説明

合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材

【課題】本発明は、従来のケーブル・配管類保護案内部材におけるリンクプレートなどの組み立て作業を不要とし、長尺であっても製造可能であるとともに摩耗損傷による発塵、屈曲騒音、屈曲振動を抑制し、ケーブル・配管類の直線姿勢を確実に保持して屈曲移動時におけるケーブル・配管類の飛び出しを阻止すること。
【解決手段】帯状基部110とこの帯状基部110の左右両側縁に沿って一体に連続成形されてケーブル・配管類Cをケーブル長手方向に沿って左右両側から抱持する左抱持部120aと右抱持部120bとで囲繞され、ケーブル・配管類Cのケーブル長手方向に沿って延在する帯状基部110が、ケーブル・配管類Cの直線姿勢を保持した状態で左抱持部120aと右抱持部120bとの間に配置されてケーブル収容空間Rの内側へ膨らんだアーチ状曲面を形成した合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定エネルギー源を備えた機械側固定フレームに連結した一端から機械側可動フレームに連結した他端に向けてエネルギーを供給するのに用いられるケーブル、ホースなどのケーブル・配管類をU字状に屈曲させながら保護案内する合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブル・配管類保護案内部材として、離間配置された左右一対のリンクプレートの上縁部間および下縁部間をフラップおよび底板によりそれぞれ連結してケーブル収容空間を構成したリンク体をケーブル長手方向に多数連結してなるケーブル・ホースの保護案内チェーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような保護案内チェーンにおいて、客先が要望する移動ストロークは長短さまざまであり、場合によっては、10メートル以上の移動ストロークが必要な長尺のものが求められることがあるため、従来は特許文献1に示すようなリンク体の組み立て式であった。
しかしながら、このような組立式のケーブル・ホースの保護案内チェーンは、リンクを多数結合すれば、長尺化が可能であるがリンクプレート、フラップおよび底板などの組み立て作業に多大な負担を必要とし、リンクプレート相互間の摩耗損傷による発塵やリンクプレート相互間の屈曲騒音やリンクプレート相互間の多角形運動に伴う振動もあるという取り扱い上の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−47441号公報(特許請求の範囲、図9)
【特許文献2】特表2001−514725号公報(特許請求の範囲、図1−図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、合成樹脂製の扁平な構造の一片として射出成形するとともに曲げ可能なブリッジにより相互に結合されるセグメントから構成された折り畳み可能なケーブル保護要素部材が考えられた(例えば、特許文献2参照)。これにより、隣接するリンクプレート同士を連結する必要が無くなり、組立性が格段に向上するとともに、隣接するリンクプレート相互間のピンとピン孔の摺動に伴う摩耗損傷による発塵が抑制される。また、リンクプレート相互間の屈曲を規制する部材が不要となり、屈曲規制部材の衝突による騒音が抑制される。さらにリンクの多角形運動が抑制され、振動を小さくすることができる。
【0005】
しかし、このような折り畳み可能なケーブル保護要素部材は、合成樹脂製の扁平な構造の一片として射出成形されているため、例えば直線作動機分野で作動軸のストロークに追従可能なケーブル保護部材として用いる長尺状のものを製造しようとすると、射出成形のような一体成形でもある程度長尺のものも製作可能であるが、金型サイズの物理的な制限があり、さらにユーザーの要望に応じて、移動ストロークの異なる様々な金型を用意するのは難しいという問題が発生した。
【0006】
