説明

受信装置、フィードバック方法、及びプログラム

【課題】フィードバック対象であるチャネル推定結果のデータ量を削減できる受信装置を提供する。
【解決手段】送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信部11と、受信部11が受信したリファレンス信号を用いて、1以上の送信アンテナと1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定部12と、チャネル推定部12が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成部13と、生成部13が生成した遅延プロファイルを送信装置に送信するフィードバック部14と、を備え、生成部13は、振幅及び遅延間隔の少なくとも一部を除いた遅延プロファイルを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リファレンス信号を用いたチャネル推定結果をフィードバックする受信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のアンテナを介して空間多重により送信・受信を行う多入力多出力(MIMO:Multiple Input Multiple Output)方式の無線通信が行われている(例えば、特許文献1,2)。また、そのようなMIMO方式の無線通信における周波数領域でのチャネル推定に関する種々の方法も知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、そのようなMIMO方式の無線通信において、チャネル推定結果を送信側にフィードバックすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−338779号公報
【特許文献2】特開2005−328312号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M.K.Ozdemir,H.Arslan,「Channel estimation for wireless OFDM systems」、IEEE Communications Surveys&Tutorials,vol.9,no.2,p.18−48,2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、移動体無線通信システムにおいて、コンテンツダウンロードのような高速データ伝送の需要が高まってきている。これに対応するため、例えば、基地局、移動局間の距離の小さいフェムトセルやピコセルを設置し、基地局一つあたりの移動局収容数を減らすことによって、一回線あたりの伝送速度を高めることも行われている。さらに、複数のユーザに高速データ伝送を提供するために、マルチユーザMIMO技術も提案されている。
【0006】
FDD(Frequency Division Duplex)−OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式におけるマルチユーザMIMO技術では、移動局側でチャネル推定を行い、基地局にチャネル推定結果をフィードバックする必要がある。特に、伝送速度を向上させるためには、より正確なチャネル推定結果のフィードバックが求められる。一方、そのチャネル推定結果のフィードバックは、無線リソースを消費することになり、そのことは、より正確なチャネル推定結果をフィードバックする場合に特に顕著となる。したがって、そのようなマルチユーザMIMOの通信等において、チャネル推定結果を送信側にフィードバックする際に、その送信するデータ容量を削減したいという要望があった。フィードバック対象のデータ量を削減できれば、それだけより精度の高いフィードバックを行うことも可能だからである。
一般的に言えば、受信側が送信側にチャネル推定結果をフィードバック送信する無線通信システムにおいて、そのフィードバック対象のデータ量を削減したいという要望があった。
【0007】
本発明は、上記事情に応じてなされたものであり、チャネル推定結果をフィードバックする際のデータ量を削減することができる受信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明による受信装置は、送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信部と、受信部が受信したリファレンス信号を用いて、1以上の送信アンテナと、1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定部と、チャネル推定部が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成部と、生成部が生成した遅延プロファイルを送信装置に送信するフィードバック部と、を備え、生成部は、振幅及び遅延間隔の少なくとも一部を除いた遅延プロファイルを生成する、ものである。
このような構成により、振幅及び遅延間隔の少なくとも一部を除いた遅延プロファイルをフィードバックすることになるため、フィードバックするデータ量を削減することができる。そのため、例えば、より精度の高い遅延プロファイルを送信することも可能となりうる。一方、一部の振幅及び遅延間隔を除いたとしても、その除いた振幅及び遅延間隔と、他の遅延プロファイルに含まれる振幅及び遅延間隔とが大きく異ならない場合には、遅延プロファイルを受信した側において、すべてのチャネルに応じたチャネル推定結果を適切に得ることができることになる。
【0009】
また、本発明による受信装置では、前記送信装置と前記受信装置との間に2以上のチャネルが存在し、生成部は、少なくとも一のチャネルについては振幅、位相、遅延間隔のすべてを含む遅延プロファイルを生成し、他のチャネルについては位相のみを含む遅延プロファイルを生成してもよい。
同じ受信装置が使用している無線通信のチャネルについては、振幅や遅延間隔は大きく変わらないと考えられるため、このような構成により、フィードバックの品質を落とさないでフィードバックのデータ量を削減することができうる。
【0010】
また、本発明による受信装置では、前記送信装置と前記受信装置との間に2以上のチャネルが存在し、生成部は、すべてのチャネルに関する振幅の平均及び遅延間隔の平均を含む遅延プロファイルを生成し、すべてのチャネルについて位相のみを含む遅延プロファイルを生成してもよい。
同じ受信装置が使用している無線通信のチャネルについては、遅延プロファイルは大きく変わらないと考えられるため、このような構成により、フィードバックの品質を落とさないでフィードバックのデータ量を削減することができうる。
【0011】
また、本発明による受信装置では、生成部は、基準となる生成時には、振幅、位相、遅延時間のすべてを含む遅延プロファイルを生成し、基準となる生成時以外には、位相のみを含む遅延プロファイルを生成してもよい。
