説明

合成樹脂製の耐熱性積層容器

【課題】耐熱性とガスバリア性との両立を図りつつ、成形が容易な、合成樹脂製の耐熱性積層容器を提供する。
【解決手段】本発明は、口部Aから肩部Bを介して繋がる胴部Cを有し、当該胴部Cに繋がる底部Dによって自立することができる合成樹脂製の容器本体2を有し、容器本体2は、ダイレクトブロー成形によって形作られたガスバリア層2cを有する積層体からなり、胴部Cに、ウェスト部分3を備えるとともに、ウェスト部分3を挟んで肩部Cb側及び底部Cd側にそれぞれ、胴部C周りを周回する環状の蛇腹部4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レトルト殺菌用や加熱充填殺菌用として用いられる合成樹脂製の耐熱性積層容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レトルト殺菌等の加熱殺菌では、殺菌後の温度減少に伴い、容器本体内の圧力が減少して変形を生じるため、これを吸収して容器本体の変形を防止すべく、胴部の周方向に軸線方向に伸縮可能な環状溝を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−149917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内容物の特性によってはガスバリア性が必要になるところ、従来の技術では、耐熱性とガスバリア性との両立を図りつつ、容易に耐熱性積層容器を成形することが困難であった。
【0005】
本発明の目的とするところは、耐熱性とガスバリア性との両立を図りつつ、成形が容易な、合成樹脂製の耐熱性積層容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明である、合成樹脂製の耐熱性積層容器は、口部から肩部を介して繋がる胴部を有し、当該胴部に繋がる底部によって自立することができる合成樹脂製の容器本体を有し、当該容器本体は、ダイレクトブロー成形によって形作られたガスバリア層を有する積層体からなり、当該胴部に、ウェスト部分を備えるとともに、当該ウェスト部分を挟んで肩部側及び底部側にそれぞれ、胴部周りを周回する環状の蛇腹部を備えることを特徴とするものである。
【0007】
ここで、「蛇腹部」は、容器の内部に向かって凹となる、少なくとも1つの谷折り形状で構成することができる。1つの谷折り形状は、2つの谷折り壁を有して、当該谷折り壁は、胴部周りを周回する環状の傾斜壁としてなる。また、谷折り壁はそれぞれ、胴部側の折り目を介して胴部に対して揺動可能に連結されているとともに、互いに向かい合う位置の折り目を介して揺動可能に連結されている。本発明によれば、蛇腹部は、容器内側に向かって凹となる、少なくとも1つの谷折り形状で構成されるものであって、当該谷折り形状の胴部径方向の折れ目の部分が容器本体全体で最も薄肉な部分としてなるものが好ましい。
【0008】
本発明では、ウェスト部分に、胴部周りを周回するとともに帯状に延在する環状の凹部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、容器本体としてダイレクトブローによって成形された積層体を用いたことで、複数の熱可塑性樹脂を管状に共押出して合わせ型で挟んだのち、気体を吹き込んでブローするだけの簡単な成形方法によって、ガスバリア層を有する積層容器を容易に成形することができる。
【0010】
また、本発明では、胴部に、ウェスト部分を設け、このウェスト部分を挟んで胴部の肩部側及び底部側にそれぞれ、胴部周りを周回する環状の蛇腹部を設けたことで、容器本体の内圧に変化が生じると、その内圧の変化に応じて蛇腹部がそれぞれ、容器本体の軸線方向に沿って伸縮運動を行う。これにより、レトルト殺菌や加熱充填殺菌等によって生じる容器内での負圧(減圧)を吸収することができることは勿論、ホットベンダーへの充填・保管やホットウォーマー内での陳列によって生じる容器内の陽圧(増圧)も吸収することができる。
【0011】
加えて、本発明では、胴部にウェスト部分を設けたことで、肩部側及び底部側での径方向の延伸倍率はウェスト部分に比べて大きくなるため、容器本体の厚みも、ウェスト部分が厚くなることで変形を生じ難くなるのに対し、肩部側及び底部側では薄くなることで変形を生じさせ易い傾向となる。このため、胴部のウェスト部分を挟み込むように2つの蛇腹部を設ければ、減圧吸収機能及び陽圧吸収機能を効果的に発揮させることができる。
【0012】
