説明

合成繊維

【課題】 透け防止性と涼感性を兼ね備えた合成繊維を得る。
【解決手段】少なくとも平均粒子径0.2μm以上0.8μm未満の白色顔料Aを2〜10質量%および黒色顔料2〜10ppmを含む熱可塑性樹脂を含んで構成される合成繊維であって、平均粒子径0.8〜1.8μm白色顔料Bを3質量%以上含むことを特徴とする合成繊維である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステル繊維等の合成繊維は、スポーツウエア、ユニフォーム、ブラウス、水着、下着など、インナー用途、アウター用途に多く用いられている。
【0003】
近年、白色や薄いピンクやベージュ、ブルー、イエロー、グリーンのような淡色系布帛は、アウターに用いる場合は下に着ているインナーのラインが透けて見えたり、インナーに用いた場合には肌の様子が透けて見えるという問題があるため、透け防止性に優れたものが求められている。
【0004】
また、アウター用途などに用いる場合、特に夏など気温が高い季節には、衣服内の温度上昇が避けられないため、衣服内の温度上昇を軽減する清涼感のある繊維が要望されている。
【0005】
特許文献1は、芯成分を形成する合成重合体に艶消剤を1.0〜5.0重量%含有し、鞘成分を形成する合成重合体に蛍光増白剤を含有し、芯成分部の横断面が回転対称形である芯鞘複合糸で構成された布帛とすることにより、透け防止性及び耐光堅牢度が良好な布帛を得ることが記載されている。
【0006】
特許文献2は、白色顔料を5〜30重量%含む不透明白色ポリマ層と白色顔料が0〜2質量%である透明ポリマ層とからなり、透明ポリマ層が不透明白色ポリマ層によって3層以上に分割され、透明ポリマ層が繊維表面の50%以上を占める繊維横断面を有する複合繊維とすることにより、不透明性、発色性および熱遮蔽性を得ることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−60485号公報
【特許文献2】特開平5−247723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のものは、一定の透け防止性は認められるものの十分なものではなく、清涼感については、なんら記載されておらず、十分な涼感性を得られるものではない。また、特許文献2のものは、一定の熱遮蔽性は得られるものの、十分な涼感性および透け防止性を得ることができるものではない。
【0009】
したがって、本発明は、透け防止性、涼感性ともに優れた合成繊維を得ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは、透過光の白色顔料による反射散乱現象のみを利用して透け防止をするのではなく、白色顔料に透過光や白色顔料からの反射散乱光を吸収するカーボンブラックを微量な特定の範囲で加えることにより透け防止性能を格段に向上すること、および、熱エネルギーに大きく寄与する赤外線を多く反射する粒子径の白色顔料を含有せしめることにより涼感性が向上することに着目し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち本発明は少なくとも平均粒子径0.2μm以上0.8μm未満の白色顔料Aを2〜10質量%および黒色顔料2〜10ppmを含む熱可塑性樹脂を含んで構成される合成繊維であって、平均粒子径0.8〜1.8μm白色顔料Bを3質量%以上含むことを特徴とする合成繊維をその要旨とする。
【0012】
また芯部と鞘部とを複合した芯鞘型複合合成繊維であって、芯部または鞘部の一方が平均粒子径0.8〜1.8μm白色顔料Bを3質量%以上含む熱可塑性樹脂からなり、他方が平均粒子径0.2μm以上0.8μm未満である白色顔料Aを2〜10質量%および黒色顔料2〜10ppmを含む熱可塑性樹脂からなる芯鞘型複合合成繊維でもある。さらに芯部が平均粒子径0.8〜1.8μm白色顔料Bを3質量%以上含む熱可塑性樹脂、鞘部が平均粒子径0.2μm以上0.8μm未満である白色顔料Aを2〜10質量%および黒色顔料2〜10ppmを含む熱可塑性樹脂からなる芯鞘型複合合成繊維でもある。
【0013】
