説明

含窒素芳香族化合物及び金属錯体

【課題】
酸素還元活性に優れた含窒素芳香族化合物、及びこれを含む金属錯体、並びにこれらを用いた触媒又は電極用の材料を提供すること。
【解決手段】
下記(a)及び(b)の要件を満たす芳香族化合物。
(a)配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた構造を2つ以上有する(該構造は同一でも異なっていてもよい。)。
(b)上記構造を構成する窒素原子のうち少なくとも1つが6員含窒素複素環に含まれる窒素原子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含窒素芳香族化合物、金属錯体等に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の含窒素芳香族化合物は、触媒材料や電極材料として機能することが知られており、具体的には、メラミンから合成した含窒素芳香族化合物を配位子とする金属錯体は触媒活性を示すことが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−202688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように上記含窒素芳香族化合物は、触媒材料や電極材料として有用なものであるが、触媒及び電極の高機能化のため、更に触媒活性(酸素還元活性)に優れた含窒素芳香族化合物が求められている。
【0005】
そこで本発明は、酸素還元活性に優れた含窒素芳香族化合物、及びこれを含む金属錯体、並びにこれらを用いた触媒、電極及び固体高分子形燃料電池等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、下記[1]〜[22]に示す芳香族化合物、金属錯体、変性物、組成物、触媒、電極、燃料電池用電極触媒及び固体高分子形燃料電池を提供する。更に、本発明は、下記[23]に示す本発明の芳香族化合物を合成するための原料となる化合物を提供する。
[1] 下記(a)及び(b)の要件を満たす芳香族化合物。
(a)配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた構造を2つ以上有する(該構造は同一でも異なっていてもよい。)。
(b)上記構造を構成する窒素原子のうち少なくとも1つが6員含窒素複素環に含まれる窒素原子である。
[2] 上記構造すべてにおいて、前記構造の1つを構成する窒素原子の数nと、上記構造の中心から各窒素原子までの平均距離r(Å)とが、下記式(A)で示される要件を満たす、[1]に記載の芳香族化合物。
0<r/n≦0.7 …(A)
[3] すべての上記構造において1つの構造を構成する窒素原子の数nが4以上6以下である、[1]又は[2]に記載の芳香族化合物。
[4] 上記r/nが0.2〜0.6である、[1]〜[3]のいずれかに記載の芳香族化合物。
[5] 芳香族化合物を構成する全炭素原子の質量に対する全窒素原子の質量の比が0より大きく1.1以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の芳香族化合物。
[6] 上記構造が下記一般式(1)で表される構造である、[1]〜[5]のいずれかに記載の芳香族化合物。
【化1】


[式中、mは1以上の整数である。
1a、Q1b及びQ1cは、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、Q1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。ただし、Q1a、Q1b及びQ1cのうち少なくとも1つは、6員含窒素芳香族複素環である。
1a及びZ1bは、直接結合又は連結基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、Z1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。
1a及びQ1b、Q1b及びQ1cは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。mが2以上の整数である場合、2個のQ1bは、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q1a及びQ1cは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。]
[7] 上記一般式(1)で表される構造が下記一般式(2)又は一般式(3)で表される構造である、[6]に記載の芳香族化合物。
【化2】


[式中、Q2a、Q2b、Q2c及びQ2dは、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、Q2a、Q2b、Q2c及びQ2dのうち少なくとも1つは、6員含窒素芳香族複素環である。
2a、Z2b及びZ2cは、直接結合又は連結基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2a及びQ2b、Q2b及びQ2c、Q2c及びQ2dは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q2a及びQ2dは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。]
【化3】


[式中、Q3a、Q3b、Q3c、Q3d、Q3e及びQ3fは、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、Q3a、Q3b、Q3c、Q3d、Q3e及びQ3fのうち少なくとも1つは、6員含窒素芳香族複素環である。
3a、Z3b、Z3c、Z3d及びZ3eは、直接結合又は連結基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
3a及びQ3b、Q3b及びQ3c、Q3c及びQ3d、Q3d及びQ3e、Q3e及びQ3fは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q3a及びQ3fは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。]
[8] 含窒素芳香族複素環が、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環及びこれらの環を有する多環式芳香族複素環からなる群から選ばれる環である、[6]又は[7]に記載の芳香族化合物。
[9] Q1a及びQ1b、Q1b及びQ1c、Q2a及びQ2b、Q2b及びQ2c、Q2c及びQ2d、Q3a及びQ3b、Q3b及びQ3c、Q3c及びQ3d、Q3d及びQ3e、又はQ3e及びQ3fにおける直接結合又は連結基を介して互いに結合している2つの含窒素芳香族複素環が、下記式(4−a)〜(6−d)のいずれかで表される、[6]〜[8]のいずれかに記載の芳香族化合物。
【化4】


[式中、Xは、=C(Rα)−、−N(Rβ)−、=N−、−O−、−S−又は−Se−であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Yは、−N(H)−又は=N−であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
4b、R4c、R5b、R5c、R5d、R6b、R6c、R6d、Rα及びRβは、水素原子又は置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。]
[10] Q1a及びQ1b、Q1b及びQ1c、Q2a及びQ2b、Q2b及びQ2c、Q2c及びQ2d、Q3a及びQ3b、Q3b及びQ3c、Q3c及びQ3d、Q3d及びQ3e、又はQ3e及びQ3fにおける直接結合又は連結基を介して互いに結合している2つの含窒素芳香族複素環が、下記一般式(7−a)〜(10−e)のいずれかで表される、[6]〜[8]のいずれかに記載の芳香族化合物。
【化5】


[式中、R7a〜R10eは、水素原子又は置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。]
[11] 金属原子又は金属イオンと、[1]〜[10]のいずれかに記載の芳香族化合物からなる配位子とを有する金属錯体。
[12] 金属原子又は金属イオンが、それぞれ周期表の第4周期から第6周期に属する遷移金属原子又はそのイオンである、[11]に記載の金属錯体。
[13] [1]〜[10]のいずれかに記載の芳香族化合物、及び/又は[11]若しくは[12]に記載の金属錯体と、カーボン材料及び/又は高分子材料とを含む組成物。
[14] [1]〜[10]のいずれかに記載の芳香族化合物、[11]若しくは[12]に記載の金属錯体、又は[13]に記載の組成物を、加熱、放射線照射又は放電で変性させることにより得られる変性物。
[15] 上記加熱の温度が200〜1200℃の範囲である、[14]に記載の変性物。
[16] [14]又は[15]に記載の変性物と、カーボン材料及び/又は高分子材料とを含む組成物。
[17] [1]〜[10]のいずれかに記載の芳香族化合物、[11]若しくは[12]に記載の金属錯体、[13]に記載の組成物、[14]若しくは[15]に記載の変性物、又は[16]に記載の組成物からなる触媒。
[18] [1]〜[10]のいずれかに記載の芳香族化合物、[11]若しくは[12]に記載の金属錯体、[13]に記載の組成物、[14]若しくは[15]に記載の変性物、又は[16]に記載の組成物からなる電極。
[19] [1]〜[10]のいずれかに記載の芳香族化合物、[11]若しくは[12]に記載の金属錯体、[13]に記載の組成物、[14]若しくは[15]に記載の変性物、又は[16]に記載の組成物からなる燃料電池用電極触媒。
[20] [19]に記載の燃料電池用電極触媒を用いた固体高分子形燃料電池。
[21] 固体高分子形燃料電池における高分子電解質膜が、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜である、[20]に記載の固体高分子形燃料電池。
[22] 固体高分子形燃料電池における高分子電解質膜が、陰イオン伝導性を有する高分子電解質膜である、[20]に記載の固体高分子形燃料電池。
[23] 下記一般式(11)〜(20)、(22)又は(23)で表される化合物。
【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


[式中、R11〜R20、R22、及びR23は、水素原子又は置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
11は、含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
12は、ブロモ基、クロロ基又はヨード基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
13、E20及びE22は、それぞれ独立に、水素原子又は保護基である。
16及びX17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲノ基、又はX16同士若しくはX17同士が互いに結合した直接結合である。]
なお、本明細書においては、以下に記載の置換基を示す記号は上記と同じ意味を表す。
【発明の効果】
【0007】
本発明の芳香族化合物、及びこれを含む金属錯体は、酸素還元活性に優れ、触媒又は電極として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0009】
本発明の芳香族化合物は、下記(a)の要件を満たす。
(a)配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた構造を2つ以上有する(該構造は同一でも異なっていてもよい。)。
【0010】
ここで、「配位可能な窒素原子」とは、1つの孤立電子対を有しており、金属原子あるいは金属イオンへ配位することができる窒素原子である。金属原子あるいは金属イオンへ配位する前の窒素原子は、孤立電子対をプロトンへ供与してN−H結合を形成していてもよい。
【0011】
4つ以上の窒素原子が金属原子あるいは金属イオンへ配位可能な構造が、要件(a)における「配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた構造」であり、配位可能な金属原子又は金属イオンの個数は、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、特に好ましくは1個である。
【0012】
上記金属原子あるいは金属イオンは、好ましくはマンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオンである。金属イオンの価数は、好ましくは1〜4、より好ましくは2〜4、特に好ましくは2又は3である。
【0013】
上記構造は、当該構造を含む化合物を金属原子又は金属イオンへ配位させた後、結晶を取り出しX線結晶構造解析等の構造解析を行うことで確認することができる。
【0014】
さらに、本発明の芳香族化合物は、下記(b)の要件を満たす。
(b)上記構造を構成する窒素原子のうち少なくとも1つが6員含窒素複素環に含まれる窒素原子である。
【0015】
6員含窒素複素環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環が例示され、好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環である。
【0016】
なお、触媒活性をより向上させる観点から、前記芳香族化合物に含まれる全ての6員含窒素芳香環には、ヘテロ原子としての窒素原子が1個又は2個のみ含まれることが好ましい。
【0017】
本発明における上記構造は、線対称、点対称、回転対称のいずれかの対称性を有する構造であると好ましい。ここでいう対称性は、上記構造自体の対称性であり、芳香環の置換基にはよらない。また、2つ以上の芳香環が縮環していてもよい。
【0018】
上記構造が回転対称性を有する場合、好ましくは2回対称以上であり、より好ましくは2〜12回対称であり、特に好ましくは2〜6回対称である。
【0019】
該対称性を有する構造の例を以下に示す。なお、式中のTは、−C(H)=又は−N=を示す。
【化10】

【0020】
本発明の芳香族化合物においては、芳香族化合物を構成する全炭素原子の質量に対する全窒素原子の質量の比(N/C)が、0より大きく1.1以下であると好ましい。N/Cの値は、下限として好ましくは0.05、より好ましくは0.1であり、また、上限として好ましくは1.0、より好ましくは0.9である。
【0021】
また、本発明の芳香族化合物において、各々の上記構造を構成する窒素原子の数nと、各々の上記構造において、その中心から各窒素原子までの平均距離r(Å)との関係は、r/nの値が0より大きく0.7以下であると好ましい。下限としてより好ましくは0.1であり、更に好ましくは0.2であり、上限としてより好ましくは0.65、更に好ましくは0.6である。
【0022】
なお、配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた上記構造の中心は、以下のように定義される。
すなわち、上記構造が線対称性を有する場合、上記中心は、対称軸上にあり、各窒素原子からの平均距離が最も短くなる点である。
上記構造が点対称性を有する場合、上記中心は対称点である。
上記構造が回転対称性を有する場合、上記中心は、回転対称軸上にあり、各窒素原子からの平均距離が最も短くなる点である。
【0023】
上記nは、好ましくは4〜10、より好ましくは4〜8、特に好ましくは4〜6である。
【0024】
上記rの下限値は、好ましくは1.5Å、より好ましくは1.7Å、更に好ましくは1.9Åであり、上限値は、好ましくは3.5Å、より好ましくは3.3Å、更に好ましくは3.1Åである。
【0025】
本発明の芳香族化合物は、より触媒活性を向上させる観点から、多環式芳香族複素環を有することが好ましい。
【0026】
本発明の芳香族化合物においては、上記構造が、下記一般式(1)で表される構造であると好ましい。
【化11】