同じ受信装置が使用している無線通信のチャネルについては、振幅や遅延間隔は位相に比べて時間的に大きく変わらないと考えられるため、このような構成により、フィードバックの品質を落とさないでフィードバックのデータ量を削減することができうる。
【0012】
また、本発明による受信装置では、送信装置及び受信装置は、MIMO(MultipleInputMultipleOutput)により通信を行うものであり、送信装置は、2以上の送信アンテナを用いて送信を行ってもよい。
このような構成により、MIMOによる通信においても、フィードバックのデータ量を削減することができる。
【0013】
また、本発明によるフィードバック方法は、送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信ステップと、受信ステップで受信したリファレンス信号を用いて、1以上の送信アンテナと、1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定ステップと、チャネル推定ステップで取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成ステップと、生成ステップで生成した遅延プロファイルを送信装置に送信するフィードバックステップと、を備え、生成ステップでは、振幅及び遅延間隔の少なくとも一部を除いた遅延プロファイルを生成する、ものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明による受信装置等によれば、周波数領域のチャネル推定値を時間領域に変換し、その一部を除いてフィードバックするため、フィードバック対象のデータ量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1による受信装置の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態における受信部の構成を示すブロック図
【図3】同実施の形態における生成部の構成を示すブロック図
【図4】同実施の形態による受信装置の動作を示すフローチャート
【図5】同実施の形態における遅延プロファイルについて説明するための図
【図6】同実施の形態におけるコンピュータシステムの外観一例を示す模式図
【図7】同実施の形態におけるコンピュータシステムの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による受信装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による受信装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による受信装置は、チャネル推定結果を送信側にフィードバックするものである。
【0018】
図1は、本実施の形態による受信装置1の構成を示すブロック図である。受信装置1は、送信装置2と通信を行うものである。本実施の形態では、受信装置が移動局(UE:User Equipment)であり、送信装置2が基地局(BS:Base Station)である場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。また、本実施の形態では、受信装置1と送信装置2とが複数のアンテナを介してMIMO通信を行う場合について説明するが、受信装置1と送信装置2とは、MIMO以外のチャネル推定結果をフィードバックする通信を行ってもよい。また、本実施の形態では、受信装置1が2個の受信アンテナ3,4を有する場合について説明するが、そうでなくてもよい。受信装置1は、1個以上の受信アンテナを有するものであればよい。また、本実施の形態では、受信装置1が1個である場合について説明するが、2個以上の受信装置が存在してもよい。その場合には、例えば、マルチユーザMIMO通信が行われてもよい。また、本実施の形態では、送信装置2から受信装置1に対して、OFDMによる通信が行われる場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。また、本実施の形態では、送信装置2が2個の送信アンテナ5,6を介して送信を行う場合について説明するが、そうでなくてもよい。送信装置2は、例えば、1個以上の送信アンテナを介して送信を行うものであればよい。なお、MIMOによる通信が行われる場合には、通常、送信装置2は2個以上の送信アンテナを有することになる。図1で示されるように、本実施の形態による受信装置1は、受信部11と、チャネル推定部12と、生成部13と、フィードバック部14とを備える。
【0019】
受信部11は、送信装置2が送信アンテナ5,6から送信したリファレンス信号を、受信アンテナ3,4を介して受信する。また、受信部11は、フィードバックされた遅延プロファイルに応じたMIMOの受信を行ってもよい。本実施の形態では、前述のように、受信部11は、OFDMの送信信号を受信するものとする。図2は、その受信部11の詳細な構成を示すブロック図である。図2において、受信部11は、低雑音増幅部31と、局部発振部32と、周波数変換部33と、AD変換部34と、フーリエ変換部35と、等化器36と、復調部37と、P/S(パラレル/シリアル)変換部38とを備える。なお、図2では、一の受信処理系列のみを示しているが、受信部11は、受信装置1の有するアンテナの個数に応じた受信処理系列を有してもよい。また、その場合には、P/S変換部38の後段等において、MIMOに関してアンテナごとの信号を抽出する処理部が存在してもよく(例えば、シングルユーザMIMOの場合等)、あるいは、存在しなくてもよい(例えば、プリコーディングの場合等)。
【0020】
低雑音増幅部31は、受信アンテナ3,4で受信された受信信号を受信し、その受信した受信信号を増幅する。局部発振部32は、周波数変換のための信号を生成する。周波数変換部33は、局部発振部32によって生成された信号を用いて、受信信号を周波数変換し、AD変換部34で変換できる等価ベースバンド帯域受信信号に変換する。AD変換部34は、等価ベースバンド帯域受信信号であるアナログ信号をデジタル信号に変換する。なお、このデジタル信号は、複数のサブキャリアに応じた複数の並列した信号となる。フーリエ変換部35は、AD変換後のデジタル信号を受け付け、それらの複数の信号を並列して高速フーリエ変換することによって、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。等化器36は、後述するチャネル推定部12が取得したチャネル推定値を用いて等化処理を行う。復調部37は、等化処理後の信号を復調する。P/S変換部38は、サブキャリアごとの並列配列の信号を直列配列に変換する。その結果、受信部11は、送信装置2が送信した信号そのものを得ることができる。
【0021】
