説明

含フッ素重合体のオルガノゾル組成物

【課題】PTFE粒子を高含有量で含むものであっても安定したオルガノゾル組成物を提供する。
【解決手段】PTFE粒子(A)とポリマー(B)と有機溶剤(S)を含むオルガノゾルであって、(1)ポリマー(B)が有機溶剤(S)に可溶であり、(2)PTFE粒子(A)の含有量が、PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計量の50質量%以上であり、(3)PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計固形分濃度が5質量%の状態において、48時間後のPTFE粒子の沈降率が60%以下であるPTFE粒子のオルガノゾル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTFE(PTFE)粒子の含有割合が増大しているオルガノゾル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フィブリル形成性の高分子量PTFE粒子を有機溶剤に分散させたオルガノゾルは、たとえばリチウム電池などの蓄電デバイスの電極を製造する際の電極合剤として有用である。
【0003】
そうした高分子量PTFE粒子のオルガノゾルでは、PTFE粒子の濃度が高くなると極端に安定性が悪くなるため、多くても25質量%濃度のものしか安定して得られない。そこで、PTFEを変性して高濃度のオルガノゾルを提供する試みが行われている。
【0004】
その方向性として、フィブリル形成性の高分子量PTFEをコア部とし、シェル部を非フィブリル形成性重合体とするコア−シェル粒子を用いる方法(特許文献1〜4)、ポリフルオロアルキル基を有するアクリル系単量体の極少量を共重合して変性する方法(特許文献5)が提案されている。
【0005】
しかし、これらの特許文献でも得られるオルガノゾル中の変性PTFE粒子の割合は30質量%までである。
【0006】
また、PTFE粒子と他のフッ素樹脂とを併用することも提案されている。たとえば、未変性PTFEとテトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体(FEP)を併用する方法(特許文献6)、高分子量PTFEとFEPやPFAとの混合物の水性分散体やオルガノゾル(特許文献7)が、高分子量PTFEなどの結晶質フルオロポリマー粒子とフッ化ビニリデン(VdF)系ポリマーなどの非晶質フッ素樹脂とを混合したオルガノゾル(特許文献8)が提案されている。
【0007】
しかし、特許文献6においてもPTFE/FEPの割合は30/70(質量比)までであり、それを超えると凝集が生じてしまう。また、特許文献7にはオルガノゾルに調製されているのは10質量%以下の未変性PTFEだけであり、また、未変性PTFEとPFAとが50/50(質量比)の混合物も記載されているが水性分散体でしか存在し得ない。
【0008】
特許文献8に記載のオルガノゾルは、PTFE粒子のラテックスと非晶質または結晶性の低いフッ素樹脂粒子のラテックスを混合した後凝析し、乾燥後有機溶剤に分散させるラテックス混合方法、または、PTFE粒子と非晶質フッ素樹脂粒子を乾燥状態でドライブレンドし、ついで有機溶剤に分散させる方法で製造されている。ドライブレンド法では固形分中のPTFEの割合は50質量%を超えるオルガノゾルも製造されているが、ドライブレンドしているためPTFE粒子は凝集したり繊維化して粒径が大きくなり一次粒子としては存在せず安定性に劣る。一方、ラテックス混合法では、やはり、従来と同様に2次粒子の発生割合が多く沈降安定性に優れるのは、PTFE粒子の割合が20質量%までである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62−109846号公報
【特許文献2】特開平2−158651号公報
【特許文献3】特開平4−154842号公報
【特許文献4】国際公開第96/012764号パンフレット
【特許文献5】特開昭63−284201号公報
【特許文献6】特公昭48−27549号公報
【特許文献7】特開平10−53682号公報
【特許文献8】特表2008−527081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、従来の方法でPTFE粒子のオルガノゾルを調製したときは、PTFE粒子の含有量が30質量%を超えるとPTFE粒子が凝集し、オルガノゾルが不安定になってしまう。また、30質量%までの安定なPTFEオルガノゾルであっても、たとえば電極合剤用のスラリーとするために電極活物質材料などと剪断混合したり、さらに補助バインダー溶液と混合したりすると、PTFE粒子が凝集してしまったりフィブリル化してしまうという問題は避けられない。
【0011】
本発明は、PTFE粒子を高含有量で含むものであっても安定したオルガノゾル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、PTFE粒子(A)とポリマー(B)と有機溶剤(S)を含むオルガノゾル組成物であって、
(1)ポリマー(B)が有機溶剤(S)に可溶であり、
(2)PTFE粒子(A)の含有量が、PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計量の50質量%以上であり、
(3)PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計固形分濃度が5質量%の状態において、48時間後のPTFE粒子の沈降率が60%以下であるPTFE粒子のオルガノゾル組成物に関する。
【0013】
本発明はまた、PTFE粒子(A)とポリマー(B)と有機溶剤(S)を含むオルガノゾル組成物であって、
(1)ポリマー(B)が有機溶剤(S)に可溶であり、
(2)超音波減衰スペクトルの傾きが+0.50以上である
PTFE粒子のオルガノゾル組成物に関する。
但し、超音波減衰スペクトルは、固形分濃度が12質量%のオルガノゾル組成物について、超音波減衰法を用いて3〜100MHzの周波数で測定した減衰率から求めるものである。
【0014】
本発明はまた、PTFE粒子(A)とポリマー(B)と有機溶剤(S)を含むオルガノゾル組成物であって、
(1)ポリマー(B)が有機溶剤(S)に可溶であり、
(2)飽和赤外透過率の変化率が5.0%以下のものである
PTFE粒子のオルガノゾル組成物に関する。
但し、飽和赤外透過率の変化率は、固形分濃度が5質量%のオルガノゾル組成物について、光路長を2.2mm、遠心力を2300Gとして、25℃で遠心分離を行いながら測定する赤外光強度から算出するものである。
【0015】
また本発明は、
有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)の水性分散体と、有機溶剤(S)に可溶なポリマー(B)の水性分散体を混合する工程(I)、
得られた混合水性分散体に、水に可溶な凝析用有機溶剤(D)を添加して有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)およびポリマー(B)を凝析させる工程(II)、
得られた有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)およびポリマー(B)の含水凝析物(E)と液層とを分離する工程(III)、
得られた含水凝析物(E)と有機溶剤(S)を混合し、撹拌して含水凝析物(E)を分散させる工程(IV)、および
得られた含水有機分散体(F)から水分を除去する工程(V)
を含む有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)のオルガノゾル組成物の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のPTFEオルガノゾル組成物は、PTFE粒子を安定して含有しており、本発明のPTFEオルガノゾル組成物をバインダーとして塗膜を形成した場合に基材との密着性の向上を図ることもできるという優れた特性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のPTFEオルガノゾル組成物は、PTFE粒子(A)とポリマー(B)と有機溶剤(S)を含むオルガノゾルであって、
(1)ポリマー(B)が有機溶剤(S)に可溶であり、
(2)PTFE粒子(A)の含有量が、PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計量の50質量%以上であり、
(3)PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計固形分濃度が5質量%の状態において48時間後のPTFE粒子の沈降率が60%以下である
PTFE粒子のオルガノゾル組成物である。
【0018】
各成分および要件について、以下詳述する。
【0019】
(A)PTFE粒子
PTFEは標準比重(SSG)が2.130〜2.230のものが好ましく、また、フィブリル形成性のものでも、非フィブリル形成性のものでもよい。
【0020】
PTFEは溶融加工できずかつフィブリル化するので、その分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)などの通常の分子量測定法では測定できない。そのため、従来より、標準比重(SSG)が分子量の目安として用いられている。標準比重は、ASTM D 4895−89で規定されており、数値が小さくなるほど分子量が大きくなる。たとえば、特許文献6に記載されている未変性PTFEの標準比重は2.20〜2.29である。
【0021】
本発明で使用するPTFEの標準比重は2.230以下であることが好ましく、より好ましくは2.130〜2.200である。標準比重が2.230を超えると、すなわち低分子量になるとフィブリル化しにくくなる。標準比重が2.130より小さい高分子量のPTFEは、高分子量PTFEに本質的なフィブリル形成性が失われるものではないが、製造上困難であり実際的でない。
【0022】
また、フィブリル形成性については、別の観点である380℃における比溶融粘度(ASTM 1238−52T)で評価する場合もある。本発明において、「非フィブリル形成性」の目安は、380℃における比溶融粘度が1×10ポイズ以下、さらには1×10ポイズ以下である。下限は、通常、5×10ポイズである。
【0023】
また、フィブリル形成性については、さらに別の観点である溶融押出し圧力から、評価する場合もある。この値が大きいとフィブリル形成性が高いと評価でき、小さいとフィブリル形成性が低いと評価できる。本発明において、「非フィブリル形成性」の目安は、リダクションレシオ1600における円柱押出圧力が70MPa以下、60MPa以下、さらには50MPa以下のものがオルガノゾル組成物製造時に凝集が生じにくいので好ましい。下限は、通常、5MPaであるが、用途や目的により適宜選定すればよく、特に限定されるものではない。
【0024】
(A1)フィブリル形成性PTFE
高分子量(通常SSGが2.230以下)のTFEの単独重合体であり、変性されていないもの(以下、「未変性PTFE」ということもある)が代表例である。上記のように、フィブリル形成性のPTFEは、これまで高含有量でオルガノゾルに入れることは困難であったPTFE粒子である。
【0025】
(A2)非フィブリル形成性PTFE
非フィブリル形成性であるかどうかは、上記の基準で評価できる。具体的には、特許文献5などに記載されている変性用単量体が2質量%以下共重合された単量体変性PTFE、低分子量(SSGが大きい)PTFE、特許文献1〜4などに記載されているフィブリル形成性PTFEのコアと非フィブリル形成性の樹脂のシェルとから構成されるコア−シェル複合粒子などがあげられる。
【0026】
本発明のオルガノゾル組成物においては、フィブリル形成性か非フィブリル形成性かを問わず、PTFE粒子は一次粒子の状態でオルガノゾル中に存在していると推定される。なお、「一次粒子の状態でオルガノゾル中に存在する」とは、全てのPTFE粒子が一次粒子であることまで要求するものではなく、PTFE粒子(A)の含有量(PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計量におけるPTFE粒子(A)の含有量。以下同様)が50質量%以上の状態においてオルガノゾル中で安定して存在すればよく(後述する「48時間後のPTFE粒子の沈降率が60質量%以下」)、明確ではないが、凝集したPTFE粒子(5μm以上の粒子径を有するPTFE粒子)がほとんどないことを意味する。また別の表現をすると、光散乱法による粒径測定において、平均粒子径が5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である組成物を意味する。また、全PTFE粒子中の30質量%以上、さらには50質量%以上が一次粒子であればよいと考えられる。