[式中、mは1以上の整数である。
1a、Q1b及びQ1cは、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、Q1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。ただし、Q1a、Q1b及びQ1cのうち少なくとも1つは、6員含窒素芳香族複素環である。
1a及びZ1bは、直接結合又は連結基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、Z1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。
1a及びQ1b、Q1b及びQ1cは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。mが2以上の整数である場合、2個のQ1bは、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q1a及びQ1cは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。]
【0027】
一般式(1)中のmの値は、より好ましくは1〜5の整数であり、更に好ましくは2〜4の整数であり、特に好ましくは2又は4である。
【0028】
一般式(1)におけるQ1a、Q1b及びQ1cは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環(下記式で表される環)及びこれらの環を有する多環式芳香族複素環からなる群から選ばれることが好ましく、より好ましくはピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、並びにこれらの環を有する多環式芳香族複素環であり、特に好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、並びにこれらの環を有する多環式芳香複素環である。
【化12】

【0029】
1a及びZ1bは、直接結合又は連結基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。直接結合としては、単結合、二重結合が挙げられる。連結基としては、二価又は三価の連結基が挙げられる。Z1a及びZ1bは、単結合、二重結合、及び−C(Rγ−、=C(Rδ)−、=N(Rε)−又は=N−で表される連結基(下記式で表される連結基)であると好ましく、単結合、二重結合、−C(Rγ−又は=C(Rδ)−で表される連結基であると特に好ましい。
【化13】


[式中、Rγ、Rδ及びRεは、水素原子又は置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。]
【0030】
上記置換基としては、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、ホスホン酸基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたシリル基、炭素数1〜50の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜50の環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数7〜50のアラルキル基、1価の複素環基等が挙げられ、好ましくは、ハロゲノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜20の環状のアルキル基、アルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基、1価の複素環基である。なお、本明細書における置換基は、特記しない限り、上記と同様の基を示す。
【0031】
上記ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
【0032】
上記炭素数1〜4のアルキル基で置換されたシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基が挙げられる。
【0033】
上記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基が挙げられる。
【0034】
上記環状のアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0035】
上記アルケニル基としては、前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基において、いずれか1つの炭素原子間の単結合(C−C)が、二重結合に置換されたものが例示でき、二重結合の位置は特に限定されない。上記アルケニル基の好ましいものとしては、エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基が挙げられる。
【0036】
上記アルキニル基としては、前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基において、いずれか1つの炭素原子間の単結合(C−C)が、三重結合に置換されたものが例示でき、三重結合の位置は特に限定されない。前記アルキニル基の好ましいものとしては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、1−オクチニル基であり、特に好ましくはエチニル基である。
【0037】
上記アルコキシ基としては、前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基あるいは前記環状のアルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。上記アルコキシ基の好ましいものとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が酸素原子に結合した一価の基が挙げられる。
【0038】
上記アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−テトラセニル基、2−テトラセニル基、5−テトラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ペリレニル基、3−ペリレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、1−ビフェニレニル基、2−ビフェニレニル基、2−フェナンスレニル基、9−フェナンスレニル基、6−クリセニル基、1−コロネニル基等が挙げられる。前記アリール基における水素原子は、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、ホスホン酸基、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、上記アルコキシ基、上記アリール基、上記アラルキル基で置換されていてもよい。
【0039】
上記1価の複素環基としては、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基が挙げられる。なお、1価の複素環基とは、複素環式化合物から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団を意味する。1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0040】
上記アラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニル−1−プロピル基が挙げられる。
【0041】
上記Rγ、Rδ及びRεで表される置換基は互いに結合して、又は当該置換基の結合する炭素原子若しくは窒素原子における他の結合と一緒になって環を形成してもよい。ここで、環としては、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環等が挙げられる。これらの環を構成する水素原子の一部又は全部は、置換基を有していてもよく、また、それら置換基同士が結合して更に環を形成してもよい。
【0042】
更に本発明の芳香族化合物において、前記一般式(1)で表される構造が、下記一般式(2)又は一般式(3)で表される構造であると、より好ましい。
【化14】


[式中、Q2a、Q2b、Q2c及びQ2dは、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、Q2a、Q2b、Q2c及びQ2dのうち少なくとも1つは、6員含窒素芳香族複素環である。
2a、Z2b及びZ2cは、直接結合又は連結基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2a及びQ2b、Q2b及びQ2c、Q2c及びQ2dは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q2a及びQ2dは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。]
【化15】


[式中、Q3a、Q3b、Q3c、Q3d、Q3e及びQ3fは、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、Q3a、Q3b、Q3c、Q3d、Q3e及びQ3fのうち少なくとも1つは、6員含窒素芳香族複素環である。
3a、Z3b、Z3c、Z3d及びZ3eは、直接結合又は連結基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
3a及びQ3b、Q3b及びQ3c、Q3c及びQ3d、Q3d及びQ3e、Q3e及びQ3fは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q3a及びQ3fは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。]
【0043】
一般式(2)のQ2a、Q2b、Q2c及びQ2d、並びに一般式(3)のQ3a、Q3b、Q3c、Q3d、Q3e及びQ3fは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族環であり、好ましい例示は、上述の一般式(1)のQ1a、Q1b及びQ1cと同じである。
【0044】
1a及びQ1b、Q1b及びQ1c、Q2a及びQ2b、Q2b及びQ2c、Q2c及びQ2d、Q3a及びQ3b、Q3b及びQ3c、Q3c及びQ3d、Q3d及びQ3e、又はQ3e及びQ3fにおける直接結合又は連結基を介して互いに結合している2つの含窒素芳香族複素環が、下記式(4−a)〜(6−d)のいずれかで表されるものであると好ましい。
【化16】


[式中、Xは、=C(Rα)−、−N(Rβ)−、=N−、−O−、−S−又は−Se−であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、好ましくは、=C(Rα)−、−N(Rβ)−、=N−、−O−、−S−であり、より好ましくは、=C(Rα)−、−N(Rβ)−、=N−である。
Yは、−N(H)−又は=N−であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
なお、式中の直線の点線は、該点線部分で上記構造がZ1a等と結合していることを示す。]
【0045】
上記式中のR4b、R4c、R5b、R5c、R5d、R6b、R6c、R6d、Rα及びRβは、水素原子又は置換基であり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。置換基は、上述の置換基と同義である。また、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0046】
更に、Q1a及びQ1b、Q1b及びQ1c、Q2a及びQ2b、Q2b及びQ2c、Q2c及びQ2d、Q3a及びQ3b、Q3b及びQ3c、Q3c及びQ3d、Q3d及びQ3e、又はQ3e及びQ3fにおける直接結合又は連結基を介して互いに結合している2つの含窒素芳香族複素環が、下記一般式(7−a)〜(10−e)のいずれかで表されるものであるとより好ましい。
【化17】


[式中、R7a〜R10eは、水素原子又は置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。置換基は上述の置換基と同義である。
なお、式中の直線の点線は、該点線部分で上記構造がZ1a等と結合していることを示す。]
【0047】
本発明の芳香族化合物としては、以下の構造式で表される化合物が例示される。式中の水素原子は、上述の置換基で置換されていてもよい。
【化18】


【化19】


【化20】


【化21】


【化22】


【化23】


【化24】


【化25】


【化26】


【化27】


【化28】


【化29】

【0048】
本発明の芳香族化合物としては、以下の単位構造を有する芳香族化合物も例示される。式中の水素原子は、上述の置換基で置換されていてもよい。
【化30】


【化31】


【化32】


【化33】


【化34】

【0049】
上記単位構造を有する芳香族化合物として、以下の化合物が例示される。
【化35】


【化36】


【化37】


【化38】


【化39】


【化40】

【0050】
本発明の芳香族化合物としては、以下の繰り返し単位を有する高分子化合物も例示される。
【化41】


【化42】


【化43】


【化44】


[式中の水素原子は、上述の置換基で置換されていてもよく、近接する2つの水素結合を取り除いて直接結合又は連結基を形成してもよい。]
【0051】
本発明の芳香族化合物が高分子化合物である場合、該高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、通常、1×10〜1×10であり、好ましくは2×10〜1×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常、2×10〜1×10であり、好ましくは3×10〜2×10である。
【0052】
<金属錯体>
本発明の芳香族化合物は、金属原子又は金属イオンを配位させて、金属錯体としてもよい。金属原子又は金属イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属のいずれかの金属原子又はそのイオンを用いることができるが、特に好ましくは、周期表第4周期から第6周期の遷移金属又はそのイオンである。具体的には、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀の原子及びそのイオンが挙げられ、好ましくは、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金の原子及びそのイオンであり、より好ましくは、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀等の原子及びそのイオンであり、特に好ましくは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛の原子及びそのイオンである。また、金属原子又は金属イオンの種類は1種類でなくてもよく、複数種の金属原子又は金属イオンを組み合わせて用いてもよい。
【0053】
通常、金属イオンは、正の電荷を有するので、本発明の金属錯体は、当該金属錯体を全体として電気的に中性にする陰イオンを含んでいてもよい。対イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、水素化物イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸水素イオン等の無機イオン、トリフルオロ酢酸イオン、チオシアン化物イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、アセチルアセトナート、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノレート、ピコリン酸及びそれらの誘導体のイオン等の有機酸イオンが挙げられ、好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、水素化物イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、アセチルアセトナート、テトラフェニルホウ酸イオンである。対イオンが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0054】
本発明の金属錯体としては、以下の金属錯体、以下の式で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が例示される。式中の水素原子は、上述の置換基で置換されていてもよい。また、本発明の金属錯体の分子量は、上述の芳香族化合物の分子量に準ずる。
【化45】


【化46】


【化47】


【化48】


【化49】


【化50】


【化51】


【化52】


【化53】


【化54】


【化55】


【化56】


【化57】


【化58】


【化59】


【化60】


【化61】


【化62】


【化63】


【化64】


【化65】


【化66】


[式中、Mは金属原子を表す。Mで表される金属原子は、上述の金属原子と同じである。
Mが2個以上存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。また、上記金属錯体の電荷は省略してある。]
【0055】
また、本発明の芳香族化合物を金属錯体の合成に用いる場合、反応させる金属原子又は金属イオンの量を調節し、得られる金属錯体の機能を制御することができる。
【0056】
本発明の芳香族化合物、金属錯体は、それぞれ単独で用いてもよいが、芳香族化合物と金属錯体との混合物として用いてもよい。また、更に、芳香族化合物及び/又は金属錯体は、その他の成分と併用して組成物として用いてもよい。ここで、その他の成分としては、カーボン材料、高分子材料等が挙げられ、その他の成分は、単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0057】
カーボン材料としては、ノーリット(NORIT社製)、ケッチェンブラック(Lion社製)、バルカン(Cabot社製)、ブラックパール(Cabot社製)、アセチレンブラック(Chevron社製)(いずれも商品名)等のカーボン粒子、C60やC70等のフラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボン繊維等が挙げられる。
【0058】
高分子材料としては、導電性高分子、デンドリマー、天然高分子、固体高分子電解質、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンが例示され、導電性高分子、固体高分子電解質が好ましい。導電性高分子とは金属的又は半金属的な導電性を示す高分子物質の総称である(岩波理化学辞典第5版:1988年発行)。導電性高分子としては、「導電性ポリマー」(吉村進一著、共立出版)や「導電性高分子の最新応用技術」(小林征男監修、シーエムシー出版)に記載されている、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリパラフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリカルバゾール及びその誘導体、ポリインドール及びその誘導体、並びに上記導電性高分子の共重合体等を挙げることができる。
【0059】
上記芳香族化合物及び/又は金属錯体を含む組成物を調製する際、芳香族化合物及び金属錯体の合計量は、組成物全体の量を100質量部としたとき、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が特に好ましい。また、前記合計量の上限は、70質量部が好ましく、60質量部がより好ましく、50質量部が特に好ましい。
【0060】
上記芳香族化合物、上記金属錯体、又は上記組成物を加熱、放射線照射又は放電で変性させることにより得られる変性物として用いてもよい。
【0061】
上記変性物は、そのまま単独で用いてもよいが、その他の成分と併用して組成物として用いてもよい。併用してもよいその他の成分としては、カーボン材料、高分子材料等が挙げられる。本発明の変性物、その他の成分は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0062】
上記変性物を含む組成物を調製する際、変性物の量は、組成物全体の量を100質量部としたとき、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が特に好ましい。また、変性物の量の上限は、90質量部が好ましく、80質量部がより好ましく、70質量部が特に好ましい。
【0063】
変性は、必要最低限の変性でよいことから、変性前後の質量減少率(即ち、変性前の混合物の質量に対する、変性後に得られる変性物の質量の減少率)が、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、特に好ましくは5%以上となるまで行う。また、質量減少率の上限は、好ましくは80%、より好ましくは70%、特に好ましくは60%である。
【0064】
また、変性物は炭素含有率が高いと安定性が良好であるので、この炭素含有率が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上、とりわけ好ましくは40質量%以上となるように変性を行うとよい。
【0065】
加熱温度は、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは300℃以上である。また、加熱温度の上限は、変性物の炭素含有率が1質量%以上にできる温度であり、好ましくは1200℃であり、より好ましくは1000℃であり、更に好ましくは800℃である。
【0066】
加熱では、加熱時間を、加熱雰囲気や加熱温度によって調整すればよい。変性を行う雰囲気とするためのガスを密閉又は通気させた状態において、室温から徐々に温度を上昇させ目的とする温度に到達後、すぐに降温してもよいが、目的とする温度に到達後、温度を維持することで、徐々に金属錯体等を加熱することが、耐久性をより向上させることができるため好ましい。ここで、目的とする温度に到達後の保持時間は、好ましくは1〜100時間であり、より好ましくは1〜40時間であり、更に好ましくは2〜10時間であり、特に好ましくは2〜3時間である。
【0067】
加熱は、オーブン、ファーネス、IHホットプレート等の装置で行うことができる。
【0068】
加熱は、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アンモニアガス、酸素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス、アセトニトリルガスの雰囲気、又はこれらのうちの二種以上の混合ガスの雰囲気で行うことが好ましく、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アンモニアガス、酸素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、又はこれらのうちの二種以上の混合ガスの雰囲気で行うことがより好ましく、水素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、アルゴンガス、又はこれらのうちの二種以上の混合ガスの存在下で行うことが特に好ましい。
【0069】
放射線照射では、α線、β線、中性子線、電子線、γ線、X線、真空紫外線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、電波、レーザー等の電磁波、粒子線等の放射線、好ましくは、X線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、レーザー、より好ましくは、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、レーザーを照射すればよい。
【0070】
放電としては、コロナ放電、グロー放電、プラズマ(低温プラズマを含む)等が挙げられ、低温プラズマが好ましい。
【0071】
なお、放射線照射、放電は、通常、高分子フィルムの表面改質処理に用いられる機器、処理方法に準じて行うことが可能であり、例えば、文献(日本接着学会編、「表面解析・改質の化学」、日刊工業新聞社、2003年12月19日発行)等に記載された方法を用いることができる。
【0072】
放射線照射、放電は、通常、10時間以内、好ましくは3時間以内、より好ましくは1時間以内、特に好ましくは30分以内で行う。
【0073】
次に、本発明の芳香族化合物の製造方法を説明する。
本発明の芳香族化合物は、如何なる方法で製造してもよいが、例えば、下記反応式に示すジアミン化合物とヘキサケトシクロヘキサンとの酢酸中における縮合反応により、製造することができる。
【化67】

