説明

可食性組成物、ゼリー状製剤及びゼリー状製剤の製造方法

【課題】薬物含有溶液を後添加することにより、好適にゲル化しゼリー状製剤を得ることができる可食性組成物、該可食性組成物を用いてなるゼリー状製剤、該ゼリー状製剤の製造方法を提供する。
【解決手段】ゲル化剤を含む可食性組成物であって、薬物含有溶液を添加することによりゲル化させ、ゼリー状製剤とするために用いられることを特徴とする可食性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物含有溶液を後添加することにより、容易にゲル化してゼリー状製剤となる可食性組成物、ゼリー状製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、経口的に投与される薬剤としては、裸錠剤、被覆錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、液剤などが市場に出されている。口腔内で崩壊し、消化管で吸収される製剤としては、口腔内崩壊錠、速溶解型口腔内フィルムが既に市場に出されており、口腔内で噛まずに唾液のみで崩壊又は溶解させて服用するような患者及び介護者のベネフィットを向上させるような剤型が注目を浴びている。
高齢者人口の増加に伴い、飲食物の摂取に障害を有する、いわゆる咀嚼・嚥下困難な患者が増加しているという背景があり、将来希望する医薬品の剤型として半固形製剤(ゼリー、ヨーグルト、プリン)が挙げられている。
当該背景もあり、近年、医薬品を含有するゼリー状製剤の開発が進められており、既に本邦においても数種類の製品が販売されている。
【0003】
しかし、これら従来のゼリー状製剤は、すべて水によりゲル化された製剤であり、更にゲル化剤として天然多糖類、添加剤として糖類を含むため、カビ等の菌類の発生がし易く、製造工程中において加熱滅菌等が必須となり、更に防腐剤の添加が必要となる問題点があった。
また、水を多量に含むため、腎臓病や心臓病に代表される水分制限が必要な患者に投与することが難しいという問題点もあり、更に、水が組成物の中から包装材料を透過し揮発するため、保管安定性上、透湿性が高い高価な包装材料が必要となる問題点があった。
【0004】
このような問題点に対して、水を含まない乾燥型のフィルム状の剤型で、唾液でゲル化する製剤としては、例えば、架橋化カルボキシビニルポリマーを用いた水膨潤性ゲル形成層と薬物含有層を有する製剤(特許文献1)が開示されている。
しかしながら、このような従来のフィルム形状の製剤は、水溶性ポリマーを用いて口腔内にて溶解させる又は膨潤させるためには、ある程度の唾液量を必要とし、嚥下困難な患者によっては、溶解に長期間を要する可能性があった。また、水分を吸収しやすいため、口腔粘膜に付着し易く違和感を覚えやすいという欠点があった。特に口腔内溶解型のフィルム製剤の場合には、その溶解性とフィルムの厚み、サイズには相関関係があり、結果として100mgを超えるような薬物量を含有させることは難しかった。
また、製造方法に関しても、このようなフィルム形状の製剤は、水溶性ポリマーを溶媒として水を用いて溶解させ、この中に薬物を溶解させ、加熱乾燥することにより調製することが開示されており、特に熱に弱い薬物の場合には、加熱により薬物含量の低下が懸念される。また、薬物が液状である場合には、フィルム状の製剤が溶解することが懸念されるので、一定の形状を維持することが困難となる恐れがあった。
【0005】
なお、水を添加することによりゼリーを復元させる組成物としては、例えば、ネイティブジェランガムを含む含水ゲルを乾燥してなる乾燥ゲル(特許文献2)や、キサンタンガムとローカストビーンガムとの混合物、キサンタンガムとタラガムとの混合物から選ばれる少なくとも一つを溶解してなる溶解液を凍結乾燥し、該凍結乾燥ゼリーを1〜3mmの大きさに切断してなるゼリー乾燥物(特許文献3)が開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示された乾燥ゲルでは、水又は薬物含有溶液を添加してもゼリー状組成物又はゼリー状製剤に充分に復元させることは困難であり、特許文献3に開示されたゼリー乾燥物は、乾燥ゼリーを切断する工程と、水を添加後に該凍結乾燥ゼリーを攪拌する操作が必要であり、生産ロス、含量ロス、異物のコンタミ等のリスクが考えられ、医薬品組成物としての利便性に欠けるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4267926号公報
【特許文献2】特許第3671269号公報
【特許文献3】特許第3835544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、薬物含有溶液を後添加することにより、好適にゲル化しゼリー状製剤を得ることができる可食性組成物、該可食性組成物を用いてなるゼリー状製剤、該ゼリー状製剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ゲル化剤、好ましくは可食性かつ不揮発性有機溶媒中ではゲル化して個体状態を維持し、水で容易に溶解するか、又は、体温で容易に溶解するゲル化剤を用いた可食性組成物は、上記ゲル化剤を該ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒によりゲル化させることにより、製造工程上の滅菌を考慮する必要がなく、また、薬物含有溶液を後添加することにより、容易に服用性の良いゼリー状製剤の調製が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、このような本発明の可食性組成物は、薬物含有溶液を後添加できることから、熱に弱い薬物の剤型としても適している。
更に、本発明の可食性組成物は、個人により処方が異なる薬物の投与デバイスとしても、後で薬液を入れるだけで容易にゼリー状製剤化ができ、当該観点から小ロット生産に適したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、ゲル化剤を含む可食性組成物であって、薬物含有溶液を添加することによりゲル化させ、ゼリー状製剤とするために用いられることを特徴とする可食性組成物である。
本発明の可食性組成物は、水を含まないことが好ましく、また、上記ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒を更に含むことが好ましい。
上記不揮発性有機溶媒は、分子中に2〜4個のOH基を有する、炭素数4以下の多価アルコールであることが好ましく、なかでも、グリセリン、グリセリン誘導体、プロピレングリコール、及び、プロピレングリコール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、上記ゲル化剤は、ゼラチン、κ−カラギーナン、HMペクチン、ネイティブ型ジェランガム、及び、タマリンドガムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明の可食性組成物において、上記ゲル化剤は、ゼラチン、κ−カラギーナン、ネイティブ型ジェランガム、タマリンドガム、ι−カラギーナン/カルボキシメチルセルロースナトリウム、ι−カラギーナン/アルギン酸ナトリウム、ι−カラギーナン/キサンタンガム、ι−カラギーナン/λ−カラギーナン、ι−カラギーナン/脱アシル化ジェランガム、ι−カラギーナン/サイリウムシードガム、ι−カラギーナン/トラガント末、キサンタンガム/脱アシル化ジェランガム、キサンタンガム/サイリウムシードガム、脱アシル化ジェランガム/カルボキシビニルポリマー、脱アシル化ジェランガム/LMペクチン、脱アシル化ジェランガム/アルギン酸ナトリウム、脱アシル化ジェランガム/λ−カラギーナン、脱アシル化ジェランガム/サイリウムシードガム、脱アシル化ジェランガム/トラガント末、LMペクチン/サイリウムシードガム、及び、LMペクチン/トラガント末からなる群より選択される少なくとも1種を含み、上記不揮発性有機溶媒は、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の可食性組成物において、上記ゲル化剤は、ゼラチン、κ−カラギーナン、タマリンドガム、及び、HMペクチンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、上記不揮発性有機溶媒は、プロピレングリコール及び/又はプロピレングリコール誘導体であることが好ましい。
更に、本発明の可食性組成物は、不揮発性有機溶媒が、グリセリン及び/又はプロピレングリコールを含有し、溶液吸収促進剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、LMペクチン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、脱アシル化ジェランガム、サイリウムシードガム、及び、トラガント末からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明は、本発明の可食性組成物に、薬物含有溶液を添加することにより得られることを特徴とするゼリー状製剤でもある。
上記薬物含有溶液は、注射用液剤又は経口液剤であることが好ましい。また、上記薬物含有溶液に含まれる溶媒は、水、グリセリン、及び、プロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記ゲル化剤の配合量が、ゼリー状製剤の全重量基準で0.1〜40重量%であることが好ましい。
また、上記可食性組成物は、ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒を含有し、上記不揮発性有機溶媒の配合量が、ゼリー状製剤の全重量基準で10〜99重量%であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、水と、ゲル化剤と、該ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒とを混合、加熱、溶解させて不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を得る工程、上記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程、放冷又は冷却により固化させて可食性組成物を得る工程、及び、上記可食性組成物に薬物含有溶液を添加して、ゼリー状製剤を得る工程を有することを特徴とするゼリー状製剤の製造方法でもある。
また、本発明は、水と、ゲル化剤とを混合、加熱、溶解させてゲル化剤溶液を得る工程、上記ゲル化剤溶液を凍結乾燥させ、易溶性化ゲル化剤を得る工程、上記易溶性化ゲル化剤に、該易溶性化ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒を混合、加熱、溶解させて不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を得る工程、上記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程、放冷又は冷却により固化させて可食性組成物を得る工程、及び、上記可食性組成物に薬物含有溶液を添加して、ゼリー状製剤を得る工程を有することを特徴とするゼリー状製剤の製造方法でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、ゲル化剤を含む可食性組成物であって、薬物含有溶液を添加することによりゲル化させ、ゼリー状製剤とするために用いられる可食性組成物である。
本発明の可食性組成物の形状としては特に限定されないが、後に添加する薬物含有溶液が容易に浸潤し、均一化するという観点から表面積が大きい方が好ましい。また、薬物含有溶液が添加された後のゼリー状製剤の大きさに特に左右される。
本発明の可食性組成物を用いて得られるゼリー状製剤の大きさは、そのゼリー強度及び使用用途により最適な形状が異なる。例えば、患者や被介護者自身が服用するゼリー状製剤として用いる場合には、ゼリー状組成物に充分自立できる強度を持たせ、錠剤やフィルム、シート状であることが好ましい。特に口腔内における溶解性の観点からは、フィルム及びシート状の形状が好ましく、この場合、厚みは30〜5000μmであることが好ましい。厚みが30μm未満であると、フィルム強度及び製品の取り扱い性の観点から問題となる可能性があり、5000μmを超えると、口腔内、特に舌下へ投与した場合、違和感を覚える恐れがある。
【0015】
また、本発明の可食性組成物を用いて得られるゼリー状製剤を、シート形状の製剤として用いる場合のサイズとしては特に限定されないが、平面面積は、0.5〜6.0cmの範囲内が好ましい。0.5cm未満であると、製剤を摘まんで投与する際に取り扱いが難しくなる恐れがあり、6.0cmを超えると、投与時に口腔内、特に舌下へ投与した場合に完全に入れることができない恐れがある。
また、上記シート形状の製剤の平面形状は特に限定されず、例えば、長方形、正方形などの矩形、5角形などの多角形、円形、楕円形等、任意の形状が挙げられる。ここにいう多角形は、完全な多角形のほか、若干、角部にRを有する形状も含む。
なお、患者が自分で服用できず、医療従事者及び介護者が投与する場合には、ゼリー状製剤の強度を柔らかくし、スプーン等で服用を補助できるカップ包装やピロー包装するような形状もまた好ましい。
【0016】
上記ゲル化剤は、本発明の可食性組成物の基材となる材料である。
このようなゲル化剤としては、可食性でありゲル化能を有する限り特に限定されないが、後述する不揮発性有機溶媒との相溶性の観点から、ゼラチン、κ−カラギーナン、HMペクチン、ネイティブ型ジェランガム、及び、タマリンドガムからなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
上記ゲル化剤として、上記κ−カラギーナン等を含むことで、本発明の可食性組成物を不揮発性有機溶媒下でゲル化させることができ、更に、水により容易に溶解させることができる。
なお、本明細書において、「可食性」とは、経口的に投与可能であり、製剤学的に許容されるものであることを意味する。
【0017】
ここで、カラギーナンは、直鎖含硫黄多糖類の一種で、一般的にはコンドラス・クリパス(紅藻類)からアルカリ抽出により得られ、D−ガラクトース、3,6−アンヒドロ−D−ガラクトース、及び、硫酸基から構成される陰イオン性高分子化合物である。これらの構成比により、それぞれκ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナンに分けられる。
本発明においては、不揮発性有機溶媒下でゲル化し、更に水添加後もゲル化するという観点から、κ−カラギーナンが好ましい。ι−カラギーナンの場合にはそれ単体ではゲル化せず、別途Ca2+等が必要である。
上記κ−カラギーナンは、該κ−カラギーナンと相溶する不揮発性有機溶媒存在下でのゲル化点が80℃前後であり、そのため、常温付近での物性は安定であり、使用保管上の観点からも優れている。
また、上記薬物含有溶液に含まれる薬物として、熱に弱い薬物(熱安定性が低い薬物)を用いる場合でも、薬物含有溶液を本発明の可食性組成物に後添加することにより、熱安定性が低い薬物の製造時の安定性も確保することができる。
これらのκ−カラギーナンの中でも、平均分子量が5万〜50万のグレードのものが好ましく、カウンターカチオンとしてK、Ca2+、Naを含むグレードのものが好ましい。更に好ましくは溶解性の観点から、カウンターイオンとしてNaを含むグレードのものが好ましい。
ここにいう平均分子量は、重量平均分子量を意味し、ゲル濾過クロマトグラフ分析により測定される。
【0018】
また、ペクチンは、可食性の植物体、一般的には柑橘類又はリンゴから水で抽出して得られた高分子多糖類であり、ガラクチュロン酸より構成され、カルボキシル基が部分的にメチルエステル化されている。