なお、受信部11の構成は、これに限定されるものではなく、他の構成であってもよい。例えば、高速フーリエ変換に代えて、離散フーリエ変換を用いてもよい。このように、受信部11の構成には任意性が存在する。また、受信部11は、OFDM以外による受信を行ってもよい。すなわち、受信部11は、OFDM以外による受信を行うことができる構成を有していてもよい。受信部11は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な部分については、受信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0022】
また、受信装置1において、送信時の周波数変換と、受信時の周波数変換で用いられる局部発振部は、送信の構成と、受信の構成とにおいて共用されてもよい。また、例えば、局部発振部32が生成する周波数が2.4GHzであり、受信アンテナ3,4で受信された受信信号の周波数が2.4GHzであり、周波数変換部33による周波数変換後の等価ベースバンド帯域の受信信号の周波数が0GHzであってもよい。なお、これらの周波数は一例であり、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0023】
チャネル推定部12は、送信装置2が複数の送信アンテナ5,6からそれぞれ送信したリファレンス信号を受信部11が受信した場合に、そのリファレンス信号を用い、複数の送信アンテナ5,6のそれぞれと、複数の受信アンテナ3,4のそれぞれとの組み合わせに応じた各チャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得する。すなわち、チャネルごとに周波数領域のチャネル推定値が取得されることになる。例えば、送信アンテナ5からリファレンス信号r,r,…が送信されたとする。なお、そのリファレンス信号は、あらかじめ決められている異なる周波数を介して送信される。例えば、OFDMの場合、そのOFDMのサブキャリア分のリファレンス信号が、各サブキャリアに応じた周波数で送信される。そして、そのリファレンス信号r,r,…が受信アンテナ3を介して受信部11によって受信されたとする。その受信されたフーリエ変換後の受信信号(すなわち、フーリエ変換部35の出力)がy,y,…であったとする。なお、yは、rと同じ周波数の信号である(n=1,2,…)。また、リファレンス信号rの伝搬された周波数における伝搬特性をhとすると、y=r×hとなる。なお、リファレンス信号はあらかじめ決められている既知の信号であるため、チャネル推定部12は、r,r,…を知ることができる。したがって、チャネル推定部12は、送信アンテナ5と、受信アンテナ3との間のチャネル推定値h,h,…を算出することができる。なお、リファレンス信号r,r,…は、複数の周波数に応じた信号を有する一の信号として送信されてもよい。したがって、リファレンス信号r,r,…は、複数の別々の信号であってもよく、一つの信号であってもよい。また、送信装置2の送信アンテナ5,6ごとに、送信装置2からリファレンス信号が送信され、そのリファレンス信号を用いて、受信装置1の受信アンテナ3,4ごとにチャネル推定値が算出される。このように、チャネル推定部12は、送信アンテナ5,6と、受信アンテナ3,4とのすべての組み合わせの無線通信チャネルについて、それぞれ複数のチャネル推定値の集合(すなわち、周波数領域におけるチャネル推定値)を算出することになる。なお、このチャネル推定値の集合のことも単にチャネル推定値を呼ぶものとする。本実施の形態では、チャネル推定部12は、送信アンテナ5,6と、受信アンテナ3,4との組み合わせ(すなわち、4個の組み合わせ)について、チャネル推定値を取得する。すなわち、チャネル推定部12は、送信アンテナ5と受信アンテナ3との間のチャネル推定値h11、送信アンテナ5と受信アンテナ4との間のチャネル推定値h12、送信アンテナ6と受信アンテナ3との間のチャネル推定値h21、送信アンテナ6と受信アンテナ4との間のチャネル推定値h22を取得する。なお、h11等は、前述のように、複数の周波数に応じた複数のチャネル推定値の集合である。また、送信アンテナがA個であり、受信アンテナがB個である場合には、チャネル推定部12は、A×B個のチャネル推定値を取得することになる。また、送信装置2が送信アンテナ5を介して送信するリファレンス信号と、送信アンテナ6を介して送信するリファレンス信号とは、時分割多重方式により送信されてもよく、符号分割多重方式により送信されてもよく、あるいは、チャネル推定を行うことができるその他の方法によって送信されてもよい。なお、チャネル推定値の取得の処理はすでに公知であり、例えば、前述の特許文献1,2、非特許文献1等を参照されたい。
【0024】
生成部13は、チャネル推定部12が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する。この遅延プロファイルは、時間領域でのチャネル推定結果である。したがって、本実施の形態では、この遅延プロファイルであるチャネル推定結果を送信装置2にフィードバックする。なお、そのフィードバックのデータ量を削減するため、生成部13は、その振幅及び遅延間隔の少なくとも一部を除いた遅延プロファイルを生成する。本実施の形態では、生成部13は、図3で示されるように、逆フーリエ変換手段41と、遅延プロファイル生成手段42と、削減手段43とを備える。
【0025】
逆フーリエ変換手段41は、周波数領域のチャネル推定値に対して逆高速フーリエ変換を行い、時間領域の信号に変換する。前述のように、チャネル推定値h11等は複数の周波数に応じた複数のチャネル推定値の集合である。そのチャネル推定値に逆高速フーリエ変換が行われることによって、例えば、図5で示されるような時間領域の波形が得られる。この波形は、チャネルを構成している複数のパス(送信側のアンテナから、受信側のアンテナへの複数の伝搬経路)を示すものである。なお、逆フーリエ変換手段41は、各チャネルについて、逆高速フーリエ変換を行う。すなわち、本実施の形態の場合には、送信装置2と受信装置1との間の4個の各無線通信チャネルに対応したチャネル推定値h11、h12、h21、h22のそれぞれについて逆高速フーリエ変換が行われる。なお、逆フーリエ変換手段41は、逆高速フーリエ変換に代えて逆離散フーリエ変換を行ってもよい。
【0026】