【0027】
用いるPTFE水性分散体のPTFE粒子の平均一次粒子径は50〜500nmの範囲にあることが、オルガノゾルの安定性、再分散性が良好な点から好ましい。より好ましくは50〜400nm、さらに好ましくは100〜350nmである。
【0028】
また、他材と混合する場合には、PTFE粒子の平均一次粒子径は小さい方が混合・均一分散しやすい点で好ましく、50〜400nmの範囲にあることが好ましい。より好ましくは50〜300nm、さらに好ましくは50〜250nmである。
【0029】
さらに具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、活性炭などの炭素材料との混合やアセチレンブラックやケッチンブラックのような導電性炭素材料との混合、リチウム2次電池やリチウムイオンキャパシタなどに用いるリチウム含有遷移金属複合酸化物やリチウム含有リン酸などの正極物質との混合などでは、PTFE粒子の平均一次粒子径は小さい方がより均一な電極合剤スラリーを調製できる点で好ましく、50〜400nmの範囲にあることが好ましい。より好ましくは50〜300nm、さらに好ましくは50〜250nmである。
【0030】
また、PTFE水性分散体中には、分散安定剤が含まれていても含まれていなくても上記オルガノゾルが製造でき、下記市販のPTFE水性分散体も使用できる。例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)(登録商標)TF 5032 PTFE、ダイニオン(DYNEON)(登録商標)TF 5033 PTFE、ダイニオン(DYNEON)(登録商標)TF 5035 PTFE、またはダイニオン(DYNEON)(登録商標)TF 5050 PTFE、ならびにイ−・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニ−(E.I. du Pont de Nemours & Co.)からのテフロン(登録商標)(TEFLON)PTFE GRADE 30およびテフロン(登録商標)(TEFLON)PTFE GRADE 307A、ならびにダイキン工業(株)からのポリフロン(登録商標)D−1E、ポリフロン(登録商標)D−210Cなどが例示できる。
【0031】
本発明のオルガノゾル組成物では、これまで高含有量でオルガノゾルに含有させることが困難であったフィブリル形成性のPTFE粒子を高含有量で安定して含ませることができる。
【0032】
本発明のオルガノゾル組成物は、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体(FEP)を含まないことが好ましい。
【0033】
(B)ポリマー
ポリマー(B)は、オルガノゾル組成物の1成分である有機溶剤(S)に溶解するものであれば特に制限されず、フッ素系の樹脂やゴム(B1)でも非フッ素系の樹脂やゴム(B2)でもよく、有機溶剤(S)の種類、オルガノゾル組成物の用途や製造条件に応じて適宜選択することができる。
【0034】
フッ素系樹脂やゴム(B1)としては、VdF系重合体や含フッ素アクリルまたはメタクリル系重合体系重合体などが例示できる。なお、PTFEやFEPなどが含まれるパーフルオロ系重合体は、有機溶剤(S)には実質的に溶解しないので、ポリマー(B)には含まれない。
【0035】
ポリマー(B)としては、樹脂であることが好ましく、フッ素系樹脂がより好ましい。中でも、VdF系重合体が好ましい。
VdF系重合体は、VdFの単独重合体(PVdF)であってもVdF共重合体であってもよい。VdFと共重合可能な単量体としては、たとえばTFE、HFP、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、CTFE、CF=CFH、CH=CFRf(Rfは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基)などの1種または2種以上があげられる。
【0036】
ポリマー(B)としては、VdF共重合体がより好ましい。VdF共重合体としては、VdFを40モル%以上含む共重合体が非フッ素系有機溶剤に溶解するため好ましく、特に、式:
−(CHCF)−(CFCF(CF))−(CFCF
(式中、xは40〜85、yは0〜10、zは1〜60。ただし、x+y+z=100)で示される共重合体が、電極合剤用ポリマーとして用いる場合は、耐酸化性、集電体との密着性が良好な点から好ましい。具体的には、VdF/TFE共重合体、及び、TFE/HFP/VdF共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。
【0037】
含フッ素アクリルまたはメタクリル系重合体としては、炭素数4〜8のパーフルオロアルキル基を含有するアクリルまたはメタクリル系重合体が例示でき、たとえば、CH=CHCOO(CH−Rf(nは整数で1〜4、Rfは炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基)と共重合可能な非フッ素系モノマーとの共重合体、CH=C(CH)COO(CH−Rf(nは整数で1〜4、Rfは炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基)と共重合可能な非フッ素系モノマーとの共重合体などがあげられ、非フッ素系モノマーと共重合することは、非フッ素系有機溶剤に溶解しやすくなる点や塗膜としたとき基材との密着性が良好になる点から好ましい。共重合可能な非フッ素系モノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、ジエチレングリコールメタクリレートのようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル、アクリルアミド、メチロールメタクリルアミドなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、ビニルピロリドン、アルキルビニルエーテル、ピロールなどがあげられる。
【0038】
非フッ素系樹脂やゴム(B2)としては、特に限定されず、有機溶剤(S)の種類、オルガノゾル組成物の用途や製造条件に応じて適宜選択することができる。たとえば非フッ素系樹脂としては、ポリアミドイミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、カルボキシエチルセルロースまたはその塩、カルボキシブチルセルロースまたはその塩、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンオキシドまたはその誘導体、ポリメタクリル酸またはその誘導体、ポリアクリル酸またはその誘導体などがあげられる。電極合剤用ポリマーとしては、塗布後の乾燥・熱処理工程で非フッ素樹脂が塗布膜中に残存する可能性がある場合は、耐熱性に優れた樹脂であるポリアミドイミド、ポリイミドが好ましい。一方、塗布後の乾燥・熱処理工程で完全に塗布膜中から非フッ素樹脂を除去できる場合は、分解しやすい樹脂であることが好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、カルボキシエチルセルロースまたはその塩、カルボキシブチルセルロースまたはその塩、ウレタン樹脂、ポリエチレンオキシドまたはその誘導体、ポリメタクリル酸またはその誘導体、ポリアクリル酸またはその誘導体が好ましい。
【0039】
非フッ素系ゴムとしては、EPDMゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ネオプレンゴム、アクリルゴムがあげられる。電極合剤用ポリマーとしては、塗布膜に残存する可能性がある場合はアクリルゴムが好ましく、除去できる場合はスチレンブタジエンゴムが好ましい。
【0040】
(S)有機溶剤
本発明のオルガノゾル組成物を構成する有機溶剤(S)は、ポリマー(B)を溶解し得る有機溶剤であれば特に制限されず、ポリマー(B)の種類、オルガノゾル組成物の用途や製造条件に応じて適宜選定される。有機溶剤(S)は、フッ素系溶剤と非フッ素系有機溶剤(C)から構成される。
【0041】
ポリマー(B)がフッ素原子を含む樹脂の場合、特に有機溶剤(S)は、フッ素系溶剤が好ましく、フッ素含有率が高い有機溶媒がポリマー(B)を溶解できる点で好ましい。
フッ素系溶剤としては、例えば、含フッ素エーテル系溶媒、含フッ素ケトン系溶剤、含フッ素アルコール系溶剤、含フッ素アミド系溶剤、含フッ素エステル系溶剤、含フッ素脂肪族炭化水素系溶剤、含フッ素芳香族炭化水素系溶剤、含フッ素ハロゲン化炭化水素系溶剤が好ましくあげられる。特に有機溶剤(S)のフッ素含有率が高い有機溶媒としては、含フッ素エーテル系溶媒、含フッ素アルコール類、含フッ素脂肪族炭化水素系溶剤、含フッ素ハロゲン化炭化水素系溶剤が好ましくあげられる。また、フッ素系溶剤は2種、あるいはそれ以上を混合して用いても良い。この組合せは、フッ素系溶剤の物性により適宜選択することができる。
フッ素系溶剤としては、例えば、炭素原子数4〜10のフッ素化炭化水素、水素原子の一部ないし全部がフッ素原子により置換されている少なくとも1以上の酸素原子を環構成原子として有する複素環化合物、及び炭素原子数2〜5のフルオロアルキルアミンの中から選ばれる少なくとも1種のフッ素系溶剤を用いることができる。
【0042】
(炭素原子数4〜10のフッ素化炭化水素)
炭素原子数4〜10のフッ素化炭化水素としては、具体的には、水素原子の一部ないし全部がフッ素原子により置換された、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、n−オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、3−エチルヘキサン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,3,3−テトラメチルブタン、n−ノナン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、4−メチルオクタン、2,4−ジメチルヘプタン、2,5−ジメチルヘプタン、2,6−ジメチルヘプタン、2,6−ジメチルヘプタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、2,3,5−トリメチルヘキサン、3,3−ジエチルペンタン、n−デカン、2−メチルノナン、3−メチルノナン、4−メチルノナン、5−メチルノナン、2,4−ジメチルオクタン、2,5−ジメチルオクタン、2,6−ジメチルオクタン、2,7−ジメチルオクタン、3,6−ジメチルオクタン、4−プロピルヘプタン、2,2,6−トリメチルヘプタン、2,4,6−トリメチルヘプタン、3,3,5−トリメチルヘプタン、3,4−ジエチルヘキサン、2,2,3,4−テトラメチルヘキサン、3,3,4,4−テトラメチルヘキサン等が挙げられる。
【0043】
(水素原子の一部ないし全部がフッ素原子により置換されている少なくとも1以上の酸素原子を環構成原子として有する複素環化合物)
水素原子の一部ないし全部がフッ素原子により置換されている少なくとも1以上の酸素原子を環構成原子として有する複素環化合物としては、具体的には、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−エチルテトラヒドロフラン、2−プロピルテトラヒドロフラン、2−ブチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロピラン、2−エチルテトラヒドロピラン、2−プロピルテトラヒドロピラン、2−ブチルテトラヒドロピラン等の水素原子の一部ないし全部がフッ素原子により置換されている複素環化合物が挙げられる。
【0044】
(炭素原子数2〜5のフルオロアルキルアミン)
