説明

可撓性フィルム処理装置

【課題】処理時間を短縮し、スループットを向上させ、早期に装置を立ち上げることができる可撓性フィルム処理装置を提供する。
【解決手段】可撓性フィルム処理装置は、可撓性フィルムを移動する供給ロール及び巻取りロールと、前記供給ロールと前記巻取りロールの間に設けられ、前記可撓性フィルムを処理する処理室と、前記供給ロールと前記処理室の間に設けられた第一の真空室と、前記処理室と前記巻取りロールの間に設けられた第二の真空室と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性フィルムを処理する可撓性フィルム処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性フィルムを処理する装置として、処理室の中に巻取りロールと供給ロールと処理空間を有し、各ロールを回転させることでフィルムが処理空間を経由し、その空間の雰囲気でフィルムを処理するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−272044号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1巻分の処理が終了してフィルムを交換する際は、処理空間を大気開放して交換作業を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、処理空間を大気開放すると、大気中の水分等がチャンバ内壁に付着してしまうという問題がある。また、水分が付着した状態で処理空間を真空にする場合、十分な真空度を得ることが出来ず、さらには、付着した水分と副生成物が反応し、パーティクルが発生するおそれがある。
【0006】
すなわち、処理過程において、処理空間の水分を除去する必要がある。ここで、300mm基板を処理する半導体製造装置では、処理空間が大きいことから、通常1から2日、水分除去に時間を要しているが、半導体基板より大きい可撓性フィルムを処理する装置の場合、半導体製造装置と同じか、それ以上の水分除去の時間を要することが考えられる。
【0007】
本発明の目的は、ロールを交換した場合においても、処理時間を短縮し、スループットを向上させ、早期に装置を立ち上げることができる可撓性フィルム処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、可撓性フィルムを移動する供給ロール及び巻取りロールと、前記供給ロールと前記巻取りロールの間に設けられ、前記可撓性フィルムを処理する処理室と、前記供給ロールと前記処理室の間に設けられた第一の真空室と、前記処理室と前記巻取りロールの間に設けられた第二の真空室と、を有する可撓性フィルム処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
この可撓性フィルム処理装置によれば、ロールを交換した場合においても、処理時間を短縮し、スループットを向上させ、早期に装置を立ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置全体を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置のローダ部周辺を示す(a)は側面図、(b)は上面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置の処理室周辺を示す側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置に用いられるプラズマ生成装置を説明するための側面断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置のアンローダ部周辺を示す側面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置に用いられるローラ対を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置に用いられるローラ対の他の適用例を示し、(a)は2対のローラ対、(b)はフィルム搬送路上面に2つ、下面に1つのローラ、(c)はフィルム搬送路上面に1つ、下面に2つのローラを用いる例を示す平面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置に用いられるローダ部の他の適用例を示す側面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置の一部を示す側面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置の一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る第1の実施形態を図面に即して説明する。