そこで、本発明は、従来のような問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、従来のケーブル・配管類保護案内部材におけるリンクプレートの組み立て作業を不要とするとともに、摩耗損傷による発塵、屈曲騒音、屈曲振動を抑制し、特に、一体に連続成形を行うことにより、長尺であっても長さに制限がなく製造可能で、ケーブル・配管類の直線姿勢を確実に保持して屈曲移動時におけるケーブル・配管類の飛び出しを阻止する合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、請求項1に係る本発明は、ケーブル・配管類のケーブル長手方向に沿って延在する帯状基部と該帯状基部の左右両側縁に沿って一体に連続成形されてケーブル・配管類をケーブル長手方向に沿って対向間隙を持つ左右両側から抱持する左抱持部と右抱持部とで囲繞されたチューブ状のケーブル収容空間内にケーブル・配管類を配置するとともに、前記ケーブル・配管類をU字状に屈曲させながら保護案内する合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材であって、前記左抱持部および右抱持部が、ケーブル収容空間をケーブル長手方向と直交する方向に切断するような切り込み部分を介した状態でケーブル長手方向に配置され、前記帯状基部が、前記ケーブル・配管類の直線姿勢を保持した状態で前記左抱持部と右抱持部との間に配置されてケーブル収容空間の内側へ膨らんだアーチ状曲面を形成することにより、組み立て作業を不要として、摩耗損傷による発塵、屈曲騒音、屈曲振動を抑制し、特に、長尺で製造できるとともに対向間隙を有しているため、ケーブルの脱着が容易であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載された発明である合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材は、請求項1に記載の構成に加えて、前記抱持部が、前記帯状基部に連続して立設した側壁形成部分と該側壁形成部分に折曲して連続で取り付けた抱持壁形成部分とで構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載された発明である合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材は、請求項2に記載の構成に加えて、前記抱持部の抱持壁形成部分が、前記抱持部の側壁形成部分に対してケーブル収容空間側へ90°以下の鋭角に折曲した状態で形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載された発明である合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の構成に加えて、前記切り込み部分の根元が、帯状基部まで切り込まれたR状切り込み終端を有していることにより、ケーブル・配管類保護案内部材の屈曲半径を小さくすることができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
まず、請求項1に係る合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材によれば、ケーブル・配管類のケーブル長手方向に沿って延在する帯状基部とこの帯状基部の左右両側縁に沿って一体に連続成形されてケーブル・配管類をケーブル長手方向に沿って対向間隙を持つ左右両側から抱持する左抱持部と右抱持部とで囲繞されたチューブ状のケーブル収容空間内にケーブル・配管類を配置するとともに、ケーブル・配管類をU字状に屈曲させながら保護案内することにより、従来の特開平10−47441号公報に開示されているようなリンクプレートなどを多数連結してケーブル収容空間を構成したケーブル・ホースの保護案内チェーンに比較すると、ケーブル・配管類を保護案内するケーブル収容空間が例えば押し出し成形などの一体の連続成形により、必要な分だけ長尺の単一の成形品で構成されるため、従来のようなリンクプレートの組み立て作業が不要となり、従来のリンクプレート相互間のピンとピン孔の摺動の際に生じる摩耗損傷による発塵や屈曲の際にリンクプレート相互間で屈曲角度を規制するストッパーに衝突する際に生じる屈曲騒音やリンクプレート相互間の多角形運動に伴う屈曲振動を抑制することができる。さらに、特表2001−514725号公報に開示されているような合成樹脂製の扁平な構造の一片として射出成形するとともに曲げ可能なブリッジにより相互に結合されるセグメントから構成された折り畳み可能なケーブル保護要素部材が有する金型サイズの物理的な制限やさらにユーザーの要望に応じて、移動ストロークの異なる様々な金型を用意するのは難しいという問題は、例えば押し出し成形のような一体に連続的な成形を行うことによって、長さに制限無く製作可能になるとともに、必要な長さで切断して使用することによって問題を解消することができる。加えて、セグメントを1個ずつ折り畳んで組み付ける組み立て作業を不要とすることができ、さらに組み立てが容易となる。