しかも、蛇腹部の折り目の部分のうち、胴部径方向外側に配置された折り目の部分は、ブロー成形に伴う延伸によって更に薄肉になる一方、胴部径方向内側に配置された折り目の部分は、胴部径方向外側に配置された折り目の部分に比べて肉厚になる。これにより、胴部径方向外側に配置された折り目の部分では、スムースな伸縮運動が確保される一方、胴部径方向内側に配置された折り目の部分では、蛇腹部全体の収縮に対する復元力が確保される。従って、蛇腹部を胴部の肩部側及び底部側に設ければ、軸線方向に対する伸縮運動は良好なものとなる。
【0013】
特に、蛇腹部を、容器の内部に向かって凹となる、谷折り形状を複数組合せてなるものとすれば、上述のような肉厚構造を容易に実現することができる。加えて、谷折り形状を構成する谷折り壁のうち、胴部に繋がる谷折り壁について、この谷折り壁の胴部径方向軸線(容器軸線に直交する軸線)に対する勾配(傾斜角度)を、他方の谷折り壁の勾配よりも小さく構成すれば、上述のような肉厚構造を更に容易に実現することができる。
【0014】
また、蛇腹部を胴部周方向に全周に亘って設けたことで、肩部側及び底部側における径方向への剛性が増加するため、ブロー成形に伴う延伸によって肩部側及び底部側での厚さが薄くなる傾向となったとしても、径方向の変形に対する強度を確保することができる。
【0015】
従って、本発明によれば、耐熱性とガスバリア性との両立を図りつつ、成形が容易な、合成樹脂製の耐熱性積層容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明である耐熱性積層容器の一形態である、レトルト殺菌用の耐熱性積層ボトルの容器本体を示す側面図である。
【図2】図1の容器本体にオーバーキャップを装着した同形態の要部断面図及び、要部拡大図である。
【図3】同形態にて、容器本体の内圧が減少したときの減圧吸収状態を示す側面図である。
【図4】同形態にて、容器本体の内圧が増加したときの陽圧吸収状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明である耐熱性積層容器の一形態である、レトルト殺菌用の耐熱性積層ボトル1を詳細に説明する。
【0018】
図1にて、符号2は、ポリプロピレン(PP)を主成分とする容器本体である。容器本体2は、口部Aから肩部Bを介して繋がる胴部Cを有し、この胴部Cに繋がる底部Dによって自立させることができる。口部Aには、シート状のシール部材が超音波溶着されている(図示省略)。シール部材は、手で剥がすことができる。
【0019】
容器本体2は、ダイレクトブローによって成形されている。容器本体2は、図2の拡大図に示すように、外層2a、内層2b及び中間層2cの3層構造を有する。外層2a及び内層2bは、容器本体2の外観形状を形作り、例えば、ポリプロピレン(PP)を主成分とする熱可塑性樹脂m1及びm2からなる。中間層2cは、ガスバリア層として機能し、例えば、EVOH等のガスバリア性を有する熱可塑性樹脂m3からなる。
【0020】
容器本体2は、3つの熱可塑性樹脂m1〜m3を押出し機から管状に共押出して金型で挟んだ後、その開放側から内部に気体を吹き込んでブローする、既存のダイレクトブローで成形することができる。なお、熱可塑性樹脂m1及びm2については、同一の熱可塑性樹脂に限定されることなく、異なる熱可塑性樹脂を採用することができる。また、熱可塑性樹脂としてPPを用いた場合、高周波溶着によって、シール部材を取り外し可能に接着することができる。
【0021】
このように、容器本体2としてダイレクトブローによって成形された積層体を用いたことで、複数の熱可塑性樹脂m1〜m3を管状に共押出して金型で挟んだ後、気体を吹き込んでブローするだけの簡単な成形方法によって、ガスバリア層2cを有する積層容器を容易に成形することができる。
【0022】
なお、容器本体2の層構成は、3層構造に限定されるものではない。例えば、外層2a及び内層2bと中間層2cとの間に、接着層(例えば、「アドマー」(登録商標);三井化学株式会社)を配置した5層構造や、様々なグレードのPP等を組み合わせて使用することができ、7層構造なども可能である。
【0023】
加えて、容器本体2は、図1に示すように、胴部Cにウェスト部分3を備える。ウェスト部分3は、肩部側の胴部(以下、「肩部側胴部」)Cb及び底部側の胴部(以下、「底部側胴部」)Cdを最大径(胴部外側の最大径)φmaxとし、胴部Cに括れを形成する。ウェスト部分3は、最大外径φmaxよりも外径(外側半径)が小さく、その最小径は、胴部外側の最小径φminとなる。