上記ペクチンは、全ガラクチュロン酸のうち、メチル化ガラクチュロン酸の占める割合により、50%以上のものがHMペクチン、50%未満のものがLMペクチンに分けられる。また、ペクチンのエステル化度(DE)は、ガラクチュロン酸100当量についてのエステル化されたカルボキシル基の数である。また、ガラクチュロン酸含有量(GA)は、粗精製サンプルの100gあたりのガラクチュロン酸(分子量194.1)の重量である。これらの測定は、(1)滴定による遊離酸量の測定、(2)滴定によるけん化後の遊離酸量の測定、以上の2段階でなされる。
本発明の可食性組成物では、不揮発性有機溶媒下でゲル化し、更に水添加後もゲル化するという観点から、HMペクチンが好ましい。
上記HMペクチンは、該HMペクチンと相溶する不揮発性有機溶媒存在下でのゲル化点が70℃前後であり、そのため、常温付近での物性は安定であり、使用保管上の観点からも優れている。
また、上記薬物含有溶液に含まれる薬物として、熱に弱い薬物(熱安定性が低い薬物)を用いる場合でも、薬物含有溶液を本発明の可食性組成物に後添加することにより、熱安定性が低い薬物の製造時の安定性も確保しつつ、ゼリー状製剤の調製が可能である。
これらのHMペクチンの中でも、平均分子量が1万〜15万のグレードのものが好ましい。
ここにいう平均分子量は重量平均分子量を意味し、ゲル濾過クロマトグラフ分析により測定される。
【0019】
また、ジェランガムは、微生物であるスフィンゴモナス・エロデアの菌体外に産生される天然の直鎖状のヘテロ多糖類であり、グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースの4糖の繰り返し単位から構成されている。
上記ジェランガムは、1−3結合したグルコースに存在するアセチル基とグリセリル基の有無により、ネイティブ型ジェランガムと脱アシル型ジェランガムに分けられる。本発明の可食性組成物では、不揮発性有機溶媒下でゲル化し、更に水添加後もゲル化するという観点からネイティブ型ジェランガムが好ましい。
上記ネイティブ型ジェランガムは、該ネイティブ型ジェランガムと相溶する不揮発性有機溶媒存在下でのゲル化点が90℃前後であり、そのため、常温付近での物性は安定であり、使用保管上の観点からも優れている。
また、上記薬物含有溶液に含まれる薬物として、熱に弱い薬物(熱安定性が低い薬物)を用いる場合でも、薬物含有溶液を本発明の可食性組成物に後添加することにより、熱安定性が低い薬物の製造時の安定性も確保しつつ、ゼリー状製剤の調製が可能である。
これらのネイティブ型ジェランガムの中でも、平均分子量が10万〜70万のグレードのものが好ましい。
ここにいう平均分子量は重量平均分子量を意味し、ゲル濾過クロマトグラフ分析により測定される。
【0020】
上記タマリンドガムは、マメ科植物であるタマリンドの種子の胚乳部分を、温水若しくはアルカリ性水溶液で抽出して得られた高分子多糖類であり、主鎖がグルコースであり、側鎖がキシロース又はキシロース及びガラクトースにより構成されている。
上記タマリンドガムは、該タマリンドガムと相溶する不揮発性有機溶媒存在下でのゲル化点が80℃前後であり、そのため、常温付近での物性は安定であり、使用保管上の観点からも優れている。
また、上記薬物含有溶液に含まれる薬物として、熱に弱い薬物(熱安定性が低い薬物)を用いる場合でも、薬物含有溶液を本発明の可食性ゼリー状組成物に後添加することにより、熱安定性が低い薬物の製造時の安定性も確保することができる。
これらのタマリンドガムの中でも、平均分子量が10万〜70万のグレードのものが好ましい。
ここにいう平均分子量は重量平均分子量を意味し、ゲル濾過クロマトグラフ分析により測定される。
【0021】
上記ゼラチンは、動物の皮や骨に含まれるタンパク質を酵素によって分解抽出したものであり、豚、牛及び魚由来のものを酸処理およびアルカリ処理したいずれのものでも使用できる。
上記ゼラチンとしては、BSE等の問題の観点から魚又は豚由来のゼラチンが好ましい。
これらゼラチンの中でも、平均分子量が5万〜12万のグレードのものが好ましい。ここにいう平均分子量は重量平均分子量を意味し、ゲル濾過クロマトグラフ分析により測定される。
また、ここにいう平均分子量は、ゼラチンのポリペプチド鎖3量体の分子量ではなく、それぞれのポリペプチド鎖単量体の分子量を意味する。
【0022】
本発明の可食性組成物において、上記ゲル化剤の含有量は、本発明の可食性組成物の全重量に基づいて、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、更に好ましくは1〜20重量%である。0.1重量%未満であると、常温ではゲル化しない可能性があり、一方、40重量%を超えると、口腔内での溶解性が極めて遅くなり、使用上問題となる恐れがある。
【0023】
本発明の可食性組成物は、上記ゲル化剤として好適なゼラチン、κ−カラギーナン、HMペクチン、ネイティブ型ジェランガム、及び、タマリンドガムからなる群より選択される少なくとも1種等に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の可食性高分子を適量組み合わせて用いることもできる。
【0024】
上記その他の可食性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム等の合成高分子化合物、デキストラン、カゼイン、グァーガム、トラガカントガム、アカシアガム、アラビアガム、サイリウムシードガム、デンプン、ツェイン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、LMペクチン、脱アシル型ジェランガム、タラガム、アルギン酸ナトリウム、寒天等の天然物より得られる高分子化合物等が挙げられる。上記その他の可食性高分子の量は、本発明の可食性組成物の全重量基準で、好ましくは0.1〜10重量%である。
【0025】
更に、本発明の可食性組成物は、上記ゲル化剤として、単体としてはゲル化剤とならないが、2種類を組み合わせることでゲル化剤と成りうる材料を用いてもよい。このような2種類の組み合わせとしては、例えば、ι−カラギーナン/カルボキシメチルセルロースナトリウム、ι−カラギーナン/アルギン酸ナトリウム、ι−カラギーナン/キサンタンガム、ι−カラギーナン/λ−カラギーナン、ι−カラギーナン/脱アシル化ジェランガム、ι−カラギーナン/サイリウムシードガム、ι−カラギーナン/トラガント末、キサンタンガム/脱アシル化ジェランガム、キサンタンガム/サイリウムシードガム、脱アシル化ジェランガム/カルボキシビニルポリマー、脱アシル化ジェランガム/LMペクチン、脱アシル化ジェランガム/アルギン酸ナトリウム、脱アシル化ジェランガム/λ−カラギーナン、脱アシル化ジェランガム/サイリウムシードガム、脱アシル化ジェランガム/トラガント末、LMペクチン/サイリウムシードガム及びLMペクチン/トラガント末からなる群より選択される少なくとも1種の組み合わせを含むことが好ましい。
【0026】
なかでも、本発明の可食性組成物は、上記ゲル化剤は、ゼラチン、κ−カラギーナン、ネイティブ型ジェランガム、タマリンドガム、ι−カラギーナン/カルボキシメチルセルロースナトリウム、ι−カラギーナン/アルギン酸ナトリウム、ι−カラギーナン/キサンタンガム、ι−カラギーナン/λ−カラギーナン、ι−カラギーナン/脱アシル化ジェランガム、ι−カラギーナン/サイリウムシードガム、ι−カラギーナン/トラガント末、キサンタンガム/脱アシル化ジェランガム、キサンタンガム/サイリウムシードガム、脱アシル化ジェランガム/カルボキシビニルポリマー、脱アシル化ジェランガム/LMペクチン、脱アシル化ジェランガム/アルギン酸ナトリウム、脱アシル化ジェランガム/λ−カラギーナン、脱アシル化ジェランガム/サイリウムシードガム、脱アシル化ジェランガム/トラガント末、LMペクチン/サイリウムシードガム、及び、LMペクチン/トラガント末からなる群より選択される少なくとも1種を含み、後述する不揮発性有機溶媒は、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体であることが好ましい。
更に、本発明の可食性組成物は、上記ゲル化剤は、ゼラチン、κ−カラギーナン、タマリンドガム、及び、HMペクチンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、後述する不揮発性有機溶媒は、プロピレングリコール及び/又はプロピレングリコール誘導体であることが好ましい。なお、上記ゲル化剤として、塩基性のゲル化剤と酸性のゲル化剤とを組み合わせて用いると凝集してしまうので好ましくない。
【0027】
本発明の可食性組成物は、上記ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒を更に含むことが好ましい。
上記不揮発性有機溶媒は、本発明の可食性組成物を用いて得られたゼリー状製剤の溶解を補助する作用を有する。すなわち、本発明の可食性組成物中の不揮発性有機溶媒含有量を制御することで、本発明の可食性組成物を用いて得られたゼリー状製剤の溶解時間を容易に制御することができる。
従って、本発明の可食性組成物を用いて得られたゼリー状製剤は、口腔内で溶解し服用する場合にも、口腔内、特に舌下においてゆっくりと溶解させ薬物を除法させる場合の双方において適する。
上記不揮発性有機溶媒の含有量は、本発明の可食性組成物を用いて得られたゼリー状製剤の全重量に基づいて、好ましくは10〜99重量%、より好ましくは20〜80重量%である。10重量%未満であると、口腔内での溶解性が極めて悪くなり、使用上問題となる可能性があり、一方、99重量%を超えると、常温での保形性等の物性面の保管安定性が悪くなる恐れがある。
【0028】
上記不揮発性有機溶媒としては、上記ゲル化剤と相溶し、可食性である限り特に限定されないが、分子中に2〜4個のOH基を有する、炭素数4以下の多価アルコールが好適に用いられる。
上記多価アルコールの分子中のOH基が2個未満であると、ゲル化剤との相溶性が悪くなることがあり、一方、上記多価アルコールの分子中のOH基が4個を超えると、融点が上昇し、常温では固体となり溶媒としての使用が難しくなることがある。
また、上記多価アルコールの炭素数が4を超えると、ゲル化剤との相溶性が悪くなることがある。
【0029】
このような多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、グリセリン誘導体、プロピレングリコール、プロピレングリコール誘導体、エチレングリコール、エチレングリコール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
このような不揮発性有機溶媒は、1種又は2種以上組み合わせて用いられる。なかでも、本発明の可食性組成物中に多量に含まれた場合、ゼリー状製剤としたときに、ヒトに投与するための安全性の観点から、グリセリン及び/又はプロピレングリコールが好ましい。
本発明の可食性組成物は、上記不揮発性有機溶媒として、グリセリン及び/又はプロピレングリコールを含有する場合、該不揮発性有機溶媒の吸収速度を高める目的として、溶液吸収促進剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、LMペクチン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、脱アシル化ジェランガム、サイリウムシードガム、及び、トラガント末からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0030】
また、本発明の可食性組成物は、水を含まないことが好ましい。
上記水を含まないことで、本発明の可食性組成物は、一般的な可食性ゼリー状組成物では製造時に必要な滅菌工程や防腐剤の添加が不必要となり、製造コスト面でのメリットがあり、また、水分制限が必要な患者の為の栄養補助食及び医薬品の剤型へ適用する場合にも適している。
なお、本明細書において「水を含まない」は、実質的に水を含まない場合を含み、例えば、本発明の可食性組成物の全重量基準で、水の含有量が5重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。
【0031】
本発明の可食性組成物は、消泡剤を含有していてもよい。
上記消泡剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
また、上記ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖混合脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0032】
また、本発明の可食性組成物は、該可食性組成物の基材を構成する成分として、上記の物質以外に、所望により香料、嬌味剤、甘味剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤等を適宜使用してもよい。
【0033】
本発明の可食性組成物は、物性及び溶解性を向上させる添加剤を含有していてもよい。
上記添加剤としては、例えば、以下に示すような単糖、二糖、三〜六糖の糖又はこれらの糖アルコールが挙げられる。
単糖類としては、例えば、エリスロース、スレオース等のアルドテトロース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース等のアルドペントース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース等のアルドヘキトース、エリスルロース等のケトテトロース、キシルロース、リブロース等のケトペントース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のケトヘキソース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース等のα−ジグルコシド、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース等のβ−ジグルコシド、ネオトレハロース等のα,β−ジグルコシドの他、ラクトース、スクロース、イソマルツロース(パラチノース)等が挙げられる。三糖類としては、例えば、ラフィノース等が挙げられる。三糖〜六糖のオリゴ糖としては、例えば、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、オリゴグルコサミン、デキストリン、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖等が挙げられる。
【0034】
また、単糖のアルコールとしては、例えば、エリスリトール、D−スレイトール、L−スレイトール等のテトリトール、D−アラビニトール、キシリトール等のペンチトール、D−イジトール、ガラクチトール(ダルシトール)、D−グルシトール(ソルビトール)、マンニトール等のヘキシトール、イノシトール等のシクリトール等が挙げられる。また、二糖のアルコールとしては、例えば、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース(イソマルト)等が挙げられ、オリゴ糖のアルコールとしては、ペンタエリスリトール、還元麦芽糖水飴等が挙げられる。
本発明の可食性組成物において、上記糖又は糖アルコールが置換されていてもよく、また、1種で又は2種以上混合して用いることもできる。
【0035】
上記糖又は糖アルコールは、本発明の可食性組成物を用いたシート形状のゼリー状製剤が口腔内で容易に溶解する観点、また製造工程において大きく溶液の粘性を変化させないという観点から、単糖類〜三糖類又はこれらの糖アルコールであることが好ましい。
【0036】