炭素原子数2〜5のフルオロアルキルアミンは、水素原子の一部ないし全部がフッ素原子により置換されたフルオロアルキルアミンである。このようなフルオロアルキルアミンとして、具体的には、水素原子の一部ないし全部がフッ素原子に置換された、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、テトラペンチルアミン、テトラヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0045】
(C)非フッ素系有機溶剤
有機溶剤(S)は、非フッ素系有機溶剤(C)であることが好ましい。非フッ素系有機溶剤(C)は、ポリマー(B)を溶解し得る有機溶剤であれば特に制限されず、ポリマー(B)の種類、オルガノゾル組成物の用途や製造条件に応じて適宜選定される。たとえば、エーテル系溶媒、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤が好ましくあげられ、さらにはケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、および脂肪族炭化水素系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種が、ポリマー(B)の溶解性が良好な点から好ましい。
【0046】
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが;アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなどが;アミド系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)などが;エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどが;脂肪族炭化水素系溶剤としてはヘキサン、石油エーテルなどが;芳香族炭化水素系溶剤としてはベンゼン、トルエン、キシレンなどが;ハロゲン化炭化水素系溶剤としては四塩化炭素、トリクロルエチレンなどが例示できる。また単独ではポリマー(B)を溶解しにくい有機溶剤、たとえば四塩化炭素、トリクロルエチレン、ジイソブチルケトンでは油溶性の界面活性剤を少量添加することによってオルガノゾルにすることも可能である。これらは本発明のオルガノゾル組成物の使用分野や目的に応じて適宜選択すればよい。電池の電極の製造に用いる場合はN−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。また、その他好ましいものとしては、ジメチルアセトアミドをあげることができる。すなわち、有機溶剤(S)は、N−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルアセトアミドであることが好ましい。より好ましくは、N−メチル−2−ピロリドンである。
【0047】
本発明のオルガノゾル組成物において、固形分中のPTFE粒子(A)の含有量は特に制限は無いが、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは50質量%以上である。従来、PTFE粒子が50質量%以上で安定して存在するオルガノゾルは知られていない。中でも、より好ましいPTFE粒子の含有量は、60質量%以上であり、さらには80質量%以上であり、またオルガノゾル製造時の攪拌のせん断力によるPTFEの繊維化によるPTFEの凝集を防ぐ点からは、95質量%以下、さらには80質量%以下である。
【0048】
本発明のオルガノゾル組成物における固形分(PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計)の濃度は、オルガノゾル組成物の用途や製造条件に応じて適宜選定すればよいが、通常1〜40質量%、さらには5〜20質量%の範囲から選定することが好ましい。
【0049】
本発明のPTFEオルガノゾル組成物は、PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計固形分濃度が5質量%の状態において48時間後のPTFE粒子の沈降率が60%以下であることを要件とする。
【0050】
ここで、「48時間後のPTFE粒子の沈降率」とは、PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計の固形分濃度が5質量%のオルガノゾル組成物を、株式会社マルエム製、透明スクリュー管No.3(容量10ml、ガラス製)に8ml入れて、BRANSONIC(登録商標) B−521、BRANSON CLEANING EQUIPMENT COMPANY社製の超音波洗浄器を用いて、超音波照射を30分間行った後、48時間静置した後、上澄み液を取り、その上澄み液の固形分濃度を測定し、つぎの式に従い、PTFE粒子(A)の沈降率を算出する。ただし、上澄み液中でポリマー(B)は全て有機溶剤(S)に溶解しているものと仮定する。
【0051】
PTFE沈降率(%)=[{PTFEの初期濃度−(48時間静置後の上澄みの固形分濃度−ポリマー(B)の初期濃度)}]/PTFEの初期濃度×100
PTFEの初期濃度:沈降率試験に用いたオルガノゾル組成物の固形分濃度と、固体NMRにより測定した沈降率試験に用いたオルガノゾル組成物中のPTFE粒子(A)とポリマー(B)の組成比から算出し、PTFEの初期濃度を求める。
48時間静置後の上澄みの固形分濃度:静置後の上澄みを採取して、150℃にて約3時間加熱した後に秤量した固形分の質量から、上記水性分散体またはオルガノゾルの質量と固形分の質量との割合として算出する。
ポリマー(B)の初期濃度:沈降率試験に用いたオルガノゾル組成物の固形分濃度と、固体NMRにより測定した沈降率試験に用いたオルガノゾル組成物中のPTFE粒子(A)とポリマー(B)の組成比から算出し、ポリマー(B)の初期濃度を求める。
【0052】
48時間後のPTFE粒子の沈降率は低い方が好ましく、したがって60%以下、さらには50%以下が好ましい。
【0053】
また本発明のPTFE粒子のオルガノゾル組成物は、PTFE粒子(A)とポリマー(B)と有機溶剤(S)を含むオルガノゾル組成物であって、
(1)ポリマー(B)が有機溶剤(S)に可溶であり、
(2)飽和赤外透過率の変化率が5.0(%)以下のものである。
但し、飽和赤外透過率の変化率は、固形分濃度が5質量%のオルガノゾル組成物について、光路長を2.2mm、遠心力を2300Gとして、25℃で遠心分離を行いながら測定する赤外光強度から算出するものである。
【0054】
飽和赤外透過率の変化率が5.0%以下であると、分散安定性が良好となり、2次凝集したPTFE粒子が目に見えて沈殿することなく、良好な貯蔵状態が継続できる。
遠心力を2300Gとして遠心分離を行うと、PTFE粒子の分散安定性が低いオルガノゾル組成物であるほど2次凝集したPTFE粒子が遠心分離されやすい。そのため分散安定性が低いオルガノゾル組成物の飽和赤外透過率の変化率は高くなる。上記飽和赤外透過率の変化率が5.0%を上回った場合、オルガノゾル組成物から2次凝集したPTFE粒子が目に見えて沈殿し、貯蔵安定性の低下をもたらす。赤外透過率及び飽和赤外透過率の変化率の具体的な算出方法は後述する。
【0055】
上記飽和赤外透過率の変化率は、低い方が好ましく、4.0%以下がより好ましく、3.0%以下が更に好ましく、2.0%以下が特に好ましい。
【0056】
本発明のPTFE粒子のオルガノゾル組成物は、遠心分離開始から終了までの赤外透過率の平均変化率は、6.0%/時以下であることが好ましい。赤外透過率の平均変化率が6.0%/時以下であると、分散安定性が良好となり、2次凝集したPTFE粒子が目に見えて沈殿することなく、良好な貯蔵状態が継続できる。5.0%/時以下であることがより好ましく、4.0%/時以下であることが更に好ましい。
赤外透過率の平均変化率の具体的な算出方法は、後述する。
【0057】
オルガノゾル中のPTFE粒子の分散状態および粒子分布状態は、オルガノゾルに遠心分離処理を行った時の赤外透過率を尺度として把握できる。赤外透過率を尺度として用いると、オルガノゾル中のPTFE粒子の分散性を精度良く定量することができるため有用であり、また、極端に希釈することなく固形分1質量%以上の濃厚な溶液で評価できるので組成物の貯蔵安定性の評価にも有用である。
【0058】
以下に、赤外透過率の測定方法、飽和赤外透過率の変化率の算出方法等について具体的に説明する。
【0059】
(赤外透過率の算出方法)
赤外透過率は、上記固形分濃度が5質量%のオルガノゾル組成物に波長870nmの赤外光(強度:I0)を入射し、該オルガノゾル組成物を透過する赤外光強度I1を測定し、得られる値(I1/I0×100)のことである。
【0060】
具体的には、赤外透過率は、下記方法により算出する。
まず、本発明のPTFE粒子のオルガノゾル組成物を、合計固形分濃度(PTFE粒子(A)とポリマー(B))が5重量%のオルガノゾル組成物になるように調製する。
合計固形分濃度が5重量%のオルガノゾル組成物は、本発明のオルガノゾル組成物に有機溶剤(S)を添加すること等により調製することができる。
【0061】
光路長が2.2mmのポリアミド製セル(日本ルフト社製、型番:110−13429、光路長2.2mmポリアミドセル)内に合計固形分濃度が5重量%のオルガノゾル(試料)を約0.3ml入れ(セルの底から試料を約20mm充填する)、該セルを遠心分離を行いながら赤外透過率を測定できる分散安定性分析装置(日本ルフト社製、商品名「Lumisizer611」)にセットする。
その後、遠心分離を行いながら、該セルの底(下部)から0〜25mmの範囲で、合計固形分濃度が試料を透過する赤外光強度I1を測定し、入射赤外光(波長:870nm、強度:I0)に対する赤外透過率〔I1/I0×100〕を算出する。
赤外透過率は、測定開始から、10秒間隔で400回、合計4000秒間の測定を行う。
遠心分離は、25℃で2300Gの遠心力を与えながら行う。
【0062】
(飽和赤外透過率の変化率の算出方法)
飽和赤外透過率の変化率は、4000秒間測定した前後での赤外透過率がどれだけ変化したかを表わす変化率である。式で表わすと
飽和赤外透過率の変化率(%)=(|測定終了時の赤外透過率−測定開始時の赤外透過率|)/測定開始時の赤外透過率×100
である。
飽和赤外透過率の変化率の算出において、赤外光強度は、セルの中央部(上記分散安定性分析装置の回転中心からの距離が120mmの位置)で測定した値を用いる。
【0063】
(赤外透過率の平均変化率の算出方法)
赤外透過率の平均変化率は、上記赤外光強度の測定結果より、測定開始時から終了時までの各測定時間で、X軸に回転中心からの距離、Y軸に赤外透過率をプロットしたグラフをそれぞれ作成し、試料の液面上部から下部までの部分の測定開始時から終了時までに囲われた部分の面積をそれぞれ算出し合計する。これを測定開始時から終了時までの4000秒間の赤外透過光量の変化量とし、1時間当たりの変化量として算出した値を赤外透過率の平均変化率(%/時)とする。
【0064】
また本発明のPTFE粒子のオルガノゾル組成物は、PTFE粒子(A)とポリマー(B)と有機溶剤(S)を含むオルガノゾル組成物であって、
(1)ポリマー(B)が有機溶剤(S)に可溶であり、
(2)超音波減衰スペクトルの傾きが+0.5以上のものである。
但し、超音波減衰スペクトルは、固形分濃度が12質量%のオルガノゾル組成物について、超音波減衰法を用いて3〜100MHzの周波数で測定した減衰率から求めるものである。
【0065】
上記超音波減衰スペクトルの傾きが+0.5以上のものであると、分散安定性が良好となり、2次凝集したPTFE粒子が目に見えて沈殿することなく、良好な貯蔵状態が継続できる。
PTFEの1次粒子が凝集した2次粒子が多数存在すると、粒子分布は広くなり、低周波側の減衰率が大きくなるため超音波減衰スペクトルの傾きは減少する。一方PTFEの2次粒子が少なく、1次粒子が多い場合には、相対的に低周波側の減衰率は下がり、高周波側の減衰率が大きくなるため、超音波減衰スペクトルの傾きは増加する。
【0066】
超音波減衰スペクトルの傾きは、高い方が好ましく、+0.55以上がより好ましく、+0.60以上が更に好ましく、+0.65以上が特に好ましい。
【0067】
超音波減衰法は、超音波を懸濁液に照射すると、その懸濁液中の粒子が溶媒に対して相対運動を起こすが、その運動に起因する音響エネルギーの減衰率を、発振した音響エネルギーに対して測定し、その特性から粒度分布を求める方法である。超音波減衰法は、濃厚溶液の平均粒径、分布パターンの測定に最適な方法である。また、超音波減衰法を用いた粒度分布測定装置としては、日本ルフト社製の商品名DT−1200等が挙げられる。
