説明

含フッ素組成物

【課題】表面処理剤として要求される性能、例えば、撥水撥油性、防汚性、離型性、基材に対する密着性、防蝕性、風合い、耐水性、耐油性、これら性能の耐久性を有する含フッ素組成物を提供する。
【解決手段】 (a)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y は、-O- または -NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、第1含フッ素単量体(a1)において炭素数1〜6のフルオロアルキル基であり、第2含フッ素単量体(a2)において炭素数12以上のフルオロアルキル基である。]
で示される第1含フッ素単量体(a1)と第2含フッ素単量体(a2)から誘導された繰り返し単位を有してなる含フッ素重合体を含んでなる含フッ素組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素組成物に関する。含フッ素組成物は、表面処理剤、例えば、撥水撥油剤、防汚剤および離型剤として良好に使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の含フッ素化合物が提案されている。含フッ素化合物には、耐熱性、耐酸化性、耐候性などの特性に優れているという利点がある。含フッ素化合物の自由エネルギーが低い、すなわち、付着し難いという特性を利用して、含フッ素化合物は、例えば、撥水撥油剤および防汚剤として使用されている。例えば、米国特許第5247008号明細書には、(メタ)アクリル酸のパーフルオロアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステルとの共重合体の水性分散物である、繊維製品、皮革、紙および鉱物基材のための仕上げ剤が記載されている。
【0003】
撥水撥油剤および防汚剤としての表面機能の安定した発現には、表面においてパーフルオロアルキル基が安定して配向する炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体から構成される重合体または共重合体が有効であるとされてきた。
しかしながら、近年、EPA(米国環境保護庁)により、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体の分解生成物が環境負荷の高いおそれのある化合物であると指摘されており、撥水撥油剤組成物、防汚剤組成物または離型剤組成物中の含フッ素重合体または含フッ素共重合体を構成する炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を含む含フッ素単量体の含有量の削減が要望されている。
一方、従来の(メタ)アクリル酸の(パー)フルオロアルキルエステルにおいては、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基では表面でのパーフルオロアルキル基の配向が不安定であり、撥水撥油剤、防汚剤または離型剤として要求される充分な性能を与えないことがあるという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5247008号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、含フッ素組成物中の含フッ素重合体または含フッ素共重合体を構成する炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を含む含フッ素単量体の含有量を削減し、撥水撥油剤、防汚剤または離型剤として要求される充分な性能を与える、含フッ素重合体、含フッ素共重合体および含フッ素化合物を提供することにある。本発明の他の目的は、表面処理剤として要求される性能、例えば、撥水撥油性、防汚性、離型性、基材に対する密着性、防蝕性、風合い、耐水性、耐油性、これら性能の耐久性を有する含フッ素組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(a1)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O- または -NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基である。]
で示される第1含フッ素化合物と
(a2)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O- または -NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数12以上のフルオロアルキル基である。]
で示される第2含フッ素化合物との
混合含フッ素化合物を提供する。
さらに、本発明は、第1含フッ素化合物(第1含フッ素単量体)と第2含フッ素化合物(第2含フッ素単量体)との該混合含フッ素化合物(含フッ素単量体の混合物)から誘導された繰り返し単位
を有してなる含フッ素重合体(すなわち、含フッ素共重合体)を提供する。
加えて、本発明は、該含フッ素重合体を含んでなる含フッ素組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撥水撥油剤、防汚剤または離型剤として要求される充分な性能が得られる。含フッ素組成物は、表面処理剤として要求される性能、例えば、良好な撥水撥油性、防汚性、離型性、基材に対する密着性、防蝕性、風合い、耐水性、耐油性、これら性能の耐久性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、含フッ素組成物は、表面処理剤(例えば、撥水撥油剤、防汚剤および離型剤)として使用できる。
含フッ素組成物は、含フッ素重合体を含有する。含フッ素重合体は、含フッ素単量体から誘導された繰り返し単位を有する。
【0009】
本発明においては、含フッ素重合体を構成する単量体として、含フッ素単量体(a)を使用する。必要により非フッ素非架橋性単量体(b)、および/または非フッ素架橋性単量体(c)を使用してもよい。
含フッ素重合体は、含フッ素単量体(a)のみからなる重合体(すなわち、第1含フッ素単量体(a1)および第2含フッ素単量体(a2)からなる共重合体)、あるいは含フッ素単量体(a)に加えて非フッ素非架橋性単量体(b)および/または非フッ素架橋性単量体(c)からなる共重合体であってよい。
【0010】
(a)含フッ素単量体
含フッ素単量体は、(a1)第1含フッ素単量体と(a2)第2含フッ素単量体との混合物である。第1含フッ素単量体(a1)と第2含フッ素単量体(a2)は、Rfが異っている化合物である。