遅延プロファイル生成手段42は、逆高速フーリエ変換の結果を用いて、遅延プロファイルを生成する。遅延プロファイル生成手段42は、逆高速フーリエ変換後の波形から、チャネルを構成する各パスの遅延間隔と、振幅と、位相とを取得し、それらを含む遅延プロファイルを生成する。生成された遅延プロファイルは、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。その遅延間隔は、逆高速フーリエ変換後の波形におけるパス(ピーク)間の時間間隔である。例えば、図5のように、複数のパス(ピーク)が存在する場合には、各パスの間の時間間隔を示す複数の遅延間隔が取得される。なお、遅延間隔は、結果としてパス間の時間間隔を知ることができるのであれば、他の情報であってもよい。例えば、ある基準とする時点と、各パスとの間の時間間隔であってもよい。その基準とする時点は、例えば、1個目のパスの時点であってもよく、あるいは、他の同期等で用いられる時点であってもよい。また、振幅は、逆高速フーリエ変換後の波形におけるパスの実数振幅であり、位相は、そのパスの位相である。ここで、本実施の形態では、「振幅」は、複素振幅と明記しない限りは、実数振幅であるとする。したがって、遅延プロファイルは、遅延間隔と、複素振幅とを含むと言うこともできる。なお、遅延プロファイル生成手段42は、周波数領域のチャネル推定値h11、h12、h21、h22の逆高速フーリエ変換のそれぞれの結果から、遅延プロファイルDP11、DP12、DP21、DP22を生成する。なお、周波数領域のチャネル推定値hijに対応した遅延プロファイルをDPijとしている。このように、通常、一のチャネルに応じた周波数領域のチャネル推定値から、一の遅延プロファイルが生成されるが、後述するように例外もありうる。
【0027】
削減手段43は、遅延プロファイル生成手段42が生成した遅延プロファイルから、振幅及び遅延間隔の少なくとも一部を除く処理を行う。この処理が行われることにより、フィードバック対象のデータ量を少なくすることができる。なお、削減手段43は、周波数領域のチャネル推定値h11、h12、h21、h22のそれぞれに対応した遅延プロファイルDP11、DP12、DP21、DP22について、その一部の情報を削減する処理を行う。その結果、通常、少なくとも一部の情報が削減された4個の遅延プロファイルRDP11、RDP12、RDP21、RDP22が生成されることになる。なお、遅延プロファイルをDPijに対応した、データの削減処理後の遅延プロファイルを遅延プロファイルRDPijとしている。なお、各遅延プロファイルRDPijは、各遅延プロファイルDPijに対して、データが削減されている場合もあるが、そうでない場合もある。一方、遅延プロファイルRDPijを全体としてみれば、遅延プロファイルDPijの全体に対してデータ量が削減されていることになる。また、結果として、振幅及び遅延間隔の少なくとも一部が除かれるのであれば、削減手段43の行う処理は、必ずしも情報を削除する処理でなくてもよい。例えば、削減手段43は、遅延プロファイル生成手段42が生成した遅延プロファイルから、削減対象の情報を含まない遅延プロファイルを新たに生成することによって、その削減対象の情報を削減した遅延プロファイルを得てもよい。ここで、削減手段43による削減の方法について説明する。
【0028】
(1)アンテナ間の類似性を用いた削減
この場合には、送信装置2と受信装置1との間に2以上のチャネルが存在するものとする。したがって、送信装置2が2以上の送信アンテナを有していてもよく、受信装置1が2以上の受信アンテナを有していてもよく、あるいは、その両方であってもよい。一の受信装置1が2以上の受信アンテナを用いて受信を行う場合には、通常、その2以上の受信アンテナの設置位置は距離的に近くなると考えられる。近年、装置が小型化してきているため、そのことはより顕著になってきている。そのように、近い距離に設置されている2以上の受信アンテナでは、受信アンテナ間で振幅及び遅延間隔がそれほど違わないと考えられる。また、一の送信装置2が2以上の受信アンテナを用いて送信を行う場合にも同様であると考えられる。したがって、削減手段43は、2以上のチャネルに対応した振幅及び遅延時間の少なくとも一つの代表値と、2以上のチャネルごとの位相とがフィードバックされるように、それ以外の情報を削減してもよい。ここで、2以上のチャネルに対応した振幅及び遅延時間の一つの代表値は、(1−1)特定の1個のチャネルの振幅及び遅延間隔であってもよく、あるいは、(1−2)2以上のすべてのチャネルの振幅の平均及び遅延間隔の平均であってもよい。(1−1)の場合に、その特定の1個のチャネルは、例えば、ランダムに選択されたものでもよく、あるいは、複数のチャネルの振幅の平均及び遅延間隔の平均に最も近い振幅や遅延間隔を有するチャネルであってもよい。また、その特定の1個のチャネルは時間の経過に応じて順番に変更されてもよい。
【0029】
(1−1)の場合には、削減手段43は、その特定の1個のチャネルについては、何ら削減を行わず、その他のチャネルについては、振幅と遅延時間の削減を行う。すなわち、削減手段43は、その特定の1個のチャネルについては、振幅、位相、遅延間隔を含む遅延プロファイルを生成し、その他のチャネルについては位相のみを含む遅延プロファイルを生成する。なお、「位相のみを含む」とは、遅延プロファイルについて振幅と遅延間隔とを含まないことを意味しており、その他の情報、例えば、チャネルを識別する情報等を含んでもよいことは言うまでもない。また、ここでは、特定の1個のチャネルについてのみ、何ら削減を行わない場合について説明したが、そのチャネルは、1個以上であってもよい。すなわち、削減手段43は、例えば、少なくとも一のチャネルについては振幅、位相、遅延間隔のすべてを含む遅延プロファイルを生成し、他のチャネルについては位相のみを含む遅延プロファイルを生成してもよい。ここで、位相のみを含む遅延プロファイルのフィードバックされるチャネルが少なくとも1個は存在している必要がある。すなわち、振幅、位相、遅延間隔のすべてを含む遅延プロファイルが生成されるチャネル数は、全体のチャネル数未満である。そうでなければ、全体としてフィードバックのデータ量を削減できないからである。
【0030】
(1−2)の場合には、削減手段43は、すべてのチャネルの振幅の平均と、遅延間隔の平均とを算出する。なお、振幅の平均は、パスごとに算出するものとする。また、遅延間隔が複数存在する場合には、各パスの間ごとに遅延間隔の平均を算出するものとする。そして、削減手段43は、すべてのチャネルに関する振幅の平均及び遅延間隔の平均を含む遅延プロファイルを生成し、すべてのチャネルについて位相のみ含む遅延プロファイルを生成する。この場合には、遅延プロファイルDPijのそれぞれから、位相のみを含む遅延プロファイルRDPijが生成され、さらに振幅及び遅延間隔のそれぞれの平均を含む遅延プロファイルRDP00が生成されてもよく、あるいは、いずれかの遅延プロファイルRDPijに振幅及び遅延間隔のそれぞれの平均が含められてもよい。
【0031】
(2)時間的な類似性を用いた削減
一のチャネルを用いて受信を行う場合には、時間の経過に応じて、位相の方が、振幅や遅延間隔に比べてより変化すると考えられる。したがって、削減手段43は、一のチャネルに対応した遅延プロファイルについて、基準となる時には、削減を行わず、基準となる時以外には、振幅と遅延間隔の削減を行う。すなわち、削減手段43は、基準となる生成時には、振幅、位相、遅延時間のすべてを含む遅延プロファイルを生成し、その基準となる生成時以外には、位相のみを含む遅延プロファイルを生成する。なお、基準となる時は、例えば、一定期間ごと(例えば、1秒ごとや、リファレンス信号の10回の受信ごと等)であってもよく、あるいは、前回の基準となる時に生成した遅延プロファイルに含まれる振幅、遅延時間と比較して、遅延プロファイル生成手段42の生成した遅延プロファイルに含まれる振幅または遅延時間があらかじめ決められたしきい値よりも変化した時点であってもよい。