【0074】
本発明の芳香族化合物の製造方法として、下記反応式のように、あらかじめブロモ基などのハロゲノ基を導入しておき、その後、環化させてもよい。環化反応には、山本カップリングやウルマンカップリングなどの反応を用いることができる。
【化68】

【0075】
本発明の芳香族化合物は、下記反応式のように、鈴木・宮浦カップリング反応を用いて製造することもできる。
【化69】


【化70】


【化71】

【0076】
本発明の芳香族化合物は、下記反応式に示すようにブロモ基等のハロゲノ基を有するジアミン化合物とヘキサケトシクロヘキサンとの縮合反応生成物へ、ピロール等の含窒素芳香族化合物のボロン酸体をカップリング反応等により導入することで製造することもできる。
【化72】

【0077】
また、下記反応式に示すように、上記化合物をアルデヒドと反応させて、閉環させてもよい。
【化73】


[式中、Rは水素原子を示す。]
【0078】
また、上記のような構造を有する芳香族化合物は、適当な酸化剤を用いて酸化させることができる。酸化剤としては、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)や酸素等を用いることができる。また、酸化剤の加える量や反応時間を調節することで、反応段階を調節することができる。
【化74】


[式中、Rは水素原子を示す。]
【0079】
また、本発明の芳香族化合物が、エチニル基などの反応性基を有していてもよい。反応性基の導入は触媒活性が向上する観点から好ましい。エチニル基を有するアルデヒドと反応させて反応性基を導入することができる。
【化75】


上記反応でエチニル基を導入する際、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、tert-ブチルジメチルシリル(TBSまたはTBDMS)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基などの保護基でエチニル基を保護しておき、含窒素芳香族化合物に導入後、酸性条件やフッ化物イオンを作用させることで脱保護してもよい。
【0080】
また、本発明の芳香族化合物は、下記反応のように製造することもできる。
【化76】

【0081】
また、配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた構造を1つ有し、かつ、該窒素原子の少なくとも1つが6員含窒素複素環に含まれる窒素原子である芳香族化合物を原料として、本発明の芳香族化合物を製造してもよい。
【化77】


[式中、Rは水素原子を示す。]
【0082】
本発明の芳香族化合物の製造方法において、一般式(11)〜(20)、(22)、(23)で表される化合物は、本発明の芳香族化合物の原料として用いることができる。また、本発明の芳香族化合物は、式(11)〜(20)、(22)、(23)で表される構造式中の水素原子あるいは置換基の1つ又は複数を取り去り連結させることで製造することもできる。連結させる方法としては、一般的に用いられているカップリング反応を用いることができ、パラジウムを触媒として用いる鈴木・宮浦カップリングや溝呂木・ヘック反応、ニッケルを触媒として用いる山本カップリングや熊田・玉尾カップリング、銅を触媒として用いるウルマン反応が例示される。
【化78】


【化79】


【化80】


【化81】


[式中、R11〜R20、R22、及びR23は、水素原子又は置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合う置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
11は、含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
12は、ブロモ基、クロロ基又はヨード基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
13、E20及びE22は、それぞれ独立に、水素原子又は保護基である。
16及びX17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲノ基、又はX16同士若しくはX17同士が互いに結合した直接結合である。]
【0083】
11〜R20、R22、及びR23で表される置換基は、上述の置換基の説明及び例示と同様である。
【0084】
11は、含窒素芳香族複素環であり、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環及びこれらの環を有する多環式芳香族複素環が好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環がより好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1H−ピロール環が特に好ましい。
【0085】
12は、好ましくは、ブロモ基又はクロロ基であり、より好ましくは、ブロモ基である。
【0086】
13、E20及びE22は、それぞれ独立に、水素原子又は保護基である。
前記保護基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基等のアルコキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基等のアルケニルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基等の置換されていてもよいアラルキル基、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、p−トルエンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等のアリールスルホニル基、メタンスルホニル基等のアルキルスルホニル基等が挙げられ、tert-ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0087】
化合物(11)は、以下の反応式に示すようにo−ジアミノベンゼン誘導体とヘキサケトシクロヘキサンとを酢酸中で反応させることにより製造することができる。
【化82】

【0088】
化合物(12)は、以下の反応式に示すようにオルト-ジアミノベンゼン誘導体とヘキサケトシクロヘキサンとを酢酸中で反応させることにより製造することができる。
【化83】

【0089】
化合物(13)は、以下の反応式に示すように化合物(12)と6分子のピロールホウ酸体とを、それぞれ連結することにより製造することができる。連結方法としては、一般的なクロスカップリング反応を用いることができ、特に鈴木カップリングが好ましい。
【化84】

【0090】
化合物(14)は、以下の反応式に示すように3分子の2,9−ジハロゲノ−1,10−フェナントロリンを環状に連結することで製造することができる。
【化85】

【0091】
化合物(15)は、以下の反応式に示すように3分子の2,9−ジハロゲノ−1,10−フェナントロリン−5,6−ジオンを環状に連結することで製造することができる。
【化86】

【0092】
化合物(16)は、以下の反応式に示すように2,9−ジハロゲノ−1,10−フェナントロリンと2分子のキノリンホウ酸体を連結することで製造することができる。
【化87】

【0093】
化合物(17)は、以下の反応式に示すように2,9−ジハロゲノ−1,10−フェナントロリンと2分子のインドールホウ酸体を連結することで製造することができる。
【化88】

【0094】
化合物(18)は、以下の反応式に示すように化合物(17)誘導体とアルデヒド又はケトンを反応させることで製造することができる。
【化89】

【0095】
化合物(19)は、以下の反応式に示すように化合物(17)誘導体とアルデヒドを、酸化剤存在下で反応させることで製造することができる。化合物(19)の別の製造方法として、化合物(18)誘導体を酸化剤で酸化する方法を用いることができる。
【化90】

【0096】
化合物(20)は、以下の反応式に示すように2,9−ジハロゲノ−1,10−フェナントロリンとピロールボロン酸との2分子ずつを環状に連結することで製造することができる。連結方法は、クロスカップリング反応を用いることができ、特に鈴木カップリングが好ましい。
【化91】

【0097】
化合物(22)は、カルバゾール誘導体とピロール誘導体とを2分子ずつを環状に連結することで製造することができる。連結方法は、以下の反応式に従い、クロスカップリング反応を用いることができ、特に鈴木カップリングが好ましい。
【化92】

【0098】
化合物(11)を原料とした場合には、例えば以下の反応式に示すように化合物(11)とヘキサケトシクロヘキサンとを酢酸中で反応させることにより、本発明の芳香族化合物を製造することができる。
【化93】

【0099】
化合物(12)を原料とした場合には、例えば以下の反応式に示すように化合物(12)に6つの含窒素芳香族複素環を結合させることで、本発明の芳香族化合物を製造することができる。結合させる方法としては、クロスカップリング反応が挙げられる。
【化94】


[式中、Qは含窒素芳香族複素環であり、Yはボリル基やスタニル基等のクロスカップリングに適した基である。]
【0100】
化合物(13)を原料とした場合には、例えば以下の反応式に示すように化合物(13)の窒素原子に結合している保護基を脱保護することで、本発明の芳香族化合物を製造することができる。脱保護の方法としては、一般的な脱保護の操作、加熱、マイクロ波照射等を用いることができる。
【化95】

【0101】
化合物(17)を原料とした場合には、例えば以下の反応式に示すように化合物(17−a)を合成した後、トリフルオロ酢酸でオキソ体とした後、酢酸アンモニウムと共に二分子を反応させることで、本発明の芳香族化合物を製造することができる。
【化96】

【0102】
上記の芳香族化合物は、以下の反応式のように、更に反応させて閉環構造としてもよい。
【化97】

【0103】
また、上記芳香族化合物は、以下の反応式のように、化合物(18−a)を経由して、製造することもできる。
【化98】

【0104】
上記芳香族化合物は、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)などの酸化剤などを用いて酸化体としてもよい。
【化99】

【0105】
また、本発明の芳香族化合物は、以下の反応式に示すように化合物(18−b)を合成した後、加熱縮合により製造することができる。
【化100】

【0106】
また、本発明の芳香族化合物は、複数の含窒素芳香族複素環を連結させた高分子化合物として製造することができる。その一例を下記反応式に示す。
【化101】


[式中、pは繰り返し単位数を表す。]
【0107】
上記反応式中のQは、配位可能な窒素原子を2つ有する含窒素芳香族複素環である。
その具体的な構造式を以下に示す。これらの構造式における水素原子は上述の置換基で置換されてもよい。
【化102】

【0108】
本発明の芳香族化合物の製造方法として例示した上記反応式について、より具体的な反応式を以下に示す。
【化103】

【0109】
上記反応の原料となる化合物は、それぞれ以下の反応式に従って、合成することができる。
【化104】


【化105】

【0110】
上記得られた芳香族化合物は、アルデヒド類と反応させて、配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた構造が閉環型となる高分子化合物とすることができる。
【化106】

【0111】
また、本発明の芳香族化合物は、以下の反応式に従って製造される高分子化合物を用いて合成してもよい。
【化107】


【化108】

【0112】
さらにまた、本発明の芳香族化合物は、上記構造を1つ有する化合物を合成した後、それらを連結することで製造することもできる。
【0113】
上記構造を有する化合物は、例えば、下記反応式に示すように含窒素芳香族複素環を2つ有する化合物に、2つ以上の含窒素芳香族複素環を連結させることで製造することができる。連結方法としては、一般的なクロスカップリング反応を用いることができる。
【化109】

【0114】
上記反応式で得られた化合物を更に反応させて環化させてもよい。
【化110】

【0115】
あるいは、下記反応式に示すように含窒素芳香族複素環を2つ有する化合物の複数を、環化させることで製造することもできる。
【化111】


【化112】

【0116】
下記反応式に示すように4つ以上の配位可能な窒素原子で囲まれた構造を有する化合物を連結することで本発明の芳香族化合物を製造することもできる。連結する方法としては、以下の反応式に示すように、ハロゲノ基を有する化合物を山本カップリングで連結する方法を用いることができる。
【化113】