【0024】
また、容器本体2は、胴部Cに、ウェスト部分3を設け、このウェスト部分3を挟んで肩部側胴部Cb及び底部側胴部Cdにそれぞれ、胴部C(容器軸線O)周りを周回する環状の蛇腹部4を備える。蛇腹部4は、容器2の内部に向かって凹となる、2つの谷折り形状を組合せてなる蛇腹部で構成されている。1つの谷折り形状は、2つの谷折り壁4a及び4bを有する。
【0025】
胴部Cに繋がる胴部連結側の谷折り壁4aは、胴部C(容器軸線O)周りを周回する環状の傾斜壁としてなる。また、谷折り壁4aはそれぞれ、径方向外側に配置された第1の折り目4cを介して胴部Cに対して揺動可能に連結されている。更に谷折り壁4a及び4bは、径方向内側に配置された第2の折り目4dを介して揺動可能に連結されている。加えて、谷折り壁4bは、互いに径方向外側に配置された第3の折り目4eを介して揺動可能に連結されている。
【0026】
このように、容器本体2の胴部Cの肩部側胴部Cb及び底部側胴部Cdにそれぞれ、胴部C周りを周回する環状の蛇腹部4を設けたことで、容器本体2の内圧に変化が生じると、その内圧の変化に応じて蛇腹部4がそれぞれ、軸線O方向に沿って伸縮運動を行うことができる。
【0027】
例えば、図1に示すように、蛇腹部4の軸線方向の長さ(間隔)がL1である状態で、容器本体2の口部Aから内容物を加熱充填し、図2に示すように、口部Aに対してオーバーキャップ11を取り付ける。これにより、加熱充填された耐熱性積層ボトル1が構成される。その後、耐熱性積層ボトル1が冷えると、容器本体2の内圧が減少する。このとき、蛇腹部4はそれぞれ、図3に示すように、軸線方向長さL2(L2<L1)に収縮する。これにより、容器本体2の内圧が減少したことで生じる減圧変形は、蛇腹部4の収縮として吸収されるため、容器本体2の外観を損なうことがない。
【0028】
また、図3に示す状態から、高温・高圧下でレトルト殺菌すると、図2に示すように、軸線方向に長さが伸張する。或いは、保温タイプの自動販売機(ホットベンダー)に充填・保管し、又は、コンビニエンスストア等の店内に設置されたホットウォーマー内に陳列することによって、容器本体2の内圧が増加すると、蛇腹部4はそれぞれ、図4に示すように、軸線方向に長さ(間隔)L3(L2<L3<L1)だけ伸張する。これにより、容器本体2の内圧が増加したことで生じる陽圧変形は、蛇腹部4の伸張として吸収されるため、容器本体2の外観を損なうことがない。
【0029】
上述のような機能は、加熱殺菌された内容物を充填した場合や、内容物を充填後に温水等で殺菌するボイル殺菌した場合等も、同様である。
【0030】
このように、蛇腹部4では、レトルト殺菌や加熱充填殺菌等によって生じる容器本体2内での減圧を吸収することができることは勿論、ホットベンダーへの保管・充填やホットウォーマー内での陳列によって生じる容器本体2内の陽圧も吸収することができる。
【0031】
加えて、胴部Cにウェスト部分3を設けたことで、図2に示すように、肩部側胴部Cb及び底部側胴部Cdでの径方向の延伸倍率はウェスト部分3に比べて大きくなるため、容器本体2の厚みも、ウェスト部分3が厚くなることで変形を生じ難くなるのに対し、肩部側胴部Cb及び底部側胴部Cdでは薄くなることで変形を生じさせ易い傾向となる。このため、胴部Cに、ウェスト部分3を挟み込むように2つの蛇腹部4を設ければ、減圧吸収機能及び陽圧吸収機能を効果的に発揮させることができる。
【0032】
しかも、蛇腹部4の折り目のうち、径方向外側に配置された第1の折り目4c及び第3の折り目4eの部分は、図2の拡大図に示すように、ブロー成形に伴う延伸によって容器本体2全体で最も薄肉な部分になる。これにより、第1及び第3の折り目4c,4eの部分では、折れ曲がり易くなるため、スムースな伸縮運動が確保される。一方、第2の折り目4dの部分では、第1及び第3の折り目4c,4eの部分に比べて肉厚になるため、蛇腹部4全体の収縮に対する復元力が確保される。従って、蛇腹部4を肩部側胴部Cb及び底部側胴部Cdに設ければ、軸線O方向に対する伸縮運動は良好なものとなる。
【0033】
特に、本形態の如く、蛇腹部4を、容器本体2の内側に向かって凹となる、少なくとも1つの谷折り形状のものとすれば、容器本体2の外側に配置される金型で、パリソンを用いてダイレクトブロー成形するとき、胴部径方向内側にある第2の折り目4dを形作る金型部位では、ブローされたパリソンをホールドすることから、当該パリソンは、胴部径方向外側にある第1及び第3の折り目4c,4eに向かって延伸する。これにより、第1及び第3の折り目4c,4eでは、容器本体2全体で最も薄肉な部分になる。