第1含フッ素単量体(a1)および第2含フッ素単量体(a2)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y は、-O- または -NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、第1含フッ素単量体(a1)において炭素数1〜6のフルオロアルキル基であり、第2含フッ素単量体(a2)において炭素数12以上のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体である。
【0011】
第1含フッ素単量体(a1)および第2含フッ素単量体(a2)において、X、YおよびZは同一であっても異なっていてもよい。
したがって、第1含フッ素単量体(a1)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O- または -NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物であり、
第2含フッ素単量体(a2)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O- または -NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数12以上のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物である。
およびXはXと同意義であり、YおよびYはYと同意義であり、ZおよびZはZと同意義である。
【0012】
含フッ素単量体(a)は、一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX1112基(但し、X11およびX12は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、直接結合、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基、芳香脂肪族基または環状脂肪族基、
式−R(R)NSO−または式−R(R)NCO−で示される基(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜10の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基である。)、
式−CHCH(OR)CH−(式中、Rは、水素原子、または、炭素数1〜10のアシル基を表す。)で示される基、または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である。)、
Rfは、第1含フッ素単量体(a1)において炭素数1〜6のフルオロアルキル基であり、第2含フッ素単量体(a2)において炭素数12以上のフルオロアルキル基である。]
で示されるアクリレートエステルまたはアクリルアミドであることが好ましい。
【0013】
含フッ素単量体(a)は、(アクリレートまたはメタクリレートの)α位がハロゲン原子などで置換されていることがある。したがって、式(1)において、X(すなわち、XおよびX)が、炭素数2〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX1112基(但し、X11およびX12は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。
Xの具体例としては、H、Me(メチル基)、Cl、Br、I、F、CN、CFが挙げられる。
【0014】
Z(すなわち、ZおよびZ)において、脂肪族基は、アルキレン基(特に炭素数は1〜4、例えば1または2である。)であることが好ましい。芳香族基、芳香脂肪族基または環状脂肪族基は、置換または非置換であってよい。
Z(すなわち、ZおよびZ)の例は、直接結合、
炭素数1〜20の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基、例えば、式−(CH−(式中、xは1〜10、特に2〜8である。)で示される基、あるいは、
式−Ar−CH−(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基である。)で示される基、あるいは
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)、あるいは、
式−CHCH(OR)CH−(式中、Rは、水素原子、または、炭素数1〜10のアシル基(例えば、ホルミルまたはアセチルなど)を表す。)で示される基、例えば、-CH2CH(OZ1)CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)、あるいは
式−Ar−CH−(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基である。)で示される基、あるいは
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)であってよい。
【0015】
Z(すなわち、ZおよびZ)は、直接結合、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基、芳香脂肪族基または環状脂肪族基、-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である。)であることが好ましい。脂肪族基は、アルキレン基(特に炭素数は1〜4、例えば1または2である。)であることが好ましい。芳香族基、芳香脂肪族基または環状脂肪族基は、置換または非置換であってよい。S 基または SO2基はRf基に直接に結合していてよい。
【0016】
第1含フッ素単量体(a1)および第2含フッ素単量体(a2)において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
第1含フッ素単量体(a1)において、Rf基(すなわち、Rf基)の炭素数は、1〜6、例えば4〜6である。第1含フッ素単量体(a1)において、Rf基の例としては、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2が挙げられる。
第2含フッ素単量体(a2)において、Rf基(すなわち、Rf基)の炭素数は、12以上、例えば12〜30、特に14〜20である。第2含フッ素単量体(a1)において、Rf基の例としては、C1225、C1327、C1429、C1531、C1633、C1735、C1837、C1939、C2041、C2551、C3061が挙げられる。
【0017】
第2含フッ素単量体(a2)は、第1含フッ素単量体(a1)と混合されることにより、単量体の融点が低下して取扱い性が良くなり、また共重合する非フッ素単量体(すなわち、単量体(b)および単量体(c))と混和し易くなる。
【0018】