【0117】
あるいは、以下の反応式に示すようにホウ酸エステル体とハロゲノ基を有する化合物をSuzukiカップリングで連結する方法を用いることができる。
【化114】

【0118】
また、本発明の芳香族化合物は、上記要件(a)、(b)を満たす構造に加えて、以下の構造を有する化合物から1つ又は複数の水素原子が取り除かれた構造を含んでいてもよい。式中の水素原子は、上述の置換基で置換されていてもよい。
【化115】

【0119】
上記化合物(24)は、以下の反応式に示すようにジハロゲノ−カルバゾールとピロールボロン酸との2分子ずつを環状に連結することで製造することができる。連結方法は、クロスカップリング反応を用いることができ、特に鈴木カップリングが好ましい。
【化116】


[式中、R24は、水素原子又は置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合う置換基は互いに結合して環を形成してもよい。複数あるE24は、それぞれ独立に、水素原子又は保護基である。]
【0120】
次に、本発明の金属錯体の製造方法を説明する。
本発明の金属錯体は、いかなる方法で製造してもよいが、例えば、以下の方法で製造することができる。
【0121】
金属錯体の配位子となる芳香族化合物と、金属原子を付与する反応剤(以下、「金属付与剤」という。)とを、溶媒の存在下で反応させることによって、本発明の金属錯体が得られる。なお、金属付与剤とは金属原子を有する化合物であり、通常、該金属原子を陽イオンとして有する塩が用いられる。金属付与剤としては、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩が好ましい。
【0122】
反応で用いられる溶媒(反応溶媒)としては、水;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;アンモニア水、トリエチルアミン等のアミン類;メタノール、エタノール、n−プロパノ−ル、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、1−ブタノール、1,1−ジメチルエタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、デュレン、デカリン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、ピラジン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等が挙げられる。なお、これらの反応溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、前記溶媒としては、配位子となる芳香族化合物及び金属付与剤が溶解し得る溶媒が好ましい。
【0123】
反応の反応温度は、通常、−10〜250℃であり、好ましくは0〜200℃、特に好ましくは0〜150℃である。
【0124】
反応の反応時間は、通常、1分〜1週間であり、好ましくは5分〜24時間、特に好ましくは1時間〜12時間である。
【0125】
反応で得られた反応溶液から、目的とする金属錯体を単離精製する手段としては、公知の再結晶法、再沈殿法若しくはクロマトグラフィー法、又はこれらの組み合わせを用いることができる。なお、溶媒の種類によっては、目的とする金属錯体が前記反応溶液中に析出する場合がある。その場合には、析出した金属錯体を濾別し、洗浄や乾燥を行うことにより、金属錯体を単離精製してもよい。
【0126】
また、本発明の芳香族化合物から合成した金属錯体を触媒として用いる場合、金属錯体を単離する必要はなく、芳香族化合物と前記金属付与剤をカーボン等と共に前記溶液中で反応させた後、溶媒を留去することで触媒を調製することができる。
【0127】
本発明の芳香族化合物、金属錯体、組成物、変性物は、燃料電池用触媒材料、自動車用触媒材料、光触媒材料、レドックス反応における触媒の材料、水の酸化触媒、電池やキャパシター等の電極の材料、水素貯蔵材料、化学センサー材料、LED、トランジスタ並びに光電変換素子等の有機半導体材料として有用である。
【0128】
本発明の芳香族化合物、金属錯体、組成物、変性物は、燃料電池用触媒材料(すなわち燃料電池用電極触媒)として用いる場合、カソード用電極触媒及び/又はアノード用電極触媒として用いることができるが、カソード用電極触媒として用いることがより好ましい。
【0129】
燃料電池としては、固体高分子形燃料電池に用いることが好ましい。
【0130】
前記固体高分子形燃料電池に用いる高分子電解質膜としては、ナフィオン(登録商標)などに代表されるプロトン伝導性を有する高分子電解質、又は、陰イオン伝導性を有する高分子電解質を含む高分子電解質膜を用いることができる。陰イオンとしては、水酸化物イオン(OH)が例示される。
【0131】
本発明の燃料電池は、燃料が水素である場合は固体高分子形燃料電池又はアルカリ形燃料電池として、また、燃料がメタノールやエタノール等のアルコールである場合は直接アルコール形燃料電池として動作させることができる。
【0132】
本発明の燃料電池用電極触媒を用いた燃料電池は、例えば、自動車用電源、家庭用電源、携帯電話、携帯用パソコン等のモバイル機器用小型電源として有用である。
【実施例】
【0133】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0134】
<実施例1>(芳香族化合物P1の合成)
以下の反応式に従って、芳香族化合物P1を合成した。
【化117】

【0135】
まず、芳香族化合物P1の原料となる化合物1(1,4-bis-(4-methylpyridine-2-yl)-3,4-diaminobenzene)を以下の方法で合成した。
【化118】

【0136】
具体的には、文献(Journal of theAmericanChemical Society,2007,129,3472)記載の方法に従い、4,7-bis-pinacolato-diborane-2,1,3-benzothiadiazoleを合成した後、2-bromo-methylpyridineを反応させることで、4,7-bis(4-methylpyridine-2-yl)-2,1,3-benzothiadiazoleを得た。
続いて、4,7-bis(4-methylpyridine-2-yl)-2,1,3-benzothiadiazoleの還元的脱硫反応を以下の手順で行い化合物1を合成した。具体的には、5当量のSnと10モル当量のSnCl2を含んだ80mlの塩酸/エタノール/水(3/3/2(体積比))混合溶液に0.213g(0.669mmol)の4,7-bis(4-methylpyridine-2-yl)-2,1,3-benzothiadiazoleを加え、該混合物を3時間還流させた。アンモニア溶液を加えてpHを10に調整した後、ジクロロメタンを用いて抽出を行った。得られた粗生成物をカラム精製(メタノール/酢酸エチル/ジクロロメタン)することで、0.143gの化合物1を収率74%で得た。なお、同様の操作を繰り返し、次の反応に必要な量の化合物1を得た。
化合物1のNMR分析、及びMS分析結果
1H-NMR(250MHz,CD2Cl2):δ=8.505 ppm (d, 2H); 7.578ppm (s, 2H); 7.143ppm (s, 2H); 7.057 ppm(d, 2H); 5.648 ppm (s, 4H); 2.422 ppm(s, 6H)
13C-NMR(250MHz, CD2Cl2):δ = 159.69ppm; 148.63 ppm; 148.13 ppm;137.12ppm; 123.79 ppm; 123.22 ppm; 122.67 ppm;118.96 ppm; 21.62 ppm
MS(FD,8kV)実測値: m/z 290.4、理論値: m/z: 290.36
【0137】
次に、上記で得られた化合物1とhexaketocyclohexaneとの縮合反応を行うことで、芳香族化合物P1を合成した。具体的には、0.388g(1.336mmol)の化合物1(1,4-bis-(4-methylpyridine-2-yl)-3,4-diaminobenzene)を20mlの酢酸に加え、溶液を50℃に加熱後45分間アルゴンガスを通気した。該溶液へ0.126g(0.405mmol)のhexaketocyclohexaneを加えた後、105℃にて36時間加熱した。粗生成物をカラム(溶媒:トリエチルアミン/メタノール/酢酸エチル/ジクロロメタン)にて精製を行い、芳香族化合物P1を収率62%で得た。
芳香族化合物P1のNMR分析、及びMS分析結果
1HNMR(250 MHz, CF3COOD): δ = 9.035 ppm (s,6H);8.678 ppm (s, 6H); 8.360 ppm (d, 6H); 8.039 ppm (d, 6H); 2.841 ppm(s,18H)
13C NMR(250MHz, CF3COOD):δ = 166.21ppm; 150.08ppm;145.82 ppm; 143.64 ppm; 142.83 ppm; 138.45 ppm; 134.14 ppm;132.08 ppm;130.38ppm; 23.92 ppm
MS(FD, 8 kV)実測値:m/z 931.4 (100.0%, M+);465.7(81.5%,M2+)、理論値: m/z: 931.06 (100.0%,M+)
【0138】
<実施例2>(芳香族化合物P2の合成)
以下の反応式に従って、芳香族化合物P2を合成した。
【化119】

【0139】
まず、原料となる化合物2(1,4-bis-(2-bromo-4-methylpyridine-6-yl)-3,4-diaminobenzene)を4,7-bis-(2-bromo-4-methylpyridine-6-yl)-2,1,3-benzothiadiazoleを経由することで合成した。
【0140】
具体的には、4.930gの2,6-dibromo-4-methylpyridine(0.0196 mol)と0.762gの4,7-bis-pinacolato-diborane-2,1,3-benzothiadiazole(0.00196 mol)とを120mlのトルエンに溶解させ、トルエン溶液を得た。10gのK2CO3を溶解させた10mlの水溶液と0.032gのトリオクチルメチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、アルドリッチ製)(以下、「Aliquat336」と言う。)を前記トルエン溶液へ加えた。溶液をアルゴンで脱気した後、0.1132gのtetrakis-(triphenylphosphin)-Pd(0)(0.098mmol)を加え、80℃で1週間加熱した。カラム精製(ジクロロメタン/ヘキサン/酢酸エチル)後、0.507gの4,7-bis-(2-bromo-4-methylpyridine-6-yl)-2,1,3-benzothiadiazoleを54%の収率で得た。
4,7-bis-(2-bromo-4-methylpyridine-6-yl)-2,1,3-benzothiadiazoleのNMR分析、及びMS分析の結果
1H-NMR(250MHz, CD2Cl2):δ = 8.684ppm (s, 2H); 8.625 ppm (s,2H);7.385 ppm (s, 2H); 2.484 ppm (s, 6H)
MS(FD, 8 kV)実測値:m/z 476.2 (M+)、理論値:m/z: 476.19 (M+)
【0141】
次に、0.201g(0.422mmol)の4,7-bis-(2-bromo-4-methylpyridine-6-yl)-2,1,3-benzothiadiazoleを含んだHCl/EtOH/H2O(40/10/5(体積比))溶液を調製後、50℃に加熱し、この溶液へ2.362g(0.0199mol)のSnと3.773g(0.0199mol)のSnCl2を加えた後、14時間還流を行った。NaOHで溶液をアルカリ性とした後、ジクロロメタンで抽出、カラム精製(酢酸エチル/ヘキサン)後、0.149gの化合物2を収率79%で得た。
化合物2のNMR分析、及びMS分析
1H-NMR(250MHz, CD2Cl2):δ = 7.509ppm (s, 2H); 7.255 ppm (s,2H);7.086 ppm (s, 2H); 5.458 ppm (s, 4H);2.389 ppm (s, 6H)
13C-NMR(250MHz, CD2Cl2):δ = 160.26ppm; 151.91 ppm; 140.71 ppm;137.41ppm; 126.66 ppm; 123.13 ppm; 122.13ppm; 119.16 ppm; 21.56 ppm
MS (FD, 8 kV)実測値:m/z 448.4 (M+)、理論値: m/z: 448.15 (M+)
【0142】
その後、上記で得られた化合物2とhexaketocyclohexaneとの縮合反応を行うことで、芳香族化合物P2を得た。具体的には、0.102g(0.227mmol)の化合物2を5mlの酢酸に加え、溶液を50℃に加熱後45分間アルゴンガスを通気した。得られた溶液へ0.024g(0.076mmol)のhexaketocyclohexaneを加えた後、105℃にて18時間加熱した。水酸化ナトリウムでアルカリ性とした後、ジクロロメタン(100ml×5回)で抽出後、0.120gの粗生成物を得た。粗生成物をカラム(溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン/酢酸エチル)にて精製を行い、芳香族化合物P2を収率67%で得た。
芳香族化合物P2のNMR分析、及びMS分析
1H-NMR(250MHz, CD2Cl2):δ = 8.857ppm (s, 12H); 8.273 ppm (s,6H);7.397 ppm (s, 6H); 1.790 ppm (s, 18H)
1H-NMR(300MHz, CD2Cl2):δ = 8.863ppm (s, 6H); 8.275 ppm (d,6H);7.406 ppm (d,6H); 1.798 ppm (s, 18H)
MS (FD, 8 kV): m/z 1405,7 (M+);703,1(M2+)calculated:m/z:1404.43 (M+)
【0143】
<実施例3>(芳香族化合物P3の合成)
以下の反応式に従って、芳香族化合物P3を合成した。
【化120】