【0012】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置10の全体側面図が示されている。
本実施形態において、本発明に係る可撓性フィルム処理装置10は、筺体12を備えている。筺体12は矩形筒形状に形成されており、筒中空部が可撓性フィルム15(以下、フィルム15とする)を処理する処理室(プロセスチャンバ)14を形成している。
【0013】
筺体12のフィルム搬送路29上流にはゲートバルブ16aを介してローダ部18が連結され、ローダ部18は第1の真空室であるローダ室20を形成している。また、フィルム搬送路29下流にはゲートバルブ16bを介してアンローダ部22が連結され、アンローダ部22は第2の真空室であるアンローダ室24を形成している。すなわち、処理室14を中心に、その前後にフィルム15の真空室であるローダ室20(第一の真空室)とアンローダ室24(第二の真空室)を隣接している。
【0014】
また、ローダ部18のフィルム搬送路29上流にはゲートバルブ16cを介して供給ロール26が配置され、アンローダ部22のフィルム搬送路29下流にはゲートバルブ16dを介して巻取りロール28が配置されている。
【0015】
すなわち、供給ロール26、ローダ部18、筺体12、アンローダ部22及び巻取りロール28の間にそれぞれゲートバルブ16a〜16dを設けることにより、ローダ室20、処理室14及びアンローダ室24がそれぞれ真空に維持されている。
【0016】
また、ローダ部18、筺体12、アンローダ部22には、それぞれ後述するガス供給部と排気部が設けられている。
ローダ部18の下方には、ガス排気口36aが形成されている。このガス排気口36aにガス排気管36bが接続され、このガス排気管36bに、上流側から順に、圧力調整バルブ36cと、排気装置としての真空ポンプ36dが設けられ、この圧力調整バルブ36cの開度を調整することで、ローダ室20内の圧力が所定の値に調整される。
また、筺体12の下方には、ガス排気口37aが形成されている。このガス排気口37aにガス排気管37bが接続され、このガス排気管37bに、上流側から順に、圧力調整バルブ37cと、排気装置としての真空ポンプ37dが設けられ、この圧力調整バルブ37cの開度を調整することで、処理室14内の圧力が所定の値に調整される。
また、アンローダ部22の下方には、ガス排気口38aが形成されている。このガス排気口38aにガス排気管38bが接続され、このガス排気管38bに、上流側から順に、圧力調整バルブ38cと、排気装置としての真空ポンプ38dが設けられ、この圧力調整バルブ38cの開度を調整することで、アンローダ室24内の圧力が所定の値に調整される。
【0017】
ガス排気口36a、ガス排気管36b、圧力調整バルブ36c及び真空ポンプ36dとから排気部36が構成される。
ガス排気口37a、ガス排気管37b、圧力調整バルブ37c及び真空ポンプ37dとから排気部37が構成される。
ガス排気口38a、ガス排気管38b、圧力調整バルブ38c及び真空ポンプ38dとから排気部38が構成される。
【0018】
次に、本実施形態に係る可撓性フィルム処理装置10全体の動作について説明する。
各構成の動作は、制御部114により制御される。
【0019】
フィルム15が供給ロール26からフィルム搬送路29へ供給され、ゲートバルブ16cを介してローダ室20へ搬送される。ここで、ローダ室20は、1処理分以上の長さのフィルムを保管することができる。
【0020】
ローダ室20に搬送されたフィルム15は、ゲートバルブ16aを介して処理室14へ搬送される。このとき、ローダ室20内は、予めガス供給のバルブと圧力調整バルブ36cの開度を調整することにより処理室14と同圧の雰囲気とされている。
【0021】
処理室14に搬送されたフィルム15は、後述する処理がなされ、ゲートバルブ16bを介してアンローダ室24へ搬送される。ここで、アンローダ室24は、1処理分以上の長さのフィルムを保管することができる。このとき、アンローダ室24内は、予めガス供給のバルブと圧力調整バルブ38cの開度を調整することにより処理室14と同圧の雰囲気とされている。
【0022】
すなわち、処理室14を中心に、その前後にゲートバルブ16を介して大気と真空を入れ替える真空室(ローダ室20、アンローダ室24)を設けることで、処理室14内を真空に維持することができる。
【0023】
アンローダ室24に搬送されたフィルム15は、ゲートバルブ16dを介して巻取りロール28により巻き取られる。
【0024】
次に、ローダ部18について詳述する。
図2には、本実施形態に係る可撓性フィルム処理装置10のローダ部18周辺の(a)は側面図、(b)は上面図が示されている。