かかる添加剤の量は、本発明の可食性組成物の全重量に基づき、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは、5〜70重量%である。1重量%未満であると、使用上充分な物性を担保できない可能性があり、一方、80重量%を超えると、添加した添加剤により本発明の可食性組成物を、シート又はフィルム形状のゼリー状製剤として用いた場合、物性の制御が困難になる恐れがある。
【0037】
本発明の可食性組成物は、薬物含有溶液を後添加することにより、ゼリー状製剤を提供することができる。
なお、本明細書において、上記薬物とは、何らかの生理活性作用を有する物質を意味する。このような本発明の可食性組成物に、薬物含有溶液を添加することにより得られるゼリー状製剤もまた、本発明の一つである。
【0038】
本発明のゼリー状製剤において、上記薬物は、ヒトなどの哺乳動物にその舌下、口腔内、腸管を通して投与し得る、すなわち経口投与可能な薬物が好ましい。そのような薬物としては、具体的には、例えば、全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、中枢神経薬、抗痴呆薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬、禁煙補助薬、減感作療法用アレルゲン、ワクチンなどが挙げられる。
【0039】
また、上記薬物は、疾患、状態又は障害の治療において所望の結果、例えば、所望の治療結果をもたらすのに充分な、本明細書中で有効量とも呼ばれる量で粘着剤層中に存在することができる。
有効量の薬物とは、例えば、非毒性ではあるが、しかし特定の時間にわたって選択された効果をもたらすのに充分な量の薬物を意味する。このような量は当業者によって容易に決定することができる。
【0040】
上記薬物は、固体薬物であっても液状薬物であってもよい。ここにいう固体薬物は、室温(25℃)で固体である薬物、すなわち、融点が25℃より高い薬物を意味する。ここにいう融点は、DSC、型番DSC6220(セイコーインスツルーメンツ(SII)製)で測定された値を意味する。
また、液状の薬物とは、室温(25℃)で流動性を有する、すなわち薬物の粘度が0.05〜10万mPa・sである薬物をいう。なお、上記薬物の粘度は、当該薬物を25℃に保温しながらE型粘度計を用いて測定する。
このような薬物を含む薬物含有溶液は、注射用液剤又は経口液剤であることが好ましい。
【0041】
上記薬物の濃度としては、その性質等によっても異なるが、本発明のゼリー状製剤の全重量に対して、通常1×10−10〜80重量%である。1×10−10重量%未満であると、臨床効果の観点から多くの薬物において薬効を示さない場合があり、80重量%を超えると、ゼリー状製剤の物性が著しく低下し、ゼリー状製剤の保型性に問題が生じる可能性がある。
【0042】
また、上記薬物含有溶液に含まれる溶媒は、ヒトに投与するための安全性の観点から、水、グリセリン、及び、プロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
本発明のゼリー状製剤において、上記ゲル化剤の配合量が、ゼリー状製剤の全重量基準で0.1〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜30重量%、更に好ましくは1〜20重量%である。0.1重量%未満であると、常温ではゲル化しない可能性があり、一方、40重量%を超えると、口腔内での溶解性が極めて遅くなり、使用上問題となる恐れがある。
【0044】
また、本発明のゼリー状製剤において、上述した本発明の可食性組成物は、ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒を含有し、上記不揮発性有機溶媒の配合量が、ゼリー状製剤の全重量基準で10〜99重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80重量%である。不揮発性有機溶媒が10重量%未満であると、口腔内での溶解性が極めて悪くなり、使用上問題となる可能性があり、一方、99重量%を超えると、常温での保形性等の物性面の保管安定性が悪くなる恐れがある。
【0045】
また、本発明のゼリー状製剤において、上記ゲル化剤と不揮発性有機溶媒とは、本発明の効果を奏するよう適宜選択して組み合わせて用いられることが好ましい。
本発明における上記ゲル化剤と不揮発性有機溶媒との好ましい組み合わせとしては、例えば、上記ゲル化剤は、ゼラチン、κ−カラギーナン、ネイティブ型ジェランガム、及び、タマリンドガムからなる群より選択される少なくとも1種であり、上記ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒は、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体である組み合わせが挙げられる。
また、別の組み合わせとしては、例えば、ゲル化剤は、ゼラチン、κ−カラギーナン、タマリンドガム、及び、HMペクチンからなる群より選択される少なくとも1種であり、上記ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒は、プロピレングリコール及び/又はプロピレングリコール誘導体である組み合わせが挙げられる。
【0046】
本発明のゼリー状製剤は、例えば、水と、ゲル化剤と、該ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒とを混合、加熱、溶解させて不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を得る工程、上記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程、放冷又は冷却により固化させて可食性組成物を得る工程、及び、上記可食性組成物に薬物含有溶液を添加して、ゼリー状製剤を得る工程を含む方法により製造することができる。
このような本発明のゼリー状製剤の製造方法も本発明の一つである。
なお、本発明のゼリー状製剤の製造方法において、上記可食性組成物を得る工程までを行うことで、本発明の可食性組成物を製造することができる。
【0047】
上記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を得る工程では、まず、所定量の不揮発性有機溶媒に、κ−カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、ジェランガム、タマリンドガム等のゲル化剤、及び、その他添加剤を常温又は加熱により溶解させ、上記不揮発性有機溶媒に溶解しない添加剤に関しては均一に分散させる。
ここで、上記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液の調製時に泡が発生した場合は、長時間静置や真空又は減圧脱泡を行い充分に消泡させる。
また、上記不揮発性有機溶媒含有ゲル化溶液を得る工程は、前もって、水と、ゲル化剤とを混合、加熱、溶解させてゲル化剤溶液を得る工程、該ゲル化剤溶液を凍結乾燥させ、易溶性化ゲル化剤を得る工程を行い、該易溶性化ゲル化剤に、該易溶性化ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒を混合、加熱、溶解させて不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を得る工程であってもよい。このような工程を行うことで、上記ゲル化剤は、不揮発性有機溶媒に容易に溶解しない場合であっても、不揮発性有機溶媒に溶解させることができる。このようなゲル化剤溶液を得る工程、易溶性化ゲル化剤を得る工程を、不揮発性有機溶媒含有ゲル化溶液を得る工程の前に有するゼリー状製剤の製造方法もまた、別の態様に係る本発明の一つである。
【0048】
上記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程、及び、放冷又は冷却により固化させる工程では、上記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液の所定量を40〜80℃の温度下で希望するサイズのプラスチック又はアルミ製ブリスターケース及びピロー包装内に分注し、分注後即座に冷却固化させて可食性組成物を得る。当該分注方式の代りに、上記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液をプラスチック製剥離フィルム上に適当量展延し、冷却固化し、希望するサイズに裁断してもよい。
【0049】
なお、上記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液に添加された水を除去するため、本工程で冷却固化させる前に加熱乾燥又は減圧乾燥を行う必要がある。
また、製造するゼリー状製剤に含まれる不揮発性有機溶媒の含有量を調製する場合には、本工程の後に、冷風乾燥工程又は冷却減圧乾燥工程を行ってもよい。
【0050】
上記ゼリー状製剤を得る工程では、上記可食性組成物に上述した薬物含有溶液を塗布することで、該薬物含有溶液を可食性組成物に浸潤させる。
このように、可食性組成物を形成した後、薬物含有溶液を添加するため、本発明のゼリー状製剤の製造方法では、熱に不安定な薬物であっても好適に用いることができる。
【0051】
得られたシート又はフィルム状のゼリー状製剤を必要により密封包装し、製品とすることが好ましい。特に該ゼリー状製剤は、水を含まないため、一般的に必要となる加熱滅菌工程等の滅菌工程が不要となり便利である。
【発明の効果】
【0052】
本発明の可食性組成物は、薬物含有溶液を後添加することにより、好適にゲル化しゼリー状製剤を得ることができ、かつ、薬物含有溶液添加後のゼリー状製剤は、口腔内において溶解しうるものである。また、本発明の可食性組成物は、好適には水を含まず不揮発性有機溶媒を含むため、製造工程上の滅菌を考慮する必要がなく、熱に弱い薬物の剤型として好適である。
より詳細には、本発明の可食性組成物は、好適には、水を含まないゼリー状の組成物であり、ゲル化剤として、ゼラチン、κ−カラギーナン、タマリンドガム、及び、HMペクチンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることで、常温ではゲル化し、口腔内の唾液で容易に溶解するという特徴を持ち合わせている。
また、本発明の可食性組成物は、不揮発性有機溶媒の含有量を制御することで、その溶解時間を容易に制御することも可能である。この溶解時間を制御可能であるという観点からは、口腔内における滞留時間が必要である口腔粘膜及び舌下粘膜から吸収させる医薬品の剤型として、また、例えば、アレルゲンを舌下粘膜から感作させる舌下減感作療法に適している。
また、水を含まないという観点からは、本発明の可食性組成物は、一般的なゼリーでは必要な滅菌工程や防腐剤の添加が不必要となり、製造コスト面でのメリットがあり、また、水分制限が必要な患者のための栄養補助食及び医薬品の剤型としても適している。
本発明の可食性組成物を用いて得られるゼリー状製剤は、タンパク質やペプチドの保管安定性を向上させることが一般的に知られている、ゼラチン、多糖類及びグリセリンやプロピレングリコールといったポリオール類が好適に用いられるため、特にタンパク質やペプチドを安定に維持することができると期待される。
本発明のゼリー状製剤は、もちろんそのままの状態で嚥下してもよいし、口腔内で速やかに溶解させて嚥下してもよい。更に、口腔内での溶解時間を制御し、口腔粘膜や舌下粘膜からの吸収を期待することも可能である。体温ですべて溶解させることができるため、残渣感がないという観点、また水を含まないという観点から、本発明のゼリー状製剤は、水分制限のある患者及び嚥下困難な患者及び介護者のQOLを大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)4.0重量部を40℃に加温し、魚由来水溶性ゼラチン(水溶性ゼラチンCSF、ニッピ社製)2.0重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、40℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.0gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0055】
(実施例2)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)4.0重量部を60℃に加温し、豚由来低分子ゼラチン(豚骨ゼラチンAEP、ニッピ社製)2.0重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、60℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.0gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0056】
(実施例3〜5)
表1に示した組成に従い、実施例2と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。豚由来低分子ゼラチンの代わりに、実施例3では豚由来酸処理ゼラチン(AP−200F、ニッピ社製)、実施例4では豚由来アルカリ処理ゼラチン(BP−200F、ニッピ社製)、実施例5では牛由来アルカリ処理ゼラチン(AD4、ニッピ社製)を用いた。
【0057】
(実施例6)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.0重量部を85℃に加温し、κ−カラギーナン(GENUGEL JPE−126、CP Kelco社製)0.4重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)3.6重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.8gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0058】
(実施例7、8)
表1に示した組成に従い、実施例6と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。κ−カラギーナンの代わりに、実施例7ではタマリンドガム(グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製)、実施例8ではHMペクチン(GENU PECTIN Type USP−H、CP Kelco社製)を用いた。
【0059】
(比較例1)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬製)8.0重量部を85℃に加温し、LMペクチン(GENU PECTIN Type LM−102AS−J、CP Kelco製)0.4重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)3.6重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.8gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0060】
(比較例2〜5)
表1に示した組成に従い、比較例1と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。LMペクチンの代わりに、比較例2ではタラガム(MT120、MRCポリサッカライド社製)、比較例3ではローカストビーンガム(GENUGUM RL−200−J、CP Kelco社製)、比較例4ではキサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)、比較例5では脱アシル型ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)を用いた。
【0061】
【表1】