【0144】
まず、原料となる化合物3(1,4,7,10,13,16-hexa-bromo-5,6,11,12,17,18-hexaaza-trinaphtylene)を以下の方法で合成した。
具体的には、1,4-dibromo-2,3-diaminobenzeneは、文献(Journal of OrganicChemistry,2006,71,3350)記載の方法に従い合成した。0.600g(2.256mmol)の1,4-dibromo-2,3-diaminobenzeneを含んだ10mlの酢酸を50℃に加熱後、1時間アルゴンで脱気を行った。得られた溶液へ0.234g(0.752 mmol)のhexaketocyclohexaneを加えた後、110℃で10時間加熱を行った。得られた反応溶液を氷水へ注いだ後、NaOHで溶液をアルカリ性とした。薄緑色の生成物が沈殿物として得られ、沈殿物を濾取後、水とジクロロメタンで洗浄することで、0.499gの化合物3を得た。
化合物3の質量分析の結果
MS(FD, 8 kV)実測値:m/z 857.5 (M+);429.7(M2+)、理論値: m/z 857.57 (M+)
Maldi-tof in TCNQ: m/z 858 (M+)
【0145】
次に、上記で得られた化合物3を用いて、芳香族化合物P3の前駆体となる化合物4(1,4,7,10,13,16-hexa-(1'-N-BOC-pyrrole-2'-yl)-5,6,11,12,17,18-hexaaza-trinaphtylene)を合成した。具体的には、1.381g(1.61mmol)の化合物3を含んだ100mlのTHFと40mlのトルエンとの混合溶液へ、3.416g(16.2mmol)の1-N-BOC-pyrrole-2-boronicacid、0.024gのAliquat 336、及び13.35g(0.0966mol)のK2CO3を加え、アルゴン脱気を1時間行った。
反応溶液へ0.669(0.580 mmol)のtetrakis-(triphenylphosphin)-Pd(0)を加えた後、85℃で1日間加熱を行った後、12mlの脱気した水を加え、更に2日間加熱を続けることで粗生成物を得た。該粗生成物を、カラム(酢酸エチル/ジクロロメタン/ヘキサン)により精製し、化合物4を得た。
化合物4の質量分析の結果
MS(FD, 8 kV)実測値:m/z 1374.5、理論値: m/z 1374.59
【0146】
その後、上記で得られた化合物4を加熱してピロール基を脱保護することで、芳香族化合物P3(1,4,7,10,13,16-hexa-(pyrrole-2'-yl)-5,6,11,12,17,18-hexaaza-trinaphtylene)を得た。
【0147】
具体的には、0.340gの化合物4を0.2mbarの減圧下において180℃30分間加熱することにより、芳香族化合物P3を得た。
芳香族化合物P3の質量分析の結果
MS(FD, 8 kV)実測値:m/z 386.6 (M2+);774,0(M+) 理論値:m/z 387.14 (M2+);774.27(M+)Maldi-Tof (TCNQ): m/z 775 (M+);1549 (2M+)
【0148】
<実施例4>(芳香族化合物P4の合成)
以下の反応式に従って、芳香族化合物P4を合成した。
【化121】

【0149】
具体的には、0.207g(0.267mmol)の芳香族化合物P3を、1mlのトリフルオロメタンスルホン酸、1.5mlのp-n-octyl-benzaldehyde、3mlのジクロロメタンの混合溶液へ加えた後、アルゴンで脱気を行った。得られた溶液をマイクロウェーブ反応装置に入れ、50ワットで2時間反応を行った。反応溶液へNH4OHを加え、水で有機層を洗浄し、得られた有機層をエバポレーターで乾固させ、更に、水とヘキサンで洗浄した。0.349 g(0.254 mmol)の芳香族化合物P4を95%の収率で得た。
芳香族化合物P4の質量分析の結果
MS(FD, 8 kV)実測値:m/z 1375.5(M+)、理論値:m/z:1375.74 (M+)
Maldi-Tof (TCNQ): m/z 1373 (M+);2746(2M+)
【0150】
<実施例5>(芳香族化合物P5の合成)
以下の反応式に従って、芳香族化合物P5を合成した。
【化122】

【0151】
具体的には、0.100g(0.0374 mmol)の芳香族化合物P4と0.058g(0.254mmol)の2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)を35mlのマイクロウェーブ用チューブに入れ、15mlの脱水トルエンを加えた後、アルゴンでバブリングを30分間行った。マイクロウェーブ反応装置にて140℃で2時間加熱した後、3mlのトリエチルアミンを加え、黒色沈殿を濾取し、水及びヘキサンで洗浄することで、芳香族化合物P5を収率99%で得た。
芳香族化合物P5の質量分析の結果
Maldi-Tof (TCNQ)実測値: m/z 1370 (M+);2740(2M+)理論値:m/z 1369 (M+)
【0152】
<実施例6>(金属錯体MC1の合成)
以下の反応式に従って、金属錯体MC1を合成した。
【化123】

【0153】
具体的には、0.125g(0.091mmol)の芳香族化合物P1と1.218g(5.119mmol)の塩化コバルト6水和物を6mlのエタノールと2mlのジメチルホルムアミド(DMF)の混合溶媒に溶解させ、アルゴン雰囲気下において3日間還流を行った。反応溶液を放冷した後、反応溶液のFD-Mass分析を行い、生成物中に金属錯体MC1が含まれていることを確認した。
MS(FD, 8 kV)実測値: 1319.3 ([M3LCl6]+); 405 ([M3LCl3]3+);359.4 ([M2LCl]3+
理論値:1318.98 ([M3LCl6]+);404.74([M3LCl3]3+)
【0154】
<実施例7>(金属錯体MC2の合成)
以下の反応式に従って、金属錯体MC2を合成した。
【化124】

【0155】
具体的には、0.125g(0.091 mmol)の芳香族化合物P4と0.079g(0.318mmol)の酢酸コバルト4水和物をマイクロウェーブ用試験管に入れ5mlのDMFを加え、マイクロウェーブ装置を用いて200℃、出力200Wにて2時間反応を行った。反応液を25mlの冷水に注ぎ、生成した沈殿を濾取し、水及びヘキサンで洗浄して、金属錯体MC2を得た。
Maldi-Tof (TCNQ) 実測値:m/z 1543(M+);1569(M+ + CN-);1595 (M++2CN-);1621 (M+ + 3CN-)、理論値:m/z 1543.5(M+)
【0156】
<実施例8>(金属錯体MC3の合成)
以下の反応式に従って、金属錯体MC3を合成した。
【化125】

【0157】
具体的には、0.096g(0.091 mmol)の芳香族化合物P4と0.053g(0.304mmol)の酢酸鉄をマイクロウェーブ用試験管に入れ5mlのDMFを加え、マイクロウェーブ装置を用いて200℃、出力200Wにて4時間反応を行った。反応液を25mlの冷水に注ぎ、生成した沈殿を濾取し、水及びヘキサンで洗浄して、金属錯体MC3を得た。
Maldi-Tof (TCNQ) 実測値:m/z 1534 (M+);1560(M+ + CN-); 1586 (M+ +2CN-); 1603 (M++3CN-)、理論値:m/z 1534 (M+)
【0158】
<実施例9>(金属錯体MC4の合成)
以下の反応式に従って、金属錯体MC4を合成した。
【化126】

【0159】
実施例8において、酢酸鉄を酢酸マンガンに代えた以外は実施例8と同様にして、金属錯体MC4を合成した。
【0160】
<合成例1>(金属錯体MC5の合成)
以下の反応式に従って、シッフ塩基配位子を含んだクロロホルムと酢酸コバルト4水和物を含んだエタノールを混合し、反応させることにより、金属錯体MC5を合成した。錯体の原料となるシッフ塩基配位子及び金属錯体MC5を文献(A Chemistry,European Journal,1999,5,1460)記載の方法に従い合成した。
【化127】

【0161】
<実施例10>(金属錯体MC6の合成)
以下の反応式に従って、金属錯体MC6を合成した。
【化128】

【0162】
合成の基本的な操作は実施例7と同様に行ったが、このとき、芳香族化合物P4に対して、1.5モル当量の酢酸コバルトを反応させることで金属錯体MC6を得た。
【0163】
<評価1>
金属錯体MC2をカーボン担体に担持させることで電極触媒1を作製した。具体的には、40mgの金属錯体MC2と160mgのカーボン担体(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン製)をメタノール中で混合し、エバポレーターで溶媒を留去した後、200Paの減圧下で一晩乾燥させて、電極触媒1を得た。
【0164】
電極触媒1の評価として、回転リングディスク電極による酸素還元活性の評価を行った。電極には、ディスク部がグラッシーカーボン(直径6.0mm)、リング部が白金(リング内径7.0mm、リング外径9.0mm)であるリングディスク電極を用いた。
電極触媒1を8mg入れたサンプル瓶へ、2−プロパノールを1mL加えた後、超音波で分散させた。得られた懸濁液21.6μLを上記電極のディスク部に滴下し乾燥させた後、5μLのナフィオン(登録商標)溶液(Aldrich製、5質量%溶液を2−プロパノールで20倍に希釈した溶液)をディスク部に滴下し、室温にて乾燥させることで測定用電極を得た。
【0165】
この測定用電極を用いて、下記の測定装置、測定条件において、酸素還元反応の電流値の測定を行った。電流値の測定は、窒素を飽和させた状態、酸素を飽和させた状態でそれぞれ行い、酸素雰囲気下での測定で得られた電流値から、窒素雰囲気下での測定で得られた電流値を引いた値を酸素還元反応の電流値とした。この電流値を測定用電極の表面積で除すことにより、電流密度を求めた。得られた結果を表1に示す。なお、測定装置及び測定条件は、以下のとおりであり、電流密度は、可逆水素電極に対して0.6Vのときの値を示す。
測定装置
日厚計測社製RRDE−1回転リングディスク電極装置
ALSモデル701Cデュアル電気化学アナライザー
測定条件
セル溶液:0.5mol/L硫酸水溶液(酸素飽和又は窒素飽和)
溶液温度:25℃
参照電極:銀/塩化銀電極(飽和塩化カリウム)
カウンター電極:白金ワイヤー
掃引速度:5mV/秒
電極回転速度:900rpm
【0166】
<評価2>
上記<評価1>において、金属錯体MC2を金属錯体MC3に変更した以外は同様にして電極触媒2を作製し、酸素還元活性の評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られた電極触媒2の一部を管状炉により、窒素雰囲気下、600℃で加熱した。用いた管状炉及び加熱条件を以下に示す(以下、<評価3>〜<評価5>において、同様である。)。
管状炉:プログラム制御開閉式管状炉EPKRO−14R、いすゞ製作所製
加熱条件(加熱雰囲気):窒素ガスフロー(200ml/分)
加熱条件(昇温速度及び降温速度):200℃/時間
【0167】
<評価3>
上記<評価1>において、金属錯体MC2を金属錯体MC4に変更した以外は同様にして電極触媒3を作製し、酸素還元活性の評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られた電極触媒3の一部を管状炉により、窒素雰囲気下、600℃又は800℃で加熱した。
【0168】
<評価4>
10mgの芳香族化合物P3と10mgの酢酸コバルト4水和物を40mgのカーボン担体(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン製)と共にメタノール中で攪拌後、エバポレーターで溶媒を留去した後、200Paの減圧下で一晩乾燥させ電極触媒4を作製した。なお、得られた電極触媒4の一部を管状炉により、窒素雰囲気下、600℃又は800℃で加熱した。上記加熱方法、評価方法に従い酸素還元活性の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0169】
<評価5>
3mgの芳香族化合物P1と34mgの酢酸コバルト4水和物を150mgのカーボン担体(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン製)と共にメタノール中で攪拌後、エバポレーターで溶媒を留去した後、200Paの減圧下で一晩乾燥させ電極触媒5を作製した。なお、得られた電極触媒5の一部を管状炉により、窒素雰囲気下、800℃で加熱した。上記加熱方法、評価方法に従い酸素還元活性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0170】
<評価C1>
上記<評価1>において、金属錯体MC2を金属錯体MC5に変更した以外は同様にして電極触媒6を作製し、酸素還元活性の評価を行った。結果を表1に示す。
【表1】

【0171】
[評価]
表1によれば、電極触媒1〜5の電流密度は、電極触媒6の電流密度より高いことから、電極触媒1〜5は、電極触媒6よりも、優れた酸素還元活性を示すと認められた。
【0172】
[4電子還元率の比較]
酸素還元反応における4電子還元率を、下記式により求めた。
【数1】