含フッ素単量体(a)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−C6H4−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−CH3) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−C2H5) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OH) CH2−Rf
【0019】
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OCOCH3) CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0020】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0021】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0022】
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
【0023】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0024】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜6または炭素数12以上のフルオロアルキル基である。]
【0025】
(b)非フッ素非架橋性単量体
非フッ素非架橋性単量体(b)は、フッ素原子を含まない単量体である。非フッ素非架橋性単量体(b)は、架橋性官能基を有さない。非フッ素非架橋性単量体(b)は、架橋性単量体(c)とは異なり、非架橋性である。非フッ素非架橋性単量体(b)は、好ましくは、炭素−炭素二重結合を有する非フッ素単量体である。非フッ素非架橋性単量体(b)は、好ましくは、フッ素を含まないビニル単量体である。非フッ素非架橋性単量体(b)は一般には、1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物である。
【0026】
好ましい非フッ素非架橋性単量体(b)は、式:
CH=CA0−T
[式中、A0は、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
Tは、水素原子、塩素原子、炭素数1〜22の鎖状または環状の炭化水素基、またはエステル結合を有する鎖状または環状の炭素数1〜22の有機基である。]
で示される化合物であってよい。
【0027】
炭素数1〜22の鎖状または環状の炭化水素基の例は、炭素数1〜22の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜22の環状脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、炭素数7〜22の芳香脂肪族炭化水素基である。
【0028】
エステル結合を有する鎖状または環状の炭素数1〜22の有機基の例は、-C(=O)-O-Q および-O-C(=O)-Q(ここで、Qは、炭素数1〜22の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜22の環状脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、炭素数7〜22の芳香脂肪族炭化水素基)である。
【0029】
非フッ素非架橋性単量体(b)の好ましい例には、例えば、エチレン、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、カルボン酸ビニルエステル、およびビニルアルキルエーテルが含まれる。カルボン酸ビニルエステルは、CH=CH−O−C(=O)R[式中、Rは炭素数1〜22の脂肪族、芳香族、脂環族または芳香脂肪族の炭化水素基である。]で示される化合物であることが好ましく、カルボン酸ビニルエステルの具体例として、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ベヘニル酸ビニルが挙げられる。非フッ素非架橋性単量体(b)はこれらの例に限定されない。
【0030】
非フッ素非架橋性単量体(b)は、アルキル基を有する(メタ)アクリレートエステルであってよい。アルキル基の炭素原子の数は1〜30であってよく、例えば、6〜30(例えば、10〜30)であってよい。例えば、非フッ素非架橋性単量体(b)は、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、C2n+1(n=1〜30)によって表されるアルキル基である。]
で示されるアクリレートであってよい。例えば、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートであってよい。
【0031】
非フッ素非架橋性単量体(b)は、環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体であってよい。環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体は、(好ましくは一価の)環状炭化水素基および一価の(メタ)アクリレート基を有する化合物である。一価の環状炭化水素基と一価の(メタ)アクリレート基は、直接に結合している。環状炭化水素基としては、飽和または不飽和である、単環基、多環基、橋かけ環基などが挙げられる。環状炭化水素基は、飽和であることが好ましい。環状炭化水素基の炭素数は4〜20であることが好ましい。環状炭化水素基としては、炭素数4〜20、特に5〜12の環状脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基、炭素数7〜20の芳香脂肪族基が挙げられる。環状炭化水素基の炭素数は、15以下、例えば10以下であることが特に好ましい。環状炭化水素基の環における炭素原子が、(メタ)アクリレート基におけるエステル基に直接に結合することが好ましい。環状炭化水素基は、飽和の環状脂肪族基であることが好ましい。環状炭化水素基の具体例は、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基である。(メタ)アクリレート基は、アクリレート基またはメタアクリレート基であるが、メタクリレート基が好ましい。環状炭化水素基を有する単量体の具体例としては、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート等が挙げられる。
【0032】
(c)非フッ素架橋性単量体