【0062】
(実施例9)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)4.0重量部を40℃に加温し、魚由来水溶性ゼラチン(水溶性ゼラチンCSF、ニッピ社製)2.0重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、40℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.0gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0063】
(実施例10)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)4.0重量部を60℃に加温し、豚由来低分子ゼラチン(豚骨ゼラチンAEP、ニッピ社製)2.0重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、60℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.0gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0064】
(実施例11〜13)
表2に示した組成に従い、実施例10と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。豚由来低分子ゼラチンの代わりに、実施例11では豚由来酸処理ゼラチン(AP−200F、ニッピ社製)、実施例12では豚由来アルカリ処理ゼラチン(BP−200F、ニッピ社製)、実施例13では牛由来アルカリ処理ゼラチン(AD4、ニッピ社製)を用いた。
【0065】
(実施例14)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.0重量部を85℃に加温し、κ−カラギーナン(GENUGEL JPE−126、CP Kelco社製)0.4重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)3.6重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.8gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0066】
(実施例15、16)
表2に示した組成に従い、実施例14と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。κ−カラギーナンの代わりに、実施例15ではネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)、実施例16ではタマリンドガム(グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製)を用いた。
【0067】
(比較例6)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.0重量部を85℃に加温し、LMペクチン(GENU PECTIN Type LM−102AS−J、CP Kelco社製)0.4重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)3.6重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.8gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0068】
(比較例7〜10)
表2に示した組成に従い、比較例6と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。LMペクチンの代わりに、比較例7ではタラガム(MT120、MRCポリサッカライド社製)、比較例8ではローカストビーンガム(GENUGUM RL−200−J、CP Kelco社製)、比較例9ではキサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)、比較例10では脱アシル型ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)を用いた。
【0069】
【表2】