【0012】
そして、左抱持部と右抱持部がケーブル収容空間をケーブル長手方向と直交する方向に切断するような切り込み部分を介した状態でケーブル長手方向に配置され、帯状基部がケーブル・配管類の直線姿勢を保持した状態で左抱持部と右抱持部との間に配置されてケーブル収容空間の内側へ膨らんだアーチ状曲面を形成することにより、ケーブル・配管類を直線移動させる際にアーチ状曲面を呈する帯状基部が、この帯状基部の帯厚とアーチ状曲面の形態とに起因する剛性を発揮しながらケーブル長手方向に一直線状となってケーブル・配管類の重量を支えるため、ケーブル・配管類保護案内部材がケーブル・配管類の直線姿勢を確実に保持することができる。
また、ケーブル・配管類を屈曲移動させる際に、帯状基部のアーチ状曲面が弾性変形して平坦化する作用を伴い、帯状基部の左右両側縁に沿って一体に連続成形された左右の抱持部が対向間隙に向かって相互に傾いて対向間隙を塞ぎ込むため、抱持部の対向間隙におけるケーブル・配管類の屈曲移動により惹起しがちな飛び出しを完全に阻止することができる。
【0013】
そして、請求項2に記載された発明である合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材は、請求項1に記載された合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材が奏する効果に加えて、抱持部が帯状基部に連続して立設した側壁形成部分とこの側壁形成部分に折曲して連続で取り付けた抱持壁形成部分とで構成されていることにより、帯状基部とこれに連続する抱持部の側壁形成部分とでケーブル・配管類の屈曲姿勢を柔軟に形作るとともに左抱持部および右抱持部の抱持壁形成部分の先端が対向間隙側へ移動することによって、対向間隙を小さくするため、ケーブル収容空間に収容したケーブル・配管類の飛び出しを抑制することができ、ケーブル・配管類をU字状に屈曲させながら円滑に保護案内することができる。
【0014】
また、請求項3に記載された発明である合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材は、請求項2に記載された合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材が奏する効果に加えて、左抱持部および右抱持部にそれぞれ構成された抱持壁形成部分が、前記左抱持部および右抱持部にそれぞれ構成された側壁形成部分に対してケーブル収容空間側へ90°以下の鋭角に折曲した状態で形成されていることにより、左抱持部および右抱持部の外周壁形成部が左右相互にケーブル収容空間の内側に向けて対向配置され、ケーブル・配管類を屈曲移動させる際に帯状基部のアーチ状曲面が弾性変形して平坦化すると、左抱持部および右抱持部と帯状基部とでケーブル・配管類を包むように内蔵して抱持壁形成部分がケーブル・配管類を抱えるため、ケーブル・配管類が左抱持部と右抱持部との間の対向間隙の方に移動しがたくなり、抱持部の対向間隙からケーブル・配管類が飛び出そうとするのを抑制することができる。
【0015】
また、請求項4に記載された発明である合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載された合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材が奏する効果に加えて、切り込み部分の根元が帯状基部の寸前まで切り込まれたR状切り込み終端を有していることにより、ケーブル・配管類保護案内部材が屈曲する際の曲率半径を小さくすることができる。これにより、ケーブル・配管類保護案内部材の省スペース化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例であるケーブル・配管類保護案内部材の使用態様図。
【図2】本発明の実施例であるケーブル・配管類保護案内部材の全体斜視図。
【図3】本発明の実施例であるケーブル・配管類保護案内部材の直線姿勢領域の拡大斜視図。
【図4】本発明の実施例であるケーブル・配管類保護案内部材の屈曲姿勢領域の拡大斜視図。