【0025】
供給ロール26とゲートバルブ16cの間のフィルム搬送路29には、上流側から上ガイド30aと下ガイド30bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられ、この上ガイド30a、下ガイド30bの下流には、ローラ32aとローラ32bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられている。すなわち、供給ロール26から供給されたフィルム15が上下ガイド30a、30b間からローラ32a、32b間に導かれ、さらに、ゲートバルブ16c内のフィルム搬送路29に略水平に導かれるようになっている。
【0026】
ローダ部18のゲートバルブ16c側の側壁には、入口40が開設されており、入口40と対向するゲートバルブ16a側の側壁には、出口42が開設されている。
【0027】
入口40と出口42の間には、上流側から上ガイド44aと下ガイド44bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられている。
【0028】
上ガイド44a、下ガイド44bの下流には、ローラ46aとローラ46bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられ、フィルム搬送路29は、供給ロール26からローラ46a、46b間までは略水平に形成されている。
【0029】
ローラ46a、46bの下流には、供給ロール26から前記略水平に形成されたフィルム搬送路29を垂直方向下方に可動するローラ48aとローラ48bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられている。
【0030】
ローラ48a、48bの下流には、ローラ46a、46bと略水平方向に配置されたローラ50aとローラ50bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられている。
【0031】
ローラ50a、50bの下流側には、上ガイド52aと下ガイド52bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられて、フィルム搬送路29は出口42に接続されている。
【0032】
すなわち、ローダ室20内の略中央に配置されたローラ対48a、48bが供給ロール26と略水平方向から略垂直方向下に移動されることにより、供給ロール26から略水平に形成されたフィルム搬送路29が、ローラ対46a、46bを通過して略垂直方向下方に変形され、ローラ対48a、48bを最下点として通過して略垂直方向上方に変形されて、ローラ対50a、50bを通過して略水平方向に変形されて、ローダ室20から排出され、ゲートバルブ16aへ搬送され、これにより、1処理分以上の長さのフィルムをローダ室20内に保管することができる。
【0033】
ローダ部18の天井壁には、パージガスをローダ室20内に供給するパージガス供給口34aが開設されている。また、ローダ部18の下側面には、ローダ室20内のガスを排気するガス排気口36aが形成されており、このガス排気口36aはガス排気管36bに接続されている。
【0034】
パージガス供給口34aにはパージガス供給管34bの一端が接続されている。パージガス供給管34bには、上流から順に、パージガス供給源34e、パージガスの流量を調整する流量制御装置34d、ガス流路を開閉するバルブ34cが設けられている。バルブ34cを開閉することで、パージガス供給管34bからローダ室20内にパージガスが供給され、又は供給停止される。
【0035】
パージガス供給口34aとパージガス供給管34bとバルブ34cと流量制御装置34dとパージガス供給源34eとから、パージガス供給部34が構成される。流量制御装置34dとバルブ34cは、制御部114と電気的に接続されており、制御部114により制御される。
【0036】
次に、ローダ部18の動作について詳述する。
各構成の動作は、制御部114により制御される。
【0037】
ローラ32a、46a、48aはフィルム15を軽く抑え、ローラ50aはフィルム15を固定するものである。
【0038】
まず、ローラ対48を図2の破線で示されている上方の位置(供給ロール26から略水平の位置)に配置させる。このとき、ゲートバルブ16cは開かれ、ゲートバルブ16aは閉められる。ここで、ゲートバルブ16c、16aを閉めた状態からゲートバルブ16cを開く場合には、圧力調整バルブ36cを閉め、パージガスである例えばN2(窒素)ガスをスローリークさせ、塵埃の巻上げを防止する。
【0039】
次に、供給ロール26からフィルム15の先端をはがし、上下ガイド30にセットし、供給ロール26を回転させる。
【0040】