繊維横断面において、芯部と鞘部の接合比率が4:1〜2:3(面積比)であることが好ましく、芯部が繊維表面に露出した割合が50%以内であることがより好ましい。
【0014】
また本発明の黒色顔料はカーボンブラックであることが好ましく、蛍光増白剤を0.01〜0.05質量%を含むものであることが好ましい。なお、芯鞘型複合合成繊維の場合、鞘部に蛍光増白剤を0.01〜0.05質量%を含むものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、十分な透け防止性と涼感性を兼ね備えた合成繊維を得ることができる。特に白色系を含む淡色系布帛に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の合成繊維の横断面形状の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明は熱可塑性樹脂からなる合成繊維である。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂(ポリマー)とは、重合反応によって合成され得る繊維形成能を有するポリマー全般を意味する。具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリ―p―フェニレンテレフタラミド、ポリ―m―フェニレンイソフタラミド等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアクリロニトリル等のポリアクリル類等が挙げられる。もちろん、これらに限定されるものではなく、他の種類のポリマーの使用も可能である。また、各ポリマーは、ホモポリマーに限らず、ブレンド体、共重合体等でもよい。
【0020】
これらのポリマーの中で、最も広汎に利用されているのはナイロン6、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートであるが、本発明でもこれらのポリマーを好適に用いることができる。
【0021】
また、本発明は、後述するように太陽光の赤外線を反射させるものであるため、好適な使用用途を考えると、ポリエステルが好ましく、価格および汎用性の点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0022】
本発明の合成繊維は、少なくとも、平均粒子径の異なる2種類の白色顔料A、白色顔料Bおよび黒色顔料を含む。
【0023】
なお、本発明の平均粒子径は、透過電子顕微鏡を用いて写真に撮影し、自動画像処理解析装置にて体積基準の水平方向等分径を測定して求めることができる。
【0024】
上記白色顔料Aは、平均粒子径が、0.2μm以上0.8μm未満である。
【0025】
白色顔料Aの個々の粒子の粒子径は連続してつながって分布していることが好ましく、粒子径の分布は一定の幅をもった正規分布に近いものであると効率よく可視光を反射できるため好ましい。
【0026】
上記白色顔料Aは、特に限定するものではないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ等を挙げることができる。この中では酸化チタンが好ましく用いられる。
【0027】
上記白色顔料Bは、白色顔料Aよりも平均粒子径が大きく、平均粒子径が、0.8〜1.8μmである。
【0028】
白色顔料Bの粒子径の分布は、波長3μm以下である赤外領域が0.8〜3μmと2.2μmの幅があり、可視光線の波長領域の幅が0.4μmであることを考えると幅広く分布をもつことが好ましい。
【0029】
白色顔料Bの平均粒子径の標準偏差は、0.2以上程度であることが好ましい。また白色顔料Bの平均粒子径の標準偏差は2以上であることが好ましい。
【0030】
上記白色顔料Bとしては、特に限定するものではないが、アルミナ、酸化亜鉛、シリカ等を挙げることができる。なかでも酸化チタンが好ましく、特に結晶構造がルチル型の酸化チタンが好ましい。
【0031】
上記黒色顔料は、具体的には、カーボンブラック系顔料、アニリンブラック系顔料、酸化鉄ブラック系顔料などがある。汎用性やコストを考慮すると、カーボンブラック(CB)が最も好ましい。