【0032】
なお、ここでは、(1)(2)の場合について説明したが、それ以外の方法によって遅延プロファイルの情報量の削減を行ってもよい。例えば、削減手段43は、(1)(2)を組み合わせて遅延プロファイルの情報量の削減を行ってもよい。すなわち、特定の1個のチャネルについても、基準となる時のみすべてを含む遅延プロファイルを送信し,それ以外については、位相のみを送信するようにしてもよい。
【0033】
また、ここでは、図3で示されるように、生成部13が、何も削減の行われていないフルの遅延プロファイルをまず生成し、その後に、情報量の削減を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。生成部13は、遅延プロファイルを生成する際に、はじめから情報量の削減された遅延プロファイルを生成してもよい。このように、生成部13の構成は、図3で示されるものに限定されない。
【0034】
フィードバック部14は、生成部13が生成した遅延プロファイルを送信装置2に送信する。この遅延プロファイルは、前述のように、適宜、その一部の情報が削減されたものである。本実施の形態では、チャネル推定値h11、h12、h21、h22のそれぞれに対応した遅延プロファイルRDP11、RDP12、RDP21、RDP22等が、フィードバック部14によって送信装置2に送信される。この送信は、例えば、OFDMによって行われてもよく、あるいは、その他の方式によって行われてもよい。なお、フィードバック部14による送信は、送信対象がチャネル推定値から遅延プロファイルに変わった以外、従来例と同様であり、その詳細な説明を省略する。また、フィードバック部14は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは送信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0035】
ここで、送信装置2にフィードバックされた遅延プロファイルについて簡単に説明する。(1−1)の場合には、少なくとも一のチャネルに応じた遅延プロファイルには振幅及び遅延間隔が含まれているため、他のチャネルに応じた遅延プロファイルの振幅及び遅延間隔として、その振幅及び遅延間隔を用いることになる。なお、2以上のチャネルに応じた遅延プロファイルに振幅及び遅延間隔が含まれている場合には、他のチャネルに応じた遅延プロファイルの振幅及び遅延間隔として、チャネル特性がより近いであると考えられるチャネルに応じた振幅及び遅延間隔を用いることが好適である。チャネル特性が近いとは,例えば、受信側において、あるいは、送信側において、アンテナの共通していることであってもよい。例えば、図1で示される4個のチャネルが存在する場合であって、RDP11,RDP21に振幅及び遅延間隔が含まれており、RDP12,RDP22に振幅及び遅延間隔が含まれていない場合には、RDP12の振幅及び遅延間隔としてRDP11のものを用い、RDP22の振幅及び遅延間隔としてRDP21のものを用いるようにしてもよい。(1−2)の場合には、振幅及び遅延間隔は平均のみがフィードバックされるため、すべてのチャネルの振幅及び遅延間隔として、平均のものを用いることになる。(2)の場合には、基準となる時以外の振幅及び遅延間隔として、基準となる時の振幅及び遅延間隔を用いることになる。
【0036】
次に、受信装置1の動作について図4のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)受信部11は、リファレンス信号(RS)を受信したかどうか判断する。そして、リファレンス信号を受信した場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS106に進む。
【0037】
(ステップS102)チャネル推定部12は、リファレンス信号に応じた周波数領域のチャネル推定値を取得する。すなわち、チャネル推定部12は、例えば、送信アンテナ5と、受信アンテナ3,4との間の複数の周波数に応じたチャネル推定値、及び送信アンテナ6と、受信アンテナ3,4との間の複数の周波数に応じたチャネル推定値を取得する。その取得された周波数領域のチャネル推定値は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。なお、2以上のリファレンス信号が送信される場合には、例えば、ステップS101とステップS102の処理がそのリファレンス信号の数だけ繰り返されてもよい。また、このチャネル推定値は、前述のように、等化器36での等化処理にも用いられる。
【0038】
(ステップS103)生成部13の逆フーリエ変換手段41は、チャネル推定値を逆フーリエ変換する。そして、生成部13の遅延プロファイル生成手段42は、その逆フーリエ変換の結果を用いて、遅延プロファイルを生成する。その遅延プロファイルは、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0039】
(ステップS104)生成部13の削減手段43は、遅延プロファイルの少なくとも一部の情報を前述のように削減する。
【0040】
(ステップS105)フィードバック部14は、一部の情報の削減された遅延プロファイルを、送信装置2に送信する。そして、ステップS101に戻る。
【0041】
(ステップS106)受信部11は、MIMOの送信信号を受信したかどうか判断する。そして、MIMOの送信信号を受信した場合には、ステップS107に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。
【0042】
(ステップS107)受信部11あるいはその他の構成要素によって、受信された送信信号に応じた処理が行われる。そして、ステップS101に戻る。
なお、図4のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0043】
次に、本実施の形態による受信装置1の動作について、具体例を用いて説明する。
まず、送信装置2がリファレンス信号を送信するタイミングとなり、送信アンテナ5,6を介してリファレンス信号が送信されたとする。すると、そのリファレンス信号は、受信アンテナ3,4を介して受信部11で受信される(ステップS101)。そして、チャネル推定部12は、受信部11のフーリエ変換部35の出力を得ることによって、各チャネルの周波数領域におけるチャネル推定値h11、h12、h21、h22を取得し、生成部13の逆フーリエ変換手段41に渡す(ステップS102)。逆フーリエ変換手段41は、各チャネル推定値h11、h12、h21、h22を逆高速フーリエ変換し、それぞれの結果を遅延プロファイル生成手段42に渡す。遅延プロファイル生成手段42は、各チャネル推定値h11、h12、h21、h22の逆高速フーリエ変換の結果ごとに、振幅、遅延間隔、位相を含む遅延プロファイルDP11、DP12、DP21、DP22を生成し、削減手段43に渡す(ステップS103)。それらの遅延プロファイルは、次のようであったとする。なお、t1は、リファレンス信号の受信時に応じた添字であるとする。また、振幅A11t11、A11t12、A11t13等は、時間の順に3個のパスに対応した振幅である。また、遅延間隔DI11t11、DI11t12等は、その3個のパス間の2個の時間間隔(図5参照)に対応したものである。位相P11t11、P11t12、P11t13等は、時間の順に3個のパスに対応した位相である。