ここで、iDは、ディスク電流、iRはリング電流を表し、Nr/dはリング電極におけるディスク反応生成物の捕捉率を表す。捕捉率は、[Fe(CN)63-/4-の酸化還元系を用いて測定し、<評価1>〜<評価5>、<評価C1>に用いた電極においては0.38であった。
<評価1>(金属錯体MC2)と<評価C1>(金属錯体MC5)における4電子還元率は、それぞれ89.1%と55.3%であった。これは、<評価1>(金属錯体MC2)の電極触媒において活性点がより集積しているためであると考えられる。
【0173】
<評価7>
金属錯体MC2をカーボン担体に担持させることで電極触媒7を作製した。具体的には、2mgの金属錯体MC2と8mgのカーボン担体(商品名:Vulcan XC−72、キャボット社製)をジクロロメタン中で混合し、15分間超音波処理を行った後、一晩乾燥させて、電極触媒7を得た。
【0174】
電極触媒7の評価として、回転ディスク電極による酸素還元活性の評価を行った。電極には、ディスク部がグラッシーカーボン(直径3.0mm)であるディスク電極を用いた。
電極触媒7が1mg入ったサンプル瓶へ、0.5%のナフィオン(登録商標)溶液(5%ナフィオン(登録商標)溶液をエタノールにて10倍希釈した溶液)を1mL加えた後、超音波で15分間分散させた。得られた懸濁液1.8μLを上記電極のディスク部に滴下し乾燥させた後、80℃に加熱した乾燥機にて3時間乾燥させることで測定用電極を得た。
【0175】
この測定用電極を用いて、下記の測定装置、測定条件において、酸素還元反応の電流値の測定を行った。電流値の測定は、窒素を飽和させた状態、酸素を飽和させた状態でそれぞれ行い、酸素雰囲気下での測定で得られた電流値から、窒素雰囲気下での測定で得られた電流値を引いた値を酸素還元反応の電流値とした。この電流値を測定用電極の表面積で除すことにより、電流密度を求めた。得られた結果を表2に示す。なお、測定装置及び測定条件は、以下のとおりであり、電流密度は、銀/塩化銀電極に対して−0.8Vのときの値を示す。
測定装置
RDE評価装置:Autolab
電気化学アナライザー:PARSTAT 2273 advancedelectrochemicalsystem.
測定条件
セル溶液:0.1mol/L水酸化カリウム水溶液(酸素飽和又は窒素飽和)
溶液温度:25℃
参照電極:銀/塩化銀電極(3M塩化カリウム)
カウンター電極:白金ワイヤー
掃引速度:10mV/秒
電極回転速度:1600rpm
【0176】
<評価8〜11>
上記<評価7>において、金属錯体MC2を、それぞれ金属錯体MC3、金属錯体MC4、金属錯体MC6、芳香族化合物P4に変更した以外は同様にして電極触媒8、電極触媒9、電極触媒10及び電極触媒11を作製し、酸素還元活性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0177】
【表2】

【0178】
<実施例11>(化合物5の合成)
以下の反応式に従って、化合物5を合成した。
【化129】

【0179】
まず、文献(Bull. Chem.Soc.Jpn.,1990, 63, 2710)記載の方法に従い、原料となる2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリン、続いて2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンを合成した。得られた2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンを用いて、2,9-ジクロロ-5,6-ビス(ドデシロキシ)1,10-フェナントロリンを合成した。
【0180】
具体的には、1.0gの2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンを含んだ水20mlとテトラヒドロフラン(THF)20mlの混合溶液へ、0.75g(2.33mmol)の臭化テトラブチルアンモニウムと3.77g(21.66mmol)のNa2S2O4を加えた後、更に3.0gの臭化ドデシルを加えた。得られた溶液へ、3.0gのKOHを溶解させた水溶液20mlをゆっくりと加えた後、40℃で2日間攪拌を行った。反応溶液を水で希釈した後、酢酸エチルを用いて生成物を抽出した。有機層を水で洗浄した後、Na2SO4を加えて乾燥後、エバポレーターで溶媒を留去することで粗生成物を得た。カラム精製(ジクロロメタン/酢酸エチル)を行い、1.5gの2,9-ジクロロ-5,6-ビス(ドデシロキシ)1,10-フェナントロリンを収率67%で得た。
2,9-ジクロロ-5,6-ビス(ドデシロキシ)1,10-フェナントロリンのNMR分析結果
1H-NMR(CD2Cl2):δ =8,53 (2H, d, J = 8.69 Hz), 7.64 (2H, d, J =8.69 Hz), 4.23 (4H, t,J = 6.64 Hz)1.86 (4H, m), 1.61 - 1.10 (36H, m), 0.87(6H, t, J = 6.89 Hz) ppm
13C-NMR(CD2Cl2):δ =150.6, 143.0, 142.9, 134.1, 126.3, 124.7,74.6, 32.3, 30.7, 30.0,29.7, 29.6,26.5, 23.1,14.3 ppm
【0181】
次に、427mgのビス(1,5−シクロオクタジエン)Ni(0)(Ni(COD)2)(1.55mmol)、243mgのビピリジン(1.55mmol)、0.19mlのシクロオクタジエン(1.55mmol)を20mlのDMFと40mlのトルエンの混合溶媒へ加え、60℃で20分間攪拌した。得られた混合溶液に385mgの2,9-ジクロロ-5,6-ビス(ドデシロキシ)1,10-フェナントロリン(0.62mmol)をゆっくりと加えた後、60℃で3日間攪拌を行った。溶液を室温まで放冷し、ジエチルエーテルを加えた後、有機層を2M塩酸で洗浄した。有機層へMgSO4を加えて乾燥させた後、エバポレーターで溶媒を留去することで、粗生成物を得た。カラム精製(ジクロロメタン/メタノール)を行い、89mgの化合物5を得た。
化合物5のNMR分析結果
1H-NMR(CD2Cl2):δ 8.98(6H, d, J = 8.66 Hz), 8.75 (6H, d, J =8.78 Hz) ppm, 4.37 (12H,t, J = 6.64Hz), 1.86 (12H, m), 1.61 - 1.10 (108H, m),0.87 (18H, t, J = 6.89 Hz)ppm
13C-NMR(CD2Cl2):δ =153.4, 144.3, 143.2, 133.4, 128.0, 122.9,74.6, 32.3, 30.7,30.0, 29.7,29.6, 26.5, 23.1,14.3 ppm
【0182】
<実施例12>(化合物6の合成)
上記で合成した2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリンを用いて、以下の反応式に従い化合物6を合成した。
【化130】

【0183】
具体的には、100mg(0.40mmol)の2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリンと278mgの8−キノリンボロン酸(1.61 mmol、アルドリッチ社製)を3mlのトルエンと5mlのDMFの混合溶媒に加え、アルゴンガスをパージした。37mgのPd(PPh3)4(0.0321mmol)と333mgのK2CO3(2.41mmol)を加え、100℃で18時間攪拌を行った。カラム精製により、65mgの化合物6を収率37%で得た。
化合物6の質量分析の結果
MS(FD, 8 kV)実測値: m/z 435.4 (M+)、理論値:434.15
【0184】
<実施例13>(化合物7の合成)
以下の反応式に従って、化合物7を合成した。
【化131】


具体的には、まず、原料となる7-bromo-3-methyl-1H-indoleは、文献(J.Org.Chem.2001,66,638)記載の方法に従い合成した。次に、500mgの7-bromo-3-methyl-1H-indole(2.38mmol)、22mgのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、78mgの2-dicyclohexylphosphino-2',6'-dimethoxybiphenyl、604mgのbis(pinacolato)diboron、及び467mgの酢酸カリウムを50mlのシュレンク管へ導入し、アルゴン雰囲気下において、20mlの無水DMFを加え、80℃で一晩攪拌した。溶液を室温まで放冷した後、ジクロロメタンを加え、有機層を水で洗浄した後、溶媒を留去した。残渣をカラム(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで、3-methyl-7-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-1H-indoleを得た。
3-methyl-7-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-1H-indoleのNMR分析結果
1H-NMR(250MHz, CDCl3): δ=9.20 (brs,1H), 7.63(d,1H), 7.46 (d, 1H), 7.02 (t, 1H), 6.44 (s, 1H), 2.40 (s, 3H), 1.42(s, 12H)
【0185】
次に、186mgの2,9-dichloro-1,10-phenanthroline(0.748mmol)と500mgの3-methyl-7-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-1H-indole(1.944mmol)を20mlのDMFに溶解させた後、2M炭酸ナトリウム水溶液6mlを加えた。アルゴン気流下においてPd(PPh3)4を加え、溶液を80℃で一晩攪拌を行った。室温まで放冷した後、ジクロロメタンを加え、有機層を水で洗浄後、溶媒を留去して、カラム精製をすることで化合物7を得た。
化合物7のNMR分析及び質量分析の結果
1H-NMR(250MHz, CDCl3): δ=12.10 (s, 2H),8.73(d,2H), 8.56 (d, 2H), 8.15 (s, 2H), 8.09 (d, 2H), 7.80 (d, 2H), 7.36 (t,2H),6.85(s, 2H), 2.42 (s, 3H)]
FD-MS 実測値:m/z 439.0、理論値:438.18.
【0186】
<実施例14>(化合物8の合成)
以下の反応式に従って、化合物8を合成した。
【化132】

【0187】
具体的には、21mgのn-ドデシルアルデヒド(0.114 mmol)と50mgの2,9-bis(3-methyl-1H-indol-7-yl)-1,10-phenanthroline(0.114mmol)を10mlのテトラクロロエタンに加え、10分間アルゴンガスで脱気を行った。触媒量のトリフルオロメタンスルホン酸を加え、48時間還流を行った後、52mgの4,5-dichloro-3,6-dioxocyclohexa-1,4-diene-1,2-dicarbonitrile(0.228mmol)を含んだトルエン溶液(3ml)を加え、更に8時間還流を行った。
室温まで放冷した後、ジクロロメタンを加えた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧乾固することで化合物8を得た。
化合物8の質量分析の結果
FD-MS 実測値:601、理論値:602.34
【0188】
<実施例15>(化合物9の合成)
以下の反応式に従って、化合物9を合成した。
【化133】

【0189】
原料となる2,5-bis(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-1H-pyrroleは、文献(TetrahedronLetters,2002,43,5649)に従って合成し、続いて5,6-bis(dodecyloxy)-2,9-diiodo-1,10-phenanthrolineを、以下の操作により合成した。
【0190】
具体的には、1.36gの2,9-dichloro-5,6-bis(dodecyloxy)-1,10-phenanthroline(2.21mmol)と1.33gのヨウ化ナトリウム(8.84mmol)を入れたフラスコへ、57%のヨウ化水素酸4.4mlと0.12mlの次亜りん酸(50%)を攪拌しながら加えた後、80℃で一晩加熱を行った。0℃に冷却した後、溶液がアルカリ性となるまでアンモニア水を加えた。沈殿物を濾取し、水で数回洗浄した後に減圧下で乾燥させた。カラム(ジクロロメタン:ヘプタン)で精製を行い、58%の収率で5,6-bis(dodecyloxy)-2,9-diiodo-1,10-phenanthrolineを得た。
5,6-bis(dodecyloxy)-2,9-diiodo-1,10-phenanthrolineのNMR分析と質量分析の結果
1H-NMR(250MHz,CD2Cl2):δ= 8.15 (d, J = 8.51 Hz, 2H), 7.97 (d,J= 8.51 Hz, 2H),4.21 (t, J = 6.61, 4H), 1.92-1.80 (m, 4H), 1.58-1.47 (m,4H),1.4-1.27(m, 32H), 0.88 (t, J = 6.32, 6H)
13C-NMR(CD2Cl2):δ =144.4, 143.2, 134.8, 132.3, 126.6, 118.0,74.6, 32.3, 30.7, 30.1,30.0, 29.9,29.8, 29.7, 26.5, 23.1, 14.3 ppm
MALDI-TOF分析 実測値:801.264、理論値:801.235
【0191】
次に、124.4mgの2,9-diiodo-5,6-bis(dodecyloxy)-1,10-phenanthroline(0.155mmol)、24.8mgの2,5-bis(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-1H-pyrrole(0.078mmol)、5.7mgの酢酸パラジウム(0.025mmol)、及び13.6mgのトリフェニルホスフィン(0.052mmol)を含んだ150mlのDMFと40mlのTHFの混合溶液を調製した。該混合溶液へ45.3mgの炭酸カリウムを溶解させた10mlの水溶液を加え、脱気操作を行った後、アルゴン雰囲気下、80℃で4時間攪拌を行った。溶液を室温まで放冷し、溶媒を留去後、残渣をジクロロメタンに溶解させ、フィルターを通した後、精製することで、化合物9を収率16%で得た。
化合物9のNMR分析及び質量分析の結果
1H-NMR(500MHz,THF-d8, 60°C): δ = 12.54(s,2H), 8.39 (d, J = 8.52 Hz, 4H), 7.83 (d, J = 8.51 Hz,4H), 6.86(s, 4H),4.25 (t, J = 6.27, 8H), 1.95-1.89 (m, 8H), 1.63-1.45(m, 8H), 1.46-1.31(m,64H), 0.89 (t, J = 6.27, 12H) ppm
13C-NMR(THF-d8,. 60°C): δ = 149.2,144.9, 143.3, 135.6, 131.4, 125.7, 118.8, 110.4, 74.7,32.9,31.4, 30.7, 30.6,30.5, 30.3, 27.3, 25.9, 23.5, 14.4 ppm
MALDI-TOF分析 実測値:1222.884、理論値:1222.890
【0192】
<参考例1>(化合物10の合成)
以下の反応式に従って、化合物10を合成した。
【化134】