【0070】
(実施例17)
精製水(日本薬局方精製水、建永製薬社製)1000重量部に魚由来水溶性ゼラチン(水溶性ゼラチンCSF、ニッピ社製)5.0重量部を40℃で加熱溶解し、室温で放冷した後、液体窒素で凍結し、凍結乾燥機(DC400、ヤマト科学社製)で1昼夜凍結乾燥処理を行った。凍結乾燥処理を行った魚由来水溶性ゼラチン(FD品)2.0重量部を充分に攪拌した後、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)6.0重量部を加え、60℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に0.6gずつ分注し、室温で放冷し、可食性組成物を得た。
【0071】
(実施例18)
精製水(日本薬局方精製水、建永製薬社製)1000重量部に豚由来低分子ゼラチン(豚骨ゼラチンAEP、ニッピ社製)5.0重量部を60℃で加熱溶解し、室温で放冷した後、液体窒素で凍結し、凍結乾燥機(DC400、ヤマト科学社製)で1昼夜凍結乾燥処理を行った。凍結乾燥処理を行った豚由来低分子ゼラチン(FD品)2.0重量部を充分に攪拌した後、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)6.0重量部を加え、60℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に0.6gずつ分注し、室温で放冷し、可食性組成物を得た。
【0072】
(実施例19〜21)
表3に示した組成に従い、実施例18と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。豚由来低分子ゼラチンの代わりに、実施例19では豚由来酸処理ゼラチン(FD品)(AP−200F、ニッピ社製)、実施例20では豚由来アルカリ処理ゼラチン(FD品)(BP−200F、ニッピ社製)、実施例21では牛由来アルカリ処理ゼラチン(FD品)(AD4、ニッピ社製)を用いた。
【0073】
【表3】