【0068】
上記超音波減衰法は、測定チャンバー上部から測定用の懸濁液を注ぎ、基本的には循環させながら行われ、必要に応じて、循環速度を変更できる。また、沈降物の発生がほとんど無いスラリーでは循環を止めて測定される。
上記超音波減衰法は、一方に設置された振動子から3〜100MHzの超音波をチャンバー中の懸濁液に照射し、他方に設置された振動子でこれを受信して、超音波が懸濁液中を伝播する間に減衰した割合(減衰率)を複数の設定された周波数毎に測定することで減衰率曲線が得られる。この曲線を超音波減衰スペクトルと呼ぶ。この超音波減衰スペクトルの形状、傾きから分散状態や粒子分布状態を算出、評価する方法である。
上記超音波減衰法の具体的な測定方法については、「色材、75〔11〕,530−537(2002)武田真一著、岡山大学」に記載されているのと同様に測定できる。
【0069】
具体的には、超音波減衰スペクトルの傾きは、下記の方法に従って算出する。
まず、合計固形分濃度(PTFE粒子(A)とポリマー(B))が12重量%のオルガノゾル組成物(試料)を調製する。
合計固形分濃度が12重量%のオルガノゾル組成物は、本発明のオルガノゾル組成物に有機溶剤(S)を添加すること等により調製することができる。
次に、超音波方式粒度分布測定装置(例えば、日本ルフト社製、商品名DT−1200)の測定チャンバー上部から試料を注ぎ、3〜100MHzの間で下記設定された周波数毎に減衰率を測定する。
設定周波数は、3.0MHz、3.7MHz、4.5MHz、5.6MHz、6.8MHz、8.4MHz、10.3MHz、12.7MHz、15.6MHz、19.2MHz、23.5MHz、28.9MHz、35.5MHz、43.7MHz、53.6MHz、81.0MHz、99.5MHzである。
測定は、脱気した試料を用いる。脱気操作は、減圧できる装置の中で試料を数回減圧−常圧を繰り返した後に、数時間静置しても良いし、減圧下超音波を試料にあてながらまたは攪拌して脱気した後に、数時間静置しても良い。測定は複数回行い、各測定点で前回測定との誤差が5%以内となれば測定を終了し、最終回の測定値を採用する。各測定点の値からx軸にlog10(周波数(MHz))を、y軸に減衰率(dB/cm/MHz)をプロットしグラフを作成する。この各測定点から最小2乗法により1次の近似曲線(回帰直線)を算出し、この直線の傾きの値を超音波減衰スペクトルの傾き(dB/cm/(MHz))とする。
【0070】
本発明のオルガノゾル組成物はいずれも、固形分中のPTFE粒子(A)の含有量は、特に制限は無いが、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは50質量%以上である。
より好ましいPTFE粒子の含有量は、60質量%以上であり、さらには80質量%以上である。またオルガノゾル製造時の攪拌のせん断力によるPTFEの繊維化によるPTFEの凝集を防ぐ点から、95質量%以下、さらには80質量%以下が好ましい。
また、本発明のオルガノゾル組成物における固形分(PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計)の濃度は、オルガノゾル組成物の用途や製造条件に応じて適宜選定すればよいが、通常1〜40質量%、さらには5〜20質量%の範囲から選定することが好ましい。本発明のいずれのオルガノゾル組成物においても、PTFE粒子(A)、ポリマー(B)、有機溶剤(S)としては上述したものと同じである。
【0071】
本発明のオルガノゾル組成物は、超音波減衰スペクトルの傾きが+0.50以上であり、かつ飽和赤外透過率の変化率が5.0%以下のものであることも好ましい。
また、本発明のオルガノゾル組成物はいずれも、PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計固形分濃度が5質量%の状態において、48時間後のPTFE粒子の沈降率が60%以下であることが好ましい。
【0072】
本発明のオルガノゾル組成物はいずれも、特にリチウム電池の電極の製造に使用する場合など、水分の存在を嫌う分野および目的に使用する場合は、実質的に無水であることが好ましい。具体的には、水分含有量(例えば、カール−フィッシャー法により測定することができる)が、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは800ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、特に好ましくは350ppm以下、最も好ましくは100ppm以下であることが好ましい。
【0073】
つぎに本発明のオルガノゾル組成物の各成分の組合せとして特に好ましい例をあげるが、本発明はこれらの組合せに限定されるものではない。
【0074】
例1
(A)PTFE粒子
SSG:2.130〜2.200
変性の有無:無
フィブリル形成性:無
(B)ポリマー
種類:VdF系重合体、特にPVdF、テトラフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド共重合体(VT)及びTFE−HFP−VdF共重合体(THV)からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。より好ましくは、VT及びTHVからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である。
(C)非フッ素系有機溶剤
種類:アミド系溶剤、特にNMP、DMAC
固形分濃度:5〜20質量%
水分含有量:100ppm以下
【0075】
本発明はまた、有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)のオルガノゾル組成物の製造方法にも関する。上述した本発明のPTFE粒子(A)のオルガノゾル組成物はいずれも、当該製造方法により製造したものであることが好ましい。
【0076】
本発明の製造方法は、
有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)の水性分散体と、有機溶剤(S)に可溶なポリマー(B)の水性分散体を混合する工程(I)、
得られた混合水性分散体に、水に可溶な凝析用有機溶剤(D)を添加して有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)およびポリマー(B)を凝析させる工程(II)、
得られた有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)およびポリマー(B)の含水凝析物(E)と液層とを分離する工程(III)、
得られた含水凝析物(E)と有機溶剤(S)を混合し、撹拌して含水凝析物(E)を分散させる工程(IV)、および
得られた含水有機分散体(F)から水分を除去する工程(V)
を含む有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)のオルガノゾル組成物の製造方法である。
【0077】
有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)としては、PTFE粒子のほか、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)粒子、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)粒子などがあげられる。なかでも、PTFE粒子が好ましい。
【0078】
以下、各工程について、有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)の代表例としてPTFE粒子(A)を用いた場合について説明する。
【0079】
(I)混合工程
PTFE粒子(A)の水性分散体としては、乳化重合で得られたPTFEの一次粒子(粒子径50〜500nm)の水性分散体が好ましく、固形分濃度は10〜40質量%の範囲が好ましい。ポリマー(B)の水性分散体としては、粒子径が50〜500nm程度の水性分散体が好ましく、固形分濃度は10〜40質量%の範囲が好ましい。
【0080】
2つの水性分散体の混合は、PTFE粒子(A)が繊維化するような強い攪拌をしないほかは通常の混合方法でよい。
【0081】
(II)凝析工程
凝析工程(II)で使用する水に可溶な凝析用有機溶剤(D)は、有機溶剤(S)と同じであっても異なっていてもよい。凝析用有機溶剤(D)としては、たとえばケトン系溶剤、アルコール系溶剤などが挙げられ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが;アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなど、沸点が比較的低い有機溶媒が好ましくあげられる。
【0082】
また、凝析用有機溶剤(D)として有機溶剤(S)を使用する場合であっても、凝析工程(II)と分散工程(IV)でそれぞれ使用する具体的な有機溶剤としては、異なる有機溶剤を採用してもよい。
【0083】
好ましい凝析用有機溶剤(D)としては、たとえばケトン系溶剤、アルコール系溶剤があげられ、なかでもアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤が、沸点が比較的低く蒸留等により除去が容易な点から特に好ましい。
【0084】
凝析用有機溶剤(D)の添加量は、PTFE粒子(A)およびポリマー(B)の実質的に全量が凝析する量であれば特に制限されない。たとえばPTFE粒子(A)およびポリマー(B)の水性分散体混合物100質量部に対して10〜1000質量部程度でよい。
【0085】
また、凝析工程(II)において、次の分離工程(III)を容易に行うために炭化水素系溶剤(G)を添加することが好ましい。炭化水素系溶剤(G)としては、たとえばベンゼン、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなど比較的沸点の低い炭化水素系溶剤が例示できる。添加量は、PTFE粒子(A)およびポリマー(B)の水性分散体混合物100質量部に対して1〜100質量部程度でよい。
【0086】
(III)分離工程
この分離工程では、含水凝析物(E)と液状成分(凝析用有機溶剤(D)、炭化水素系溶剤、水など)を単に分離して、固形分(含水凝析物(E))を回収するだけである。したがって、分離回収した凝析物には水分が残存しており、含水凝析物(E)となっている。
【0087】
分離の方法は特に限定されないが、上記のように精度の高い分離は要求されないので、通常のろ過方法、上澄み液除去方法などが採用できる。なかでも、簡便であることから、ろ過方法が好ましい。
【0088】
(IV)分散工程
得られた含水凝析物(E)を本発明のオルガノゾル組成物の1成分である有機溶剤(S)に分散させて含水有機分散体(F)を得る工程である。分散方法は、PTFE粒子(A)が繊維化するような強い攪拌をしないほかは通常の分散混合方法でよい。好ましい分散混合方法としては、機械的撹拌法、超音波撹拌法などがあげられる。
【0089】
本発明においては、分離工程(III)と分散工程(IV)の間で特に乾燥(水分も含めて液体の乾燥除去)を必要としない。一方、特許文献8では、回収した凝析物を一旦乾燥させてから有機溶剤に分散させており、この方法ではPTFE一次粒子が繊維化したり二次凝集を起こしたりして、高PTFE含有量で安定したオルガノゾル組成物は得られない。
【0090】
(V)水分除去工程
水分除去工程(V)は、含水有機分散体(F)から水分を除去する工程である。電池の分野など、水分の混入を嫌う分野に使用する場合に、行うことが好ましい。この工程では、従来周知の方法により、用途や目的に応じた水分含有量になるまで水分を除去する。具体的には、水と共沸可能な有機溶媒(H)を添加して加熱することにより水分を有機溶媒(H)と共に除去する方法、水よりも沸点の高い有機溶剤(S)を分散溶媒として用い、これを蒸留または濃縮することで水分を除去する方法、水分を吸収するろ過可能な固体を分散ろ過して水分を除去する方法などが例示できる。
【0091】