[遅延プロファイルDP11
振幅:A11t11、A11t12、A11t1
遅延間隔:DI11t11、DI11t1
位相:P11t11、P11t12、P11t1
[遅延プロファイルDP12
振幅:A12t11、A12t12、A12t1
遅延間隔:DI12t11、DI12t1
位相:P12t11、P12t12、P12t1
[遅延プロファイルDP21
振幅:A21t11、A21t12、A21t1
遅延間隔:DI21t11、DI21t1
位相:P21t11、P21t12、P21t1
[遅延プロファイルDP22
振幅:A22t11、A22t12、A22t1
遅延間隔:DI22t11、DI22t1
位相:P22t11、P22t12、P22t1
削減手段43は、遅延プロファイルから適宜、情報を削減する。ここでは、(1−1)、(1−2)、(2)のそれぞれについて説明する。
【0044】
(1−1)の場合
この場合に、遅延プロファイルDP11については、振幅及び遅延間隔を残し、それ以外の遅延プロファイルについては、振幅及び遅延間隔を削除することになっていたとする。すると、削減手段43は、次のような削減後の遅延プロファイルRDP11、RDP12、RDP21、RDP22を生成し、フィードバック部14に渡す(ステップS104)。遅延プロファイルRDP11以外は振幅及び遅延間隔を含まないことにより、フィードバック対象のデータ量が削減されている。
[遅延プロファイルRDP11
振幅:A11t11、A11t12、A11t1
遅延間隔:DI11t11、DI11t1
位相:P11t11、P11t12、P11t1
[遅延プロファイルRDP12
位相:P12t11、P12t12、P12t1
[遅延プロファイルRDP21
位相:P21t11、P21t12、P21t1
[遅延プロファイルRDP22
位相:P22t11、P22t12、P22t1
【0045】
(1−2)の場合
この場合には、削減手段43は、次のような削減後の遅延プロファイルRDP00、RDP11、RDP12、RDP21、RDP22を生成し、フィードバック部14に渡す(ステップS104)。なお、AAVt11は、A11t11、A12t11、A21t11、A22t11の平均であり、DIAVt11は、DI11t11、DI12t11、DI21t11、DI22t11の平均であり、AAVt12、AAVt13やDIAVt12も同様である。遅延プロファイルRDP00以外は振幅及び遅延間隔を含まないことにより、フィードバック対象のデータ量が削減されている。
[遅延プロファイルRDP00
振幅:AAVt11、AAVt12、AAVt1
遅延間隔:DIAVt11、DIAVt1
[遅延プロファイルRDP11
位相:P11t11、P11t12、P11t1
[遅延プロファイルRDP12
位相:P12t11、P12t12、P12t1
[遅延プロファイルRDP21
位相:P21t11、P21t12、P21t1
[遅延プロファイルRDP22
位相:P22t11、P22t12、P22t1
【0046】
(2)の場合
リファレンス信号の受信時t1が、基準となる時であったとする。すると、削減手段43は、何ら削減を行っていない遅延プロファイルRDP11、RDP12、RDP21、RDP22を生成し、フィードバック部14に渡す(ステップS104)。
[遅延プロファイルRDP11
振幅:A11t11、A11t12、A11t1
遅延間隔:DI11t11、DI11t1
位相:P11t11、P11t12、P11t1
[遅延プロファイルRDP12
振幅:A12t11、A12t12、A12t1
遅延間隔:DI12t11、DI12t1
位相:P12t11、P12t12、P12t1
[遅延プロファイルRDP21
振幅:A21t11、A21t12、A21t1
遅延間隔:DI21t11、DI21t1
位相:P21t11、P21t12、P21t1
[遅延プロファイルRDP22
振幅:A22t11、A22t12、A22t1
遅延間隔:DI22t11、DI22t1
位相:P22t11、P22t12、P22t1
【0047】
なお、次のリファレンス信号の受信時t2は、基準となる時でなかったとする。すると、削減手段43は、次のような削減後の遅延プロファイルRDP11、RDP12、RDP21、RDP22を生成し、フィードバック部14に渡す(ステップS104)。このように、基準となる時以外は、各遅延プロファイルRDP11、RDP12、RDP21、RDP22が振幅及び遅延間隔を含まないことにより、フィードバック対象のデータ量が全体として削減される。
[遅延プロファイルRDP11
位相:P11t21、P11t22、P11t2
[遅延プロファイルRDP12
位相:P12t21、P12t22、P12t2
[遅延プロファイルRDP21
位相:P21t21、P21t22、P21t2
[遅延プロファイルRDP22
位相:P22t21、P22t22、P22t2
【0048】
ここで、この具体例で示したように、すべてのチャネルで基準となる時を共通にしてしまうと、フィードバック対象のデータ量が多くなったり少なくなったり変動することになる。したがって、チャネルごとに、基準となる時をずらすようにしてもよい。例えば、リファレンス信号の4回の受信のうち1回が基準となる時となる場合には、t1のタイミングでは、削減手段43が、
[遅延プロファイルRDP11
振幅:A11t11、A11t12、A11t1
遅延間隔:DI11t11、DI11t1
位相:P11t11、P11t12、P11t1
[遅延プロファイルRDP12
位相:P12t11、P12t12、P12t1
[遅延プロファイルRDP21
位相:P21t11、P21t12、P21t1
[遅延プロファイルRDP22
位相:P22t11、P22t12、P22t1
を生成し、次のt2のタイミングでは、削減手段43が、
[遅延プロファイルRDP11
位相:P11t21、P11t22、P11t2
[遅延プロファイルRDP12
振幅:A12t21、A12t22、A12t2
遅延間隔:DI12t21、DI12t2
位相:P12t21、P12t22、P12t2
[遅延プロファイルRDP21
位相:P21t21、P21t22、P21t2
[遅延プロファイルRDP22
位相:P22t21、P22t22、P22t2
を生成してもよい。
【0049】