【図5】本発明の実施例であるケーブル・配管類保護案内部材の側面図。
【図6】図5のA―A断面におけるケーブル・配管類保護案内部材の断面図。
【図7】図5のB―B断面におけるケーブル・配管類保護案内部材の断面図。
【図8】図5のC―C断面におけるケーブル・配管類保護案内部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ケーブル・配管類のケーブル長手方向に沿って延在する帯状基部とこの帯状基部の左右両側縁に沿って一体に連続成形されてケーブル・配管類をケーブル長手方向に沿って対向間隙を持つ左右両側から抱持する左抱持部および右抱持部で囲繞されたチューブ状のケーブル収容空間内にケーブル・配管類を配置するとともに、ケーブル・配管類をU字状に屈曲させながら保護案内する合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材であって、左抱持部および右抱持部が、ケーブル収容空間をケーブル長手方向と直交する方向に切断するような切り込み部分を介した状態でケーブル長手方向に配置され、帯状基部が、ケーブル・配管類の直線姿勢を保持した状態で左抱持部と右抱持部との間に配置されてケーブル収容空間の内側へ膨らんだアーチ状曲面を形成し、従来のケーブル・配管類保護案内部材におけるリンクプレートなどの組み立て作業を不要とするとともに、摩耗損傷による発塵、屈曲騒音、屈曲振動を抑制し、特に、一体に連続成形を行うことにより長尺であっても長さに制限がなく製造可能で、ケーブル・配管類の直線姿勢を確実に保持して屈曲移動時におけるケーブル・配管類の飛び出しを阻止するものであれば、その具体的な実施の形態は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0018】
まず、本発明のケーブル・配管類保護案内部材の具体的な使用態様については、固定エネルギー源を備えた機械側固定フレームに連結した一端からこの機械側固定フレームに沿って平行移動する機械側可動フレームに連結した他端に向けてケーブル、ホースなどのケーブル・配管類をU字状に屈曲させながら保護案内する使用状況下であれば、工作機械、生産機械、動力伝達機械、測定機械、物流機械、ロボットと称する各種機械などの如何なる使用態様であっても、何ら差し支えない。
【0019】
そして、上述したケーブル・配管類保護案内部材に用いる具体的な材質については、ケーブル・配管類を保持するとともに機械的強度や成形精度に優れた合成樹脂であれば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などを用いることができる。
【実施例】
【0020】
本発明の実施例である合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材について、図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例であるケーブル・配管類保護案内部材の使用態様図であり、図2は、本発明の実施例であるケーブル・配管類保護案内部材の全体斜視図であり、図3は、本発明の実施例であるケーブル・配管類保護案内部材の直線姿勢領域の拡大斜視図であり、図4は、本発明の実施例であるケーブル・配管類保護案内部材の屈曲姿勢領域の拡大斜視図であり、図5は、本発明の実施例であるケーブル・配管類保護案内部材の側面図であり、図6は、図5のA―A断面におけるケーブル・配管類保護案内部材の断面図であり、図7は、図5のB―B断面におけるケーブル・配管類保護案内部材の断面図であり、図8は、図5のC―C断面におけるケーブル・配管類保護案内部材の断面図である。
【0021】
まず、本発明の実施例である合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材100は、図1に示すように、直動ロボットと称する直線移動装置Mにおいてボールねじ駆動方式のアクチュエータを内蔵した機械側固定フレームである固定フレームM1側から機械側可動フレームである移動体M2側へ電力供給および信号送信を行うケーブル・配管類Cを保護案内するために使用されるものである。
すなわち、図1に示すように、固定フレームM1に連結した一端100aからこの固定フレームM1に沿って平行移動する移動体M2に連結した他端100bに向けてケーブル・配管類Cを垂直面内でU字状に屈曲させながら保護案内している。