【0074】
(実施例22)
精製水(日本薬局方精製水、建永製薬社製)1000重量部に魚由来水溶性ゼラチン(水溶性ゼラチンCSF、ニッピ社製)5.0重量部を40℃で加熱溶解し、室温で放冷した後、液体窒素で凍結し、凍結乾燥機(DC400、ヤマト科学社製)で1昼夜凍結乾燥処理を行った。凍結乾燥処理を行った魚由来水溶性ゼラチン(FD品)2.0重量部を充分に攪拌した後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、60℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に0.6gずつ分注し、室温で放冷し、可食性組成物を得た。
【0075】
(実施例23)
精製水(日本薬局方精製水、建永製薬社製)1000重量部に豚由来低分子ゼラチン(豚骨ゼラチンAEP、ニッピ社製)5.0重量部を60℃で加熱溶解し、室温で放冷した後、液体窒素で凍結し、凍結乾燥機(DC400、ヤマト科学社製)で1昼夜凍結乾燥処理を行った。凍結乾燥処理を行った豚由来低分子ゼラチン(FD品)2.0重量部を充分に攪拌した後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、60℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に0.6gずつ分注し、室温で放冷し、可食性組成物を得た。
【0076】
(実施例24〜26)
表4に示した組成に従い、実施例23と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。豚由来低分子ゼラチンの代わりに、実施例24では豚由来酸処理ゼラチン(FD品)(AP−200F、ニッピ社製)、実施例25では豚由来アルカリ処理ゼラチン(FD品)(BP−200F、ニッピ社製)、実施例26では牛由来アルカリ処理ゼラチン(FD品)(AD4、ニッピ社製)を用いた。
【0077】
(実施例27)
精製水(日本薬局方精製水、建永製薬社製)1000重量部にκ−カラギーナン(GENUGEL JPE−126、CP Kelco社製)5.0重量部を70℃で加熱溶解し、室温で放冷した後、液体窒素で凍結し、凍結乾燥機(DC400、ヤマト科学社製)で1昼夜凍結乾燥処理を行った。凍結乾燥処理を行ったκ−カラギーナン(FD品)0.2重量部を充分に攪拌した後、グリセリン(和光純薬工業社製)5.8重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に0.6gずつ分注し、室温で放冷し、可食性組成物を得た。
【0078】
(実施例28、29)
表4に示した組成に従い、実施例27と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。κ−カラギーナンの代わりに、実施例28ではネイティブ型ジェランガム(FD品)(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)、実施例29ではタマリンドガム(FD品)(グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製)を用いた。
【0079】
(比較例11)
精製水(日本薬局方精製水、建永製薬社製)1000重量部に脱アシル型ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)5.0重量部を70℃で加熱溶解し、室温で放冷した後、液体窒素で凍結し、凍結乾燥機(DC400、ヤマト科学社製)で1昼夜凍結乾燥処理を行った。凍結乾燥処理を行った脱アシル型ジェランガム(FD品)0.2重量部を充分に攪拌した後、グリセリン(和光純薬工業社製)5.8重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に0.6gずつ分注し、室温で放冷し、可食性組成物を得た。
【0080】
(比較例12)
表4に示した組成に従い、比較例11と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。脱アシル型ジェランガムの代わりに、LMペクチン(FD品)(GENU PECTIN Type LM−102AS−J、CP Kelco社製)を用いた。
【0081】
【表4】

【0082】
(実施例30)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)9重量部を60℃に加温し、豚由来低分子ゼラチン(豚骨ゼラチンAEP、ニッピ社製)1.9重量部及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(セロゲンPR−S、第一工業製薬社製)0.1重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、60℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.5gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0083】
(実施例31〜36)
表5に示した組成に従い、実施例30と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。カルボキシメチルセルロースの代わりに、実施例31ではκ−カラギーナン(GENUGELJPE126、CP Kelco社製)、実施例32ではι−カラギーナン(GENUVISCO PJ−JPE、CP Kelco社製)、実施例33ではLMペクチン(GENU pectin LM−102AS−J、CP Kelco社製)、実施例34では脱アシル化ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)、実施例35ではアルギン酸ナトリウム(キミカアルギンIL−2、キミカ社製)、実施例36ではサイリウムシードガム(PG200、MRCポリサッカライド社製)を用いた。
【0084】
【表5】

【0085】
(実施例37)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.8重量部を70℃に加温し、κ−カラギーナン(GENUGELJPE126、CP Kelco社製)0.1重量部及びキサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)0.1重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、70℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.9gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0086】
(実施例38〜42)
表6に示した組成に従い、実施例37と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。キサンタンガムの代わりに、実施例38ではι−カラギーナン(GENUVISCO PJ−JPE、CP Kelco社製)、実施例39ではネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)、実施例40ではサイリウムシードガム(PG200、MRCポリサッカライド社製)、実施例41ではトラガント末(トラガント末、鈴粉末薬品社製)、実施例42ではアルギン酸ナトリウム(キミカアルギンIL−2、キミカ社製)を用いた。
【0087】
【表6】

