され、インクエンプティである第一種のカートリッジ85に設けられたICチップに最も古い履歴情報が記憶された状態とすることができる。インクエンプティとなり交換されるカートリッジ85に設けられたICチップには、管理対象とされる全ての履歴情報のうち、最も古い履歴情報からICチップの記憶容量に対応した数の複数の履歴情報が記憶される。例えば、インクの色毎にカートリッジ85の交換サイクルが異なるような場合であっても、全色用のカートリッジ85を対象として、履歴情報の記憶先を変更し、前述したような状態に履歴情報をまとめることができる。印刷装置10の側では、古い履歴情報が多く管理され、新しい履歴情報が管理されていないといった状態の発生を防止することができる。
【0054】
<変形例>
本実施形態は、次のようにすることもできる。
【0055】
(1)上記では、インクジェット方式の印刷装置10を例に説明した。本実施形態は、レーザ方式の印刷装置に適用することもできる。レーザ方式の印刷装置には、複数色のトナーがそれぞれ充填された複数のカートリッジが装着され、各色のトナーを用いて記録媒体に画像が印刷される。各カートリッジには、履歴情報を記憶することができるICチップが設けられる。レーザ方式の印刷装置においても、各カートリッジに設けられた各ICチップには、上記同様、履歴情報が記憶される。
【0056】
(2)上記では、履歴記憶処理のS118において全履歴情報を対象として記憶先を再配置することとした。このような構成は、省略し、又は、実行の有無を選択できるようにしてもよい。この場合、印刷装置10の処理負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 印刷装置
12 CPU
13 プログラムROM
14 RAM
15 フラッシュROM
18 印刷部
20 操作部
22 表示部
24 計時部
26 装着検出部
28 残量検出部
30 IC読書部
32 接続インターフェース(接続I/F)
81,81C,81M,81Y,81K 記録ヘッド
83,83C,83M,83Y,83K 装着部
85,85C,85M,85Y,85K カートリッジ
87,87C,87M,87Y,87K 送液路
90 外部装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカートリッジにそれぞれ充填された各色の記録剤を用いて記録媒体に画像を印刷する印刷装置であって、
前記印刷装置に装着された複数のカートリッジにそれぞれ充填されている記録剤の残量を、カートリッジ毎に検出する残量検出部と、
カートリッジに設けられた記憶素子に、前記印刷装置で発生又は実行された所定の事象に関する履歴情報を記憶する記憶部と、
カートリッジに設けられた記憶素子から、該記憶素子に記憶された履歴情報を読み出す読出部と、を備え、
前記記憶部は、前記印刷装置で所定の事象が新たに発生又は実行された場合、前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、最も残量の少ないカートリッジに設けられた記憶素子に、新たな事象の履歴情報を記憶する、印刷装置。
【請求項2】
前記印刷装置で画像の印刷に用いられた記録剤の累積使用量を、記録剤の色毎に管理するカウンタ部を備え、
前記記憶部は、前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、第一色の記録剤が充填されているカートリッジが最も残量の少ないカートリッジで、第二色の記録剤が充填されているカートリッジの残量と第一色の記録剤が充填されているカートリッジの残量との差が予め定めた一定範囲内である場合、第一色の記録剤及び第二色の記録剤うち、前記カウンタ部で管理された累積使用量が多い色の記録剤が充填されているカートリッジに設けられた記憶素子に、新たな事象の履歴情報を記憶する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記読出部は、前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、残量が予め定めた基準状態である第一種のカートリッジに設けられた記憶素子から、該記憶素子に記憶された第一種の履歴情報を読み出し、
前記記憶部は、前記読出部によって読み出された第一種の履歴情報を、基準状態ではない第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に記憶する、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、残量が予め定めた基準状態である第一種のカートリッジに設けられた記憶素子に記憶された第一種の履歴情報が、基準状態ではない第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に記憶された第二種の履歴情報より新しい履歴情報であるか否かを判断する判断部を備え、
前記読出部は、
前記判断部によって、第一種の履歴情報が第二種の履歴情報より新しい履歴情報であると判断された第一の場合、第一種のカートリッジに設けられた記憶素子から第一種の履歴情報を読み出し、第二種のカートリッジに設けられた記憶素子から第二種の履歴情報を読み出し、
前記判断部によって、第一種の履歴情報が第二種の履歴情報より新しい履歴情報ではないと判断された第二の場合、第一種のカートリッジに設けられた記憶素子から第一種の履歴情報を読み出さず、第二種のカートリッジに設けられた記憶素子から第二種の履歴情報を読み出さず、
前記記憶部は、
前記第一の場合、第一種のカートリッジに設けられた記憶素子に、前記読出部によって読み出された第二種の履歴情報を記憶し、第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に、前記読出部によって読み出された第一種の履歴情報を記憶し、
前記第二の場合、第一種のカートリッジに設けられた記憶素子に第二種の履歴情報を記憶せず、第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に第一種の履歴情報を記憶しない、請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記読出部は、前記第一の場合、第二種の履歴情報として、第二種のカートリッジに設けられた記憶素子に記憶された履歴情報のうち、最も古い履歴情報を読み出す、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記記憶部は、
最も残量の少ないカートリッジに設けられた記憶素子が記憶容量不足の状態で、新たな事象の履歴情報を記憶できない場合、最も残量の少ないカートリッジ以外のカートリッジに設けられた記憶素子に、該新たな事象の履歴情報を記憶し、
全てのカートリッジに設けられた記憶素子が記憶容量不足の状態で、新たな事象の履歴情報を記憶できない場合、最も古い履歴情報を、該最も古い履歴情報が記憶された記憶素子から削除する、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記記憶部は、
全てのカートリッジに設けられた記憶素子が記憶容量不足の状態で、新たな事象の履歴情報を記憶できず、最も古い履歴情報を、該最も古い履歴情報が記憶された記憶素子から削除した場合、全てのカートリッジに設けられた記憶素子に記憶された全ての履歴情報を対象として、前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、残量の少ないカートリッジほど、古い履歴情報が記憶された状態となるように各履歴情報の記憶先を再配置し、
再配置が実行されたことを条件として、前記残量検出部によって残量が検出されたカートリッジのうち、最も残量の多いカートリッジに設けられた記憶素子に、新たな事象の履歴情報を記憶する、請求項6に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111858(P2013−111858A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260312(P2011−260312)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】