本発明の含フッ素重合体は、非フッ素架橋性単量体(c)から誘導された繰り返し単位を有していてよい。非フッ素架橋性単量体(c)は、フッ素原子を含まない単量体である。非フッ素架橋性単量体(c)は、少なくとも2つの反応性基および/または炭素−炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。非フッ素架橋性単量体(c)は、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、などである。
非フッ素架橋性単量体(c)は、反応性基を有するモノ(メタ)アクリレート、(メタ)ジアクリレートまたはモノ(メタ)アクリルアミドであってよい。あるいは、非フッ素架橋性単量体(c)は、ジ(メタ)アクリレートであってよい。
非フッ素架橋性単量体(c)の1つの例は、ヒドロキシル基を有するビニル単量体である。
【0033】
非フッ素架橋性単量体(c)としては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、モノクロロ酢酸ビニル、メタクリル酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。
【0034】
非フッ素非架橋性単量体(b)および/または非フッ素架橋性単量体(c)を共重合させることにより、撥水撥油性や防汚性およびこれらの性能の耐クリーニング性、耐洗濯性、溶剤への溶解性、硬さ、感触などの種々の性質を必要に応じて改善することができる。
【0035】
含フッ素単量体(a)(すなわち、第1含フッ素化合物と第2含フッ素化合物の混合物)において、第1含フッ素単量体(a1)と第2含フッ素単量体(a2)の重量比は、10:90〜90:10、例えば20:80〜80:20、特に30:70〜70:30であってよい。
含フッ素重合体において、含フッ素単量体(a)100重量部に対して、
非フッ素非架橋性単量体(b)の量が1000重量部以下、例えば0.1〜300重量部、特に1〜200重量部であり、
非フッ素架橋性単量体(c)の量が50重量部以下、例えば30重量部以下、特に0.1〜20重量部であってよい。
【0036】
含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)は、一般に1000〜1000000、例えば5000〜500000、特に3000〜200000であってよい。含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)は、一般に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定する。
【0037】
本発明における含フッ素重合体は通常の重合方法の何れでも製造でき、また重合反応の条件も任意に選択できる。このような重合方法として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が挙げられる。
【0038】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、必要により窒素置換し、30〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部、例えば0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0039】
有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜2000重量部、例えば、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0040】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、必要により窒素置換し、50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる方法が採用される。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3−カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン−二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0041】
放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、油溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。また、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲で用いられる。アニオン性および/またはノニオン性および/またはカチオン性の乳化剤を使用することが好ましい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0042】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。また、低分子量の単量体としては、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられ、単量体の総量100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。
【0043】
含フッ素重合体は、繊維などの種々の基材を表面処理するために使用できる。
含フッ素重合体は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品など)に適用することができる。繊維製品に適用される溶液におけるフルオロシリコーン反応生成物の濃度は、例えば、0.5重量%〜20重量%、あるいは、1重量%〜5重量%であってよい。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着または噴霧してよい。処理された繊維製品は、撥油性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、100℃〜200℃で加熱される。
【0044】
あるいは、含フッ素重合体はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法などにおいて繊維製品に適用してよい。
【0045】
処理される繊維製品は、典型的には、布であり、これには、織物、編物および不織布、衣料品形態の布およびカーペットが含まれるが、繊維または糸または中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸など)であってもよい。繊維製品材料は、天然繊維(例えば、綿または羊毛など)、化学繊維(例えば、ビスコースレーヨンまたはレオセルなど)、または、合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミドまたはアクリル繊維など)であってよく、あるいは、繊維の混合物(例えば、天然繊維および合成繊維の混合物など)であってよい。本発明の製造重合体は、セルロース系繊維(例えば、綿またはレーヨンなど)を疎油性および撥油性にすることにおいて特に効果的である。また、本発明の方法は一般に、繊維製品を疎水性および撥水性にする。