【0088】
(実施例43)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.8重量部を70℃に加温し、ι−カラギーナン(GENUVISCO PJ−JPE、CP Kelco社製)0.1重量部及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(セロゲンPR−S、第一工業製薬社製)0.1重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、70℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.9gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0089】
(実施例44〜50)
表7に示した組成に従い、実施例43と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。カルボキシメチルセルロースナトリウムの代わりに、実施例44ではアルギン酸ナトリウム(キミカアルギンIL−2、キミカ社製)、実施例45ではキサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)、実施例46ではλ−カラギーナン(GENEVISCO CSM−2、CP Kelco社製)、実施例47では脱アシル化ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)、実施例48ではネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)、実施例49ではサイリウムシードガム(PG200、MRCポリサッカライド社製)、実施例50ではトラガント末(トラガント末、鈴粉末薬品社製)を用いた。
【0090】
【表7】

【0091】
(実施例51)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.8重量部を70℃に加温し、タマリンドガム(グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製)0.1重量部及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(セロゲンPR−S、第一工業製薬社製)0.1重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、70℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.9gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0092】
(実施例52〜62)
表8に示した組成に従い、実施例51と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。カルボキシメチルセルロースナトリウムの代わりに、実施例52ではカルボキシビニルポリマー(カーボポール971PNF)、実施例53ではLMペクチン(GENU pectin LM−102AS−J、三晶社製)、実施例54ではHMペクチン(GENU pectin USP−H、三晶社製)、実施例55ではアルギン酸ナトリウム(キミカアルギンIL−2、キミカ社製)、実施例56ではキサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)、実施例57ではι−カラギーナン(GENUVISCO PJ−JPE、CP Kelco社製)、実施例58ではλ−カラギーナン(GENEVISCO CSM−2、CP Kelco社製)、実施例59では脱アシル化ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)、実施例60ではネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)、実施例61ではサイリウムシードガム(PG200、MRCポリサッカライド社製)、実施例62ではトラガント末(トラガント末、鈴粉末薬品社製)を用いた。
【0093】
【表8】

【0094】
(実施例63)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.8重量部を80℃に加温し、キサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)0.1重量部及び脱アシル化ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)0.1重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、80℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.9gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0095】
(実施例64)
表9に示した組成に従い、脱アシル化ジェランガムの代わりに、実施例64ではサイリウムシードガム(PG200、MRCポリサッカライド社製)を用いた。
【0096】
【表9】

【0097】
(実施例65)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.8重量部を80℃に加温し、脱アシル化ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)0.1重量部及びカルボキシビニルポリマー(カーボポール971PNF)0.1重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、80℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.9gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0098】
(実施例66〜72)
表10に示した組成に従い、実施例65と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。カルボキシビニルポリマーの代わりに、実施例66ではLMペクチン(GENU pectin LM−102AS−J、三晶社製)、実施例67ではHMペクチン(GENU pectin USP−H、三晶社製)、実施例68ではアルギン酸ナトリウム(キミカアルギンIL−2、キミカ社製)、実施例69ではλ−カラギーナン(GENEVISCO CSM−2、CP Kelco社製)、実施例70ではネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)、実施例71ではサイリウムシードガム(PG200、MRCポリサッカライド社製)、実施例72ではトラガント末(トラガント末、鈴粉末薬品社製)を用いた。
【0099】
【表10】

【0100】
(実施例73)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.8重量部を70℃に加温し、LMペクチン(GENU pectin LM−102AS−J、三晶社製)0.1重量部及びネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)0.1重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、70℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.9gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0101】
(実施例74、75)
表11に示した組成に従い、実施例73と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。ネイティブ型ジェランガムの代わりに、実施例74ではサイリウムシードガム(PG200、MRCポリサッカライド社製)、実施例75ではトラガント末(トラガント末、鈴粉末薬品社製)を用いた。
【0102】
【表11】

【0103】
(実施例76)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.8重量部を70℃に加温し、HMペクチン(GENU pectin LM−102AS−J、三晶社製)0.1重量部及びカルボキシビニルポリマー(カーボポール971PNF)0.1重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、70℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.9gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0104】
(実施例77)
表12に示した組成に従い、実施例76と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。カルボキシビニルポリマーの代わりに、実施例77ではサイリウムシードガム(PG200、MRCポリサッカライド社製)を用いた。
【0105】
【表12】

【0106】
(実施例78)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)8.8重量部を70℃に加温し、ネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)0.1重量部及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(セロゲンPR−S、第一工業製薬社製)0.1重量部を加え、充分に攪拌し溶解させた後、グリセリン(和光純薬工業社製)4.0重量部を加え、70℃の温度で攪拌しながら混合させた。混合後、プラスチック製ブリスターケース(クリオモルドスタンダード(円形)、サクラファインテック社製)に1.9gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を蒸発させ、更にモレキュラーシーブスを敷いたデシケーター内で残存水分を蒸発させ、可食性組成物を得た。
【0107】
(実施例79〜83)
表13に示した組成に従い、実施例78と同様の手順で可食性組成物の調製を行った。カルボキシメチルセルロースナトリウムの代わりに、実施例79ではカルボキシビニルポリマー(カーボポール971PNF)、実施例80ではアルギン酸ナトリウム(キミカアルギンIL−2、キミカ社製)、実施例81ではλ−カラギーナン(GENEVISCO CSM−2、CP Kelco社製)、実施例82ではサイリウムシードガム(PG200、MRCポリサッカライド社製)、実施例83ではトラガント末(トラガント末、鈴粉末薬品社製)を用いた。
【0108】
【表13】

【0109】
[試験方法]
実施例及び比較例の各サンプルに、精製水、50%グリセリン含有水溶液、薬物含有溶液を後添加することにより、ゼリー状組成物又はゼリー状製剤へと復元するかどうかを検討した。
ゼリーが復元するかどうかをゼリー復元性として評価し、ゼリーが復元するまでにかかる時間をゼリー復元時間として評価を行った。それぞれの評価基準を以下に示す。結果を表14〜21に示した。
なお、薬物含有溶液としては、スギ花粉抽出エキス溶液(治療用標準化アレルゲンエキス スギ花粉2000JAU/mL、鳥居薬品社製)、ハウスダスト抽出エキス溶液(治療用アレルゲンエキス皮下注「トリイ」ハウスダスト1:10、鳥居薬品社製)、ブタ草花粉抽出エキス溶液(治療用アレルゲンエキス皮下注「トリイ」ブタ草花粉1:100、鳥居薬品社製)を用いた。
【0110】
(1)ゼリー復元性(評価1、評価2、評価3)
評価1では精製水を添加した場合、評価2では50重量%グリセリン水溶液を添加した場合、評価3では薬物含有溶液を添加した場合のゼリー復元性に関して評価を行った。
評価基準は以下の通りである。
3:完全にゲル化し、均一なゼリーとなった。
2:ゲル化し、ゼリーとなったが、若干不均一であった。
1:ゲル化しているが、非常に柔らかく、崩れやすいゼリーとなった。
0:ゲル化せず粘性の高いゾルとなった。
【0111】
(2)ゼリー復元時間(評価1、評価2、評価3)
評価1では精製水を添加した場合、評価2では50重量%グリセリン水溶液を添加した場合、評価3では薬物含有溶液を添加した場合のゼリー復元時間に関して評価を行った。
評価基準は以下の通りである。
6:3時間未満で成形性のあるゼリーとなった。
5:3時間以上、6時間未満で成形性のあるゼリーとなった。
4:6時間以上、12時間未満で成形性のあるゼリーとなった。
3:12時間以上、24時間未満で成形性のあるゼリーとなった。
2:24時間以上、48時間未満で成形性のあるゼリーとなった。
1:48時間以上、168時間未満で成形性のあるゼリーとなった。
なお、(1)ゼリー復元性で“0:ゲル化せず粘性の高いゾルとなった。”のサンプルに関しては、当該試験は行わず0としてスコア化した。
【0112】
【表14】