なお、図1における符号M3は、固定フレームM1に連設された駆動モータの設置フレームであり、符号M4は、固定フレームM1に対して移動体M2を直線作動させるためのボールねじ駆動方式のアクチュエータである。
【0022】
そこで、前述した合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材100について、その具体的な構造を図2乃至図8に基づいて詳しく説明する。
本実施例である合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材100は、ケーブル・配管類Cのケーブル長手方向に沿って延在する帯状基部110とこの帯状基部110の左右両側縁に沿って一体に連続成形されてケーブル・配管類Cをケーブル長手方向に沿って対向間隙Sを持つ左右両側から抱持する左抱持部120aおよび右抱持部120bとで囲繞された合成樹脂でチューブ状のケーブル収容空間Rを構成し、このチューブ状のケーブル収容空間R内にケーブル・配管類Cを左右両側に配置された左抱持部120aと右抱持部120bとの間の対向間隙Sから収容するとともに、帯状基部110の一端とこの一端を連結した固定フレームM1に対して相対移動する移動体M2に連結した帯状基部110の他端との間の垂直面内でケーブル・配管類CをU字状に屈曲させながら保護案内するようになっている。
【0023】
加えて、前述した帯状基部110と左抱持部120aおよび右抱持部120bとが、押し出し成形加工によりチューブ状のケーブル収容空間Rを構成するように形成された後に、このチューブ状のケーブル収容空間Rをケーブル長手方向と直交する方向に切断するように所定の間隔で切り込むことで成形されている。
これにより、帯状基部110と左抱持部120aおよび右抱持部120bとを組み付ける作業負担が解消されるため、いかなる長尺なケーブル収容空間Rを要する現場施工であってもケーブル・配管類Cのケーブル長さに応じた裁断のみで最適な長尺体を簡便に構成するとともに、押し出し成形加工によって帯状基部110におけるケーブル長手方向の分子配向度が高くなるため、ケーブル長手方向の疲労強度が大幅に向上して優れた耐久性を発揮している。
また、押し出し成形加工時に、帯状基部110、左抱持部120aおよび右抱持部120bの厚みや材質が変更可能になるため、収容するケーブル・配管類Cに応じてケーブル収容空間Rを造作するチューブ状の収容形態やケーブル・配管類Cを保護案内する軌道形態を簡便に変更することが可能になっている。
【0024】
しかも、前述したように、帯状基部110と左抱持部120aおよび右抱持部120bとが、合成樹脂から成形され、押し出し成形加工や引き抜き加工などの一体の連続加工が可能であり、ケーブル収容空間Rの形態安定性を充分に発揮している。
【0025】
そして、帯状基部110は、図6および図8に示すように、ケーブル・配管類Cの直線姿勢を保持した状態で左抱持部120aと右抱持部120bとの間に配置されてケーブル収容空間Rの内側へ膨らんだアーチ状曲面を形成している。
これにより、ケーブル・配管類Cを直線移動させる際にアーチ状曲面を呈する帯状基部110が、この帯状基部110の帯厚とアーチ状曲面の形態とに起因する剛性を発揮しながらケーブル長手方向に一直線状となってケーブル・配管類Cの重量を支える。
また、図7に示すように、ケーブル・配管類Cを屈曲移動させる際に、帯状基部110のアーチ状曲面が弾性変形して平坦化する作用を伴い、帯状基部110の左右両側縁に沿って一体に連続成形された左抱持部120aおよび右抱持部120bが、対向間隙Sに向かって相互に傾いて対向間隙Sを塞ぎ込むようになっている。もし、帯状基部110がケーブル収容空間Rの外側に膨らんだアーチ状曲面を形成した場合には、逆に左抱持部120aと右抱持部120bとの間の対向間隙Sが大きくなるために逆にケーブル・配管類Cの飛び出しが発生し易くなる。
【0026】
また、帯状基部110に一体に連続成形された左抱持部120aおよび右抱持部120bは、帯状基部110の左右両側縁に沿ってそれぞれ配置され、ケーブル・配管類Cがケーブル収容空間R内に抱持されるように構成されている。
これにより、左抱持部120aおよび右抱持部120bが、帯状基部110と一体化してチューブ状のケーブル収容空間Rを確実に造形するため、ケーブル・配管類Cをケーブル収容空間R内でケーブル長手方向に沿って抱持状態で確実に収容している。