【0046】
あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。製造重合体を、皮革を疎水性および疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、または、皮革の仕上げの期間中に、水溶液または水性乳化物から皮革に適用してよい。
あるいは、繊維状基材は紙であってもよい。製造重合体を、予め形成した紙に適用してよく、または、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。
【0047】
本発明の含フッ素組成物は、溶液、エマルション(特に、水性エマルション)またはエアゾールの形態であることが好ましい。含フッ素組成物は、含フッ素重合体(表面処理剤の活性成分)および媒体(特に、液状媒体、例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。媒体の量は、例えば、含フッ素組成物に対して、5〜99.9重量%、特に10〜80重量%であってよい。
含フッ素組成物において、含フッ素重合体の濃度は、0.01〜95重量%、例えば5〜50重量%であってよい。
【0048】
本発明の含フッ素組成物は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、該含フッ素組成物を有機溶剤または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、本発明の含フッ素組成物に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などを添加して併用することも可能である。基材と接触させる処理液における含フッ素重合体の濃度は0.01〜10重量%(特に、浸漬塗布の場合)、例えば0.05〜10重量%であってよい。
【0049】
本発明の含フッ素組成物(例えば、撥水撥油剤)で処理される被処理物としては、繊維製品、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極およびガス拡散支持体)、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスターなどを挙げることができる。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。
【0050】
繊維製品は、繊維、布等の形態のいずれであってもよい。本発明の含フッ素組成物でカーペットを処理する場合に、繊維または糸を含フッ素組成物で処理した後にカーペットを形成してもよいし、あるいは形成されたカーペットを含フッ素組成物で処理してもよい。
本発明の含フッ素組成物は、内部離型剤あるいは外部離型剤としても使用できる。
【0051】
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下において、%は、特記しない限り、重量%を表わす。
試験(含フッ素重合体の分析および撥水撥油性の測定)は以下のようにして行った。
【0053】
「撥水撥油性」:
含フッ素重合体の撥水撥油性の評価として、接触角測定を行った。即ち、含フッ素重合体をHCFC−225溶媒中の1wt%溶液とし、スピンコート法(2000rpm)でガラス基板に塗布後、75℃で3分間熱処理して製膜した。次に、協和界面科学(株)製の接触角計(商品名「CA−VP」)を用いて、JISR3257に準じた温度15〜20℃、相対湿度50〜70%で接触角を測定した。
[静的接触角]:
撥水性は水滴(表面張力72mN/m、2μl)の静的接触角、撥油性はn−ヘキサデカン液滴(表面張力27mN/m、2μl、以下、HDと略す)の静的接触角をそれぞれ測定して評価した。静的接触角は、角度の大きい方が撥水撥油性が高い。
[動的接触角]:
撥水性は水滴(20μl)の動的接触角、撥油性はHD滴(5μl)の動的接触角をそれぞれ測定し、動的接触角の指標として、転落角(deg)、および前進接触角と後退接触角の差で表されるヒステリシス(deg)を評価した。転落角並びにヒステリシスの小さい方が、撥水撥油性が高い。
【0054】
「シャワー撥水性」:
シャワー撥水性は、JIS−L−1092のスプレー法による撥水性No.(下記表1参照)をもって表す。
【0055】
【表1】

【0056】
「撥水性試験」:
処理済試験布を温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(イソプロピルアルコール(以下、IPAと略す)、水、及びその混合液、表2に示す)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験液を試験布上に0.05mlを静かに滴下し、30秒間放置後、液滴が試験布上に残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥水性は、パスした試験液のIPA含量(体積%)の最大なものをその点数とし、撥水性不良なものから良好なレベルまでをFail、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の12段階で評価する。
【0057】
【表2】

【0058】
「撥油性試験」:
処理済試験布を温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(表3に示す)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験布上に0.05mlを静かに滴下し、30秒間放置後、液滴が試験布上に残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥油性は、パスした試験液の最高点数とし、撥油性不良なものから良好なレベルまでFail、1、2、3、4、5、6、7、及び8の9段階で評価する
【0059】
【表3】

【0060】
実施例1
300mlオートクレーブに、CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)14F(以下、29−FAと略す) 7.4g(9mmol)、CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)16F(以下、33−FAと略す) 0.9g(1mmol)、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)6F、以下、13−FAと略す)4.2g(10mmol)、HCFC225 50g、t−ブチルパーオキシピバレート0.1gを入れ、窒素置換により系内の酸素を除去した。次いで、徐々に温度を上げて、60℃で12時間保って重合反応を行った。室温に冷却した反応液を多量のアセトン中に投入して重合体を沈殿させ、濾取、洗浄後、真空乾燥して含フッ素共重合体を得た。