【0113】
【表15】

【0114】
【表16】

【0115】
【表17】

【0116】
【表18】

【0117】
表14〜16に示した実施例1〜29及び比較例1〜12を比較すると、明らかに精製水の吸収性が優れており、速やかにゼリー化することが判った。50%グリセリン水溶液の吸収性に関しても実施例1〜29は優れているが、ゼリー復元にかなりの時間を要することが示された。また、表17に示した精製水並びに50%グリセリン水溶液を0.1mL〜10mLまで添加した系においては、精製水0.1mL〜3mL添加時及び50%グリセリン水溶液0.1mL添加時のみ完全にゼリー化することが示された。また、表18に示したように、グリセリンを含まない薬物含有溶液であるハウスダスト抽出エキス溶液においては、良好な結果であったが、グリセリンを含む薬物含有溶液であるスギ花粉抽出エキス溶液及びブタ草花粉抽出エキス溶液においては、ゼリー復元にかなりの時間を要することが示された。
【0118】
【表19】

【0119】
【表20】

【0120】
【表21】

【0121】
表19〜20に示したように、実施例30〜83の可食性組成物は、いずれの評価項目においても良好な結果であった。表21に示したように、実施例52及び57の可食性組成物は、実際にグリセリンを含む薬物含有溶液であるスギ花粉抽出エキス溶液及びブタ草花粉抽出エキス溶液においても充分に良好な結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の可食性組成物は、薬物含有溶液を後添加することにより、好適にゲル化しゼリー状製剤を得ることができ、かつ、薬物含有溶液添加後のゼリー状製剤は、口腔内において溶解しうるものである。また、本発明の可食性組成物は、好適には水を含まず不揮発性有機溶媒を含むため、製造工程上の滅菌を考慮する必要がなく、熱に弱い薬物の剤型として好適である。
より詳細には、本発明の可食性組成物は、好適には、水を含まないゼリー状の組成物であり、ゲル化剤として、ゼラチン、κ−カラギーナン、タマリンドガム、及び、HMペクチンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることで、常温ではゲル化し、口腔内の唾液で容易に溶解するという特徴を持ち合わせている。
また、本発明の可食性組成物は、不揮発性有機溶媒の含有量を制御することで、その溶解時間を容易に制御することも可能である。この溶解時間を制御可能であるという観点からは、口腔内における滞留時間が必要である口腔粘膜及び舌下粘膜から吸収させる医薬品の剤型として、また、例えば、アレルゲンを舌下粘膜から感作させる舌下減感作療法に適している。
また、水を含まないという観点からは、本発明の可食性組成物は、一般的なゼリーでは必要な滅菌工程や防腐剤の添加が不必要となり、製造コスト面でのメリットがあり、また、水分制限が必要な患者のための栄養補助食及び医薬品の剤型としても適している。
本発明の可食性組成物を用いて得られるゼリー状製剤は、タンパク質やペプチドの保管安定性を向上させることが一般的に知られている、ゼラチン、多糖類及びグリセリンやプロピレングリコールといったポリオール類が好適に用いられるため、特にタンパク質やペプチドを安定に維持することができると期待される。
本発明のゼリー状製剤は、もちろんそのままの状態で嚥下してもよいし、口腔内で速やかに溶解させて嚥下してもよい。更に、口腔内での溶解時間を制御し、口腔粘膜や舌下粘膜からの吸収を期待することも可能である。体温ですべて溶解させることができるため、残渣感がないという観点、また水を含まないという観点から、本発明のゼリー状製剤は、水分制限のある患者及び嚥下困難な患者及び介護者のQOLを大幅に向上させることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤を含む可食性組成物であって、
薬物含有溶液を添加することによりゲル化させ、ゼリー状製剤とするために用いられる
ことを特徴とする可食性組成物。
【請求項2】
水を含まない請求項1記載の可食性組成物。
【請求項3】
ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒を更に含む請求項1又は2記載の可食性組成物。
【請求項4】
不揮発性有機溶媒は、分子中に2〜4個のOH基を有する、炭素数4以下の多価アルコールである請求項3記載の可食性組成物。
【請求項5】
不揮発性有機溶媒は、グリセリン、グリセリン誘導体、プロピレングリコール、及び、プロピレングリコール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項3又は4記載の可食性組成物。
【請求項6】
ゲル化剤は、ゼラチン、κ−カラギーナン、HMペクチン、ネイティブ型ジェランガム、及び、タマリンドガムからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1、2、3、4又は5記載の可食性組成物。
【請求項7】
ゲル化剤は、ゼラチン、κ−カラギーナン、ネイティブ型ジェランガム、タマリンドガム、ι−カラギーナン/カルボキシメチルセルロースナトリウム、ι−カラギーナン/アルギン酸ナトリウム、ι−カラギーナン/キサンタンガム、ι−カラギーナン/λ−カラギーナン、ι−カラギーナン/脱アシル化ジェランガム、ι−カラギーナン/サイリウムシードガム、ι−カラギーナン/トラガント末、キサンタンガム/脱アシル化ジェランガム、キサンタンガム/サイリウムシードガム、脱アシル化ジェランガム/カルボキシビニルポリマー、脱アシル化ジェランガム/LMペクチン、脱アシル化ジェランガム/アルギン酸ナトリウム、脱アシル化ジェランガム/λ−カラギーナン、脱アシル化ジェランガム/サイリウムシードガム、脱アシル化ジェランガム/トラガント末、LMペクチン/サイリウムシードガム、及び、LMペクチン/トラガント末からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
不揮発性有機溶媒は、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体である請求項1、2、3、4又は5記載の可食性組成物。
【請求項8】
ゲル化剤は、ゼラチン、κ−カラギーナン、タマリンドガム、及び、HMペクチンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
不揮発性有機溶媒は、プロピレングリコール及び/又はプロピレングリコール誘導体である請求項1、2、3、4又は5記載の可食性組成物。
【請求項9】
不揮発性有機溶媒が、グリセリン及び/又はプロピレングリコールを含有し、溶液吸収促進剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、LMペクチン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、脱アシル化ジェランガム、サイリウムシードガム、及び、トラガント末からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項5記載の可食性組成物。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の可食性組成物に、薬物含有溶液を添加することにより得られることを特徴とするゼリー状製剤。
【請求項11】
薬物含有溶液は、注射用液剤又は経口液剤である請求項10記載のゼリー状製剤。
【請求項12】
薬物含有溶液に含まれる溶媒は、水、グリセリン、及び、プロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項10又は11記載のゼリー状製剤。
【請求項13】
ゲル化剤の配合量が、ゼリー状製剤の全重量基準で0.1〜40重量%である請求項10、11又は12記載のゼリー状製剤。
【請求項14】
可食性組成物は、ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒を含有し、前記不揮発性有機溶媒の配合量が、ゼリー状製剤の全重量基準で10〜99重量%である請求項10、11、12又は13記載のゼリー状製剤。
【請求項15】
水と、ゲル化剤と、該ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒とを混合、加熱、溶解させて不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を得る工程、
前記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程、
放冷又は冷却により固化させて可食性組成物を得る工程、及び、
前記可食性組成物に薬物含有溶液を添加して、ゼリー状製剤を得る工程
を有することを特徴とするゼリー状製剤の製造方法。
【請求項16】
水と、ゲル化剤とを混合、加熱、溶解させてゲル化剤溶液を得る工程、
前記ゲル化剤溶液を凍結乾燥させ、易溶性化ゲル化剤を得る工程、
前記易溶性化ゲル化剤に、該易溶性化ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒を混合、加熱、溶解させて不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を得る工程、
前記不揮発性有機溶媒含有ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程、
放冷又は冷却により固化させて可食性組成物を得る工程、及び、
前記可食性組成物に薬物含有溶液を添加して、ゼリー状製剤を得る工程
を有することを特徴とするゼリー状製剤の製造方法。


【公開番号】特開2013−6824(P2013−6824A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−98245(P2012−98245)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】