フィルム15の先端がローラ対32に達すると、ローラ32b、46b、48b、50bが供給ロール26の回転に同期して回転を始める。
【0041】
フィルム15の先端がゲートバルブ16aに達すると、供給ロール26とローラ32b、46b、48b、50bは回転を停止する。
【0042】
次に、供給ロール26とローラ48bは同期して回転し、同時に、ローラ対48が一定の速度で下降する。
【0043】
次に、ゲートバルブ16cが閉められ、ローダ室20内の圧力を圧力調整バルブ36cを調整することにより、処理室14内と同圧力にする。
【0044】
次に、ゲートバルブ16aが開かれる。
【0045】
次に、処理室14について詳述する。
図3には、本実施形態に係る可撓性フィルム処理装置10の処理室14周辺が示されている。
【0046】
処理室14を構成する筺体12のゲートバルブ16a側の側壁には、入口49が開設されており、入口49と対向するゲートバルブ16b側の側壁には、出口51が開設されている。
【0047】
入口49と出口51の間には、上流側からローラ53aとローラ53bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられている。
【0048】
ローラ53a、53bの下流には、処理台52が設けられている。
【0049】
処理台52の下流には、ローラ54aとローラ54bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられ、フィルム搬送路29は出口51に接続されている。
【0050】
筺体12の天井壁には、パージガスを処理室14内に供給するパージガス供給口56aと処理ガスを処理室14内に供給する処理ガス供給口58aが開設されている。
【0051】
パージガス供給口56aにはパージガス供給管56bの一端が接続されている。パージガス供給管56bには、上流から順に、パージガス供給源56e、パージガスの流量を調整する流量制御装置56d、ガス流路を開閉するバルブ56cが設けられている。バルブ56cを開閉することで、パージガス供給管56bから処理室14内にパージガスが供給され、又は供給停止される。
【0052】
パージガス供給口56aとパージガス供給管56bとバルブ56cと流量制御装置56dとパージガス供給源56eとから、パージガス供給部56が構成される。流量制御装置56dとバルブ56cは、制御部114と電気的に接続されており、制御部114により制御される。
【0053】
処理ガス供給口58aには処理ガス供給管58bの一端が接続されている。処理ガス供給管58bには、上流から順に、処理ガス供給源58e、処理ガスの流量を調整する流量制御装置58d、ガス流路を開閉するバルブ58cが設けられている。バルブ58cを開閉することで、処理ガス供給管58bから処理室14内に処理ガスが供給され、又は供給停止される。
【0054】
処理ガス供給口58aと処理ガス供給管58bとバルブ58cと流量制御装置58dと処理ガス供給源58eとから、処理ガス供給部58が構成される。流量制御装置58dとバルブ58cは、制御部114と電気的に接続されており、制御部114により制御される。
【0055】
処理ガス供給部58は処理台52の上方に略水平に配設されたガスノズル60に接続されている。ガスノズル60には不図示の複数のガス供給孔62が形成されている。
【0056】
すなわち、処理ガス供給源58eから供給された処理ガスは、流量制御装置58d、バルブ58c、処理ガス供給口58a、ガスノズル60及び複数のガス供給孔62を介して処理室14へ供給される。
【0057】
筺体12の下壁には、処理室14内のガスを排気するガス排気口37aが形成されており、このガス排気口37aには上述したガス排気管37bに接続されるように設けられている。
【0058】
筺体12の上壁には、プラズマを生成するプラズマ生成装置64が設けられている。
図4には、本実施形態に係る可撓性フィルム処理装置に用いられるプラズマ生成装置64の側面断面図が示されている。
図4に示されているように、本実施形態に係るプラズマ生成装置64は、絶縁材料が用いられて正方形枠形状に形成されたブラケット66を備えている。ブラケット66は筐体12の天井壁に建て込まれて固定されており、ブラケット66の枠内にはホルダ68が嵌め込まれている。
【0059】
ホルダ68は、石英(SiO2)等の誘電体が用いられて正方形板形状に形成されている。ホルダ68の上面には、フィルム15の搬送方向と直交する方向に、複数条の細い長方形の長溝68aが等しいピッチをもって整列されて、一定深さに没設されている。
【0060】