好ましい水分除去方法は水と共沸可能な有機溶媒(H)を添加して加熱する方法である。有機溶媒(H)としては、たとえばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素系溶媒;メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶媒;1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒などがあげられ、その添加量は特に制限はないが、分散工程(IV)で得られた溶液100質量部に対して1〜50質量部程度でよい。加熱温度は有機溶媒(H)と水との共沸点によって適宜選定すればよい。
【0092】
水分の除去の程度は、特にリチウム電池やキャパシタの電極の製造に使用する場合など、水分の存在を嫌う分野および目的に使用する場合は、実質的に無水であることが好ましい。具体的には、水分含有量(例えば、カール−フィッシャー法により測定することができる)が、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは800ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、特に好ましくは350ppm以下、最も好ましくは100ppm以下であることが好ましい。
【0093】
そのほか、本発明のオルガノゾル組成物を製造可能な方法として、たとえば、PTFE粒子(A)の水性分散体と、有機溶剤(S)に可溶なポリマー(B)の水性分散体を混合した後に有機溶剤(S)と水と共沸可能な有機溶媒(H)を添加して加熱蒸留することにより水分と有機溶媒(H)を除去した後、樹脂固形分濃度を調整する方法などが考えられる。
【0094】
本発明のオルガノゾル組成物の製造方法において、上記有機溶剤(S)は上述したものと同じである。有機溶剤(S)は、非フッ素系有機溶剤(C)であることが好ましい。
【0095】
本発明のオルガノゾル組成物の製造法について、PTFE粒子を代表として説明したが、PTFE粒子だけではなく有機溶剤に実質的に溶けないパーフルオロ粒子であれば同様にして適応可能であり、たとえばFEP粒子やPFA粒子などを含む水性分散体を用いても同様にオルガノゾル組成物を製造できる。
【0096】
本発明のオルガノゾル組成物は、PTFE粒子を多量にしかも安定した形で含んでおり、広い分野で多くの用途に有用である。
【0097】
たとえば、電池の分野では、本発明のオルガノゾル組成物がNMPに分散しているため、リチウム二次電池や電気二重層キャパシタの正極や負極作製用の電極合剤スラリーにおけるバインダー成分として、また、電極に撥水性を与える混合剤として有用である。
【0098】
塗料の分野では、滑り性、耐汚染性、耐腐食性、低屈折率性などに優れた塗膜を与える被覆材として有用である。
【0099】
樹脂成形の分野では、熱可塑性・熱硬化性重合体、エラストマーにブレンドしてその難燃性、摺動性、撥水・撥油性、耐汚染性、耐腐食性、耐候性、電気特性、粘度などを改質する改質材として、また、白色顔料として有用である。
【0100】
例えば、樹脂添加剤、封止剤、低誘電率や誘電損失低減が求められるプリント基板材料、非粘着性が要求されるような複写機やプリンターなどOA機器用ベルト、特に転写ベルトや転写・定着ベルトに有用である。
【実施例】
【0101】
つぎに実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
実施例および比較例における測定方法は以下のものを採用した。
【0103】
(1)水性分散体またはオルガノゾルの固形分濃度
シャーレに10gのPTFEなどの水性分散体またはオルガノゾルを採取し、150℃にて約3時間加熱した後に秤量した固形分の質量から、上記水性分散体またはオルガノゾルの質量と固形分の質量との割合として算出する。
【0104】
(2)平均粒子径
PTFE水性分散体を固形分0.15質量%に調整してセルに入れ、550nmの光を入射したときの透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して算出した数平均一次粒子径との相関を検量線にまとめ、得られた検量線と各試料について測定した上記透過率とから決定する。
【0105】
(3)標準比重[SSG]
ASTM D 4895−89に準拠して、水中置換法に基づき測定する。
【0106】
(4)ポリマー融点
DSC装置(SEIKO社製)により、試料3mgを測定し、10℃/分の昇温速度で融点以上まで昇温させた後、同速度で冷却の後、同速度で昇温させたセカンドランの融解ピークを読み取り融点とする。
【0107】
(5)固体NMRによるオルガノゾル組成物中のPTFE粒子(A)とポリマー(B)の組成比の測定
オルガノゾル組成物またはオルガノゾル組成物の調製時の分離工程(III)で得た含水凝析物(E)を120℃で真空乾燥し、得られた試料を固体NMR装置(BRUKER社製)で測定し、得られたスペクルのPTFE由来ピークとポリマー(B)由来ピークの面積比に基づいて算出する。
【0108】
(6)オルガノゾル組成物の赤外透過率の測定方法(分散安定性)
光路長が2.2mmのポリアミド製セル(日本ルフト社製 型番110−13429、光路長2.2mmポリアミドセル)内に該オルガノゾルを0.3ml入れ(セルの底から試料は約20mm充填される)、該セルを分散安定性分析装置(日本ルフト社製、商品名「Lumisizer611」)にセットし、遠心分離を行いながら、該セルの下部から0〜25mmの範囲を、赤外光(強度:I0)の入射に対する、懸濁液を透過する赤外光強度I1を測定し、測定毎に赤外透過率(I1/I0×100)を測定した。
遠心分離は25℃で2300Gの遠心力を与えることができる回転数(4000rpm)で行い、赤外透過率は10秒間隔で400回測定を行った。飽和赤外透過率の変化率を測定する場合の赤外光を測定する位置は回転中心からの距離が120mmで、光路長2.2mmの赤外透過率から、式(測定終了時の赤外透過率−測定開始時の赤外透過率)/測定開始時の赤外透過率×100(%)で算出した。
赤外透過率の平均変化率は、赤外光強度の測定結果より、測定開始時から終了時までの各測定時間で、X軸に回転中心からの距離、Y軸に赤外透過率をプロットしたグラフをそれぞれ作成し、試料の液面上部から下部までの部分の測定開始時から終了時までに囲われた部分の面積をそれぞれ算出し合計する。これを測定開始時から終了時までの4000秒間の赤外透過光量の変化量とし、1時間当たりの変化量として算出した値を赤外透過率の平均変化率(%/時)とする。
【0109】
(7)オルガノゾル組成物の超音波減衰スペクトルの測定方法
下記実施例及び比較例で調製したPTFEオルガノゾル組成物の一部を取り、NMPで希釈して固形分濃度が12質量%のオルガノゾルを、超音波減衰法粒度分布測定装置(日本ルフト社製、商品名DT−1200)で測定し、超音波減衰スペクトルを得た。
3〜100MHzの間で下記設定した周波数毎に上記DT−1200で減衰率を測定した。設定した周波数は、3.0MHz、3.7MHz、4.5MHz、5.6MHz、6.8MHz、8.4MHz、10.3MHz、12.7MHz、15.6MHz、19.2MHz、23.5MHz、28.9MHz、35.5MHz、43.7MHz、53.6MHz、81.0MHz、99.5MHz。測定は脱気した試料を用いて複数回行い、各測定点で前回測定との誤差が5%以内となれば測定を終了し最終回の測定値を採用した。脱気は、減圧できる装置の中に試料を入れ、数回減圧−常圧を繰り返した後に数時間静置して行った。各測定点の値からx軸にlog10(周波数)を、y軸に減衰率(dB/cm/MHz)をプロットしグラフを作成した。この各測定点の値を用いて最小2乗法により1次の近似曲線(回帰直線)を求め、この直線の傾きから「超音波減衰スペクトルの傾き」を算出した。
【0110】
調製例1(PTFE粒子の水性分散体の調製)
内容積6Lの攪拌機付きSUS製重合槽に、乳化剤CFOCF(CF)CFOCF(CF)COONHを0.15質量%濃度に調整した純水3500gと粒状パラフィンワックス100gを入れて密閉した。真空窒素置換後、槽内を真空引きした。その後、85℃、265rpmで撹拌しながら、槽内にテトラフルオロエチレン(TFE)を0.7MPaGまで仕込んだ。次に、ジコハク酸過酸化物(DSP)525mgを溶かした水溶液20gを窒素で槽内に圧入した。反応管の途中に液が残らないよう、水20gを再び窒素で圧入し配管を洗浄した。その後、TFE圧を0.8MPaにして撹拌を265rpm、内温を85℃に保った。DSP導入から1時間後に、過硫酸アンモニウム(APS)19mgを20gの純水に溶かし、これを窒素で圧入した。反応管の途中に液が残らないよう、水20gを再び窒素で圧入し配管を洗浄した。槽内圧力を0.8MPaに保持するように、TFEを追加して仕込んだ。追加モノマーが1195gになった時点で攪拌を停止し、槽内ガスをブローして、反応を終了した。槽内を冷却して、内容物をポリ容器に回収し、PTFE(以下、「PTFE−1」という)粒子の水性分散体を得た。乾燥質量法による水性分散体の固形分濃度は31.4質量%であった。また、水性分散体の平均一次粒子径は0.29μmであった。
【0111】
標準比重および融点を測定するため、得られたPTFE−1粒子の水性分散体500mlを脱イオン水で固形分濃度が約15質量%となるように希釈し、硝酸を1ml加え、凝固するまで激しく撹拌して凝析し、得られた凝集物を145℃で18時間乾燥し、PTFE−1粉末を得た。得られたPTFE−1粉末を用いて標準比重〔SSG〕を測定したところ、2.189であった。DSCにより分析した融点は326.9℃であった。
【0112】
調製例2(TFE−ヘキサフルオロプロペン(HFP)−VdF共重合体の水性分散体の調製)
内容積3Lの攪拌機付きSUS製重合槽に、F(CFCOONHが3300ppmで、かつCH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONHが200ppm濃度の純水を入れて密閉した。真空窒素置換後、槽内を真空引きし、連鎖移動剤としてのエタンをシリンジで400cc相当量を真空吸引しながら仕込んだ。その後、70℃、450rpmで撹拌しながら、槽内にVdF/TFE/HFP組成比が50/38/12モル%の混合ガスモノマーを、0.39MPaGまで仕込んだ。その後、APSの137.2mgを10gの水に溶かした水溶液を窒素で圧入することで反応を開始した。反応管の途中に液が残らないよう、水10gを再び窒素で圧入した。
【0113】
槽内圧力を保持するように、VdF/TFE/HFP組成比が60/38/2モル%の混合モノマーを追加で仕込んだ。追加モノマーが346gになった時点で攪拌を低速にし、槽内ガスをブローして、反応を終了した。槽内を冷却して、1708gのVdF/TFE/HFP共重合体(以下、「THV−1」という)粒子の水性分散体を容器に回収した。乾燥質量法による水性分散体の固形分濃度は20.4質量%であった。NMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF/TFE/HFP=59.0/38.9/2.1(モル%)であり、DSCにより分析した融点は145.9℃であった。
【0114】
調製例3(PTFE粒子の水性分散体の調製)
内容積6Lの攪拌機付きSUS製重合槽に、乳化剤CFOCF(CF)CFOCF(CF)COONHを0.15質量%濃度に調整した純水3500gと粒状パラフィンワックス100gを入れて密閉した。265rpmで撹拌しながら、真空−窒素置換を数回繰り返した後、槽内を窒素圧0.3MPaGとした。次に槽内を85℃とした後に、ジコハク酸過酸化物(DSP)722mgを溶かした水溶液20gを窒素で槽内に圧入した。反応管の途中に液が残らないよう、水20gを再び窒素で圧入し配管を洗浄した。その後、撹拌を265rpm、内温を85℃に保った。DSP導入から2時間後に、槽内をテトラフルオロエチレン(TFE)で置換した後にTFEを0.7MPaGまで仕込んだ。過硫酸アンモニウム(APS)16mgを20gの純水に溶かし、これを槽内に窒素で圧入した。反応管の途中に液が残らないよう、水20gを再び窒素で圧入し配管を洗浄した。槽内圧力を0.8MPaに保持するように、TFEを追加して仕込んだ。追加モノマーが1195gになった時点で攪拌を停止し、槽内ガスをブローして、反応を終了した。槽内を冷却して、内容物をポリ容器に回収し、PTFE(以下、「PTFE−2」という)粒子の水性分散体を得た。乾燥質量法による水性分散体の固形分濃度は31.0質量%であった。また、水性分散体の平均一次粒子径は0.23μmであった。