【0193】
まず、文献(JACS 2006,128,5592)記載の方法に従い、3,6-di-tert-butyl-9H-carbazoleを合成した。続いて、文献(JACS2003,125,1140)記載の方法を参考に3,6-di-tert-butyl-1,8-diiodo-9H-carbazoleの合成を行った。
【0194】
具体的には、100mg(0.23mmol)の3,6-di-tert-butyl-9H-carbazoleを酢酸3.5ml、水1.0ml、硫酸0.1mlの混合溶媒へ溶解させた。得られた溶液に26.1mg(0.115mmol)のHIO4・2H2Oと58.4 mg(0.23mmol)のI2を加え、80℃で18.5時間加熱を行った。反応溶液を室温まで放冷した後、水へ注いだ。酢酸エチルで3回溶媒抽出を行った後、有機層を飽和NaHCO3水溶液、飽和Na2S3O3水溶液、続いて食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥させ、溶媒をエバポレーターで留去することで粗生成物を得た。該粗生成物をエタノールから再結晶を行い、62mgの3,6-di-tert-butyl-1,8-diiodo-9H-carbazoleを収率50%で得た。
3,6-di-tert-butyl-1,8-diiodo-9H-carbazoleのNMR分析の結果
1H-NMR(CD2Cl2):δ = 1.47 (s, 18H, -CH3),7.70 (d, 2H), 8.07 (d, 2H),8.26(s,1H,-NH) ppm.
13C-NMR(CD2Cl2):δ = 32.0 (-CH3),35.1 (-C(CH3)3),76.0 (-CaromBr), 117.6 (Carom), 124.5(Carom),33.21 (Carom), 139.7 (Carom), 145.6 (Carom)ppm.
【0195】
次に、アルゴン雰囲気下において80mgの2,5-bis(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-1H-pyrrole(0.25mmol)と132mgの3,6-di-tert-butyl-1,8-diiodo-9H-carbazole(0.25mmol)を480mlのDMFと130mlのTHFの混合溶媒へ加えた。得られた混合溶液へ141mgのK2CO3(1.025mmol)と100mlの水を加えた後、7.3mgのPd(OAc)2と17.2mgのPPh3を加え、攪拌しながら80℃で14時間反応を行った。反応終了後、室温へ放冷し、エバポレーターで溶媒を留去した。得られた暗褐色粗生成物をジクロロメタンに溶解後、フィルターで不純物を取り除いた後、溶媒を留去することにより、化合物10を得た。
化合物10のMALDI-TOF分析結果
実測値:684.38、理論値:684.42
【0196】
<実施例16>(化合物11の合成)
以下の反応式に従って、化合物11を合成した。
【化135】


化合物11のNMR分析及び質量分析の結果
1H-NMR(CD2Cl2):δ = 1.52 (s, 36H, -CH3),7.61 (d, 4H, 4J=1.85 Hz), 7.68 (d, 4H, 3J=7.83Hz), 8.22 (t, 4H, 3J=7.57 Hz), 8.24 (d, 4H, 4J=1.69Hz), 9.66 (s, 2H, -NH) ppm.
13C-NMR(CD2Cl2):δ = 32.1 (-CH3),35.0 (-C(CH3)3), 117.2, 122.6, 124.1, 124.7,125.9,136.1, 138.8, 143.4, 159.7 ppm.
MALDI-TOF分析 実測値:708.23、理論値:708.42
【0197】
<実施例17>(金属錯体MC7の合成)
以下の反応式に従って、金属錯体MC7を合成した。
【化136】


25mg(0.035mmol)の化合物11と8mg(0,046mmol)のCo(OAc)2を2mlのDMFに溶解した後、得られた溶液をマイクロウェーブ反応装置に入れ、170℃300ワットで4時間反応を行った。室温まで放冷した後、反応後の溶液を氷水へ注ぐことで沈殿物が生成した。沈殿物を濾取後、乾燥を行うことで、24mg(0.031mmol)の金属錯体MC7を91%の収率で得た。
MALDI-TOF分析 実測値:764.8、理論値:765.34
【0198】
<実施例18>(化合物12の合成)
以下の反応式に従って、化合物12を合成した。
原料となる2,6−ジブロモ−4−クロロピリジンは、文献(European Journal of Organic Chemistry,2009,1781−1795)に記載されている方法を参考に以下の反応式に従い合成した。
【化137】


【化138】


まず、原料となる2,6−ジブロモ−4−クロロピリジンを以下の方法で合成した。5g(21mmol)の2,6−ジブロモピリジンをアルゴン雰囲気下にて脱水THF20mlに溶解し、−30℃へ冷却した。この溶液へ2,2,6,6-Tetramethylpiperidinylmagnesium chloride lithium chlorideの1MTHF溶液32ml(32mmol)を滴下して加え、−30℃において30分間攪拌を行った。7.5g(32mmol)のヘキサクロロエタンを溶解させた10mlTHF溶液を加え、攪拌しながら溶液を室温まで温めた。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた後、酢酸エチルを加えた。有機層を分取し、水層を酢酸エチルで2回抽出した溶液と合わせ、該有機層を食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過し、次いで、得られたろ液から溶媒を留去した。残渣をカラム(ヘキサン/ジクロロメタン)で精製を行い、エタノールで再結晶することで2,6−ジブロモ−4−クロロピリジンを得た。収量は1.8gであり、収率は32%であった。
2,6−ジブロモ−4−クロロピリジンのNMR分析及び質量分析の結果
1H-NMR (CD2Cl2,300 MHz, 25℃):δ= 7.53 (s,2H) ppm
13C-NMR (CD2Cl2,75 MHz, 25℃: δ= 127.6, 141.2, 146.8 ppm
FD−MS 実測値(m/z):268.9、理論値:268.8
【0199】
次に、3,6-di-tert-butyl-1,8-bis(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-9Hcarbazoleを以下の方法で合成した。5gの1,8-dibromocarbazole (11.5mmol)を250mlの脱気されたTHFに溶解させた溶液へ、0℃で、7.8mlのn-BuLi (1.6 M in hexane, 12.5 mmol)を加えた。1時間攪拌した後、COガスを通気しながら、反応溶液を室温まで温めた。反応溶液から溶媒を留去した後、残渣を脱気した250mlのTHFに溶解させた。29.4mlのt-BuLi(1.7 M in pentane, 49.9 mmol)を−78℃にてゆっくりと加えた後、0℃にて3時間攪拌を行った。溶液を再び−78℃に冷却した後、11.6mlの2-isopropoxytetramethyl-dioxaborolane (57.5 mmol)を加え、反応溶液をゆっくりと室温まで温めた。反応溶液を0℃に冷却し1M塩酸溶液を加え加水分解を行った後、酢酸エチルを加えた。有機層を1M水酸化ナトリウム溶液で洗浄、続いて1M炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで脱水を行った。溶媒をエバポレーターで留去した後、温めたヘキサンで再結晶することで、3,6-di-tert-butyl-1,8-bis(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-9Hcarbazoleを得た。収量は、2.7gであり、収率は、50%であった。
3,6-di-tert-butyl-1,8-bis(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-9HcarbazoleのNMR分析の結果
1H-NMR (CD2Cl2,300 MHz, 25℃):δ= 1.47 (s,42H), 7.85 (d, 2H), 8.24 (d, 2H), 9.99 (s, 1H) ppm.
13C-NMR (CD2Cl2,75 MHz, 25℃): δ= 24.9, 31.8, 34.5, 83.76,119.9 , 121.7, 129.8 , 140.9, 143.6 ppm.
【0200】
次に、以下の方法で、化合物12を合成した。608.68mg(1.12mmol)の3,6-di-tert-butyl-1,8-bis(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-9Hcarbazole、307.93 mg (1.12 mmol)の2,6-dibromo-4-chloro-pyridine、及び25 mg (0.02 mmol)のPd(PPh3)4を1000mlのトルエンに溶解させ、400mlのエタノール、2M炭酸カリウム水溶液60mlを加えた後、脱気を3回行った。反応混合物を、85℃で3日間攪拌した。溶媒をエバポレーターで留去した後、残渣をジクロロメタンに溶解し、有機層を水で洗浄、続いて食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで脱水した。有機層をろ過し、ろ液から溶媒を留去することで粗生成物を得た。該粗生成物についてカラム(ヘキサン/ジクロロメタン)精製を行い、温めたヘキサンで再結晶を行うことで、化合物12を得た。収量は40mgであり、収率は5%であった。
化合物12のNMR分析及び質量分析の結果
1H-NMR (CD2Cl2,300 MHz, 25℃):δ= 1.52 (s,36H), 7.61 (d, 4H, 4J=1.79 Hz), 7.72 (s, 4H), 8.28 (t, 4H, 4J=1.69Hz), 9.59 (s, 2H, -NH) ppm.
13C-NMR (CD2Cl2,75 MHz, 25℃): δ= 32.1, 35.1, 117.9,122.5, 122.9, 124.9, 126.0, 136.1, 143.7, 146.3, 161.2 ppm.
MALDI-Tof 実測値(m/z):776.90、理論値:776.34
<実施例19>(芳香族化合物P5の合成)
芳香族化合物P5を以下の反応式に従って合成した。
【化139】


[式中のpは繰り返し単位数を表す。]
22 mg (0.08 mmol)のビス [1,5-シクロオクタジエン]ニッケル(0) (Ni(COD)2)、 9 mg (0.08 mmol)の1,5-シクロオクタジエン, 12 mg (0.08mmol)の2,2-bipyridine(bpy)を、0.3mlのDMFおよび0.45mlのトルエン混合溶液へ溶解させ、60℃で30分間攪拌を行った。30mg(0.04mmol)の化合物12を溶解させた0.2mlのトルエン溶液を加え、反応溶液を60℃で3日間攪拌した。反応溶液へメタノールを加え、生成した沈殿をろ取することで、芳香族化合物P5を得た。
芳香族化合物P5のGPC分析の結果
Mn(数平均分子量)=3272.83 g/mol
Mw(重量平均分子量)=13693.00 g/mol
PDI(多分散指数)=4.18
【0201】
<実施例20>(芳香族化合物P6の合成)
芳香族化合物P6を以下の反応式に従って合成した。
【化140】