プラズマ生成装置64は一対の電極としてのくし型電極対70を備えており、くし型電極対70はアノード電極72及びカソード電極74を複数組(図示例では4組)備えている。アノード電極72及びカソード電極74は細長い長方形平板形状にそれぞれ形成されており、隣り合う長溝68a、68aにそれぞれ収納されている。すなわち、各電極72、74はフィルム15の搬送方向と直行するように設けられている。
プラズマ76は、各電極72、74の間であって、これらの電極72、74の延伸方向に生成される。
【0061】
各電極72、74をフィルム15の搬送方向に対して直行方向に配置させることで、生成されたプラズマ76がフィルム15の表面を走査する。従って、フィルム15上に均一にプラズマ76を晒すことができる。
【0062】
長溝68a、68aにそれぞれ収納されたアノード電極72及びカソード電極74は、長溝68aの底壁68bによって処理室14から分離されている。
このように、くし型電極対70と処理室14との間に誘電体製のホルダ68が設けられるため、電極72、74がプラズマ76によって削られて生成される金属片による金属汚染を防止することができる。
【0063】
プラズマ生成装置64には高周波電源78が接続されており、高周波電源78は整合器80及び絶縁トランス82を介して、くし型電極対70に接続されている。すなわち、高周波電源78は、整合器80を介して絶縁トランス82の一次側に接続されており、絶縁トランス82の二次側にはくし型電極対70が接続されている。くし型電極対70の複数組のアノード電極72及びカソード電極74は、絶縁トランス82に並列に接続されている。
【0064】
なお、プラズマ生成装置64、高周波電源78、整合器80、絶縁トランス82をプラズマ生成部と呼ぶ。
【0065】
次に、処理室14内の動作について詳述する。
各構成の動作は、制御部114により制御される。
【0066】
ローラ53a、54aはフィルム15を軽く抑えるものである。
【0067】
まず、処理室14内を圧力調整バルブ37cを調整して予め所望の圧力とする。所望の圧力となったら、ゲートバルブ16aは開かれ、ゲートバルブ16bは閉められる。
【0068】
次に、ローラ48b、50b、53b、54bが同回転数で回転し、これに同期してローラ対48は上昇する。
【0069】
フィルム15の先端がローラ対54に達すると、ローラ48b、50b、53b、54bの回転は停止し、ローラ対48の上昇は停止する。
【0070】
次に、バルブ58cが開かれ、処理室14内に処理ガスが供給されるとともに、プラズマが生成されて処理室内をプラズマ状態とする。
【0071】
バルブ58cが閉じられて処理ガスの供給が終了され、バルブ56cが開かれて、処理室14内に例えばN2(窒素)ガスのパージガスが供給されると共に、圧力調整バルブ37cを調整することにより、処理室14内の処理ガスをパージガスで押し出すと共に真空排気する。
【0072】
次に、ゲートバルブ16aが閉められ、ゲートバルブ16bが開かれる。
【0073】
このように、フィルム15が順次搬入され、プラズマ生成装置64の下でプラズマ処理される。
【0074】
次に、アンローダ部22について詳述する。
図5には、本実施形態に係る可撓性フィルム処理装置10のアンローダ部22周辺の側面図が示されている。
【0075】
アンローダ部22のゲートバルブ16b側の側壁には、入口86が開設されており、入口86と対向するゲートバルブ16d側の側壁には、出口88が開設されている。
【0076】
入口86と出口88の間には、上流側から上ガイド90aと下ガイド90bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられている。
【0077】
上ガイド90a、下ガイド90bの下流には、ローラ92aとローラ92bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられている。
【0078】
ローラ92a、92bの下流には、処理室14内から前記略水平に形成されたフィルム搬送路29を垂直方向下方に可動するローラ94aとローラ94bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられている。
【0079】
ローラ94a、94bの下流には、ローラ92a、92bと略水平方向に配置されたローラ96aとローラ96bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられている。
【0080】
ローラ96a、96bの下流には、上ガイド98aと下ガイド98bがフィルム搬送路29に対して対向して設けられて、フィルム搬送路29は出口88に接続されている。
【0081】