【0061】
実施例2
13−FAを2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(CH2=C(CH3)-COO-(CH2)2-(CF2)6F、以下、13−FMAと略す)4.3g(10mmol)に変更すること以外は、実施例1と同じ手順を繰り返し、含フッ素共重合体を得た。
実施例3
13−FAをCH2=CCl-COO-(CH2)2-(CF2)6F(以下、13−FCLAと略す)4.5g(10mmol)に変更すること以外は、実施例1と同じ手順を繰り返し、含フッ素共重合体を得た。
【0062】
比較例1
300mlオートクレーブに、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)8F、以下、17−FAと略す) 10.8g(20mmol)、HCFC225 50g、t−ブチルパーオキシピバレート0.1gを入れ、窒素置換により系内の酸素を除去した。次いで、徐々に温度を上げて、60℃で12時間保って重合反応を行った。室温に冷却した反応液を多量のアセトン中に投入して重合体を沈殿させ、濾取、洗浄後、真空乾燥して含フッ素重合体を得た。
【0063】
比較例2
17−FAを13−FMA 8.6g(20mmol)に変更すること以外は、比較例1と同じ手順を繰り返し、含フッ素重合体を得た。
【0064】
実施例4
実施例1で得られた含フッ素共重合体をHCFC225溶媒中の1%溶液とし、スピンコート法(2000rpm)でガラス基板に塗布後、75℃で3分間熱処理して製膜した。得られた塗膜について、静的接触角並びに動的接触角を測定した。
【0065】
実施例5
実施例2で得られた含フッ素共重合体を用いること以外は、実施例4と同じ手順を繰り返し、製膜した。得られた塗膜について、静的接触角並びに動的接触角を測定した。
【0066】
実施例6
実施例3で得られた含フッ素共重合体を用いること以外は、実施例4と同じ手順を繰り返し、製膜した。得られた塗膜について、静的接触角並びに動的接触角を測定した。
【0067】
比較例3
比較例1で得られた含フッ素重合体を用いること以外は、実施例4と同じ手順を繰り返し、製膜した。得られた塗膜について、静的接触角並びに動的接触角を測定した。
【0068】
比較例4
比較例2で得られた含フッ素重合体を用いること以外は、実施例4と同じ手順を繰り返し、製膜した。得られた塗膜について、静的接触角並びに動的接触角を測定した。
実施例4〜6および比較例3〜4の測定結果について、静的接触角の結果を表4に、水滴の動的接触角の結果を表5に、HD滴の動的接触角の結果を表6に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
実施例7
1Lオートクレーブに、29−FA 88.1g(0.108mol)、33−FA 10.7g(0.012mol)、13−FMA 51.2g(0.118mol)、ステアリルアクリレート 75.0g(0.231mol)、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート3.0g(0.017mol)、純水300g、トリプロピレングリコール80g、酢酸0.45g、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド6g、ポリエチレングリコールラウリルエーテル9g、を入れ、撹拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。乳化後n−ドデシルメルカプタン1.5gを添加し、さらに塩化ビニル45g(0.720mol)を圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩1.12gを添加し、5時間反応させ、含フッ素共重合体の水性分散液を得た。最後に、含フッ素共重合体の20%水性分散液になるように水で希釈した。
【0073】
実施例8
ステアリルアクリレートをベヘニルアクリレート 87.9g(0.231mol)に変更すること以外は、実施例7と同じ手順を繰り返し、含フッ素共重合体の20%水性分散液を得た。
【0074】
比較例5
1Lオートクレーブに、17−FA 150g(0.279mol)、ステアリルアクリレート 75.0g(0.231mol)、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート3.0g(0.017mol)、純水300g、トリプロピレングリコール80g、酢酸0.45g、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド6g、ポリエチレングリコールラウリルエーテル9g、を入れ、撹拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。乳化後n−ドデシルメルカプタン1.5gを添加し、さらに塩化ビニル45g(0.720mol)を圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩1.12gを添加し、5時間反応させ、含フッ素共重合体の水性分散液を得た。最後に、含フッ素共重合体の20%水性分散液になるように水で希釈した。
【0075】
比較例6
17−FAを13−FMA 150g(0.347mol)に変更すること以外は、比較例5と同じ手順を繰り返し、含フッ素共重合体の20%水性分散液を得た。
【0076】
実施例9
実施例7で得られた含フッ素共重合体の水性分散液1.0gとNICCA Assist V2(MDI系ブロックドイソシアネート、日華化学(株))0.3gを水98.7gに希釈して、処理液を得た。得られた処理液にPolyester布(タフタ、25cm×25cm)およびT/C混紡布(Polyester65/Cotton35、ブロード、25cm×25cm)を浸漬し、ロールで絞ってウエットピックアップがそれぞれ40%、60%となるようにした。次いで、120℃で3分間乾燥し、更に160℃で2分間熱処理することにより、布の処理を完了した。得られた布について、シャワー撥水試験、撥水性試験、撥油性試験した結果を表7に示す。尚、洗濯耐久性を評価する目的で処理布をAATCC法に準じ、浴温40℃で1回あたりの洗濯時間が12分(すすぎ等の時間は含まず)のノーマルコンディションで洗濯し、タンブラー乾燥を行い、これを1サイクルとし、このサイクルを繰り返し行った処理布についてもシャワー撥水試験、撥水性試験、撥油性試験した。結果を表7に示す。