【0115】
標準比重および融点を測定するため、得られたPTFE−2粒子の水性分散体500mlを脱イオン水で固形分濃度が約15質量%となるように希釈し、硝酸を1ml加え、凝固するまで激しく撹拌して凝析し、得られた凝集物を145℃で18時間乾燥し、PTFE−2粉末を得た。得られたPTFE−2粉末を用いて標準比重〔SSG〕を測定したところ、2.199であった。DSCにより分析した融点は327.1℃であった。
【0116】
実施例1(PTFE−1/THV−1のオルガノゾルの調製)
PTFE粒子(A)として調製例1で得たPTFE−1粒子の水性分散体の40.0gと、ポリマー(B)として調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の61.5gと、ヘキサン16gを200mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン60gを添加し、その後3分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にNMPを約150g加え5分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、NMPに均一にPTFE−1粒子が分散したオルガノゾルを120g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ18.5質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE−1/THV−1の質量比は、53/47であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0117】
実施例2(PTFE−1/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例1で得たPTFE−1粒子の水性分散体の40.0gと調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の41.0gを用いた以外は、実施例1と同様にオルガノゾルを調製し、NMPに均一にPTFE−1粒子が分散したオルガノゾルを145g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ12.5質量%であった。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0118】
実施例3(PTFE−1/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例1で得たPTFE−1粒子の水性分散体の40.0gと調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の15.4gを用いた以外は、実施例1と同様にオルガノゾルを調製し、NMPに均一にPTFE−1粒子が分散したオルガノゾルを72g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ19.5質量%であった。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE−1/THV−1の質量比は、81/19であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0119】
実施例4(PTFE−1/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例1で得たPTFE−1粒子の水性分散体の40.0gと調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の10.4gを用いた以外は、実施例1と同様にオルガノゾルを調製し、NMPに均一にPTFE−1粒子が分散したオルガノゾルを50g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ27.1質量%であった。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0120】
実施例5(PTFE−1/THV−1のオルガノゾルの調製)
NMPに代えてDMACを約150g用いた以外は、実施例2と同様にオルガノゾルを調製し、DMACに均一にPTFE−1粒子が分散したオルガノゾルを110g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ16.7質量%であった。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。また、このオルガノゾルを静置し目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0121】
実施例6(PTFE−2/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の40.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の41.0gと、ヘキサン16gを200mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン90gを添加し、その後4分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にジメチルアセトアミド(DMAC)を約190g加え30分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、DMACに均一にPTFE粒子が分散したオルガノゾルを158g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ12.0質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE−2/THV−1の質量比は、61/39であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0122】
実施例7(PTFE−2/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の41.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の41.0gと、ヘキサン19gを200mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン95gを添加し、その後4分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にDMACを約190g加え30分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、DMACに均一にPTFE粒子が分散したオルガノゾルを162g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ12.0質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE−2/THV−1の質量比は、60/40であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0123】
実施例8(PTFE−2/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の41.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の41.0gと、ヘキサン19gを200mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン95gを添加し、その後4分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にNMPを約190g加え30分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、NMPに均一にPTFE粒子が分散したオルガノゾルを162g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ12.0質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE−2/THV−1の質量比は、61/39であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0124】
参考例1(PTFE−1/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例1で得たPTFE−1粒子の水性分散体の10.0gと調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の61.5gを用いた以外は、実施例1と同様にオルガノゾルを調製し、NMPに均一にPTFE−1粒子が分散したオルガノゾルを70g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ20.1質量%であった。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。この結果から、本発明の製造方法によれば、PTFE−1粒子の含有量が低い場合であっても、安定性に優れたオルガノゾルを製造できることが分かる。
【0125】
比較例1(凍結凝析法による凝析)
調製例1で得たPTFE−1粒子の水性分散体の5.9gと調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の35.0gを混合し、PTFE−1粒子とTHV−1粒子を20:80の質量比で含む混合水性分散体を得た。この混合水性分散体を冷凍庫中、−20℃で終夜貯蔵して冷凍し、凍結した混合物を室温で溶かし、濾過して、固体粒子を分離し、混合水性分散体の水と等量の70℃の脱イオン水で3回洗浄し、洗浄した固体粒子を90℃で16時間乾燥させることによって、PTFE−1粒子とTHV−1粒子を凝析分離した。得られた乾燥混合物は、ゴム質の白色固体であった。この乾燥混合物をNMPに分散して固形分濃度20質量%のオルガノゾルを調製した。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、350ppmであった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日後に分離した層や粒子は観察されなかった。
【0126】
比較例2(凍結凝析法による凝析)
比較例1において、調製例1で得たPTFE−1粒子の水性分散体の20.0gと調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の30.8gを混合して得たPTFE−1粒子とTHV−1粒子の50:50(質量比)で含む混合水性分散体を用いたほかは、比較例1と同様に凍結凝析と乾燥を行い、得られた乾燥混合物(ゴム質の白色固体)をNMPに分散して固形分濃度20質量%のオルガノゾルを調製したが、非常に粘張なゲル状の液体となった。このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日後に明確な分離層は観察されなかったが、目視で識別できる大きさの粒子が観察された。
【0127】
比較例3(凍結凝析法による凝析)
比較例1において、調製例1で得たPTFE−1粒子の水性分散体の30.0gと調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の11.0gを混合して得たPTFE−1粒子とTHV−1粒子の80:20(質量比)で含む混合水性分散体を用いたほかは、比較例1と同様に凍結凝析と乾燥を行い、得られた乾燥混合物(ゴム質の白色固体)をNMPに分散して固形分濃度20質量%のオルガノゾルを調製したが、非常に粘張な液体となった。また、このオルガノゾルを静置し目視で観察したところ、10日後に明確な分離層は観察されなかったが、目視で識別できる大きさの粒子が多数観察された。
【0128】
試験例1(分散貯蔵安定性)