すなわち、アンローダ室24内の略中央に配置されたローラ対94a、94bが処理室14から略水平に搬送されたフィルム搬送路29を略垂直方向下に移動させることにより、処理室14から略水平に搬送されたフィルム搬送路29が、ローラ対92a、92bを通過して略垂直方向下方に変形され、ローラ対94a、94bを最下点として通過して略垂直方向上方に変形されて、ローラ対96a、96bを通過して略水平方向に変形されて、アンローダ室24から排出され、ゲートバルブ16dへ搬送され、これにより、1処理分以上の長さのフィルムをアンローダ室24内に保管することができる。
【0082】
アンローダ部22の天井壁には、パージガスをアンローダ室24内に供給するパージガス供給口84aが開設されている。また、アンローダ部22の下側面には、アンローダ室24内のガスを排気するガス排気口38aが形成されており、このガス排気口38aは上述したガス排気管38bに接続される。
【0083】
パージガス供給口84aにはパージガス供給管84bの一端が接続されている。パージガス供給管84bには、上流から順に、パージガス供給源84e、パージガスの流量を調整する流量制御装置84d、ガス流路を開閉するバルブ84cが設けられている。バルブ84cを開閉することで、パージガス供給管84bからアンローダ室24内にパージガスが供給され、又は供給停止される。
【0084】
パージガス供給口84aとパージガス供給管84bとバルブ84cと流量制御装置84dとパージガス供給源84eとから、パージガス供給部84が構成される。流量制御装置84dとバルブ84cは、制御部114と電気的に接続されており、制御部114により制御される。
【0085】
次に、アンローダ部22の動作について詳述する。
各構成の動作は、制御部114により制御される。
【0086】
ローラ92a、94a、97aはフィルム15を軽く抑え、ローラ96aはフィルム15を固定するものである。
【0087】
まず、ゲートバルブ16bは開かれ、ゲートバルブ16dは閉められる。ここで、ゲートバルブ16b、16dを閉めた状態からゲートバルブ16bを開く場合には、圧力調整バルブ38cを閉め、パージガスである例えばN2(窒素)ガスをスローリークさせ、塵埃の巻上げを防止する。これにより、アンローダ室24内から処理室14内へパーティクルが侵入することが防止される。
【0088】
次に、ローラ92b、94b、96bが同回転数で回転し、これに同期してローラ対94は下降する。
【0089】
フィルム15の先端が巻取りロール28に達するとフィルム15は巻取りロール28に巻き取られる。
【0090】
上述したローダ部18からアンローダ部22の動作を少なくとも2回以上繰り返す。
【0091】
なお、本実施形態においては、処理ガスを電極によってプラズマ状態とする例について詳述したが、これに限らず、蒸発源やプラズマ放出源を用いてもよい。
【0092】
また、本実施形態においては、図6に示されるように、フィルム15をフィルム15の搬送方向に対して略垂直に配置された1対のローラを複数用いて搬送する例(図6においては例えばローラ対32について図示)について詳述したが、これに限らず、図7(a)に示されるようにフィルム15の搬送方向に対して略垂直に配置された2対のローラを複数用いる場合や、図7(b)に示されるようにフィルム15の搬送方向に対して略垂直にフィルム搬送路29の上面に2つのローラ、下面に1つのローラを複数用いる場合や、図7(c)に示されるようにフィルム15の搬送方向に対して略垂直にフィルム搬送路29上面に1つのローラ、下面に2つのローラを複数用いる場合や、これらを組み合わせて用いる場合にも適用できる。
【0093】
次に、本発明の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置10に用いられるローダ部18の他の適用例について詳述する。
図8には、本発明の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置10に用いられるローダ部18の側面図が示されている。
【0094】
上述の実施形態においては、ローダ室20の略中央に配置されたローラ対48が略水平方向から略垂直方向下へ移動する例について詳述したが、図8に示されているように、ローダ室20の略中央に配置されたローラ対48を略水平方向から略垂直方向上へ移動させてもよい。これによっても1処理分以上の長さのフィルムをローダ室20内に保管することができ、さらにフィルム裏面に傷をつけることを防止できる。また、同様に、アンローダ室24の略中央に配置されたローラ対94を略水平方向から略垂直方向上へ移動させてもよい。これによっても1処理分以上の長さのフィルムをアンローダ室24内に保管することができ、さらにフィルム裏面に傷をつけることを防止できる。
【0095】
次に、第2の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置について詳述する。