また、前述のように、(1)の場合と、(2)の場合とを組み合わせてもよい。例えば、(1−1)において、t1のタイミングでは、遅延プロファイルRDP11として、削減手段43が、
[遅延プロファイルRDP11
振幅:A11t11、A11t12、A11t1
遅延間隔:DI11t11、DI11t1
位相:P11t11、P11t12、P11t1
を生成し、t2のタイミングでは、遅延プロファイルRDP11として、削減手段43が
[遅延プロファイルRDP11
位相:P11t21、P11t22、P11t2
を生成するようにしてもよい。また、例えば、(1−2)においても、削減手段43が、t1のタイミングでは遅延プロファイルRDP00を生成し、t2のタイミングでは遅延プロファイルRDP00を生成しなくてもよい。
【0050】
フィードバック部14は、削減手段43からフィードバック対象の遅延プロファイルを受け取ると、その遅延プロファイルを送信装置2に送信する(ステップS105)。送信装置2では、情報の削減された遅延プロファイルから、前述のようにして、元の遅延プロファイルを構成することができる。そして、その遅延プロファイルは、例えば、プリコーディング等のために用いられてもよい。
また、リファレンス信号の受信の間において、送信信号の受信が行われ、その受信に応じた処理が行われてもよいことは言うまでもない(ステップS106,S107)。
【0051】
以上のように、本実施の形態による受信装置1によれば、チャネルの推定結果を送信装置2にフィードバックする際に、時間領域の遅延プロファイルに変換し、さらにその一部の情報を削減してフィードバックするため、フィードバック対象のデータ量を減少させることができ、フィードバックによる無線リソースの消費を抑えることができる。また、フィードバックのために同じ容量の無線リソースを使用したとしても、本実施の形態のようにデータ量の削減を行う場合には、そのような削減を行わない場合よりも、各チャネルに応じた遅延プロファイルの精度を上げることができる。また、屋内のような比較的コンディションのよい領域で無線通信を行う場合には、チャネルごとに振幅や遅延間隔が大きく異なることはないと考えられるため、本実施の形態のようなデータ量の削減を行ったとしても、それによる品質の悪化は、限定的であると考えられる。したがって、結果として、フィードバック対象のデータ量を減らしながらも、フィードバックするチャネル推定結果の精度を向上させることができ、例えば、より伝送速度の速い通信を実現することができるようになる。
【0052】
なお、フェムトセルやピコセルの条件では、比較的伝送距離が短く、見通しで、少ない数の散乱波数が小さな遅延時間で到来する傾向にある。そのような場合には、周波数領域におけるチャネル推定結果を、逆フーリエ変換して時間領域における情報とした方が、フィードバック対象のデータ量を削減させることができる。また、本実施の形態のように、その時間領域における遅延プロファイルの少なくとも一部を削減してフィードバックすることにより、さらに、フィードバック対象のデータ量を削減することができ、フィードバックにおける無線リソースの消費を少なくすることができる。その結果として、前述のように、より精度の高いチャネル推定結果のフィードバックも可能となる。このように、本実施の形態による受信装置1等は、例えば、フェムトセルやピコセルとの無線通信などのように、屋内の無線通信や短距離の無線通信、見通し無線通信等で用いられることが好適であるが、それ以外の無線通信で用いられてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、フィードバック対象のデータ量の削減方法として、いくつかの具体例を用いて説明したが、それ以外の方法で振幅及び遅延間隔の少なくとも一部の削減を行ってもよいことは言うまでもない。
また、MIMOは通常、OFDMにより行われるため、OFDMによる通信が行われる場合について主に説明したが、OFDMではないMIMOによる通信が行われてもよいことは言うまでもない。
【0054】
また、本実施の形態では、主にシングルユーザMIMO通信を行う場合について説明したが、前述のようにマルチユーザMIMO通信のフィードバックにおいて、データ量の削減を行ってもよい。また、MIMO通信以外のチャネル推定結果の送信が必要なシステムにおいて、本実施の形態のようにして、チャネル推定結果のデータ量の削減を行ってもよいことは言うまでもない。また、前述のように、受信装置1は1個の受信アンテナを用いて受信を行うものであってもよく、3個以上の受信アンテナを用いて受信を行うものであってもよい。
【0055】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、あるいは、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0058】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0059】
また、上記実施の形態において、受信装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、あるいは、別々のデバイスを有してもよい。
【0060】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。なお、上記実施の形態における受信装置1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信部が受信したリファレンス信号を用いて、1以上の送信アンテナと、1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定部、チャネル推定部が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む、送信装置に送信される遅延プロファイルを生成する生成部として機能させ、生成部は、振幅及び遅延間隔の少なくとも一部を除いた遅延プロファイルを生成する、プログラムである。
【0061】
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。すなわち、ハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれないものとする。
【0062】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
【0063】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0064】
図6は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による受信装置1を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
【0065】