まず、原料となる4-((Triisopropylsilyl)ethynyl)benzaldehydeを、以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下において、1g (5.40mmol)の4-bromobenzaldehydeと38 mg(0.054 mmol)のPd(PPh3)2Cl2、10mg(0.054 mmol)のヨウ化銅(I)、及び、33 mg (0.129mmol)のPPh3を4mlのTHFと16mlのdiisopropylamineの混合溶液に溶解させた。反応混合物を60℃で30分間攪拌した後、1.45 ml (6.49 mmol)のethynyltriisopropylsilaneを加え、更に2時間攪拌した。反応溶液から溶媒をエバポレーターで留去した後、粗生成物をカラム(ヘキサン/ジクロロメタン)精製することで、4-((Triisopropylsilyl)ethynyl)benzaldehydeを得た。収量は1.3gであり、収率は84%であった。
4-((Triisopropylsilyl)ethynyl)benzaldehydeのNMR分析の結果
1H-NMR (CD2Cl2,300 MHz, 25℃):δ= 1.14 (s,21H), 7.64 (d, 3J= 8.3 Hz, 2H), 7.81 (d, 3J= 8.3 Hz, 2H), 10.00 (s, 1H) ppm.
13C-NMR (CD2Cl2,75 MHz, 25℃): δ= 11.7, 18.8, 95.9, 106.3,129.7, 129.9, 132.8, 136.1, 191.6 ppm.
【0202】
次に、芳香族化合物P6を以下の方法で合成した。
308.0 mg (0.40 mmol)の芳香族化合物P3と683.3 mg (2.38 mmol)の4-((triisopropylsilyl)ethynyl)benzaldehydeを12mlのジクロロメタン及び4mlのTHFの混合溶液に分散させ、2mlのトリフルオロ酢酸を加え、脱気を行った。反応溶液を、マイクロウェーブ用試験管に入れ、マイクロウェーブ装置を用いて、85°C、出力50Wにて6時間反応を行った。反応溶液を濃縮後、メタノールを加えることで粗生成物を沈殿物として得た。アセトンを溶媒としたソックスレー抽出器を用いて粗生成物を抽出することにより、芳香族化合物P6を得た。収量は234mgであり、収率は45%であった。
芳香族化合物P6のNMR分析及び質量分析の結果
1H-NMR (C3D2F6Oplus 0.1% C2DF3O2, 500 MHz, 25℃): δ= 1.09 (s, 9H,), 1.10 (s,54H,), 6.06 (d, 6H, 3J=4.8 Hz), 6.15 (d, 6H, 3J=4.8 Hz), 6.55 (s,6H), 7.00 (d, 6H, 3J=8.2 Hz), 7.43 (d, 6H, 3J=8.2 Hz) ppm.
13C-NMR (C3D2F6Oplus 0.1% C2DF3O2, 125 MHz, 25℃): δ= 9.2, 15.3, 95.3, 103.5,127.6, 128.8, 130.0, 131.8, 133.9, 135.2, 143.5, 144.1, 146.9, 149.9 ppm.
MALDI-Tof 実測値(m/z):1576.94、理論値:1578.77
【0203】
<実施例21>(芳香族化合物P7の合成)
芳香族化合物P7を以下の反応式に従って合成した。
【化141】


まず、化合物13を、2,9-dichloro-5,6-bis(dodecyloxy)-1,10-phenanthlorineと3-methyl-7-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-1H-indoleを原料とし、前記化合物7の合成方法と同様の操作を行い合成した。
次に、anthracene-1,8-dicarbaldehydeを以下の方法で合成した。250mgの1,8-Bis(hydroxymethyl)anthracene(1.1mmol)を20mlのジクロロメタンに分散させ、383mgの二酸化マンガン(4.4mmol)を加えた後、室温にて1時間攪拌した。3.8gの二酸化マンガン(44mmol)を追加し、室温にて一晩攪拌を行った。反応溶液をフィルターでろ過した後、得られたろ液から溶媒をエバポレーターで留去した後、残渣をカラム精製することで、anthracene-1,8-dicarbaldehydeを得た。収量は181mgであり、収率は70%であった。
anthracene-1,8-dicarbaldehydeのNMR分析の結果
1H-NMR (CD2Cl2,250 MHz) δ= 11.2 (s, 1H), 10.6 (s, 2H), 8.56 (s, 1H), 8.20 (d, 2H), 8.01 (dd,2H), 7.55 (dd,1,8 Hz, 2H).
【0204】
続いて、芳香族化合物P7を、以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下において、100mgの化合物13(0.124mmol)と14mgのanthracene-1,8-dicarbaldehyde(0.062mmol)をシュレンク管に入れ、20mlのテトラクロロエタンと0.038mlのboron trifluoride etherate (BF3・O(Et)2)を加えた。反応混合物を105℃にて24時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、生成物を水洗し、カラム精製することで、芳香族化合物P7を得た。収量は40mgであり、収率は35%であった。
芳香族化合物P7のNMR分析及び質量分析の結果
1H-NMR (CD2Cl2,250 MHz) δ=10.02(bs, 4 H), 8.25 (dd, 8 H), 7.92 (m, 4 H), 7.72 (t, 4 H), 7.45 (m, 4 H),7.15(m,4 H), 6.24 (s, 2 H), 3.95 (m, 8 H), 2.76 (s, 12 H), 1.75(m, 8 H),1.34(m, 72 H), 0.96 (t, 12 H)
Maldi-Tof 実測値(m/z):1812、理論値:1811
【0205】
<評価12>
金属錯体MC2をカーボン担体に担持させることで電極触媒12を作製した。具体的には、2mgの金属錯体MC2と8mgのカーボン担体(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン製)をメタノール中で混合し、15分間超音波処理を行った後、エバポレーターで溶媒を留去した後、200Paの減圧下で一晩乾燥させて、電極触媒12を得た。
【0206】
電極触媒12の評価として、回転ディスク電極による水酸化活性の評価を行った。電極には、ディスク部がグラッシーカーボン(直径6.0mm)であるディスク電極を用いた。
電極触媒12が1mg入ったサンプル瓶へ、0.5%のナフィオン(登録商標)溶液(5%ナフィオン(登録商標)溶液をエタノールにて10倍希釈した溶液)を1mL加えた後、超音波で15分間分散させた。得られた懸濁液1.8μLを上記電極のディスク部に滴下し乾燥させた後、80℃に加熱した乾燥機にて3時間乾燥させることで測定用電極を得た。
【0207】
この測定用電極を用いて、下記の測定装置、測定条件において、水の酸化反応の電流値の測定を行った。電流値の測定は、窒素を飽和させた状態で行った。この電流値を測定用電極の表面積で除すことにより、電流密度を求めた。得られた結果を表3に示す。なお、測定装置及び測定条件は、以下のとおりであり、電流密度は、銀/塩化銀電極に対して1Vのときの値を示す。
測定装置
日厚計測社製RRDE−1回転リングディスク電極装置
ALSモデル701Cデュアル電気化学アナライザー
測定条件
セル溶液:1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(窒素飽和)
溶液温度:25℃
参照電極:銀/塩化銀電極(3M塩化カリウム)
カウンター電極:白金ワイヤー
掃引速度:10mV/秒
電極回転速度:900rpm
【0208】
<評価13>
上記<評価12>において、金属錯体MC2を、二酸化マンガン(アルドリッチ社製、製品コード203750)に変更した以外は同様にして電極触媒13を作製し、水の酸化反応の評価を行った。結果を表3に示す。
<評価14>
上記<評価12>において、電極触媒12を白金担持カーボン(20wt%担持、エレクトロケム社)に置き換えた以外は同様にして電極触媒14を作製し、水の酸化反応の評価を行った。結果を表3に示す。
【0209】
【表3】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)及び(b)の要件を満たす芳香族化合物。
(a)配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた構造を2つ以上有する(該構造は同一でも異なっていてもよい。)。
(b)前記構造を構成する窒素原子のうち少なくとも1つが6員含窒素複素環に含まれる窒素原子である。
【請求項2】
前記構造すべてにおいて、前記構造の1つを構成する窒素原子の数nと、前記構造の中心から各窒素原子までの平均距離r(Å)とが、下記式(A)で示される要件を満たす、請求項1に記載の芳香族化合物。
0<r/n≦0.7 …(A)
【請求項3】
すべての前記構造において1つの構造を構成する窒素原子の数nが4以上6以下である、請求項1又は2に記載の芳香族化合物。
【請求項4】
前記r/nが0.2〜0.6である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の芳香族化合物。
【請求項5】
前記芳香族化合物を構成する全炭素原子の質量に対する全窒素原子の質量の比が0より大きく1.1以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の芳香族化合物。
【請求項6】
前記構造が下記一般式(1)で表される構造である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の芳香族化合物。
【化1】


[式中、mは1以上の整数である。
1a、Q1b及びQ1cは、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、Q1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。ただし、Q1a、Q1b及びQ1cのうち少なくとも1つは、6員含窒素芳香族複素環である。
1a及びZ1bは、直接結合又は連結基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、Z1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。
1a及びQ1b、Q1b及びQ1cは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。mが2以上の整数である場合、2個のQ1bは、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q1a及びQ1cは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。]
【請求項7】
前記一般式(1)で表される構造が下記一般式(2)又は一般式(3)で表される構造である、請求項6に記載の芳香族化合物。
【化2】


[式中、Q2a、Q2b、Q2c及びQ2dは、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、Q2a、Q2b、Q2c及びQ2dのうち少なくとも1つは、6員含窒素芳香族複素環である。
2a、Z2b及びZ2cは、直接結合又は連結基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2a及びQ2b、Q2b及びQ2c、Q2c及びQ2dは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q2a及びQ2dは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。]
【化3】


[式中、Q3a、Q3b、Q3c、Q3d、Q3e及びQ3fは、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、Q3a、Q3b、Q3c、Q3d、Q3e及びQ3fのうち少なくとも1つは、6員含窒素芳香族複素環である。
3a、Z3b、Z3c、Z3d及びZ3eは、直接結合又は連結基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
3a及びQ3b、Q3b及びQ3c、Q3c及びQ3d、Q3d及びQ3e、Q3e及びQ3fは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q3a及びQ3fは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。]
【請求項8】
前記含窒素芳香族複素環が、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環及びこれらの環を有する多環式芳香族複素環からなる群から選ばれる環である、請求項6又は7に記載の芳香族化合物。
【請求項9】
1a及びQ1b、Q1b及びQ1c、Q2a及びQ2b、Q2b及びQ2c、Q2c及びQ2d、Q3a及びQ3b、Q3b及びQ3c、Q3c及びQ3d、Q3d及びQ3e、又はQ3e及びQ3fにおける直接結合又は連結基を介して互いに結合している2つの含窒素芳香族複素環が、下記式(4−a)〜(6−d)のいずれかで表される、請求項6〜8のいずれか一項に記載の芳香族化合物。
【化4】


[式中、Xは、=C(Rα)−、−N(Rβ)−、=N−、−O−、−S−又は−Se−であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Yは、−N(H)−又は=N−であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
4b、R4c、R5b、R5c、R5d、R6b、R6c、R6d、Rα及びRβは、水素原子又は置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項10】
1a及びQ1b、Q1b及びQ1c、Q2a及びQ2b、Q2b及びQ2c、Q2c及びQ2d、Q3a及びQ3b、Q3b及びQ3c、Q3c及びQ3d、Q3d及びQ3e、又はQ3e及びQ3fにおける直接結合又は連結基を介して互いに結合している2つの含窒素芳香族複素環が、下記一般式(7−a)〜(10−e)のいずれかで表される、請求項6〜8のいずれか一項に記載の芳香族化合物。
【化5】


[式中、R7a〜R10eは、水素原子又は置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項11】
金属原子又は金属イオンと、請求項1〜10のいずれか一項に記載の芳香族化合物からなる配位子とを有する金属錯体。
【請求項12】
前記金属原子又は金属イオンが、それぞれ周期表の第4周期から第6周期に属する遷移金属原子又はそのイオンである、請求項11に記載の金属錯体。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の芳香族化合物、及び/又は請求項11若しくは12に記載の金属錯体と、カーボン材料及び/又は高分子材料とを含む組成物。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の芳香族化合物、請求項11若しくは12に記載の金属錯体、又は請求項13に記載の組成物を、加熱、放射線照射又は放電で変性させることにより得られる変性物。
【請求項15】
前記加熱の温度が200〜1200℃の範囲である、請求項14に記載の変性物。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の変性物と、カーボン材料及び/又は高分子材料とを含む組成物。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の芳香族化合物、請求項11若しくは12に記載の金属錯体、請求項13に記載の組成物、請求項14若しくは15に記載の変性物、又は請求項16に記載の組成物からなる触媒。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の芳香族化合物、請求項11若しくは12に記載の金属錯体、請求項13に記載の組成物、請求項14若しくは15に記載の変性物、又は請求項16に記載の組成物からなる電極。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の芳香族化合物、請求項11若しくは12に記載の金属錯体、請求項13に記載の組成物、請求項14若しくは15に記載の変性物、又は請求項16に記載の組成物からなる燃料電池用電極触媒。
【請求項20】
請求項19に記載の燃料電池用電極触媒を用いた固体高分子形燃料電池。
【請求項21】
前記固体高分子形燃料電池における高分子電解質膜が、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜である、請求項20に記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項22】
前記固体高分子形燃料電池における高分子電解質膜が、陰イオン伝導性を有する高分子電解質膜である、請求項20に記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項23】
下記一般式(11)〜(20)、(22)又は(23)で表される化合物。
【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


[式中、R11〜R20、R22、及びR23は、水素原子又は置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
11は、含窒素芳香族複素環であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
12は、ブロモ基、クロロ基又はヨード基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
13、E20及びE22は、それぞれ独立に、水素原子又は保護基である。
16及びX17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲノ基、又はX16同士若しくはX17同士が互いに結合した直接結合である。]


【公開番号】特開2012−17314(P2012−17314A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244194(P2010−244194)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(596070445)マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フォーデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー. (13)
【Fターム(参考)】