【0027】
そして、左抱持部120aおよび右抱持部120bは、図6乃至図8に示すように、帯状基部110に連続して立設した側壁形成部分121とこの側壁形成部分121に折曲して連続で取り付けた抱持壁形成部分122とで構成されている。
これにより、帯状基部110とこれに連続する左抱持部120aおよび右抱持部120bの側壁形成部分121とでケーブル・配管類Cの屈曲姿勢を柔軟に形作るとともに左抱持部120aおよび右抱持部120bの抱持壁形成部分122でケーブル収容空間Rに収容したケーブル・配管類Cを確実に保持するため、ケーブル・配管類保護案内部材100を弾力的に屈曲させながらケーブル・配管類Cを保護案内している。
【0028】
また、左抱持部120aおよび右抱持部120bの抱持壁形成部分122は、図6および図8に示すように、左抱持部120aおよび右抱持部120bの側壁形成部分121に対してケーブル収容空間R側へ直角よりも僅かに鋭角に折曲した状態で形成されている。
これにより、対向する左右一対の抱持壁形成部分122、122が、ケーブル・配管類Cを屈曲移動させる際に帯状基部110のアーチ状曲面が弾性変形して平坦化すると、ケーブル収容空間Rから左抱持部120aと右抱持部120bとの間の対向間隙Sを介して飛び出そうとするケーブル・配管類Cを、左抱持部120aおよび右抱持部120bと帯状基部110とでケーブル・配管類Cを包むように内蔵して抱えて、ケーブル・配管類Cが左抱持部120aと右抱持部120bとの間の対向間隙Sの方に移動しがたくなるため、ケーブル・配管類Cの不用意な飛び出しを完全に阻止している。
【0029】
また、左抱持部120aおよび右抱持部120bは、図3乃至図5に示すように、帯状基部110の左右両側縁に沿って同形状かつ等間隔で配置されている。
これにより、ケーブル収容空間Rが、単一の曲率半径を確保しながら順次屈曲して移動していくため、ケーブル・配管類CをU字状に屈曲させながら安定して保護案内している。
【0030】
また、左抱持部120aおよび右抱持部120bは、図3に示すように、帯状基部110の左右両側縁に沿って相互に隣接して配置されている。
要するに、相互に隣接した左抱持部120aおよび右抱持部120b同士が、ケーブル収容空間Rをケーブル長手方向と直交する方向に切断するような切り込み部分123を介した状態で配置されている。
また、上述した切り込み部分123は、その根元が帯状基部110まで切り込まれたR状切り込み終端を呈し、ケーブル・配管類保護案内部材100が屈曲する際の曲率半径を小さくすることができるため、ケーブル・配管類保護案内部材100の省スペース化が可能となる。
【0031】
このようにして得られた本実施例である合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材100は、直動ロボットと称する直線移動装置Mにおいて、ケーブル・配管類Cのケーブル長手方向に沿って延在する帯状基部110とこの帯状基部110の左右両側縁に沿って一体に連続成形される左抱持部120aおよび右抱持部120bとで囲繞されたチューブ状のケーブル収容空間R内にケーブル・配管類Cを左抱持部120aと右抱持部120bとの間の対向間隙Sから収容するとともに、帯状基部110の一端とこの一端を連結した固定フレームM1に対して相対移動する移動体M2に連結した帯状基部110の他端との間でケーブル・配管類CをU字状に屈曲させながら保護案内することにより、従来のようなリンクプレートなどの組み立て作業が不要であってリンクプレート相互間のピンとピン孔の摺動の際に生じる摩耗損傷による発塵、屈曲の際にリンクプレート相互間で屈曲角度を規制するストッパーに衝突する際に生じる屈曲騒音、リンクプレート相互間の多角形運動に伴う間歇的な屈曲振動を抑制することができる。
また、従来のようなブリッジにより相互に結合されるセグメントから構成された折り畳み可能なケーブル保護要素部材と比較しても、いかなる長尺なケーブル収容空間Rであってもケーブル・配管類Cを保護案内するケーブル収容空間Rが連続成形による単一の成形品で構成されるため、セグメントなどの組み付け作業が不要とし、例えば、直線作動機分野で作動軸のストロークに追従可能なケーブル保護要素部材として用いる長尺なものであっても製造可能とすることができる。
【0032】