【0032】
本願発明の合成繊維の横断面形状の例を図1に示す。
【0033】
図1の(a)は単独糸の断面を示し、(b)〜(d)は複合糸の断面を示す。1が芯部、2が鞘部である。
【0034】
なお、図1では、横断面形状の外形として、丸断面を例示したが、多角形や扁平など形状を変えることもできる。
【0035】
本発明の合成繊維は、芯鞘型複合合成繊維(以下、複合合成繊維を複合繊維とよぶことがある)であることが好ましい。
【0036】
以下に好適な芯鞘型複合合成繊維の態様についてさらに詳細に説明する。
【0037】
本発明の好適な芯鞘型複合合成繊維として、芯部に白色顔料Bからなる熱可塑性樹脂、鞘部に白色顔料Aおよび黒色顔料を含む熱可塑性樹脂からなるものが挙げられる。
【0038】
上記芯部と鞘部の熱可塑性樹脂は、両成分が同じポリマーであっても、異なるポリマーであっても構わない。しかし、同じポリマーの組み合わせの場合は芯部と鞘部の剥離が起こりにくく、糸切れなどの不良品の発生が少ないため、芯部と鞘部を同じポリマーとすることが好ましい。
【0039】
上記芯部について以下説明する。
【0040】
上記芯部は、白色顔料B(平均粒子径0.8〜1.8μm)を含む熱可塑性樹脂からなることが好ましい。白色顔料Bは、3質量%以上含有することが好ましい。
【0041】
なお、この平均粒子径は、0.8〜1.5μmのものがより好ましく、0.9〜1.2μmがさらに好ましい。
【0042】
また、このような白色顔料Bの含有量は、3質量%以上が好ましく、より好ましくは、6質量%以上である。上限は、紡糸操業性および繊維の品質を考慮すると、20質量%程度が好ましい。
【0043】
上記白色顔料Bは、特に限定するものではないが、酸化チタンが好ましく使われる。芯部に含まれる酸化チタンはその結晶構造がルチル型のものが好ましい。
【0044】
通常、合成繊維において、つや消し剤として用いる白色顔料(酸化チタン)は、平均粒子径が0.3μm程度であるが、本発明に使用される白色顔料Bの平均粒子径を0.8μm〜1.8μmと大きくすることによって、熱エネルギーに変換されやすい赤外線の波長(0.8〜3μm)を反射するため、遮熱効果を発揮でき、涼感性のよいものが得られる。特に好ましくは、0.8〜1.5μmである。
【0045】
酸化チタンの平均粒子径が大きすぎると、熱エネルギーに変換され易い赤外線の波長である3μm以下の波長ではなく、長い波長を反射することとなり、遮熱効果が十分に得られない。酸化チタンの平均粒子径が小さすぎると、熱エネルギーに変換され易い3μm以下の赤外線を反射せず、より波長の短い可視光線を反射することとなり、遮熱効果が十分でなく、上記の範囲とすることが好ましい。この範囲であると、効率的に遮熱効果を得ることができ、涼感性を得るものとなり、清涼感のあるものを得られやすい。
【0046】
また白色顔料Bの粒子径の分布は、波長3μm以下である赤外領域が0.8μm〜3μmと2.2μmあり、可視光線の波長領域の幅が0.4μmであることを考えると幅広く分布をもつことが好ましい。
【0047】
そして白色顔料Bの平均粒子径の標準偏差は、0.2以上程度であることが好ましい。
【0048】
上記鞘部について以下説明する。
【0049】
上記鞘部は、白色顔料A(平均粒子径0.2μm以上0.8μm未満)を含む熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
【0050】
上記鞘部の白色顔料Aは透け防止性と繊維の取扱い性の点から、2〜10質量%含まれるものが好ましい。好ましくは、3〜10質量%であり、より好ましくは、3〜8質量%である。すなわち、白色顔料Aの含有量が少なすぎると、透け防止性能が十分でないおそれがある。含有量が多すぎると、繊維表面の凹凸が顕著になりやすく、紡糸性、紡糸や後工程での加工機械などの部品の磨耗が早くなるおそれがある。この範囲であると、透け防止性を備えつつ、柔軟で手触りの良好な繊維を得られやすい。
【0051】
なお、透け防止性と紡糸操業性・後加工性のバランスを考慮すると、用いる白色顔料Aの平均粒子径は0.2μm以上0.8μm未満が好ましく、0.2μm〜0.5μmがより好ましい。