図6において、コンピュータシステム900は、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ905、FD(Floppy(登録商標) Disk)ドライブ906を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
【0066】
図7は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。図7において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ905、FDドライブ906に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM(Random Access Memory)913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、前述の送信や受信の処理を行うためのハードウェア、例えば、DA変換器やAD変換器、変調器や復調器等を含んでいてもよく、あるいは、それらのハードウェアに接続されていてもよい。また、コンピュータ901は、LANへの接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0067】
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による受信装置1の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM921、またはFD922に記憶されて、CD−ROMドライブ905、またはFDドライブ906に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM921やFD922、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
【0068】
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態による受信装置1の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0069】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上より、本発明による受信装置等によれば、チャネル推定結果のデータ量を削減できるという効果が得られ、例えば、チャネル推定結果を送信する受信装置等として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 受信装置
2 送信装置
3、4 受信アンテナ
5、6 送信アンテナ
11 受信部
12 チャネル推定部
13 生成部
14 フィードバック部
31 低雑音増幅部
32 局部発振部
33 周波数変換部
34 AD変換部
35 フーリエ変換部
36 等化器
37 復調部
38 P/S変換部
41 逆フーリエ変換手段
42 遅延プロファイル生成手段
43 削減手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信部と、
前記受信部が受信したリファレンス信号を用いて、前記1以上の送信アンテナと、前記1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定部と、
前記チャネル推定部が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成部と、
前記生成部が生成した遅延プロファイルを前記送信装置に送信するフィードバック部と、を備え、
前記生成部は、振幅及び遅延間隔の少なくとも一部を除いた遅延プロファイルを生成する、受信装置。
【請求項2】
前記送信装置と前記受信装置との間に2以上のチャネルが存在し、
前記生成部は、少なくとも一のチャネルについては振幅、位相、遅延間隔のすべてを含む遅延プロファイルを生成し、他のチャネルについては位相のみを含む遅延プロファイルを生成する、請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記送信装置と前記受信装置との間に2以上のチャネルが存在し、
前記生成部は、すべてのチャネルに関する振幅の平均及び遅延間隔の平均を含む遅延プロファイルを生成し、当該すべてのチャネルについて位相のみを含む遅延プロファイルを生成する、請求項1記載の受信装置。
【請求項4】
前記生成部は、基準となる生成時には、振幅、位相、遅延時間のすべてを含む遅延プロファイルを生成し、当該基準となる生成時以外には、位相のみを含む遅延プロファイルを生成する、請求項1記載の受信装置。
【請求項5】
前記送信装置及び前記受信装置は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)により通信を行うものであり、
前記送信装置は、2以上の送信アンテナを用いて送信を行う、請求項1から請求項4のいずれか記載の受信装置。
【請求項6】
送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信したリファレンス信号を用いて、前記1以上の送信アンテナと、前記1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定ステップと、
前記チャネル推定ステップで取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成ステップと、
前記生成ステップで生成した遅延プロファイルを前記送信装置に送信するフィードバックステップと、を備え、
前記生成ステップでは、振幅及び遅延間隔の少なくとも一部を除いた遅延プロファイルを生成する、フィードバック方法。
【請求項7】
コンピュータを、
送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信部が受信したリファレンス信号を用いて、前記1以上の送信アンテナと、前記1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定部、
前記チャネル推定部が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む、前記送信装置に送信される遅延プロファイルを生成する生成部として機能させ、
前記生成部は、振幅及び遅延間隔の少なくとも一部を除いた遅延プロファイルを生成する、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−175407(P2012−175407A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35526(P2011−35526)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「非線形マルチユーザMIMO技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】