【0034】
即ち、蛇腹部4を、少なくとも1つの谷折り形状とすれば、上述のような肉厚構造を容易に実現することができる。更に、良好な肉厚構造を容易に実現するには、蛇腹部4を、複数の谷折り形状を組合せてなるものとするのが好ましい。加えて、本形態では、谷折り壁4aの胴部径方向軸線(容器軸線Oに直交する軸線)に対する勾配(傾斜角度)を、谷折り壁4bの勾配よりも小さく構成されている。かかる構成によれば、上述のような肉厚構造を更に容易に実現することができる。
【0035】
また、蛇腹部4を胴部周方向に全周に亘って設けたことで、肩部側胴部Cb及び底部側胴部Cdにおける径方向への剛性が増加するため、ブロー成形に伴う延伸によって肩部側胴部Cb及び底部側胴部Cdでの厚さが薄くなる傾向となったとしても、径方向の変形に対する強度を確保することができる。
【0036】
なお、ウェスト部分3は、容器本体2に対して径方向内側に湾曲させることで構成することも、径方向外向きに湾曲させることで構成することもでき、更に、直線状の傾斜として構成することもできる。
【0037】
また、ウェスト部分3の最小径部分には、胴部C周りを周回するとともに帯状に延在する環状の凹部5が設けられている。凹部5は、帯状に延在する側壁5aを有する。側壁5aは、斜壁5bを介して胴部Cに連結されている。このように、ウェスト部分3に、胴部C周りを周回するとともに帯状に延在する環状の凹部5を設ければ、ウェスト部分3における径方向及び軸線Oの剛性が上がることで変形が更に生じ難くなる。このため、容器本体2の内圧変化に伴う応力変化を肩部側胴部Cb及び底部側胴部Cdに効果的に伝達できることから、減圧吸収機能及び陽圧吸収機能の確保に有効である。
【0038】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。容器本体2は、胴部Cが円筒形のものに限定されることなく、例えば、角柱形のものを採用することができる。また、容器本体2の口部Aは、広口の容器に限定されることがない。更に、容器本体2は、ボトルタイプに限定されることなく、比較的粘性の高いクリーム状の内容物を充填するジャータイプに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、レトルト殺菌用や加熱充填殺菌用として用いられる合成樹脂製の耐熱性積層容器であれば、食品等を内容物とするレトルト製品や、飲料容器等、様々な耐熱性積層容器に採用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 耐熱性積層ボトル
2 容器本体
2a 外層
2b 内層
2c 中間層
3 ウェスト部分
4 蛇腹部
4a 胴部連結側の谷折り壁
4b 谷折り壁
4c 第1の折り目(径方向外側)
4d 第2の折り目(径方向内側)
4e 第3の折り目(径方向外側)
5 凹部
5a 帯状の側壁
5b 斜壁
A 口部
B 肩部
C 胴部
Cb 肩部側胴部
Cd 底部側胴部
D 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部から肩部を介して繋がる胴部を有し、当該胴部に繋がる底部によって自立することができる合成樹脂製の容器本体を有し、
当該容器本体は、ダイレクトブロー成形によって形作られたガスバリア層を有する積層体からなり、
当該胴部に、ウェスト部分を備えるとともに、
当該ウェスト部分を挟んで肩部側及び底部側にそれぞれ、胴部周りを周回する環状の蛇腹部を備えることを特徴とする合成樹脂製の耐熱性積層容器。
【請求項2】
請求項1において、蛇腹部は、容器内側に向かって凹となる、少なくとも1つの谷折り形状で構成されるものであって、当該谷折り形状の胴部径方向の折れ目の部分が容器本体全体で最も薄肉な部分としてなることを特徴とする合成樹脂製の耐熱性積層容器。
【請求項3】
請求項2において、蛇腹部は、複数の谷折り形状を組合せてなるものであることを特徴とする合成樹脂製の耐熱性積層容器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、ウェスト部分に、胴部周りを周回するとともに帯状に延在する環状の凹部を備えることを特徴とする合成樹脂製の耐熱性積層容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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