上記白色顔料Aとしては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ等を挙げることができる。この中では酸化チタンが好ましく用いられる。
酸化チタンには結晶系がアナターゼとルチルのものがあり、この中でアナターゼの方が、硬度が低く、紡糸機、加工機械などの磨耗性の観点から、鞘部に好適に用いることができる。
【0052】
白色顔料を熱可塑性樹脂に含ませる方法として、繊維を製造するいずれかの段階で添加する方法を挙げることができる。添加方法は、特に制限は無いが、重合時に添加する方法でも重合後に混練する方法でもよい。最もよく用いられるのは、予め高濃度に白色顔料を添加したマスターチップと通常のチップとを混ぜてこれを紡糸する方法である。なお、通常のチップでも少量の白色顔料が含まれる。
【0053】
上記鞘部の熱可塑性樹脂は、透け防止性や白や淡色系布帛に好適な点から、黒色顔料を2〜10ppm含むことが好ましい。
【0054】
黒色顔料が含まれることで、繊維の透け防止効果が格段に向上する。黒色顔料の量を2ppm以上とすることにより、透け防止効果が向上する。黒色顔料の量が10ppm以下であれば、糸の黒さ(暗さ)が目立たず、白色、淡色などの明るい糸が必要とされる用途に適したものとなる。糸の透け防止効果と白さのバランスを考えると、黒色顔料の含有量は2〜6ppmがより好ましい。
【0055】
黒色顔料を熱可塑性樹脂に含有させる方法には特に制限は無いが、予め高濃度に黒色顔料を添加したマスターチップと通常チップを混ぜてこれを紡糸する方法がよく用いられる。また、チップと黒色顔料を混ぜてこれを紡糸に供する方法もある。
【0056】
上記鞘部の熱可塑性樹脂は、蛍光増白剤を含むものであることが好ましい。繊維中に蛍光増白剤を含有したものは、後染めで白色にするより耐光性や染色堅牢度に優れているからである。
【0057】
上記蛍光増白剤とは、繊維製造時の合成重合体に添加される原着用蛍光増白剤を意味しており、紡糸性、延伸性に支障をきたないものが好ましく、具体的には、スルペン系蛍光増白剤、イミダゾール系蛍光増白剤、イミダゾロン系蛍光増白剤、トリアゾール系蛍光増白剤、チアゾール系蛍光増白剤、オキサゾール系蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0058】
上記蛍光増白剤の含有量は任意であるが、白色効果を得るためには少なくとも0.01質量%を含有させることが好ましい。一方、多量に蛍光増白剤があると自己消光を起こし、増白効果が薄れるので、含有量は0.05質量%で十分である。
【0059】
蛍光増白剤の含有方法は特に制限は無い。よく用いられるのは、予め高濃度に蛍光増白剤を添加したマスターチップと通常のチップを混ぜて、これを紡糸する方法である。また、チップと蛍光増白剤を混ぜてこれを紡糸に供する方法もある。
【0060】
上記芯鞘型複合合成繊維の繊維横断面について、以下説明する。
【0061】
上記の芯鞘型複合合成繊維の繊維横断面において、芯部と鞘部との接合比率は、面積比で、4:1〜2:3が好ましく、より好ましくは、4:1〜1:1である。すなわち、芯部の比率が大きすぎると鞘部の比率が少なすぎ透け防止効果が少なくなる。また鞘部の比率が大きすぎると、平均粒子径の大きい酸化チタンを含有している部分が少なくなり、熱エネルギーとなりやすい3μm以下の赤外線の波長を反射しない部分が多くなり、遮熱効果が少なくなるため、透け防止および涼感性の点から、上記の範囲とすることが好ましい。またこの範囲であると、紡糸操業性、後工程での繊維の取り扱い性も良好であり、手触りのよい繊維となりやすい。
【0062】
上記芯鞘型複合合成繊維の横断面の好適な例として、図1の(b)〜(d)が例示できる。繊維の取扱性や糸質を保ちつつ、透け防止性、涼感性等の本発明の効果を発揮し易い点から、上記芯部が繊維横断面において繊維表面に露出しない図1(b)に記載のようにものが特に好ましい。
【0063】