実施例1、3、比較例2、3でそれぞれ調製したPTFEオルガノゾルの一部を取り、NMPで希釈して固形分濃度が2質量%、5質量%および10質量%のオルガノゾルを調製した。これらのオルガノゾルに超音波照射を30分間行った後、48時間静置した。また、それぞれの上澄み液を取り、それぞれの固形分濃度を測定し、PTFE粒子の沈降率を算出した。結果を表1に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
調製例4(PVdFの水性分散体の調製)
内容積3Lの攪拌機付きSUS製重合槽に、F(CFCOONHが3300ppmで、かつCH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONHが200ppm濃度の純水を入れて密閉した。槽内を真空窒素置換後、真空引きし、連鎖移動剤としてのエタンをシリンジで48cc相当量を真空吸引しながら仕込んだ。その後、80℃、450rpmで撹拌しながら、槽内にVdFガスモノマーを、1.4MPaGまで仕込んだ。その後、APSの205.8mgを10gの水に溶かした水溶液を窒素で圧入することで反応を開始した。反応管の途中に液が残らないよう、水10gを再び窒素で圧入した。
【0131】
槽内圧力を保持するように、VdFガスモノマーを追加で仕込んだ。追加モノマーが241gになった時点で攪拌を低速にし、槽内ガスをブローして、反応を終了した。槽内を冷却して、1595gのPVdF粒子の水性分散体を容器に回収した。乾燥重量法による水性分散体の固形分濃度は15.8質量%であった。NMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF=100.0(モル%)であり、DSCにより分析した融点は162.8℃であった。
【0132】
実施例9(PTFE/PVdFのオルガノゾルの調製)
PTFE粒子(A)として調製例3で得たPTFE粒子の水性分散体の40.0gと、ポリマー(B)として調製例4で得たPVdF粒子の水性分散体の79.5gと、ヘキサン16gを500mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン95gを添加し、その後10分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にNMPを約250g加え5分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、NMPに均一にPTFE粒子が分散したオルガノゾルを164g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ14.4質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE/PVdFの質量比は、50/50であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0133】
調製例5(TFE−VdF共重合体の水性分散体の調製)
内容積3Lの攪拌機付きSUS製重合槽に、F(CFCOONHが3300ppmで、かつCH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONHが200ppm濃度の純水を入れて密閉した。真空窒素置換後、槽内を真空引きし、連鎖移動剤としてのエタンをシリンジで400cc相当量を真空吸引しながら仕込んだ。その後、70℃、450rpmで撹拌しながら、槽内にVdF/TFE組成比が67/33モル%の混合ガスモノマーを、0.39MPaGまで仕込んだ。その後、APSの137.2mgを10gの水に溶かした水溶液を窒素で圧入することで反応を開始した。反応管の途中に液が残らないよう、水10gを再び窒素で圧入した。
【0134】
槽内圧力を保持するように、VdF/TFE組成比が67/33モル%の混合モノマーを追加で仕込んだ。追加モノマーが346gになった時点で攪拌を低速にし、槽内ガスをブローして、反応を終了した。槽内を冷却して、1708gのVdF/TFE共重合体(以下、「TV−1」という)粒子の水性分散体を容器に回収した。乾燥質量法による水性分散体の固形分濃度は20.4質量%であった。NMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF/TFE=67.0/33.0(モル%)であり、DSCにより分析した融点は145.9℃であった。
【0135】
実施例10(PTFE−2/TV−1のオルガノゾルの調製)
PTFE粒子(A)として調製例3で得たPTFE粒子の水性分散体の40.0gと、ポリマー(B)として調製例5で得たTV−1粒子の水性分散体の60.7gと、ヘキサン16gを500mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン95gを添加し、その後10分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にNMPを約250g加え5分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、NMPに均一にPTFE粒子が分散したオルガノゾルを164g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ14.4質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE/TV−1の質量比は、50/50であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0136】
実施例11(PTFE−2/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の15.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の52.8gと、ヘキサン19gを500mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン90gを添加し、その後10分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にNMPを約160g加え30分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、NMPに均一にPTFE粒子が分散したオルガノゾルを112g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ13.0質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE−2/THV−1の質量比は、30/70であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0137】
実施例12(PTFE−2/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の20.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の45.3gと、ヘキサン19gを500mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン90gを添加し、その後10分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にNMPを約160g加え30分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、NMPに均一にPTFE粒子が分散したオルガノゾルを113g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ13.0質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE−2/THV−1の質量比は、40/60であった。また、このオルガノゾルを静置し目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0138】
実施例13(PTFE−2/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の40.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の60.7gと、ヘキサン19gを500mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン105gを添加し、その後10分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にNMPを約250g加え30分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、NMPに均一にPTFE粒子が分散したオルガノゾルを176g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ12.5質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE−2/THV−1の質量比は、50/50であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0139】
実施例14(PTFE−2/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の50.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の19.1gと、ヘキサン19gを500mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン80gを添加し、その後10分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にNMPを約195g加え30分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、NMPに均一にPTFE粒子が分散したオルガノゾルを132g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ14.0質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE−2/THV−1の質量比は、80/20であった。また、このオルガノゾルを静置し目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0140】
実施例15(PTFE−2/THV−1のオルガノゾルの調製)
調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の40.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の60.7gと、ヘキサン19gを500mLビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン105gを添加し、その後10分間攪拌した。攪拌終了後、生じた凝析物と水を主成分とする上澄み液をろ過により分離した。残った含水凝析物にDMACを約250g加え30分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで水分を除去し、DMACに均一にPTFE粒子が分散したオルガノゾルを176g得た。このオルガノゾルの固形分濃度を測定したところ13.3質量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、100ppm以下であった。固体NMRの測定によるPTFE−2/THV−1の質量比は、50/50であった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日以上経っても分離した層や粒子は観察されなかった。
【0141】
比較例4(凍結凝析法による凝析)