図9には、本発明の第2の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置100の全体側面図が示されている。ここで、本発明の第2の実施形態においては上述した第1の実施形態同様、ローダ室、処理室及びアンローダ室に、それぞれガス供給部、排気部が接続されているが、説明の便宜上省略している。
以下、本発明の第1の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置10と異なる点のみ説明する。
【0096】
第2の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置100においては、処理室14を形成する筺体12のフィルム搬送路29の上流側に、第1のローダ部18aと第2のローダ部18bの2つの真空室が設けられている。すなわち、供給ロール26にはゲートバルブ16cを介して第1のローダ部18aが連結され、第1のローダ部18aにはゲートバルブ16eを介して第2のローダ部18bが連結され、第2のローダ部18bにはゲートバルブ16aを介して筺体12が連結されている。そして、筺体12にはゲートバルブ16bを介して不図示のアンローダ部22が連結されて、アンローダ部22の下流側にはゲートバルブ16dを介して巻取りロール28が配置されている。
【0097】
ここで、第1のローダ部18aは第1のローダ室20aを形成し、第2のローダ部18bは第2のローダ室20bを形成し、筺体12は処理室14を形成し、アンローダ部22はアンローダ室24を形成している。
【0098】
すなわち、供給ロール26、第1のローダ室20a、第2のローダ室20b、処理室14、アンローダ室24及び巻取りロール28間にそれぞれゲートバルブ16a〜16eが設けられることにより、第1のローダ室20a、第2のローダ室20b、処理室14及びアンローダ室24がそれぞれ真空に維持されている。
【0099】
したがって、供給ロール26から供給されたフィルム15は、ゲートバルブ16c、第1のローダ室20a、ゲートバルブ16e、第2のローダ室20b、ゲートバルブ16a、処理室14、ゲートバルブ16b、アンローダ室24及びゲートバルブ16d内に配置されたフィルム搬送路29を搬送されて、巻取りロール28で巻き取られる。
【0100】
すなわち、第2の実施形態による可撓性フィルム処理装置100によれば、処理室14の上流側の真空室であるローダ室20を複数設けることにより、短い処理時間でより真空度を高めることができる。また、搬送律束が少なくなり、処理能力が向上する。
【0101】
次に、第3の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置について詳述する。
図10には、本発明の第3の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置110の全体側面図が示されている。ここで、本発明の第3の実施形態においても上述した第1の実施形態同様、ローダ室、処理室及びアンローダ室に、それぞれガス供給部、排気部が接続されているが、説明の便宜上省略している。
【0102】
第3の実施形態に係る可撓性フィルム処理装置110においては、第1の筺体12aと第2の筺体12bの2つの筺体を設け、第1の処理室14aと第2の処理室14bの2つの処理室を形成する。第1の筺体12aと第2の筺体12bはゲートバルブ16fを介して連結されている。すなわち、供給ロール26にはゲートバルブ16cを介してローダ部18が連結され、ローダ部18にはゲートバルブ16aを介して第1の筺体12aが連結されている。そして、第1の筺体12aにはゲートバルブ16fを介して第2の筺体12bが連結され、第2の筺体12bにはゲートバルブ16bを介してアンローダ部22が連結されて、アンローダ部22はゲートバルブ16dを介して巻取りロール28が配置されている。
【0103】
ここで、ローダ部18はローダ室20を形成し、第1の筺体12aは第1の処理室14aを形成し、第2の筺体12bは第2の処理室14bを形成し、アンローダ部22はアンローダ室24を形成している。
【0104】
すなわち、供給ロール26、ローダ室20、第1の処理室14a、第2の処理室14b、アンローダ室24及び巻取りロール28間にそれぞれゲートバルブ16a〜16d及び16fがそれぞれ設けられることにより、ローダ室20、第1の処理室14a、第2の処理室14b及びアンローダ室24がそれぞれ真空に維持されている。
【0105】
また、第1の筺体12aの上壁には、上述したプラズマ生成装置64と第1の処理ガスを第1の処理室14a内へ供給する第1の処理ガス供給管58bが設けられ、第1の処理室14a内においては、フィルム15に第1の処理ガスが供給されてプラズマ処理がなされる。
【0106】