なお本発明の芯鞘型複合合成繊維の芯部の表面露出度は、50%以内が好ましく、30%以内がより好ましく、更に好ましくは完全に芯部が鞘部に露出せず包括される形状である。白色顔料Bを含む熱可塑性樹脂の表面露出度が少ないと、紡糸操業性、後工程での繊維の取り扱い性等が良好なものとやすいうえ、布帛とした際に手触りのよいものを得られやすい。
【0064】
本発明の好適な芯鞘複合合成繊維として、芯部に白色顔料Bを含む熱可塑性樹脂、鞘部に白色顔料Aおよび黒色顔料を含む熱可塑性樹脂を例示して説明したが、芯部と鞘部の熱可塑性樹脂を入れ替えて複合した複合合成繊維とすることもできる。
【0065】
すなわち、芯部が白色顔料Aおよび黒色顔料を含む熱可塑性樹脂(a)、鞘部が白色顔料Bを含む熱可塑性樹脂からなる複合合成繊維(b)とすることで、同様に透け防止性・涼感性を得ることができる。
【0066】
透け防止・涼感性の点からは、白色顔料Aおよび黒色顔料を含む熱可塑性樹脂(a)、白色顔料Bを含む熱可塑性樹脂(b)を複合した複合繊維としてもよい。
【0067】
また、上記鞘部の白色顔料Aおよび黒色顔料を含む熱可塑性樹脂からなる単独繊維や、上記鞘部の熱可塑性樹脂とその他の成分とを複合した複合合成繊維などの合成繊維に、合成繊維全体に白色顔料Bを3質量%以上含有させたものであっても、透け防止性と遮熱性を得ることができる。
【0068】
本発明の合成繊維は、少なくとも、白色顔料Aおよび黒色顔料含有した熱可塑性樹脂から構成されるものであるが、この熱可塑性樹脂に白色顔料Bを含有させたものであってもよい。全体がこの熱可塑性樹脂で構成された単独繊維の場合、白色顔料B、白色顔料Aおよび黒色顔料が同じ熱可塑性樹脂に添加するなどして含有しているため、繊維全体で透け防止および涼感性効果を得やすい。
【0069】
なお、透け防止性の点から、白色顔料Aおよび黒色顔料を含む熱可塑性樹脂は、合成繊維に対して、繊維横断面の25%以上とすることが好ましい。
また、涼感性の点から、粒子径が大きい白色顔料Bは、合成繊維に3質量%以上含むものであることが好ましい。
【0070】
また、繊維の取り扱い性・糸質・触感の点からは、白色顔料Bは、繊維横断面の表面露出度は50%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、繊維表面に露出がないことがより好ましい。
【0071】
なお、本発明の合成繊維を得るための紡糸法に特に制限はなく、公知の単独繊維及び複合合成繊維の紡糸方法が利用できる。繊維はフィラメント、ステープルいずれの形態でもよく、用途に応じて製造できる。
また、本発明の合成繊維に、繊維物性の改善や機能化を目的として各種添加剤を加えることは任意である。このような添加剤として例えば制電剤、耐光剤、難燃剤などがある。また、通常のポリマーは重合触媒である金属成分の存在により、わずかであるが着色されている。このような触媒による着色を軽減する為に少量の染料・顔料を加えても良い。これらの添加量は、芯鞘複合合成繊維の場合、芯成分(芯部)、鞘成分(鞘部)のいずれかに添加しても良いし、両成分に添加しても良い。
本発明の合成繊維は、単独で用いても良いし、混繊糸の1成分として用いても良い。例えばカバリング糸の外糸に用いることができる。
また、布帛化する際に他の繊維と混用してもよい。具体的には交編、交織などの方法がある。他繊維と混用する際には、他繊維を用いることで本発明の透け防止性能、涼感性能が相殺されることを考慮に入れるとよい。
【0072】
また本発明の合成繊維は、仮撚り加工をして、さらに透け防止性および涼感性を向上することもできる。
【0073】
本発明の繊維通常の染色に供した場合には十分な発色性を発揮する。染色は原料に使用するポリマーの種類に応じて適宜選択すれば良い。例えば、ポリエステル樹脂の場合には分散染料を用いて、高温高圧にて行われる。このような染色された布帛においても十分な透け防止性と涼感性を有するものとなる。
【0074】
また、本発明の繊維は染色せずにそのまま「白色繊維(布帛)」して利用することができるし、淡色系の染色を行っても十分透け防止性、遮熱性を発揮することができる。
【0075】