【0077】
実施例10
実施例8で得られた含フッ素共重合体の水性分散液を用いること以外は、実施例9と同じ手順を繰り返し、布を処理した。得られた布について、洗濯耐久性を含むシャワー撥水試験、撥水性試験、撥油性試験した結果を表7に示す。
【0078】
比較例7
比較例5で得られた含フッ素共重合体の水性分散液を用いること以外は、実施例9と同じ手順を繰り返し、布を処理した。得られた布について、洗濯耐久性を含むシャワー撥水試験、撥水性試験、撥油性試験した結果を表7に示す。
【0079】
比較例8
比較例6で得られた含フッ素共重合体の水性分散液を用いること以外は、実施例9と同じ手順を繰り返し、布を処理した。得られた布について、洗濯耐久性を含むシャワー撥水試験、撥水性試験、撥油性試験した結果を表7に示す。
【0080】
【表7】

【0081】
表4〜6から、本発明の含フッ素共重合体は、静的接触角の測定値が高く、転落角並びにヒステリシスの測定値が低いことが判る。特に、転落角並びにヒステリシスが小さいことは、水滴およびHD滴に対する環境応答性が小さいことを示しており、本発明の含フッ素共重合体の撥水撥油性が優れていることが判る。また、表7から、繊維の撥水撥油剤用途でも本発明の含フッ素共重合体の撥水撥油性が優れていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
(a1)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O- または -NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基である。]
で示される第1含フッ素単量体、および
(a2)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O- または -NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数12以上のフルオロアルキル基である。]
で示される第2含フッ素単量体
からなる含フッ素単量体から誘導される繰り返し単位
を有してなる含フッ素重合体を含んでなる含フッ素組成物。
【請求項2】
第1含フッ素単量体(a1)および第2含フッ素単量体(a2)において、
およびXは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX1112基(但し、X11およびX12は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
およびZは、同一または異なって、直接結合、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基、芳香脂肪族基または環状脂肪族基、
式−R(R)NSO−または式−R(R)NCO−で示される基(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜10の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基である。)、
式−CHCH(OR)CH−(式中、Rは、水素原子、または、炭素数1〜10のアシル基を表す。)で示される基、または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)である請求項1に記載の含フッ素組成物。
【請求項3】
第1含フッ素単量体(a1)および第2含フッ素単量体(a2)において、YおよびYが-O-である請求項1または2に記載の含フッ素組成物。
【請求項4】
Rfが、第1含フッ素単量体(a1)において炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、第2含フッ素単量体(a2)において炭素数12以上のパーフルオロアルキル基である請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素組成物。
【請求項5】
含フッ素重合体が、さらに
(b)非フッ素非架橋性単量体から誘導された繰り返し単位
を有する請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素組成物。
【請求項6】
含フッ素重合体が、さらに
(c)非フッ素架橋性単量体から誘導された繰り返し単位
を有する請求項1〜5のいずれかに記載の含フッ素組成物。
【請求項7】
液状媒体をさらに含有する請求項1〜6のいずれかに記載の含フッ素組成物。
【請求項8】
撥水撥油剤、防汚剤または離型剤である請求項1〜7のいずれかに記載の含フッ素組成物。
【請求項9】
(a1)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O- または -NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基である。]
で示される第1含フッ素単量体、および
(a2)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O- または -NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数12以上のフルオロアルキル基である。]
で示される第2含フッ素単量体
からなる含フッ素単量体から誘導される繰り返し単位
を有してなる含フッ素重合体。
【請求項10】
(a1)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O- または -NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基である。]
で示される第1含フッ素化合物と、
(a2)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O- または -NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数12以上のフルオロアルキル基である。]
で示される第2含フッ素化合物との
混合含フッ素化合物。
【請求項11】
請求項1〜8項のいずれかに記載の含フッ素組成物で処理することからなる、基材を処理する方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の含フッ素組成物によって処理された繊維製品。

【公開番号】特開2013−100494(P2013−100494A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230169(P2012−230169)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】