調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の20.0gと調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の30.8gを混合し、PTFE−2粒子とTHV−1粒子を50:50の質量比で含む混合水性分散体を得た。この混合水性分散体を冷凍庫中、−20℃で終夜貯蔵して冷凍し、凍結した混合物を室温で溶かし、濾過して、固体粒子を分離し、混合水性分散体の水と等量の70℃の脱イオン水で3回洗浄し、洗浄した固体粒子を90℃で16時間乾燥させることによって、PTFE−2粒子とTHV−1粒子の混合物を凝析、分離、乾燥した。得られた乾燥混合物は、ゴム質の白色固体であった。この乾燥混合物をNMPに分散して固形分濃度12質量%のオルガノゾルを調製した。溶解は、メカニカルスターラーを用いて行い、攪拌時間は30分間で行った。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、350ppmであった。また、このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日後に明確な分離層が観察された。目視で識別できる大きさの粒子の沈殿が作成時から多数観察された。
【0142】
比較例5(凍結凝析法による凝析)
比較例4において、調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の30.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の11.0gを混合して得たPTFE−1粒子とTHV−1粒子を80:20(質量比)で含む混合水性分散体を用いたほかは、比較例4と同様に凍結凝析と乾燥を行い、得られた乾燥混合物(ゴム質の白色固体)をNMPに分散して固形分濃度12質量%のオルガノゾルを調製したが、作成時から相分離して均一な分散体が得られなかった。
【0143】
比較例6(凍結凝析法による凝析)
比較例4において、調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の20.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の30.8gを混合して得たPTFE−2粒子とTHV−1粒子を50:50(質量比)で含む混合水性分散体を用いたほかは、比較例4と同様に凍結凝析と乾燥を行い、得られた乾燥混合物(ゴム質の白色固体)をDMACに分散して固形分濃度12質量%のオルガノゾルを調製したが、非常に粘張なゲル状の液体となった。このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日後に分離層が観察された。目視で識別できる大きさの粒子の沈殿が作成時から多数観察された。
【0144】
比較例7(凍結凝析法による凝析)
比較例4において、調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の20.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の45.3gを混合して得たPTFE−2粒子とTHV−1粒子を40:60(質量比)で含む混合水性分散体を用いたほかは、比較例4と同様に凍結凝析と乾燥を行い、得られた乾燥混合物(ゴム質の白色固体)をDMACに分散して固形分濃度12質量%のオルガノゾルを調製したが、非常に粘張なゲル状の液体となった。このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日後に分離層が観察された。目視で識別できる大きさの粒子の沈殿が作成時から多数観察された。
【0145】
比較例8(凍結凝析法による凝析)
比較例4において、調製例3で得たPTFE−2粒子の水性分散体の15.0gと、調製例2で得たTHV−1粒子の水性分散体の52.8gを混合して得たPTFE−2粒子とTHV−1粒子を30:70(質量比)で含む混合水性分散体を用いたほかは、比較例4と同様に凍結凝析と乾燥を行い、得られた乾燥混合物(ゴム質の白色固体)をDMACに分散して固形分濃度12質量%のオルガノゾルを調製したが、非常に粘張なゲル状の液体となった。このオルガノゾルを静置し、目視で観察したところ、10日後に分離層が観察された。目視で識別できる大きさの粒子の沈殿が作成時から多数観察された。
【0146】
試験例2
実施例11〜13、比較例4、7、8でそれぞれ調製したPTFEオルガノゾルの一部を取り、NMPで希釈して固形分濃度が5質量%のオルガノゾルを調製した。これらのオルガノゾルの試験を分散安定性分析装置(日本ルフト社製、商品名「Lumisizer611」)を用いて上述のように行った。結果を表2に示す。
【0147】
試験例3
実施例11〜14、比較例4、7、8でそれぞれ調製したPTFEオルガノゾルの一部を取り、NMPで希釈して固形分濃度が12質量%のオルガノゾルを調製した。これらのオルガノゾルの試験を超音波減衰法粒度分布測定装置(日本ルフト社製、商品名DT−1200)を用いて上述のように行った。結果を表3に示す。
【0148】
【表2】

【0149】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTFE粒子(A)とポリマー(B)と有機溶剤(S)を含むオルガノゾル組成物であって、
(1)ポリマー(B)が有機溶剤(S)に可溶であり、
(2)PTFE粒子(A)の含有量が、PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計量の50質量%以上であり、
(3)PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計固形分濃度が5質量%の状態において、48時間後のPTFE粒子の沈降率が60%以下である
PTFE粒子のオルガノゾル組成物。
【請求項2】
PTFE粒子(A)とポリマー(B)と有機溶剤(S)を含むオルガノゾル組成物であって、
(1)ポリマー(B)が有機溶剤(S)に可溶であり、
(2)超音波減衰スペクトルの傾きが+0.50以上である
PTFE粒子のオルガノゾル組成物。
但し、超音波減衰スペクトルは、固形分濃度が12質量%のオルガノゾル組成物について、超音波減衰法を用いて3〜100MHzの周波数で測定した減衰率から求めるものである。
【請求項3】
PTFE粒子(A)とポリマー(B)と有機溶剤(S)を含むオルガノゾル組成物であって、
(1)ポリマー(B)が有機溶剤(S)に可溶であり、
(2)飽和赤外透過率の変化率が5.0%以下のものである
PTFE粒子のオルガノゾル組成物。
但し、飽和赤外透過率の変化率は、固形分濃度が5質量%のオルガノゾル組成物について、光路長を2.2mm、遠心力を2300Gとして、25℃で遠心分離を行いながら測定する赤外光強度から算出するものである。
【請求項4】
遠心分離開始から終了までの赤外透過率の平均変化率は、6.0%/時以下である請求項3に記載のPTFE粒子のオルガノゾル組成物。
【請求項5】
PTFE粒子(A)の含有量がPTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計量の30質量%以上である請求項2〜4のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項6】
PTFE粒子(A)の含有量がPTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計量の50質量%以上である請求項2〜5のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項7】
PTFE粒子(A)が、標準比重2.130〜2.230のPTFE粒子である請求項1〜6のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項8】
PTFE粒子(A)が、未変性の高分子量PTFE粒子である請求項1〜7のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項9】
有機溶剤(S)が、非フッ素系有機溶剤(C)である請求項1〜8のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項10】
有機溶剤(S)が、N−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルアセトアミドである請求項1〜9のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項11】
PTFE粒子(A)の含有量が、PTFE粒子(A)とポリマー(B)の合計量の95質量%以下である請求項1〜10のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項12】
有機溶剤(S)に可溶なポリマー(B)が、フッ化ビニリデンの単独重合体または共重合体である請求項1〜11のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項13】
リチウム電池の電極またはキャパシタ用の電極のバインダーとして用いる請求項1〜12のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項14】
有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)の水性分散体と、有機溶剤(S)に可溶なポリマー(B)の水性分散体を混合する工程(I)、
得られた混合水性分散体に、水に可溶な凝析用有機溶剤(D)を添加して有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)およびポリマー(B)を凝析させる工程(II)、
得られた有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)およびポリマー(B)の含水凝析物(E)と液層とを分離する工程(III)、
得られた含水凝析物(E)と有機溶剤(S)を混合し、撹拌して含水凝析物(E)を分散させる工程(IV)、および
得られた含水有機分散体(F)から水分を除去する工程(V)
を含む有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)である
オルガノゾル組成物の製造方法。
【請求項15】
有機溶剤(S)に不溶なフッ素系樹脂粒子(X)がPTFE粒子である請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
凝析工程(II)において使用する水に可溶な凝析用有機溶剤(D)が、ケトン系溶剤またはアルコール系溶剤である請求項14又は15記載の製造方法。
【請求項17】
凝析工程(II)において、さらに炭化水素系溶剤(G)を添加する請求項14〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
分離工程(III)における分離処理が、ろ過処理である請求項14〜17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
水分除去工程(V)において、水と共沸可能な有機溶媒(H)を共存させる請求項14〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
有機溶剤(S)が、非フッ素系有機溶剤(C)である請求項14〜19のいずれかに記載のオルガノゾル組成物の製造方法。
【請求項21】
有機溶剤(S)が、N−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルアセトアミドである請求項14〜20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
有機溶剤(S)に可溶なポリマー(B)が、フッ化ビニリデンの単独重合体または共重合体である請求項14〜21のいずれかに記載の製造方法。
【請求項23】
請求項14〜22のいずれかに記載の製造方法で製造されたPTFE粒子のオルガノゾル組成物。

【公開番号】特開2012−117031(P2012−117031A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104536(P2011−104536)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第51回電池討論会 講演要旨集(発行者:(社)電気化学会電池技術委員会、発行日:平成22年11月8日)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】