本発明の合成繊維からなる布帛は透け防止性、遮熱性に優れ涼感性を備えているので、水着、レオタードなどのスポーツ用途、アウター用途、インナー用途など透け防止性および清涼感を求められる用途に好適に用いることができる。また発色性にも優れるので、意匠性のあるデザインにも活用できる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
各物性の測定・評価は以下の通りとした。
(白度、透け防止性)
〔乾式評価〕
白板(L値91.5)、黒板(L値4.6)に繊維を均一に巻きつけ、そのL値を測定した。白板に巻きつけたサンプルのL値をLw、黒板に巻きつけたサンプルのL値をLbとし、両者の差を△Lとしたとき、△Lが小さいほど透け防止性に優れていることになる。
【0077】
Lwが90以上であれば白色繊維として非常に良好であり、85以上であれば良好である。△Lが9以下であれば布帛にした時の透け防止性に優れている。
【0078】
〔湿式評価〕
白板に巻きつけたサンプルおよび黒板に巻きつけたサンプルに、1mlの水滴をたらしたものをサンプルとする以外は、乾式評価と同様に評価した。
(涼感性)
経糸に、通常のセミダルのポリエステル糸56dtex/24f、緯糸に、得られたポリエステル糸を2本引き揃えた2本引き揃え糸を平織にて製織し、試料(本発明品)とした(経密度:110本/2.54cm、緯密度:77本/2.54cm)。緯糸に通常のセミダルのポリエステル糸56dtex/24fを2本引き揃えた糸を用いる以外は同様に製織し、対照品を得た。次に、試験室温度20℃のなかで黒画用紙の約5mm上に試料を保持し、試料側から50cmは慣れた距離のランプ光(岩崎電気製アイランプPRS100V500W)を照射し裏面の用紙中央の温度を熱電対で測定し30分後の温度差を求めた。
(平均粒子径)
透過型電子顕微鏡(日本電子社製 透過型電子顕微鏡JEM−1230)を用いて写真に撮影し、自動画像処理解析装置(ニコレ社性 LUZEX AP)にて体積基準の水平方向等分径を測定した。
(紡糸操業性)
上記繊維の製造工程において製造中の糸切れの発生や単糸切れ、毛羽立ちなどの不良品の割合、その他トラブルの発生状況を見た。結果がよいものから順に○、△、×とした。
(実施例1)
平均粒子径が0.3μm(アナターゼ型)の酸化チタン2質量%とカーボンブラック(CB)2ppmと蛍光増白剤0.05質量%を含有せしめたポリエチレンテレフタレート(以下PETとゆうことがある)樹脂を複合繊維の鞘成分(鞘部)の原料M1とした。
【0079】
平均粒子径が1.0μmの酸化チタン(ルチル型、粒子径は0.5〜2.0μmの範囲で略正規分布に分布したもの、粒径分布の標準偏差0.34、σ=3.1)を含有せしめたPET樹脂を複合繊維の芯成分(芯部)の原料M2とした。
【0080】
上述の両樹脂を各々、エクストルーダーにて295℃で溶融し、芯鞘型複合口金よりM1を鞘部、M2を芯部となるような組み合わせで複合し、口金の吐出孔より吐出し、1500m/minで巻き取り24fの未延伸糸を得た。
【0081】
得られた未延伸糸を85℃の熱をかけ延伸して84dtex/24fの芯鞘型複合繊維を得た。芯部と鞘部の複合比率は2:1(面積比)とした。
【0082】
得られた繊維に関し、乾式評価の白度・透け防止性、涼感性および紡糸操業性を評価し、表1に示した。
【0083】
(実施例2〜12)
平均粒子径1.0μmの酸化チタン、平均粒子径0.3μmの酸化チタン、CBの含有量を表1の実施例2〜12に示した通りとする以外は実施例1と同様にし、芯鞘型複合繊維を得た。実施例1と同様に乾式評価の白度・透け防止性、涼感性および紡糸操業性を評価し、表1に示した。
【0084】
(比較例1)
実施例1に対しカーボンブラックを含有していない組成にて鞘部の樹脂を得、実施例1と同様に芯鞘型複合繊維とし、実施例1と同様に評価し、表1に示した。
【0085】
(比較例2〜7)
平均粒子径1.0μmの酸化チタンと平均粒子径0.3μmの酸化チタンとCBの含有量が表1の比較例2〜7に示した通りとなるようにした以外は実施例1と同様にして、芯鞘型複合繊維を得た。実施例1と同様に評価し、表1に示した。
【0086】
【表1】

【0087】