そして、帯状基部110が、ケーブル・配管類Cの直線姿勢を保持した状態で左抱持部120aと右抱持部120bとの間に配置されてケーブル収容空間Rの内側へ膨らんだアーチ状曲面を形成することにより、ケーブル・配管類Cを直線移動させる際にアーチ状曲面を呈する帯状基部110が、この帯状基部110の壁厚とアーチ状曲面の形態とに起因する剛性を発揮しながらケーブル長手方向に一直線状となってケーブル・配管類Cの重量を支えるため、合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材100がケーブル・配管類Cの直線姿勢を確実に保持することができる。
また、ケーブル・配管類Cを屈曲移動させる際に、帯状基部110のアーチ状曲面が弾性変形して平坦化する作用を伴い、帯状基部110の左右両側縁に沿って一体に連続成形された左抱持部120aおよび右抱持部120bが対向間隙Sに向かって相互に傾いて対向間隙Sを塞ぎ込むため、左抱持部120aと右抱持部120bとの間の対向間隙Sにおけるケーブル・配管類Cの屈曲移動により惹起しがちな飛び出しを完全に阻止することができる。
【符号の説明】
【0033】
100 ・・・ 合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材
100a・・・ ケーブル・配管類保護案内部材の一端
100b・・・ ケーブル・配管類保護案内部材の他端
110 ・・・ 帯状基部
120a・・・ 左抱持部
120b・・・ 右抱持部
121 ・・・ 側壁形成部分
122 ・・・ 抱持壁形成部分
123 ・・・ 切り込み部分
M ・・・ 直線移動装置
M1 ・・・ 固定フレーム
M2 ・・・ 移動体
M3 ・・・ 駆動モータの設置フレーム
M4 ・・・ ボールねじ駆動方式のアクチュエータ
S ・・・ 対向間隙
C ・・・ ケーブル・配管類
R ・・・ ケーブル収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル・配管類のケーブル長手方向に沿って延在する帯状基部と該帯状基部の左右両側縁に沿って一体に連続成形されてケーブル・配管類をケーブル長手方向に沿って対向間隙を持つ左右両側から抱持する左抱持部と右抱持部とで囲繞されたチューブ状のケーブル収容空間内にケーブル・配管類を配置するとともに、前記ケーブル・配管類をU字状に屈曲させながら保護案内する合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材であって、
前記左抱持部および右抱持部が、ケーブル収容空間をケーブル長手方向と直交する方向に切断するような切り込み部分を介した状態でケーブル長手方向に配置され、
前記帯状基部が、前記ケーブル・配管類の直線姿勢を保持した状態で前記左抱持部と右抱持部との間に配置されてケーブル収容空間の内側へ膨らんだアーチ状曲面を形成することを特徴とする合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材。
【請求項2】
前記左抱持部および右抱持部が、前記帯状基部に連続して立設した側壁形成部分と該壁形成部分に折曲して連続で取り付けた抱持壁形成部分とでそれぞれ構成されていることを特徴とする請求項1に記載された合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材。
【請求項3】
前記左抱持部および右抱持部にそれぞれ構成された抱持壁形成部分が、前記左抱持部および右抱持部にそれぞれ構成された側壁形成部分に対してケーブル収容空間側へ90°以下の鋭角に折曲した状態で形成されていることを特徴とする請求項2に記載された合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材。
【請求項4】
前記切り込み部分の根元が、帯状基部まで切り込まれたR状切り込み終端を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載された合成樹脂製のケーブル・配管類保護案内部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−68304(P2013−68304A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208572(P2011−208572)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】