また、第2の筺体12bの上壁には、加熱装置であるヒータ112と第2の処理ガスを第2の処理室14b内へ供給する第2の処理ガス供給管59bが設けられ、第2の処理室14b内においては、第1の処理室14a内にてプラズマ処理されたフィルム15に第2の処理ガスを供給して加熱することにより改質処理がなされる。
【0107】
したがって、供給ロール26から供給されたフィルム15は、ゲートバルブ16c、ローダ室20、ゲートバルブ16a、第1の処理室14a、ゲートバルブ16f、第2の処理室14b、ゲートバルブ16b、アンローダ室24及びゲートバルブ16d内に配置されたフィルム搬送路29を搬送されて、巻取りロール28で巻き取られる。
【0108】
以上、第3の実施形態による可撓性フィルム処理装置110によれば、プラズマ処理をする第1の処理室14aと熱処理をする第2の処理室14bをゲートバルブ16fを介して連結させて設けることで、フィルム15をプラズマ処理した後、改質処理して、スループットを向上させることができる。すなわち、処理の異なる処理室を2つ設けることで、連続処理をしてスループットを向上させることができる。
【0109】
なお、第3の実施形態においては、プラズマ処理をした後に、熱処理をして改質処理する例について詳述したが、これに限らず、第1の処理室14aに第1の処理ガス供給管58bにより第1の処理ガスを供給して第1層を成膜し、第2の処理室14bに第2の処理ガス供給管59bにより第2の処理ガスを供給することにより第1層の表面に第2層を成膜して積層膜を形成する例についても適用できる。
【0110】
また、第1の処理室14aにおける処理が第2の処理室14bに影響する恐れがある場合には、第1の処理室14aと第2の処理室14bの間にローダ部18を設け、各処理室の雰囲気を隔離するようにしてもよい。
【0111】
本実施形態においても、他の実施形態と同様にスループットを向上させることができる。
【0112】
以上、本発明によれば、処理室14の外に供給ロール26及び巻取りロール28が設けられるので、処理室14を大気開放する必要がない。したがって、早期に装置を立ち上げることが可能となる。また、処理室14の前後に1処理分以上の長さのフィルムを保管できる真空室(ローダ室20、アンローダ室24)を配置することで、この真空室において大気と真空を入れ替え、処理室14内の真空状態を維持することが可能となる。
【0113】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0114】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0115】
本発明の一態様によれば、可撓性フィルムを移動する供給ロール及び巻取りロールと、前記供給ロールと前記巻取りロールの間に設けられ、前記可撓性フィルムを処理する処理室と、前記供給ロールと前記処理室の間に設けられた第一の真空室と、前記処理室と前記巻取りロールの間に設けられた第二の真空室と、を有する可撓性フィルム処理装置が提供される。
【0116】
好ましくは、前記第一の真空室は、前記供給ロールとの間及び前記処理室との間にそれぞれゲートバルブを有する。
【0117】
好ましくは、前記第一の真空室は、前記処理室で処理する長さ分のフィルムを保管できる。
【0118】
好ましくは、前記第一の真空室は、上下に移動可能なロールを有する。
【符号の説明】
【0119】
10、100、110 可撓性フィルム処理装置
12 筐体
14 処理室
15 可撓性フィルム
16 ゲートバルブ
18 ローダ部
20 ローダ室
22 アンローダ部
24 アンローダ室
26 供給ロール
28 巻取りロール
29 フィルム搬送路
36,37,38 排気部
36a,37a,38a ガス排気口
36b,37,38b ガス排気管
36c,37c,38c 圧力調整バルブ
36d,37d,38d 真空ポンプ
34、56、84 パージガス供給部
58 処理ガス供給部
64 プラズマ生成装置
114 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性フィルムを移動する供給ロール及び巻取りロールと、
前記供給ロールと前記巻取りロールの間に設けられ、前記可撓性フィルムを処理する処理室と、
前記供給ロールと前記処理室の間に設けられた第一の真空室と、
前記処理室と前記巻取りロールの間に設けられた第二の真空室と
を有する可撓性フィルム処理装置。
【請求項2】
前記第一の真空室は、前記供給ロールとの間及び前記処理室との間にそれぞれゲートバルブを有する請求項1記載の可撓性フィルム処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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