実施例1〜12はいずれも、透け防止性および涼感性に優れたものであった。白度も高いものであるため、白色系や淡色系の布帛であっても透け防止性に優れ、清涼感のよい布帛を得ることが容易にできる。紡糸操業性も良好で、後加工性もよいものであった。また得られた糸は粒子が表面にでておらず、手触りの優れたものであった。
CBを含まない比較例1および2は実施例品に比べて、透け防止性に劣っていた。白色顔料Bを含まない比較例2、3および5は実施例品に比べて、涼感性に劣るものであった。CBの量が多い比較例4は、実施例品に比べて白度が劣っていた。鞘部の白色顔料Bが少ない比較例6は、実施例品と比べて涼感性が劣っていた。芯部の白色顔料Aが少ない比較例7は実施例品と比べて白度に劣っていた。
【0088】
(実施例13)
実施例8の乾式評価したサンプルに1mlの水滴をたらし、湿式評価を実施し、その結果を表2に示した。
【0089】
(比較例8)
比較例3の乾式評価したサンプルに1mlの水滴をたらし、湿式評価を実施し、その結果を表2に示した。
【0090】
【表2】

【0091】
表2により、実施例13のものは、水に濡らした場合も、透け防止性に優れていることがわかる。
【0092】
(実施例20)
芯鞘複合比率を4:1と変更する以外は実施例1と同様に、芯鞘複合合成繊維を得て、白度、透け防止性、涼感性の評価を行った結果、白度、透け防止性、涼感性ともに良好であった。
【0093】
(実施例21)
芯鞘複合比率を1:1と変更する以外は実施例1と同様に、芯鞘複合合成繊維を得て、白度、透け防止性、涼感性の評価を行った結果白度、透け防止性、涼感性ともに良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の合成繊維は白色系や淡色系布帛に用いた場合でも、透け防止性および涼感性ともに優れているため、インナー用途、アウター用途の各種用途に好適に展開できる。
【符号の説明】
【0095】
1 芯部
2 鞘部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも平均粒子径0.2μm以上0.8μm未満の白色顔料Aを2〜10質量%および黒色顔料2〜10ppmを含む熱可塑性樹脂を含んで構成される合成繊維であって、平均粒子径0.8〜1.8μm白色顔料Bを3質量%以上含むことを特徴とする合成繊維。
【請求項2】
芯部と鞘部とを複合した芯鞘型複合合成繊維であって、芯部または鞘部の一方が平均粒子径0.8〜1.8μm白色顔料Bを3質量%以上含む熱可塑性樹脂からなり、他方が平均粒子径0.2μm以上0.8μm未満である白色顔料Aを2〜10質量%および黒色顔料2〜10ppmを含む熱可塑性樹脂からなる芯鞘型複合合成繊維。
【請求項3】
芯部が平均粒子径0.8〜1.8μm白色顔料Bを3質量%以上含む熱可塑性樹脂、鞘部が平均粒子径0.2μm以上0.8μm未満である白色顔料Aを2〜10質量%および黒色顔料2〜10ppmを含む熱可塑性樹脂からなる芯鞘型複合合成繊維。
【請求項4】
繊維横断面において、芯部と鞘部の接合比率が4:1〜2:3(面積比)であることを特徴とする請求項2または3項記載の芯鞘型複合合成繊維。
【請求項5】
芯部が繊維表面に露出した割合が50%以内であることを特徴とする請求項2〜4いずれか一項記載の芯鞘複合合成繊維。
【請求項6】
黒色顔料がカーボンブラックである請求項1〜5いずれか1項記載の合成繊維。
【請求項7】
蛍光増白剤を0.01〜0.05質量%を含む請求項1〜6いずれか1項記載の合成繊維。
【請求項8】
鞘部に蛍光増白剤を0.01〜0.05質量%を含む請求項3〜5いずれか1項記載の芯鞘型複合合成繊維。

【図1】
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【公開番号】特開2011−246842(P2011−246842A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121055(P2010−121055)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】